説明

超音波洗浄装置

【課題】 内部に超音波放射面を有するノズルから液体を流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記被洗浄部位を超音波振動で洗浄するようにしたノズルシャワー式の超音波洗浄装置において、あらゆる汚れに対応できるようにする。
【解決手段】 超音波伝達体5および超音波振動子4の中心部に管路23を形成し、該管路23を経て超音波放射面5aの中心部から液体を吐出するようにし、駆動回路6は、超音波洗浄モードよりも多くの流量によって前記被洗浄部位を洗浄する高圧洗浄モードでの洗浄を可能にする。したがって、超音波洗浄モードで歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れを除去(剥離)し、高圧洗浄モードで、前記超音波洗浄モードで剥がし取られた汚れや、食物残渣等を流し飛ばし、1台であらゆる汚れに効果的な洗浄を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔洗浄に好適に実施され、超音波領域での振動エネルギを利用して、任意の被洗浄部位を洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波振動子で発生させた超音波振動を、ノズルから吐出させた液体を介して被洗浄部位に伝達させ、洗浄を行う装置に関しては、特許文献1で提案されている。その概略構造を示すと、図8のとおりである。超音波振動子101で発生された超音波振動は、超音波伝達体102で拡大されて共振室103へ放射され、水補給口104から供給される水に重畳されて、ノズル105から口腔などの被洗浄部位に与えられる。これによって、前記超音波振動によって発生したキャビテーション気泡が破壊するときに発生する衝撃波によって、歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れを除去(剥離)するようになっている。
【特許文献1】特開昭57−65370号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術では、超音波によって歯垢や皮脂等の汚れを剥離することは可能であるが、その剥離した汚れや、食物残渣等を洗い流すことができず、それらを綺麗に流し飛ばすには、従来の歯ブラシや、高圧洗浄を行う器具を併用しなければならないという問題がある。
【0004】
本発明の目的は、あらゆる汚れに1台で効果的な洗浄を行うことができる超音波洗浄装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の超音波洗浄装置は、吐出手段から、内部に超音波放射面を有するノズルに液体を供給し、該液体を前記ノズルに形成された吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記被洗浄部位を洗浄するようにした超音波洗浄装置において、一端部側に超音波振動子が取付けられ、他端部側の端面が前記超音波放射面となる超音波伝達体および前記超音波振動子の中心部に、前記液体の流路が形成され、該流路を経て、前記超音波放射面の略中心部から前記液体を吐出するようにし、前記吐出手段は、超音波洗浄時よりも多くの流量によって前記被洗浄部位を洗浄する高圧洗浄モードでの洗浄がさらに可能であることを特徴とする。
【0006】
上記の構成によれば、たとえば吐出口側に向けてホーン状に形成されたノズルに吐出手段から液体を供給し、その液体を前記吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記ノズル内に形成された超音波放射面から、たとえば数十kHz、好ましくは20〜60kHz程度の振動振幅の大きな比較的低い超音波を放射することで、口腔などの前記被洗浄部位の強固な汚れを除去するようにした、いわゆるノズルシャワー式の超音波洗浄装置において、そのような超音波による洗浄モードに加えて、高圧洗浄モードでの洗浄をさらに可能にする。そのために、一端部側に超音波振動子が取付けられ、他端部側の端面が前記超音波放射面となる超音波伝達体および前記超音波振動子の中心部に、前記液体の流路を形成し、該流路を経て、前記超音波放射面の略中心部から前記液体を吐出するとともに、吐出手段は、ポンプ回転数を上昇するなどして、高圧洗浄モードでは、超音波洗浄モードよりも液体の流量を多くする。
【0007】
したがって、超音波洗浄モードでは歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れを除去(剥離)し、高圧洗浄モードでは、前記超音波洗浄モードで剥がし取られた汚れや、食物残渣等を流し飛ばし、1台であらゆる汚れに効果的な洗浄を行うことができる。
【0008】
また、前記高圧洗浄モードと超音波洗浄モードとを周期的に繰返したり、高圧洗浄モードと休止とを周期的に繰返すことで、歯茎などへのマッサージ効果を得ることもできる。
【0009】
なお、前記高圧洗浄モードでは、超音波振動子から超音波が放射されたままとなってもよいが、液体は超音波放射面の略中心部から勢い良く噴出し、超音波洗浄モード時のように該超音波放射面の全体に液体が行き渡らない可能性があり、また勢い良く噴出された液体に空気を含む可能性もあり、超音波を放射することによる洗浄効果はあまり期待できず、また超音波振動子が過熱する可能性もあるので、超音波の放射を行わないことが好ましい。
【0010】
また、本発明の超音波洗浄装置は、装置先端に取付けられる前記ノズルおよびそのノズル内に収容される前記超音波伝達体の超音波放射面は傾斜しており、前記流路は、前記超音波伝達体内で屈曲形成されることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、使用者が手に持った状態で口腔などを洗浄するにあたって、装置先端側のノズルおよびそのノズル内に収容される超音波放射面が傾斜していることで、使用者は腕を大きく上げたり、顔を大きく下げたりすることなく、良好な姿勢で洗浄を行うことができる。そして、流路も超音波伝達体内で屈曲形成されることで、液体に対して抵抗が生じることになるが、前述のように超音波放射面の略中心部から液体を吐出することができる。
【0012】
さらにまた、本発明の超音波洗浄装置では、前記吐出手段は、液体の流量を抑えて前記ノズルに液体を貯留する液溜めモード、超音波洗浄モード、および前記高圧洗浄モードを、この順で繰返すことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、前記超音波洗浄モードと前記高圧洗浄モードとを順次繰返して上記の洗浄効果を得るにあたって、ノズル内に液体が貯留されていない起動時や、高圧水流によってノズル内に空気が侵入した前記高圧洗浄モードを行うと、吐出手段からの液体の吐出量を洗浄状態よりも抑えてノズル内に液体をじわじわと充填してゆく液溜めモードを行った後に超音波洗浄モードへ移ることで、前記超音波洗浄モードにあたって、超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位を効率良く洗浄することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超音波洗浄装置は、以上のように、いわゆるノズルシャワー式の超音波洗浄装置において、一端部側に超音波振動子が取付けられ、他端部側の端面が前記超音波放射面となる超音波伝達体および前記超音波振動子の中心部に液体の流路を形成し、該流路を経て、前記超音波放射面の略中心部から前記液体を吐出するとともに、吐出手段は、ポンプ回転数を上昇するなどして、高圧洗浄モードでは、超音波洗浄モードよりも液体の流量を多くすることで、超音波による洗浄モードに加えて、高圧洗浄モードでの洗浄をさらに可能にする。
【0015】
それゆえ、超音波洗浄モードでは歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れを除去(剥離)し、高圧洗浄モードでは、前記超音波洗浄モードで剥がし取られた汚れや、食物残渣等を流し飛ばし、1台であらゆる汚れに効果的な洗浄を行うことができる。また、前記高圧洗浄モードと超音波洗浄モードとを周期的に繰返したり、高圧洗浄モードと休止とを周期的に繰返すことで、歯茎などへのマッサージ効果を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の第1の形態に係る超音波洗浄装置1の内部構成を示す断面図である。この超音波洗浄装置1は、大略的に、ハウジング2およびその先端に取付けられるノズル3と、前記ハウジング2内に配設される超音波振動子4と、前記ハウジング2およびノズル3内に配設されるとともに、一端部が前記超音波振動子4に接続された超音波伝達体(ホーン)5と、前記超音波振動子4を駆動する駆動回路6と、前記ノズル3に液体(洗浄剤を含む水または水)を供給する液体供給部7とを備えて構成されている。
【0017】
前記ハウジング2およびノズル3は、合成樹脂などの絶縁材料から成り、ハウジング2は基端側の筒部から、ノズル3側に向けて先細り状となる錐体形状(絞り形状)に形成されており、ノズル3はハウジング2の先端部から、たとえば45°傾斜して形成される。これによって、使用者が該超音波洗浄装置1を手に持った状態で口腔などを洗浄するにあたって、使用者は腕を大きく上げたり、顔を大きく下げたりすることなく、良好な姿勢で、口腔等の狭い部位の洗浄を行うことができるようになっている。ノズル3は、内部に液体を貯留する貯留空間11を備えるとともに、この貯留空間11に貯留された液体を外部に吐出(噴出)する吐出口12を備えている。
【0018】
図2は、前記ノズル3の形状を詳しく説明するための断面図である。ノズル3は、前記吐出口12側に向けてホーン状に形成され、注目すべきは、その先端には、端板13が設けられている。端板13は、ノズル3の先端を90°内方へ折返えして形成されており、前記ノズル3の外周部分を閉塞し、中心部分は前記吐出口12として開口している。前記超音波振動子4の外径をaとし、ノズル3の先端部分の内径をbとし、前記吐出口12の外径をcとするとき、a≦b、好ましくはa≒bであり、かつb:c≒10:12、好ましくはb:c=10:12、に選ばれる。
【0019】
すなわち、端板13は、ホーン状に拡がるノズル3の先端を閉塞するけれども、超音波振動子4の超音波放射面5a以上の面積の開口部を確保している。これによって、前記超音波放射面5aからの超音波の伝播路を確保しつつ、後述するようにノズル3から流出する液体の一部を堰き止め、該ノズル3内に液体を貯留することができるようになっている。たとえば、前記超音波振動子4の外径aは10mmであり、ノズル3の先端部分の内径bは12mmであり、前記吐出口12の外径cは10mmである。
【0020】
前記超音波振動子4は、チタン酸鉛などのセラミック材料や水晶などで構成された圧電振動子から成り、厚み振動を利用するものである。前記超音波伝達体5は、金属材料によって略円錐台状に形成され、前記超音波振動子4からの超音波振動を増幅して、前記超音波放射面5aから放射する。この超音波伝達体5の下底面5dには前記超音波振動子4が取付けられ、該下底面5d側で、振動の節(振幅が最小)となる部分5bがハウジング2から突出形成された支持体2cによって支持され、前記超音波放射面5aとなる上底面側が前記45°折り曲げられ、前記貯留空間11に臨んでいる。したがって、超音波放射面5aも、45°傾斜し、その傾斜方向に超音波が放射される。なお、この超音波伝達体5を構成する好適な金属材料として、チタンやアルミニウムなどの軽金属、またその軽合金を用いることができる。
【0021】
前記超音波伝達体5の先端は、前記ハウジング2の内周面に、弾性体から成る保持部材14によって気密に保持固定されている。前記保持部材14は、繰返しの伸縮に対して、所期の弾発性を維持し、硬化し難い材料が望ましく、ゴムから成るOリングなどで実現される。前記Oリングから成る保持部材14に対応して、超音波伝達体5において該保持部材14が締着される外周面に、凹溝を形成するようにしてもよい。同様に、ハウジング2側でも、内周面で該保持部材14が密着する部分に、凹溝を形成するようにしてもよい。それぞれの凹溝の深さは、たとえば1mm以下程度にすることが望ましい。もしくは、前記凹溝に代えて、超音波伝達体5の外周面またはハウジング2の内周面に、前記Oリングから成る保持部材14を挟み込む一対(2条)の凸条を用いてもよい。
【0022】
また、超音波振動においては、超音波伝達体5の超音波放射面5aの振動振幅が最も大きく、たとえば40kHzで20μm程度となる。そのため、好ましくは、超音波伝達体5の外径と、保持部材14の外径との差は、振動による伸縮量と、保持部材14の弾性となどに応じて決定すればよく、2mm以下程度にすることが望ましい。こうして、超音波を伝達させるための液体を、前記貯留空間11のみに貯留し、該液体が超音波伝達体5の超音波放射面5a以外の、側面や超音波振動子4部分へ浸水しないように、気密に封止することができるようになっている。
【0023】
前記駆動回路6は、回路基板に発振回路などを構成する電子部品が実装されて構成されたものである。なお、本実施形態では、この駆動回路6は、図略のバッテリで駆動するようにしたものであるが、商用電源で駆動するようにすることも可能である。この駆動回路6は、たとえば数十kHz、好ましくは20〜60kHz程度の振動振幅の大きな比較的低い超音波を前記超音波放射面5aから放射させ、口腔などの被洗浄部位の強固な汚れを除去(剥離)する。この駆動回路6の構成および動作については後に詳述する。
【0024】
前記液体供給部7は、液体を貯留するタンク21と、ポンプ22と、管路23とを備えて構成されている。前記管路23は、その一端がポンプ22に接続され、ハウジング2内を屈曲して引き回された後、本発明では、前記超音波振動子4に接続された超音波伝達体5の中心部を通り、他端が超音波伝達体5の超音波放射面5aの中心から前記貯留空間11に臨む。この管路23も、超音波伝達体5のノズル3内の部分が屈曲形成されており、液体に対して抵抗が生じることになるが、これによって上述のように超音波放射面5aの中心部から液体を吐出することができるようになっている。前記ポンプ22を駆動する吐出制御手段である駆動回路は、超音波振動子4を駆動する駆動回路6に併設されており、その動作についても後に詳述する。
【0025】
上述の説明では、該超音波洗浄装置1にタンク21を搭載しているけれども、大型のタンクを洗面台などに別途に載置して前記管路23の一端を接続するようにしてもよく、あるいは管路23の一端を水道の蛇口に直結してもよい。水道の蛇口に直結する場合、前記ポンプ22に代えて、水流の断続および水量を制御する弁が用いられることになる。
【0026】
このように構成される超音波洗浄装置1において、注目すべきは、吐出手段であるポンプ22およびその駆動回路6は、電源投入されると、図3で示すように、予め定める時間、たとえば1秒毎に、液溜めモード、超音波洗浄モード、および高圧洗浄モードを、この順で繰返すことである。
【0027】
前記液溜めモードは、ポンプ22から、超音波洗浄モードよりも低い、たとえば50cc/minの流量で液体を供給するとともに、前記端板13の作用によって、図4(a)で示すように、前記ノズル3の前記貯留空間11内に液体を貯留するモードである。前記超音波洗浄モードは、ポンプ22の回転数を上昇し、たとえば50〜150cc/minの流量で液体を供給し、図4(b)において、参照符号24で示すように、前記ノズル3から被洗浄部位26へ超音波25の伝播路を作成し、超音波振動によって発生したキャビテーション気泡が破壊するときに発生する衝撃波によって、歯垢や皮脂等の強固に付着している汚れ27を除去(剥離)するモードである。前記高圧洗浄モードは、図4(c)において、ポンプ22の回転数をさらに上昇し、参照符号28で示すように、前記超音波洗浄モードよりも高い流量で前記ノズル3から液体を噴出し、前記超音波洗浄モードで剥がし取られた汚れ27や、前記超音波洗浄モードでは除去しきれない食物残渣等の大きな汚れ29を流し飛ばすモードである。
【0028】
このようにノズル3の貯留空間11内に液体の溜まっていない起動時および高圧水流によって貯留空間11内に空気が侵入する可能性のある前記高圧洗浄モードの後に、液溜めモードを行うことで、液体はじわじわと前記貯留空間11内に充填されてゆく。これによって、超音波洗浄モードを行うにあたって、通常の洗浄状態と同様の激しい水流で起動した場合に生じるような気泡が発生することなく、貯留空間11内を気泡のない液体で一杯に充填(貯留)した後、超音波洗浄モードに移ることができる。したがって、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位26を効率良く洗浄することができる。また、一連のモードを繰返すことで、超音波だけでは不十分なあらゆる汚れに、1台で効果的な洗浄を行うことができる。
【0029】
ここで、端板13を設けることで、超音波の伝播を阻害することになるけれども、上述のような寸法割合で形成した場合、超音波の伝達率は10〜20%程度低下するのに対して、伝播路に気泡が発生した場合、60%以上低下してしまう。したがって、端板13を設けて液溜めを行い、気泡のない伝播路を形成する方が、極めて効果的である。
【0030】
また、前記起動時や高圧洗浄モードと同様に、貯留空間11内の液体が少なくなった状態から超音波洗浄モードに移る場合、たとえばマッサージ効果を狙って水流に強弱をつけて(高圧洗浄モードと休止とを周期的に繰返す等)、その水流が弱い状態から強い状態へ切換わる場合などでも、同様に貯留空間11内に液体を貯留するように、吐出量を抑えるようにしてもよい。上記各モードの時間や水量は一例であり、適宜定められればよい。
【0031】
また、前記高圧洗浄モードでは、超音波振動子4から超音波が放射されたままとなってもよいが、液体は超音波放射面5aの略中心部から勢い良く噴出し、超音波洗浄モード時のように該超音波放射面5aの全体に液体が行き渡らない可能性があり、また勢い良く噴出された液体に空気を含む可能性もある。したがって、超音波を放射することによる洗浄効果はあまり期待できず、また超音波振動子4が過熱する可能性もあるので、超音波の放射を行わないことが好ましい。
【0032】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の第2の形態に係る超音波洗浄装置31の内部構成を示す断面図である。この超音波洗浄装置31は、上述の超音波洗浄装置1に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、この超音波洗浄装置31では、ノズル33の先端には、前記端板13に代えて、網板34が設けられていることである。この網板34の中心部には開口35が形成されており、その開口35の内径は、図6(c)で示すように前記高圧洗浄モードで液体の径よりも大きく形成されている。網目の粗さは、超音波の伝播路を大きく塞ぐことなく、かつ液溜め効果が得られる1mm程度が好ましい。高圧洗浄モードを使用せず、超音波洗浄モードだけが行われる場合の網板は、前記開口35が形成されておらず、全面が網板となっていてもよい。
【0033】
図6は、上述のように構成される超音波洗浄装置31における各モードでの状態を説明するための図である。この超音波洗浄装置31でも、上述の超音波洗浄装置1と同様に、電源投入されると、予め定める時間毎に、図6(a)で示す液溜めモード、図6(b)で示す超音波洗浄モード、および図6(c)で示す高圧洗浄モードを、この順で繰返す。
【0034】
前記液溜めモードでは、ポンプ22から超音波洗浄モードよりも低い流量で液体が供給されるとともに、前記網板34の作用によって、前記ノズル33の貯留空間11内に、液体が貯留される。前記超音波洗浄モードでは、液体の流量が増加し、該液体はこの網板34を透過して被洗浄部位26へ到達する。前記高圧洗浄モードでは、液体の流量がさらに増加して前記管路23から勢いよく噴出し、該網板34の開口35を通過して被洗浄部位26へ到達する。
【0035】
このように網板34を用いることによっても、前記端板13と同様に、超音波の伝播効率は若干低下するけれども、液溜めを行い、超音波の伝播路から、該超音波の減衰原因となる気泡を排除し、前記被洗浄部位26を効率良く洗浄することができる。また、一連のモードを繰返すことで、超音波だけでは不十分なあらゆる汚れに、1台で効果的な洗浄を行うことができる。
【0036】
[実施の形態3]
図7は、本発明の実施の第3の形態に係る超音波洗浄装置における駆動回路の動作を説明するためのグラフである。本実施の形態では、駆動回路は超音波洗浄モードを行うにあたって、液溜めの良否を検知する機能を備えていることである。前記超音波振動子4は、駆動回路によって、一定電圧で、かつ前記の一定周波数で駆動されている。そして、超音波放射面5aが液体に浸漬されているか否かによって超音波の伝播速度(伝播路のインピーダンス)が異なり、前記超音波振動子4の駆動電流が変化する。本実施の形態の駆動回路は、この駆動電流の変化を検知し、超音波洗浄モードにおいて前記超音波放射面5aが空気中に露出すると、前記液溜めモードを再度行い、超音波洗浄モードに復帰する。
【0037】
具体的には、超音波放射面5aが液体に浸漬されている場合、駆動周波数と前記インピーダンスとの関係は図7(a)で示すようになり、空気中に露出すると図7(b)で示すようになる。詳しくは、超音波振動子4は一定電圧で駆動され、その駆動周波数は共振点frまたは反共振点fa付近に設定されている。その状態で、超音波放射面5aが空気中に露出すると、図7(a)から図7(b)で示すように、前記共振点fr付近で駆動している場合はインピーダンスが急激に低下し、したがって駆動電流が増加し、これに対して反共振点fa付近で駆動している場合はインピーダンスが急激に上昇し、したがって駆動電流が減少する。この電流変化を検知することで、駆動回路は液溜めの良否を検知することができ、液溜めの完了が検知されてから超音波洗浄モードに移ることができる。
【0038】
したがって、超音波洗浄中に使用者が該超音波洗浄装置を口から離して下に向けるなどして、前記貯留空間11から液体が流出してしまっても、再び液溜めモードを行い、効果的な超音波洗浄を行うことができる。
【0039】
また、液溜めモードの終了タイミング近くで超音波振動子4を振動させてみて、超音波放射面5aが液体に浸漬されていることを検知すると、モードに規定された時間が経過していなくても超音波洗浄モードに切換わったり、モードに規定された時間が経過しても超音波放射面5aが液体に浸漬されていない場合は超音波洗浄モードに切換わらなかったりしてもよい。これによって、タンク21の残量によるポンプ吐出圧の変化に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係る超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【図2】図1で示す超音波洗浄装置におけるノズル形状を詳しく説明するための断面図である。
【図3】本発明の超音波洗浄装置の動作モード説明するための図である。
【図4】図1で示す超音波洗浄装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の第2の形態に係る超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【図6】図5で示す超音波洗浄装置の動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の第3の形態に係る超音波洗浄装置における駆動回路の動作を説明するためのグラフである。
【図8】従来技術の超音波洗浄装置の内部構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1,31 超音波洗浄装置
2 ハウジング
3 ノズル
4 超音波振動子
5 超音波伝達体
5a 超音波放射面
6 駆動回路
7 液体供給部
11 貯留空間
12 吐出口
13 端板
14 保持部材
21 タンク
22 ポンプ
23 管路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出手段から、内部に超音波放射面を有するノズルに液体を供給し、該液体を前記ノズルに形成された吐出口から流出させて被洗浄部位と接触させることで超音波の伝播路を形成し、前記被洗浄部位を洗浄するようにした超音波洗浄装置において、
一端部側に超音波振動子が取付けられ、他端部側の端面が前記超音波放射面となる超音波伝達体および前記超音波振動子の中心部に、前記液体の流路が形成され、該流路を経て、前記超音波放射面の略中心部から前記液体を吐出するようにし、
前記吐出手段は、超音波洗浄時よりも多くの流量によって前記被洗浄部位を洗浄する高圧洗浄モードでの洗浄がさらに可能であることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
装置先端に取付けられる前記ノズルおよびそのノズル内に収容される前記超音波伝達体の超音波放射面は傾斜しており、前記流路は、前記超音波伝達体内で屈曲形成されることを特徴とする請求項1記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記吐出手段は、液体の流量を抑えて前記ノズルに液体を貯留する液溜めモード、超音波洗浄モード、および前記高圧洗浄モードを、この順で繰返すことを特徴とする請求項1または2記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−75775(P2006−75775A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264502(P2004−264502)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】