説明

超音波振動接合装置

【課題】超音波振動接合装置における保持部とヒータをホーンの構造が複雑にならないように配設することを目的とする。
【解決手段】超音波振動を発生する振動子9Aと、ホーン9Bと、このホーン9Bに備えられ接合対象物を保持する保持部3とを備える超音波実装ツール60と、ホーン9Bに形成されたヒータ挿通孔16A,16Bに通されるヒータ12A,12Bと、超音波実装ツール60を支持する支持部材11とを備え、保持部3に保持された接合対象物100を、被接合対象物102に押圧しながらホーン9Bを振動することにより、接合対象物100を被接合対象物102に接合する超音波振動接合装置1において、ヒータ挿通孔16A,16Bは、ホーン9Bの支持部材11により支持される位置と保持部3との間に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICチップ等の電子部品を電気配線基板に接合する手段の一つとして、超音波振動接合装置を用いる手段が知られている。この超音波振動接合装置は、電子部品を電気配線基板に押圧しながら超音波振動により電気配線基板に対して並行振動させる。そして、この並行振動により電子部品と電気配線基板との間に発生する摩擦により、電子部品を電気配線基板に接合するものである。
【0003】
超音波振動接合装置は、振動の発生源である超音波振動子の振動を電子部品に伝達するホーンを有し、このホーンに電子部品を保持し、電気配線基板に対して押圧しながら振動させる構成になっている。
【0004】
ホーンは、超音波振動に対して共振し振動が増幅されるように、振動の半波長の整数倍の長さに形成されている。ホーンの振動を効率よく電子部品に伝達するように、ホーンの中で振動が一番大きくなる振動の腹部に対応する位置に、電子部品を保持する保持部が設けられている。また、ホーンは、ホーンの中で振動が一番小さくなる振動の節部に対応する位置において、超音波振動接合装置の本体部に対して支持されている。節部は振動の振幅が小さいため、本体部に対する相対移動量が小さく、この節部でホーンを支持することにより、ホーンの支持を確実に行うことができる。
【0005】
ところで、電子部品と電気配線基板との間に熱を加えることにより、電子部品と電気配線基板との接合時間の短縮と接合強度の強化が図られることが一般に知られている。そのため、電子部品と電気配線基板との間を加熱する目的でホーンにヒータが備えられることがある。
【0006】
例えば、特許文献1に開示されている超音波振動接合装置では、ホーンの腹部に電子部品を保持する保持部を備え、節部において、ホーンを本体部に対して支持している。そして、ヒータと保持部とを、ホーンの太さ方向に並べて配設する構成が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3687638号公報(図2等参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般にホーンは、2cm前後の太さの柱状体を呈するものである。そして、保持部には電子部品を、空気を吸引することにより保持するための構成として吸引孔等の構成が備えられている。そのため、太さ方向において、保持部およびヒータを両者の構造が干渉しないように設けることとすると、特許文献1に記載されるように、保持部やヒータの構造が複雑になるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、保持部とヒータを、ホーンの構造が複雑にならないように配設した超音波振動接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するため、本発明の超音波振動接合装置は、超音波振動を発生する振動子と、ホーンと、このホーンに備えられ接合対象物を保持する保持部とを備える超音波実装ツールと、ホーンに形成されたヒータ挿通孔に通されるヒータと、超音波実装ツールを支持する支持部材とを備え、保持部に保持された接合対象物を、被接合対象物に押圧しながらホーンを振動することにより、接合対象物を被接合対象物に接合する超音波振動接合装置において、ヒータ挿通孔は、ホーンの支持部材により支持される位置と保持部との間に形成されることとする。
【0011】
超音波振動接合装置をこのような構成にすることにより、保持部とヒータをホーンの構造が複雑にならないように配設することができる。
【0012】
また、他の発明は、上述の発明に加え、保持部は、ホーンの振動の腹部に配設され、支持部材は、ホーンの振動の節部であって、保持部が配設される腹部の隣の節部において超音波実装ツールを支持することとする。
【0013】
超音波振動接合装置をこのような構成とすることにより、ヒータ挿通孔、保持部および支持部の配設、および構成等の自由度が高くなることに加えて、保持部をホーンの振動の腹部に配設することにより、接合対象物に振動を効果的に与えることができる。また、支持部材によるホーンの支持位置を振動の節部に配設することにより、超音波実装ツールの支持を安定的に行うことができる。さらに、保持部が配設される腹部と支持部材が超音波実装ツールを支持する節部とは隣り合うものであるため、接合対象物に対する振動を効果的に与えることができ、かつ、超音波実装ツールの支持を安定的に行うことができる最小の間隔となっている。すなわち、ヒータ挿通孔、保持部および支持部材による超音波実装ツールの支持位置の配設、および構成等の自由度が高いことに加えて、超音波振動接合装置の大型化を抑えながら、接合対象物に対する振動を効果的に与えることができ、かつ、超音波実装ツールの支持を安定的に行うことができる。
【0014】
また、他の発明は、上述の発明に加え、ヒータ挿通孔は、ヒータのヒータ挿通孔に通されている部分に対して隙間を有することとする。
【0015】
超音波振動接合装置をこのような構成とすることにより、ヒータに伝わるホーンの振動による応力を弱めることができる。
【0016】
また、他の発明は、上述の発明に加え、ホーンは、このホーンを支持部材に取り付ける取付部材が挿通する取付部材挿通孔と、接合対象物を保持部に吸引するために保持部に形成される吸引孔とが形成され、ヒータ挿通孔は、取付部材挿通孔と吸引孔との略中央に形成されていることとする。
【0017】
超音波振動接合装置のヒータ挿通孔を、取付部材挿通孔と吸引孔との間の略中央に形成することで、ヒータ挿通孔と取付部材挿通孔との間隔、およびヒータ挿通孔と吸引孔との間隔を十分にとることができる。そのため、各孔を形成する孔開け加工の作業がし易くなる。
【0018】
上述の課題を解決するため、本発明の超音波振動接合装置は、超音波振動を発生する振動子と、ホーンと、このホーンに備えられ接合対象物を保持する保持部とを備える超音波実装ツールと、ホーンに形成されたヒータ挿通孔に通されるヒータと、超音波実装ツール支持する支持部材とを備え、保持部に保持された接合対象物を、被接合対象物に押圧しながらホーンを振動することにより、接合対象物を被接合対象物に接合する超音波振動接合装置において、ヒータ挿通孔は、ホーンの支持部材により支持される位置とホーンの自由端との間に形成されることとする。
【0019】
超音波振動接合装置をこのような構成にすることにより、保持部とヒータをホーンの構造が複雑にならないように配設することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保持部とヒータをホーンの構造が複雑にならないように配設された超音波振動接合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
図1および図2を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係る超音波振動接合装置1について説明する。
【0022】
図1は、超音波振動接合装置1の全体の構成および、この超音波振動接合装置1を用いて、接合対象物であるICチップ100を被接合対象物であるフレキシブル基板101に接合する工程で使用される装置の概略を説明するための図である。図2は、超音波振動接合装置1に備えられる振動装置2の構成を示す図である。
【0023】
超音波振動接合装置1は、供給装置200からICチップ100の供給を受け、供給されたICチップ100をフレキシブル基板101に接合する。
【0024】
先ず、図1を参照しながら、超音波振動接合装置1が、供給装置200からICチップ100の供給を受ける供給工程の概略を説明する。また、これに併せて、供給装置200の構成を説明する。
【0025】
超音波振動接合装置1にICチップ100の供給を行う供給装置200の構成は、概略以下のようになっている。この供給装置200は、複数のICチップ100を載置するICチップ載置台201と、このICチップ載置台201の上に載置されるICチップ100を超音波振動接合装置1に供給する供給機構202とを備えている。
【0026】
なお、以下の説明において、ICチップ100が置かれている面に平行な面を水平面とし、これに直交する方向を上下方向として説明を行う。また、図1の紙面の表面側を前側(前方)、裏面側を後側(後方)とし、前方側から後方側に向かって右手側を右側(右方)、左手側を左側(左方)として説明を行なう。すなわち、図1において、X方向が上下方向、Y方向が左右方向になっている。
【0027】
ICチップ100は、容器Pに収容された状態で、ICチップ載置台201の上に載置される。容器P内には、複数のICチップ100が収容され、供給装置202は、容器PからICチップ100を一つずつ超音波接合装置1に供給する。また、ICチップ100は、ダイシングされたウエハとして複数形成され、ウエハの状態で、ICチップ載置台200の上に載置されている場合もある。あるいは、ICチップ100を、ICチップ載置台201の上を、図示を省略するベルトコンベア等の搬送機構により前方から後方に向かって移動と停止を繰り返しながら間欠的に搬送し、この搬送されるICチップ100を、供給機構202により1つずつ超音波振動接合装置1に供給するようにしても良い。
【0028】
供給機構202は、アーム203と、アーム203の回転動作を行う回転機構203Aと、アーム203の上下移動を行う上下駆動部204を有している。アーム203は、回転機構203Aを介して、上下駆動部204から下方に伸びるアーム支持ロッド205に取り付けられている。アーム駆動部204内には、アーム支持ロッド205を上下方向に駆動する図示を省略するモータ(あるいはエアシリンダまたは油圧シリンダ等)が備えられている。そして、このモータ(図示省略)により、アーム支持ロッド205が、上下方向に変位することにより、アーム203が上下方向に移動する。
【0029】
回転機構203Aは、内部に、アーム支持ロッド205に対して固定される不図示のモータと、回転軸が互いに直交する不図示の一対のかさ歯車とを備えている。一対のかさ歯車(不図示)のうち、一方のかさ歯車(不図示)はモータ(不図示)の出力軸に軸支され、他方のかさ歯車(不図示)はアーム203を軸支している。この回転機構203Aのモータ(不図示)が駆動されると、一対のかさ歯車(不図示)により、アーム203は、アーム支持ロッド205の周りに水平面内で回転すると共に、アーム203自身が、水平方向に沿う方向の軸を中心に自転する。
【0030】
アーム203の先端部には、ICチップ載置台201上に置かれるICチップ100を、空気の吸引により取り上げるピックアップ206が備えられている。ピックアップ206のICチップ載置台201に対向する下面部206Aには、図示を省略する空気吸引装置により空気の吸い込みが行われる図示を省略する吸引孔が形成されている。そして、この吸引孔(図示省略)による空気の吸い込み力によりICチップ100をICチップ載置台201から取り上げる構成になっている。
【0031】
以上のように構成される供給装置200は、次のようにして、ICチップ100を超音波振動接合装置1に供給する。
【0032】
先ず、ICチップ載置台201にあるICチップ100を、ピックアップ206の下面部206Aに吸引する。つまり、アーム駆動部204によりアーム支持ロッド205を下方に変位させ、ICチップ100に、ピックアップ206の下面部206Aを近接して対向させる。そして、ピックアップ206の下面部206Aに形成される吸引孔(図示省略)の空気の吸い込み力によりICチップ100を吸着する。
【0033】
続いて、ピックアップ206にICチップ100を吸着した状態で、アーム駆動部204によりアーム支持ロッド205を上方に変位させる。これに併せて、回転機構203Aより、アーム203を、アーム支持ロッド205の周りに水平方向に回転し、ピックアップ206を超音波振動接合装置1側に移動する。また、同時に、アーム203を、水平方向に沿う方向の軸を中心に自転し、ICチップ100を吸着したピックアップ206を上下反転させ、ICチップ100を吸着する下面部206Aを上方に向ける。
【0034】
本実施の形態においては、供給装置200は、超音波振動接合装置1に対して、左前方に位置するように配設され、ピックアップ206がICチップ100を吸着した位置から、アーム203を、アーム支持ロッド205の周りに水平方向に90度、超音波振動接合装置1側に回転し、アーム203を、水平方向に沿う方向の軸を中心に180度自転させ、ピックアップ206を上下反転すると、ICチップ100が、後述する保持部としての接合工具部3に対向するように構成されている。
【0035】
ICチップ載置台201は、容器P内に収容されているICチップ100が、一つずつ順に、ピックアップ206に吸引されるように、図示を省略する駆動機構により前後左右に移動するように構成されている。
【0036】
接合工具部3には、後述するように、ピックアップ206と同様に、空気の吸い込み孔である吸引孔3A(図2参照)が形成されている。そして、この吸引孔3Aにおいては、図示を省略する空気吸引装置により空気の吸い込みが行われ、この空気の吸引によりICチップ100を吸着する構成になっている。なお、接合工具部3は、空気の吸引によりICチップ100を吸着する構成の他、ICチップ100をチャック機構により把持する構成としたり、磁気力により着磁する構成とするものでもよい。
【0037】
ピックアップ206に吸着されたICチップ100を、接合工具部3に近接または接触させて対向させた状態で、ピックアップ206のICチップ100を吸着する吸引力を弱める。そうすると、接合工具部3の吸引力により、ICチップ100は、ピックアップ206から接合工具部3側に吸着させられる。
【0038】
ところで、ICチップ100は、フレキシブル回路基板101に接合する側が上方に向けられた状態で、ICチップ載置台201に置かれている。したがって、回転機構203Aによりピックアップ206を上下反転させることで、ピックアップ206に吸着されているICチップ100は、フレキシブル回路基板101に接合する側が下方に向くことになる。そして、この向きで、ICチップ100を接合工具部3に吸着すると、フレキシブル回路基板101に接合する側が、フレキシブル回路基板101側に向いていることになる。
【0039】
以上のようにして、供給装置200から超音波振動接合装置1に、ICチップ100が供給される。
【0040】
次に、超音波振動接合装置1の構成について簡単に説明する。
【0041】
超音波振動接合装置1は、図1に示されるように、フレキシブル回路基板101が載置されるフレキシブル回路基板載置台(以下、「FPC載置台」と記載する。)4、およびICチップ100をフレキシブル回路基板101に対して押圧するとともに振動させる押圧振動装置5を備えている。FPC載置台4と押圧振動装置5は、共に架台6に対して取り付けられている。押圧振動装置5については、図示を省略する支持部材により架台6に対して取り付けられている。
【0042】
FPC載置台4には、供給装置200の後側を通って、FPC載置台4の上面に供給される帯状を呈するフレキシブル回路基板101を、左方から右方に向かって移動と停止を繰り返しながら、間欠的に搬送する図示を省略する搬送装置が備えられている。
【0043】
FPC載置台4に載置されるフレキシブル回路基板101は、例えば、ポリミド等のフレキシブルな薄い樹脂フィルムを基材とするいわゆるCOF(Chip On Film or Chip On Flexible Circuit Board)用テープ上に、銅箔等により配線や電極端子等が形成されている。具体的には、図3に示すように、複数の同一の単位基板102が連続して形成されている帯状を呈している。そして各単位基板102には、表面に、予め所定の配線パターン102aと電極端子102bが形成されている。なお、フレキシブル回路基板101の両側には、搬送装置(図示省略)に備えつけられる送りギアに係合するパーフォレーション101aが形成されている。
【0044】
ICチップ100を単位基板102に重ねたときに、単位基板102の電極端子102bと、ICチップ100側の図示を省略する電極端子とが互いに接触して重なるように、電極端子102bとICチップ100側の電極端子(図示省略)は配設されている。そして、単位基板102の電極端子102bにICチップ100の電極端子(図示省略)が重なるようにした状態で、後述するように、ICチップ100を単位基板102に対して押圧しながら振動させることで、単位基板102の電極端子102bとICチップ100の電極端子(図示省略)とが互いに接合される。すなわち、ICチップ100がフレキシブル回路基板101に接合され、COFを構成する。
【0045】
押圧振動装置5は、振動装置2と昇降装置7を有している。
【0046】
振動装置2は、超音波実装ツール60等を備えている。この超音波実装ツール60は、超音波振動を発振する振動素子8を含む振動子9Aおよびホーン9Bからなる。振動素子8は、例えば、圧電セラミックス等の圧電素子に直流電圧を加えたときのピエゾ効果により超音波振動を発振する構成となっている。なお、振動素子8は、磁気歪効果により超音波振動を発振する構成のものでもよい。
【0047】
超音波実装ツール60は、全体として左右方向に長い四角柱体を呈し、鉄合金、銀合金、銅合金、チタン合金、アルミ合金等の材料から多孔質でなく緻密に形成される。ホーン9Bの長手方向の長さは、振動素子8から入力された振動が、ホーン9を伝播する際の波長の1.0倍の長さに設定されている。振動子9Aも、鉄合金、銀合金、銅合金、チタン合金、アルミ合金等の高密度の材料から形成される。振動子9Aの長手方向の長さは、振動素子8から発振される振動の0.5倍の長さに設定されている。すなわち、超音波実装ツール60は、全体として、振動素子8から発振される振動の1.5倍の長さに構成されている。
【0048】
振動子9Aとホーン9Bを多孔質でなく緻密に形成することにより、振動の減衰を抑え、ホーン9Bに振動を伝達することができる。また、ホーン9Bの長さを、この超音波実装ツール60を伝播する振動の波長の半波長の整数倍に設定することにより、ホーン9Bに入力された振動がホーン9B内で共振するため振動が増幅される。なお、ホーン9Bは、四角柱に限らず円柱体、あるいは6角柱体を呈するようにしてもよい。
【0049】
本実施の形態においては、ホーン9Bは、上述したように、振動素子8の振動の波長の1.0倍の長さ設定しているが、これに限らず0.5倍、1.5倍、2.0倍等に設定することができる。
【0050】
超音波実装ツール60は、ホーン9Bが、昇降装置7から下方に伸びる振動装置支持ロッド10に対してホーン支持腕11を介して取り付けられることにより、超音波振動接合装置1に対して支持されている。すなわち、ホーン支持腕11は、超音波実装ツール60を超音波振動接合装置1に対して支持する支持部材となる。ホーン支持腕11は、振動装置支持ロッド10の下端部において、振動装置支持ロッド10に固定されている。
【0051】
ホーン支持腕11は、上下方向に伸びる2本の支持柱11Aと支持柱11B、およびこの2本の支持柱11A,11Bを繋ぐ取付杆11Cを有する略コ字型を呈している。ホーン支持腕11は、取付杆11Cにより振動装置支持ロッド10に取り付けられる。ホーン9Bは、支持柱11A,11Bに対して取り付けられる。
【0052】
ホーン9Bの下側面には、供給装置200から供給されるICチップ100を保持する接合工具部3が備えられている。支持柱11A,11Bは、接合工具部3の左右方向の両側において、ホーン9Bに取り付けられている。
【0053】
接合工具部3と支持柱11A,11Bとの間には、2本のヒータ12A,12Bが備えられている。このヒータ12A,12Bは、前後方向に伸びる円柱体(図2(B)参照)を呈している。ヒータ12A,12Bは、ホーン9Bを前後方向に貫通するようにして配置されている。ホーン9Bを前後方向に貫通するヒータ12A,12Bは、ヒータ支持腕13に支持されている。このヒータ支持腕13は、ホーン支持腕11の取付杆11Cの下面に対して取り付けられている。
【0054】
昇降装置7は、図示を省略するモータ(あるいはエアシリンダまたは油圧シリンダ等)により、振動装置支持ロッド10を上下に移動することで、この振動装置支持ロッド10にホーン支持腕11を介して取り付けられる超音波実装ツール60を上下方向に昇降するように構成されている。超音波実装ツール60には、上述したように、振動子9A、ホーン9B、ヒータ12A,12B、ヒータ12A,12Bを支持するヒータ支持腕13等が取り付けられ、振動装置2が構成されている。したがって、振動装置支持ロッド10を上下に移動することは、振動装置2を上下方向に昇降することになる。
【0055】
次に、以上のように構成される超音波振動装置1により、ICチップ100をフレキシブル基板101に接合する工程について、その概略を説明する
【0056】
先ず、昇降装置7により超音波実装ツール60(振動装置2)を上方に移動させた状態で、供給装置200から、接合工具部3にICチップ100の供給を受ける。そして、供給されたICチップ100を、吸引孔3Aの空気の吸い込みにより吸引し、接合工具部3に保持する。続いて、昇降装置7の振動装置支持ロッド10を下方に下げて超音波実装ツール60(振動装置2)を下方に移動させ、FPC載置台4上に載置されるフレキシブル回路基板101の単位基板102の電極102bに、ICチップ100の電極部(図示省略)を当接させる。なお、フレキシブル回路基板101は、超音波実装ツール60(振動装置2)を下方に移動させたときに、ICチップ100の電極部(図示省略)に、単位基板102の電極端子102bが当接するように、その配設位置が設定されている。なお、昇降装置7により、ICチップ100を単位基板102に対して押圧するのに換えて、昇降装置7とは別に、ICチップ100を単位基板102に対して押圧する押圧機構を備えてもよい。押圧機構には、例えば、エアシリンダ等により構成する。
【0057】
ICチップ100の電極部(図示省略)と単位基板102の電極端子102bとが当接した状態で、昇降装置7は、ICチップ100を単位基板102に対して軽く押圧し、ICチップ100から単位基板102に対して押圧力を作用させる。そして、振動素子8により超音波実装ツール60を振動させ、ICチップ100を単位基板102に対して左右方向に往復振動させる。このように、ICチップ100の電極部(図示省略)と単位基板102の電極端子102bとの間に押圧力を作用させている状態で、ICチップ100を単位基板102に対して左右方向に往復振動させることにより、ICチップ100側の電極部(図示省略)と単位基板102側の電極端子102bの間に摩擦が発生する。この摩擦により、ICチップ100側の電極部(図示省略)と単位基板102側の電極端子102bとが固相接合する。
【0058】
上述のICチップ100側の電極部(図示省略)と単位基板102側の電極端子102bとを摩擦することに併せて、ヒータ12A,12Bにより、摩擦部分を加熱することにより、ICチップ100側の電極部(図示省略)と単位基板102側の電極端子102bとが接合する速さが増し、また、接合強度が向上する。
【0059】
そして、ICチップ100の単位基板102への接合が完了した後、接合工具部3へのICチップ100の吸引を停止し、昇降装置7を駆動して超音波実装ツール60(振動装置2)を上方に移動させる。ICチップ100は、単位基板102に接合されているため、単位基板102側に残る。すなわち、単位基板102へのICチップ100の接合が完了する。
【0060】
次いで、フレキシブル回路基板101を単位基板102の長さ102L分だけ後方に搬送する。この搬送により、先ほどICチップ100が接合された単位基板102の前方側の隣に在る単位基板102が、接合工具部3の真下の位置に配設されることになる。この後、上述した、ICチップ100をフレキシブル基板101に接合する工程を繰り返し、フレキシブル回路基板101の単位基板102上に順次ICチップ100を接合していく。そして、各単位基板102にICチップ100が接合されたフレキシブル回路基板101から、ICチップ100が接合された単位基板102を切り出す。この切り出された単位基板102はそれぞれ、1つの電気製品等の回路部品として使用がされることになる。
【0061】
次に、図2を参照しながら、振動装置2の構成についてさらに詳しく説明する。
【0062】
図2(A)は、振動装置2を前面から見た正面図であり、図2(B)は、振動装置2を下方から見た底面図である。また、図2(C)は、振動子9A及びホーン9Bすなわち超音波実装ツール60を伝播する振動について、超音波実装ツール60の左右方向の位置と振幅との関係を示す図である。図2(C)の横軸は、超音波実装ツール60の左右方向の位置に対応し、縦軸は、各位置における振幅を示す。
【0063】
振動素子8によって発振し、ホーン9Bに入力された振動は、ホーン9Bの左右方向へ振動する縦波としてホーン9Bを伝播する。図2(C)において振幅を横軸(位置)方向に対して直交する方向に示しているが、この振幅は、ホーン9Bの各位置における左右方向の変位量(振幅)に相当する。したがって、振幅の大きな位置に対応するホーン9Bの位置では左右方向の変位量が大きく、また振幅の小さな位置に対応するホーン9Bの位置では左右方向の変位量が小さい。振幅が最大となる部分、すなわち、図2(C)の波形の山の頂部および谷部となる腹部Mに対応するホーン9Bの位置は左右方向の変位量が最も大きい。逆に、振幅が0となる部分、すなわち、図2(C)の波形が横軸と交差する部分である節部Sに対応するホーン9Bの位置は左右方向の変位量が最も小さい。
【0064】
本実施の形態に示すホーン9Bは、ホーン9Bを伝播する振動の波長に対して1.0倍の長さに設定されている。例えば、振動素子8が40kHzの超音波振動を発振し、ホーン9Bが、鉄合金(音波の伝達速度約5000m/s)から形成される場合には、ホーン9Bの左右方向の長さは、概ね120mmとなる。このように、ホーン9Bの長さを、ホーン9Bを伝播する振動の半波長の整数倍とすることで、ホーン9Bを伝播する振動が共振し、振動が増幅される。なお、ホーン9Bの太さは、10〜50mm四方の太さに設定することで、ホーン9Bが太くなり過ぎないようにしながら、すなわち、振動装置2の大型化を抑えながら、振動の伝播の効率を良好なものとすることができる。本実施の形態では、16mm四方に設定されている。
【0065】
本実施の形態においては、振動素子8は、振動子9Aの左端から1/4波長の長さの範囲に配設されている。振動素子8から発振された振動は、振動子9Aを介してホーン9Bに伝達され、ホーン9B内で共振して図2(C)に示す振幅の振動として、ホーン9Bを伝播する。
【0066】
接合工具部3は、ホーン9Bの左端から0.5波長の距離の位置に配設されている。接合工具部3は、下方に突出する台座部3Bと、この台座部3Bを通ってホーン9Bを上下に貫通する吸引孔3Aを備えている。台座部3Bの下面部は水平面に平行な平面部3Cに形成されている。
【0067】
吸引孔3Aは、図示を省略する空気吸引装置に繋がり、下方から上方に向かって空気が吸い込まれるように吸引が行われる。したがって、供給装置200からICチップ100が接合工具部3に供給されると、吸引孔3Aの空気の吸い込み力により、供給されたICチップ100を台座部3Bの平面部3Cに吸着して保持する。
【0068】
ホーン9Bは、左端から1/4波長と3/4波長の位置において、ホーン支持腕11の支持柱11A,11Bに対してねじ14A,14Bにより取り付けられる。ねじ14A,14Bは、ホーン9Bを上下方向に貫通するねじ挿通孔15A,15Bに通され、先端側の一部がホーン9Bの上面から突出する。そして、ホーン9Bの上面から突出したねじ14A,14Bの先端側の一部に支持柱11A,11Bがそれぞれねじ結合されることで、ホーン9Bがホーン支持腕11に取り付けられる。すなわち、超音波実装ツール60が、ホーン支持腕11に取り付けられる。
【0069】
ホーン支持腕11の支持柱11A,11Bがホーン9Bに取り付けられる位置であるホーン9Bの左端から1/4波長と3/4波長の位置は、振動の節部Sに対応する位置である。この節部は上述したように左右方向の振幅が最小になる位置であり、この節部Sに対応するホーン9Bの位置の変位量は他の節部Sに対応していない位置(腹部Mおよび腹部Mと節部Sの間)に比べて小さい。したがって、この節部Sに対応する位置において、ホーン支持腕11がホーン9Bを支持することで、ホーン9Bの振動がホーン支持腕11側へ伝わる量を小さくすることができる。
【0070】
これに対して、例えば、腹部Mに対応する部位において、ホーン支持腕11がホーン9Bを支持した場合には、ホーン支持腕11が腹部Mの左右方向への振動とともに振動する。そのため、ホーン9Bの振動が超音波振動接合装置1側に伝わり、超音波振動接合装置1の全体が振動してしまう問題が生じる。したがって、節部Sに対応する位置において、ホーン9Bをホーン支持腕11で支持することにより、このような問題の発生を抑えることができる。
【0071】
吸引孔3Aとねじ挿通孔15Aとの間、および吸引孔3Aとねじ挿通孔15Bとの間には、それぞれ、ホーン9Bを前後方向に貫通し、ヒータ12A,12Bを挿通するヒータ挿通孔16A,16Bが形成されている。ヒータ挿通孔16Aは、ねじ挿通孔15Aと吸引孔3Aとの略中央に形成され、また、ヒータ挿通孔16Bについても、ねじ挿通孔15Bと吸引孔3Aとの略中央に形成されている。
【0072】
ヒータ12A,12Bは、それぞれ、ヒータ挿通孔16A,16Bに通され、ヒータ支持腕13により支持されている。なお、ヒータ12A,12Bは、例えば、図示を省略する電源部に接続される導電線17A,17Bにより通電され発熱するニクロム線等の発熱体(図示省略)をセラミックスの内部に埋め込んだセラミックスヒータとする。なお、ヒータ12A,12Bは、金属シース(パイプ)の中にニクロム線等の発熱体を配置しその周囲を絶縁物(酸化マグネシウム等)で固めたシーズヒータやカートリッジヒータ、あるいは発熱体の周囲をシリコンゴムで被覆した構造のシリコンヒータを用いてもよい。
【0073】
ヒータ支持腕13は、このヒータ支持腕13をホーン支持腕11に対して固定する取付杆13Aと、この取付杆13Aの左右に設けられるヒータ支持板13B,13Cから構成される。ヒータ支持板13B,13Cは、それぞれ、取付杆13Aの前後に2つずつ、前後一対として設けられている。そして、ヒータ支持板13B,13Cは、それぞれ、下方の先端部がホーン9Bの前後に位置している。すなわち、ホーン9Bは、前後一対のヒータ支持板13Bの間と、同じく前後一対のヒータ支持板13Cの間に配設されている。
【0074】
ホーン9Bの前後に配設されるヒータ支持板13Bには、ホーン9Bに形成されたヒータ挿通孔16Aに対向する位置にヒータ支持孔13Dが形成されている。また、同じくホーン9Bの前後に配設されるヒータ支持板13Cにも、ホーン9Bに形成されたヒータ挿通孔16Bに対向する位置にヒータ支持孔13Eが形成されている。
【0075】
そして、ヒータ12Aは、前後部分をヒータ支持孔13Dに挿通されヒータ支持板13Bに支持された状態で、ヒータ挿通孔16Aに挿通されている。また、ヒータ12Bも、前後部分をヒータ支持孔13Eに挿通されヒータ支持板13Cに支持された状態で、ヒータ挿通孔16Bに挿通されている。なお、ヒータ12Aはヒータ支持孔13Dに対して耐熱接着剤等により固定され、ヒータ12Aが、ヒータ支持孔13Dから抜け落ちないように構成されている。また、ヒータ12Bについても、ヒータ支持孔13Eに対して耐熱接着剤等により固定され、ヒータ12Bが、ヒータ支持孔13Eから抜け落ちないように構成されている。なお、ヒータ12A,12Bを支持するヒータ支持孔13D,13Eは、ヒータ12A,12Bが抜け落ちない構造であれば、貫通孔としなくてもよい。
【0076】
ホーン9Bに形成されたヒータ挿通孔16A,16Bは、ここに挿通されるヒータ12A,12Bに対して隙間が形成される大きさに形成されている。隙間の大きさは、ヒータ挿通孔16A,16Bが形成される位置におけるホーン9Bの左右方向の振動の大きさ、すなわち変位量以上に形成されている。
【0077】
ヒータ12A,12Bを支持するヒータ支持腕13は、超音波振動接合装置1に対して固定されるホーン支持腕11に対して固定されている。したがって、ヒータ12A,12Bは、超音波振動接合装置1に対して固定されていることになる。一方、ヒータ挿通孔16A,16Bが形成される位置は、ホーン9Bの節部Sではないため、超音波振動接合装置1に対して左右方向に振動する。
【0078】
したがって、ヒータ12A,12Bとヒータ挿通孔16A,16Bとの間に隙間がない場合には、ヒータ12A,12Bに、ホーン9Bとヒータ支持腕13との間で左右方向に押し曲げる応力が作用してしまい、ヒータ12A,12Bが折れてしまう等の損傷を受ける虞がある。
【0079】
これに対して、上述のように、ヒータ12A,12Bとヒータ挿通孔16A,16Bとの間に隙間を設けることにより、ホーン9Bが左右方向に振動してもヒータ12A,12Bに、ヒータ12A,12Bを押し曲げる応力が作用してしまうことを防ぐことができる。
【0080】
ヒータ挿通孔16A,16Bと、ここに挿通されるヒータ12A,12Bとの隙間の大きさは、上記のように、ヒータ挿通孔16A,16B部分におけるホーン9Bの左右方向の変位量以上に形成した場合には、振動するホーン9Bがヒータ12A,12Bに衝突することがない。そのため、ホーン9Bがヒータ12A,12Bを押し曲げる応力を完全に無くすことができる。
【0081】
これに対し、ホーン9Bとヒータ支持腕13との間に作用するヒータ12A,12Bを押し曲げる応力が、ヒータ12A,12Bが損傷しない程度であれば、ヒータ挿通孔16A,16Bとヒータ12A,12Bとの隙間は、ヒータ挿通孔16A,16B部分におけるホーン9Bの左右方向の変位量未満とし、ホーン9Bがヒータ12A,12Bに多少衝突してもよい。ヒータ12A,12Bとヒータ挿通孔16A,16Bとの間にまったく隙間を設けない場合には、ホーン9Bの振動がそのままヒータ12A,12Bに及ぶことになり、ヒータ12A,12Bに大きな押し曲げる応力が作用することになるが、隙間を形成することで、この押し曲げ応力を軽減することができる。
【0082】
ヒータ挿通孔16A,16Bは、吸引孔3Aに対して左右方向であって、吸引孔3Aとねじ挿通孔15A,15Bとの間の略中央に形成されている。ヒータ挿通孔16A,16Bを吸引孔3Aに対して左右方向、すなわち、ホーン9Bの長さ方向に配設することにより、ヒータ挿通孔16A,16Bを、吸引孔3Aから離れた位置に形成することができる。ヒータ挿通孔16A,16Bを、吸引孔3Aから離れた位置に形成することにより、吸引孔3Aおよびヒータ挿通孔16A,16Bをホーン9Bに形成する孔開け加工の作業が容易になる。
【0083】
すなわち、ヒータ挿通孔16A,16Bと吸引孔3Aとを互いに上下方向に配設した場合には、ホーン9Bの太さ(本実施の形態においては16mm)の制限を受け、ヒータ挿通孔16A,16Bと吸引孔3Aとの間の間隔を広く確保することができない。そのため、ホーン9Bの太さ内に吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bを配設するためには、吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bとが互いに干渉しないように、相互に迂回させる等の複雑な構造とすることが余儀なくされる。
【0084】
これに対し、ヒータ挿通孔16A,16Bを吸引孔3Aの左右に配設する構成にした場合には、吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bとの間の間隔L1,L1を広く確保することができる。したがって、吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bとを相互に迂回するような複雑な構成を採る必要がなく、ホーン9Bの構造を簡単なものとすることができる。間隔L1,L1を広く確保することにより、吸引孔3Aおよびヒータ挿通孔16A,16Bを形成する孔開け加工の作業が行い易くなる。つまり、間隔L1,L1が狭いときには、吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bの間の各隔壁18,18の厚さが薄くなり、孔開け作業に際し、隔壁18,18が割れてしまう虞がある。ヒータ挿通孔16A,16Bを吸引孔3Aの左右に配設することで、隔壁18,18の厚さを厚くすることができ、孔開け加工作業が容易になる。
【0085】
また、ヒータ挿通孔16A,16Bは、ねじ挿通孔15A,15Bに対しても、左右方に配設している。そのため、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bとの間の間隔L2,L2を広く確保することができる。すなわち、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bと間の隔壁19,19の厚さを厚くすることができる。したがって、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bを形成する孔開け加工の作業が容易になる。
【0086】
間隔L2,L2を広く確保し隔壁19,19を厚くすることにより、上記のように、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bを形成する孔開け加工の作業が容易になるという効果に加えて、さらに、次の効果がある。
【0087】
ホーン9Bのねじ挿通孔15A,15Bが形成される節部Sにおいては、ホーン9Bの振動による応力が強く作用する。したがって、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bとの間隔L2,L2を狭くして、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bとの間の隔壁19,19を薄くすると、振動により作用する応力により隔壁19,19が割れて破損してしまう虞がある。間隔L2,L2を広く確保し隔壁19を厚くすることにより、振動による応力により隔壁19が割れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0088】
本実施の形態においては、ヒータ挿通孔16A,16Bを、ねじ挿通孔15A,15Bと吸引孔3Aの略中央に形成する例を示している。このように、ヒータ挿通孔16A,16Bを、ねじ挿通孔15A,15Bと吸引孔3Aの略中央に配設することにより、ヒータ挿通孔16A,16B、ねじ挿通孔15A,15Bおよび吸引孔3Aのそれぞれの孔開け加工の作業を容易に行うことができる。つまり、ヒータ挿通孔16A,16Bをねじ挿通孔15A,15Bあるいは吸引孔3Aのいずれかに偏った位置に形成すると、間隔L1と間隔L2のうち狭い方の孔開け加工の作業の困難性が増す。したがって、例えば、偏りの程度により加工精度を変える必要性が生じることがある。しかしながら、ヒータ挿通孔16A,16Bを、ねじ挿通孔15A,15Bと吸引孔3Aの略中央に形成することにより、各孔を同じ加工精度で形成することができる。
【0089】
しかしながら、ヒータ挿通孔16A,16Bを形成する位置は、ねじ挿通孔15A,15Bと吸引孔3Aの略中央には限らない。表1に、ヒータ挿通孔16A,16Bと吸引孔3Aとの間隔L1,L1に対する孔開け加工のし易さを観点とした適正さを示す。また、表2に、ヒータ挿通孔16A,16Bとねじ挿通孔15A,15Bとの間隔L2,L2に対する孔開け加工のし易さと、隔壁19,19に作用するホーン9Bの振動による応力に対する強度を観点とした適正さを示す。
【0090】
【表1】

【表2】

【0091】
なお、振動素子8の振動周波数が40kHzであり、ホーン9Bが鉄合金の場合は、音波の伝達速度は約5000m/sであるので、1/100波長の長さは、約1.25mm、1/40波長の長さは、約3.125mm、1/20波長の長さは、約6.25mmとなる。
【0092】
表1および表2は、上記の観点に対する適正の程度を○、△、×で表わしている。○印は適正であり、孔開け加工がし易く、隔壁19に作用するホーン9Bの振動による応力に対する強度が確保できることを示す。×印は不適性であり、孔開け加工が難しく、また、隔壁19に作用するホーン9Bの振動による応力に対する強度が確保できないことを示す。△印はなんとか孔開け加工をすることができ、また、ホーン9Bの振動による応力に対する強度も通常の使用状況では問題がない程度を示す。
【0093】
表1および表2から、隔壁18と隔壁19との厚さ、すなわち、間隔L1と間隔L2を、それぞれ1/20波長以上の長さ(厚さ)になるように、ねじ挿通孔15A,15B、ヒータ挿通孔16A,16Bおよび吸引孔3Aを形成すると、孔開け加工を容易に行うことができ、さらに、隔壁19に作用する応力に対する強度を確保することができる。なお、具体的には、間隔L1,L2は、ホーン9Bが鉄合金の場合は、それぞれ、3mm以上離れていることが好ましく、6mm以上離れていることがより好ましい。
【0094】
なお、孔開け加工を適正に行える間隔L1、また、孔開け加工を適正に行えると共に隔壁19に作用する応力に対する強度が確保できる間隔L2は、ホーン9Bの材質、ホーン9Bを伝播する振動の周波数等により適宜に設定される。
【0095】
ところで、上述したように、ヒータ挿通孔16A,16Bを、吸引孔3Aに対して左右方向であって、吸引孔3Aとねじ挿通孔15A,15Bとの間に形成することで、吸引孔3Aとヒータ挿通孔16A,16Bとの間の間隔を広く確保することができる。そのため、ヒータ12A,12Bの大型化を図ることもできる。
【0096】
(第2の実施の形態)
図4および図5に、本発明の第2の実施の形態に係る超音波振動接合装置30を示す。
【0097】
第1の実施の形態に係る超音波振動接合装置1のホーン9Bは、ホーン9Bを伝播する振動の波長の1.0倍の長さに設定しているのに対し、第2の実施の形態に係る超音波振動接合装置30のホーン31Bは、波長の0.5倍の長さに設定されている。
【0098】
図4および図5において、第1の実施の形態と同様の部材および構成については、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略することとする。
【0099】
図4は、超音波振動接合装置30を用いて、接合対象物であるICチップ100を被接合対象物であるフレキシブル基板101に接合する工程の概略を示す図である。図5は、超音波振動接合装置30における振動装置32の構成を示す図である。図5(A)は、振動装置32を前面から見た正面図であり、図5(B)は、振動装置32を下方から見た底面図である。また、図5(C)は、ホーン31Bを伝播する振動について、ホーン31Bの左右方向の位置と振幅との関係を示す図である。図5(C)の横軸は、ホーン31Bの左右方向の位置に対応し、縦軸は、各位置における振幅を示す。
【0100】
上述したように、超音波振動接合装置30においては、ホーン31Bの左右方向の長さが、ホーン31Bを伝播する振動の波長の0.5倍の長さに設定されている。すなわち、ホーン31Bが鉄合金から形成され、振動素子8が40kHzの超音波振動を発振するので、ホーン31Bの長さは、概ね62.5mmに設定されている。また、ホーン31Bの太さは約16mm四方に設定されている。この第2の実施の形態においては、振動素子8、ホーン31B、および振動素子8を保持し、振動素子8で発生した振動をホーン31Bに伝達する振動子31Aを備えて超音波実装ツール61が構成されている。
【0101】
第1の実施の形態の超音波振動接合装置1における超音波実装ツール60は、ホーン9Bが接合工具部3を挟んで左右の両側において、ホーン支持腕11により超音波振動接合装置1に対して支持されていた。超音波実装ツール61は、ホーン31Bが、第1の実施の形態のホーン9Bよりの左右方向の長さが短いので重量が軽い。そのため、超音波実装ツール61は、ホーン31Bの左端から1/4波長の位置にある節部Sの一個所だけで、振動装置支持ロッド10に対して直接支持されている。なお、接合工具部3は、ホーン31Bの左端の位置にある腹部Mの位置配設されている。
【0102】
ホーン31Bには、振動装置支持ロッド10に支持される位置において、ねじ33により振動装置支持ロッド10に対して取り付けられている。ねじ33は、ホーン31Bを上下方向に貫通するねじ挿通孔34に通され、先端側の一部がホーン31Bの上面から突出する。そして、超音波実装ツール61は、ホーン31Bの上面から突出したねじ33の先端側の一部が、振動装置支持ロッド10に対してねじ結合することで、振動装置支持ロッド10に取り付けられる。なお、ホーン31Bの節部Sに対応する部位において、超音波実装ツール61を振動装置支持ロッド10に対して支持することで、ホーン31Bの振動が振動装置支持ロッド10側へ伝わる量が小さくなる。
【0103】
ヒータ12A,12Bを支持するヒータ支持腕13は、支持杆13Aの右側の側端面において、振動装置支持ロッド10に対して直接取り付けられている。
【0104】
この第2の実施の形態における超音波振動接合装置30においては、ヒータ挿通孔16Aの左側には、第1の実施の形態におけるねじ挿通孔15Aに相当する孔はない。そのため、ヒータ挿通孔16Aは、吸引孔3Aとの間隔、すなわち間隔L3が1/20波長以上になるように配設する。一方、ヒータ挿入孔16Bは、吸引孔3Aとねじ挿通孔34に対してそれぞれ1/20波長以上となるように配設する。すなわち、間隔L1とL2を1/20波長以上になるように配設する。このように、ヒータ挿通孔16A,16B、吸引孔3A、ねじ挿通孔34を配設することにより、各孔の孔開け加工の作業を容易に行うことができる。また、隔壁19に作用するホーン9Bの振動による応力に対する強度を確保することができる。
【0105】
上記の各実施の形態に示す超音波振動接合装置1および超音波振動接合装置30においては、吸引孔3Aを挟んだ両側の節部Sの内側、すなわち、吸引孔3Aを挟んで1/4波長以内に、ねじ挿通孔15A,15B、ねじ挿通孔34、およびヒータ挿通孔16A,16Bを形成している。そのため、ホーン9B、およびホーン31Bを支持する位置とヒータ12A,12Bを支持する位置を接合工具部3側に偏倚させることとになり、超音波振動接合装置1、および超音波振動接合装置30の小型化を図ることができる。
【0106】
上述した各実施の形態においては、接合対象物をICチップ100としたが、接合対象物は、ICチップに限らず、ICチップ以外の抵抗素子、発光等の電子部品でもよい。また、被接合対象物を、ICチップ100が接合されCOFとなるフレキシブル基板101としたが、フレキシブル基板101はCOFを構成するものに限られない。また、フレキシブル基板101の他に、エボキシ樹脂等により構成されるプリント基板を被接合対象物としてもよい。また、接合対象物と被接合対象物は、上記のように、電子部品とフレキシブル基板あるいはプリント配線板に限らず、例えば、金属部品同士であったり、あるいはプラスチック部品同士であってもよい。
【0107】
(変形例1)
図6に、本発明の第1の実施の形態に係る超音波振動接合装置1における振動装置2の部分を変形した振動装置62の構成を示す。
【0108】
図1および図2に示す第1の実施の形態に係る超音波振動接合装置1と同様の部材および構成については、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略することとする。振動装置2と比べて、主に、超音波実装ツール60を振動装置支持ロッド10に支持する構造およびヒータ12A,12Bを支持する構造が異なる。
【0109】
超音波実装ツール60は、支持部材としてのホーン支持腕63と2本の支持ねじ64,65により、振動装置支持ロッド10に対して支持されている。ホーン支持腕63は、左右方向に長い直方体を呈し、左右の2箇所に前後に貫通する孔部66,67が形成されている。なお、ホーン支持腕11は、振動装置支持ロッド10の下端部において、振動装置支持ロッド10に固定されている。
【0110】
孔部66,67は、略直方体状に、ホーン支持腕63を前後方向に貫通している。そして、ホーン支持腕63の孔部66,67が形成されている上下の部分は、肉薄の薄板部68,69となっている。
【0111】
ホーン9Bの左端から1/4波長と3/4波長の節部Sの位置には、支持ねじ64,65がねじ結合するネジ孔70,71が形成されている。ホーン支持腕63の孔部66の左側と孔部67の右側には、それぞれ、ホーン9Bのネジ孔70,71に対向する位置に、支持ねじ64,65が挿通されるネジ挿通孔72,73が形成されている。したがって、支持ねじ64,65をホーン支持腕63の上側からホーン9B側に通し、支持ねじ64,65を、それぞれ、ネジ孔70,71にねじ結合することにより、超音波実装ツール60が、支持ねじ64,65およびホーン支持腕63を介して、振動装置支持ロッド10に対して支持される。
【0112】
ネジ孔70,71を上記のように配設することにより、ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71と間の隔壁(図2の隔壁19,19に相当)の厚さを厚くすることができる。したがって、ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71を形成する孔開け加工の作業が容易になる。
【0113】
ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71と間の隔壁を厚くすることにより、上記のように、ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71を形成する孔開け加工の作業が容易になるという効果に加えて、さらに、次の効果がある。
【0114】
ホーン9Bのネジ孔70,71が形成される節部Sにおいては、ホーン9Bの振動による応力が強く作用する。したがって、ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71との間隔を狭くして、ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71との間の隔壁を薄くすると、振動により作用する応力により該隔壁が割れて破損してしまう虞がある。ヒータ挿通孔16A,16Bとネジ孔70,71との間隔を広く確保し該隔壁を厚くすることにより、振動による応力により該隔壁が割れて破損してしまうことを防ぐことができる。
【0115】
ホーン9Bの接合工具部3の反対側の上面には、接合工具部3と対向する位置に、突起部74が形成されている。突起部74の上面は矩形の平面に形成されている。突起部74の上面の前後方向の幅は、ホーン9Bの前後方向の幅と同一になっている。すなわち、突起部74の上面の前後方向の幅は、ホーン9Bの前後方向の幅一杯に形成されている。
【0116】
突起部74とホーン支持腕63との間には、軸受部材75が配設されている。この接合工具受体75は、ホーン支持腕63に対して固定され、突起部74に対しては、非固定になっている。超音波実装ツール60は、突起部74とホーン支持腕63との間に接合工具受体75を挟み込んだ状態で、ホーン支持腕11に対して、支持ねじ64,65により支持される。
【0117】
接合工具受体75は、直方体を呈し、突起部74の上面に当接する面は、突起部74の矩形の上面と同一形状であり、突起部74の上面と接合工具受体75とは、互いに全面に亘って当接している。
【0118】
貫通孔66,67は、上下方向において、接合工具受体75に重ならない位置に形成されている。すなわち、貫通孔66,67は、接合工具受体75の左右の上方に形成されている。また、上述したように、ホーン支持腕63の貫通孔66,67の上下は薄板部68,69になっている。そのため、ホーン支持腕63と突起部74との間に、接合工具受体75が挟み込まれた状態で、支持ねじ64,65をネジ孔70,71に締め込むと、薄板部68,69は、中央側寄りから外側(ホーン支持腕63の左右端側)に向かって下方に撓む。すなわち、薄板部68,69は、板ばねの役目を果たす。そのため、ホーン支持腕63と接合工具受体75の上面との当接部に作用する力が、該当接部の左右側だけに集中してしまうことを防ぐことができる。したがって、昇降装置7が、接合工具部3に保持されたICチップ100を、単位基板102に押圧する際、昇降装置7等の押圧力が、ホーン支持腕63から接合工具受体75に確実に伝わる。そして、この押圧力は、突起部74に伝わり、突起部74の下方に位置する接合工具部3が、ICチップ100を、単位基板102に対して押圧する。
【0119】
また、薄板部68,69が板ばねの役目を果たすため、支持ねじ64,65のネジ孔70,71への締め込み力が、左右で異なったとしても、ホーン支持腕63と接合工具受体75の上面との当接部に作用する。その結果、接合工具受体75を、ホーン支持腕63と突起部74との間に挟み込む力の左右方向における強さの均一化が図られる。
【0120】
また、突起部74を設けることにより、昇降装置7等の押圧力を突起部74で集中して受けることができる。そして、この突起部74は、接合工具部3と対向する位置に設けられているため、接合工具部3に対して、押圧力が効率よく伝達される。突起部74と接合工具受体75とは、上述したように非固定であるので、振動素子8の発振する振動によりホーン9Aが左右方向に振動するときには、ホーン9Bは、突起部74の部分において、接合工具受体75に対して摺動する。
【0121】
なお、振動装置63においては、接合工具部3に、前後方向に長い矩形の平面部3Dを有する台座部3Eが設けられ、この台座部3Eの平面部3DにICチップ100が保持される。 平面部3Dは前後方向に長いため、前後方向に長いICチップ100を保持するのに適する。
【0122】
吸引孔3Aは、接合工具受体75およびホーン支持腕63を上下に貫通し、振動装置支持ロッド10の中を通り、振動装置支持ロッド10側面に貫けている。側面に貫けた吸引孔3Aに、図示を省略する空気吸引装置が接続される。
【0123】
ホーン9Bの前後には、ヒータ支持板76が備えられている。このヒータ支持板76は、ねじ78によりホーン支持腕63に取り付けられている。ヒータ支持板76には、ヒータ挿通孔16A,16Bに対向する位置に、ヒータ支持孔77が形成されている。このヒータ支持孔77にヒータ12A,12Bが通され、支持されている。ヒータ12A,12Bと、ヒータ支持板76とは、ヒータ12Aとヒータ支持孔77との間、およびヒータ12Bとヒータ支持孔77との間を耐熱接着剤等により固定している。ヒータ支持孔をヒータが抜け落ちない構造とし、ヒータを接着剤等により固定しなくても良い。
【0124】
接合工具部3の右端部には、熱電対79が備えられ、接合工具部3の温度を検出する。この熱電対79により検出された温度に基づき、ヒータ12A,12Bの温度制御を行う。熱電対79を、接合対象物であるICチップ100と被接合対象物であるフレキシブル基板101の接合部の近傍である接合工具部3に備えることにより、該接合部の接合温度の検出精度を高くすることができる。
【0125】
(変形例2)
図7に、本発明の第2の実施の形態に係る超音波振動接合装置30における振動装置32の部分を変形した振動装置80の構成を示す。
【0126】
図4および図5に示す第2の実施の形態に係る超音波振動接合装置30と同様の部材および構成については、同一の符号を付し、その説明を省略または簡略することとする。
【0127】
振動装置32と比べて、主に、超音波実装ツール61を振動装置支持ロッド10に支持する構造およびヒータ81のホーン31Bへの挿通位置が異なる。
【0128】
超音波実装ツール61は、支持部材としてのホーン支持腕82と支持ねじ83により、振動装置支持ロッド10に対して支持されている。ホーン支持腕82は、振動装置支持ロッド10の下端部において固定され、振動装置支持ロッド10の右側に延設されている。
【0129】
ホーン31Bには、ホーン31Bの左端から1/4波長の位置である節部Sの位置に、支持ねじ83がねじ結合するねじ孔84が形成されている。ホーン支持腕82の略中央部には、ホーン31Bのねじ孔84に対向する位置に、支持ねじ83が挿通されるねじ挿通孔85が形成されている。したがって、支持ねじ83をホーン支持腕82の上側からホーン31B側に通し、支持ねじをねじ84にねじ結合することにより、超音波実装ツール61が、支持ねじ83およびホーン支持腕82を介して振動装置支持ロッド10に対して支持される。
【0130】
ホーン31Bの接合工具部3の反対側の上面には、接合工具部3と対向する位置に、突起部86が形成されている。突起部86の上面は矩形の平面に形成されている。突起部86の上面の前後方向の幅は、ホーン31Bの前後方向の幅と同一になっている。すなわち、突起部86の上面の前後方向の幅は、ホーン31Bの前後方向の幅一杯に形成されている。
【0131】
また、突起部86とホーン支持腕82との間には、軸受部材87が配設されている。この接合工具受体87は、ホーン支持腕82に対して固定され、突起部86に対しては、非固定になっている。超音波実装ツール61は、突起部86とホーン支持腕82との間に軸受部材87を挟み込んだ状態で、ホーン支持腕82に対して、支持ねじ83により支持される。
【0132】
突起部86と接合工具受体87とは、上述したように非固定であるので、振動素子8の発振する振動によりホーン31Bが左右方向に振動するときには、ホーン31Bは、突起部86の部分において、接合工具受体87に対して摺動する。
【0133】
なお、振動装置80においては、接合工具部3に、前後方向に長い矩形の平面部3Dを有する台座部3Eが設けられ、この台座部3Eの平面部3DにICチップ100が保持される。 平面部3Dは前後方向に長いため、前後方向に長いICチップ100を保持するのに適する。
【0134】
吸引孔3Aは、接合工具受体87およびホーン支持腕82を上下に貫通し、振動装置支持ロッド10の中を通り、振動装置支持ロッド10の側面に貫けている。側面に抜けた吸引孔3Aに、図示を省略する空気吸引装置が接続されている。
【0135】
ホーン31Bには、ねじ孔84を挟む吸引孔3Aの反対側に、ヒータ挿通孔89が形成される。ホーン支持腕82には、ヒータ支持板90が設けられる。ヒータ支持板90は、ホーン31Bの前後に位置するようにホーン支持腕82に設けられる。ヒータ81は、ヒータ挿通孔89に挿通された状態で、ヒータ支持板90に形成されるヒータ支持孔91に通され、ヒータ支持板90に支持される。ヒータ81とヒータ支持板90とは、ヒータ81とヒータ支持孔91との間を耐熱接着剤等により固定している。
【0136】
ヒータ挿通孔89をねじ孔84を挟んで吸引孔3Aの反対側、すなわち、ホーン31Bの振動の自由端側に形成したため、吸引孔3A、ねじ孔84、ヒータ挿通孔89の相互の間隔を十分確保することができる。超音波振動接合装置30をこのような構成にすることにより、保持部3とヒータ81をホーン31Bの構造が複雑にならないように配設することができる。そのため、各孔の孔開け加工の作業を容易に行うことができ、また、各孔の間の隔壁に作用する、ホーン31Bの振動による応力に対する強度を確保することができる。
【0137】
接合工具部3の右端部には、上述の変形例1と同様に熱電対79が備えられ、接合工具部3の温度を検出する。この熱電対79により検出された温度に基づき、ヒータ91の温度制御を行う。熱電対79を、接合対象物であるICチップ100と被接合対象物であるフレキシブル基板101の接合部の近傍である接合工具部3に備えることにより、該接合部の接合温度の検出精度を高くすることができる。
【0138】
ヒータ12A,12B,81の形状を円筒状として例示したが、ヒータ12A,12B,81の形状は、板状でも良い。ヒータ12A,12B,81の形状を板状あるいは短冊状とすることにより、ヒータ挿通孔16A,16B,89は、矩形となる。ヒータの長さ方向と直交する断面形状が矩形(例えば、厚さ3mmで巾10mm)となる板状ヒータを、その矩形の長辺を振動の伝播方向とし、即ち、ヒータの厚み方向を上下方向とすることにより、ヒータ挿通孔による振動の反射が少なくなり、振動の減少および副次振動の発生を小さくすることができる。この形状のヒータの加熱能力は、大よそ直径が6mmの円筒状ヒータに相当する。そして、振動の反射と、副次振動は、大よそ半分に減少する。板状ヒータの形状は、巾が25mm以下であれば配設することが可能である。また、その厚さは、ヒータの加熱能力が断面積に大よそ比例するので、巾の1/2以下で2mm以上がてきしている。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の第1の実施の形態にかかる超音波振動接合装置およびこの超音波振動接合装置にICチップを供給する供給装置の全体を示し、超音波振動接合装置を用いて、接合対象物であるICチップをフレキシブル基板に接合する工程の概略を説明するための図である。
【図2】図1に示す超音波振動接合装置に備えられる振動装置の構成を示す図であり、(A)は、振動装置の正面図であり、(B)は振動装置の底面図であり、(C)は、ホーンにおける位置とホーンを伝播する振動の振幅との関係を示す図である。
【図3】図1に示す超音波振動接合装置によって、ICチップが接合されるフレキシブル回路基板の構成を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態にかかる超音波振動接合装置およびこの超音波振動接合装置にICチップを供給する供給装置の全体を示し、超音波振動接合装置を用いて、接合対象物であるICチップをフレキシブル基板に接合する工程の概略を説明するための図である。
【図5】図4に示す超音波振動接合装置に備えられる振動装置の構成を示す図であり、(A)は、振動装置の正面図であり、(B)は振動装置の底面図であり、(C)は、ホーンにおける位置とホーンを伝播する振動の振幅との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る超音波振動接合装置における振動装置の部分の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る超音波振動接合装置における振動装置の部分の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0140】
1 … 超音波振動接合装置
3 … 接合工具部(保持部)
3A … 吸引孔
9A … 振動子
9B,31B … ホーン
11,63,82 … ホーン支持腕(支持部材)
12A,12B,81 … ヒータ
14A,14B,64,65,83 … ねじ(取付部材)
16A,16B,89 … ヒータ挿通孔
60 … 超音波実装ツール
100 … ICチップ(接合対象物)
101 … フレキシブル回路基板(被接合対象物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を発生する振動子と、ホーンと、このホーンに備えられ接合対象物を保持する保持部とを備える超音波実装ツールと、
上記ホーンに形成されたヒータ挿通孔に通されるヒータと、
上記超音波実装ツールを支持する支持部材と、
を備え、
上記保持部に保持された上記接合対象物を、被接合対象物に押圧しながら上記ホーンを振動することにより、上記接合対象物を上記被接合対象物に接合する超音波振動接合装置において、
上記ヒータ挿通孔は、上記ホーンの上記支持部材により支持される位置と上記保持部との間に形成される、
ことを特徴とする超音波振動接合装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記ホーンの振動の腹部に配設され、
前記支持部材は、前記ホーンの振動の節部であって、前記保持部が配設される上記腹部の隣の節部において前記超音波実装ツールを支持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波振動接合装置。
【請求項3】
前記ヒータ挿通孔は、前記ヒータの前記ヒータ挿通孔に通されている部分に対して隙間を有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の超音波振動接合装置。
【請求項4】
前記ホーンは、このホーンを前記支持部材に取り付ける取付部材が挿通する取付部材挿通孔と、前記接合対象物を前記保持部に吸引するために前記保持部に形成される吸引孔とが形成され、
前記ヒータ挿通孔は、上記取付部材挿通孔と上記吸引孔との略中央に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波振動接合装置。
【請求項5】
超音波振動を発生する振動子と、ホーンと、このホーンに備えられ接合対象物を保持する保持部とを備える超音波実装ツールと、
上記ホーンに形成されたヒータ挿通孔に通されるヒータと、
上記超音波実装ツールを支持する支持部材と、
を備え、
上記保持部に保持された上記接合対象物を、被接合対象物に押圧しながら上記ホーンを振動することにより、上記接合対象物を上記被接合対象物に接合する超音波振動接合装置において、
上記ヒータ挿通孔は、上記ホーンの上記支持部材により支持される位置と上記ホーンの自由端との間に形成される、
ことを特徴とする超音波振動接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−78272(P2008−78272A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253994(P2006−253994)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(592141488)アスリートFA株式会社 (96)
【出願人】(303019846)ESB株式会社 (13)
【Fターム(参考)】