説明

超音波放射体、超音波放射装置、超音波処理装置

【課題】超音波の放射面積を十分に確保し、超音波を均一に放射することができる超音波放射体を提供すること。
【解決手段】超音波放射体15は、径方向に軸対称振動をする複数の振動体21を備える。各振動体21は、中心部に貫通孔23を有し、その軸方向から見た平面視で正八角形状に形成されている。超音波放射体15において、振動体21の外面が接続された状態で該各振動体21が複数行及び複数列からなるマトリクス状に規則正しく配列されている。超音波放射体15は、行方向及び列方向において隣り合う振動体21が交互に伸縮を繰り返すことにより各振動体21から超音波を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を放射するための超音波放射体、その超音波放射体を備える超音波放射装置及び超音波処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波エネルギーの利用による化学的作用(ソノケミストリー)と機械的・物理的作用の両面を利用した化学工学的プロセスはソノプロセスと呼ばれている。ソノプロセスは、高効率で環境負荷が少ないプロセスとして近年注目されており、環境、エネルギー、バイオ、材料などの幅広い産業分野への応用が期待されている。超音波キャビテーションによる物理的・化学的作用を利用した液体プロセスとしては、洗浄、分散、乳化、混合、攪拌、破砕、抽出、結晶成長促進、環境浄化、材料合成、殺菌、高分子重合、化学反応促進などのプロセスが挙げられる。また、超音波は単独で使用するよりも他のプロセス(オゾン、紫外線、電磁波、電気分解、プラズマ、光触媒、マイクロバブル、過酸化水素、還元剤や薬剤の添加、加熱、減圧などのプロセス)と併用することで効果を発揮できる場合が多い。
【0003】
液体プロセスを行う具体的な超音波処理装置としては、例えば、反応槽の内壁に超音波振動子が取り付けられ、その超音波振動子から反応槽内に超音波が放射される反応装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、洗浄槽における底板外面に超音波振動子が取り付けられ、超音波振動子によって底板(振動板)を振動させることにより、その底板から洗浄液中に超音波が放射される洗浄装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−202277号公報
【特許文献2】特開2003−320328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の超音波処理装置において、超音波キャビテーション(気泡)は、超音波振動子の周りや液面付近などに局在するため、処理槽の全体を反応に寄与させた装置を作製することが困難であった。例えば、特許文献1の反応装置では、槽壁面の一部に超音波振動子が設けられ、この振動子から槽中心に向かって超音波が放射される。この反応装置では、超音波の放射面積が小さいため、槽内に伝搬される超音波の音場が不均一になる。また、放射される超音波のエネルギーも小さいので、反応の処理量を十分に確保することができない。従って、プラントレベルに対応した大量処理が可能な処理装置を実現することが困難である。
【0006】
また、特許文献2の洗浄装置では、洗浄槽の底板から超音波が放射される。この洗浄装置において、キャビテーション(気泡)が活発に発生する位置は、超音波の定在波音圧の腹位置に限られる。また、洗浄槽が深くなると、気泡の膨張・収縮による超音波の吸収・拡散が顕著になるため、底板の振動面から遠方では超音波の強度が弱くなって洗浄能力が低下してしまう。
【0007】
さらに、超音波ホモジナイザ等で使用される強力なホーン型の超音波放射体を用いた超音波処理装置も具体化されている。この超音波処理装置では、キャビテーション(気泡)が活発に発生するエリアがホーン放射面の近傍に限られるため、反応エリアが非常に狭いといった欠点がある。特に、被処理液体に粘性がある場合、超音波の減衰が激しいため、ホーン近傍でしか超音波効果は得られない。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波の放射面積を十分に確保し、被処理液体に対して超音波を均一に放射することができる超音波放射体、及び超音波放射装置を提供することにある。また、別の目的は、前記超音波放射体から超音波を均一に放射して、被処理液体の処理を効率よく行うことができる超音波処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、径方向に軸対称振動をする複数の振動体を備えた超音波放射体であって、前記振動体の外面が接続された状態で該各振動体が複数行及び複数列からなるマトリクス状に規則正しく配列され、行方向及び列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すことにより前記各振動体から超音波を放射することを特徴とする超音波放射体をその要旨とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によると、径方向に軸対称振動をする複数の振動体が複数行及び複数列からなるマトリクス状に規則正しく配列され、隣り合う振動体が交互に伸縮を繰り返すことにより各振動体から超音波が放射される。このように超音波放射体を構成すると、超音波の放射面の面積を十分に確保することができる。従って、超音波放射体から被処理液体に超音波を均一に作用させることができ、多数のキャビテーションをムラなく発生させることができる。さらに、比較的強いエネルギーの超音波が作用する近距離音場が各振動体の周囲に形成されるため、超音波の減衰が少なく、強力なキャビテーションを発生させることができる。また、比較的広い範囲で超音波キャビテーションによる均一な反応場が形成されるため、被処理液体の処理を効率よく確実に行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記振動体は、中心部に貫通孔を有する円柱状または多角柱状に形成され、前記振動体の外面側に加えて、前記貫通孔の内面側から超音波を放射することをその要旨とする。
【0012】
請求項2に記載の発明によると、振動体の外面側に加えて、貫通孔の内面側から超音波を放射することができ、被処理液体の処理効率を高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の超音波放射体と、前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器とを備えたことを特徴とする超音波放射装置をその要旨とする。
【0014】
請求項3に記載の発明によると、超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に複数の超音波振動子が設けられおり、超音波発振器から出力された駆動信号によって複数の超音波振動子が駆動される。そして、各超音波振動子によって、隣り合う振動体が交互に伸縮を繰り返すように各振動体が振動され、各振動体の外周面や内周面から超音波が放射される。この場合、行方向の端部に配置された超音波振動子と列方向の端部に配置された超音波振動子との超音波パワーを合成して各振動体を振動させることができる。従って、本発明の超音波放射装置では、各振動体から高出力の超音波を放射することができ、キャビテーションをより確実に発生させることができる。この結果、被処理液体の処理を効率よく確実に行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3において、前記行方向及び前記列方向に直交する方向に、複数の前記超音波放射体が積層されたことをその要旨とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によると、複数の超音波放射体が積層されるので、超音波の放射面積を十分に増やすことができ、被処理液体の処理効率を高めることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、被処理液体を流す配管の途中に設けられ、前記被処理液体の流通方向と前記振動体の軸方向とを合わせた状態で配置される請求項1または2に記載の超音波放射体と、前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器とを備えたことを特徴とする超音波処理装置をその要旨とする。
【0018】
請求項5に記載の発明によると、超音波放射体は、被処理液体を流す配管の途中に設けられ、被処理液体の流通方向と振動体の軸方向とを合わせた状態で配置されている。また、超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に複数の超音波振動子が設けられおり、超音波発振器から出力された駆動信号によって複数の超音波振動子が駆動される。そして、各超音波振動子によって、隣り合う振動体が交互に伸縮を繰り返すように各振動体が振動され、各振動体の外周面や内周面から超音波が放射される。この場合、超音波放射体において、各振動体の行方向の端部に配置された超音波振動子と列方向の端部に配置された超音波振動子との超音波パワーを合成して各振動体を振動させることができる。従って、各振動体から高出力の超音波を放射することができ、キャビテーションを確実に発生させることができる。また、配管の被処理液体は、超音波放射体の周囲に形成される反応場(近距離音場)に確実に流通するため、被処理液体の処理を効率よく確実に行うことができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、被処理液体を貯留する処理槽内に設けられた請求項1または2に記載の超音波放射体と、前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器とを備えたことを特徴とする超音波処理装置をその要旨とする。
【0020】
請求項6に記載の発明によると、被処理液体を貯留する処理槽内に超音波放射体が設けられている。また、超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に複数の超音波振動子が設けられており、超音波発振器から出力された駆動信号によって複数の超音波振動子が駆動される。そして、各超音波振動子によって、隣り合う振動体が交互に伸縮を繰り返すように各振動体が振動され、各振動体の外周面や内周面から超音波が放射される。この場合、超音波放射体において、各振動体の行方向の端部に配置された超音波振動子と列方向の端部に配置された超音波振動子との超音波パワーを合成して各振動体を振動させることができる。従って、各振動体から高出力の超音波を放射することができ、キャビテーションを確実に発生させることができる。また、処理槽内の被処理液体に超音波放射体から超音波を均一に作用させることができるため、被処理液体の処理を効率よく確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、超音波放射体における超音波の放射面積を十分に確保し、被処理液体に対して超音波を均一に放射することができる。また、請求項5または6に記載の発明によると、超音波放射体から超音波を均一に放射して、被処理液体の処理を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一実施の形態の超音波放射装置を示す概略構成図。
【図2】一実施の形態の超音波処理装置を示す平面図。
【図3】一実施の形態の超音波放射体を示す平面図。
【図4】一実施の形態の超音波放射体の振動モードを示す説明図。
【図5】別の実施の形態の超音波放射体を示す平面図。
【図6】別の実施の形態の超音波処理装置を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を超音波処理装置に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、本実施の形態の超音波放射装置を示す概略構成図である。図2は、その超音波放射装置を用いて構成された超音波処理装置を示す平面図である。
【0024】
図2に示されるように、本実施の形態の超音波処理装置11は、被処理液体W1を流す配管12(流通型容器)と、その配管12の途中に設けられる超音波放射装置13とによって構成されている。この超音波処理装置11は、被処理液体W1に超音波を作用させることにより、ソノケミカル反応を発生させる反応装置である。
【0025】
図1に示されるように、超音波放射装置13は、超音波放射体15と、超音波放射体15を支持する支持フレーム16と、超音波放射体15を振動させる複数の超音波振動子17と、各超音波振動子17を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器18とを備える。
【0026】
図3に示されるように、超音波放射体15は、外面が接続された状態で複数行及び複数列からなるマトリクス状に規則正しく配列された複数の振動体21と、各振動体21の行方向及び列方向の端部に延設された縦振動伝送体22とからなる。各振動体21は、中心部に貫通孔23を有する正八角形の柱状に形成されており、径方向に軸対称振動をする。本実施の形態の超音波放射体15では、3行×3列の振動体21が配置されている。これら振動体21における径方向の外形寸法(八角形の外接円の直径)は、20mm程度であり、軸方向の厚さは、10mm程度である。
【0027】
超音波放射体15を構成する縦振動伝送体22は、直径が10mm程度の円柱状に形成された伝送体であって、半波長共振をして超音波を各振動体21に伝搬する。超音波放射体15において、各振動体21の配列方向と平行に各縦振動伝送体22が設けられている。なお、本実施の形態の超音波放射体15は、連結部分のない一体の金属塊(例えば、ステンレス鋼の塊)からなり、例えば、ロストワックス製法にて成形されている。また、超音波放射体15は、ステンレス鋼板などの金属塊を切削加工することで形成してもよい。
【0028】
図1に示されるように、超音波放射体15においてマトリクス状に配列した各振動体21を取り囲むように支持フレーム16が設けられている。そして、超音波放射体15における各縦振動伝送体22の端部が支持フレーム16の外部に突出している。支持フレーム16は、4つの側壁部25からなる四角形状の枠体であり、超音波放射体15を支持するとともに、被処理液体W1を流すための流路の外壁面を形成する。支持フレーム16において、それぞれの側壁部25には3つの貫通溝26が形成されており、各貫通溝26に縦振動伝送体22が挿通された状態で超音波放射体15が固定される。本実施の形態において、支持フレーム16は、半波長共振する縦振動伝送体22の振動節位置に設けられている。
【0029】
図2に示されるように、2つの配管12の連結部分に、超音波放射体15を固定した支持フレーム16が配置される。より詳しくは、各配管12の端部に設けられたフランジ部31と支持フレーム16との間にパッキン32が介在され、その状態でボルト33を用いて支持フレーム16が配管12に連結されている。このように、支持フレーム16を配管12に連結することにより、支持フレーム16内において、超音波放射体15の各振動体21の外面にて形成される流路や、各振動体21の貫通孔23の内面にて形成される流路に、配管12からの被処理液体W1が流れるようになっている。
【0030】
また、図1に示されるように、超音波放射体15において、支持フレーム16の側壁部25から突出している縦振動伝送体22の端面に、超音波振動子17がネジなどの連結手段35によってそれぞれ接続固定されている。本実施の形態では、12個の超音波振動子17が超音波放射体15に固定されている。超音波振動子17は、ボルト締めランジュバン型縦振動子(圧電振動子)であり、圧電セラミックスを2つの金属ブロックで挟み込んでボルトで締め付けた構造を有している。
【0031】
各超音波振動子17は、超音波発振器18に電気的に接続されており、その超音波発振器18から供給される駆動信号(高周波電力)に基づいて機械振動する。なお、超音波発振器18から出力される駆動信号の周波数は、各振動体21が径方向軸対称振動モードで共振する共振周波数付近に設定され、例えば60kHz程度の周波数である。
【0032】
本実施の形態では、隣り合う超音波振動子17において、振動位相を逆相とするために分極方向の異なる超音波振動子17を互い違いに配置している。そして、各超音波振動子17の機械振動が縦振動伝送体22を介して各振動体21に伝搬される。このとき、超音波放射体15において隣り合う各振動体21の振動モードの位相が逆相となる。この結果、図4に示されるように、行方向及び列方向において隣り合う各振動体21が交互に伸縮を繰り返すように各振動体21が振動され、各振動体21の外面及び貫通孔23の内面から被処理液体W1中に超音波が放射される。そして、各振動体21からの超音波の放射によって、被処理液体W1中にキャビテーションが発生し、被処理液体の化学反応処理が行われる、
【0033】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0034】
(1)本実施の形態の超音波処理装置11では、複数の振動体21が行方向及び列方向に配列した超音波放射体15を用いており、各振動体21の中央部に貫通孔23が形成されている。この場合、各振動体21の外周面及び内周面が超音波の放射面となり、その放射面の面積を十分に確保することができる。また、超音波放射体15における各振動体21は、超音波振動子17によって軸対称に振動される。この結果、被処理液体W1に超音波を均一に作用させることができ、多数のキャビテーションをムラなく発生させることができる。さらに、超音波処理装置11では、比較的強いエネルギーの超音波が作用する近距離音場が各振動体21の周囲及び貫通孔23内に形成される。このため、超音波の減衰が少なく、強力なキャビテーションを発生させることができる。また、超音波放射体15によって、比較的広い範囲で超音波キャビテーションによる均一な反応場が形成され、被処理液体W1の処理(例えば、化学反応による物質の分解処理や材料の合成処理)を効率よく行うことができる。
【0035】
(2)本実施の形態の超音波処理装置11では、被処理液体W1を流す配管12の途中に超音波放射装置13が設けられ、被処理液体W1の流通方向と振動体21の軸方向とを合わせた状態で超音波放射体15が配置されている。この場合、配管12の被処理液体W1は、超音波放射体15の周囲に形成された反応場(近距離音場)に確実に流通するため、被処理液体W1の処理を効率よく確実に行うことができる。
【0036】
(3)本実施の形態では、超音波放射体15を構成する各振動体21は、その軸方向から見た平面視で正八角形状に形成されているので、各振動体21の外面の接続を容易に行うことができる。また、各振動体21の外面によって、被処理液体W1を流すための流路を配管12の流通方向と平行な方向に形成することができる。さらに、各振動体21には被処理液体W1の流路となる貫通孔23が形成されるので、被処理液体W1の流量を十分に確保することができる。
【0037】
(4)本実施の形態の超音波放射装置13では、各振動体21の行方向及び列方向の両端に超音波振動子17が配置されており、これら超音波振動子17の超音波パワーを合成して各振動体21を振動させることができる。具体的には、超音波放射体15における各振動体21には4つの超音波振動子17(図1では左右方向及び上下方向に配置される各超音波振動子17)から超音波が伝搬され、各振動体21で超音波が合成されて出力されるようになっている。このように超音波放射装置13を構成すると、各振動体21から高出力の超音波を被処理液体W1に放射することができる。
【0038】
(5)本実施の形態では、超音波放射体15の縦振動伝送体22における振動節位置に支持フレーム16が設けられているので、支持フレーム16での振動漏れがなく、超音波放射体15を安定的に支持することができる。また、パッキン32を介して配管12側に振動が伝わらないので、支持フレーム16と配管12との連結部におけるシール性を長期間にわたって確保することができる。さらに、超音波放射装置13の支持フレーム16はボルト33で連結することで配管12に装着されている。この場合、配管12に対する超音波放射装置13の着脱を容易に行うことができ、超音波放射装置13のメンテナンス性を高めることができる。
【0039】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0040】
・上記実施の形態では、超音波放射体15を構成する各振動体21が正八角形状に形成されていたが、軸対称振動をするものであれば、その形状を適宜変更することができる。具体的には、例えば、図5に示すように、円柱状の振動体21Aをマトリクス状に配置して超音波放射体15Aを形成してもよい。なお、上記実施の形態の振動体21,21Aは、中央に貫通孔23を有するものであったが、貫通孔23が形成されていない円柱状や多角柱状の振動体によって超音波放射体を形成してもよい。
【0041】
・上記実施の形態の超音波処理装置11では、配管12の途中に超音波放射装置13の超音波放射体15を配置する構成としたが、これに限定されるものではない。具体的には、例えば、被処理液体W1を貯留する処理槽内に超音波放射体15を配置して、超音波処理装置を構成してもよい。なおこの場合、超音波放射体15を支持する支持フレーム16を処理槽の側壁に装着する。そして、超音波放射体15における縦振動伝送体22の端部を処理槽の側壁から外部に突出させ、その縦振動伝送体22の端部に超音波振動子17を固定することで超音波処理装置を構成する。このようにしても、処理槽内に貯留された被処理液体W1にキャビテーションを均一に発生させることができ、被処理液体W1の処理を効率よく行うことができる。
【0042】
・上記実施の形態の超音波処理装置11では、振動体21が3行×3列で配列した超音波放射体15,15Aを用いたが、超音波放射体15,15Aにおける行方向及び列方向の振動体21,21Aの配列数は、配管12や処理槽のサイズ、作用させる超音波の周波数等に応じて適宜変更することができる。また、各振動体21のサイズも、作用させる超音波の周波数に応じて適宜変更することができる。
【0043】
・上記実施の形態では、超音波放射体15,15Aは、一体的に成形されるものであったが、各振動体21や各縦振動伝送体22を個別に形成して、ネジなの連結手段にて各振動体21や各縦振動伝送体22を連結することで超音波放射体15,15Aを形成してもよい。超音波放射体15,15Aを分離可能に形成する場合、エロージョン等によってダメージを受けた振動体21,21Aを適宜変更することができる。このようにすると、超音波放射装置13において超音波放射体15,15Aを修理交換する際のメンテナンスコストを低く抑えることができる。
【0044】
・上記実施の形態の超音波処理装置11では、被処理液体W1の化学反応を行う反応装置であったが、化学反応以外のソノプロセス(洗浄、分散、乳化、混合、攪拌、破砕、抽出、結晶成長促進、環境浄化、殺菌など)を行う装置として具体化してもよい。また、オゾン、紫外線、電磁波、電気分解、プラズマ、光触媒、マイクロバブルなどの他のプロセスと併用した超音波処理装置として具体化してもよい。
【0045】
・上記実施の形態の超音波処理装置11は、配管12の途中に1つの超音波放射体15を設けるものであったが、これに限定されるものではない。図6に示される超音波処理装置11Aのように、超音波放射体15とその超音波放射体15を支持した支持フレーム16とからなる超音波放射モジュールを配管12の途中に多段状に積層して処理装置を構成してもよい。この超音波処理装置11Aでは、配管12内を流れる被処理液体W1の流通方向に沿って複数の超音波放射体15が配置される。このため、被処理液体W1の流速を速めて処理量を増大させた場合でも、各段の超音波放射体15における各振動体21から超音波を確実に作用させることができ、キャビテーションによるソノプロセスを効率よく行うことができる。このようにすると、プラントレベルに対応して超音波処理装置11Aの大型化を実現することができ、難分解性物質の大量処理や材料合成での大量生成を行うことが可能となる。
【0046】
・図6に示される超音波処理装置11Aにおいて、配管12の上流側の超音波放射体15と下流側の超音波放射体15とで異なる周波数で各振動体21を振動させるように構成してもよい。具体的には、上流側の超音波放射体15から低周波の超音波を被処理液体W1に作用させた後、下流側の超音波放射体15から高周波の超音波を被処理液体W1に作用させるように構成する。このように超音波処理装置11Aを構成すると、例えばソノプロセスとして分散処理を行う場合、比較的大きな粒体粒子を上流側で粉砕し、下流側でさらに微細な粒子に粉砕することができ、分散処理を効率よく確実に行うことができる。
【0047】
・上記実施の形態の超音波放射体15は、複数の振動体21が行方向及び列方向に二次元的に配列される放射体であったが、それら行方向及び列方向に加えて、行方向及び列方向と直交する方向にも複数の振動体21を配列させてもよい。すなわち、複数の振動体21を三次元的に配列した超音波放射体を形成してもよい。なおこの場合、球体や多角形状の振動体を用いて立体的な超音波放射体を形成することが好ましい。また、この立体的な超音波放射体は、例えば処理槽内に配置されて使用される。さらに、立体的な超音波放射体では、行方向及び列方向と直交する方向の両端にも超音波振動子17を配置して、縦振動伝送体22を介して各振動体21を振動させるように構成する。このように構成すると、行方向及び列方向に配置された4つの超音波振動子17に加えて、直交方向からの2つの超音波振動子17によって各振動体21を振動させることができ、より強力な超音波を各振動体21から放射することが可能となる。
【0048】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0049】
(1)請求項1または2において、前記複数の振動体が一体的に連結された金属塊からなることを特徴とする超音波放射体。
【0050】
(2)請求項1または2において、前記複数の振動体が分離可能に形成されたことを特徴とする超音波放射体。
【0051】
(3)請求項1または2において、前記複数の振動体は、その軸方向から見た平面視で正八角形状に形成されていることを特徴とする超音波放射体。
【0052】
(4)請求項3または4において、前記超音波放射体を支持するための支持フレームをさらに備え、前記超音波放射体には、前記各振動体の前記行方向及び前記列方向の端部に延設され、半波長共振して超音波を前記各振動体に伝搬する縦振動伝送体が設けられ、前記半波長共振する前記縦振動伝送体の振動節位置に前記支持フレームが固定されることを特徴とする超音波放射装置。
【0053】
(5)請求項5において、前記配管の途中にて前記被処理液体の流通方向に沿って複数の前記超音波放射体を配置し、上流側の前記超音波放射体と下流側の前記超音波放射体とで異なる周波数で前記各振動体を振動させるようにしたことを特徴とする超音波処理装置。
【符号の説明】
【0054】
11,11A…超音波処理装置
12…配管
13…超音波放射装置
15,15A…超音波放射体
17…超音波振動子
18…超音波発振器
21,21A…振動体
23…貫通孔
W1…被処理液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に軸対称振動をする複数の振動体を備えた超音波放射体であって、
前記振動体の外面が接続された状態で該各振動体が複数行及び複数列からなるマトリクス状に規則正しく配列され、行方向及び列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すことにより前記各振動体から超音波を放射することを特徴とする超音波放射体。
【請求項2】
前記振動体は、中心部に貫通孔を有する円柱状または多角柱状に形成され、前記振動体の外面側に加えて、前記貫通孔の内面側から超音波を放射することを特徴とする請求項1に記載の超音波放射体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波放射体と、
前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器と
を備えたことを特徴とする超音波放射装置。
【請求項4】
前記行方向及び前記列方向に直交する方向に、複数の前記超音波放射体が積層されたことを特徴とする請求項3に記載の超音波放射装置。
【請求項5】
被処理液体を流す配管の途中に設けられ、前記被処理液体の流通方向と前記振動体の軸方向とを合わせた状態で配置される請求項1または2に記載の超音波放射体と、
前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器と
を備えたことを特徴とする超音波処理装置。
【請求項6】
被処理液体を貯留する処理槽内に設けられた請求項1または2に記載の超音波放射体と、
前記超音波放射体における複数の振動体の行方向及び列方向の端部に設けられ、前記行方向及び前記列方向において隣り合う前記振動体が交互に伸縮を繰り返すように前記各振動体を振動させる複数の超音波振動子と、
前記複数の超音波振動子を駆動するための駆動信号を出力する超音波発振器と
を備えたことを特徴とする超音波処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−107059(P2013−107059A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255648(P2011−255648)
【出願日】平成23年11月23日(2011.11.23)
【出願人】(000243364)本多電子株式会社 (255)
【Fターム(参考)】