説明

超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法

【課題】超音波振動ホーンにより膜電極接合体の電極の損傷を防止できる超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法は、高分子電解質膜とサブガスケットを超音波振動供給装置に供給する段階と、高分子電解質膜の両表面の周縁領域にサブガスケットを超音波振動により接合する段階と、サブガスケットの接合後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両面に電極スラリーを噴射してコーティングする段階と、電極スラリーを乾燥する段階と、を含み、サブガスケットの接合後、高分子電解質膜の両面の周縁部分がサブガスケットにより固定され、電極スラリーが高分子電解質膜の両表面に直接コーティングされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法に係り、より詳しくは、超音波振動ホーンにより膜電極接合体の電極が損傷することを防止できる超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、燃料電池スタックの主要構成部品の膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)は、図3に示すように高分子電解質膜12を中心とし、その両面に触媒を含む電極(燃料極及び空気極)14がそれぞれ結合された状態が3−レイヤ(layer)膜電極接合体10であり、膜電極接合体10を容易に取り扱い、物理的な耐久性を確保するために、膜電極接合体10の両面の周縁領域に各電極14の面積よりも小さい開口部を有するサブガスケット16が積層された状態が5−レイヤ(layer)膜電極接合体であり、また、触媒を含む各電極14の外側部分にガス拡散層18(GDL:Gas Diffusion Layer)がさらに積層される状態が7−レイヤ(layer)膜電極接合体である。
【0003】
7−レイヤ膜電極接合体のガス拡散層の外側部分に燃料を供給し、反応により発生した水を排出するように流路(Flow Field)が形成された分離板を積層することで1つの単位電池を構成し、このような単位電池を複数個積層することにより必要な規模の燃料電池スタックを構成する。
従来、膜電極接合体を製造する工程では、ホットプレスまたはロールを用いてサブガスケットを接合していた。
すなわち、3−レイヤMEAの両面にサブガスケット16を積層してホットプレスまたはロール装備内に進入させた後、一対のロールプレスを用いてサブガスケット16を3−レイヤ膜電極接合体10の両面に圧着して接合する。
【0004】
しかしながら、従来のホットプレスなどを用いたサブガスケットの接合過程は、製造時間が長くかかる短所があり、これを考慮して本出願人は超音波振動を用いてサブガスケットを接合して時間を大きく短縮できる燃料電池膜電極接合体生産用の連続式サブガスケット接合装置を出願(特許文献1)したが、これも超音波振動ホーン(horn)が支持体に一定の圧力を加えて接合が行われるため、ホーン(horn)と支持部が当接する部分を膜電極接合体が通過する時、超音波振動ホーンにより膜電極接合体の電極が損傷される恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願第2011−0079414号公報
【特許文献2】特開2008−103332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような点を考慮してなされたものであって、電極の損傷が防止できる超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するための本発明は、高分子電解質膜とサブガスケットを超音波振動供給装置に供給する段階と、高分子電解質膜の両表面の周縁領域にサブガスケットを超音波振動により接合する段階と、サブガスケットの接合後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両面に電極スラリーを噴射してコーティングする段階と、電極スラリーを乾燥する段階と、を含むことを特徴とする。
【0008】
サブガスケットの接合後、高分子電解質膜の両面の周縁部分がサブガスケットにより固定され、電極スラリーが高分子電解質膜の両表面に直接コーティングされることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高分子電解質膜の両面に、電極をコーティングしていない状態のサブガスケットを予め超音波振動を用いて接合し、その後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両面に電極をコーティング及び乾燥して膜電極接合体を製造することにより、超音波振動により電極が損傷する現象を容易に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法を説明する概略図である。
【図2】従来の超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法を説明する概略図である。
【図3】従来の燃料電池膜電極接合体の製造過程を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施例を添付図面を参照して詳細に説明する。
先ず、本発明の理解を助けるために、超音波振動を用いてサブガスケットを3−レイヤ膜電極接合体の両表面に接合する従来方法を説明する。
図2に示すように、サブガスケット接合装置は、3−レイヤ膜電極接合体にサブガスケットを接合させるための供給部として、一側に3−レイヤ膜電極接合体供給ロール20が配置されると共に3−レイヤ膜電極接合体供給ロール20の上部及び下部に一対のサブガスケット供給ロール22が配置され、また、サブガスケットを超音波振動を用いて接合させる超音波振動供給装置30が反対側に配置される。
【0012】
3−レイヤ膜電極接合体供給ロール20は高分子電解質膜12の両表面に触媒を含む電極(燃料極及び空気極)14が形成された3−レイヤ膜電極接合体10を巻回したものであり、サブガスケット供給ロール22は3−レイヤ膜電極接合体10の四方周縁の上下面及び電極14の周縁部分に接合されるサブガスケット16を巻回したものである。
3−レイヤ膜電極接合体供給ロール20の3−レイヤ膜電極接合体10と、サブガスケット供給ロール22のサブガスケット16が一種の仮接合ローラーの位置合わせ装置24に入る。
【0013】
より詳しくは、3−レイヤ膜電極接合体供給ロール20の3−レイヤ膜電極接合体10が位置合わせ装置24を通過すると共にサブガスケット供給ロール22のサブガスケット16はその内表面(高分子電解質膜と接合する面)が接着剤によりコーティングされた状態で位置合わせ装置24を通過することにより、3−レイヤ膜電極接合体10の周縁の上下面にサブガスケット16が位置合わせされる。
このように3−レイヤ膜電極接合体10を隔ててサブガスケット16が位置合わせ装置24を通過した後、超音波振動供給装置30を通過する。
【0014】
次に、前記超音波振動供給装置30は、サブガスケット16に超音波振動を供給してサブガスケットにコーティングされている接着剤を加熱及び硬化させることで、サブガスケット16が超音波振動により高分子電解質膜12及び電極14の周縁部分に完全に接合する。
この時、超音波振動供給装置30の下方にはサブガスケット16と3−レイヤ膜電極接合体10を支持する支持ロール26が配置されるが、この支持ロール26は、超音波振動が供給される時、3−レイヤ膜電極接合体10に適切な支持圧力を提供してサブガスケット16の接合を補助する。
【0015】
しかし、上述した従来の超音波を用いたサブガスケット接合方法は、超音波振動供給装置30の超音波振動ホーン(horn)が膜電極接合体10を隔てて支持ロールに一定の圧力を加えて接合が行われるため、超音波振動ホーン(horn)と支持ロールが当接する部分を膜電極接合体が通過する時、超音波振動ホーンにより膜電極接合体の電極が損傷する恐れがある。
したがって、本発明は、高分子電解質膜の両面にサブガスケットを予め超音波振動を用いて接合し、その後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両面に電極をコーティング及び乾燥して膜電極接合体を製造するものであり、電極に超音波振動を加えることがないため、電極の損傷を防止できる点に主な特徴がある。
【0016】
このために、従来の超音波振動を用いたサブガスケット接合装置の構成において、高分子電解質膜の両表面に電極がコーティングされた3−レイヤ膜電極接合体を供給する供給ロールの代りに、電極がコーティングされていない高分子電解質膜を供給する高分子電解質膜供給ロール40が一側に配置され、この高分子電解質膜12の上部及び下部に一対のサブガスケット供給ロール22が配置され、また、サブガスケットを超音波振動を用いて接合させる超音波振動供給装置30が反対側に配置される。
【0017】
高分子電解質膜供給ロール40は電極がコーティングされていない純粋な高分子電解質膜12を巻回したものであり、サブガスケット供給ロール22は高分子電解質膜12の四方周縁の上下面に接合されるように中央に開口部を有するサブガスケット16を巻回したものである。
高分子電解質膜供給ロール40の高分子電解質膜12と、サブガスケット供給ロール22のサブガスケット16が位置合わせ装置24に入る。
【0018】
したがって、前記高分子電解質膜供給ロール40の高分子電解質膜12が位置合わせ装置24を通過すると共に、サブガスケット供給ロール22のサブガスケット16はその内表面(高分子電解質膜と接合される面)に接着剤がコーティングされた状態で位置合わせ装置24を通過することにより、高分子電解質膜12の上下面の周縁領域にサブガスケット16が位置合わせすることになる。
このように高分子電解質膜12を隔ててサブガスケット16が位置合わせ装置24を通過した後、超音波振動供給装置30を通過する。
【0019】
次に、超音波振動供給装置30はサブガスケット16に超音波振動を供給してサブガスケットにコーティングされている接着剤を加熱及び硬化させることで、サブガスケット16が超音波振動により高分子電解質膜12の周縁部分に完全に接合する。
このように超音波振動を用いてサブガスケットを接合した後、サブガスケットの開口部を介して高分子電解質膜の両表面が露出する状態になる。
したがって、超音波振動を用いてサブガスケットを接合した後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両表面に燃料極及び水素極のための電極スラリーを直接噴射してコーティングするため、電極には超音波振動による影響が全くなく、超音波振動による電極損傷を容易に防止することができる。
【0020】
この時、サブガスケットの接合後、高分子電解質膜の両面の周縁部分がサブガスケットにより物理的に固定される状態になるため、高分子電解質膜の寸法変化を起こす膨張(swelling)現象を防止でき、これによって、高分子電解質膜が物理的に固定された状態で電極スラリーを高分子電解質膜の両表面に正確かつ均一にコーティングすることができる。
最終的に、高分子電解質膜の両表面に噴射コーティングされた電極スラリーを乾燥することにより、高分子電解質膜の両面の周縁にサブガスケットが接合され、その内表面に電極が形成された5−レイヤ(layer)膜電極接合体が得られる。
【符号の説明】
【0021】
10 膜電極接合体
12 高分子電解質膜
14 電極
16 サブガスケット
18 ガス拡散層
20 3−レイヤ膜電極接合体供給ロール
22 サブガスケット供給ロール
24 位置合わせ装置
26 支持ロール
30 超音波振動供給装置
40 高分子電解質膜供給ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子電解質膜とサブガスケットを超音波振動供給装置に供給する段階と、
高分子電解質膜の両表面の周縁領域にサブガスケットを超音波振動により接合する段階と、
サブガスケットの接合後、サブガスケットの開口部を介して露出した高分子電解質膜の両面に電極スラリーを噴射してコーティングする段階と、
電極スラリーを乾燥する段階と、
を含むことを特徴とする超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法。
【請求項2】
サブガスケットの接合後、高分子電解質膜の両面の周縁部分がサブガスケットにより固定され、電極スラリーが高分子電解質膜の両表面に直接コーティングされることを特徴とする請求項1に記載の超音波振動接合を用いた燃料電池膜電極接合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−69652(P2013−69652A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263885(P2011−263885)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】