説明

超音波撮像方法及び超音波プローブ

【課題】超音波検査のワークフローの改善。
【解決手段】2次元振動子アレイ41は、被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する。前処理部421,422は、第1の個数のチャンネル信号を前処理し、第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生する。接続切替え部423は、第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波撮像方法及び超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来例に係る超音波診断装置の構成を示す図である。図1に示すように、従来例に係る超音波診断装置は、システム装置10、ケーブル30、及び超音波プローブ40を有している。超音波プローブ40は、ケーブル30を介してシステム装置10に接続されている。システム装置10は、被検体中の関心領域への超音波パルスの送信と被検体により反射された超音波エコーの受信とのために、超音波プローブ40内の振動子アレイ41を制御する。振動子アレイ41は、例えば、2次元配列である。システム装置10は、関心領域に関する超音波画像の表示のような後処理のために、リアルタイムで超音波エコーを受信する。
【0003】
振動子アレイ41は、複数の振動子を有している。複数の振動子は、超音波パルスを送信するためのチャンネルと超音波エコーを受信するためのチャンネルとに区分されている。2次元撮像データを収集する場合、チャンネル数は、典型的には、64から256までの範囲の数に設定されている。3次元撮像データを収集する場合、チャンネル数は、典型的には、1000以上が要求されている。リアルタイム撮像のため、超音波プローブ40は、大量のエコーデータをケーブル30を介してシステム装置10に供給している。
【0004】
超音波診断装置の臨床における有用性を高めるため、4次元撮像の検査時間を縮小することが求められている。他の画像診断装置と比較して、ユーザは、比較的長時間に亘って超音波診断装置を操作することが要求され、被検体は、比較的長時間に亘って拘束されることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,280,435号明細書
【特許文献2】米国特許第5,832,923号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、超音波検査のワークフローの改善を実現する超音波撮像方法及び超音波プローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る超音波プローブは、被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する振動子アレイと、前記第1の個数のチャンネル信号を前処理し、前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生する前処理部と、前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する接続切替え部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来例に係る超音波診断装置の構成を示す図。
【図2】従来例に係る超音波プローブの構成を示す図。
【図3】第1実施形態に係る超音波プローブの構成を示す図。
【図4】第1実施形態に係る超音波プローブの詳細な構成を示す図。
【図5】第2実施形態に係る超音波プローブの詳細な構成を示す図。
【図6】第3実施形態に係る超音波プローブの詳細な構成を示す図。
【図7】本実施形態に係る超音波プローブに含まれる2次元振動子アレイの一例を模式的に示す図。
【図8】本実施形態に係るサーベイモードにおける入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続例を模式的に示す図。
【図9】本実施形態に係る他のサーベイモードにおける入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続例を模式的に示す図。
【図10】本実施形態に係る他のサーベイモードにおける入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続例を模式的に示す図。
【図11A】第1実施形態に係る超音波プローブの更なる詳細な構成を示す図。
【図11B】第1実施形態に係る超音波プローブの他の更なる詳細な構成を示す図。
【図12】本実施形態に係る超音波プローブによる超音波撮像処理の典型的な流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる超音波撮像方法及び超音波プローブを説明する。
【0010】
本実施形態に係る超音波プローブは、超音波プローブ、処理部、及びケーブルを有している。ケーブルは、超音波プローブと処理部とを接続している。典型的には、本実施形態に係る超音波プローブは、超音波パルスを発生し、発生された超音波パルスを被検体の関心領域に送信する。また、本実施形態に係る超音波プローブは、被検体から反射された超音波エコーを受信する。本実施形態に係る超音波プローブは、典型的には携帯型であるが、携帯型でなくても良い。
【0011】
本実施形態に係る超音波プローブは、さらに、2次元撮像データ、3次元撮像データ、あるいは4次元撮像データを処理するための少なくとも一つの前処理部を有している。「前処理」部という用語は、2次元振動子アレイに含まれる振動子から前処理部へ直接的に入力された入力信号を処理するための装置又は回路と同義である。換言すれば、前処理部は、2次元振動子に含まれる受信素子に接続される。受信素子と前処理部との間には、前処理部への個々の入力信号と個々のチャンネルとの一対一対応の関係を維持するように、クロスポイントスイッチやマルチプレクサのような他の電子部品は設けられていない。
【0012】
図2は、従来例に係る超音波プローブの構成を示す図である。図2に示すように、従来例に係る超音波プローブは、2次元振動子アレイ41、受信部42、及び送信部43を有している。2次元振動子アレイ41は、N個の振動子を有している。送信部43は、N本のチャンネルの超音波パルスを送信するために、2次元振動子アレイ41にN本のチャンネルの駆動信号を発生する送信発振器43―1を有している。受信部42は、前処理部42―1を有している。前処理部42―1は、具体的には、N本のチャンネルからの信号に対する低雑音増幅器(LNA:low noise amplifier)や電圧利得増幅器(VGA:voltage gain amplification)を含む。さらに受信部42は、A/D変換器(ADC:analog-to-digital converter)42―2とビームフォーマ42−3とを含んでいる。A/D変換器42―2は、前処理部42―1からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。ビームフォーマ42―3は、A/D変換器42―2からのデジタル信号に基づいて、超音波受信ビームを表現するデジタル信号を生成する。
【0013】
このように従来に係る超音波プローブにおいては、N個の振動子の各々について低雑音増幅器や電圧利得増幅器、A/D変換器が設けられている。
【0014】
図3は、第1実施形態に係る超音波プローブ100の構成を示す図である。超音波プローブ100は、2次元振動子アレイ41、送信部430、及び受信部420を含んでいる。2次元振動子アレイ41は、送信部430と受信部420との両方に、2次元振動子アレイ41が被検体の関心領域に向けて送信素子から超音波パルスを送信し、被検体の関心領域から反射された超音波エコーが2次元振動子アレイ41内の第1の既定数の受信素子で受信され、受信された超音波エコーが第1の既定数のチャンネル信号に変換されるように接続される。
【0015】
ここで、2次元振動子アレイ41は、2次元状に配列されたN個の振動子を有するとする。超音波パルスの送信に利用される振動子を送信素子と呼び、超音波エコーの受信に利用される振動子を受信素子と呼ぶことにする。一個の振動子を送信素子と受信素子との何れか一方として機能させてもよいし、一個の振動子を送信素子と受信素子との両方として機能させてもよい。送信素子の個数は、受信素子の個数よりも多くても良いし、少なくても良い。また、送信素子の個数と受信素子の個数とは、同一であってもよい。なお、本実施形態は、2次元振動子アレイ41のみに限定されず、1次元振動子アレイにも適用可能である。以下、説明を具体的に行うため、送信素子の個数と受信素子の個数とは、同数であり、N個であるとする。
【0016】
図4は、第1実施形態に係る超音波プローブ100の詳細な構成を示す図である。図4に示すように、超音波プローブ100は、2次元振動子アレイ41、送信部430A、及び受信部420Aを有する。図4の受信部420Aは、図3の受信部420の一例である。2次元振動子アレイ41は、送信部430Aと受信部420Aとの両方に、2次元振動子アレイ41が被検体の関心領域に向けて送信素子から超音波パルスを送信し、被検体の関心領域から反射された超音波エコーが2次元振動子アレイ41内のN個の受信素子で受信され、受信された超音波エコーがN個の電気信号に変換されるように接続される。
【0017】
N個の受信素子は、N本の入力チャンネルにそれぞれ接続されている。すなわち、複数の受信素子と複数の入力チャンネルとは、一対一対応で接続されている。N本の入力チャンネルは、受信部420Aに接続されている。ここで、超音波エコーの受信に起因して受信素子において発生され、入力チャンネルに供給されるアナログの電気信号をチャンネル信号と呼ぶことにする。
【0018】
受信部420Aは、2次元振動子アレイ41からのチャンネル信号に対して既定の一連の信号処理を施す。2次元振動子アレイ41は、予め設定されたN個の受信素子を利用する。N個の受信素子は、N個のチャンネル信号をそれぞれ出力する。なお、2次元振動子アレイ41に含まれる全ての受信素子の個数よりも少ない個数の受信素子が選択的に利用されてもよい。このように受信部420Aは、図4の矢印で示される接続を介して2次元振動子アレイ41からN個のチャンネル信号を受信する。一例として、受信部420Aは、低雑音増幅器421と電圧利得増幅器422とのような電子部品を含む前処理部を有している。それに加え受信部420Aは、マルチプレクサ423、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を含んでいる。
【0019】
低雑音増幅器421は、2次元振動子アレイ41から直接的に受信したN個のチャンネル信号に低雑音増幅を施す。換言すれば、2次元振動子アレイ41と低雑音増幅器421との間にN個のチャンネル信号に対するスイッチング(接続切替え)や他の信号処理は行われない。低雑音増幅器421は、S/N比及び帯域幅を最大化するために、入力インピーダンスを素子インピーダンスに整合させながらチャンネル信号を増幅する。電圧利得増幅器422は、N本の入力チャンネルを介して低雑音増幅器421に接続されている。電圧利得増幅器422は、低雑音増幅器421から出力されたN個のチャンネル信号に電圧利得増幅を施す。電圧利得増幅器422は、時間や視野深度(depth)に対する信号値の変化を増幅するようにチャンネル信号を増幅する。このようにして、2次元振動子アレイ41からのチャンネル信号の各々に対して低雑音増幅器421と電圧利得増幅器422とにより前処理が施される。前処理が施されたチャンネル信号は、マルチプレクサ423に供給される。
【0020】
マルチプレクサ423は、N本の入力チャンネルを介して電圧利得増幅器422に接続されている。マルチプレクサ423は、マルチプレクサ423からの出力チャンネルの個数が入力チャンネルの個数よりも少なくなるようにチャンネルの接続切替えを実行する。換言すれば、マルチプレクサ423は、前処理されたN個のチャンネル信号に対して多重化を施し、M個のチャンネル信号を出力する。ここで、マルチプレクサ423の出力側のチャンネルを出力チャンネルと呼ぶことにする。出力チャンネル数Mは、入力チャンネル数Nよりも少ない。上記の接続切替え操作は、チャンネルの削減数と2次元振動子アレイ41における受信素子の配置との組み合わせに応じて適宜変更可能である。多重化の結果、N個の受信素子からのオリジナルのチャンネル信号は、M個のチャンネル信号に統合される。例えば、入力チャンネルと出力チャンネルとの間の接続の組合せは、走査面の位置に応じて設定される。上記の接続切替え操作は、関心のある超音波ビーム方向に沿う信号の忠実度を最適化するために実行される。なお、マルチプレクサ423は、クロスポイントスイッチ426等の他の接続切替え装置に適宜置き換えられても良い。接続切替え操作の詳細については後述する。
【0021】
多重化処理の後、受信部420Aは、超音波プローブ100においてさらなる信号処理を実行する。具体的には、マルチプレクサ423からのM個のチャンネル信号は、A/D変換器424においてA/D変換される。A/D変換の分解能は、出力チャンネル数と入力チャンネル数との比率に応じて決定される。ビームフォーマ425は、A/D変換器424からのデジタル信号を受信する。ビームフォーマ425は、超音波受信ビームを形成するために、受信されたデジタル信号に遅延加算を施し、超音波受信ビームに関するデジタル信号を生成する。
【0022】
上記の説明において受信部420Aは、低雑音増幅器421、電圧利得増幅器422、マルチプレクサ423、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を有するとした。しかしながら、本実施形態を実践するための構成要素の組み合わせはこれに限定されない。また、これら構成要素は、必ずしも超音波プローブ100に配置されなくてもよい。
【0023】
図4に示すように、第1実施形態に係る超音波プローブ100は、さらに送信部430Aを含んでいる。送信部430Aは、送信発振器431を有している。送信部430Aから2次元振動子アレイ41への矢印で示しているように、送信発振器341は、2次元振動子アレイ41における既定のN個のチャンネルの送信素子からの超音波パルスの発生を制御している。例えば、送信部430Aは、上記の受信部420Aにおける前処理に等価又は関連する処理を実行しない。なお、送信部430Aは、送信チップに電子機器を配置することにより前処理を施しても良い。例えば、送信チップに低雑音増幅器を配置することにより送信部430Aにおいて低雑音増幅処理が実行されてもよい。
【0024】
図5は、第2実施形態に係る超音波プローブ200の詳細な構成を示す図である。図5に示すように、第2実施形態に係る超音波プローブ200は、2次元振動子アレイ41、送信部430A、及び受信部420Bを有している。図5の受信部420Bは、図3の受信部420の一例である。2次元振動子アレイ41は、送信部430Aと受信部420Bとの両方に、2次元振動子アレイ41が被検体の関心領域に向けて送信素子から超音波パルスを送信し、被検体の関心領域から反射された超音波エコーが2次元振動子アレイ41内の第1の既定数の受信素子で受信され、受信された超音波エコーが第1の既定数のチャンネル信号に変換されるように接続される。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、送信素子の個数と受信素子の個数とは、同一であってもよい。さらに、本実施形態は、2次元振動子アレイ41のみに限定されず、1次元振動子アレイにも適用可能である。
【0025】
受信部420Bは、2次元振動子アレイ41からのチャンネル信号に対して既定の一連の信号処理を施す。2次元振動子アレイ41は、予め設定されたN個の受信素子を利用する。N個の受信素子は、N個のチャンネル信号を出力する。例えば、2次元振動子アレイ41は、利用可能な受信素子の個数よりも少ない個数の受信素子を選択的に利用する。このように受信部420Bは、図5の矢印で示される接続を介して2次元振動子アレイ41からN個のチャンネル信号を受信する。一例として、受信部420Bは、電圧利得増幅器422、マルチプレクサ423、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を含んでいる。次に電圧利得増幅器422は、2次元振動子アレイ41から直接的に受信したN個のチャンネル信号に電圧利得増幅を施す。電圧利得増幅器422は、時間や視野深度に対する信号値の変化を増幅するように信号を増幅する。換言すれば、2次元振動子アレイ41と電圧利得増幅器422との間にN個のチャンネル信号に対する接続切替えや他の信号処理は行われない。
【0026】
2次元振動子アレイ41からのチャンネル信号の各々に対して電圧利得増幅器422により前処理が施された後、マルチプレクサ423は、マルチプレクサ423からの出力チャンネルの個数がマルチプレクサ423への入力チャンネルの個数よりも少なくなるようにチャンネルの接続切替えを実行する。換言すれば、マルチプレクサ423は、前処理されたチャンネル信号に対して多重化を施す。上記の接続切替え操作は、チャンネルの削減数と2次元振動子アレイ41における受信素子の配置との組み合わせに応じて適宜変更可能である。受信部420Bにおける多重化の結果、N個の受信素子からのオリジナルのチャンネル信号は、M個のチャンネル信号に統合される。なおMは、Nよりも少ない。上記の接続切替え操作は、関心のある超音波ビーム方向に沿う信号の忠実度を最適化するために実行される。なお、マルチプレクサ423は、クロスポイントスイッチ426等の他の接続切替え装置に適宜置き換えられても良い。
【0027】
多重化処理の後、受信部420Bは、超音波プローブ200においてさらなる信号処理を実行する。具体的には、マルチプレクサ423からのM個のチャンネル信号は、A/D変換器424においてA/D変換される。A/D変換の分解能は、出力チャンネル数と入力チャンネル数との比率に応じて決定される。ビームフォーマ425は、A/D変換器424からのデジタル信号を受信する。ビームフォーマ425は、超音波受信ビームを形成するために、受信されたデジタル信号に遅延加算を施し、超音波受信ビームに関するデジタル信号を生成する。
【0028】
上記の説明において受信部420Bは、電圧利得増幅器422、マルチプレクサ423、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を有するとした。しかしながら、本実施形態を実践するための構成要素の組み合わせはこれに限定されない。例えば、電圧利得増幅器422の代わりに低雑音増幅器がもうけられても良い。また、これら構成要素は、必ずしも超音波プローブ200に配置されなくてもよい。
【0029】
図5に示すように、第2実施形態に係る超音波プローブ200は、さらに送信部430Aを含んでいる。送信部430Aは、送信発振器431を有している。送信部430Aから2次元振動子アレイ41への矢印で示しているように、送信発振器341は、2次元振動子アレイ41における既定のN個のチャンネルの送信素子からの超音波パルスの発生を制御している。例えば、送信部430Aは、上記の受信部420Bにおける前処理に等価又は関連する処理を実行しない。なお、送信部430Aは、送信チップに電子機器を配置することにより前処理を施しても良い。例えば、送信チップに低雑音増幅器を配置することにより送信部430Aにおいて低雑音増幅処理が実行されてもよい。
【0030】
図6は、第3実施形態に係る超音波プローブ300の詳細な構成を示す図である。図6に示すように、第3実施形態に係る超音波プローブ300は、2次元振動子アレイ41、送信部430A、及び受信部420Cを有している。図6の受信部420Cは、図3の受信部420の一例である。2次元振動子アレイ41は、送信部43と受信部420Cとの両方に、2次元振動子アレイ41が被検体の関心領域に向けて送信素子から超音波パルスを送信し、被検体の関心領域から反射された超音波エコーが2次元振動子アレイ41内の第1の既定数の受信素子で受信され、受信された超音波エコーが第1の既定数のチャンネル信号に変換されるように接続される。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、送信素子の個数と受信素子の個数とは、同一であってもよい。さらに、本実施形態は、2次元振動子アレイ41のみに限定されず、1次元振動子アレイにも適用可能である。
【0031】
受信部420Cは、2次元振動子アレイ41からの入力信号に対して既定の一連の信号処理を施す。例えば、2次元振動子アレイ41は、アジマス方向に沿って24列、エレベーション方向に沿って24列の振動子を有している。この場合、2次元振動子アレイ41は、576個の受信素子を利用し、同数の576個のチャンネル信号を出力する。例えば、2次元振動子アレイ41は、利用可能な受信素子の個数よりも少ない個数の受信素子を選択的に利用してもよい。このように受信部420Cは、図6の矢印で示される接続を介して2次元振動子アレイ41からN個のチャンネル信号を受信する。一例として、受信部420Cは、低雑音増幅器421、クロスポイントスイッチ426、電圧利得増幅器422、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を含んでいる。低雑音増幅器421は、2次元振動子アレイ41から直接的に受信したN個のチャンネル信号に低雑音増幅を施す。換言すれば、2次元振動子アレイ41と低雑音増幅器421との間にN個のチャンネル信号に対する接続切替えや他の信号処理は行われない。低雑音増幅器421は、S/N比及び帯域幅を最大化するために、入力インピーダンスを素子インピーダンスに整合させながらチャンネル信号を増幅する。
【0032】
2次元振動子アレイ41からのチャンネル信号の各々に対して低雑音増幅器421により前処理が施された後、クロスポイントスイッチ426は、クロスポイントスイッチ426からの出力チャンネルの個数がクロスポイントスイッチ426への入力チャンネルの個数よりも少なくなるようにチャンネルの接続切替えを実行する。換言すれば、クロスポイントスイッチ426は、前処理されたチャンネル信号のみ接続する。上記の接続切替え操作は、チャンネルの削減数と2次元振動子アレイ41における受信素子の配置との組み合わせに応じて適宜変更可能である。受信部420Cにおける接続の結果、576個の受信素子からのオリジナルのチャンネル信号は、24個のチャンネル信号に統合される。この入力信号数と出力信号数との比率は、既定の576:24の比率に従う。上記の接続切替え操作は、関心のある超音波ビーム方向に沿う信号の忠実度を最適化するために実行される。
【0033】
接続処理の後、受信部420Cは、超音波プローブ300においてさらなる信号処理を実行する。具体的には、24個のチャンネル信号は、電圧利得増幅器422に入力される。電圧利得増幅器422は、入力された24個のチャンネル信号に電圧利得増幅処理を施す。電圧利得増幅器422は、時間や視野深度に対する信号値の変化を増幅するように信号を増幅する。次に、A/D変換器424は、電圧利得増幅器422からの出力信号にA/D変換を施す。A/D変換の分解能は、出力チャンネル数と入力チャンネル数との比率に応じて決定される。ビームフォーマ425は、A/D変換器424からのデジタル信号を受信する。ビームフォーマ425は、超音波受信ビームを形成するために、受信されたデジタル信号に遅延加算を施し、超音波受信ビームに関するデジタル信号を生成する。
【0034】
上記の説明において受信部420Cは、低雑音増幅器421、クロスポイントスイッチ426、電圧利得増幅器422、A/D変換器424、及びビームフォーマ425を有するとした。しかしながら、本実施形態を実践するための構成要素の組み合わせはこれに限定されない。また、これら構成要素は、必ずしも超音波プローブ300に配置されなくてもよい。
【0035】
図6に示すように、第3実施形態に係る超音波プローブ300は、さらに送信部430Aを含んでいる。送信部430Aは、送信発振器431を有している。送信部430Aから2次元振動子アレイ41への矢印で示しているように、送信発振器341は、2次元振動子アレイ41における既定のN個のチャンネルの送信素子からの超音波パルスの発生を制御している。例えば、送信部430Aは、上記の受信部420Cにおける前処理に等価又は関連する処理を実行しない。
【0036】
次に、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426による接続切替え操作の詳細について説明する。まずは、図7を参照しながら2次元振動子アレイ41について説明する。図7は、本実施形態に係る超音波プローブに含まれる2次元振動子アレイ41の一例を模式的に示す図である。2次元振動子アレイ41には、2次元状に配列された複数の振動子が含まれる。複数の振動子は、複数の振動子縦列と複数の振動子横列とにより電気的に構成される。各振動子縦列は、エレベーション方向に沿って配列された24個の振動子を含んでいる。各振動子横列は、アジマス方向に沿って配列された24個の振動子を含んでいる。なお図7においては、各振動子に、1から576までの何れかの数字が順番に割り振られている。この番号は、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426への入力チャンネルの番号に対応する。すなわち、振動子と入力チャンネルとは、一対一対応で接続されている。
【0037】
2次元振動子アレイ41は、全ての振動子を独立に制御するために電気的に構成される。これにより、2次元振動子アレイ41は、2次元撮像データや3次元撮像データ、4次元撮像データを提供することができる。一方、サーベイモード(survey mode)と呼ばれる撮像モードが知られている。サーベイモードは、単一の走査面に関する2次元撮像モードである。サーベイモードに係る走査面は、典型的には、走査面の中心線が2次元振動子アレイ41の中心軸を通るように設定される。サーベイモードは、3次元撮像や4次元撮像を実行する前において、被検体の器官のような関心領域の位置や超音波プローブの被検体への当接位置を決定するために行われる。本実施形態に係る超音波プローブは、サーベイモード、3次元撮像モード、及び4次元撮像モードのいずれにも適用可能である。サーベイモードにおいては、関心領域に関する2次元画像がリアルタイムで発生されディスプレイに表示される。ユーザは、この2次元画像を観察しながら、関心領域や超音波プローブの当接位置を決定する。このようにして、関心領域や超音波プローブの当接位置が決定されると、ユーザは、3次元撮像や4次元撮像を任意のタイミングで開始する。
【0038】
本実施形態に係る超音波プローブは、サーベイモードにおいて、同一のグループに属する複数の入力チャンネルをマルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426により単一の出力チャンネルに統合する。マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426は、低雑音増幅器421の後段に設けられる。これにより、超音波検査に関するワークフローを改善することができる。
【0039】
次に、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426による入力チャンネルと出力チャンネルとの接続切替えについて詳細に説明する。図8は、本実施形態に係るサーベイモードにおける入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続例を模式的に示す図である。図8に係るサーベイモードは、アジマスサーベイモードであるとする。アジマスサーベイモードに係る走査面は、アジマス方向に平行に設定されている。アジマスサーベイモードを実行する場合、走査面に直交する各振動子縦列に含まれる複数の振動子が同一のグループに設定される。すなわち、アジマスサーベイモードを実行する場合、各振動子縦列に属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続可能にマルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が設けられている。この場合、同一のアジマス番号に属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続される。
【0040】
アジマスサーベイモードの実行中においては、送信部430Aにより、アジマス方向に平行な走査面の位置が決定され、決定された走査面に超音波パルスが送信される。この際、2次元振動子アレイ41に含まれるN個の振動子が送信素子として利用される。超音波パルスが送信されると、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が作動される。マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426が作動された場合、同一の振動子縦列に属する24本の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに電気接続される。受信時においては、例えば、N個の振動子が受信素子として利用される。これにより、N個の受信素子は、超音波エコーを受信し、N個のチャンネル信号を発生する。N個のチャンネル信号は、N本の入力チャンネルにそれぞれ出力される。低雑音増幅器421や電圧利得増幅器422により前処理されたチャンネル信号は、エレベーション方向に沿って配列された24本の入力チャンネルを統合する単一の出力チャンネルにまとめて出力される。この結果、図7の576本の入力チャンネルは、図8に示すように、24本の出力チャンネルに削減される。このように、全てのチャンネル信号がマルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426のような接続切替え部に統合される前に前処理に供される。
【0041】
なお、図示はしないが、2次元振動子アレイ41の上部には、音響整合層や球面の音響レンズが取り付けられている。音響レンズは、エレベーション方向とアジマス方向との両方向に沿って厚みが変化する凸形状を有している。従って、アジマスサーベイモードにおいても、送信超音波ビームをエレベーション方向に関して集束させることができる。従って、アジマスサーベイモードにより発生される2次元画像の画質は、従来のアジマスサーベイモードにより発生される2次元画像の画質に比して極端に劣化することはない。
【0042】
本実施形態に係るサーベイモードは、アジマスサーベイモードのみに限定されない。図9は、本実施形態に係る他のサーベイモードにおける入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続例を模式的に示す図である。図9に係るサーベイモードは、エレベーションサーベイモードであるとする。エレベーションサーベイモードに係る走査面は、エレベーション方向に平行に設定されている。エレベーションサーベイモードを実行する場合、走査面に直交する各振動子横列に含まれる複数の振動子が同一のグループに設定される。すなわち、エレベーションサーベイモードを実行する場合、各振動子横列に属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続可能にマルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が設けられている。この場合、同一のエレベーション番号に属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続される。
【0043】
エレベーションサーベイモードの実行中においては、送信部430Aにより、エレベーション方向に平行な走査面の位置が決定され、決定された走査面に超音波パルスが送信される。この際、2次元振動子アレイ41に含まれるN個の振動子が送信素子として利用される。超音波パルスが送信されると、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が作動される。マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426が作動された場合、同一の振動子横列に属する24本の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに電気接続される。受信時においては、例えば、N個の振動子が受信素子として利用される。これにより、N個の受信素子は、超音波エコーを受信し、N個のチャンネル信号を発生する。N個のチャンネル信号は、N本の入力チャンネルにそれぞれ出力される。低雑音増幅器421や電圧利得増幅器422により前処理されたチャンネル信号は、アジマス方向に沿う複数の入力チャンネルを統合する単一の出力チャンネルにまとめて出力される。すなわち、図7の576本の入力チャンネルは、図9に示すように、24本の出力チャンネルに削減される。
【0044】
なお、上述のように、2次元振動子アレイ41の上部には、球面の音響レンズが取り付けられている。従って、エレベーションサーベイモードにおいても、送信超音波ビームをアジマス方向に関して集束させることができる。従って、エレベーションサーベイモードにより発生される2次元画像の画質は、従来のエレベーションサーベイモードにより発生される2次元画像の画質に比して極端に劣化することはない。
【0045】
上述の図8及び9においては、1列に配列された複数の入力チャンネルが同一のグループに属するとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。図10は、本実施形態に係るサーベイモードにおける他の電気接続例を模式的に示す図である。図10に係るサーベイモードは、サブアレイモードであるとする。サブアレイモードにおいては、N個の振動子が矩形状のL個のサブアレイに区分されている。ここでLは、Nより小さい。図10の場合、576個の振動子が36個のサブアレイに区分されている。サブアレイモードに係る走査面は、任意の方向に設定可能である。サブアレイに含まれる複数の振動子が同一のグループに設定される。サブアレイモードを実行する場合、各サブアレイに属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続可能にマルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が設けられている。この場合、同一のサブアレイに属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに接続される。
【0046】
サブアレイモードの実行中においては、送信部430Aにより、任意の位置に走査面が決定され、決定された走査面に超音波パルスが送信される。この際、2次元振動子アレイ41に含まれるN個の振動子が送信素子として利用される。超音波パルスが送信されると、マルチプレクサ423又はクロスポイントスイッチ426が作動される。マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426が作動された場合、同一のサブアレイに属する16本の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに電気接続される。受信時においては、例えば、N個の振動子が受信素子として利用される。これにより、N個の受信素子は、超音波エコーを受信し、N個のチャンネル信号を発生する。N個のチャンネル信号は、N本の入力チャンネルにそれぞれ出力される。低雑音増幅器421や電圧利得増幅器422により前処理されたチャンネル信号は、各サブアレイに属する複数の入力チャンネルを統合する単一の出力チャンネルにまとめて出力される。すなわち、図7の576本の入力チャンネルは、図10に示すように、36本の出力チャンネルに削減される。サブアレイモードにおいては、アジマスサーベイモードやエレベーションサーベイモードに比して、チャンネルの削減数が少ない。換言すれば、サブアレイモードにおいては、アジマスサーベイモードやエレベーションサーベイモードに比して、各マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426が統合する入力チャンネルの数を減少することができる。従って、サブアレイモードにおいては、アジマスサーベイモードやエレベーションサーベイモードに比して、マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426を小規模にすることができる。なおサブアレイモードにおいて、走査面を中心線周りに回転することにより3次元撮像を行うことが可能である。
【0047】
以上で本実施形態に係る入力チャンネルと出力チャンネルとの電気接続についての説明を終了する。
【0048】
上述のように本実施形態においては、マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426によりチャンネル数を削減することができる。従って、マルチプレクサ423やクロスポイントスイッチ426を設けない場合に比して、受信部420における電力の消費量が削減される。本実施形態に係る超音波プローブは、チャンネル数の削減に伴う余剰電力を各チャンネルに関するダイナミックレンジの向上に利用する。以下、ダイナミックレンジの向上を第1実施形態に係る超音波プローブ100を具体例に挙げて説明する。
【0049】
図11A及び11Bは、第1実施形態に係る超音波プローブ100の更なる詳細な構成を示す図である。図11Aに示すように、超音波プローブ100は、2次元振動子アレイ41、送信部430A、及び受信部420Dを有する。受信部420Dは、図3の受信部420の実施例を示す。2次元振動子アレイ41は、送信部430Aと受信部420Dとの両方に、2次元振動子アレイ41が被検体の関心領域に向けて送信素子から超音波パルスを送信し、被検体の関心領域から反射された超音波エコーが2次元振動子アレイ41内の第1の既定数の受信素子で受信され、受信された超音波エコーが第1の既定数のチャンネル信号に変換されるように接続される。
【0050】
受信部420Dにおいて、マルチプレクサ423Aは、出力チャンネルの個数が入力チャンネルの個数よりも少なくなるようにチャンネルの接続切替えを実行する。換言すれば、マルチプレクサ423Aは、N個の入力チャンネルをM個の出力チャンネルに統合する。なおMは、Nよりも少ない。なお、マルチプレクサ423Aは、クロスポイントスイッチ426等の他の接続切替え装置に適宜置き換えられても良い。
【0051】
マルチプレクサ423AからのM個のチャンネル信号は、10ビットのA/D変換器424AにおいてA/D変換される。A/D変換の分解能は、出力チャンネル数と入力チャンネル数との比率に応じて決定される。10ビットのA/D変換器424Aは、比率M/Nに適している。ビームフォーマ425は、10ビットのA/D変換器424Aからのデジタル信号を受信し、超音波ビームを形成するために、受信されたデジタル信号に遅延加算を施す。この超音波プローブ100において、送信部430Aは、上記の受信部420Dにおける前処理に等価又は関連する処理を実行しない。
【0052】
図11Aの受信部420Dと比較して、図11Bの受信部420Eは、マルチプレクサ423BとA/D変換器424Bとを除いて同様の処理を実行する。図11Bに示すように、マルチプレクサ423Bは、N個の入力チャンネルをM/16個のチャンネルに統合する。なおM/16は、Nよりも少ない。すなわち、マルチプレクサ423Bは、図11Aのマルチプレクサ423Aよりも、チャンネルの削減数が多く、具体的には、チャンネルの削減数が16倍に増加している。
【0053】
図11Bに示すように、マルチプレクサ423BからのM/16個のチャンネル信号は、A/D変換器424BにおいてA/D変換される。マルチプレクサ423Bがマルチプレクサ423Aよりもチャンネル削減数が多いので、A/D変換器424Bのビットカウントを、A/D変換器424Aのビットカウントに比して、大きくすることができる。具体的には、A/D変換器424Bのビットカウントは、12ビットである。12ビットのA/D変換器424Bは、比率(M/16)/Nに適している。このように、チャンネル数が削減されることにより、各チャンネルの高ダイナミックレンジの実現に電力を割り当てることができる。
【0054】
以上でダイナミックレンジの向上についての説明を終了する。なお、上述のように、ダイナミックレンジの向上を、第1実施形態に係る超音波プローブ100を具体例に挙げて説明した。しかしながら、上述のダイナミックレンジの向上に関する実施形態は、第2及び第3実施形態についても同様に適用可能である。
【0055】
次に、本実施形態に係る超音波プローブによる超音波撮像処理の流れについて説明する。なお以下の説明を具体的に行うため、第1実施形態に係る超音波プローブ100を具体例に挙げて本実施形態に係る超音波撮像処理を説明する。
【0056】
図12は、本実施形態に係る超音波プローブによる超音波撮像処理の典型的な流れを示す図である。なお図12の処理の流れは、典型的には、受信素子(入力チャンネル)毎に行われる。ステップS100において、2次元振動子アレイ41における受信素子により超音波エコーが受信される。例えば、2次元振動子アレイ41は、N個の受信素子からN個のチャンネル信号を出力する。受信部420Aは、2次元振動子アレイ41からN個のチャンネル信号を受信する。
【0057】
ステップS200において、受信されたN個のチャンネル信号は、前処理される。具体的には、ステップS200において、N個のチャンネル信号は、低雑音増幅器421と電圧利得増幅器422とに順番に供される。例えば、まず低雑音増幅器421は、2次元振動子アレイ41から直接的に受信されたN個のチャンネル信号に低雑音増幅を施す。この際、2次元振動子アレイ41と低雑音増幅器421との間においてN個のチャンネル信号に対する接続切替えや他の信号処理は行われない。次に電圧利得増幅器422は、低雑音増幅器421からのチャンネル信号に電圧利得増幅を施す。なおステップS200における前処理は、低雑音増幅と電圧利得増幅との組み合わせに限定されず、他の前処理がステップS200に組み込まれても良い。前処理によりチャンネル信号の雑音が減少する。
【0058】
ステップS200において前処理が施された後、ステップS300において、各入力チャンネルについて接続切替え処理(スイッチング処理)が行われるか否かが決定される。ステップS300において接続切替え処理が行われると決定された場合、ステップS400が実行される。一方、ステップS300において接続切替え処理が行われないと決定された場合、ステップS400が実行されず、ステップS500が実行される。
【0059】
ステップS300において接続切替え処理が行われた場合(ステップS300:YES)、ステップS400において、マルチプレクサ423により同一グループに属する複数の入力チャンネルが単一の出力チャンネルに統合される。マルチプレクサ423は、出力チャンネルの本数を入力チャンネルの本数よりも減少させる。このようにして、マルチプレクサ423へのN個のチャンネル信号は、M個のチャンネル信号に統合される。なお、マルチプレクサ423は、クロスポイントスイッチ426等の他の接続切替え装置により実現されても良い。
【0060】
ステップS400が行われた場合またはステップS300において接続切替えを行わないと決定された場合(S300:NO)、さらなる信号処理がステップS500において超音波プローブ内または超音波プローブの外部で実行される。例えば、マルチプレクサ423からのM個のチャンネル信号は、A/D変換器424によりA/D変換され、ビームフォーマ425により遅延加算される。A/D変換の分解能は、出力チャンネル数と入力チャンネル数との比率に応じて決定される。ビームフォーマ425は、A/D変換器424からのデジタル信号を受信し、超音波ビームを形成するために、受信されたデジタル信号に遅延加算を施す。なおステップS500における後処理は、上記の処理のみに限定されない。
【0061】
ステップS500の後、ステップS600において超音波撮像処理を終了するか否かが決定される。例えば、ユーザにより撮像終了指示がなされた場合、超音波撮像処理を終了すると決定される。撮像終了指示がなされない場合、超音波撮像処理を継続すると決定される。超音波撮像処理を継続すると決定された場合、ステップS100に進む。このようにして、ステップS600において、超音波撮像処理を終了すると決定されるまで、超音波撮像が繰り返し行われる。そしてステップS600において、超音波撮像処理を終了すると決定された場合、超音波撮像処理が終了される。
【0062】
以上で本実施形態に係る超音波プローブによる超音波撮像処理の流れについての説明を終了する。なお、上述のように、超音波撮像処理を、第1実施形態に係る超音波プローブ100を具体例に挙げて説明した。しかしながら、上述の超音波撮像処理は、第2及び第3実施形態についても同様に適用可能である。
【0063】
上記の説明のように、本実施形態に係る超音波プローブは、受信部420に接続切替え部423または426を設けている。より具体的には、ビームフォーマ425の前段に接続切替え部423または426が設けられている。これにより受信部420におけるチャンネル数や各種信号処理のための電子部品数を減少させることができる。従って、受信部420に要する電力を削減することができたり、受信部420から発生する熱量を低減させたりすることができる。また、接続切替え部423または426の後段のチャンネル数の削減により、単一の走査面を利用するサーベイモードにおけるフレームレートが向上する。より詳細には、本実施形態に係る接続切替え部423または426は、低雑音増幅器421や電圧利得増幅器422の後段に設けられている。従って本実施形態に係る超音波プローブは、低雑音増幅器421や電圧利得増幅器422の前段に接続切替え部423または426が設けられている場合に比して、接続切替え部423または426が発生するノイズやインピーダンス変化による感度低下を低減することができる。また、接続切替え部423または426の後段のチャンネル数の削減に伴い、超音波プローブの製造コストを低減したり、超音波プローブを小型化したりすることができる。また、接続切替え部423または426の後段のチャンネル数の削減に伴う余剰電力を、ダイナミックレンジの向上やA/D変換の分解能の向上のために割り当てることができ、結果的に画質が向上する。
【0064】
本実施形態によれば、サーベイモードにおいて画質が改善されることに伴い、超音波検査のワークフローを改善及び効率化することができる。X線診断装置やX線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置のような他の画像診断装置と同様に、改善されたワークフローは、出来るだけ速くデータを収集するように被検体を超音波診断装置により検査することができる。これにより、被検体が検査を終えた後、診断画像は、可能な限り早く事後的に画像処理されたり画像解析されたりする。ボリューム撮像(または超音波断層撮影)の登場により、2次元アレイの超音波プローブを利用した1回の超音波走査により、事後的な画像処理や画像解析に必要な全てのデータを収集することができる。診断に必要なボリュームデータを収集するために、サーベイモードが3次元撮像モードや4次元撮像モードの前に実行される。サーベイモードにより、ユーザは、3次元撮像モードや4次元撮像モードにおける超音波プローブの適切な位置やスキャンパラメータの適切な設定値を決定することができる。結果的に、改善されたワークフローは、画像診断装置の有用性を向上させる。また、超音波検査全体の消費電力を削減することができる。
【0065】
かくして、超音波検査のワークフローの改善を実現する超音波撮像方法及び超音波プローブを提供することが可能となる。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0067】
41…2次元振動子アレイ、420A…受信部、421…低雑音増幅器、422…電圧利得増幅器、423…マルチプレクサ、424…A/D変換器、425…ビームフォーマ、430A…送信部、431…送信発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子アレイに含まれる複数の送信素子から被検体に向けて超音波パルスを送信し、
前記被検体からの超音波エコーを、前記振動子アレイに含まれる第1の個数の受信素子により受信することであって、前記受信された超音波エコーは、前記第1の個数のチャンネル信号に変換され、
前記第1の個数のチャンネル信号から前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生するために、前記第1の個数のチャンネル信号を前処理し、
前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合すること、
を具備する超音波撮像方法。
【請求項2】
前記第1の個数は、前記振動子アレイに含まれる全ての受信素子の個数である、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項3】
前記第1の個数は、前記振動子アレイに含まれる全ての受信素子の個数よりも少ない、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項4】
前記統合することは、前記第2の個数と前記振動子アレイにおける前記受信素子の配置との組み合わせに応じて変更可能である、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項5】
前記前処理することは、前記第1の個数のチャンネル信号に低雑音増幅を施すこと、をさらに備える、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項6】
前記前処理することは、前記第1の個数のチャンネル信号に電圧利得増幅を施すこと、をさらに備える、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項7】
前記前処理することは、前記第1の個数のチャンネル信号に低雑音増幅と電圧利得増幅とを施すこと、をさらに備える、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項8】
前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換し、
前記デジタル信号に基づいて超音波受信ビームを形成する、
ことをさらに備える、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項9】
前記変換することに関する分解能は、前記第2の個数と前記第1の個数との比率に応じて決定される、請求項8記載の超音波撮像方法。
【請求項10】
前記統合することは、所望の超音波ビームに沿う信号の忠実度を最適化するために実行される、請求項1記載の超音波撮像方法。
【請求項11】
被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する振動子アレイと、
前記第1の個数のチャンネル信号を前処理し、前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生する前処理部と、
前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する接続切替え部と、
を具備する超音波プローブ。
【請求項12】
前記第1の個数は、前記振動子アレイに含まれる全ての受信素子の個数である、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項13】
前記第1の個数は、前記振動子アレイに含まれる全ての受信素子の個数よりも少ない、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項14】
前記接続切替え部は、前記第2の個数と前記振動子アレイにおける前記受信素子の配置との組み合わせに応じて変更可能である、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項15】
前記前処理部は、前記第1の個数のチャンネル信号に低雑音増幅を施す低雑音増幅器を有する、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項16】
前記前処理部は、前記第1の個数のチャンネル信号に電圧利得増幅を施す電圧利得増幅器をさらに有する、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項17】
前記前処理部は、
前記第1の個数のチャンネル信号に低雑音増幅を施す低雑音増幅器と、
前記低雑音増幅を施されたチャンネル信号に電圧利得増幅を施す電圧利得増幅器と、を有する、
請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項18】
前記接続切替え部に接続され、前記接続切替え部からの前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記A/D変換器に接続され、前記A/D変換器からのデジタル信号に基づいて超音波受信ビームを形成するビームフォーマと、をさらに備える、
請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項19】
前記A/D変換器のダイナミックレンジは、前記第2の個数と前記第1の個数との比率に応じて決定される、請求項18記載の超音波プローブ。
【請求項20】
前記接続切替え部は、所望の超音波ビームに沿う信号の忠実度を最適化するために実行される、請求項11記載の超音波プローブ。
【請求項21】
被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する振動子アレイと、
前記振動子アレイに接続され、前記第1の個数のチャンネル信号を前処理し、前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生する前処理部と、
前記前処理部に接続され、前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する接続切替え部と、
前記接続切替え部に接続され、前記接続切替え部からの前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換する部であって、前記第2の個数と前記第1の個数との比率に応じてダイナミックレンジが決定されるA/D変換部と、
を具備する超音波プローブ。
【請求項22】
被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する振動子アレイと、
前記振動子アレイに接続され、前記第1の個数のチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する接続切替え部と、
前記接続切替え部に接続され、前記接続切替え部からの前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換する部であって、前記第2の個数と前記第1の個数との比率に応じてダイナミックレンジが決定されるA/D変換部と、
を具備する超音波プローブ。
【請求項23】
振動子アレイに含まれる複数の送信素子から被検体に向けて超音波パルスを送信し、
前記被検体からの超音波エコーを、前記振動子アレイに含まれる第1の個数の受信素子により受信することであって、前記受信された超音波エコーは、前記第1の個数のチャンネル信号に変換され、
前記第1の個数のチャンネル信号から前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を発生するために、前記第1の個数のチャンネル信号を前処理し、
前記第1の個数の前処理されたチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合し、
前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換することであって、前記第2の個数と前記第1の個数との比率に応じてダイナミックレンジが決定される、
を具備する超音波撮像方法。
【請求項24】
振動子アレイに含まれる複数の送信素子から被検体に向けて超音波パルスを送信し、
前記被検体からの超音波エコーを、前記振動子アレイに含まれる第1の個数の受信素子により受信することであって、前記受信された超音波エコーは、前記第1の個数のチャンネル信号に変換され、
前記第1の個数のチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合し、
前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換し、
前記デジタル信号に基づいて超音波受信ビームに関するデジタル信号を生成すること、
を具備する超音波撮像方法。
【請求項25】
被検体に向けて超音波パルスを送信するための複数の送信素子と、前記被検体からの超音波エコーを受信して前記受信された超音波エコーを前記第1の個数のチャンネル信号に変換するための第1の個数の受信素子とを有する振動子アレイと、
前記第1の個数のチャンネル信号を、前記第1の個数よりも少ない第2の個数の出力チャンネル信号に統合する接続切替え部と、
前記第2の個数の出力チャンネル信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記デジタル信号に基づいて超音波受信ビームに関するデジタル信号を生成するビームフォーマと、
を具備する超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−66051(P2012−66051A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150107(P2011−150107)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】