説明

超音波洗浄装置

【課題】高い周波数の超音波を用いて大型の被洗浄物を効率よく洗浄できる超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄槽12を三分割し、各ブロック12L、12C、12Rの間にシート状に形成された隔壁16L、16Rを挟んで一体化することにより、洗浄槽12の内部に隔壁16L、16Rで仕切られた超音波伝播液貯留空間20L、20Rと洗浄液貯留空間18を形成する。これにより、隔壁16L、16Rを薄くしても、十分に強度を確保できるようになり、洗浄槽の大型化に対応することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波洗浄装置に係り、特に液晶表示装置用のガラス基板やフォトマスク用のガラス基板、光ディスク用の基板、半導体ウエハなどの基板の洗浄に使用される超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や半導体の製造工程には、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板を高い清浄度で洗浄することが要求される工程がある。このような工程では、従来、薬品を用いた洗浄と超純水を用いたリンスを繰り返し行う方法が採用されていた。
【0003】
しかし、このような方法で基板を洗浄すると、薬品や超純水が大量に必要になるという問題があった。このため、近年は超音波を利用して基板を洗浄する方法が広く用いられている。この方法は、洗浄槽に貯留された洗浄液中に基板を浸漬させ、その洗浄槽の外壁面に設置された超音波振動子から洗浄液中に超音波を照射して基板を洗浄する。
【0004】
近年、この超音波洗浄では、キャビテーションによる基板へのダメージがないことや、サブミクロンの粒子除去に適しているなどの理由で500kHz以上の高い周波数の超音波が使用されつつある。
【0005】
ところで、この種の超音波洗浄装置では、一般に洗浄槽はステンレスで形成されるが、このようなステンレス製の洗浄槽は、使用する洗浄液によっては腐食してしまうという欠点がある。
【0006】
そこで、特許文献1では、洗浄槽を二重構造とすることが提案されている。この洗浄槽は、ステンレス製の外槽と石英ガラス製の内槽とで構成され、内槽に洗浄液、外槽に超音波伝播液を貯留するように構成されている。そして、外槽の外壁面に設置された超音波振動子から超音波伝播液に超音波を照射することにより、超音波伝播液を介して内槽に貯留された洗浄液に超音波を照射するように構成されている。
【特許文献1】特開平10−128255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、この種の超音波洗浄装置では、洗浄槽の板厚を板内での超音波の波長の1/2の整数倍とすることで、透過効率が最大になることが知られている。たとえば、周波数1MHzの超音波を照射する場合、上記のように外槽をステンレス、内槽を石英ガラスで形成した洗浄槽では、板厚を2〜3mmとすることで、透過効率は最大となる。
【0008】
しかしながら、このような板厚で洗浄槽を形成すると、洗浄槽の強度が低下し、洗浄槽が破損しやすくなるという欠点がある。特に、近年、基板の大型化により、洗浄槽も大型化しており、このような板厚で洗浄槽を形成すると、洗浄槽の強度が極端に低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高い周波数の超音波を用いて大型の被洗浄物を効率よく洗浄できる超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、洗浄槽と、平板状に形成されるとともに、前記洗浄槽の内部に縁部を挟持されて設置され、前記洗浄槽の内部を洗浄液貯留空間と、その洗浄液貯留空間の両サイドに配置される超音波伝播液貯留空間とに区分けする一対の隔壁部材と、前記洗浄液貯留空間に貯留され、被洗浄物が浸漬される洗浄液と、前記超音波伝播液貯留空間に貯留される超音波伝播液と、前記超音波伝播液に超音波を照射する超音波発生手段と、を備えたことを特徴とする超音波洗浄装置を提供する。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、洗浄槽は、平板状に形成された一対の隔壁部材によって、内部空間が洗浄液貯留空間と超音波伝播液貯留空間とに区分けされる。そして、洗浄液貯留空間に洗浄液が貯留され、超音波伝播液貯留空間に超音波伝播液が貯留される。超音波は、超音波発生手段によって超音波伝播液に照射され、この超音波伝播液を介して洗浄液に照射される。このように、本発明では、洗浄槽の内部を一対の隔壁部材で仕切ることにより、いわゆる外槽(超音波伝播液貯留空間)と内槽(洗浄液貯留空間)とからなる二重構造の洗浄槽が形成される。この際、洗浄槽の内部を仕切る隔壁部材が、縁部を挟持されて、洗浄槽の内部に設置される。これにより、隔壁部材を薄くしても、十分に強度を確保できるようになり、洗浄槽の大型化に対応することができるようになる。すなわち、従来の二重構造の洗浄槽は、内槽の側壁同士及び側壁と底板の溶着部において強度が低下するという問題があったが、本発明では、このような溶着部が存在しないことから、隔壁部材を薄くしても、十分に強度を確保することができる。これにより、高い周波数の超音波を用いることができ、また、洗浄槽の大型化にも対応することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記隔壁部材の厚さが、前記超音波発生手段から発生させる超音波の1波長以下であることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置を提供する。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、隔壁部材が、超音波発生手段から発生させる超音波の1波長以下の板厚で形成される。これにより、効率よく被洗浄物を洗浄することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、前記洗浄液と前記超音波伝播液の水頭圧が等しくなるように両液の液深を調整する調整手段を備えたこと特徴とする請求項1又は2に記載の超音波洗浄装置を提供する。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、洗浄液貯留空間に貯留される洗浄液と超音波伝播液貯留空間に貯留される超音波伝播液の水頭圧が等しくなるように両液の液深が調整手段によって調整される。これにより、両液の水頭差によって生じる隔壁部材への負荷を防止することができ、隔壁部材の破損を効果的に防止することができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記超音波発生手段が前記超音波伝播液内に設置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の超音波洗浄装置を提供する。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、超音波発生手段が超音波伝播液内に設置される。これにより、洗浄槽の板圧を厚くすることができ、洗浄槽を大型化した場合であっても十分に強度を確保することができる。また、超音波発生手段から発生する微細な粒子状汚染物を超音波伝播液内に留めることができ、極めて清浄度の高い洗浄を行うことができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、前記超音波発生手段を前記超音波伝播液内で昇降させる昇降手段と、前記超音波発生手段から発生させた超音波を前記被洗浄物の表面近傍において一点又はライン状に集束させる超音波集束手段と、を備えたことを特徴とする請求項4に記載の超音波洗浄装置を提供する。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、超音波が一点又はライン状に集束されて照射されるとともに、その超音波を照射する超音波発生手段が超音波伝播液内で昇降駆動される。これにより、効率よく被洗浄物を洗浄することができる。また、昇降手段から発生する微細な粒子状汚染物を超音波伝播液内に留めることができ、極めて清浄度の高い洗浄を行うことができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、前記目的を達成するために、前記隔壁部材が洗浄液への耐食性を有する材質で構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の超音波洗浄装置を提供する。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、隔壁部材が洗浄液への耐食性を有する材質で構成される。これにより、隔壁部材の腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い周波数の超音波を用いて大型の被洗浄物を効率よく洗浄できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波洗浄装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0024】
図1は、本発明に係る超音波洗浄装置の第1の実施の形態の外観構成を示す斜視図である。また、図2は、その分解斜視図、図3は、その縦断面図である。
【0025】
この超音波洗浄装置10は、たとえば、液晶表示装置用の大型ガラス基板の洗浄装置として構成され、主として、洗浄槽12と超音波振動子14L、14Rとで構成されている。
【0026】
洗浄槽12は、上部が開口した矩形の箱状に形成されており、その内部を一対の隔壁16L、16Rによって、縦に三分割されている。
【0027】
一対の隔壁16L、16Rは、平板状に形成されており、洗浄槽12の内部を左右対称に三分割するように取り付けられている。その取り付け構造は、次のとおりである。
【0028】
図2に示すように、洗浄槽12は、左右対称になるように二カ所で縦に分断されており、三つのブロックに分割できるように形成されている。すなわち、左サイドブロック12Lと、センターブロック12Cと、右サイドブロック12Rに分割できるように形成されている。そして、この三つのブロック12L、12C、12Rを互いに接合して一体化することにより、全体として一つの洗浄槽12が構成されている。
【0029】
各ブロック12L、12C、12Rの接合部には、それぞれフランジ18L、18CL、18CR、18Rが形成されており、互いのフランジ同士をボルト等で結合することにより、ブロック同士が一体化され、全体として一つの洗浄槽12が形成される。すなわち、左サイドブロック12Lに形成されたフランジ18Lをセンターブロック12Cの左サイドに形成されたフランジ18CLに接合することにより、左サイドブロック12Lとセンターブロック12Cとが一体化され、右サイドブロック12Rに形成されたフランジ18Rをセンターブロック12Cの右サイドに形成されたフランジ18CRに接合することにより、右サイドブロック12Rとセンターブロック18Cとが一体化されて、全体として一つの洗浄槽12が形成される。
【0030】
一対の隔壁16L、16Rは、各ブロックのフランジに挟まれて洗浄槽12に取り付けられている。すなわち、左側の隔壁16Lは、左サイドブロック12Lに形成されたフランジ18Lとセンターブロック12Cの左側面に形成されたフランジ18CLと挟まれて洗浄槽12に取り付けられており、右側の隔壁16Rは、右サイドブロック12Rに形成されたフランジ18Rとセンターブロック12Cの右側面に形成されたフランジ18CRとに挟まれて洗浄槽12に取り付けられている。このため、一対の隔壁16L、16Rは、それぞれ各フランジで挟持できるように、フランジの外周形状とほぼ同じ大きさに形成されている。
【0031】
以上のようにして、洗浄槽12の内部に一対の隔壁16L、16Rが取り付けられる。そして、この一対の隔壁16L、16Rが取り付けられることにより、洗浄槽12は、その内部が縦に三分割され、中央に洗浄液貯留空間18が形成されるとともに、その左右両サイドに一対の超音波伝播液貯留空間20L、20Rが左右対称に形成される。
【0032】
この洗浄液貯留空間18と超音波伝播液貯留空間20L、20Rは、共に同じ深さをもって形成され、中央の洗浄液貯留空間18には洗浄液24、左右両サイドの超音波伝播液貯留空間20L、20Rには超音波伝播液26L、26Rが貯留される。この洗浄液貯留空間18に貯留される洗浄液24と超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留される超音波伝播液26L、26Rは、両液の間に水頭差が生じないように、同じ液深をもって貯留される。これにより、隔壁16L、16Rに負荷がかかるのを防止することができる。
【0033】
なお、本実施の形態の超音波洗浄装置10では、洗浄液24として、超純水が用いられ、超音波伝播液26L、26Rとして、純水が用いられる。
【0034】
このため、隔壁を含む洗浄槽の材質は、これらの液体に浸食されない材質であることが必要となる。したがって、センターブロック12Cと隔壁16L、16Rは、洗浄液としての純水に浸食されない材質であることが必要とされ、左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rは、共に超音波伝播液としての純水に浸食されない材質であることが必要とされる。
【0035】
本実施の形態の超音波洗浄装置10では、センターブロック12Cと隔壁16L、16Rを樹脂で形成する一方、左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rをステンレスで形成している。その他、洗浄液の例としては、フッ酸(0.1〜1%)、硫酸(50〜99%)、アンモニア水溶液(1〜10%)、塩酸水溶液(1〜10%)、硝酸(1〜10%)、苛性ソーダ(1〜10%)があるため、それらの液に対する耐蝕性材質を選定する。
【0036】
一対の超音波振動子14L、14Rは、その超音波の照射面が、隔壁16L、16Rと平行になるようにして、洗浄槽12の左右の両外壁面に取り付けられており、互いに対向するように配置されている。洗浄槽12を構成する左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rの外壁面には、それぞれ超音波振動子14L、14Rを取り付けるための凹部15L、15Rが形成されている。
【0037】
洗浄槽12には、この一対の超音波振動子14L、14Rから左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rの外壁面に所定周波数の超音波振動が与えられる。左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rの外壁面に与えられた超音波振動は、超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留された超音波伝播液26L、26Rを介して洗浄液貯留空間18に貯留された洗浄液24に伝播され、その洗浄液中に浸漬された被洗浄物(本実施の形態では基板)28を洗浄する。
【0038】
この超音波振動子14L、14Rから発生させた超音波を超音波伝播液26L、26Rから洗浄液24に効率よく伝播させるためには、隔壁16L、16Rの板厚を超音波発振子14L、14Rから発生させる超音波の1波長以下とすることが好ましい。
【0039】
ここで、本実施の形態の超音波洗浄装置10では、超音波振動子14L、14Rから発生させる超音波として、周波数1MHzの高い周波数の超音波を発生させるものとし、隔壁16L、16Rには、ポリスチレン製のシートを用いるものとすると、隔壁16L、16Rの厚さ(板厚)は、ポリスチレンの音速2350m/sから1波長以下の1.5mmに設定される。
【0040】
このように、隔壁16L、16Rの板厚を超音波発振子14L、14Rから発生させる超音波の1波長以下とすることにより、照射された超音波を超音波伝播液26L、26Rから洗浄液24に効率よく伝播させることができ、効率よく被洗浄物28を洗浄することができる。
【0041】
なお、洗浄槽12に形成された凹部15L、15Rも板厚を超音波発振子14L、14Rから発生させる超音波の1波長以下とすることが好ましい。これにより、超音波振動子14L、14Rから発生させた超音波を効率よく超音波伝播液中に透過させることができる。
【0042】
以上のように構成された第1の実施の形態の超音波洗浄装置の作用は次のとおりである。
【0043】
図3に示すように、中央の洗浄液貯留空間18に洗浄液24としての超純水を貯留するとともに、左右の超音波伝播液貯留空間20L、20Rに超音波伝播液26L、26Rとしての純水を貯留する。この際、水頭差が生じないように、洗浄液24と超音波伝播液26L、26Rの液深が同じになるように貯留する。
【0044】
この洗浄液24と超音波伝播液26L、26Rとが貯留された洗浄槽12に対して被洗浄物28としての基板を縦に挿入し、洗浄液貯留空間18に貯留された洗浄液24の中に浸漬させる。
【0045】
なお、被洗浄物28を洗浄液中に浸漬させる手段については、公知の搬送手段等を用いて行うものとする。また、洗浄液貯留空間18に被洗浄物28を縦に保持する手段を設けておいてもよい。
【0046】
このように洗浄液24に被洗浄物28を浸漬させた状態で左右の超音波振動子14L、14Rを駆動し、所定周波数(本実施の形態では1MHz)の超音波を発生させる。超音波振動子14L、14Rから出射された超音波は、左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rの外壁面を透過して、超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留された超音波伝播液26L、26Rに伝播される。そして、その超音波伝播液26L、26Rから隔壁16L、16Rを透過して洗浄液貯留空間18に貯留された洗浄液24に伝播され、被洗浄物28に照射される。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態の超音波洗浄装置10では、洗浄槽12の内部を一対の隔壁16L、16Rで仕切ることにより、いわゆる外槽(超音波伝播液貯留空間20L、20R)と内槽(洗浄液貯留空間18)とからなる二重構造の洗浄槽12が形成される。この際、洗浄槽12の内部を仕切る隔壁16L、16Rが、縦に三分割された洗浄槽12の各ブロックに挟持されて洗浄槽12に取り付けられる。これにより、隔壁16L、16Rを薄くしても、十分に強度を確保できるようになる。この結果、高い周波数の超音波を用いることができ、効率よく被洗浄物28を洗浄することができる。また、隔壁16L、16Rを薄くしても、洗浄液24と超音波伝播液26L、26Rの圧力がバランスして、隔壁16L、16Rに加わる力が小さいため、十分に強度を確保できるので、洗浄槽12の大型化にも対応することができ、大型の基板も洗浄できるようになる。
【0048】
なお、本実施の形態では、隔壁をポリスチレンで形成しているが、隔壁の材質はこれに限定されるものではなく、使用する洗浄液に侵されない材質のものであればよい。
【0049】
また、本実施の形態では、1MHzの超音波を照射するようにしているが、使用する超音波の周波数は、これに限定されるものではない。
【0050】
また、本実施の形態では、水頭差がないように、洗浄液24と超音波伝播液26L、26Rを同じ液深で貯留しているが、洗浄液中に被洗浄物を浸漬させると、洗浄液24の水位が変動するので、液深の調整手段を設けて、常に両液の液深が同じになるように制御することが好ましい。たとえば、洗浄液貯留空間18に貯留される洗浄液24と、超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留される超音波伝播液26L、26Rの液深(水位)を検出する手段を設けるとともに、洗浄液貯留空間18に貯留される洗浄液24と、超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留される超音波伝播液26L、26Rを給排水する手段を設け、常に両液の液深(水位)が同じになるように、洗浄液24と超音波伝播液26L、26Rの給排水を制御するようにしてもよい。これにより、薄く形成された隔壁16L、16Rの変形、破損を防止することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、洗浄液に超純水、超音波伝播液に純水を用いているが、使用する洗浄液、超音波伝播液は、これに限定されるものではない。なお、超音波伝播液については、洗浄液と科学反応性の弱い液体を用いることが好ましい。
【0052】
図4は、本発明に係る超音波洗浄装置の第2の実施の形態の縦断面図である。
【0053】
同図に示すように、本実施の形態の超音波洗浄装置10Aは、超音波振動子14L、14Rが超音波伝播液貯留空間20L、20R内に設置されている点で上記第1の実施の形態の超音波洗浄装置10と相違している。
【0054】
一対の超音波振動子14L、14Rは、その超音波の照射面が、隔壁16L、16Rと平行になるようにして、互いに対向するように配置されており、それぞれ洗浄槽12を構成する左サイドブロック12Lと右サイドブロック12Rの内壁面に水密構造の状態で取り付けられている。
【0055】
この一対の超音波振動子14L、14Rから照射された超音波は、超音波伝播液貯留空間20L、20Rに貯留された超音波伝播液26L、26R中を伝播され、隔壁16L、16Rを透過して洗浄液貯留空間18に貯留された洗浄液24に伝播される。
【0056】
このように超音波振動子14L、14Rを超音波伝播液貯留空間20L、20R内に設置することにより、洗浄槽12の板厚を超音波の透過効率に適した厚さにしなくても、効率よく被洗浄物に超音波を照射することができるようになる。この結果、洗浄槽12の板厚を厚くすることができ、洗浄槽12を大型化した場合であっても、十分な強度を確保できるようになる。たとえば、2mを越すような大型のガラス基板を洗浄する槽であっても十分な強度を持たせることができる。
【0057】
また、超音波振動子14L、14Rから発生する微細な粒子状汚染物を超音波伝播液内に留めることができ、極めて清浄度の高い洗浄を行うことができる。
【0058】
図5は、本発明に係る超音波洗浄装置の第3の実施の形態の縦断面図である。
【0059】
同図に示すように、本実施の形態の超音波洗浄装置10Bは、いわゆる集束超音波を照射する点で上記第1の実施の形態の超音波洗浄装置10と相違している。超音波の発生手段以外の構成は、上記第1の実施の形態の超音波洗浄装置10と同じなので、ここでは、この超音波の発生手段の構成についてのみ説明する。
【0060】
図5に示すように、超音波の発生手段は、超音波発生ユニット30L、30Rとして、超音波伝播液貯留空間20L、20R内に水密状態で設置されている。
【0061】
この超音波発生ユニット30L、30Rは、図6に示すように、主として、超音波振動子32L、32Rと、音響レンズ34L、34Rと、昇降装置36L、36Rとで構成されている。
【0062】
超音波振動子32L、32Rは、所定幅(少なくとも被洗浄物28の横幅以上)の板状に形成されており、その超音波照射面が隔壁16L、16Rと平行になるようにして、超音波伝播液貯留空間20L、20R内に配置されている。
【0063】
音響レンズ34L、34Rは、円弧面を有する樋状に形成されており、超音波振動子32L、32Rの超音波照射面に取り付けられている。この音響レンズ34L、34Rは、超音波振動子32L、32Rから出射された超音波を被洗浄物28の表面近傍でライン状に集束させる。
【0064】
昇降装置36L、36Rは、超音波伝播液貯留空間20L、20R内において、超音波振動子32L、32Rを垂直に昇降移動させる。この昇降装置36は、超音波振動子32L、32Rが取り付けられる昇降板38L、38Rと、その昇降板38L、38Rが垂直に昇降するようにガイドするガイドロッド40L、40Rと、その昇降板38L、38Rを昇降させる送りネジ42L、42Rと、送りネジ42L、42Rを駆動するモータ44L、44Rとで構成されている。
【0065】
ガイドロッド40L、40Rは、両端部をブラケット46L、46Rに支持されて、超音波伝播液貯留空間20L、20R内に垂直に立設されている。昇降板38L、38Rは、その両端部に形成されたガイド孔48L、48Rにガイドロッド40L、40Rが通されて、超音波伝播液貯留空間20L、20R内を垂直に昇降移動するようにガイドされる。
【0066】
送りネジ42L、42Rは、両端部を図示しないブラケットに回動自在に支持されて、超音波伝播液貯留空間20L、20R内に垂直に立設されている。この送りネジ42L、42Rは、昇降板38L、38Rに形成されたナット部49L、49Rに螺合されている。
【0067】
モータ44L、44Rは、図示しないブラケットに支持されて超音波伝播液貯留空間20L、20Rの上部の超音波伝播液外に設置されており、送りネジ42L、42Rの一端に連結されている。
【0068】
以上のように構成された超音波発生ユニット30L、30Rは、モータ44L、44Rを駆動すると、送りネジ42L、42Rが回転し、その回転に応じて昇降板38L、38Rが垂直に昇降移動する。そして、この昇降板38L、38Rが垂直に昇降移動することにより、超音波振動子32L、32Rが、超音波伝播液貯留空間20L、20R内を垂直に昇降移動する。
【0069】
以上のよう構成された本実施の形態の超音波洗浄装置10Bの作用は次のとおりである。
【0070】
まず、洗浄槽12に対して被洗浄物(基板)28を縦に挿入し、洗浄液貯留空間18に貯留された洗浄液24の中に基板28を浸漬させる。
【0071】
この状態で左右の超音波振動子32L、32Rを駆動し、所定周波数(本実施の形態では1MHz)の超音波を発生させる。超音波振動子14L、14Rから出射された超音波は、超音波伝播液26L、26Rを介して洗浄液24に伝播され、被洗浄物28に照射される。この際、超音波振動子14L、14Rから出射された超音波は、音響レンズ34L、34Rの作用によって、被洗浄物28の表面近傍でライン状に集束される。
【0072】
この後、モータ44L、44Rを駆動し、超音波振動子32L、32Rを垂直に昇降移動させる。
【0073】
これにより、被洗浄物28は、その表面を上下に走査されるようにして、集束超音波が照射されて、洗浄される。
【0074】
このように本実施の形態の超音波洗浄装置10Bでは、集束超音波を被洗浄物28に照射して洗浄する。これにより、更に効率よく被洗浄物28を洗浄することができる。
【0075】
この際、本実施の形態の超音波洗浄装置10Bのように、超音波発生ユニット30L、30Rを超音波伝播液貯留空間20L、20R内に設置することにより、超音波発生ユニット30L、30Rから発生する微細な粒子状汚染物を超音波伝播液20L、20R内に留めることができ、極めて清浄度の高い洗浄を行うことができる。
【0076】
なお、本実施の形態では、超音波振動子32L、32Rから出射させた超音波を音響レンズ34L、34Rによってライン状に集束させる構成としているが、スポット状に集束させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1の実施の形態の超音波洗浄装置の外観構成を示す斜視図
【図2】第1の実施の形態の超音波洗浄装置の分解斜視図
【図3】第1の実施の形態の超音波洗浄装置の縦断面図
【図4】第2の実施の形態の超音波洗浄装置の縦断面図
【図5】第3の実施の形態の超音波洗浄装置の縦断面図
【図6】超音波発生ユニット(左)の概略構成を示す斜視図
【符号の説明】
【0078】
10、10A、10B…超音波洗浄装置、12…洗浄槽、12L…左サイドブロック、12C…センターブロック、12R…右サイドブロック、14L、14R…超音波振動子、16L、16R…隔壁、18L、18CL、18CR、18R…フランジ、18…洗浄液貯留空間、20L、20R…超音波伝播液貯留空間、24…洗浄液(超純水)、26L、26R…超音波伝播液(純水)、28…被洗浄物(基板)、30L、30R…超音波発生ユニット、32L、32R…超音波振動子、34L、34R…音響レンズ、36L、36R…昇降装置、38L、38R…昇降板、40L、40R…ガイドロッド、42L、42R…送りネジ、44L、44R…モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽と、
平板状に形成されるとともに、前記洗浄槽の内部に縁部を挟持されて設置され、前記洗浄槽の内部を洗浄液貯留空間と、その洗浄液貯留空間の両サイドに配置される超音波伝播液貯留空間とに区分けする一対の隔壁部材と、
前記洗浄液貯留空間に貯留され、被洗浄物が浸漬される洗浄液と、
前記超音波伝播液貯留空間に貯留される超音波伝播液と、
前記超音波伝播液に超音波を照射する超音波発生手段と、
を備えたことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記隔壁部材の厚さが、前記超音波発生手段から発生させる超音波の1波長以下であることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液と前記超音波伝播液の水頭圧が等しくなるように両液の液深を調整する調整手段を備えたこと特徴とする請求項1又は2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記超音波発生手段が前記超音波伝播液内に設置されることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
前記超音波発生手段を前記超音波伝播液内で昇降させる昇降手段と、
前記超音波発生手段から発生させた超音波を前記被洗浄物の表面近傍において一点又はライン状に集束させる超音波集束手段と、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の超音波洗浄装置。
【請求項6】
前記隔壁部材が洗浄液への耐食性を有する材質で構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−246313(P2008−246313A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−88662(P2007−88662)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】