説明

超音波接合ツール及び超音波接合装置及び接合材パターン成形方法

【課題】半田パターンを所望の形状又は寸法に成形させ得る超音波接合ツールの提供を目的とする。
【解決手段】超音波接合ツール150は、先端部159の両端に突状体157が各々形成される。切欠き部156へ供給半田が供給されると、突状体側壁面157b及び接合厚調整面157cに対して融解半田が接触する。このため、先端部159で融解された半田は、双方の突状体157によって板幅方向Fwへの流れがガードされ、また、超音波振動による板幅方向Fwへの液滴の飛散が抑制される。従って、当該ツールで成形された半田パターンは、突状体157の外側へ不要な半田パターンを成形させないので、リーク電流を発生させることから免れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材を被接合体の接合加工面に接合させる超音波接合装置に関する。また、当該超音波接合装置に用いられる超音波接合ツールに関する。また、かかる超音波接合装置を用いて行なわれる接合材パターン成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料は、電気的絶縁性及び熱伝達性の双方が好適であるため、電子機器の回路基板として広く用いられている。しかし、セラミック材料を用いた基板(以下、セラミック基板と呼ぶ)は、かかる好適な物性を有している反面、半田を表面に付着させるのが非常に困難である。
【0003】
このため、半田をセラミック材料の表面へ付着させる場合に超音波接合装置が用いられることがある。以下、図4を参照し、特開2008−296265号公報(特許文献1)で紹介されている超音波接合装置について説明する。
【0004】
図示の如く、超音波接合装置100は、テーブル110と、加熱盤120と、アクチュエータ130と、超音波発生部140と、半田供給部160とから構成される。また、加熱盤120の上面には、セラミック材料10が固定される。このとき、当該セラミック材料10の接合加工面11は、超音波発生部140の先端と対向する状態で配置されることとなる。
【0005】
アクチュエータ130は、スライダー131及びキャリアー132を具備している。キャリアー132は、ケーブル133を介して電力が供給され、当該電力の一部を超音波発生部140へと供給させている。また、キャリアー132の構造部には、超音波発生部140と半田供給部160とが固定されており、当該構造部には、図示されないモータ等の駆動手段が内蔵されている。かかるキャリアー132は、内蔵モータの動作に応じて、超音波発生部140と半田供給部160とを把持した状態で其のポジションを移動させる。尚、アクチュエータ130は、図示されるX軸方向及びZ軸方向及びY軸方向(X軸及びZ軸に直交する軸方向)の何れにも移動可能な機構であるものとする。また、当該アクチュエータ130には、超音波発生部140の先端をZ軸中心に回動制御させる機構も有しているものとする。以下、Z軸について、超音波発生部から観察してアクチュエータ130が配される方向をアクチュエータ側Fuと呼び、超音波発生部から観察してテーブル110,セラミック基板10等が配される方向を先端側Fdと呼ぶ場合がある。
【0006】
超音波発生部140は、供給電力によって超音波(16〜18kHz以上)を発生させる装置を内蔵させており、更に、超音波発生部140の先端にホーン141が設けられている。また、ホーン141の先端側Fdには、超音波接合ツール150が固定されている。当該超音波接合ツール150は、ホーン141にロックナット等によって固定されるようにしても良く、ホーン150に一体的に形成されるようにしても良い。かかる超音波発生部140では、内部で超音波振動が生じると、其の振動がホーン141を介して超音波接合ツール150へと伝えられる。
【0007】
半田供給部160は、線状又は平板状の供給半田162を巻き回させた半田ドラム161と、供給半田の融点温度近傍まで加熱させる予備加熱部163とから構成される。予備加熱部163は、供給半田を案内させる案内孔を有し、当該供給半田が案内孔を通過する際に、熱量を供給半田に与えて予備過熱を行なう。また、半田供給部160は、図示の如く、半田供給部の先端が超音波接合ツール150の先端付近に配置固定される。
【0008】
かかる超音波接合装置100は、セラミック基板10を加熱盤120へセットした後、キャリアー132によって超音波接合ツール150の先端とセラミック基板10との距離(クリアランス)が調整される。その後、超音波接合ツール150には、超音波発生部140から超音波振動が送られると共に、予備加熱部163から供給半田162が超音波接合ツールの先端へ供給される。かかる状態で、キャリアー132がX−Y平面内を移動すると、セラミック基板10の接合加工面11には、超音波接合ツールの移動方向をパターン成形方向として、超音波接合ツールの通過跡に半田パターンが成形される。
【0009】
このとき、超音波接合ツールの先端には、超音波振動のエネルギー又は予備加熱部163から与えられる熱エネルギーによって融解した半田が供給される。また、融解した半田とセラミック基板との結合界面では、超音波振動又はツール先端で生じるキャビテーション等によって、当該接合界面から空気層等の不純物質が取り除かれ、これにより、半田とセラミックとの結合が促されることとなる。このため、超音波接合ツール150の通過跡の半田、即ち、固相化後の半田パターンは、セラミック材の表面に対して強固な付着力を有することとなる。
【0010】
例えば、図5(a)に示される超音波接合ツールは、特開平9−001065号公報(特許文献2)で紹介されている。かかる超音波接合ツール250は、先端が板状体を成し、且つ、当該先端面151は略平面とされている。
【0011】
この超音波接合ツール250を超音波接合装置100に取付けて半田パターンの成形を行なうと、図5(b)に示す如く、セラミック基板上の半田パターン170は、超音波接合ツールの移動するパターン成形方向Fsへ順次連続的に形成されていく。半田パターン170は、図示の如く、超音波接合ツールの先端面151又はエッジEg1によって略均等な厚さに成形され、半田パターンの幅についても超音波接合ツールの板幅t1に応じて調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−296265号公報
【特許文献2】特開平9−001065号公報
【特許文献3】実開平6−052145号公報
【特許文献4】特開2007−110010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した半田パターン成形方法では、超音波接合ツールの先端面151とセラミック基板の接合加工面11との間に融解半田を形成させ、超音波接合ツールをスライドさせることにより接合加工面11へ半田パターンを成形させている。このとき、超音波接合ツール先端近傍の融解半田は、キャリアー132の送り速度,超音波振動の周波数状態,供給半田の温度状態如何によって、ツールの板厚方向Ft又は板幅方向Fwへ融解半田の液塊の形状が変化することとなる。
【0014】
このため、特許文献1の技術によれば、ツール先端部での融解半田の液塊形状が変化することに起因して、半田パターンの幅寸法が不均一になってしまうとの問題が生じる。かかる問題は、配線基板の外観上の不具合だけでなく、半田パターンの幅寸法が減少(板厚寸法は一定であると仮定)すると配線抵抗の上昇を招き、また、実装密度の高い配線パターンにあってはリーク電流の原因となる。
【0015】
また、上述した超音波溶着装置で用いられるアクチュエータは、クリアランスを所期設定してから半田パターンの成形動作へ移行する。このため、セラミック基板が傾いて固定されている場合や、又は、セラミック基板の表面形状(うねり等)によっては、ツール先端でのクリアランスを一定に保つことができなくなる。このような場合、クリアランスが最適値から外れてしまい、半田の結合状態が悪化し、回路基板としての品質低下を招くとの問題が生じる。また、クリアランスの状態如何によっては、ツール先端で生じるキャビテーションの影響を大きく受けて、融解半田の微細な液滴を超音波接合ツールの板幅方向Fwへ飛散させてしまう場合が有り、隣接する半田パターンとの間にリーク電流を発生させる原因ともなり得る。このような問題を回避するため、アクチュエータに鉛直方向(Z軸方向)を検知するセンサを設けてクリアランスの制御を随時行うことも考えられるが、この場合、装置構成及び制御工程等の複雑化を招くとの問題を生じさせる。更に、手動で半田パターンを成形させるポータブル式の半田接合機にあっては、操作全般が操縦者の感覚に委ねられてしまうため、ツール先端部でのクリアランスの精度は殆ど期待できない。
【0016】
また、実開平6−052145号公報(特許文献3)では、図6(a)に示すような、先端に半円状の開口部152を形成させた超音波接合ツール350が紹介されている。しかし、かかるツール350を超音波接合装置100に取付けて半田パターンを成形させると、当該半田パターンには、上面に平坦な面が殆ど形成されなくなり、電気的素子を実装させる際に不具合が生じる。加えて、特許文献3に係るツールは、金属同士をスポット溶着させる器具であるところ、上述した半田パターンを形成させる超音波接合ツールと其の用途を異にするものである。
【0017】
また、特開2007−110010号公報(特許文献4)では、図6(b)に示すような、十字溝を形成させた超音波接合ツール450が紹介されている。当該超音波接合ツール450は、スポット溶着を目的としており、このような形状とすることでツールに直接当接して加工される金属の横ズレを防止させている。しかし、かかるツール450を超音波接合装置100に取付けて半田パターンを成形させると、半田のパターン成形方向と異なる方向(パターン成形方向に直行する方向)へ溶融半田が漏出し、その漏出した溶融半田によって、セラミック基板上に不要な半田領域が成形されてしまうとの問題が生じる。また、これに伴う、リーク電流等の発生を引き起こすことも懸念される。
【0018】
本発明は上記課題に鑑み、半田等から成る接合材パターンを所望の形状又は寸法に成形させ得る、超音波接合ツール,超音波接合装置,接合材パターン成形方法,の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、第1の発明では次のような超音波接合ツールの構成とする。即ち、供給接合材へ先端部から超音波振動を与え被接合体の接合加工面に前記供給接合材を接合させる超音波接合ツールにおいて、前記先端部は、当該先端部に形成された略平面を成す接合厚調整面と、前記接合厚調整面に形成された少なくとも一つの突状体とを有することとする。
【0020】
また、第2の発明では次のような超音波接合ツールの構成とする。即ち、供給接合材へ先端部から超音波振動を与え被接合体の接合加工面に前記供給接合材を接合させる超音波接合ツールにおいて、前記先端部は、当該先端部に形成された略平面を成す接合厚調整面と、前記接合厚調整面に形成された二つの突状体とを有し、前記二つの突状体は、所定間隔を隔てて配置されていることとする。
【0021】
第2の発明について好ましくは、前記二つの突状体は、前記先端部の板幅方向の端部に各々配置されていることとする。
【0022】
また、第3の発明では次のような超音波接合装置の構成とする。即ち、上述した発明のうち何れか一つに記載の超音波接合ツールと、前記超音波接合ツールを固定させたホーンとを備え、前記超音波接合ツールは、供給接合材が前記先端部へ供給されつつ、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することとする。
【0023】
当該超音波接合装置について好ましくは、前記超音波溶着ツールは、前記突状体を前記接合加工面へ当接された状態で、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することとする。
【0024】
当該超音波接合装置について好ましくは、前記供給接合材は、錫元素(Sn)を主成分とする電気的導通材であることとする。
【0025】
また、第4の発明では次のような接合材パターン成形方法の構成とする。即ち、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の超音波接合ツールと、前記超音波接合ツールを固定させたホーンとを備える装置を用いた接合材パターン成形方法であって、前記超音波接合ツールは、供給接合材を前記先端部へ供給されつつ、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することとする。
【0026】
当該接合材パターン成形方法について好ましくは、前記超音波溶着ツールは、前記突状体を前記接合加工面へ当接させた状態で、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することとする。
【0027】
当該接合材パターン成形方法について好ましくは、前記供給接合材は、錫元素(Sn)を主成分とする電気的導通材であることとする。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る超音波接合ツールによると、先端部で融解された半田は、突状体によって板幅方向Fwへの流れがガードされ、また、超音波振動に起因する板幅方向Fwへの液滴の飛散が抑制される。従って、当該ツールで成形された半田パターンは、突状体の外側へ不要な半田パターンを成形させないので、リーク電流を発生させることから免れる。特に、突状体が所定の距離を隔てて設けられる第2の発明にあっては、半田パターンの両側面でこのような効果が生じることとなる。
【0029】
また、突状体によってツール先端でのクリアランスが適性値に保たれるので、セラミック基板に対する半田の結合状態が良好となり、回路基板としての品質の向上に繋がる。また、クリアランスの適正化によって、融解半田内での超音波振動の伝わり方、融解半田内でのキャビテーション等の発生状態がコントロールされ、板幅方向Fwへの半田の飛散が抑制される。また、突状体によっても、板幅方向Fwへの半田の飛散がガードされる。
【0030】
第1の発明に係る超音波接合ツールを用いた超音波接合装置によると、突状体によってツール先端のクリアランスが容易に設定されることとなる。このとき、ツール先端では、接合厚調整面によって接合材パターンの厚さが調整されると共に、突状体側壁面によって接合材パターンの少なくとも一方の側面部が成形誤差の少ない形状とされる。このため、当該ツールを用いた方法により製造された回路基板は、接合材パターン上に電気的素子を容易に実装させることが可能となり、併せて、突状体側壁面によって成形された側面部では、外観上の改善が図られるのは勿論のこと、隣接する接合パターンを近づけて配線密度を向上させることが可能となる。
【0031】
また、第2の発明に係る超音波接合ツールを用いた超音波接合装置によると、2つの突状体によってツール先端のクリアランスが容易に設定されることとなる。このとき、ツール先端では、接合厚調整面によって接合材パターンの厚さが調整されると共に、2箇所の突状体側壁面によって接合材パターンの幅寸法の誤差が僅かとなる。このため、当該ツールを用いた方法により製造された回路基板は、接合材パターン上に電気的素子を容易に実装させることが可能となり、併せて、外観上の改善が図られるのは勿論のこと、隣接する接合パターンを近づけて配線密度を向上させることが可能となり、また、接合材パターンの配線抵抗を設計範囲内に収めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係る超音波接合ツールの先端形状を示す図。
【図2】超音波接合ツールの傾きとパターン成形方向との関係を示す図。
【図3】実施の形態に係る超音波接合ツールの変更例を示す図。
【図4】一般的な超音波接合装置の構成を示す図。
【図5】従来例に係る超音波接合ツールの先端形状を示す図。
【図6】従来例に係る超音波接合ツールの先端形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態にあっても従来例と同様に超音波接合装置を用いるが、超音波接合ツール以外の構成については、従来技術に係る超音波接合装置100と同等であるため、其の構成等に係る説明を省略することとする。
【0034】
図1(a)は、本実施の形態に係る超音波接合ツールが示されている。超音波接合ツール150は、鋼又はステンレス等の高硬度の合金鋼が用いられる。また、先端部159では耐磨耗性,耐エロージョン性を実現させるため、焼入れ等の熱処理を加えるのが好ましい。また、超音波接合ツール150としてチタン合金を用いる場合、窒化処理等の硬化処理を施すと良い。
【0035】
当該超音波接合ツール150は、図示の如く、先端部159が板厚t2,板幅t1の板状体とされ、当該板状体の先端中央には、略矩形状の切欠き部156が形成されている。先端部159は、切欠き部156が形成されることによって両端に突状体157が各々形成される。これにより、先端部159には、略平面を成す接合厚調整面157cと、当該接合厚調整面157cへ一体的に形成された突状体側壁面157bとが形成されることとなる。
【0036】
本実施の形態に係る超音波接合ツール150では、切欠き部156へ供給半田(供給接合材)が供給されると、先端部159で融解された半田は、双方の突状体157によって板幅方向Fwへの流れがガードされ、また、超音波振動による板幅方向Fwへの液滴の飛散が抑制される。従って、当該ツールで成形された半田パターンは、突状体157の外側へ不要な半田パターンを成形させないので、リーク電流を発生させることから免れる。特に、本実施の形態の場合、半田パターンの両側面でこのような効果が生じることとなる。
【0037】
図1(b)は、上述した超音波接合ツールを用いた場合の超音波接合装置の使用例が示されている。当該超音波接合装置100では、先ず、セラミック基板10(特許請求の範囲における被接合体)の接合加工面11がアクチュエータ側Fuへ向くように加熱盤120へ固定される。また、超音波接合ツール150は、その先端部の接合厚調整面157cが接合加工面11に対して平行に対面するように、ホーン141の先端に固定される。本実施の形態に係る超音波接合ツール150は、当該ツールの板厚方向Ftとパターン成形方向Fsとが一致するように固定される。
【0038】
その後、アクチュエータ130は、超音波発生部140をZ軸方向(鉛直方向)へ移動させ、超音波接合ツール100の突状体をセラミック基板の接合加工面へ当接させる。このとき、ツール先端の接合厚調整面157cとセラミック基板との間に好適化されたクリアランスd1が形成される。尚、超音波接合ツールの突状体は、センサ等によってクリアランスが管理されるのであれば、セラミック基板の接合加工面11へ当接させなくても良い。この場合、突状体の先端は、セラミック基板の接合加工面から数μm程度離間した位置に配置されることとなる。
【0039】
Z軸方向への初期設定が完了すると、加熱盤120及び予備過熱部163の温度制御を適正状態とさせてから、超音波接合装置100は、半田供給部160から供給半田を供給させると共に、超音波接合ツールへ超音波振動を与え、ツール先端で供給半田を一時的に融解させる。
【0040】
かかる後、超音波接合装置100は、ツールの接合厚調整面156とセラミック基板の接合加工面11とが略平行となる状態を維持させつつ、且つ、クリアランスd1を一定に保った状態で、超音波接合ツール150をパターン成形方向Fsへスライド移動させる。そして、超音波接合ツール150が通過した後の融解半田は、徐所に冷却され、半田パターンが形成されることとなる。尚、本実施の形態に係る超音波溶着装置100では、ツール先端から接合加工面へ僅かな押下力を与え、接合加工面の起伏に応じてツール先端のZ軸方向を僅かに変動させている。
【0041】
当該装置100によって成形された半田パターン170は、図示の如く、ツールの接合厚調整面が略平面状とされているので、パターンの表面S1は略平坦な形状とされる。また、突状体157によってクリアランスd1が適性値に保たれるので、セラミック基板に対する半田の結合状態が良好となる。加えて、其の好適なクリアランスによって、融解半田の飛散が抑えられ、併せて、半田パターン170の厚さが一定に保たれる。
【0042】
更に、超音波接合ツールの突状体157は、融解した半田が切欠き部156の内部に案内され、突状体のスライド運動により、融解半田が板幅方向Fwへ漏出するのを抑制させている。加えて、半田パターン170は、融解している際には切欠き部156の内部での運動に影響されるので、当該パターンの側面S2の形状は、突状体側壁面157aによって蛇行の少ない直線状となる。このため、半田パターン170は、突状体157が無い場合と比較して、形状の輪郭が直線的に形成されることとなる。このことは、本実施の形態のように、超音波接合ツールの両端に突状体157が設けられることで、半田パターンにおける幅寸法を一定とするようにパターン成形することを可能とさせる。
【0043】
上述の如く、本実施の形態に係る超音波接合装置によると、突状体によってツール先端のクリアランスd1が容易に設定されることとなる。このとき、ツール先端では、接合厚調整面によって接合材パターンの厚さが調整されると共に、2箇所の突状体側壁面によって接合材パターンの幅寸法が僅かな誤差で成形されることとなる。このため、当該ツールを用いた方法により製造された回路基板は、半田パターン上に電気的素子を容易に実装させることが可能となり、併せて、外観上の改善が図られるのは勿論のこと、隣接する接合パターンを近づけて配線密度を向上させることが可能となり、また、接合材パターンの配線抵抗を設計範囲内に収めることが可能となる。
【0044】
また、突状体157によってツール先端でのクリアランスd1が適性値に保たれるので、セラミック基板に対する半田の結合状態が良好となり、回路基板としての品質の向上に繋がる。また、クリアランスの適正化によって、融解半田内での超音波振動の伝わり方、融解半田内でのキャビテーション等の発生状態がコントロールされ、板幅方向Fwへの半田の飛散が抑制される。また、突状体によっても、板幅方向Fwへの半田の飛散がガードされる。
【0045】
上述した超音波接合装置100は、超音波接合ツール150のZ軸に対する回動方向を適宜に設定することで、半田パターン170の幅寸法を調整することが可能となる。例えば、図2(a)に示す如く、超音波接合ツールの板厚方向Ftとパターン成形方向Fsとを一致させて半田パターン170を成形させると、半田パターン170の幅寸法は、ツールの開口幅t5に近い寸法となる。また、図2(b)に示す如く、パターン成形方向Fsに対して板厚方向Ftを傾かせると、成形される半田パターン170は、其の傾きに応じて幅寸法Tを狭く成形できる。
【0046】
このようなパターン成形方法にあっては、突状体157が存在することによって融解した半田の運動が規制されるので、突状体157が設けられていない従来のツールと比較して、半田パターンの幅寸法Tの調整が容易となり、其のパターンの仕上がり状態も良好となる。
【0047】
尚、突状体157の形状は、図2(a)に示す如く、突状体側壁面157bと其の正面S4(及び/又は裏面S5)とが直角とされても良く、図2(c)に示す如く、突状体側壁面157bと其の正面S4(及び/又は裏面S5)との間に曲面R2が形成されていても良い。かかる突状体の形状は、半田パターンの幅寸法T又は側面S2の輪郭形状を好適に維持するように、超音波振動の伝わり具合、使用する半田の融点温度、半田の供給量又はツールの送り速度等に応じて設計されるものである。
【0048】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記された技術的思想の範囲内において、種々の改良が可能である。例えば、図3(a)に示す如く、接合厚調整面157cと突状体側壁面157bとによって形成されるコーナー部は、双方の面との交角を鈍角化させるようにR面を形成させたり、C面(カット面)を形成させたりしても良い(交角鈍化手段R1)。かかる交角鈍化手段R1により、半田パターン170は、コーナー部が直角である場合と比較して、当該コーナー部に対応する部分(角部)が丸みを帯び易くなる。このため、完成後の半田パターンに応力が加えられたとき、当該角部での応力集中が緩和され、半田パターンの破損を抑制させることが可能となる。
【0049】
また、本発明は、図3(b)に示す如く、ツールの一方にのみ突状体を形成させても良い。かかる超音波接合ツールを用いた超音波接合装置によると、突状体によってツール先端のクリアランスが調整され、これに係る上述同様の効果が奏されることとなる。また、この場合、接合材パターンは、一方の側面部が成形誤差の少ない形状とされる。このため、図3(b)に示されるようなツール150は、特にベタパターン等の比較的面積の広いパターンを成形させる際に有用であり、突状体側のパターン側面部では、外観上の改善が図られるのは勿論のこと、隣接する接合パターンを近づけて配線密度を向上させることが可能となる。
【0050】
加えて、上述した実施の形態では、供給接合材の一例として半田を用いて説明している。しかし、本発明にあっては、半田以外の材質であっても、電気的導通を行い得るロウ材であれば其の種類を問うものではない。また、半田については、錫元素(Sn)を主成分とする電気的導通材であるが、当該錫元素に亜鉛(Zn),銅(Cu),ニッケル(Ni),アルミ(Al)等を含有させ融点温度等を適宜に調整したものも含まれ、従来から用いられている鉛を含有させたものであっても良い。
【0051】
更に、上述した超音波溶接装置では、アクチュエータの動作によって超音波接合ツールの先端をスライドさせてセラミック基板の接合加工面に対する相対移動を行なっているが、これに限らず、セラミック基板側のテーブルをスライドさせて、超音波接合ツールの先端と接合加工面とを相対移動させても良い。
【0052】
更にまた、上述した超音波溶接装置には、アクチュエータを具備する工作機械の他、手動で半田接合を行なうポータブル式の半田接合機も含まれる。そして、ポータブル式の半田接合機にあっては、突状体がセラミック基板に当接しているか否かを感覚的に知ることができるので、ツール先端でのクリアランスを維持させることが容易となり、これを半田成形方向へスライドさせることにより、好適形状の半田パターンを成形させることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 セラミック基板(被接合体)
11 接合加工面
100 超音波接合装置
141 ホーン
150 超音波接合ツール
157 突状体
157b 突状体側壁面
157c 接合厚調整面
162 半田(供給接合材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給接合材へ先端部から超音波振動を与え被接合体の接合加工面に前記供給接合材を接合させる超音波接合ツールにおいて、
前記先端部は、当該先端部に形成された略平面を成す接合厚調整面と、前記接合厚調整面に形成された少なくとも一つの突状体とを有することを特徴とする超音波接合ツール。
【請求項2】
供給接合材へ先端部から超音波振動を与え被接合体の接合加工面に前記供給接合材を接合させる超音波接合ツールにおいて、
前記先端部は、当該先端部に形成された略平面を成す接合厚調整面と、前記接合厚調整面に形成された二つの突状体とを有し、
前記二つの突状体は、所定間隔を隔てて配置されていることを特徴とする超音波接合ツール。
【請求項3】
前記二つの突状体は、前記先端部の板幅方向の端部に各々配置されていることを特徴とする請求項2に記載の超音波接合ツール。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の超音波接合ツールと、前記超音波接合ツールを固定させたホーンとを備え、
前記超音波接合ツールは、供給接合材が前記先端部へ供給されつつ、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することを特徴とする超音波接合装置。
【請求項5】
前記超音波溶着ツールは、前記突状体を前記接合加工面へ当接された状態で、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することを特徴とする請求項4に記載の超音波接合装置。
【請求項6】
前記供給接合材は、錫元素(Sn)を主成分とする電気的導通材であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の超音波接合装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の超音波接合ツールと、前記超音波接合ツールを固定させたホーンとを備える装置を用いた接合材パターン成形方法であって、
前記超音波接合ツールは、供給接合材を前記先端部へ供給されつつ、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することを特徴とする接合材パターン成形方法。
【請求項8】
前記超音波溶着ツールは、前記突状体を前記接合加工面へ当接させた状態で、前記接合加工面に対してパターン成形方向へ相対移動することを特徴とする請求項7に記載の接合材パターン成形方法。
【請求項9】
前記供給接合材は、錫元素(Sn)を主成分とする電気的導通材であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の接合材パターン成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74565(P2012−74565A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218682(P2010−218682)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】