超音波治療システム
【課題】既存の超音波画像形成装置を活用して臓器等の立体画像を形成し、また治療用超音波を照射対象へ容易に合わせ込むことができる、したがって非侵襲でありながら正確な診断と治療ができる、超音波治療システムを提供する。
【解決手段】血管1601を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、トランスデューサユニット113を用いて、治療対象部位1604にマイクロバブルの凝集体1606を形成して誘導する。血管1601内の所望の箇所に凝集体1604を集めて血栓を形成し、治療対象部位1604の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【解決手段】血管1601を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、トランスデューサユニット113を用いて、治療対象部位1604にマイクロバブルの凝集体1606を形成して誘導する。血管1601内の所望の箇所に凝集体1604を集めて血栓を形成し、治療対象部位1604の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療システムに関する。
より詳細には、超音波を用いて非侵襲で患者を診断し、超音波を用いて非侵襲で患者に対する治療行為を行う、超音波治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療技術の進歩は著しく、人体の体内の状態を詳細に検査できる技術が発達している。中でも、超音波を用いる超音波検査装置は、X線等と比較すると人体に対する負荷が極めて低いので、妊婦に胎児の映像を見せる等の用途に用いられている。
なお、本発明に類似すると思われる技術内容を、非特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高橋修一、内山明彦、鈴木直樹:「術野内外の3次元構造と位置関係が観察可能な肝切除支援システム」、電子情報通信学会論文誌、Vol. J83-D-II, No.6, pp.1548-1555, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、医療現場で用いられている、超音波画像形成装置ともいえる超音波検査装置は、人体の局所的な二次元の断層像を得るに留まっている。このため、患部や臓器を立体的に視認する用途には適していない。
【0005】
また、近年では高い濃度の医薬をマイクロカプセルやマイクロバブルなどの薬物担体(以下、薬物担体)に収納し、血管内に放流して、薬物担体が患部に到達したら超音波を照射してカプセルを破壊し、医薬を患部に適用する、という「ドラッグデリバリーシステム」という技術の研究が進んでいる。更に、薬物担体を破壊する程度の比較的弱い(安全な)超音波よりも強力な、単独で生体組織そのものにダメージを与えて治療を行う、高密度焦点式超音波(HIFU, High-Intensity Focused Ultrasound)を用いた治療の研究も進められている。これ以降、本明細書ではドラッグデリバリーシステムに用いる超音波と、HIFUを総じて「治療用超音波」と定義する。
このような治療用超音波を患者に適用するために超音波検査装置を用いる場合、二次元の断層像だけでは治療用超音波を照射するための照準を合わせることが非常に困難である。
超音波画像形成装置を用いて、CTスキャンのような立体画像をリアルタイムに得ることができれば、このような用途に適うであろう。
【0006】
本発明は係る課題を解決し、既存の超音波画像形成装置を活用して臓器等の立体画像を形成し、また治療用超音波を照射対象へ容易に合わせ込むことができ、非侵襲でありながら化学的薬物や放射線を使用せずに正確な診断と治療ができる、超音波治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の超音波治療システムは、計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、プローブが接続されて計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、第一のアクチュエータを伴う誘導用トランスデューサと、第二のアクチュエータを伴う第一凝集体形成用トランスデューサと、第三のアクチュエータを伴う第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、誘導用トランスデューサ、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、誘導用トランスデューサに誘導用超音波を発生させると共に、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサに凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、プローブ、誘導用トランスデューサ、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、第一のマーカの空間座標情報に基づいて輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の輪郭画像を補間演算して立体画像を仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて誘導用トランスデューサが誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を仮想三次元空間内に配置し、誘導用トランスデューサが誘導用超音波を誘導用超音波照射対象に照射できるように第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサが凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を仮想三次元空間内に配置し、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサが凝集体形成用超音波を凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、画像合成兼制御装置が形成した仮想三次元空間及び立体画像を表示する表示部とを備える。
【0008】
超音波画像形成装置が出力する超音波断層画像から輪郭を抽出した後、プローブの三次元座標情報に基づいて輪郭データを仮想三次元空間内に配置する。輪郭データを複数取得して補間演算を実施すると、仮想三次元空間内に臓器の三次元画像を形成できる。更に、血管を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、治療用超音波でマイクロバブルの凝集体を形成して、治療対象部位に誘導する。血管内の所望の箇所に凝集体を集めて血栓を形成し、治療対象部位の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、既存の超音波画像形成装置を活用して臓器等の立体画像を形成し、また治療用超音波を照射対象へ容易に合わせ込むことができ、非侵襲でありながら化学的薬物や放射線を使用せずに正確な診断と治療ができる、超音波治療システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である、超音波治療システムの外観図である。
【図2】プローブの全体図である。
【図3】トランスデューサユニットの外観斜視図と上面図である。
【図4】トランスデューサの外観斜視図と上面図である。
【図5】較正板の外観斜視図である。
【図6】較正板の上面図である。
【図7】画像合成兼制御装置の機能ブロック図である。
【図8】本実施形態の超音波治療システムで行われる、診断及び治療の全体的な作業の流れを示すフローチャートである。
【図9】初期較正処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】プローブの筐体を含む平面と観察平面との間の誤差を示す概略図である。
【図11】観察平面の較正作業を示す概略図である。
【図12】臓器三次元画像形成処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】臓器三次元画像形成処理の流れを示す概略図である。
【図14】表示部に表示される仮想三次元空間の図である。
【図15】トランスデューサユニットの各トランスデューサの位置決め処理である。
【図16】本実施形態の超音波治療システムによって実現される、血管内の状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の概略を説明する。
本実施形態の超音波治療システムは、患者(被験者)に対して非侵襲的な診断と治療を実現する。具体的には、特に肝臓癌の治療を目的として、患者の血管に造影剤として用いられるマイクロバブルを注入し、癌細胞に至る動脈にマイクロバブルを超音波で凝集させ、血栓を形成する。血流が阻害されることで酸素及び栄養分の供給が絶たれた癌細胞は、時間経過と共に壊死する。つまり、本実施形態の超音波治療システムで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【0012】
液体中のマイクロバブルに特定の周波数の超音波を照射すると、マイクロバブルが凝集体を形成する現象は知られている。この凝集体は、血管中に血栓の形成を促してしまうため、本来なら忌み嫌われるべき現象である。そもそも、マイクロバブルは血管中で凝集せず、安全に血液中に存在させるために微小な気泡を形成した、という経緯がある。しかし、発明者は発想を転換し、血栓を癌細胞の攻撃に利用することができるのではないだろうか、と考えた。この発想の転換が本発明の発端である。
【0013】
血管内にマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためには、その前提として正確な血管の三次元画像が撮影できる必要がある。このために、本発明者が先に特願2010−99212にて出願した、超音波画像形成装置と光学式三次元計測装置を組み合わせた、画像合成兼制御装置を用いる。
【0014】
「エコー検査」として周知の超音波画像形成装置のプローブに、光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。画像合成兼制御装置は、超音波画像形成装置が出力する、二次元の超音波断層画像から輪郭を抽出し、光学式三次元計測装置が検出したプローブの三次元位置及び姿勢に基づいて、輪郭画像を仮想三次元空間内に配置する。画像合成兼制御装置は複数の輪郭を補完合成して、仮想三次元空間内に臓器の立体画像を形成する。
更に、治療用超音波を発する超音波治療装置のトランスデューサにも、光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。そして、画像合成兼制御装置が検出した患部或は標的の三次元画像に対して、トランスデューサの超音波射出方向及び射出距離を算出して、仮想三次元空間内に再現する。
【0015】
次に、血管内にマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためには、血管内の複数の箇所に複数種類の超音波を同時に照射する必要がある。このような高度な超音波トランスデューサの位置合わせを人手で行うことは不可能に近い。そこで、本発明者が先に特開2010−121976にて出願した、超音波トランスデューサやプローブ等を自在な角度で位置決めできるアクチュエータユニットを用いる。勿論、複数のトランスデューサ全てに光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。
本実施形態の超音波治療システムは、特願2010−99212にて開示した画像合成兼制御装置に、超音波照射目標を設定し、超音波照射目標に対して指定したアクチュエータユニットが超音波を照射できるように姿勢制御を行う機能を追加実装した形態である。
【0016】
[システム外観]
図1は、本発明の実施形態である、超音波治療システムの外観図である。但し、一部の機器については詳細な図示を省略し、概略的にブロックで図示している。
手術台102には被験者ともいえる患者103が横たわっている。この患者103に対し、図示しない医師は、周知の超音波画像形成装置104のプローブ105を、映像化したい臓器のある体表面に押し当てて撮影する。こうして、超音波画像形成装置104は超音波断層画像を得る。
一方、手術台102の側には赤外線ステレオカメラ106が三脚107によって固定されている。赤外線ステレオカメラ106は、手術台102の上の患者103の撮影対象となる臓器の周囲を認識できるように配置されている。赤外線ステレオカメラ106には空間座標取得装置108が接続されている。
プローブ105には、空間座標取得装置108が三次元空間内の位置及び姿勢を認識できるためのマーカ105aが取り付けられており、空間座標取得装置108はプローブ105の三次元空間内の位置及び姿勢のデータを出力する。
【0017】
赤外線ステレオカメラ106と空間座標取得装置108は、一例としては「Polaris(登録商標) Vicra」(http://www.ndigital.com/medical/polarisfamily.php)という既存の製品である。空間座標取得装置108は、赤外線ステレオカメラ106が認識可能な空間内にマーカの存在を認識すると、マーカの空間内における位置情報を、並進行列と回転行列の形式で出力する。
【0018】
画像合成兼制御装置109は、空間座標取得装置108が出力する、プローブ105の三次元空間内の位置及び姿勢のデータを受けて、仮想三次元空間内にプローブ105の三次元画像を描画し、ディスプレイ110に表示する。更に、超音波画像形成装置104が出力する超音波断層画像を受けて、超音波断層画像から撮影された臓器の輪郭を抽出し、仮想三次元空間内に配置する。仮想三次元空間内に臓器の輪郭を複数配置したら、画像合成兼制御装置109は各々の輪郭同士を補間演算して、臓器の三次元画像をディスプレイ110に表示する。
画像合成兼制御装置109は、「Virtual Reality(仮想現実)」及び「Argument Reality(拡張現実)」の技術を用いて、臓器を仮想三次元空間内に描画する。
【0019】
患者103の腹部と胸との間には、トランスデューサユニット113が据え置かれる。トランスデューサユニット113は、柔軟性を有する円弧状の基板に、超音波を発するトランスデューサを複数備える。図1では5個のトランスデューサが基板に設けられている。これらトランスデューサは、マイクロバブル誘導用とマイクロバブル凝集用とで、異なる周波数の超音波を発生する。マイクロバブル誘導用には周波数5〜7MHzの超音波を、マイクロバブル凝集用には周波数1〜3MHzの超音波を、それぞれ用いる。
各々のトランスデューサには、三次元方向の位置決めのためのアクチュエータが3個ずつ設けられている。また、各々のトランスデューサには、プローブ105と同様のマーカがそれぞれ設けられている。
【0020】
トランスデューサユニット113上の各トランスデューサの姿勢制御(位置決め)と、治療用超音波のオン・オフ制御は、画像合成兼制御装置109によって行われる。
トランスデューサを駆動する各アクチュエータは、画像合成兼制御装置109が出力する制御情報に基づき、トランスデューサ駆動装置115によって制御される。トランスデューサ駆動装置115はD/A変換器とポンプの集合体である。
各々のトランスデューサは、画像合成兼制御装置109が出力する制御情報に基づき、超音波治療装置112によって制御される。超音波治療装置112は超音波発振器の集合体である。
【0021】
本実施形態の、円弧状のトランスデューサユニット113は、肝臓癌の治療のために形状が最適化されている。つまり、基板は肝臓を取り囲むような形状に形成されている。勿論、トランスデューサユニット113の形状は、対象となる臓器に合わせて形状を適応させることが好ましい。
【0022】
医師は、予め患者103にマイクロバブルを静脈注射した後、画像合成兼制御装置109が患者103の臓器の画像をディスプレイ110に表示した状態で、操作部111を操作して、ディスプレイ110に表示されている立体画像から、超音波を照射する対象(照射対象)である、癌細胞に血液を供給する癌細胞直近の動脈血管を選択する。そして、マイクロバブルが血管内の目的の箇所で凝集されるように、マイクロバブルの誘導ポイントと凝集ポイントを決定する。すると、画像合成兼制御装置109は、誘導ポイントに誘導用超音波が、そして凝集ポイントに凝集用超音波が、それぞれ照射されるように、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの姿勢制御を行う。各トランスデューサの姿勢制御の状況は、リアルタイムでディスプレイ110に表示される。
【0023】
全てのトランスデューサの姿勢制御が完遂すると、医師は画像合成兼制御装置109を操作して、トランスデューサユニット113の各トランスデューサから医療用超音波を発生させる。患者103の血管中に流れているマイクロバブルは、バブル誘導用超音波が照射される血管内の箇所ではその流れが癌細胞の方向へ制御され、バブル凝集用超音波が照射される血管内の箇所ではマイクロバブルが凝集を始める。凝集したマイクロバブルは粒状の塊になり、血管中の血流を徐々に阻害する。血流が阻害され始めると、当該箇所の血流は遅くなり、これに連れて血液中の血小板が凝集したマイクロバブルの塊の周辺で凝固を始める。やがて血管のマイクロバブル凝集箇所には血栓が形成され、癌細胞への血流が遮断される。すると、酸素及び栄養分の供給が絶たれた癌細胞は壊死する。
【0024】
画像合成兼制御装置109は、画像合成兼制御装置109自身が作成した仮想三次元空間内にプローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサを正しく配置させるために、画像合成兼制御装置109自身が動作を開始した初期状態において、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準位置を決定する必要がある。手術台102の片隅に配置されている較正板114は、画像合成兼制御装置109の初期状態にプローブ105とトランスデューサユニット113が置かれて、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準位置を決定するために存在する。
【0025】
[プローブ外観]
図2はプローブ105の全体図である。プローブ105は先端の探触子本体201と把持部202と、把持部202に取り付けられたマーカ105aよりなる。
探触子本体201はその内部に多数の超音波振動子と超音波センサを内蔵する。把持部202は操作者である医師がプローブ105を持つための握り部分であるが、その内部にはA/D変換器を含む電子回路を内蔵する。
【0026】
把持部202にはマーカ105aがケーブルタイ203で括りつけられている。勿論、マーカ105aの固定手段は接着やネジ止め等の種々の手法が利用できる。マーカ105aは固定棒204と四つの赤外線反射球体205よりなる。赤外線反射球体205は、直径が約5mm乃至2cm程度の大きさのプラスチックの球体であり、表面に赤外線反射塗料が塗布されている。四つの赤外線反射球体205は、一平面上に、平行な辺を持たない四角形を構成するように配置されている。四つの赤外線反射球体205が平行な辺を持たない四角形を構成する理由は、空間座標取得装置108が計測対象物の姿勢を把握するために必要だからである。四角形に並行な辺の組が存在すると、その四角形の表と裏の認識が極めて困難になるからである。
【0027】
[トランスデューサユニット外観]
図3(a)及び(b)はトランスデューサユニット113の外観斜視図と上面図である。トランスデューサユニット113の基板304には、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eが交互に設けられている。
【0028】
バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eは、全て同一の構成であり、振動子本体302と、振動子本体302に取り付けられたマーカ303よりなる。振動子本体302はその内部に超音波振動子を内蔵する。
【0029】
基板304は合成ゴムやポリ塩化ビニリデン等の可塑性を有する材料が用いられる。肝臓を取り巻く形状である円弧状の基板304には、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eが患者103の体表面に接触するための穴305a、305b、305c、305d及び305eが設けられている。
【0030】
図4はトランスデューサの外観斜視図と上面図である。
前述のように、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eは、全て同一の構成である。ここでは、バブル誘導用トランスデューサ301aを例に、その外観を説明する。
リング状の枠401には、バネ402a、402b及び402cが、バブル誘導用トランスデューサ301aの振動子本体302の人体接触面の近傍に接続される。また、この枠401には、アクチュエータ403a、403b及び403cが、振動子本体302の上面に接続される。
【0031】
アクチュエータ403a、403b及び403cは、直線方向に引き伸ばされる中空の袋を糸で覆って形成されており、この袋に圧縮空気或は液体を注入すると、袋の形状が伸びた状態からボール状に変化することで、丁度動物の筋肉のように直線方向の引張力に抗する力を生じる。このアクチュエータ403a、403b及び403cは、例えばスキューズ株式会社のSik−tシリーズ(http://www.squse.co.jp/business/images/actuator.pdf)等が利用可能である。
アクチュエータ403a、403b及び403cには、それぞれ圧縮空気或は液体を注入するための、図示しないホースが接続されており、このホースはポンプの集合体であるトランスデューサ駆動装置115に接続される。トランスデューサ駆動装置115は画像合成兼制御装置109によって制御され、結果としてバブル誘導用トランスデューサ301aの三次元上の姿勢が制御される。
【0032】
[較正板外観]
図5は較正板114の外観斜視図である。
図6は較正板114の上面図である。
較正板114には赤外線ステレオカメラ106が位置を検出できるように、六つの赤外線反射球体205が設けられている。
較正板114の内側には、トランスデューサユニット113を配置するための基準線602が描かれている。
基準線602の傍には、プローブ105の探触子本体201が装着できる凹部601が設けられている。凹部601の上には、プローブ105の把持部202を固定するガイド棒502が筒503に固定されている。
【0033】
[機能]
図7は画像合成兼制御装置109の機能ブロック図である。
画像合成兼制御装置109の実体は周知のパソコンである。パソコンに所定のOSとアプリケーションプログラムを稼働させ、画像合成兼制御装置109として機能させる。
画像合成兼制御装置109は、空間座標取得装置108から図示しないUSBインターフェースを通じて三次元座標情報をリアルタイムで取得する。また、超音波画像形成装置104が出力する超音波断層画像信号が図示しないビデオキャプチャカードによって変換されたデジタルの超音波断層画像データを取得して、処理を行う。
【0034】
三次元座標情報は、座標データ選択部701に入力される。座標データ選択部701は制御部702によって制御され、初期状態記憶部703、プローブ位置算出部704、トランスデューサ位置算出部705のいずれかに選択的に三次元座標情報を供給する。
初期状態記憶部703は、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサが較正板114に配置されている時の三次元座標情報を算出して記憶する。初期状態記憶部703は、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元座標情報を算出する際、予め較正板114の寸法情報である較正板データ713を参照して、較正板114の位置を把握する。
プローブ位置算出部704は、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢を、初期状態記憶部703に記憶されている三次元座標情報を基準に現在の三次元座標情報から算出する。
トランスデューサ位置算出部705は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサ、すなわちバブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの、現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報を、初期状態記憶部703に記憶されている三次元座標情報を基準に現在の三次元座標情報から算出する。
【0035】
プローブ画像データ706は、仮想三次元空間内にプローブ105を描写するための三次元ベクトルデータである。
トランスデューサ画像テーブル707は、仮想三次元空間内にトランスデューサユニット113の各トランスデューサを描写するための三次元ベクトルデータである。
トランスデューサ焦点テーブル708は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサが治療用超音波を発生した際の、超音波の焦点位置を描写するための三次元ベクトルデータである。
【0036】
プローブ位置算出部704が出力する、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報は、画像選択合成部709に入力される。画像選択合成部709は、プローブ画像データ706を、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報に基づいて仮想三次元空間内に配置する描画を実行する。
【0037】
一方、臓器画像形成部710には、超音波画像形成装置104から図示しないビデオキャプチャカードを通じて得られる超音波断層画像データが入力される。臓器画像形成部710は、超音波断層画像データに写っている臓器の画像から臓器の輪郭を抽出して、輪郭データを作成し、画像選択合成部709に供給する。
画像選択合成部709は、輪郭データと、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報に基づいて、仮想三次元空間内に輪郭を配置する描画を行う。
【0038】
画像選択合成部709が形成する、仮想三次元空間内の輪郭データは、三次元画像形成部711に供給される。三次元画像形成部711は、仮想三次元空間内に存在する複数の輪郭データ同士を補間演算して、仮想三次元空間内に臓器の立体画像を形成し、この臓器の立体画像データを画像選択合成部709に供給する。
【0039】
画像選択合成部709は、仮想三次元空間内にプローブ105の三次元画像とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元画像を描画すると共に、臓器の輪郭又は臓器の三次元画像を選択的に描画する。こうして画像選択合成部709によって作成された仮想三次元空間の映像情報は、ディスプレイ110である表示部712に表示される。
【0040】
操作者である医師は、操作部111を操作して、表示部712に表示されている、癌細胞を有する肝臓と、癌細胞に血液を供給する、肝動脈或は門脈から派生する血管を確認する。そして、壊死させようとする癌細胞に血液を供給する血管を選択し、血液中のマイクロバブルの流れを制御するためのバブル誘導箇所と、血液中のマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためのバブル凝集箇所を決定する。
操作部111によって指定した、血管中のバブル誘導箇所は、バブル誘導算出部714によって三次元画像データに変換される。同様に、操作部111によって指定した、血管中のバブル凝集箇所は、バブル凝集算出部715によって三次元画像データに変換される。これら三次元画像データは、画像選択合成部709に供給されて、表示部712に表示される。
【0041】
制御部702は、バブル誘導箇所に医療用超音波を照射するために、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cの姿勢制御を行う。
また同様に、制御部702は、バブル凝集箇所に医療用超音波を照射するために、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの姿勢制御を行う。
【0042】
バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの三次元の姿勢は、空間座標取得装置108から得られる。そして、トランスデューサ焦点テーブル708から焦点データを読み込み、画像選択合成部にて仮想三次元空間内に展開させることで、バブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に対して各々のトランスデューサの焦点がどれだけずれているかが把握できる。制御部702は、画像選択合成部から、このズレの情報を取得して、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、医療用超音波の焦点をバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に合わせ込むための姿勢制御を行う。
【0043】
制御部702は、バブル凝集箇所に照射するための医療用超音波に、凝集体を形成するためのBjerknes力を生じさせるために、次式の演算処理を行う。
【0044】
【数1】
【0045】
マイクロバブルを血管内のある特定の一箇所に凝集させるには、凝集体を形成する音源と、形成された凝集体を押し出して位置を安定させるための音源の、二つの超音波発生源が必要になる。したがって、トランスデューサユニット113には、最低でも二個のバブル凝集体形成用トランスデューサが装備されていなければならない。
本実施形態では、バブル凝集体形成用トランスデューサ301dが第一凝集体形成用トランスデューサに、バブル凝集体形成用トランスデューサ301eが第二凝集体形成用トランスデューサに相当することとなる。
【0046】
制御部702は、演算の結果得られる周波数と位相のデータを超音波治療装置112に供給する。超音波治療装置112は、制御部702から受信した周波数と位相のデータに基づいて、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eを駆動する。
【0047】
[動作]
図8は本実施形態の超音波治療システム101で行われる、診断及び治療の全体的な作業の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S801)、医師は最初に画像合成兼制御装置109がプローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサの仮想三次元空間における位置及び姿勢を正確に描写するための初期較正処理を行う(S802)。初期較正処理が終わると、画像合成兼制御装置109は表示部712に表示する仮想三次元空間内にプローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサをリアルタイムに描写することができる(S803)。
【0048】
次に、医師はプローブ105を撮影したい患者103の臓器の近傍に配置して、超音波画像形成装置104を操作して、臓器の三次元画像を得られる程度迄、超音波断層画像データを繰り返し取得する。そして、画像合成兼制御装置109は臓器の三次元画像を形成する(S804)。
本実施形態の場合、臓器は肝臓及びその周辺の、肝動脈或は門脈から派生する血管になる。
【0049】
こうして肝臓及び周辺の血管の三次元画像が得られると、医師は操作部111を操作して、表示部712に表示されている血管の三次元画像から、壊死させようとする癌細胞に血液を供給する血管を選択し、血液中のマイクロバブルの流れを制御するためのバブル誘導箇所と、血液中のマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためのバブル凝集箇所、つまり医療用超音波を照射する対象箇所を決定する(S805)。
医師は、超音波を照射する対象であるバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所を決定したら、操作部111を通じて画像合成兼制御装置109を操作して、トランスデューサの焦点合わせを命ずる。すると、画像合成兼制御装置109の制御部702は、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、医療用超音波の焦点をバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に合わせ込むための姿勢制御(位置決め処理)を行う(S806)。
【0050】
位置決め処理(S806)による位置決めが終了したら、医師は操作部111を操作して、制御部702を通じて超音波治療装置112を稼働させて、トランスデューサユニット113の各トランスデューサから治療用超音波を発し、照射対象であるバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に一定時間照射して(S807)、処理を終了する(S808)。
【0051】
図9は初期較正処理の流れを示すフローチャートである。図7のステップS802の詳細である。
処理を開始すると(S901)、画像合成兼制御装置109の初期状態記憶部703は、最初に空間座標取得装置108から較正板114の識別情報を受信し、較正板データ713を参照して、較正板114の座標と姿勢の情報を算出して取得する(S902)。この、較正板114の座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間の基準となる。
【0052】
次に、初期状態記憶部703は空間座標取得装置108から較正板114に配置されているプローブ105の識別情報を受信し、プローブ105の座標と姿勢の情報を算出して取得する(S903)。この時点の、プローブ105の座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間におけるプローブ105の基準となる。
【0053】
次に、初期状態記憶部703は空間座標取得装置108から較正板114に配置されているトランスデューサユニット113の各トランスデューサの識別情報を受信し、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの座標と姿勢の情報を算出して取得する(S904)。この時点の、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間におけるトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準となる。
【0054】
次に、画像合成兼制御装置109は空間座標取得装置108からプローブ105の座標と姿勢を連続的に取得しつつ、超音波画像形成装置104から超音波断層画像データを取得して、プローブ105が形成する観察平面の較正処理を行い(S905)、一連の処理を終了する。
【0055】
以下に、プローブ105の観察平面と、ステップS905における観察平面の較正処理の詳細について説明する。
図10は、プローブ105の筐体を含む平面(以下「プローブ平面」)と観察平面との間の誤差を示す概略図である。
プローブ105が撮影する超音波画像に基づく輪郭の画像が仮想三次元空間内で正確に配置されるためには、三次元空間内のプローブ105自身の座標と姿勢を正確に検出するだけでなく、プローブ105が撮影する超音波画像が形成する二次元の平面が、プローブ105に対してどのように配置されるのかも正確に把握できていなければならない。この、プローブ105が撮影する超音波画像が形成する二次元の平面を、本明細書では観察平面P1002と呼ぶ。
【0056】
プローブ105が形成する観察平面P1002は、必ずしもプローブ105の筐体(プローブ平面P1001)と一致或は並行であるとは限らない。プローブ105の探触子本体201は手作りであるので、プローブ平面P1001と観察平面P1002との間には、若干の誤差を含む。誤差は、二方向のねじれ角と距離の、三要素である。
したがって、画像合成兼制御装置109は、プローブ105の筐体の姿勢に対する観察平面P1002との位置関係を正確に把握できていなければならない。
【0057】
そこで、プローブ105の筐体の姿勢に対する観察平面P1002との位置関係を検出することで、観察平面P1002の較正を行う。
図11は、観察平面P1002の較正作業を示す概略図である。これは「Cross Wire」と呼ばれる周知の較正方法である。
中空の箱1001には釣り糸1002が縦と横とで二本、張られている。箱1001の内壁には吸音材1003が敷き詰められている。プローブ105がこの釣り糸1002の交点を異なる角度で数十回程度、超音波画像の撮影を行う。そうして得たプローブ105の位置及び姿勢のデータを集計して所定の演算を行うと、プローブ105の形状に対する観察平面P1002を算出することができる。
【0058】
図12は、臓器三次元画像形成処理の流れを示すフローチャートである。図8のステップS804の詳細である。
処理を開始すると(S1201)、画像合成兼制御装置109は医師が操作部111或はプローブ105を操作することによって生じるトリガ信号の入力を待つ(S1202)。
【0059】
これ以降はループ処理である。
トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示でない、画像の輪郭を取得する命令であれば(S1203のNO)、画像合成兼制御装置109の制御部702702は臓器画像形成部710を制御する。すると、臓器画像形成部710は超音波画像形成装置104からビデオキャプチャカードを通じて超音波画像データを取得する(S1204)。
【0060】
次に、臓器画像形成部710は超音波画像データから輪郭を抽出して(S1205)、画像選択合成部709に輪郭データを出力する。画像選択合成部709は、プローブ位置算出部704から得たプローブ105の三次元位置及び姿勢の情報と、初期状態記憶部703に格納されている観察平面P1002の情報に基づいて、仮想三次元空間内に輪郭を配置する(S1206)。表示部712は、輪郭が描画された仮想三次元空間を表示する(S1207)。
【0061】
ステップS1207の後は、再びステップS1202に戻り、トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示でない限り、ステップS1204乃至ステップS1207の処理が繰り返される。
【0062】
ステップS1203で、トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示であれば(S1203のYES)、画像合成兼制御装置109の制御部702702は三次元画像形成部711と画像選択合成部709を制御して、三次元画像形成部711に既に取得済みの三次元輪郭画像から三次元の補完合成処理を行わせ(S1208)、画像選択合成部709に臓器の三次元合成画像を仮想三次元空間内に配置して表示させて(S1209)、一連の処理を終了する(S1210)。
【0063】
なお、図12のフローチャートでは三次元合成画像の作成は、操作者である医師の明示的な操作(ステップS1202)に基づいているが、画像合成兼制御装置109の演算能力が十分高速であれば、ステップS1208の三次元補完合成処理をリアルタイムに繰り返すことも可能である。つまり、ある程度三次元合成画像が形成可能になる程度まで超音波画像データを取得できたと、画像選択合成部709が判断したら、即座にステップS1208の三次元補完合成処理を行い、その後は新たな超音波画像データが得られる度に三次元補完合成処理を繰り返して、三次元合成画像を更新する。このように処理をすることで、三次元合成画像がより実際の臓器に近似することが期待できる。
【0064】
図13(a)、(b)、(c)及び(d)は、臓器三次元画像形成処理の流れを示す概略図である。
図13(a)は、プローブ105から超音波画像形成装置104によって得られる超音波画像である。図12のステップS1204の状態である。
図13(b)は、超音波画像から抽出した輪郭の画像データを模式的に示す図である。図12のステップS1205の状態である。
図13(c)は、仮想三次元空間内に輪郭を複数個配置した状態を模式的に示す図である。図12のステップS1206及びS1207の状態である。
図13(d)は、仮想三次元空間内に複数個配置された輪郭同士を三次元補完合成した状態を模式的に示す図である。図12のステップS1208及びS1209の状態である。
【0065】
超音波画像形成装置のプローブはCTスキャンと異なり、患者の皮膚に密着させる必要があるので、CTスキャンのように取得した超音波断層画像を並列に並べて三次元画像を形成することが不可能である。そこで、発明者はプローブの三次元座標情報を取得して、これに基づいて超音波断層画像を三次元に展開することを考えた。超音波断層画像はそれ自身が多量のデータであり、そのまま三次元に展開することが困難である。そこで、超音波断層画像から輪郭を抽出して輪郭データを得る処理を加えることで、扱うデータ量を低減し、更に仮想三次元空間内に展開することを容易にした。また、近接する輪郭同士を補間演算することで、元の立体、つまり臓器の立体画像を得ることができた。
【0066】
図14は、表示部712に表示される仮想三次元空間の図である。
画像合成兼制御装置109が表示部712に表示する仮想三次元空間1401には、プローブ105、プローブ105から発生する観察平面P1002、トランスデューサユニット113の各トランスデューサ、そして三次元補完合成によって描画された臓器1402が配置され、描かれている。
【0067】
プローブ105の三次元画像は、図6のプローブ画像データ706を基に、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0068】
プローブ105に付随する観察平面P1002の三次元画像は、初期状態記憶部703に記憶されている観察平面P1002の情報を基に、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0069】
トランスデューサの三次元画像と、トランスデューサに付随する焦点1404の三次元画像は、図6のトランスデューサ画像テーブル707を基に、トランスデューサ位置算出部705が出力するトランスデューサの現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0070】
臓器1402の三次元画像は、図6の臓器画像形成部710が出力する輪郭の画像データを、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報と初期状態記憶部703に記憶されている観察平面P1002の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置し、更に三次元画像形成部711が三次元補完合成して、仮想三次元空間1401内に描画する。
【0071】
図15は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの位置決め処理である。図8のステップS806の詳細である。
処理を開始すると(S1501)、制御部702は、図8のステップS805を実行した際に医師によって入力されたバブル誘導箇所に最適な、バブル誘導用トランスデューサを決定する(S1502)。最適なバブル誘導用トランスデューサの選択基準としては、医療用超音波の焦点とバブル誘導箇所との間の距離が短いことと、姿勢制御によって医療用超音波をバブル誘導箇所に照射できることである。
【0072】
制御部702は、ステップS1502でバブル誘導箇所に医療用超音波を照射させるためのバブル誘導用トランスデューサを決定したら、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、当該バブル誘導用トランスデューサのアクチュエータを駆動し、位置決めを行う(S1503)。
【0073】
本実施形態のトランスデューサユニット113の場合、バブル誘導用トランスデューサは、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cの三個が存在する。仮にバブル誘導箇所が一箇所だけである場合は、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cのうち、医療用超音波の焦点とバブル誘導箇所とが最適な状態で交わるもの一個だけを選択して、位置決め制御を行う。
【0074】
次に制御部702は、図8のステップS805を実行した際に医師によって入力されたバブル凝集箇所に最適な、バブル凝集体形成用トランスデューサを決定する(S1504)。最適なバブル凝集体形成用トランスデューサの選択基準としては、医療用超音波の焦点とバブル凝集箇所との間の距離が短いことと、姿勢制御によって医療用超音波をバブル誘導箇所に照射できることである。
【0075】
制御部702は、ステップS1504でバブル凝集箇所に医療用超音波を照射させるためのバブル凝集体形成用トランスデューサを決定したら、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、当該バブル凝集体形成用トランスデューサのアクチュエータを駆動し、位置決めを行う(S1505)。そして、一連の処理を終了する(S1506)。
【0076】
本実施形態のトランスデューサユニット113の場合、バブル凝集体形成用トランスデューサは、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの二個が存在する。前述の通り、マイクロバブルの凝集体を形成して所定の箇所に集めるためには、二つの医療用超音波を照射しなければならないので、本実施形態の画像合成兼制御装置109では、このステップS1504は実質的に何も処理をしないこととなる。もし、トランスデューサユニット113にバブル凝集体形成用トランスデューサが三個以上搭載されている場合は、このステップS1504が有効に機能しなければならない。
【0077】
図16は本実施形態の超音波治療システムによって実現される、血管1601内の状態を説明する概略図である。
周知のように、血管1601は臓器等の末端に近づくに連れて、分岐して細くなる。超音波治療システムは、血管1601の分岐点1601a近傍にマイクロバブル誘導用超音波P1602を照射して、血液中のマイクロバブル1603を治療対象部位に誘導し、血管1601の分岐点1601aから治療対象部位1604に至る箇所でマイクロバブル凝集体形成用超音波P1605を照射して、血液中のマイクロバブル1603を凝集させて凝集体1606を形成する。また、血管1601の分岐点1601a近傍にマイクロバブル誘導用超音波P1607を照射して、凝集体1606が正常部位1608に流れ込まないように誘導する。
【0078】
本実施形態は以下のような応用例が可能である。
(1)本実施形態では、プローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元上の位置及び姿勢をリアルタイムに取得するために、赤外線を用いた光学式三次元計測装置を採用した。位置と姿勢を取得する手段は、この赤外線の光学式三次元計測装置に限らず、可視光を用いる装置や磁気式の装置であってもよい。
なお、三次元計測装置の動作方式が異なれば、これに対応するマーカの形状等も変わることとなる。したがって、マーカも赤外線反射球体205を用いる形態に限られない。
【0079】
(2)超音波画像形成装置104と、空間座標取得装置108と、画像合成兼制御装置109は、周知の電子計算機で構成されている。したがって、データ処理能力の高い電子計算機を用いれば、これらの装置を一体化することも可能である。本システムが実用化されれば、超音波治療装置112も含めて、全ての機能を凝縮した装置として提供することも可能である。
【0080】
(3)本実施形態のトランスデューサユニット113には、基板304にバブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eを交互に設けていた。これらトランスデューサは前述の説明の通り、全て同一の構成を有する。したがって、治療部位に応じてこれらトランスデューサの役割を変更することも可能である。つまり、基板304の左端に位置するバブル誘導用トランスデューサ301aが、超音波治療装置112が出力する超音波駆動電流によってバブル凝集体形成用トランスデューサとして機能しても良いし、逆に基板304の左端に位置するバブル誘導用トランスデューサ301aに隣接するバブル凝集体形成用トランスデューサ301dが、超音波治療装置112が出力する超音波駆動電流によってバブル誘導用トランスデューサとして機能しても良い。
【0081】
(4)本実施形態の超音波治療システム101では、超音波治療装置112が画像合成兼制御装置109によって制御される構成となっているが、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの役割が予め定まっている状況であれば、超音波治療装置112を手動でオン・オフ制御してもよい。つまり、超音波治療装置112のオン・オフ制御は必ずしも必須ではない。
【0082】
本実施形態では、超音波治療システムを開示した。
超音波画像形成装置が出力する超音波断層画像から輪郭を抽出した後、プローブの三次元座標情報に基づいて輪郭データを仮想三次元空間内に配置する。輪郭データを複数取得して補間演算を実施すると、仮想三次元空間内に臓器の三次元画像を形成できる。
これまで、超音波プローブから二次元の超音波断層画像しか撮影できなかったが、プローブの三次元座標情報を取得することと、超音波断層画像から輪郭を抽出することで、超音波を用いた三次元立体画像を形成することができる。
【0083】
血管1601を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、トランスデューサユニット113を用いて、治療対象部位1604にマイクロバブルの凝集体1606を形成して誘導する。血管1601内の所望の箇所に凝集体1606を集めて血栓を形成し、治療対象部位1604の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0085】
101…超音波治療システム、102…手術台、103…患者、104…超音波画像形成装置、105…プローブ、105a…マーカ、106…赤外線ステレオカメラ、107…三脚、108…空間座標取得装置、109…画像合成兼制御装置、110…ディスプレイ、111…操作部、112…超音波治療装置、113…トランスデューサユニット、114…較正板、115…トランスデューサ駆動装置、201…探触子本体、202…把持部、203…ケーブルタイ、204…固定棒、205…赤外線反射球体、301a…バブル誘導用トランスデューサ、301d…バブル凝集体形成用トランスデューサ、301e…バブル凝集体形成用トランスデューサ、302…振動子本体、303…マーカ、304…基板、305a…穴、401…枠、402a…バネ、403a…アクチュエータ、502…ガイド棒、503…筒、601…凹部、602…基準線、701…座標データ選択部、702…制御部、703…初期状態記憶部、704…プローブ位置算出部、705…トランスデューサ位置算出部、706…プローブ画像データ、707…トランスデューサ画像テーブル、708…トランスデューサ焦点テーブル、709…画像選択合成部、710…臓器画像形成部、711…三次元画像形成部、712…表示部、713…較正板データ、714…バブル誘導算出部、715…バブル凝集算出部、716…トランスデューサ制御部、1001…箱、1002…釣り糸、1003…吸音材、1401…仮想三次元空間、1402…臓器、1404…焦点、1601…血管、1601a…分岐点、1603…マイクロバブル、1604…治療対象部位、1606…凝集体、1608…正常部位、P1001…プローブ平面、P1002…観察平面、P1602…マイクロバブル誘導用超音波、P1605…マイクロバブル凝集体形成用超音波、P1607…マイクロバブル誘導用超音波
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療システムに関する。
より詳細には、超音波を用いて非侵襲で患者を診断し、超音波を用いて非侵襲で患者に対する治療行為を行う、超音波治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療技術の進歩は著しく、人体の体内の状態を詳細に検査できる技術が発達している。中でも、超音波を用いる超音波検査装置は、X線等と比較すると人体に対する負荷が極めて低いので、妊婦に胎児の映像を見せる等の用途に用いられている。
なお、本発明に類似すると思われる技術内容を、非特許文献1に示す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高橋修一、内山明彦、鈴木直樹:「術野内外の3次元構造と位置関係が観察可能な肝切除支援システム」、電子情報通信学会論文誌、Vol. J83-D-II, No.6, pp.1548-1555, 2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、医療現場で用いられている、超音波画像形成装置ともいえる超音波検査装置は、人体の局所的な二次元の断層像を得るに留まっている。このため、患部や臓器を立体的に視認する用途には適していない。
【0005】
また、近年では高い濃度の医薬をマイクロカプセルやマイクロバブルなどの薬物担体(以下、薬物担体)に収納し、血管内に放流して、薬物担体が患部に到達したら超音波を照射してカプセルを破壊し、医薬を患部に適用する、という「ドラッグデリバリーシステム」という技術の研究が進んでいる。更に、薬物担体を破壊する程度の比較的弱い(安全な)超音波よりも強力な、単独で生体組織そのものにダメージを与えて治療を行う、高密度焦点式超音波(HIFU, High-Intensity Focused Ultrasound)を用いた治療の研究も進められている。これ以降、本明細書ではドラッグデリバリーシステムに用いる超音波と、HIFUを総じて「治療用超音波」と定義する。
このような治療用超音波を患者に適用するために超音波検査装置を用いる場合、二次元の断層像だけでは治療用超音波を照射するための照準を合わせることが非常に困難である。
超音波画像形成装置を用いて、CTスキャンのような立体画像をリアルタイムに得ることができれば、このような用途に適うであろう。
【0006】
本発明は係る課題を解決し、既存の超音波画像形成装置を活用して臓器等の立体画像を形成し、また治療用超音波を照射対象へ容易に合わせ込むことができ、非侵襲でありながら化学的薬物や放射線を使用せずに正確な診断と治療ができる、超音波治療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の超音波治療システムは、計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、プローブが接続されて計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、第一のアクチュエータを伴う誘導用トランスデューサと、第二のアクチュエータを伴う第一凝集体形成用トランスデューサと、第三のアクチュエータを伴う第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、誘導用トランスデューサ、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、誘導用トランスデューサに誘導用超音波を発生させると共に、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサに凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、プローブ、誘導用トランスデューサ、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、第一のマーカの空間座標情報に基づいて輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の輪郭画像を補間演算して立体画像を仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて誘導用トランスデューサが誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を仮想三次元空間内に配置し、誘導用トランスデューサが誘導用超音波を誘導用超音波照射対象に照射できるように第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサが凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を仮想三次元空間内に配置し、第一凝集体形成用トランスデューサ及び第二凝集体形成用トランスデューサが凝集体形成用超音波を凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、画像合成兼制御装置が形成した仮想三次元空間及び立体画像を表示する表示部とを備える。
【0008】
超音波画像形成装置が出力する超音波断層画像から輪郭を抽出した後、プローブの三次元座標情報に基づいて輪郭データを仮想三次元空間内に配置する。輪郭データを複数取得して補間演算を実施すると、仮想三次元空間内に臓器の三次元画像を形成できる。更に、血管を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、治療用超音波でマイクロバブルの凝集体を形成して、治療対象部位に誘導する。血管内の所望の箇所に凝集体を集めて血栓を形成し、治療対象部位の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、既存の超音波画像形成装置を活用して臓器等の立体画像を形成し、また治療用超音波を照射対象へ容易に合わせ込むことができ、非侵襲でありながら化学的薬物や放射線を使用せずに正確な診断と治療ができる、超音波治療システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態である、超音波治療システムの外観図である。
【図2】プローブの全体図である。
【図3】トランスデューサユニットの外観斜視図と上面図である。
【図4】トランスデューサの外観斜視図と上面図である。
【図5】較正板の外観斜視図である。
【図6】較正板の上面図である。
【図7】画像合成兼制御装置の機能ブロック図である。
【図8】本実施形態の超音波治療システムで行われる、診断及び治療の全体的な作業の流れを示すフローチャートである。
【図9】初期較正処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】プローブの筐体を含む平面と観察平面との間の誤差を示す概略図である。
【図11】観察平面の較正作業を示す概略図である。
【図12】臓器三次元画像形成処理の流れを示すフローチャートである。
【図13】臓器三次元画像形成処理の流れを示す概略図である。
【図14】表示部に表示される仮想三次元空間の図である。
【図15】トランスデューサユニットの各トランスデューサの位置決め処理である。
【図16】本実施形態の超音波治療システムによって実現される、血管内の状態を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の概略を説明する。
本実施形態の超音波治療システムは、患者(被験者)に対して非侵襲的な診断と治療を実現する。具体的には、特に肝臓癌の治療を目的として、患者の血管に造影剤として用いられるマイクロバブルを注入し、癌細胞に至る動脈にマイクロバブルを超音波で凝集させ、血栓を形成する。血流が阻害されることで酸素及び栄養分の供給が絶たれた癌細胞は、時間経過と共に壊死する。つまり、本実施形態の超音波治療システムで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【0012】
液体中のマイクロバブルに特定の周波数の超音波を照射すると、マイクロバブルが凝集体を形成する現象は知られている。この凝集体は、血管中に血栓の形成を促してしまうため、本来なら忌み嫌われるべき現象である。そもそも、マイクロバブルは血管中で凝集せず、安全に血液中に存在させるために微小な気泡を形成した、という経緯がある。しかし、発明者は発想を転換し、血栓を癌細胞の攻撃に利用することができるのではないだろうか、と考えた。この発想の転換が本発明の発端である。
【0013】
血管内にマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためには、その前提として正確な血管の三次元画像が撮影できる必要がある。このために、本発明者が先に特願2010−99212にて出願した、超音波画像形成装置と光学式三次元計測装置を組み合わせた、画像合成兼制御装置を用いる。
【0014】
「エコー検査」として周知の超音波画像形成装置のプローブに、光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。画像合成兼制御装置は、超音波画像形成装置が出力する、二次元の超音波断層画像から輪郭を抽出し、光学式三次元計測装置が検出したプローブの三次元位置及び姿勢に基づいて、輪郭画像を仮想三次元空間内に配置する。画像合成兼制御装置は複数の輪郭を補完合成して、仮想三次元空間内に臓器の立体画像を形成する。
更に、治療用超音波を発する超音波治療装置のトランスデューサにも、光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。そして、画像合成兼制御装置が検出した患部或は標的の三次元画像に対して、トランスデューサの超音波射出方向及び射出距離を算出して、仮想三次元空間内に再現する。
【0015】
次に、血管内にマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためには、血管内の複数の箇所に複数種類の超音波を同時に照射する必要がある。このような高度な超音波トランスデューサの位置合わせを人手で行うことは不可能に近い。そこで、本発明者が先に特開2010−121976にて出願した、超音波トランスデューサやプローブ等を自在な角度で位置決めできるアクチュエータユニットを用いる。勿論、複数のトランスデューサ全てに光学式三次元計測装置が認識できるマーカを固定させる。
本実施形態の超音波治療システムは、特願2010−99212にて開示した画像合成兼制御装置に、超音波照射目標を設定し、超音波照射目標に対して指定したアクチュエータユニットが超音波を照射できるように姿勢制御を行う機能を追加実装した形態である。
【0016】
[システム外観]
図1は、本発明の実施形態である、超音波治療システムの外観図である。但し、一部の機器については詳細な図示を省略し、概略的にブロックで図示している。
手術台102には被験者ともいえる患者103が横たわっている。この患者103に対し、図示しない医師は、周知の超音波画像形成装置104のプローブ105を、映像化したい臓器のある体表面に押し当てて撮影する。こうして、超音波画像形成装置104は超音波断層画像を得る。
一方、手術台102の側には赤外線ステレオカメラ106が三脚107によって固定されている。赤外線ステレオカメラ106は、手術台102の上の患者103の撮影対象となる臓器の周囲を認識できるように配置されている。赤外線ステレオカメラ106には空間座標取得装置108が接続されている。
プローブ105には、空間座標取得装置108が三次元空間内の位置及び姿勢を認識できるためのマーカ105aが取り付けられており、空間座標取得装置108はプローブ105の三次元空間内の位置及び姿勢のデータを出力する。
【0017】
赤外線ステレオカメラ106と空間座標取得装置108は、一例としては「Polaris(登録商標) Vicra」(http://www.ndigital.com/medical/polarisfamily.php)という既存の製品である。空間座標取得装置108は、赤外線ステレオカメラ106が認識可能な空間内にマーカの存在を認識すると、マーカの空間内における位置情報を、並進行列と回転行列の形式で出力する。
【0018】
画像合成兼制御装置109は、空間座標取得装置108が出力する、プローブ105の三次元空間内の位置及び姿勢のデータを受けて、仮想三次元空間内にプローブ105の三次元画像を描画し、ディスプレイ110に表示する。更に、超音波画像形成装置104が出力する超音波断層画像を受けて、超音波断層画像から撮影された臓器の輪郭を抽出し、仮想三次元空間内に配置する。仮想三次元空間内に臓器の輪郭を複数配置したら、画像合成兼制御装置109は各々の輪郭同士を補間演算して、臓器の三次元画像をディスプレイ110に表示する。
画像合成兼制御装置109は、「Virtual Reality(仮想現実)」及び「Argument Reality(拡張現実)」の技術を用いて、臓器を仮想三次元空間内に描画する。
【0019】
患者103の腹部と胸との間には、トランスデューサユニット113が据え置かれる。トランスデューサユニット113は、柔軟性を有する円弧状の基板に、超音波を発するトランスデューサを複数備える。図1では5個のトランスデューサが基板に設けられている。これらトランスデューサは、マイクロバブル誘導用とマイクロバブル凝集用とで、異なる周波数の超音波を発生する。マイクロバブル誘導用には周波数5〜7MHzの超音波を、マイクロバブル凝集用には周波数1〜3MHzの超音波を、それぞれ用いる。
各々のトランスデューサには、三次元方向の位置決めのためのアクチュエータが3個ずつ設けられている。また、各々のトランスデューサには、プローブ105と同様のマーカがそれぞれ設けられている。
【0020】
トランスデューサユニット113上の各トランスデューサの姿勢制御(位置決め)と、治療用超音波のオン・オフ制御は、画像合成兼制御装置109によって行われる。
トランスデューサを駆動する各アクチュエータは、画像合成兼制御装置109が出力する制御情報に基づき、トランスデューサ駆動装置115によって制御される。トランスデューサ駆動装置115はD/A変換器とポンプの集合体である。
各々のトランスデューサは、画像合成兼制御装置109が出力する制御情報に基づき、超音波治療装置112によって制御される。超音波治療装置112は超音波発振器の集合体である。
【0021】
本実施形態の、円弧状のトランスデューサユニット113は、肝臓癌の治療のために形状が最適化されている。つまり、基板は肝臓を取り囲むような形状に形成されている。勿論、トランスデューサユニット113の形状は、対象となる臓器に合わせて形状を適応させることが好ましい。
【0022】
医師は、予め患者103にマイクロバブルを静脈注射した後、画像合成兼制御装置109が患者103の臓器の画像をディスプレイ110に表示した状態で、操作部111を操作して、ディスプレイ110に表示されている立体画像から、超音波を照射する対象(照射対象)である、癌細胞に血液を供給する癌細胞直近の動脈血管を選択する。そして、マイクロバブルが血管内の目的の箇所で凝集されるように、マイクロバブルの誘導ポイントと凝集ポイントを決定する。すると、画像合成兼制御装置109は、誘導ポイントに誘導用超音波が、そして凝集ポイントに凝集用超音波が、それぞれ照射されるように、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの姿勢制御を行う。各トランスデューサの姿勢制御の状況は、リアルタイムでディスプレイ110に表示される。
【0023】
全てのトランスデューサの姿勢制御が完遂すると、医師は画像合成兼制御装置109を操作して、トランスデューサユニット113の各トランスデューサから医療用超音波を発生させる。患者103の血管中に流れているマイクロバブルは、バブル誘導用超音波が照射される血管内の箇所ではその流れが癌細胞の方向へ制御され、バブル凝集用超音波が照射される血管内の箇所ではマイクロバブルが凝集を始める。凝集したマイクロバブルは粒状の塊になり、血管中の血流を徐々に阻害する。血流が阻害され始めると、当該箇所の血流は遅くなり、これに連れて血液中の血小板が凝集したマイクロバブルの塊の周辺で凝固を始める。やがて血管のマイクロバブル凝集箇所には血栓が形成され、癌細胞への血流が遮断される。すると、酸素及び栄養分の供給が絶たれた癌細胞は壊死する。
【0024】
画像合成兼制御装置109は、画像合成兼制御装置109自身が作成した仮想三次元空間内にプローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサを正しく配置させるために、画像合成兼制御装置109自身が動作を開始した初期状態において、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準位置を決定する必要がある。手術台102の片隅に配置されている較正板114は、画像合成兼制御装置109の初期状態にプローブ105とトランスデューサユニット113が置かれて、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準位置を決定するために存在する。
【0025】
[プローブ外観]
図2はプローブ105の全体図である。プローブ105は先端の探触子本体201と把持部202と、把持部202に取り付けられたマーカ105aよりなる。
探触子本体201はその内部に多数の超音波振動子と超音波センサを内蔵する。把持部202は操作者である医師がプローブ105を持つための握り部分であるが、その内部にはA/D変換器を含む電子回路を内蔵する。
【0026】
把持部202にはマーカ105aがケーブルタイ203で括りつけられている。勿論、マーカ105aの固定手段は接着やネジ止め等の種々の手法が利用できる。マーカ105aは固定棒204と四つの赤外線反射球体205よりなる。赤外線反射球体205は、直径が約5mm乃至2cm程度の大きさのプラスチックの球体であり、表面に赤外線反射塗料が塗布されている。四つの赤外線反射球体205は、一平面上に、平行な辺を持たない四角形を構成するように配置されている。四つの赤外線反射球体205が平行な辺を持たない四角形を構成する理由は、空間座標取得装置108が計測対象物の姿勢を把握するために必要だからである。四角形に並行な辺の組が存在すると、その四角形の表と裏の認識が極めて困難になるからである。
【0027】
[トランスデューサユニット外観]
図3(a)及び(b)はトランスデューサユニット113の外観斜視図と上面図である。トランスデューサユニット113の基板304には、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eが交互に設けられている。
【0028】
バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eは、全て同一の構成であり、振動子本体302と、振動子本体302に取り付けられたマーカ303よりなる。振動子本体302はその内部に超音波振動子を内蔵する。
【0029】
基板304は合成ゴムやポリ塩化ビニリデン等の可塑性を有する材料が用いられる。肝臓を取り巻く形状である円弧状の基板304には、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eが患者103の体表面に接触するための穴305a、305b、305c、305d及び305eが設けられている。
【0030】
図4はトランスデューサの外観斜視図と上面図である。
前述のように、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eは、全て同一の構成である。ここでは、バブル誘導用トランスデューサ301aを例に、その外観を説明する。
リング状の枠401には、バネ402a、402b及び402cが、バブル誘導用トランスデューサ301aの振動子本体302の人体接触面の近傍に接続される。また、この枠401には、アクチュエータ403a、403b及び403cが、振動子本体302の上面に接続される。
【0031】
アクチュエータ403a、403b及び403cは、直線方向に引き伸ばされる中空の袋を糸で覆って形成されており、この袋に圧縮空気或は液体を注入すると、袋の形状が伸びた状態からボール状に変化することで、丁度動物の筋肉のように直線方向の引張力に抗する力を生じる。このアクチュエータ403a、403b及び403cは、例えばスキューズ株式会社のSik−tシリーズ(http://www.squse.co.jp/business/images/actuator.pdf)等が利用可能である。
アクチュエータ403a、403b及び403cには、それぞれ圧縮空気或は液体を注入するための、図示しないホースが接続されており、このホースはポンプの集合体であるトランスデューサ駆動装置115に接続される。トランスデューサ駆動装置115は画像合成兼制御装置109によって制御され、結果としてバブル誘導用トランスデューサ301aの三次元上の姿勢が制御される。
【0032】
[較正板外観]
図5は較正板114の外観斜視図である。
図6は較正板114の上面図である。
較正板114には赤外線ステレオカメラ106が位置を検出できるように、六つの赤外線反射球体205が設けられている。
較正板114の内側には、トランスデューサユニット113を配置するための基準線602が描かれている。
基準線602の傍には、プローブ105の探触子本体201が装着できる凹部601が設けられている。凹部601の上には、プローブ105の把持部202を固定するガイド棒502が筒503に固定されている。
【0033】
[機能]
図7は画像合成兼制御装置109の機能ブロック図である。
画像合成兼制御装置109の実体は周知のパソコンである。パソコンに所定のOSとアプリケーションプログラムを稼働させ、画像合成兼制御装置109として機能させる。
画像合成兼制御装置109は、空間座標取得装置108から図示しないUSBインターフェースを通じて三次元座標情報をリアルタイムで取得する。また、超音波画像形成装置104が出力する超音波断層画像信号が図示しないビデオキャプチャカードによって変換されたデジタルの超音波断層画像データを取得して、処理を行う。
【0034】
三次元座標情報は、座標データ選択部701に入力される。座標データ選択部701は制御部702によって制御され、初期状態記憶部703、プローブ位置算出部704、トランスデューサ位置算出部705のいずれかに選択的に三次元座標情報を供給する。
初期状態記憶部703は、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサが較正板114に配置されている時の三次元座標情報を算出して記憶する。初期状態記憶部703は、プローブ105とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元座標情報を算出する際、予め較正板114の寸法情報である較正板データ713を参照して、較正板114の位置を把握する。
プローブ位置算出部704は、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢を、初期状態記憶部703に記憶されている三次元座標情報を基準に現在の三次元座標情報から算出する。
トランスデューサ位置算出部705は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサ、すなわちバブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの、現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報を、初期状態記憶部703に記憶されている三次元座標情報を基準に現在の三次元座標情報から算出する。
【0035】
プローブ画像データ706は、仮想三次元空間内にプローブ105を描写するための三次元ベクトルデータである。
トランスデューサ画像テーブル707は、仮想三次元空間内にトランスデューサユニット113の各トランスデューサを描写するための三次元ベクトルデータである。
トランスデューサ焦点テーブル708は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサが治療用超音波を発生した際の、超音波の焦点位置を描写するための三次元ベクトルデータである。
【0036】
プローブ位置算出部704が出力する、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報は、画像選択合成部709に入力される。画像選択合成部709は、プローブ画像データ706を、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報に基づいて仮想三次元空間内に配置する描画を実行する。
【0037】
一方、臓器画像形成部710には、超音波画像形成装置104から図示しないビデオキャプチャカードを通じて得られる超音波断層画像データが入力される。臓器画像形成部710は、超音波断層画像データに写っている臓器の画像から臓器の輪郭を抽出して、輪郭データを作成し、画像選択合成部709に供給する。
画像選択合成部709は、輪郭データと、プローブ105の現在の仮想三次元空間内における三次元位置及び姿勢の情報に基づいて、仮想三次元空間内に輪郭を配置する描画を行う。
【0038】
画像選択合成部709が形成する、仮想三次元空間内の輪郭データは、三次元画像形成部711に供給される。三次元画像形成部711は、仮想三次元空間内に存在する複数の輪郭データ同士を補間演算して、仮想三次元空間内に臓器の立体画像を形成し、この臓器の立体画像データを画像選択合成部709に供給する。
【0039】
画像選択合成部709は、仮想三次元空間内にプローブ105の三次元画像とトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元画像を描画すると共に、臓器の輪郭又は臓器の三次元画像を選択的に描画する。こうして画像選択合成部709によって作成された仮想三次元空間の映像情報は、ディスプレイ110である表示部712に表示される。
【0040】
操作者である医師は、操作部111を操作して、表示部712に表示されている、癌細胞を有する肝臓と、癌細胞に血液を供給する、肝動脈或は門脈から派生する血管を確認する。そして、壊死させようとする癌細胞に血液を供給する血管を選択し、血液中のマイクロバブルの流れを制御するためのバブル誘導箇所と、血液中のマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためのバブル凝集箇所を決定する。
操作部111によって指定した、血管中のバブル誘導箇所は、バブル誘導算出部714によって三次元画像データに変換される。同様に、操作部111によって指定した、血管中のバブル凝集箇所は、バブル凝集算出部715によって三次元画像データに変換される。これら三次元画像データは、画像選択合成部709に供給されて、表示部712に表示される。
【0041】
制御部702は、バブル誘導箇所に医療用超音波を照射するために、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cの姿勢制御を行う。
また同様に、制御部702は、バブル凝集箇所に医療用超音波を照射するために、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの姿勢制御を行う。
【0042】
バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの三次元の姿勢は、空間座標取得装置108から得られる。そして、トランスデューサ焦点テーブル708から焦点データを読み込み、画像選択合成部にて仮想三次元空間内に展開させることで、バブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に対して各々のトランスデューサの焦点がどれだけずれているかが把握できる。制御部702は、画像選択合成部から、このズレの情報を取得して、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、医療用超音波の焦点をバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に合わせ込むための姿勢制御を行う。
【0043】
制御部702は、バブル凝集箇所に照射するための医療用超音波に、凝集体を形成するためのBjerknes力を生じさせるために、次式の演算処理を行う。
【0044】
【数1】
【0045】
マイクロバブルを血管内のある特定の一箇所に凝集させるには、凝集体を形成する音源と、形成された凝集体を押し出して位置を安定させるための音源の、二つの超音波発生源が必要になる。したがって、トランスデューサユニット113には、最低でも二個のバブル凝集体形成用トランスデューサが装備されていなければならない。
本実施形態では、バブル凝集体形成用トランスデューサ301dが第一凝集体形成用トランスデューサに、バブル凝集体形成用トランスデューサ301eが第二凝集体形成用トランスデューサに相当することとなる。
【0046】
制御部702は、演算の結果得られる周波数と位相のデータを超音波治療装置112に供給する。超音波治療装置112は、制御部702から受信した周波数と位相のデータに基づいて、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eを駆動する。
【0047】
[動作]
図8は本実施形態の超音波治療システム101で行われる、診断及び治療の全体的な作業の流れを示すフローチャートである。
処理を開始すると(S801)、医師は最初に画像合成兼制御装置109がプローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサの仮想三次元空間における位置及び姿勢を正確に描写するための初期較正処理を行う(S802)。初期較正処理が終わると、画像合成兼制御装置109は表示部712に表示する仮想三次元空間内にプローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサをリアルタイムに描写することができる(S803)。
【0048】
次に、医師はプローブ105を撮影したい患者103の臓器の近傍に配置して、超音波画像形成装置104を操作して、臓器の三次元画像を得られる程度迄、超音波断層画像データを繰り返し取得する。そして、画像合成兼制御装置109は臓器の三次元画像を形成する(S804)。
本実施形態の場合、臓器は肝臓及びその周辺の、肝動脈或は門脈から派生する血管になる。
【0049】
こうして肝臓及び周辺の血管の三次元画像が得られると、医師は操作部111を操作して、表示部712に表示されている血管の三次元画像から、壊死させようとする癌細胞に血液を供給する血管を選択し、血液中のマイクロバブルの流れを制御するためのバブル誘導箇所と、血液中のマイクロバブルを凝集させて血栓を形成するためのバブル凝集箇所、つまり医療用超音波を照射する対象箇所を決定する(S805)。
医師は、超音波を照射する対象であるバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所を決定したら、操作部111を通じて画像合成兼制御装置109を操作して、トランスデューサの焦点合わせを命ずる。すると、画像合成兼制御装置109の制御部702は、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、医療用超音波の焦点をバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に合わせ込むための姿勢制御(位置決め処理)を行う(S806)。
【0050】
位置決め処理(S806)による位置決めが終了したら、医師は操作部111を操作して、制御部702を通じて超音波治療装置112を稼働させて、トランスデューサユニット113の各トランスデューサから治療用超音波を発し、照射対象であるバブル誘導箇所及びバブル凝集箇所に一定時間照射して(S807)、処理を終了する(S808)。
【0051】
図9は初期較正処理の流れを示すフローチャートである。図7のステップS802の詳細である。
処理を開始すると(S901)、画像合成兼制御装置109の初期状態記憶部703は、最初に空間座標取得装置108から較正板114の識別情報を受信し、較正板データ713を参照して、較正板114の座標と姿勢の情報を算出して取得する(S902)。この、較正板114の座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間の基準となる。
【0052】
次に、初期状態記憶部703は空間座標取得装置108から較正板114に配置されているプローブ105の識別情報を受信し、プローブ105の座標と姿勢の情報を算出して取得する(S903)。この時点の、プローブ105の座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間におけるプローブ105の基準となる。
【0053】
次に、初期状態記憶部703は空間座標取得装置108から較正板114に配置されているトランスデューサユニット113の各トランスデューサの識別情報を受信し、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの座標と姿勢の情報を算出して取得する(S904)。この時点の、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの座標と姿勢の情報は、仮想三次元空間におけるトランスデューサユニット113の各トランスデューサの基準となる。
【0054】
次に、画像合成兼制御装置109は空間座標取得装置108からプローブ105の座標と姿勢を連続的に取得しつつ、超音波画像形成装置104から超音波断層画像データを取得して、プローブ105が形成する観察平面の較正処理を行い(S905)、一連の処理を終了する。
【0055】
以下に、プローブ105の観察平面と、ステップS905における観察平面の較正処理の詳細について説明する。
図10は、プローブ105の筐体を含む平面(以下「プローブ平面」)と観察平面との間の誤差を示す概略図である。
プローブ105が撮影する超音波画像に基づく輪郭の画像が仮想三次元空間内で正確に配置されるためには、三次元空間内のプローブ105自身の座標と姿勢を正確に検出するだけでなく、プローブ105が撮影する超音波画像が形成する二次元の平面が、プローブ105に対してどのように配置されるのかも正確に把握できていなければならない。この、プローブ105が撮影する超音波画像が形成する二次元の平面を、本明細書では観察平面P1002と呼ぶ。
【0056】
プローブ105が形成する観察平面P1002は、必ずしもプローブ105の筐体(プローブ平面P1001)と一致或は並行であるとは限らない。プローブ105の探触子本体201は手作りであるので、プローブ平面P1001と観察平面P1002との間には、若干の誤差を含む。誤差は、二方向のねじれ角と距離の、三要素である。
したがって、画像合成兼制御装置109は、プローブ105の筐体の姿勢に対する観察平面P1002との位置関係を正確に把握できていなければならない。
【0057】
そこで、プローブ105の筐体の姿勢に対する観察平面P1002との位置関係を検出することで、観察平面P1002の較正を行う。
図11は、観察平面P1002の較正作業を示す概略図である。これは「Cross Wire」と呼ばれる周知の較正方法である。
中空の箱1001には釣り糸1002が縦と横とで二本、張られている。箱1001の内壁には吸音材1003が敷き詰められている。プローブ105がこの釣り糸1002の交点を異なる角度で数十回程度、超音波画像の撮影を行う。そうして得たプローブ105の位置及び姿勢のデータを集計して所定の演算を行うと、プローブ105の形状に対する観察平面P1002を算出することができる。
【0058】
図12は、臓器三次元画像形成処理の流れを示すフローチャートである。図8のステップS804の詳細である。
処理を開始すると(S1201)、画像合成兼制御装置109は医師が操作部111或はプローブ105を操作することによって生じるトリガ信号の入力を待つ(S1202)。
【0059】
これ以降はループ処理である。
トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示でない、画像の輪郭を取得する命令であれば(S1203のNO)、画像合成兼制御装置109の制御部702702は臓器画像形成部710を制御する。すると、臓器画像形成部710は超音波画像形成装置104からビデオキャプチャカードを通じて超音波画像データを取得する(S1204)。
【0060】
次に、臓器画像形成部710は超音波画像データから輪郭を抽出して(S1205)、画像選択合成部709に輪郭データを出力する。画像選択合成部709は、プローブ位置算出部704から得たプローブ105の三次元位置及び姿勢の情報と、初期状態記憶部703に格納されている観察平面P1002の情報に基づいて、仮想三次元空間内に輪郭を配置する(S1206)。表示部712は、輪郭が描画された仮想三次元空間を表示する(S1207)。
【0061】
ステップS1207の後は、再びステップS1202に戻り、トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示でない限り、ステップS1204乃至ステップS1207の処理が繰り返される。
【0062】
ステップS1203で、トリガ信号の指示内容が三次元合成画像を作成する指示であれば(S1203のYES)、画像合成兼制御装置109の制御部702702は三次元画像形成部711と画像選択合成部709を制御して、三次元画像形成部711に既に取得済みの三次元輪郭画像から三次元の補完合成処理を行わせ(S1208)、画像選択合成部709に臓器の三次元合成画像を仮想三次元空間内に配置して表示させて(S1209)、一連の処理を終了する(S1210)。
【0063】
なお、図12のフローチャートでは三次元合成画像の作成は、操作者である医師の明示的な操作(ステップS1202)に基づいているが、画像合成兼制御装置109の演算能力が十分高速であれば、ステップS1208の三次元補完合成処理をリアルタイムに繰り返すことも可能である。つまり、ある程度三次元合成画像が形成可能になる程度まで超音波画像データを取得できたと、画像選択合成部709が判断したら、即座にステップS1208の三次元補完合成処理を行い、その後は新たな超音波画像データが得られる度に三次元補完合成処理を繰り返して、三次元合成画像を更新する。このように処理をすることで、三次元合成画像がより実際の臓器に近似することが期待できる。
【0064】
図13(a)、(b)、(c)及び(d)は、臓器三次元画像形成処理の流れを示す概略図である。
図13(a)は、プローブ105から超音波画像形成装置104によって得られる超音波画像である。図12のステップS1204の状態である。
図13(b)は、超音波画像から抽出した輪郭の画像データを模式的に示す図である。図12のステップS1205の状態である。
図13(c)は、仮想三次元空間内に輪郭を複数個配置した状態を模式的に示す図である。図12のステップS1206及びS1207の状態である。
図13(d)は、仮想三次元空間内に複数個配置された輪郭同士を三次元補完合成した状態を模式的に示す図である。図12のステップS1208及びS1209の状態である。
【0065】
超音波画像形成装置のプローブはCTスキャンと異なり、患者の皮膚に密着させる必要があるので、CTスキャンのように取得した超音波断層画像を並列に並べて三次元画像を形成することが不可能である。そこで、発明者はプローブの三次元座標情報を取得して、これに基づいて超音波断層画像を三次元に展開することを考えた。超音波断層画像はそれ自身が多量のデータであり、そのまま三次元に展開することが困難である。そこで、超音波断層画像から輪郭を抽出して輪郭データを得る処理を加えることで、扱うデータ量を低減し、更に仮想三次元空間内に展開することを容易にした。また、近接する輪郭同士を補間演算することで、元の立体、つまり臓器の立体画像を得ることができた。
【0066】
図14は、表示部712に表示される仮想三次元空間の図である。
画像合成兼制御装置109が表示部712に表示する仮想三次元空間1401には、プローブ105、プローブ105から発生する観察平面P1002、トランスデューサユニット113の各トランスデューサ、そして三次元補完合成によって描画された臓器1402が配置され、描かれている。
【0067】
プローブ105の三次元画像は、図6のプローブ画像データ706を基に、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0068】
プローブ105に付随する観察平面P1002の三次元画像は、初期状態記憶部703に記憶されている観察平面P1002の情報を基に、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0069】
トランスデューサの三次元画像と、トランスデューサに付随する焦点1404の三次元画像は、図6のトランスデューサ画像テーブル707を基に、トランスデューサ位置算出部705が出力するトランスデューサの現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置して描画する。
【0070】
臓器1402の三次元画像は、図6の臓器画像形成部710が出力する輪郭の画像データを、プローブ位置算出部704が出力するプローブ105の現在の仮想三次元空間1401内における三次元位置及び姿勢の情報と初期状態記憶部703に記憶されている観察平面P1002の情報を用いて、画像選択合成部709が仮想三次元空間1401内に配置し、更に三次元画像形成部711が三次元補完合成して、仮想三次元空間1401内に描画する。
【0071】
図15は、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの位置決め処理である。図8のステップS806の詳細である。
処理を開始すると(S1501)、制御部702は、図8のステップS805を実行した際に医師によって入力されたバブル誘導箇所に最適な、バブル誘導用トランスデューサを決定する(S1502)。最適なバブル誘導用トランスデューサの選択基準としては、医療用超音波の焦点とバブル誘導箇所との間の距離が短いことと、姿勢制御によって医療用超音波をバブル誘導箇所に照射できることである。
【0072】
制御部702は、ステップS1502でバブル誘導箇所に医療用超音波を照射させるためのバブル誘導用トランスデューサを決定したら、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、当該バブル誘導用トランスデューサのアクチュエータを駆動し、位置決めを行う(S1503)。
【0073】
本実施形態のトランスデューサユニット113の場合、バブル誘導用トランスデューサは、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cの三個が存在する。仮にバブル誘導箇所が一箇所だけである場合は、バブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cのうち、医療用超音波の焦点とバブル誘導箇所とが最適な状態で交わるもの一個だけを選択して、位置決め制御を行う。
【0074】
次に制御部702は、図8のステップS805を実行した際に医師によって入力されたバブル凝集箇所に最適な、バブル凝集体形成用トランスデューサを決定する(S1504)。最適なバブル凝集体形成用トランスデューサの選択基準としては、医療用超音波の焦点とバブル凝集箇所との間の距離が短いことと、姿勢制御によって医療用超音波をバブル誘導箇所に照射できることである。
【0075】
制御部702は、ステップS1504でバブル凝集箇所に医療用超音波を照射させるためのバブル凝集体形成用トランスデューサを決定したら、トランスデューサ制御部716及びトランスデューサ駆動装置115を通じて、当該バブル凝集体形成用トランスデューサのアクチュエータを駆動し、位置決めを行う(S1505)。そして、一連の処理を終了する(S1506)。
【0076】
本実施形態のトランスデューサユニット113の場合、バブル凝集体形成用トランスデューサは、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eの二個が存在する。前述の通り、マイクロバブルの凝集体を形成して所定の箇所に集めるためには、二つの医療用超音波を照射しなければならないので、本実施形態の画像合成兼制御装置109では、このステップS1504は実質的に何も処理をしないこととなる。もし、トランスデューサユニット113にバブル凝集体形成用トランスデューサが三個以上搭載されている場合は、このステップS1504が有効に機能しなければならない。
【0077】
図16は本実施形態の超音波治療システムによって実現される、血管1601内の状態を説明する概略図である。
周知のように、血管1601は臓器等の末端に近づくに連れて、分岐して細くなる。超音波治療システムは、血管1601の分岐点1601a近傍にマイクロバブル誘導用超音波P1602を照射して、血液中のマイクロバブル1603を治療対象部位に誘導し、血管1601の分岐点1601aから治療対象部位1604に至る箇所でマイクロバブル凝集体形成用超音波P1605を照射して、血液中のマイクロバブル1603を凝集させて凝集体1606を形成する。また、血管1601の分岐点1601a近傍にマイクロバブル誘導用超音波P1607を照射して、凝集体1606が正常部位1608に流れ込まないように誘導する。
【0078】
本実施形態は以下のような応用例が可能である。
(1)本実施形態では、プローブ105及びトランスデューサユニット113の各トランスデューサの三次元上の位置及び姿勢をリアルタイムに取得するために、赤外線を用いた光学式三次元計測装置を採用した。位置と姿勢を取得する手段は、この赤外線の光学式三次元計測装置に限らず、可視光を用いる装置や磁気式の装置であってもよい。
なお、三次元計測装置の動作方式が異なれば、これに対応するマーカの形状等も変わることとなる。したがって、マーカも赤外線反射球体205を用いる形態に限られない。
【0079】
(2)超音波画像形成装置104と、空間座標取得装置108と、画像合成兼制御装置109は、周知の電子計算機で構成されている。したがって、データ処理能力の高い電子計算機を用いれば、これらの装置を一体化することも可能である。本システムが実用化されれば、超音波治療装置112も含めて、全ての機能を凝縮した装置として提供することも可能である。
【0080】
(3)本実施形態のトランスデューサユニット113には、基板304にバブル誘導用トランスデューサ301a、301b及び301cと、バブル凝集体形成用トランスデューサ301d及び301eを交互に設けていた。これらトランスデューサは前述の説明の通り、全て同一の構成を有する。したがって、治療部位に応じてこれらトランスデューサの役割を変更することも可能である。つまり、基板304の左端に位置するバブル誘導用トランスデューサ301aが、超音波治療装置112が出力する超音波駆動電流によってバブル凝集体形成用トランスデューサとして機能しても良いし、逆に基板304の左端に位置するバブル誘導用トランスデューサ301aに隣接するバブル凝集体形成用トランスデューサ301dが、超音波治療装置112が出力する超音波駆動電流によってバブル誘導用トランスデューサとして機能しても良い。
【0081】
(4)本実施形態の超音波治療システム101では、超音波治療装置112が画像合成兼制御装置109によって制御される構成となっているが、トランスデューサユニット113の各トランスデューサの役割が予め定まっている状況であれば、超音波治療装置112を手動でオン・オフ制御してもよい。つまり、超音波治療装置112のオン・オフ制御は必ずしも必須ではない。
【0082】
本実施形態では、超音波治療システムを開示した。
超音波画像形成装置が出力する超音波断層画像から輪郭を抽出した後、プローブの三次元座標情報に基づいて輪郭データを仮想三次元空間内に配置する。輪郭データを複数取得して補間演算を実施すると、仮想三次元空間内に臓器の三次元画像を形成できる。
これまで、超音波プローブから二次元の超音波断層画像しか撮影できなかったが、プローブの三次元座標情報を取得することと、超音波断層画像から輪郭を抽出することで、超音波を用いた三次元立体画像を形成することができる。
【0083】
血管1601を三次元立体画像で仮想三次元空間内に再現し、トランスデューサユニット113を用いて、治療対象部位1604にマイクロバブルの凝集体1606を形成して誘導する。血管1601内の所望の箇所に凝集体1606を集めて血栓を形成し、治療対象部位1604の細胞を壊死させることで、化学的薬物や放射線を一切使わない癌治療が実現できる。
【0084】
以上、本発明の実施形態例について説明したが、本発明は上記実施形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
【符号の説明】
【0085】
101…超音波治療システム、102…手術台、103…患者、104…超音波画像形成装置、105…プローブ、105a…マーカ、106…赤外線ステレオカメラ、107…三脚、108…空間座標取得装置、109…画像合成兼制御装置、110…ディスプレイ、111…操作部、112…超音波治療装置、113…トランスデューサユニット、114…較正板、115…トランスデューサ駆動装置、201…探触子本体、202…把持部、203…ケーブルタイ、204…固定棒、205…赤外線反射球体、301a…バブル誘導用トランスデューサ、301d…バブル凝集体形成用トランスデューサ、301e…バブル凝集体形成用トランスデューサ、302…振動子本体、303…マーカ、304…基板、305a…穴、401…枠、402a…バネ、403a…アクチュエータ、502…ガイド棒、503…筒、601…凹部、602…基準線、701…座標データ選択部、702…制御部、703…初期状態記憶部、704…プローブ位置算出部、705…トランスデューサ位置算出部、706…プローブ画像データ、707…トランスデューサ画像テーブル、708…トランスデューサ焦点テーブル、709…画像選択合成部、710…臓器画像形成部、711…三次元画像形成部、712…表示部、713…較正板データ、714…バブル誘導算出部、715…バブル凝集算出部、716…トランスデューサ制御部、1001…箱、1002…釣り糸、1003…吸音材、1401…仮想三次元空間、1402…臓器、1404…焦点、1601…血管、1601a…分岐点、1603…マイクロバブル、1604…治療対象部位、1606…凝集体、1608…正常部位、P1001…プローブ平面、P1002…観察平面、P1602…マイクロバブル誘導用超音波、P1605…マイクロバブル凝集体形成用超音波、P1607…マイクロバブル誘導用超音波
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、
前記プローブが接続されて前記計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、
前記誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、前記血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、
前記第一のアクチュエータを伴う前記誘導用トランスデューサと、前記第二のアクチュエータを伴う前記第一凝集体形成用トランスデューサと、前記第三のアクチュエータを伴う前記第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、
前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、前記誘導用トランスデューサに前記誘導用超音波を発生させると共に、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに前記凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、
前記プローブ、前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、
前記断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、前記第一のマーカの前記空間座標情報に基づいて前記輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の前記輪郭画像を補間演算して立体画像を前記仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を前記誘導用超音波照射対象に照射できるように前記第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を前記凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように前記第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、
前記画像合成兼制御装置が形成した前記仮想三次元空間及び前記立体画像を表示する表示部と
を備える超音波治療システム。
【請求項2】
前記微粒子はマイクロバブルであり、
前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサは、前記凝集体形成用超音波照射対象に前記凝集体形成用超音波を照射することで、Bjerknes力を生じさせて前記マイクロバブルを凝集させる、
請求項1記載の超音波治療システム。
【請求項3】
計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、
前記プローブが接続されて前記計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、
前記プローブに固定される第一のマーカと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、
前記誘導用トランスデューサに固定される第二のマーカと、
前記誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、前記血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサに固定される第三のマーカと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、
前記第二凝集体形成用トランスデューサに固定される第四のマーカと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、
前記第二のマーカ及び前記第一のアクチュエータを伴う前記誘導用トランスデューサと、前記第三のマーカ及び前記第二のアクチュエータを伴う前記第一凝集体形成用トランスデューサと、前記第四のマーカ及び前記第三のアクチュエータを伴う前記第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、
前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、前記誘導用トランスデューサに前記誘導用超音波を発生させると共に、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに前記凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、
前記プローブ及び前記基板を据え付けて初期状態の位置を定めるための較正板と、
前記較正板に固定される第五のマーカと、
前記第一のマーカ、前記第二のマーカ、前記第三のマーカ、前記第四のマーカ及び前記第五のマーカの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、
前記断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、前記第一のマーカの前記空間座標情報に基づいて前記輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の前記輪郭画像を補間演算して立体画像を前記仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を前記誘導用超音波照射対象に照射できるように前記第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を前記凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように前記第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、
前記画像合成兼制御装置が形成した前記仮想三次元空間及び前記立体画像を表示する表示部と
を備える超音波治療システム。
【請求項4】
前記微粒子はマイクロバブルであり、
前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサは、前記凝集体形成用超音波照射対象に前記凝集体形成用超音波を照射することで、Bjerknes力を生じさせて前記マイクロバブルを凝集させる、
請求項3記載の超音波治療システム。
【請求項1】
計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、
前記プローブが接続されて前記計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、
前記誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、前記血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、
前記第一のアクチュエータを伴う前記誘導用トランスデューサと、前記第二のアクチュエータを伴う前記第一凝集体形成用トランスデューサと、前記第三のアクチュエータを伴う前記第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、
前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、前記誘導用トランスデューサに前記誘導用超音波を発生させると共に、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに前記凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、
前記プローブ、前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、
前記断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、前記第一のマーカの前記空間座標情報に基づいて前記輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の前記輪郭画像を補間演算して立体画像を前記仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を前記誘導用超音波照射対象に照射できるように前記第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を前記凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように前記第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、
前記画像合成兼制御装置が形成した前記仮想三次元空間及び前記立体画像を表示する表示部と
を備える超音波治療システム。
【請求項2】
前記微粒子はマイクロバブルであり、
前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサは、前記凝集体形成用超音波照射対象に前記凝集体形成用超音波を照射することで、Bjerknes力を生じさせて前記マイクロバブルを凝集させる、
請求項1記載の超音波治療システム。
【請求項3】
計測対象に超音波を照射して反射音の情報を得るプローブと、
前記プローブが接続されて前記計測対象の内部の断層画像を得る超音波画像形成装置と、
前記プローブに固定される第一のマーカと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ誘導用超音波を照射することで、血管中の微粒子を誘導する誘導用トランスデューサと、
前記誘導用トランスデューサに固定される第二のマーカと、
前記誘導用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第一のアクチュエータと、
超音波の焦点を有し、所定の超音波照射対象へ凝集体形成用超音波を照射することで、前記血管中の微粒子を凝集させる第一凝集体形成用トランスデューサと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサに固定される第三のマーカと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第二のアクチュエータと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサと同一の構成を有する第二凝集体形成用トランスデューサと、
前記第二凝集体形成用トランスデューサに固定される第四のマーカと、
前記第一凝集体形成用トランスデューサの三次元の姿勢を制御するための第三のアクチュエータと、
前記第二のマーカ及び前記第一のアクチュエータを伴う前記誘導用トランスデューサと、前記第三のマーカ及び前記第二のアクチュエータを伴う前記第一凝集体形成用トランスデューサと、前記第四のマーカ及び前記第三のアクチュエータを伴う前記第二凝集体形成用トランスデューサとが設置される基板と、
前記誘導用トランスデューサ、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに接続されて、前記誘導用トランスデューサに前記誘導用超音波を発生させると共に、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサに前記凝集体形成用超音波を発生させる超音波治療装置と、
前記プローブ及び前記基板を据え付けて初期状態の位置を定めるための較正板と、
前記較正板に固定される第五のマーカと、
前記第一のマーカ、前記第二のマーカ、前記第三のマーカ、前記第四のマーカ及び前記第五のマーカの空間座標情報を取得する空間座標取得装置と、
前記断層画像から輪郭を抽出した輪郭画像を作成し、前記第一のマーカの前記空間座標情報に基づいて前記輪郭画像を仮想三次元空間内に配置し、複数の前記輪郭画像を補間演算して立体画像を前記仮想三次元空間内に配置し、所定の指示に応じて前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を照射する誘導用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記誘導用トランスデューサが前記誘導用超音波を前記誘導用超音波照射対象に照射できるように前記第一のアクチュエータを制御し、所定の指示に応じて前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を照射する凝集体形成用超音波照射対象を前記仮想三次元空間内に配置し、前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサが前記凝集体形成用超音波を前記凝集体形成用超音波照射対象に照射できるように前記第二のアクチュエータ及び第三のアクチュエータを制御する画像合成兼制御装置と、
前記画像合成兼制御装置が形成した前記仮想三次元空間及び前記立体画像を表示する表示部と
を備える超音波治療システム。
【請求項4】
前記微粒子はマイクロバブルであり、
前記第一凝集体形成用トランスデューサ及び前記第二凝集体形成用トランスデューサは、前記凝集体形成用超音波照射対象に前記凝集体形成用超音波を照射することで、Bjerknes力を生じさせて前記マイクロバブルを凝集させる、
請求項3記載の超音波治療システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−81152(P2012−81152A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231154(P2010−231154)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】
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