説明

超音波洗浄装置

【課題】被洗浄物の洗浄および殺菌に適した超音波洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄水90を収容し、底壁部13の外面13bに超音波振動子14が取り付けられる洗浄槽10と、被洗浄物30を底壁部13から離れた状態で支持する多孔状の支持部材23と、底壁部13と支持部材23との間に配置された少なくとも1つの散気管50とを有する超音波洗浄装置1である。少なくとも1つの散気管50は、洗浄水90にオゾン81を含む空気80を吐出し、底壁部13に対向するように配置される吐出孔51を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、農作物に付着した残留農薬を一般家庭や飲食店などにおいて、容易かつ確実に除去することができるようにした超音波洗浄流し台を提供することが記載されている。そのため、特許文献1には、底面に排水口が形成された一または二以上の貯水槽と、該貯水槽内に貯留された洗浄水を振動させる超音波発生手段と、前記貯水槽内に貯留された洗浄水に浸漬される蓋付きの容器とが備えられ、残留農薬が付着した農作物は、容器内に入れられ、貯水槽内に貯留された洗浄水に浸漬され、超音波発生手段が作動することによって洗浄されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−212073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被洗浄物(洗浄物、洗浄対象物)を効率よく洗浄することが要望されている。さらに、野菜や果物などの食材においては、被洗浄物に付着した汚れや農薬を効率よく洗浄できるとともに、殺菌効果が得られることも要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の1つは、洗浄水を収容し、底壁部の外面に超音波振動子が取り付けられる洗浄槽と、被洗浄物を底壁部から離れた状態で支持する多孔状の支持部材と、底壁部と多孔状の支持部材との間に配置される散気管とを有する超音波洗浄装置である。散気管は、洗浄水にオゾンを含む空気を吐出し、底壁部に対向するように配置される吐出孔を含む。多孔状の支持部材は、被洗浄物を収容し洗浄槽の内部に配置される洗浄かごの網状の底部であってもよく、洗浄槽の底壁部を嵩上げするように設けられる多孔状のプレートなどであってもよい。
【0006】
この超音波洗浄装置においては、底壁部と支持部材との間に配置された散気管の吐出孔からオゾンを含む空気が底壁部に向けて吐出される。したがって、底壁部と支持部材との間で、オゾンを含む空気は、被洗浄物に接触する前に底壁部に沿って広がり易い。さらに、底壁部と支持部材との間で、オゾンを含む空気は、被洗浄物に接触する前に、超音波振動に晒される。このため、この超音波洗浄装置においては、超音波と、空気と、オゾンとを被洗浄物に作用させて被洗浄物を洗浄するとともに、底壁部と支持部材との間で、オゾンを含む空気に超音波を作用させながら、オゾンを含む空気を底壁部に沿って洗浄槽全体に広げ、超音波を作用させられたオゾンを含む空気を含む洗浄水で被洗浄物をより効率的に洗浄できる。
【0007】
オゾンを含む空気を底壁部に沿って分散させるためには、吐出孔と底壁部との距離が吐出孔と支持部材との距離よりも短いことが好ましい。さらに、オゾンを含む空気を底壁部に沿って分散させるためには、少なくとも1つの散気管は、底壁部に沿って延びており、複数の吐出孔を含むことが望ましい。散気管は直管であっても曲管であってもよく、2本以上であってもよい。オゾンを含む空気を底壁部に沿って分散させる手段の1つは、吐出孔の径を小さくして多数の吐出孔を設けることである。吐出孔の径を小さくすると、被洗浄物などからの汚れなどにより目詰まりしやすいが、この超音波洗浄装置においては吐出孔が底壁部の方向、すなわち下向きであり、目詰まりしにくい。したがって、散気管に比較的径の小さな吐出孔を多数設けることができる。また、散気管が底壁部の最も近くで超音波に晒され、常に超音波洗浄されている状態なので、吐出孔は目詰まりしにくい。
【0008】
超音波洗浄装置は、さらに、オゾンを発生させるオゾン発生装置と、オゾン発生装置と少なくとも1つの散気管とを接続し、少なくとも1つの散気管に空気を供給する供給管とを有し、供給管は、洗浄槽のオーバーフローレベルよりも高い位置に配置された部分を含むことが望ましい。供給管が洗浄槽のオーバーフローレベル、たとえば、上部開口よりも高い位置を経由しているため、洗浄水が散気管から供給管を介してオゾン発生装置に逆流し、損傷を与えることを抑制できる。オゾンを含む空気は腐食性が強いが、逆止弁などの手段を用いずに逆流を抑制できる。供給管が洗浄槽の上部開口よりも高い位置を経由している場合は、その部分を洗浄槽の上部開口を覆う蓋と連結し、洗浄槽の内部で発生する気体を排出するダクトにより覆うことができる。
【0009】
超音波洗浄装置は、さらに、洗浄槽の上部開口を覆う蓋と、蓋を介して洗浄槽の内部と連通したダクトと、ダクトを介して洗浄槽の内部から排気する排気ポンプとを有することが望ましい。洗浄槽の上部開口を蓋により覆い、ダクトおよび排気ポンプにより洗浄槽から排気することにより、オゾンを含む空気が漏れ出るのを抑制でき、オゾン特有の臭い(オゾン臭)が拡散するのを抑制できる。
【0010】
さらに、洗浄槽のオーバーフローレベルまたはそれよりも上になる上部開口を覆う蓋を介して洗浄槽内を排気することにより、洗浄水がダクトを介して排気ポンプに浸入し、損傷を与えることを抑制できる。また、上部開口をオーバーフローレベルとしてオーバーフロー管を省略することにより、オーバーフロー管を介してオゾンを含む空気が漏れ出るのを防止できる。
【0011】
超音波洗浄装置は、さらに、ダクトと排気ポンプとの間に活性炭フィルターを配置することが望ましい。洗浄槽の排気を活性炭フィルターを介して排出できるため、オゾン臭を含む臭気を活性炭により吸着でき、臭気が外部に拡散するのを抑制しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】超音波洗浄装置の外観を示す正面図。
【図2】超音波洗浄装置の外観を示す平面図。
【図3】超音波洗浄装置の外観を示す右側面図。
【図4】超音波洗浄装置の内部構造を模式的に示す正面図。
【図5】超音波洗浄装置の内部構造を模式的に示す平面図。
【図6】超音波洗浄装置の内部構造を模式的に示す右側面図。
【図7】洗浄かごを取り付けた状態の洗浄槽の様子を模式的に示す正面図。
【図8】洗浄かごを取り付けた状態の洗浄槽の様子を模式的に示す右側面図。
【図9】図7の点線部分を拡大して示す図。
【図10】図8の点線部分を拡大して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、洗浄装置を正面方向から見た様子を示している。図2に、この洗浄装置を上方向から見た様子を示している。図3に、この洗浄装置を右方向から見た様子を示している。
【0014】
この洗浄装置1は、全体として箱型の外形を有する超音波洗浄装置である。超音波洗浄装置1は、装置1の全体を覆う金属製(たとえば、ステンレススチール製)のハウジング100と、ハウジング100の内部に収納された洗浄槽10(図4参照)と、洗浄槽10の上部開口を覆う蓋60と、蓋60の側面に嵌め込まれた箱型のダクト61とを有する。蓋60およびダクト61は、ハウジング100の上部の天板101の上面101aの上部に設けられている。天板101の上面101aにダクト61と蓋60とが突出した状態になるが、これらはほとんど段差がない状態で繋がれている。このため、洗浄装置1の全体としてすっきりとした外観を構成できる。さらに、洗浄装置1は、ハウジング100の前方を開閉可能な金属製(たとえば、ステンレススチール製)の扉102と、扉102に設けられた操作パネル103とを有する。
【0015】
図4ないし図6に、超音波洗浄装置1の内部構造を模式的に示している。図4は、洗浄装置1を全体として透かして見た状態で示しており、図5は、超音波洗浄装置1の蓋を透かして洗浄槽10の内部の配置を見た状態を示している。図6は、超音波洗浄装置1に洗浄かごと被洗浄物とをセットする様子を示している。
【0016】
この超音波洗浄装置1は、ハウジング100に収納された洗浄槽10と、洗浄槽10の内部に出し入れ可能な洗浄かご20と、洗浄槽10の内部であって洗浄かご20の下方に配置された散気管50(50a、50b)とを備えている。洗浄槽10は、ハウジング100の天板101の上面101aが上部開口11となった金属製(たとえば、ステンレススチール製)の箱状体であり、側壁部12と、底壁部13とを含む。上部開口11は、天板101の上面101aに設けられた蓋60により開閉可能になっている。洗浄槽10の底壁部13には、洗浄槽10に収容された洗浄水90を外部に排水するための排水管(不図示)に繋がる排水口19が設けられている。
【0017】
超音波洗浄装置1は、洗浄槽10の底壁部13の外面(下面、裏面)13bに取り付けられた超音波振動子40を有する。この超音波洗浄装置1は、超音波振動子40としてランジバン振動子を採用している。洗浄槽10の底壁部13の外面13bには16個のランジバン振動子40が、底壁部13の長手方向に4個ずつ短手方向に位置をずらして、いわゆる千鳥状に配置されている。超音波洗浄装置1は、さらに、ランジバン振動子40に駆動用の電力を供給する駆動装置41を有し、駆動装置41はハウジング100の内部に収納されている。操作パネル103により駆動装置41を操作し、底壁部13をランジバン振動子40により超音波振動させることができる。駆動装置41は、16個のランジバン振動子40を個別に駆動させる機能、超音波振動の周波数を切り替える機能、ランジバン振動子40の出力を多段階で調整する機能などを備えている。
【0018】
なお、超音波振動子は、ランジバン振動子に限らず、PZTなど他の振動子ユニットを採用することも可能である。ランジバン振動子は、高出力のものが低コストで得やすいので、好適な振動子の一例である。本例の超音波洗浄装置1においては、16個のランジバン振動子40を配置しているが、振動子の個数は16個に限らず、17個以上あるいは15個以下の振動子を千鳥状を含むさまざまな配置で取り付けることも可能である。
【0019】
洗浄槽10の内部に出し入れ可能な洗浄かご20は、上部が開口21となった金属製(たとえば、ステンレススチール製)で多孔性の箱型のかご(バスケット)であって、上部に設けられた取っ手20aと、網状に形成された側部22および底部23と、側部22の下部から下方に延びた脚部24とを含む。被洗浄物30が収納された状態で洗浄かご20が洗浄槽10の内部に配置(収納)されると、被洗浄物30は側部22および底部23により洗浄槽10の内部で洗浄槽10の底壁部13に対して若干離れた状態で支持される。すなわち、この洗浄装置1においては、洗浄かご20の底部23が被洗浄物30を底壁部13から離れた状態で支持する多孔状の支持部材としての機能を果たす。
【0020】
脚部24は、フッ素樹脂製のカバーにより覆われており、洗浄かご20を洗浄槽10にセットしたときに、金属同士が接触しないようにしている。脚部24を樹脂製にしてもよい。金属同士の接触を避けることにより超音波振動による騒音の発生を抑制できる。また、オゾン81を含む空気は腐食性があるので金属疲労が発生しやすい条件を避けることが望ましい。洗浄かご20は、全体が樹脂製(たとえば、プラスチック製)であってもよい。
【0021】
図7および図8に洗浄槽10を抜き出し、内部の構造を含めて拡大して示している。超音波洗浄装置1は、洗浄槽10の側壁部12を貫通するように取り付けられ、底壁部13に沿って長手方向に伸びた2本の直管状の散気管50aおよび50bを含む。これらの散気管50aおよび50bは樹脂製(たとえば、プラスチック製)またはステンレススチール製であり、これらの散気管50aおよび50bの底壁部13に面した部分に一列に配置された複数の吐出孔51を含む。これらの吐出孔51からはオゾン81を含む空気(気泡)80が洗浄槽10の底壁部13に向かって吐出される。
【0022】
図4に示すように、超音波洗浄装置1は、さらに、オゾンを発生させるオゾン発生装置(オゾナイザー)54と、オゾン発生装置54に酸素を供給するPSA(吸着)式の酸素濃縮器55と、オゾン発生装置54により生成されたオゾン81と混合させる空気82を供給するエアーポンプ56と、オゾン発生装置54から供給されるオゾン81とエアーポンプ56から供給される空気82とを混合する混合管53と、混合管53から散気管50aにオゾン81を含む空気80を供給する供給管52aと、混合管53から散気管50bに空気80を供給する供給管52bとを含む。これらはハウジング100の内部に収納されている。
【0023】
混合管53から分岐した供給管52aおよび52bは、天板101の上面101aの上部に若干突き出るように配置された逆U字型の継ぎ手部分59aおよび59bをそれぞれ含む。したがって、供給管52aおよび52bは、混合管53から、いったん、洗浄槽10の上部開口11よりも高い位置まで上がり、底壁部13と網状の底部23との間の高さまで下がり、散気管50aおよび50bに接続されている。洗浄槽10では洗浄水90の水位が上部開口11を超えると洗浄水90があふれ出る。したがって、上部開口11の位置が洗浄槽10のオーバーフローレベルであり、供給管52aおよび52bは、オーバーフローレベルよりも高い位置を経由している。このため、洗浄水90が散気管50から供給管52を介して混合管53に逆流することがない。さらに、洗浄水90が混合管53に繋がったオゾン発生装置54、酸素濃縮器55、エアーポンプ56などに逆流し、損傷を与えることを抑制できる。
【0024】
さらに、この超音波洗浄装置1においては、継ぎ手部分59aおよび59bは、天板101の上面101aの上部に平面視L字型に配置された箱型のダクト61の内部に現れるようにアレンジされている。したがって、継ぎ手部分59aおよび59bは、洗浄槽10の上部開口11よりも高い位置、すなわち、上部開口11に対応する天板101の上面101aよりも上側に突き出すように配置されているが、ダクト61により側方および上方を覆われており、外部から直に見えないようになっている。このため、シンプルですっきりとしたデザインの超音波洗浄装置1を提供できる。また、天板101から突き出た継ぎ手部分59aおよび59bが作業などの邪魔になったり、継ぎ手部分59aおよび59bが損傷したりするのを未然に防止できる。
【0025】
この超音波洗浄装置1に採用されているPSA式の酸素濃縮器55は、安定した量のオゾン81を発生できるものである。また、洗浄装置1においては、オゾン発生装置54から供給されたオゾン81と、エアーポンプ56から供給された空気82とを混合管53において混合し、オゾン81を含む空気80として2本の供給管52aおよび52bを介して散気管50aおよび50bに供給し、散気管50aおよび50bから底壁部13に向かって洗浄水90の中に吐出している。オゾン81のみを底壁部13に向けて放出するよりも、空気82を搬送媒体としてオゾン81を底壁部13に向けて放出できるので、オゾン81を底壁部13に沿って拡散させやすい。また、空気82自体も、後述するように洗浄効果を向上するのに効果がある。
【0026】
オゾン81を含む空気80は、2本の散気管50aおよび50bから均等に吐出される。この超音波洗浄装置1においては、2本の散気管50aおよび50bから吐出される空気80の量を等しくするために、2本の供給管52aおよび52bの圧力水頭の損失(圧力損失)が同じになるように、供給管52aおよび52bの長さや継ぎ手部分59aおよび59bの個数などを同じにしている。
【0027】
混合管53において生成するオゾン81を含む空気80のオゾン81と空気82との好適な比は、洗浄槽10の大きさなどにより変化する。オゾン81を含む空気80のオゾン81と空気82との比は、1:10〜1:1の範囲が好ましく、1:8〜1:2の範囲がさらに好ましく、1:7〜1:4の範囲がいっそう好ましい。オゾン81を含む空気80のオゾン81と空気82との比の好適な例は、1:6程度である。
【0028】
なお、本例の超音波洗浄装置1においては、供給管52が混合管53から分岐された状態で、供給管52aおよび52bがオーバーフローレベルよりも高い位置を経由しているが、混合管53からオーバーフローレベルよりも高い位置を経由したあとで1本の供給管52を2本の供給管52aおよび52bに分岐させてもよい。
【0029】
超音波洗浄装置1は、さらに、ダクト61を介して洗浄槽10の内部から排気する排気ポンプ63と、ダクト61と排気ポンプ63とを接続する排気管(管路)65と、排気管65の途中に設けられた臭気処理装置62とを有する。これらもハウジング100に収納されている。臭気処理装置62は活性炭フィルター62aを含み、ダクト61を介して排出された気体89は活性炭フィルター62aを通過してハウジング100の外に排気される。
【0030】
この超音波洗浄装置1においては、洗浄槽10の上部開口11を蓋60で覆い(閉め)、排気ポンプ63を作動させると、洗浄槽10の内部は若干負圧になる。したがって、洗浄槽10の上部に滞留している可能性があるオゾン81を含む空気80が蓋60の隙間を通して外部に漏れるのを抑制できる。さらに、蓋60およびダクト61を介して洗浄槽10の上部に滞留している可能性があるオゾン81を含む空気80を、臭気処理装置62を介して排出できる。オゾン81を含む空気80は特有のオゾン臭を含むが、活性炭フィルター62aにより吸着できる。吸着されたオゾン81は短時間のうちに分解する。このため、オゾン臭のない、あるいはオゾン臭をユーザーに殆ど感じさせない状態で超音波洗浄装置1を稼働できる。なお、本例の超音波洗浄装置1においては、臭気処理装置62がハウジング100の内部に収納されているが、ハウジング100の外部に取り付けることも可能である。臭気処理装置62を外付けすることにより、活性炭フィルター62aの交換を容易にできる。
【0031】
図4ないし図6に示すように、蓋60は天板101の上面101aに、ヒンジ(蝶番)69により洗浄槽10の上部開口11を開閉可能なように取り付けられている。蓋60は、ヒンジ69に取り付けられた側の側面部60aに形成された開口60bを有する。L字型のダクト61の開口は蓋60の側面部60aの開口60bに合致する位置に設けられており、蓋60を閉めると、蓋60の内部にダクト61の開口が現れ、蓋60を介して洗浄槽10の内部を排気できる。一方、蓋60を開けるときは、ダクト61は蓋60とは干渉せず、蓋60は自由に開閉できる。
【0032】
また、ダクト61は、天板101の上面101aの上部、すなわち洗浄槽10のオーバーフローレベルである上部開口11よりも高い位置に配置される蓋60を介して洗浄槽10の内部から吸気する。したがって、洗浄槽10の洗浄水90がダクト61を介して臭気処理装置62や排気ポンプ63に浸入し、損傷を与えることを抑制できる。排気管65の吸入口65aは天板101を貫通し、ダクト61の内部に現れている。
【0033】
このように、超音波洗浄装置1は、洗浄槽10の上部開口11がオーバーフローレベルとなるように設計されており、洗浄槽10の側壁部12の途中にオーバーフロー管を接続しなくてもよい。したがって、オーバーフロー管が不要なので低コストであり、さらに、オーバーフロー管を介してオゾン81入りの空気80や洗浄水90が外界に漏れることを抑制できる。
【0034】
この超音波洗浄装置1においては、洗浄するときは、図6に示すように、蓋60を開けて、洗浄槽10の内部に、上部開口11から洗浄対象である野菜(被洗浄物)30を収容した洗浄かご20をセットする。洗浄かご20は多孔性なので、洗浄かご20の内部が洗浄水90で満たされ、超音波振動が洗浄水90を介して洗浄かご20の内部の洗浄水90に伝達され被洗浄物30を洗浄できる。洗浄が終わった後は、蓋60を開けて洗浄かご20を引き上げることにより、被洗浄物30の水切りが可能である。
【0035】
洗浄かご20に収容できる被洗浄物30の一例は、野菜や果物を含む食材である。野菜の一例は、キャベツやレタスなどの葉菜類、ニンジンやダイコンなどの根菜類、ジャガイモやサトイモなどのイモ類、ナスやトマトなどの果菜類である。野菜や果物の他、鮮魚、冷凍魚介類、冷凍食肉などについても洗浄可能である。さらに、飲食用具や医療用器具などについても洗浄可能である。洗浄水90の一例は水または塩水である。
【0036】
図7および図8に示すように、洗浄かご20が洗浄槽10の内部にセットされると、洗浄かご20の網状の底部23は、洗浄槽10の底壁部13から離れた状態で底壁部13に対向(対峙)して配置され、被洗浄物30を洗浄槽10の底壁部13から離れた状態で支持する。洗浄中は、底壁部13の内面(上面)13aと網状の底部(支持部材)23との間の空間70および洗浄かご20の内部を含め、洗浄槽10の内部が洗浄水90で満たされる。
【0037】
図7および図8に示すように、散気管50aおよび50bは、洗浄槽10の底壁部13と洗浄かご20の網状の底部23との間の空間70に配置されている。散気管50aおよび50bには、底壁部13と対向(対峙)するように、それぞれの散気管50aおよび50bの下側、すなわち底壁部13の側に直線状に1列に複数の吐出孔51が形成されており、洗浄中は、底壁部13に向けて、すなわち下向きにオゾン81を含む空気(気泡)80が吐出される。これらの吐出孔51から下向きに吐出されたオゾン81を含む気泡80は、底壁部13に沿って洗浄槽10の全体に広がり、さらに、底壁部13から供給される超音波振動45の作用を受ける。
【0038】
図9に、図7の点線部分107を拡大した図で示している。図10に、図8の点線部分108を拡大した図で示している。それぞれの散気管50aおよび50bに設けられた複数の吐出孔51と底壁部13との距離W1は、複数の吐出孔51と網状の底部23との距離W2よりも小さく、複数の吐出孔51は網状の底部23よりも底壁部13の側に近接して配置されている。このため、複数の吐出孔51から下向きに吐出されたオゾン81を含む気泡80は、まず、底壁部13に沿って流れて広がり、その後、浮力により、洗浄かご20に収納された被洗浄物30に向かって拡散しながら上昇する。
【0039】
オゾン81は3つの酸素原子からなる酸素の同位体であり、それ自体、強力な酸化作用があり、殺菌、ウイルスの不活性化、脱臭、脱色、有機物の除去などに有効であることが知られている。さらに、水に対して酸化剤として働き、オゾン81よりも酸化還元電位が高く、強い酸化力を有するOH(ヒドロキシ)ラジカル81aを生成することが知られている。
【0040】
また、超音波洗浄する際に、洗浄水90に気泡80を導入することにより、洗浄槽10の内部の洗浄水90の状態が攪拌または撹乱されるので、定在波が発生することを抑制でき、または、定在波の音圧分布を絶えず変化させることができる。したがって、定在波による洗浄ムラを防止できるとともに、定在波による被洗浄物30の損傷を抑制できる。このため、野菜などの比較的やわらかい素材の被洗浄物30を洗浄する際に適している。また、マイクロバブルの消滅により発生する衝撃波による洗浄効果も期待でき、超音波エネルギーとマイクロバブルの相乗効果による洗浄効果が期待できる。
【0041】
さらに、空気(気泡)は、オゾン81を洗浄槽10の内部に搬送する媒体としても適している。しかしながら、オゾン81を含む気泡80を、単に洗浄水90に導入しても、オゾン81が空気82により覆われている状態になるため、オゾン81と被洗浄物30との接触効率が低く、オゾン81の殺菌効果が得られ難くなる。また、同様に、オゾン81と洗浄水90との接触効率も低くなり、より強力な殺菌効果が得られるOHラジカル(ヒドロキシラジカル)81aの生成効率も低く、OHラジカル81aによる殺菌効果も得られ難くなる。
【0042】
この超音波洗浄装置1においては、超音波の発生源となる底壁部13と、被洗浄物30の支持部材となる洗浄かご20の網状の底部23との間の領域(空間)70に散気管50aおよび50bが配置され、それらの散気管50aおよび50bに設けられた多数の吐出孔51からオゾン81を含む空気80が底壁部13に向けて吐出される。領域70には、被洗浄物30が存在しない。したがって、多数の吐出孔51から吐出されたオゾン81を含む空気80は、小さな気泡となり底壁部13と網状の底部23との間で、被洗浄物30に接触する前に底壁部13に沿って広がる。さらに、領域70には被洗浄物30が存在しないので底壁部13から出力される超音波の音圧はオゾン81を含む空気80の気泡に効率よく作用する。したがって、オゾン81を含む空気80の気泡には、被洗浄物30に接触する前に底壁部13から伝播される超音波が効率よく作用する。
【0043】
オゾン81を含む空気80の気泡に対する超音波の作用の典型的なものは、微細化と、攪拌とであると考えられている。まず、オゾン81を含む空気80の気泡が微細化されることにより、オゾン81が洗浄水90と接触する確率は向上する。したがって、微細化されたオゾン81を含む空気(気泡)80が洗浄槽10の洗浄水90に領域70を介して分散することにより、洗浄槽10内の全域にわたり、オゾン81と被洗浄物30との接触効率が向上し、オゾン81の殺菌効果が得られる。さらに、洗浄槽10内の全域にわたり、オゾン81の酸化作用によりOHラジカル81aが順次生成され、OHラジカル81aの殺菌作用も得られる。
【0044】
特に、この超音波洗浄装置1においては、洗浄かご20の網状の底部23の下の領域70で、オゾン81を含む空気80の気泡が底壁部13に沿って広がる。したがって、最も被洗浄物30が詰まっている洗浄かご20の底部23の近傍においても、オゾン81を含む空気80の微細な気泡が広がっており、洗浄かご20の底部23の近傍の被洗浄物30も、むらなく、良好に洗浄および殺菌できる。また、マイクロバブルとなったオゾン81を含む空気80が洗浄かご20の底部23の全体を覆うので、マイクロバブルと超音波との相乗効果による洗浄力も得やすい。
【0045】
さらに、底壁部13に沿って拡散したオゾン81を含む空気80の微細な気泡は、洗浄かご20の網状の底部23の下の領域70で超音波により効率的に攪拌され、この領域70で洗浄水90と予め反応しやすい。したがって、洗浄かご20の網状の底部23の下の領域70が、OHラジカル81aの効率的な生成領域となり、比較的高濃度のOHラジカル81aを含む洗浄水90を生成できる。
【0046】
洗浄水90の中のオゾン81およびOHラジカル81aは、短時間で酸素や水に分解されるが、数分から数十分は存続する。また、洗浄水90の中のオゾン81およびOHラジカル81aは、気泡とともに洗浄水90の中を上昇し、排出される。したがって、洗浄水90の中のオゾン81および発生したOHラジカル81aの滞留時間を最大限に活用するためにも、洗浄槽10の底壁部13の近傍でオゾン81を分散し、さらに、できるだけ大量のOHラジカル81aを予め生成することは殺菌作用を向上するために有効である。
【0047】
このようにして洗浄水90の中に吐出されたオゾン81および/または生成されたOHラジカル81aは、超音波振動45とともに洗浄かご20の内部に入れられた被洗浄物30およびその周囲の洗浄水90にも効率よく伝播され、被洗浄物30の隅々にまで行き届かせることができる。
【0048】
したがって、この超音波洗浄装置1においては、超音波振動45により被洗浄物30を洗浄できる。それとともに、超音波洗浄により被洗浄物30から取り除かれた細菌(たとえば、大腸菌やサルモネラ菌)や被洗浄物30に付着したままの細菌を、オゾン81および/またはOHラジカル81aにより効率よく殺菌できる。超音波振動45とともに伝達されたオゾン81および/またはOHラジカル81aは被洗浄物30の脱臭にも効果的である。また、洗浄後の被洗浄物30に付着したオゾン81およびOHラジカル81aは、短時間で酸素や水に分解される。このため、洗浄後の被洗浄物30には、オゾン81の残留がなく、あるいはほとんどない。したがって、この超音波洗浄装置1においては、被洗浄物30の濯ぎ洗浄を省略できるため、省エネである。また、洗浄水90においても同様であり、洗浄水90を排水した場合の環境負荷も軽減できる。
【0049】
野菜や果物などの食材を被洗浄物30として洗浄する場合、オゾン81および/またはOHラジカル81aにより、野菜や果物に付着(残留)した農薬などを分解および除去しやすい。さらに、腐敗の原因となるエチレンガスを酸化分解できるので、野菜や果物の鮮度を保持しやすい。さらに、この超音波洗浄装置1においては、洗浄の際に洗剤や薬品を使用していない。このため、清潔かつ衛生的で鮮度の高い、安心で安全な食材を提供できる。さらに、公害を発生させる要因も除去できる。また、上述したようにマイクロバブルと超音波との相乗効果が得られるので、食材のような比較的やわらかく、さらに複雑な形状をした被洗浄物30であっても被洗浄物30に損傷をあたえず、また、むらなく洗浄できる。
【0050】
さらに、この超音波洗浄装置1においては、散気管50aおよび50bに設けられた多数の吐出孔51は、オゾン81を含む空気80を底壁部13に向けて放出するように、底壁部13に対向するように、すなわち網状の底部23ではなく底壁部13の側を向くように下向きに配置されている。このため、超音波洗浄により被洗浄物30から取り除かれた汚れが網状の底部23を通過して流下した場合であっても、吐出孔51の目詰まりの要因となることを抑制できるという効果も得られる。
【0051】
さらに、この超音波洗浄装置1においては、底壁部13の上に散気管50aおよび50bを配置することにより、底壁部13の外面13bに取り付けられたランジバン振動子40の配置にかかわらず、底壁部13に沿って拡散されやすいように、オゾン81を含む空気80を吐出できる。したがって、ランジバン振動子40は、超音波を洗浄槽10に拡散しやすい配置を採用でき、散気管50aおよび50bはオゾン81を含む空気80を底壁部13に沿って拡散させやすい配置を採用できる。たとえば、散気管50aおよび50bの数量や形状を被洗浄物30により変更することも容易である。また、散気管50aおよび50bの交換やメンテナンスも容易である。
【0052】
このように、この超音波洗浄装置1は、汚れを効率よく落とすことができるだけではなく、オゾン81やOHラジカル81aを被洗浄物30に効率よく作用させ、殺菌効果などの効果を得ることができる。また、この超音波洗浄装置1は、オゾン臭が周囲に漏れ出すことも抑制できるので、使用する場所を選ばず、洗浄水90の逆流なども効率よく防止できているので安全であり、様々なユーザーが手軽に利用できる超音波洗浄装置1を提供できる。
【0053】
なお、上記においては食材、特に野菜を被洗浄物30として洗浄する例を説明したが、この超音波洗浄装置1は、様々な物品の洗浄に使用できる。また、洗浄かご20の代わりに、網または多孔板を嵩上げした状態で洗浄槽10の底に設置して被洗浄物30を支持し、散気管50を設置してオゾン81を含む空気80を拡散させ、OHラジカル81aを生成する領域70を設けてもよい。また、散気管50aおよび50bは2本に限らず、1本でも3本以上であってもよく、筒型(直管)に限らず、途中で枝分かれした管、ディスク(円盤)型や板型などであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 超音波洗浄装置
10 洗浄槽、 11 上部開口、 13 底壁部
20 洗浄かご、 23 網状の底部
30 被洗浄物
40 ランジバン(超音波)振動子、 45 超音波振動
50(50a、50b) 散気管、 51 吐出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を収容し、底壁部の外面に超音波振動子が取り付けられる洗浄槽と、
被洗浄物を前記底壁部から離れた状態で支持する多孔状の支持部材と、
前記底壁部と前記支持部材との間に配置された少なくとも1つの散気管とを有し、
前記少なくとも1つの散気管は、前記洗浄水にオゾンを含む空気を吐出し、前記底壁部に対向するように配置される吐出孔を含む、超音波洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吐出孔と前記底壁部との距離が、前記吐出孔と前記支持部材との距離よりも短い、超音波洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記少なくとも1つの散気管は、前記底壁部に沿って延びており、複数の前記吐出孔を含む、超音波洗浄装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記支持部材は、被洗浄物を収容し、網状の底部が前記底壁部から離れた状態で前記洗浄槽の内部に配置される洗浄かごの前記網状の底部である、超音波洗浄装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、さらに、
前記オゾンを発生させるオゾン発生装置と、
前記オゾン発生装置と前記少なくとも1つの散気管とを接続し、前記少なくとも1つの散気管に前記空気を供給する供給管とを有し、
前記供給管は、前記洗浄槽のオーバーフローレベルよりも高い位置に配置された部分を含む、超音波洗浄装置。
【請求項6】
請求項5において、さらに、
前記洗浄槽の上部開口を覆う蓋と、
前記蓋と連結し、前記洗浄槽の内部で発生する気体を排出するダクトとを有し、
前記供給管の少なくとも一部は、前記ダクトに覆われている、超音波洗浄装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、さらに、
前記洗浄槽の上部開口を覆う蓋と、
前記蓋を介して前記洗浄槽の内部と連通したダクトと、
前記ダクトを介して前記洗浄槽の内部から排気する排気ポンプとを有する、
超音波洗浄装置。
【請求項8】
請求項7において、さらに、
前記ダクトと前記排気ポンプとの間に配置された活性炭フィルターを有する、超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−255271(P2011−255271A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130158(P2010−130158)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(592022855)株式会社エスエヌディ (3)
【Fターム(参考)】