説明

超音波探触子

【課題】様々な仕様の超音波画像診断装置に適用可能な、汎用性の高い超音波探触子を提供する。
【解決手段】送受信部2aは、被検体からの超音波を受信して複数チャンネルの受信信号を得る。整相加算部206は、チャンネル毎の受信信号を整相加算する。画像生成部2cは、整相加算後の受信信号に基づき、超音波診断画像を表示するための超音波診断画像データーを生成する。送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、チャンネル毎の受信信号、音線データー及び超音波診断画像データーのうちの少なくとも2以上から何れかを伝送対象として選択する。無線送受信部215は、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aによって選択された伝送対象を伝送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波探触子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波探触子で得られた超音波データー等を装置本体へ無線伝送するワイヤレス型の超音波画像診断装置が知られている。
【0003】
このような超音波画像診断装置では、伝送元である超音波探触子において、取得した超音波データーを、伝送先の装置本体において処理可能な一定のデーター形式に変換した後に、装置本体に伝送する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−291515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、超音波探触子は、伝送先の装置本体の仕様に対応して、伝送するデーター形式が予め定められていたため、当該装置本体あるいはこれと同等の仕様である装置本体にしか対応することができず、汎用性の低いものであった。
【0006】
本発明の課題は、様々な仕様の超音波画像診断装置に適用可能な、汎用性の高い超音波探触子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、超音波探触子において、
被検体からの超音波を受信して複数チャンネルの受信信号を得る受信部と、
前記チャンネル毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、
前記整相加算後の受信信号に基づき、超音波診断画像を表示するための画像データーを生成する画像生成部と、
前記チャンネル毎の受信信号、前記整相加算後の受信信号、及び、前記画像データーのうちの少なくとも2以上から何れかを伝送対象として選択する伝送対象選択部と、
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象を伝送する伝送部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
操作者によって切り替え操作可能な切替スイッチを備え、
前記伝送対象選択部は、前記切替スイッチによる操作に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
超音波探触子の各部を動作させるための動力源としてバッテリーを備え、
前記伝送対象選択部は、前記バッテリーの残量に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
前記伝送対象選択部は、前記伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体との伝送状態に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の超音波探触子において、
前記伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体からの伝送信号を受信する伝送信号受信部を備え、
前記伝送対象選択部は、前記伝送信号受信部によって伝送対象を指示する旨の伝送対象指示信号を前記超音波画像診断装置本体から受信したときに、該受信した伝送対象指示信号に対応した伝送対象の選択を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象から、前記整相加算部及び前記画像生成部のうち、電力の供給を制限させる対象を選択し、該選択された対象に対する電力の供給を制限する電力制御部を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子において、
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象から、前記整相加算部及び前記画像生成部のうち、動作クロックの周波数を低下させる対象を選択し、該選択された対象に対して供給される動作クロック信号の周波数を、駆動させるための所定の駆動周波数から、該駆動周波数よりも低周波数である所定の待機周波数に変更する動作クロック制御部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々な仕様の超音波画像診断装置に適用可能な、汎用性の高い超音波探触子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波探触子の概略構成を示すブロック図である。
【図3】超音波画像診断装置本体の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波探触子2は、超音波画像診断装置本体1と無線によるデーターの送受信が可能に構成されている。なお、無線通信の方式は既知の何れのものも採用可能であるが、本実施の形態では、例えば、国際規格「IEEE802.11n」を適用している。超音波探触子2は、受信した反射超音波から電気信号である受信信号を取得し、この受信信号をA/D変換して所定の送信形式にデーター変換した後、超音波画像診断装置本体1に無線伝送する。また、超音波探触子2は、操作者によって切り替え操作可能な切替スイッチ21を備えている。切替スイッチ21は、例えば、スライドスイッチであるが、リミットスイッチ、トグルスイッチ等、操作者によって切り替え操作可能なものであれば、何れの態様のものであってもよい。
【0018】
超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2から伝送されたデーターに基づいて被検体内の内部状態を超音波診断画像として画像化し、表示部107に表示するものである。また、超音波画像診断装置本体1は、操作入力部108を備えており、操作入力部108の操作に応じた情報を超音波探触子2に無線伝送することができる。
【0019】
超音波探触子2は、図2に示すように、例えば、バッテリー201と、昇圧回路202と、送信部203と、振動子204と、受信部205と、整相加算部206と、包絡線検波部207と、データー間引き部208と、対数変換部209と、輝度変換部210と、画素補間部211と、画像メモリー212と、送信データー切替制御部213と、送信データー生成部214と、無線送受信部215と、アンテナ216と、電圧・動作クロック制御部217とを備えている。
【0020】
バッテリー201は、超音波探触子2を構成する各部に電源を供給する。バッテリー201は、例えば、超音波探触子2を超音波画像診断装置本体1の図示しないホルダーに装着することにより、給電される。
【0021】
昇圧回路202は、バッテリー201から供給された電源電圧を、超音波探触子2を駆動可能な60V〜150V程度の電圧まで昇圧し、送信部203に昇圧された電源を供給するための回路である。
【0022】
送信部203は、振動子204に電気信号である駆動信号を供給して振動子204に送信超音波を発生させる回路である。振動子204は、例えば、圧電素子からなり、一次元アレイ状に複数配列されており、それぞれ、送信超音波を出力した後、反射超音波を受信すると受信信号を受信部205に出力する。本実施の形態では、例えば、192個の振動子204が配列されている。なお、振動子は、二次元アレイ状に配列されてもよい。また、振動子の個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。送信部203は、例えば、送信BF(Beam Forming)制御回路を備えており、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行う。
【0023】
受信部205は、AMP(Amplifier)205a、ADC(Analog to Digital Converter)205bを備えて構成されている。受信部205は、複数の振動子のそれぞれに対応して複数設けられている。
AMP205aは、受信信号を、振動子毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。ADC205bは、増幅された受信信号を所定周波数(例えば、60MHz)にてサンプリングしてA/D変換し、出力する。
【0024】
本実施の形態では、以上のようにして構成された昇圧回路202、送信部203、振動子204及び受信部205によって送受信部2aを構成している。
【0025】
整相加算部206は、ADC205bによってA/D変換された受信信号に対して、振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データーを生成し、出力する。
包絡線検波部207は、整相加算部206より出力された音線データーに対して全波整流を行い、包絡線データーを得る。包絡線検波部207は、取得した包絡線データーをデーター間引き部208に出力する。
本実施の形態では、以上のようにして構成された整相加算部206及び包絡線検波部207によって音線データー生成部2bを構成している。
【0026】
データー間引き部208は、超音波画像診断装置本体1の表示部107に表示する画像サイズに応じて、包絡線データーの距離方向(深度方向)に対するデーターの間引きを行う。
対数変換部209は、入力した包絡線データーに対して対数増幅を行う。このとき、ゲインやダイナミックレンジの調整等を行ってもよい。
輝度変換部210は、対数増幅された包絡線データーの示す信号の大きさを256階調に量子化する振幅/輝度変換を行ってBモード画像データーを生成する。すなわち、Bモード画像データーは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。
画素補間部211は、超音波画像診断装置本体1の表示部107に表示する画像サイズに応じて、Bモード画像データーの方位方向に配置する補間画素のデーターである補間画素データーを生成する。
画像メモリー212は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画素補間部211から送信されたBモード画像データー及び補間画素データーをフレーム単位で記憶する。すなわち、画像メモリー212は、フレーム単位で構成された超音波診断画像データーとして記憶することができる。
本実施の形態では、以上のようにして構成されたデーター間引き部208、対数変換部209、輝度変換部210、画素補間部211及び画像メモリー212によって画像生成部2cを構成している。
【0027】
送信データー切替制御部213は、送信データー切替スイッチ213aの位置を切り替えることによって、無線伝送の対象として送信データー生成部214に入力するデーターの切り替えを行う。具体的には、送信データー切替制御部213は、送信データー切替スイッチ213aの位置を「A」とすることにより、ADC205bから出力されたA/D変換後のチャンネル毎の受信信号を無線伝送の対象として送信データー生成部214に入力する。また、送信データー切替制御部213は、送信データー切替スイッチ213aの位置を「B」とすることにより、整相加算部206から出力された音線データーを無線伝送の対象として送信データー生成部214に入力する。また、送信データー切替制御部213は、送信データー切替スイッチ213aの位置を「C」とすることにより、超音波診断画像データーを無線伝送の対象として送信データー生成部214に入力する。このように、本実施の形態では、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aによって伝送対象選択部を構成している。なお、本実施の形態では、後述する切替条件のうちの何れか一つのみを選択的に機能させるように構成するが、複数の切替条件を機能させることももちろん可能である。
【0028】
送信データー切替制御部213は、切替スイッチ21に接続されている。切替スイッチ21は、スイッチの位置に応じた信号を送信データー切替制御部213に出力する。送信データー切替制御部213は、切替スイッチ21からの信号を切替条件とし、これに応じて送信データー切替スイッチ213aの位置を切り替えることができる。
また、送信データー切替制御部213は、バッテリー201の残量を検出することができ、残量の検出結果を切替条件とし、残量に応じて送信データー切替スイッチ213aの位置を切り替えることができる。例えば、送信データー切替制御部213は、バッテリー201の残量が60%以下となったことを検出したときは、送信データー切替スイッチ213aの位置を「B」にし、バッテリー201の残量が40%以下となったことを検出したときは、送信データー切替スイッチ213aの位置を「A」にして、処理負荷を軽減させてバッテリーの消費を抑制させることができる。
【0029】
送信データー生成部214は、送信データー切替スイッチ213aから入力されたデーターを所定の送信形式に変換して送信データーを生成し、無線送受信部215に出力する。このとき、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2との無線伝送状態を判断するために、誤り訂正符号を付加する。なお、誤り訂正符号を付加しないようにしてもよい。
【0030】
無線送受信部215は、送信データー生成部214から出力された送信データーに対して所定の変調処理を施し、アンテナ216を介して超音波画像診断装置本体1に無線伝送する。また、無線送受信部215は、超音波画像診断装置本体1から無線伝送された、後述する伝送対象指示情報や伝送状態情報を、アンテナ216を介して受信し、受信したこれらの情報を復調して送信データー切替制御部213に出力する。
【0031】
電力制御部及び動作クロック制御部としての電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213による送信データー切替スイッチ213aの切り替え位置に対応して、音線データー生成部2b及び画像生成部2cに対する電力の供給の制限、又は、音線データー生成部2b及び画像生成部2cに供給される動作クロック信号の周波数の制御を行う。電圧・動作クロック制御部217は、電力供給の制限及び動作クロック周波数の制御の何れか一方を選択して実施することができる。なお、電圧・動作クロック制御部217に代えて、電力供給の制限を行う電力制御部及び動作クロック周波数の制御を行う動作クロック制御部の何れか一方のみ備えた態様としてもよい。また、電力制御部及び動作クロック制御部の何れも備えない構成であってもよい。
【0032】
ここで、電圧・動作クロック制御部217によって電力の供給の制限を行う場合の動作について説明する。
電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「A」の位置とされた場合には、音線データー生成部2b及び画像生成部2cに対する電力の供給を停止させる。これは、送信データー切替制御部213によって、無線伝送の対象としてA/D変換後の受信信号が選択されることにより、整相加算処理や画像生成処理が不要となるため、これらの処理を実施する各部構成について動作を停止させることにより省電力を図る。
また、電圧・動作クロック制御部217は、同様に、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「B」の位置とされた場合には、音線データーが無線伝送の対象として選択され、画像生成部2cによる画像生成処理が不要となるため、画像生成部2cに対する電力の供給を停止させる。
一方、電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「C」の位置とされた場合には、音線データー生成部2b及び画像生成部2cの何れに対しても電力の供給を行う。
【0033】
次に、電圧・動作クロック制御部217によって動作クロック周波数の制御を行う場合の動作について説明する。
電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「A」の位置とされた場合には、音線データー生成部2b及び画像生成部2cに供給される動作クロック信号の周波数を通常の駆動周波数から、当該駆動周波数よりも低周波数である待機周波数に変更する。具体的には、例えば、水晶発振器から出力されるクロック信号を通常駆動用の分周回路と待機用の分周回路とに切り替えることにより実現することができる。待機周波数は、例えば、駆動周波数の1/2〜1/8に設定するが、これに限定されない。以上のように構成することによっても省電力を図ることができる。
また、電圧・動作クロック制御部217は、同様に、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「B」の位置とされた場合には、画像生成部2cに供給される動作クロック信号の周波数を通常の駆動周波数から待機周波数に変更する。
一方、電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aが「C」の位置とされた場合には、音線データー生成部2b及び画像生成部2cの何れに供給される動作クロック信号の周波数についても通常の駆動周波数にする。
【0034】
超音波画像診断装置本体1は、図3に示すように、例えば、無線送受信部101と、アンテナ102と、整相加算部103と、画像生成部104と、メモリー部105と、DSC(Digital Scan Converter)106と、表示部107と、操作入力部108と、制御部109とを備えて構成されている。
【0035】
制御部109は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データー等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデーターを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0036】
無線送受信部101は、制御部109の指示により、超音波探触子2から無線伝送された送信データーを、アンテナ102を介して受信して復調する。制御部109は、受信した送信データーがA/D変換後のチャンネル毎の受信信号である場合には、無線送受信部101に指示して、復調後の送信データーを整相加算部103に出力する。また、制御部109は、受信した送信データーが音線データーである場合には、無線送受信部101に指示して、復調後の送信データーを画像生成部104に出力する。また、制御部109は、受信した送信データーが超音波診断画像データーである場合には、無線送受信部101に指示して、復調後の送信データーをメモリー部105に出力する。
【0037】
また、無線送受信部101は、受信した送信データーを制御部109に出力する。制御部109は、この送信データーに付加された誤り訂正符号に基づいて、データーの誤り率を算出する。ここで、誤り率とは、超音波探触子2から無線伝送された送信データーが、超音波画像診断装置本体1によって受信された際に、送信データーについて、どのくらいデーターが誤っているかを示す指標である。すなわち、超音波探触子2から超音波画像診断装置本体1への無線伝送中において、送信データーが誤っている割合を示す値である。制御部109は、算出した誤り率から超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2との伝送状態を判定する。伝送状態は、例えば、3段階に設定されている。制御部109は、無線送受信部101に指示して、判定した伝送状態を示す伝送状態情報を、アンテナ102を介して超音波探触子2に無線伝送する。超音波探触子2は、受信した伝送状態情報を切替条件とし、これに応じて、例えば、伝送状態が良好である旨を示す情報であれば、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aの位置を「A」に切り替える。また、超音波探触子2は、伝送状態が良好でない旨を示す情報であれば、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aの位置を「B」に切り替える。また、超音波探触子2は、受信した伝送状態情報に応じて、例えば、伝送状態が劣悪である旨を示す情報であれば、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aの位置を「C」に切り替える。この場合において、さらに、送信データー切替制御部213によって上述したバッテリー201の残量の検出を行い、残量に応じた送信データー切替スイッチ213aの位置の切り替えを行うようにしてもよい。なお、制御部109は、送信データーに付加された誤り訂正符号に基づいて、送信データーの誤り訂正を行うようにしてもよい。
【0038】
整相加算部103は、A/D変換後のチャンネル毎の受信信号に対し整相加算して音線データーを生成し、画像生成部104に出力する。整相加算の要領については、超音波探触子2の整相加算部206と同様であるため、詳しい説明については省略する。
【0039】
画像生成部104は、整相加算部103及び超音波探触子2によって生成された音線データーに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ダイナミックレンジやゲインの調整を行って輝度変換することにより、Bモード画像データーを生成する。このようにして生成されたBモード画像データーは、メモリー部105に送信される。
【0040】
メモリー部105は、例えば、DRAMなどの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部104から送信されたBモード画像データーをフレーム単位で記憶する。これにより、超音波診断画像データーが生成される。また、メモリー部105は、超音波探触子2において生成された超音波診断画像データーについてもフレーム単位で記憶することができる。メモリー部105に記憶された超音波診断画像データーは、制御部109の制御に従って、DSC106に送信される。
【0041】
DSC106は、メモリー部105より受信した超音波診断画像データーをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部107に出力する。
【0042】
表示部107は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELティスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部107は、DSC106から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0043】
操作入力部108は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデーターの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部109に出力する。ユーザーは、操作入力部108の操作により、超音波探触子2から無線伝送されるデーターの対象を選択することができる。制御部109は、操作入力部108による選択操作に応じて、無線送受信部101に指示して、無線伝送の対象とするデーターを指示する伝送対象指示情報を、アンテナ102を介して超音波探触子2に無線伝送する。超音波探触子2は、受信した伝送対象指示情報を切替条件とし、これに応じて、送信データー切替制御部213によって送信データー切替スイッチ213aの位置を切り替えることができる。
【0044】
以上のようにして構成された超音波探触子2の有用性について説明する。
【0045】
図2に示すように、A/D変換後のチャンネル毎の受信データー、音線データー、及び、超音波診断画像データーは、それぞれ、データー形式が異なっており、また、データーサイズも異なっている。そのため、必要な伝送レートも異なる。例えば、A/D変換後のチャンネル毎の受信データーを超音波探触子2から超音波画像診断装置本体1に無線伝送する場合を考えると、仮に、チャンネル数が192CHで、1チャンネルあたりのA/D変換後の受信データーを14bitに量子化するとともに、受信信号のサンプリング周波数を60MHzとした場合には、少なくとも必要な伝送レートは、192×14×60×10=161.28Gbpsとなる。また、各チャンネルの受信信号を整相加算し、仮に、1サンプルあたり22bitの音線データーを無線伝送する場合については、少なくとも必要な伝送レートは、22×60×10=1320Mbpsとなる。さらに、この音線データーに基づいて超音波診断画像データーを生成し、これを無線伝送する場合については、仮に、画面サイズを縦×横:1000dot×1000dotとし、カラードプラ法に対応させるべく、1ドットあたりのデーターサイズをRGB各8bitの24bitとした場合、フレームレートが15Frame/secである場合には、少なくとも必要な伝送レートは、24×1000×1000×15=360Mbpsとなる。すなわち、超音波診断画像データーにして無線伝送すると、必要な伝送レートが最も小さくて済む。
【0046】
一方で、整相加算処理、包絡線検波処理、データーの間引き処理及び画素の補間処理等の受信信号の処理については、超音波画像診断装置本体の製造メーカーや製品モデル等により他の装置との差別化を図るべく、装置によって様々な技術が適用されている。上述したように、超音波探触子2において、超音波診断画像データーまで受信信号を処理し、これを無線伝送することにより、伝送レートの点で有利となるが、超音波画像診断装置本体側において、受信信号に対する上述した信号処理技術の適用性を失ってしまうため、このような装置本体側の利点を活かすことができない。したがって、例えば、チャンネル毎の受信信号等、上述した信号処理技術が適用できるようなデーター形式によって伝送できることができれば、必要な伝送レートは大きくなるが、装置本体側における信号処理の自由性が増大し、有用性に優れた超音波探触子とすることができる。
【0047】
また、受信信号の処理工程数が多いほど、処理に使用するハードウェア資源が多くなり、消費電力が増加する。例えば、本実施の形態における超音波探触子2では、図2に示される全体の構成における処理負荷を100%としたとき、送受信部2aにおける処理負荷は40%であり、音線データー生成部2bにおける処理負荷は20%であり、画像生成部2cにおける処理負荷は40%であるため、処理を行わせるハードウェア資源を少なくするほど処理負荷が軽減され、その結果、消費電力を削減することができるようになる。
【0048】
本実施の形態では、上述のようにして超音波探触子2を構成するようにしたので、伝送レート、消費電力及び超音波画像診断装置本体の仕様を考慮して、最適なデーター形式に切り替えて無線伝送することができるので、汎用性に優れたものとなる。
【0049】
また、本実施の形態では、切替スイッチ21や超音波画像診断装置本体1における選択操作によって無線伝送するデーター形式を任意に変更することができる。そのため、本実施の形態における超音波探触子2を適用する装置本体が、例えば、高い信号処理技術の適用されたいわゆるハイエンド機である場合には、伝送レート、消費電力及び診断内容等を考慮してユーザーが任意にデーター形式を選択することが可能である。
【0050】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、送受信部2aは、被検体からの超音波を受信して複数チャンネルの受信信号を得る。整相加算部206は、チャンネル毎の受信信号を整相加算する。画像生成部2cは、整相加算後の受信信号に基づき、超音波診断画像を表示するための超音波診断画像データーを生成する。送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、チャンネル毎の受信信号、音線データー及び超音波診断画像データーのうちの少なくとも2以上から何れかを伝送対象として選択する。無線送受信部215は、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aによって選択された伝送対象を伝送する。その結果、様々な仕様の超音波画像診断装置に適用可能となる。また、伝送レート、消費電力及び超音波画像診断装置本体の仕様を考慮して、受信信号を最適なデーター形式に切り替えて伝送することができる。すなわち、汎用性に優れた超音波探触子とすることができる。
【0051】
また、本発明の実施の形態によれば、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、切替スイッチ21による操作に応じて伝送対象の選択を行うことができる。その結果、ユーザーの利用目的に応じたデーター形式に切り替えて伝送することができ、有用性に優れたものとなる。
【0052】
また、本発明の実施の形態によれば、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、バッテリー201の残量に応じて伝送対象の選択を行う。その結果、バッテリーの残量に応じた消費電力に切り替えることができ、長時間の検査にも耐え得るものとなる。
【0053】
また、本発明の実施の形態によれば、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体1との伝送状態に応じて伝送対象の選択を行う。その結果、受信信号を、伝送状態に適した伝送レートであるデーター形式に切り替えてデーターを伝送することができ、伝送されるデーターの信頼性を向上させることができるとともに、データーの伝送効率を向上させることができる。
【0054】
また、本発明の実施の形態によれば、無線送受信部215は、伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体1からの伝送信号を受信する。送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aは、無線送受信部215によって伝送対象を指示する旨の伝送対象指示信号を超音波画像診断装置本体1から受信したときに、受信した伝送対象指示信号に対応した伝送対象の選択を行う。その結果、ユーザーの利用目的や装置本体の仕様に応じたデーター形式に切り替えて伝送することができ、有用性あるいは汎用性に優れたものとなる。
【0055】
また、本発明の実施の形態によれば、電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aによって選択された伝送対象から、整相加算部206及び画像生成部2cのうち、電力の供給を制限させる対象を選択し、選択された対象に対する電力の供給を制限する。その結果、処理に使用されない構成について動作を停止させることができ、省電力化を図ることができる。
【0056】
また、本発明の実施の形態によれば、電圧・動作クロック制御部217は、送信データー切替制御部213及び送信データー切替スイッチ213aによって選択された伝送対象から、整相加算部206及び画像生成部2cのうち、動作クロックの周波数を低下させる対象を選択し、選択された対象に対して供給される動作クロック信号の周波数を、駆動させるための駆動周波数から、この駆動周波数よりも低周波数である待機周波数に変更する。その結果、処理に使用されない構成についての消費電力を抑制させることができ、省電力化を図ることができる。
【0057】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0058】
また、本実施の形態において、例えば、超音波画像診断装置本体の仕様を特定可能なID情報を超音波探触子2に無線伝送し、このID情報によって特定された装置本体の仕様に応じた送信データーに切り替え可能に構成してもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、チャンネル毎の受信信号、音線データー及び超音波診断画像データーの3つのデーター形式から何れかを伝送対象として選択するようにしたが、チャンネル毎の受信信号、音線データー及び超音波診断画像データーのうちの2つから何れかを伝送対象として選択する構成としてもよい。また、チャンネル毎の受信信号、音線データー、あるいは、超音波診断画像データーとは異なるデーター形式のものを伝送対象として選択可能に構成されてもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、超音波診断画像データーとしてBモードによる画像データーを生成するようにしたが、Aモード及びMモードによる画像データーであってもよく、また、ドプラ法によって画像データーを生成したものであってもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを無線伝送にて送信データーの伝送を行うようにしたが、有線によって送信データーが伝送される態様であってもよく、例えば、シリアル伝送によってデーターを送信するものに適用すると好適である。
【0062】
また、本実施の形態では、超音波の送受信を行う超音波探触子を使用したが、送信超音波の送信を行わず、反射超音波の受信のみを行う、受信専用の超音波探触子を使用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
S 超音波画像診断装置
1 超音波画像診断装置本体
2 超音波探触子
2a 送受信部
2c 画像生成部
21 切替スイッチ
201 バッテリー
206 整相加算部
213 送信データー切替制御部
213a 送信データー切替スイッチ
215 無線送受信部
217 電圧・動作クロック制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体からの超音波を受信して複数チャンネルの受信信号を得る受信部と、
前記チャンネル毎の受信信号を整相加算する整相加算部と、
前記整相加算後の受信信号に基づき、超音波診断画像を表示するための画像データーを生成する画像生成部と、
前記チャンネル毎の受信信号、前記整相加算後の受信信号、及び、前記画像データーのうちの少なくとも2以上から何れかを伝送対象として選択する伝送対象選択部と、
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象を伝送する伝送部と、
を備えたことを特徴とする超音波探触子。
【請求項2】
操作者によって切り替え操作可能な切替スイッチを備え、
前記伝送対象選択部は、前記切替スイッチによる操作に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項3】
超音波探触子の各部を動作させるための動力源としてバッテリーを備え、
前記伝送対象選択部は、前記バッテリーの残量に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項4】
前記伝送対象選択部は、前記伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体との伝送状態に応じて伝送対象の選択を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項5】
前記伝送対象の伝送先である超音波画像診断装置本体からの伝送信号を受信する伝送信号受信部を備え、
前記伝送対象選択部は、前記伝送信号受信部によって伝送対象を指示する旨の伝送対象指示信号を前記超音波画像診断装置本体から受信したときに、該受信した伝送対象指示信号に対応した伝送対象の選択を行うことを特徴とする請求項1に記載の超音波探触子。
【請求項6】
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象から、前記整相加算部及び前記画像生成部のうち、電力の供給を制限させる対象を選択し、該選択された対象に対する電力の供給を制限する電力制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子。
【請求項7】
前記伝送対象選択部によって選択された伝送対象から、前記整相加算部及び前記画像生成部のうち、動作クロックの周波数を低下させる対象を選択し、該選択された対象に対して供給される動作クロック信号の周波数を、駆動させるための所定の駆動周波数から、該駆動周波数よりも低周波数である所定の待機周波数に変更する動作クロック制御部を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波探触子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−249984(P2012−249984A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126856(P2011−126856)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】