説明

超音波洗浄用ノズルおよびそれを用いた超音波洗浄方法

【課題】基板をより均一に洗浄することができ、さらには近年の需要に対応してより優れた洗浄効果を有する超音波洗浄用ノズルおよびそれを用いた超音波洗浄方法を提供する。
【解決手段】基板の超音波洗浄に用い、少なくとも、内部に横長台形形状の噴射室を有し、一端に吐出口が開口されたノズルボディと、振動子と、振動板とを具備し、前記ノズルボディは、2つの導入通路と、導入通路と噴射室との間に位置し、複数形成された整流通路とを有し、導入通路からの洗浄液が整流通路を通し、噴射室内に供給される超音波洗浄用ノズルであって、整流通路を通った洗浄液が、整流通路と噴射室との間に位置する整流室を経て噴射室に供給されるもので、整流室と噴射室は横長形状の整流スリットで連結され、整流スリットから噴射室に噴射された洗浄液が、吐出口から吐出されるものである超音波洗浄用ノズル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄基板、例えばガラス基板等の精密基板の洗浄工程において、超音波を印加した洗浄液を基板の表面へ噴射して、基板表面の洗浄を行う超音波洗浄に用いる超音波洗浄用ノズルおよび超音波洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄液を吐出する吐出口が横長のシャワータイプの超音波洗浄用ノズルは、例えば特許文献1に開示されているものが挙げられ、主に大型のガラス基板などを用いて情報機器などを製造する産業分野で用いられている。
この横長の超音波洗浄用ノズルを用いて、洗浄工程において、超音波を印加した純水等の洗浄液を吐出し、大型のガラス基板などを洗浄する。
【0003】
図6に従来の一般的な超音波洗浄用ノズルを示す。図6(A)はノズルボディ内部を透視した斜視図であり、(B)は図6(A)のB矢視図である。
図6(B)に示すように、従来の超音波洗浄用ノズル101はノズルボディ102と、振動子103と、振動板104とから構成されている。
また、図6(A)(B)に示すように、ノズルボディ102には、横長台形形状の噴射室105と、洗浄液を吐出するためのスリット状の吐出口106と、噴射室105と平行して両側に位置する洗浄液の導入通路107と、導入通路107と噴射室105とを連通し、噴射室105の側面に等間隔に並ぶ複数の整流通路108とが形成されている。そして、洗浄液供給手段から導入通路107に供給された洗浄液は、整流通路108を通って噴射室105に噴射され、振動子103により振動板104を介して超音波が印加されて、洗浄時に吐出口106から吐出できるようになっている。
【0004】
そして、このような超音波洗浄用ノズル101を用い、導入通路107から複数の整流通路108を通して噴射室105内に洗浄液を噴射し、振動子103により噴射室105内の洗浄液に超音波を印加して、該超音波が印加された洗浄液を吐出口106から基板に吐出して基板の洗浄を行うことができる。
【0005】
【特許文献1】特開平10−52653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の超音波洗浄用ノズル101では、スリット状の吐出口106から吐出される洗浄液の流量は、横長の吐出口106の各吐出箇所でほぼ均一であるものの、この超音波洗浄用ノズル106を用いて実際に洗浄された基板には洗浄ムラが発生してしまっていた。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、基板をより均一に洗浄することができ、さらには近年の需要に対応してより優れた洗浄効果を有する超音波洗浄用ノズルおよびそれを用いた超音波洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、基板の超音波洗浄に用い、少なくとも、内部に横長台形形状の噴射室を有し、一端に洗浄液を吐出するためのスリット状の吐出口が開口されたノズルボディと、前記吐出口と対向して位置し、超音波を発振する振動子と、該振動子から発振される超音波を噴射室内の洗浄液に伝えて印加する振動板とを具備し、
前記ノズルボディは、前記噴射室と平行して噴射室の両側に形成され、前記噴射室に洗浄液を供給するための2つの導入通路と、該各々の導入通路と前記噴射室との間に位置し、前記各々の導入通路の側面に等間隔で複数形成された整流通路とを有し、前記各々の導入通路からの洗浄液が、前記整流通路を通し、前記噴射室内に供給されるものである超音波洗浄用ノズルであって、
前記整流通路を通った洗浄液が、前記整流通路と前記噴射室との間に位置する整流室を経て噴射室に供給されるものであり、前記整流室と前記噴射室は横長形状の整流スリットで連結され、該整流スリットから前記噴射室に噴射された洗浄液が、前記吐出口から吐出されるものであることを特徴とする超音波洗浄用ノズルを提供する(請求項1)。
【0009】
このような超音波洗浄用ノズルであれば、導入通路、整流通路を通った洗浄液は、整流室を経て、横長形状の整流スリットから噴射室内に噴射されるので、従来の超音波洗浄用ノズルとは異なって、噴射室内へ噴出される洗浄液の流れの向きが整流スリットの横の長さの全領域にわたって一定であり、周囲へ広がることなく、噴射室内での流れの向きも一定であり、その結果、振動板を介した振動子からの超音波を噴射室内の洗浄液に均一に伝播することができる。そして、吐出口の全吐出箇所から、超音波が均一に印加された洗浄液を吐出することができ、基板を面内で洗浄ムラなく均一に洗浄することが可能である。
また、噴射室内での洗浄液の流れの向きが一定で揃っているため、振動子からの超音波が重畳し易く、より効率良く洗浄液に超音波を伝播することができ、洗浄効率を改善することが可能である。
【0010】
このとき、前記スリット状の吐出口の横の長さが、1000mm以上のものとすることができる(請求項2)。
このように、本発明によれば、近年の需要に沿い、サイズが大きく、例えばスリット状の吐出口の横の長さが1000mm以上の長尺の超音波洗浄用ノズルであっても、十分に噴射室内での洗浄液の流れの向きを揃えることができ、振動子からの超音波の伝播のムラを抑制し、吐出口から均一に超音波が印加された洗浄液を吐出することが可能である。このため、大型の基板を均一に洗浄することができ、歩留りが向上する。
【0011】
そして、本発明は、前記の超音波洗浄用ノズルを用いて基板を洗浄することを特徴とする超音波洗浄方法を提供する(請求項3)。
このように、前記の超音波洗浄用ノズルを用いて基板を洗浄すれば、上述したように、吐出口から、均一かつ効率良く超音波が印加された洗浄液を吐出することができるので、基板を洗浄ムラなく洗浄することが可能であるし、より高い音圧を有する超音波を基板に伝えて洗浄することができ、洗浄効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の超音波洗浄用ノズルであれば、噴射室内での洗浄液の流れの向きを一定に揃えることができ、振動子からの超音波を洗浄液に均一に伝え、吐出口から均一に超音波が印加された洗浄液を吐出させることができるので、超音波を基板面内で均一に伝えることができ、洗浄ムラを著しく抑制することが可能である。また、噴射室内での洗浄液の流れの向きが揃っているので超音波が重畳し易く、音圧がより高くなり、そのため洗浄効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
従来では、例えばガラス基板等の基板を超音波洗浄する場合、図6に示すような超音波洗浄用ノズル101を用いて洗浄を行っていたが、このような従来の超音波洗浄用ノズル101を使用した場合、その洗浄した基板には洗浄ムラが生じてしまっていた。
【0014】
そこで、本発明者らが、このような従来の超音波洗浄用ノズル101を用いた場合の洗浄ムラの発生原因について鋭意研究を重ねたところ、洗浄液が、導入通路から整流通路を通して直接噴射室に噴射されていることが原因に挙げられると考えた。
ここで、図7(A)(B)に従来の超音波洗浄用ノズル101を用いた場合の洗浄液の流れの一例を示す。
図7に示すように、導入通路107から送られてきた洗浄液は、各整流通路108を通って噴射室105内に噴出される。
【0015】
このとき、噴射室105内に噴出された洗浄液は、各整流通路108の出口(噴射室105の入口)を出た後、周囲に広がって流れてしまい、その一部は、例えば隣接あるいは噴射室を挟んで反対側にある整流通路から噴出された洗浄液とぶつかった後、吐出口106へと流れていく。このように、ぶつかり合った洗浄液が吐出口に向かって揃って流れていく箇所(各整流通路同士の中間位置近傍)では、振動子からの超音波が洗浄液に効率良く伝播し易く、そのため、その各整流通路の中間位置に対応する吐出口106の箇所から吐出される洗浄液が伝える超音波の音圧は比較的高くなる。
【0016】
一方で、吐出口106のそれ以外の箇所、すなわち、各整流通路108の近傍に対応した箇所では、洗浄液の流れが吐出口106に向かって揃っていなく、振動子からの超音波が比較的伝播しにくくなっている。このため、その箇所から吐出される洗浄液が伝える音圧は、前述の各整流通路間の中心に対応する箇所から吐出される洗浄液が伝える音圧よりも低くなってしまう。
このように、噴射室105内での洗浄液の流れが揃っておらず、それにより、吐出口106の横の長さ方向の各吐出箇所で、吐出される洗浄液に伝播された超音波の音圧に差が生じてしまうので、上記超音波洗浄用ノズル101を用いて超音波洗浄を行った場合には、基板面内で洗浄ムラが発生してしまう。
【0017】
そこで、本発明者らは、吐出口の各吐出箇所によって、吐出される洗浄液における超音波の音圧ムラが発生するのを抑制するために、整流通路と噴射室との間に整流室を設け、該整流室に整流通路からの洗浄液を一旦入れることによって洗浄液の流れを整えて、その後、整流室と噴射室とを連結する横長形状の整流スリットから、整流室内の洗浄液を噴射室内に噴射することを考え出した。このような構造を有する超音波洗浄用ノズルであれば、まず、整流室内に溜めた洗浄液を、整流スリットの全噴出箇所において、一定方向に流れを揃えて均一に噴射室内に噴出することが可能である。そのため、噴射室内での洗浄液の流れも揃えることができ、振動子からの超音波を均一に洗浄液に伝播させることができる。その後、吐出口からその均一に超音波が伝播された洗浄液を吐出して被洗浄基板に面内で音圧差なく均一な超音波洗浄を行うことができる。本発明者らはこれらのことを見出し、本発明を完成させた。
【0018】
以下では、本発明の実施の形態について、図を用いて具体的に説明する。
図1は、本発明の超音波洗浄用ノズルを備えた洗浄装置の一例を示す概略図である。また、図2は本発明の超音波洗浄用ノズルの一例を示す概略図である。図2(A)はノズルボディ内部を透視した斜視図であり、(B)は、図2(A)のA矢視図である。
【0019】
図1に示すように、この洗浄装置11は、少なくとも、本発明の超音波洗浄用ノズル1、洗浄時に基板12を超音波洗浄用ノズル1の下方に送り込むための搬送手段13、超音波洗浄用ノズル1に洗浄液を供給する洗浄液供給手段14とで構成されており、チャンバー15内で基板12を洗浄できるようになっている。また、ブラシ等を配置して、基板12の洗浄時に使用することも当然可能である。
【0020】
図1では、本発明の超音波洗浄用ノズル1を基板12の上方に配置して、下方に洗浄液を吐出して基板12を洗浄する形態であるが、当然これに限定されず、基板12の下方に配置して、上方に洗浄液を吐出して基板12を洗浄する形態としても良いし、さらには、基板12の上方および下方に配置し、基板12の両面を洗浄することができる形態とすることもできる。
また、洗浄液供給手段14を2つ備えているが、数等に限定もなく、当然まとめて1つだけ配置する形態をとっても良い。また、搬送手段13としては、例えばベルトやローラ等が挙げられる。上記の搬送手段13、洗浄液供給手段14等は、特に限定されるものではなく、従来の洗浄装置で用いられているものを使用することができる。
【0021】
次に、本発明の超音波洗浄用ノズル1について詳細に述べる。
図2(B)に示すように、本発明の超音波洗浄用ノズル1はノズルボディ2と、振動子3と、振動板4とから構成されている。
振動子3や振動板4は特に限定されず、ノズルボディ2に合った形状で、ノズルボディ2内部の噴射室5内にある洗浄液に超音波を印加することができれば良く、従来と同様のものを使用することができる。
【0022】
そして、図2(A)(B)に示すように、ノズルボディ2には、まず、横長台形形状の噴射室5、洗浄液を吐出するためのスリット状の吐出口6、噴射室5と平行して両側に位置し、噴射室5内に洗浄液を供給するための導入通路7が2つ形成されている。
ここで、図6に示すように、従来の超音波洗浄用ノズル101のノズルボディ102においては、導入通路107と噴射室105とが、複数の整流通路108によって直接連通されているが、図2に示す本発明の超音波洗浄用ノズル1においては、上記導入通路7と噴射室5との間には、導入通路7側から順に、整流通路8の他、整流通路8を流れてくる洗浄液の流れを一旦溜めて流れを整えるための整流室9、整流室9内から噴射室5に洗浄液を流れを揃えて噴射するための整流スリット10が形成されている。すなわち、導入通路7からの洗浄液が、整流通路8、整流室9、整流スリット10を順に通ってから噴射室5に噴射される構造になっている。
【0023】
上述したように、図6、7の導入通路107から噴射室105へ、複数の整流通路108を通して洗浄液が直接噴射される従来の構造では、各整流通路108から噴射室105内へ噴射された洗浄液は流れが一定方向に揃わず周囲へ広がってしまい、噴射室105内での吐出口へ向かうときの流れの向きも揃わず位置によって異なってしまう。このように洗浄液の流れが噴射室105内で不均一であるために、振動子103からの超音波の伝播のされ易さにも影響が及び、伝播にムラが生じてしまうので、たとえ洗浄液の吐出量が吐出口の横の長さの各吐出箇所で均一であったとしても、超音波の伝播の度合いにはムラがあるので被洗浄基板に伝わる超音波の音圧には基板面内で差があり、基板に洗浄ムラが発生してしまう。
また、洗浄液の流れが揃っていないため、振動子から伝播される超音波が重畳しにくく、全体として音圧が低くなってしまい、洗浄効率が悪い。
【0024】
しかしながら、図2の本発明の超音波洗浄用ノズル1の構造では、導入通路7からの洗浄液は、複数の整流通路8を通った後、一旦整流室9内に入り、それから横長形状の整流スリット10を通して噴射室5内に噴出される。図3(A)(B)に、本発明の超音波洗浄用ノズル1を用いた場合の洗浄液の流れの一例を示す。
整流通路8を通ってきた洗浄液は、整流通路8から出たときに流れが揃わず、従来と同様に周囲に広がってしまうが、そこは噴射室5ではなく整流室9である。このように、広がってしまった洗浄液も整流室9という空間内に一旦収められることにより、流れが整えられる。そして、次に、整流室9内に収められた洗浄液は、横長台形形状の噴射室5内に横長形状の整流スリット10を通して一定の流れの向きで均一に噴射されることになる。
【0025】
したがって、前述した従来の場合とは異なり、整流スリット10の横の長さの各噴出箇所において、一定の揃った流れの向きで洗浄液は噴射室5内に噴出され、噴射室5内での洗浄液の流れの向きもまた一定の方向に揃えることができる。そのため、噴射室5内で、振動子からの超音波を洗浄液にムラなく均一に伝播させることができる。
以上のことより、本発明の超音波洗浄用ノズル1では、従来の超音波洗浄用ノズル101とは異なり、吐出口6の横方向の各吐出箇所で、超音波が均一に印加された洗浄液を吐出することができ、均一に基板に超音波洗浄をすることができ、基板を洗浄ムラなく洗浄することができる。
【0026】
そして、整流スリット10を通して噴射室5内に洗浄液が一定の向きで噴射され、振動子からの超音波が均一に伝播されるので、超音波が重畳し易く、洗浄液が基板に伝える超音波の音圧を上げることができる。すなわち、振動子からの超音波をさらに効率良く伝播することができ、洗浄効率を一層向上することが可能である。
【0027】
なお、整流通路8からの洗浄液を一旦入れるための整流室9の形状は特に限定されないが、洗浄液が整流スリット10を通して噴射室5内に噴射されるときに、各噴出位置でより一定の向きで揃って噴射され易いように、例えば図2に示す例のように整流スリット9と同じ長さの横長形状のものとするのが好ましい。また、断面形状も特に限定されない。
そして、整流スリット10の隙間の大きさ等は適宜決定することができ、特に限定されない。実験等を重ねて適切な大きさに決定することができる。
【0028】
また、導入通路7や整流通路8、噴射室5の形状は、特に限定されず、従来と同様のものとすることができる。洗浄する基板の大きさ等に合わせて適宜用意することができる。
例えば、噴射室5の一端の吐出口6の横の長さが1000mm以上のものとすることができる。このように、極めて長尺な吐出口6を有する場合であっても、本発明の超音波洗浄用ノズル1では、噴射室5内に噴射して供給される洗浄液の向きはどの噴出箇所においても一定であり、噴射室5内での洗浄液の流れる方向は揃っているため、振動子からの超音波を均一に伝えることができ、十分に洗浄ムラなく大型の基板を洗浄することができる。
【0029】
次に、以上のような本発明の超音波洗浄用ノズル1を用いた本発明の超音波洗浄方法について述べる(図1〜3参照)。
まず、洗浄液供給手段14から、超音波洗浄用ノズル1に洗浄液を供給し、ノズルボディ2内部の導入通路7のそれぞれの両端から洗浄液を送り込む。そして、導入通路7に送り込んだ洗浄液を、各整流通路8を通して整流室9内へ送り、その後、整流室9内から整流スリット10を通して一定の向きに揃えて噴射室5内に噴射することができる。
この場合、噴射室5の両側から噴射された洗浄液は、噴射室5の中心付近でぶつかり、吐出口6へと向きを揃えて流れる。また、振動子3によって、噴射室5内を一定の向きで流れる洗浄液に振動板4を介して超音波を伝播させ、該超音波が印加された洗浄液を吐出口6から吐出して基板を洗浄する。
【0030】
上述したように、本発明では噴射室5内で洗浄液の向きを、噴射室5の横の長さの各位置で一定に揃えることができるので、振動子3からの超音波を均一に伝播させることができるし、超音波を重畳させて、より伝播させる超音波の音圧を高くすることができる。そして、上記のように超音波が重畳してかつ均一に伝播された洗浄液を吐出し、洗浄液を通して基板に超音波を伝えて洗浄するので、基板面内で洗浄ムラなく均一に洗浄できるとともに、より効率良く洗浄することが可能である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
図1、2に示す本発明の超音波洗浄用ノズルを備えた洗浄装置を用い、洗浄液供給手段から洗浄液を供給するとともに、吐出口の横の長さの各吐出箇所から吐出される洗浄液が伝える超音波の音圧を測定した。
超音波洗浄用ノズルは、吐出口の横の長さが320mmのものを用い、振動子への電力は単位面積あたり11.3W/cmとした。また、洗浄液の流量は30L/minとした。
音圧の測定位置は吐出口から15mm下方とし、測定ピッチは1mmとした。この音圧測定にはステンレス棒センサ(UP−SB01:株式会社プレテック)を用いた。図8(A)に、超音波洗浄用ノズルの側面から見た音圧測定時のノズルとセンサの位置関係の概略を示す。また、図8(B)に超音波洗浄用ノズルの正面から見た場合のノズルとセンサの位置関係の概略を示す。
図8に示すように、上記ステンレス棒センサを用い、ノズルの横の長さの各吐出位置にセンサを移動させて、各吐出位置における洗浄液が伝える超音波の音圧を測定することができる。
【0032】
図4に実施例1の測定結果を示す。横軸が吐出口の横の長さ(20〜320mm)に沿った測定距離(測定位置)を表し、縦軸が各位置で測定された音圧値を表している。また、図5に、図4のデータの一部(測定距離100〜180mmの範囲)を拡大して示したグラフである。図5の測定範囲は、振動子1枚分の領域に対応している。
まず、図5の拡大グラフから判るように、測定された音圧は、286.25〜317.42mVであり、音圧幅は31.17mVであった。グラフの線を見て判るように上下へのぶれは小さなものとなっている。後述する従来の超音波洗浄用ノズルを用いた比較例1のデータ(音圧幅59.50mV)よりも著しく音圧幅が小さく、すなわち音圧が均一に伝播されていることが判る。
【0033】
また、音圧平均値は301.08mVであり、比較例1のデータ(音圧平均値229.74mV)よりも高い音圧値を得ることができた。さらには、振動子1枚分の全領域において、比較例1のデータの最大音圧値よりも高い値を得られた。すなわち、この洗浄液を基板に吐出すれば、振動子からの超音波をより効率良くかつ均一に伝えることができ、洗浄効率を著しく向上することができることが判る。
【0034】
次に、図4を見ると、図4は吐出口の横の長さ方向の全領域における測定データを示したものであるが、全体の音圧幅は286.25〜322.38mVで36.13mVであり、音圧値の平均は307.23mVであり、図5の振動子一枚分における場合と同様に、吐出口全体においても、比較例1のデータよりも均一であり、かつ音圧平均値も高く、格段に優れた結果が得られていることが判る。
なお、測定距離100、180、260mm近傍においてグラフにやや大きなぶれが生じているが、これは配置した振動子同士の間に対応した位置であるためと考えられる。
【0035】
そして、実施例1に用いた本発明の超音波洗浄用ノズルを用い、幅300mmのガラス基板を超音波洗浄したところ、洗浄ムラはほとんど発生せず、また高い洗浄効果を得ることができた。
【0036】
(比較例1)
図6に示す従来の超音波洗浄用ノズルを用いた以外は実施例1と同様にして、吐出される洗浄液が伝える超音波の音圧を測定した。
図5に示す振動子1枚あたりの範囲内では、音圧幅は196.33〜255.83mVで59.50mVであり、音圧平均値は229.74mVであった。
また、図4に示す吐出口全体においては、音圧幅は182.17〜257.17mVで75.00mVであり、音圧平均値は228.16mVであった。
上記のように、実施例1と比較例1とを比較すると、本発明を実施した実施例1のほうが、吐出口から吐出される洗浄液における超音波の音圧分布が均一であり、かつ高い音圧値を得ていることが判る。
【0037】
比較例1に用いた従来の超音波洗浄用ノズルを用い、幅300mmのガラス基板を超音波洗浄したところ、洗浄ムラが発生してしまい、また、実施例1よりも洗浄効果は低かった。
【0038】
(実施例2、比較例2)
吐出口の横の長さが1120mmの超音波洗浄用ノズルを用いた以外は、実施例2は実施例1と同様にして、比較例2は比較例1と同様にして、吐出される洗浄液が伝える超音波の音圧を測定した。
また、続けて1000mmの基板をそれぞれ超音波洗浄した。
実施例2は実施例1と同様の結果、比較例2は比較例1と同様の結果が得られ、吐出口の横の長さが1000mmを超える長尺形状の場合においても本発明が有効であることが判った。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の超音波洗浄用ノズルを備えた洗浄装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の超音波洗浄用ノズルの一例を示す概略図である。(A)ノズルボディ内部を透視した斜視図、(B)A矢視図である。
【図3】本発明の超音波洗浄用ノズルを用いた場合の洗浄液の流れの一例を示す説明図である。(A)ノズルボディ内部を透視した斜視図、(B)A’矢視図である。
【図4】実施例1および比較例1の音圧測定結果を示すグラフである。
【図5】実施例1および比較例1の音圧測定結果を示すグラフの一部を拡大したグラフである。
【図6】従来の超音波洗浄用ノズルの一例を示す概略図である。(A)ノズルボディ内部を透視した斜視図、(B)B矢視図である。
【図7】従来の超音波洗浄用ノズルを用いた場合の洗浄液の流れの一例を示す説明図である。(A)ノズルボディ内部を透視した斜視図、(B)B’矢視図である。
【図8】実施例および比較例における洗浄液が伝える超音波の音圧の測定方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…本発明の超音波洗浄用ノズル、 2…ノズルボディ、
3…振動子、 4…振動板、 5…噴射室、 6…吐出口、
7…導入通路、 8…整流通路、 9…整流室、 10…整流スリット、
11…洗浄装置 、12…基板、 13…搬送手段、 14…洗浄液供給手段、
15…チャンバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の超音波洗浄に用い、少なくとも、内部に横長台形形状の噴射室を有し、一端に洗浄液を吐出するためのスリット状の吐出口が開口されたノズルボディと、前記吐出口と対向して位置し、超音波を発振する振動子と、該振動子から発振される超音波を噴射室内の洗浄液に伝えて印加する振動板とを具備し、
前記ノズルボディは、前記噴射室と平行して噴射室の両側に形成され、前記噴射室に洗浄液を供給するための2つの導入通路と、該各々の導入通路と前記噴射室との間に位置し、前記各々の導入通路の側面に等間隔で複数形成された整流通路とを有し、前記各々の導入通路からの洗浄液が、前記整流通路を通し、前記噴射室内に供給されるものである超音波洗浄用ノズルであって、
前記整流通路を通った洗浄液が、前記整流通路と前記噴射室との間に位置する整流室を経て噴射室に供給されるものであり、前記整流室と前記噴射室は横長形状の整流スリットで連結され、該整流スリットから前記噴射室に噴射された洗浄液が、前記吐出口から吐出されるものであることを特徴とする超音波洗浄用ノズル。
【請求項2】
前記スリット状の吐出口の横の長さが、1000mm以上のものであることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄用ノズル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超音波洗浄用ノズルを用いて基板を洗浄することを特徴とする超音波洗浄方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−80225(P2008−80225A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261769(P2006−261769)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(590002172)株式会社プレテック (41)
【Fターム(参考)】