説明

超音波洗浄装置

【課題】従来の超音波洗浄装置において、微細気泡を含有する洗浄液を供給して、被洗浄物を洗浄する場合、洗浄液の微細気泡によって、超音波が減衰し、被洗浄物の表面に超音波が伝達せず、洗浄力が落ちてしまうという課題があった。
【解決手段】被洗浄物の一面に微細気泡を含有する第一の洗浄液を供給する第一の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面に微細気泡を含有しない第二の洗浄液を供給する第二の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面側から前記被洗浄物を通して前記第一の洗浄液と接する前記被洗浄物の一面に超音波を付与する超音波振動子とを有することを特徴とする超音波洗浄装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置に関するものであり、微細気泡を含有する洗浄液を供給して、被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波洗浄装置は、図4に示されるように、一端に洗浄液2を導入するための導入口を有する導入管21と、一端にウエット処理後の排出液を外部へ排出するための排出口を有する排出管22と、導入管21と排出管22のそれぞれの他端を連結し、被洗浄物Wに対面する連結部23に、超音波振動子40を設けたウエット処理用ノズル1を備えている。このことにより、特許文献1に示されるように、超音波振動子40を設けたウエット処理用ノズル1を備えた超音波洗浄装置では、超音波振動子本体48から振動板46へ、そして振動板46から洗浄液2への超音波振動の放射効率を向上でき、かつ被洗浄物Wの上面において、洗浄液2がこぼれたり、洗浄液2が切れたりすることなく、洗浄を行うことができる。
【0003】
一方、特許文献2に示されるように、水を主体とした洗浄液に微細気泡を発生させ、そこに被洗浄物を浸漬することにより洗浄する洗浄方法は、特殊な洗浄剤を用いない方法として注目されている。微細気泡を含有する洗浄液に被洗浄物を浸漬すると、微細気泡が被洗浄物表面の細部に到達し表面の汚れを気泡が吸着する。汚れを吸着した微細気泡は浮力によって上昇し、汚れは洗浄水表面に移動する。この汚れを洗浄液と共に洗浄槽からオーバーフローさせ、汚れと洗浄液を分離した後に洗浄液のみを洗浄槽へ戻せば、繰り返し洗浄を行うことができることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−079177号公報
【特許文献2】特開2010−075827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示したような超音波洗浄装置において、特許文献2に示したような微細気泡を含有する洗浄液を供給して被洗浄物を洗浄する場合、洗浄液の微細気泡によって、超音波が減衰して被洗浄物の表面に超音波が伝達せず、洗浄力が落ちてしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波洗浄装置は、被洗浄物の一面に微細気泡を含有する第一の洗浄液を供給する第一の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面に微細気泡を含有しない第二の洗浄液を供給する第二の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面側から前記被洗浄物を通して前記第一の洗浄液と接する前記被洗浄物の一面に超音波を付与する超音波振動子とを有することを特徴とする。このことにより、微細気泡を含有する第一の洗浄液と被洗浄物との接触面に、第一の洗浄液の気泡による超音波の減衰をおこすことなく超音波を付与できるため、洗浄力を高めることができる。
【0007】
また、本発明の超音波洗浄装置は、前記第二の洗浄液が脱気水であることを特徴とする。このことにより、第二の洗浄液における超音波のロスが少なく、超音波を被洗浄面に確実に伝搬させることができる。
【0008】
また、本発明の超音波洗浄装置は、前記第一の洗浄液供給経路と前記第二の洗浄液供給経路とが前記被洗浄物によって分離されていて、超音波照射領域において、第一の洗浄液と第二の洗浄液とが混合しないことを特徴とする。このことにより、超音波を被洗浄面に確実に伝搬させて、かつ洗浄力を高めることができる。
【0009】
さらに、本発明の超音波洗浄装置は、前記第一の洗浄液供給経路および第二の洗浄液供給経路に、それぞれの洗浄液の供給口および排出口が設けられて、それぞれの洗浄液供給経路内の圧力調整機構を有することを特徴とする。このことにより、少ない第一の洗浄液および第二の洗浄液で確実に洗浄できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波洗浄装置は、微細気泡を含有する第一の洗浄液で、被洗浄物を洗浄しても、第一の洗浄液の気泡によって、超音波が減衰しないため、洗浄力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の超音波洗浄装置を説明する図である。
【図2】第1の実施形態の超音波洗浄装置の変形例を説明する図である。
【図3】第2の実施形態の超音波洗浄装置を説明する図である。
【図4】従来の超音波洗浄装置を説明する図である
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態の例について図を参照しながら詳細に説明をする。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の超音波洗浄装置を説明する図であり、図2は、第1の実施形態の超音波洗浄装置の変形例を説明する図である。
【0014】
図1は、第1の実施形態の超音波洗浄装置を説明する図である。図1に示されるように、超音波洗浄装置13は、被洗浄物3の上面に微細気泡を含有する第一の洗浄液を供給する第一の洗浄液供給経路10と、被洗浄物3の下面に微細気泡を含有しない第二の洗浄液を供給する第二の洗浄液供給経路11と、被洗浄物3の下面側から被洗浄物3を通して第一の洗浄液と接する被洗浄物3の上面に超音波を付与する超音波振動子7とを有している。第一の洗浄液供給経路10は、被洗浄物3の上面から3mm程度離して設けられた筐体6と第一の洗浄液を供給する第一の供給口4と第一の洗浄液を排出する第一の排出口5によって形成されている。また、第二の洗浄液供給経路11は、被洗浄物3の下面から3mm程度離して設けられた筐体6と第二の洗浄液を供給する第二の供給口8と第二の洗浄液を排出する第二の排出口9によって、形成されている。尚、超音波振動子7は、第二の洗浄液供給経路11を形成する筐体6に設置されている。
【0015】
超音波振動子7は図示しない超音波発振器と接続されて筐体6を通して第二の洗浄液供給経路11内の洗浄液に超音波を付与する。超音波振動子7は、20kHzから10MHzの範囲の超音波振動の周波数であることが、好ましい。筐体6は、超音波振動を伝達可能なステレンス鋼などの材質で構成されているが、石英、サファイア、アルミナ等のセラミックの材質であってもかまわない。第一の供給口4が設けられた第一の供給部54と第一の排出口5が設けられた第一の排出部55および第二の供給口8が設けられた第二の供給部58と第二の排出口9が設けられた第二の排出部59は、PFAやPTFEなどの材質から構成されているが、材質は、これにかぎられるものではない。被洗浄物3は、ガラスや樹脂フィルムなどの材質から構成される薄板であり、第一の洗浄液供給経路10と第二の洗浄液供給経路11との間を左右に移動し、被洗浄物3の上面が洗浄される。
【0016】
尚、第一の洗浄液は、市販の超微細気泡発生装置にて生成されたナノバブル水であり、微細気泡を含有する洗浄液である。また第二の洗浄液は、脱気された超純水である。第一の洗浄液は、第一の供給口4から供給され、筐体6と被洗浄物3の間の第一の洗浄液供給経路10を通り、第一の排出口5から排出される。それぞれの洗浄液の供給圧力、排出圧力を調整する圧力調整機構(図示しない)を有して第一の洗浄液供給経路10の開口部と大気圧とのバランスを調整することによって、被洗浄物3の上面において、第一の洗浄液がこぼれたり、洗浄液が切れたりすることなく洗浄を行うことができる。一方、第二の洗浄液は、第二の供給口8から供給され、筐体6と被洗浄物3の間の第二の洗浄液供給経路11を通り、第二の排出口9から排出される。それぞれの洗浄液の供給圧力、排出圧力を調整する圧力調整機構を有して第二の洗浄液供給経路11の開口部と大気圧とのバランスを調整することによって、被洗浄物3の下面において、第二の洗浄液がこぼれたり、洗浄液が切れたりすることなく洗浄を行うことができる。このことにより、少ない第一の洗浄液および第二の洗浄液で確実に洗浄できる。
【0017】
被洗浄物3の洗浄中は、超音波振動子7から超音波振動の伝達を行う。超音波振動子7の振動を発生させても、第二の洗浄液は、微細気泡を含有しない洗浄液であるため、超音波振動子7から超音波振動は、減衰することなく、第一の洗浄液と被洗浄物3の界面に伝わる。このことにより、微細気泡を含有する第一の洗浄液で、被洗浄物3を洗浄しても、第一の洗浄液の気泡によって、超音波が減衰しないため、洗浄力を高めることができる。また、本実施形態では、第一の洗浄液供給経路10と第二の洗浄液供給経路11とが被洗浄物3によって分離されていて、超音波照射領域において、第一の洗浄液と第二の洗浄液とが混合しない。このことにより、超音波を被洗浄面に確実に伝搬させて、かつ洗浄力を高めることができる。第二の洗浄液は超音波振動を減衰させない微細気泡を含有しない洗浄液であれば、同様な洗浄効果がえられるが、本実施形態において行ったように脱気水を用いることにより、より強い超音波でも気泡が発生することなく超音波を伝播させることができるため好ましい。
【0018】
図2には、第1の実施形態の超音波洗浄装置の変形例を示す。図1に示した超音波洗浄装置13は、被洗浄物3の上面を洗浄するものであったが、図2に示す超音波洗浄装置14は、被洗浄物3の上面および下面の両面を洗浄するものである。図2に示されるように、超音波洗浄装置14の左側は、図1に示した超音波洗浄装置13と同様の構造で、被洗浄物3の上面を洗浄するものであるが、超音波洗浄装置14の右側は、被洗浄物3の下面を洗浄するものである。
【0019】
図2に示されるように、超音波洗浄装置14の右側は、被洗浄物3の下面に微細気泡を含有する第一の洗浄液を供給する第一の洗浄液供給経路10と、被洗浄物3の上面に微細気泡を含有しない第二の洗浄液を供給する第二の洗浄液供給経路11と、被洗浄物3の上面側から被洗浄物3を通して第一の洗浄液と接する被洗浄物3の下面に超音波を付与する超音波振動子7とを有している。このことにより、図1に示した超音波洗浄装置13と同様に、第一の洗浄液の気泡によって、超音波が減衰しないため、洗浄力を高めることができ、かつ被洗浄物3の上面および下面の両面を洗浄することができる。
【0020】
尚、本実施形態の変形例では、第一の洗浄液供給経路10と第二の洗浄液供給経路11を左右に2個持つ場合を例示したが、被洗浄物3の下面を洗浄する場合、図1の超音波洗浄装置13において、被洗浄物3の上面の筐体6にも超音波振動子7を追加し、第一の洗浄液供給経路10に第二の洗浄液、第二の洗浄液供給経路11に第一の洗浄液を切り替えて供給排出し、被洗浄物3の上面の超音波振動子7を振動させて、被洗浄物3の下面を洗浄してもかまわない。
【0021】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態の超音波洗浄装置を説明する図である。
【0022】
図3に示される超音波洗浄装置15は、被洗浄物3を回転しながら、洗浄するものである。図3に示されるに、被洗浄物3は、基板ホルダー18に設置されており、基板ホルダー18および被洗浄物3は、500RPM程度の回転速度で、回転可能となっている。被洗浄物3の上部には、第一の洗浄液19を供給する第一の洗浄液供給ノズル16が設置され、洗浄中は、被洗浄物3が回転され、遠心力によって、第一の洗浄液供給経路10が形成される。一方、被洗浄物3の下部には、第二の洗浄液20を供給する第二の洗浄液供給ノズル17が設置され、洗浄中は、被洗浄物3が回転され、遠心力によって、第二の洗浄液供給経路11が形成される。第二の洗浄液供給ノズル17は、超音波振動子7を有しており、第二の洗浄液20に、超音波を重畳可能となっており、第二の洗浄液供給ノズル17から第二の洗浄液20を供給すると、第二の洗浄液供給経路11に超音波が伝達し、さらに被洗浄物3の上面に超音波を伝達することが可能となっている。
【0023】
本実施形態の第一の洗浄液19および第二の洗浄液20は、第1の実施形態で示したものと同じであり、第一の洗浄液19は、微細気泡を含有する洗浄液であり、第二の洗浄液20は、微細気泡を含有しない洗浄液である。第1の実施形態と同様に、第二の洗浄液20は、微細気泡を含有しない洗浄液であるため、超音波振動は、減衰することなく、第一の洗浄液19と被洗浄物3の界面に伝わる。このことにより、微細気泡を含有する第一の洗浄液19で、被洗浄物3を洗浄しても、第一の洗浄液19の気泡によって、超音波が減衰しないため、洗浄力を高めることができる。本実施形態では、被洗浄物3の上面を洗浄する場合を例示したが、被洗浄物3の下面を洗浄する場合は、第一の洗浄液供給ノズル16を被洗浄物3の下面に、第二の洗浄液供給ノズル17を被洗浄物3の上面に、それぞれ追加して設置するなどの工夫をしてもかまわない。
【符号の説明】
【0024】
3 被洗浄物
4 第一の供給口
5 第一の排出口
6 筐体
7 超音波振動子
8 第二の供給口
9 第二の排出口
10 第一の洗浄液供給経路
11 第二の洗浄液供給経路
13、14、15 超音波洗浄装置
16 第一の洗浄液供給ノズル
17 第二の洗浄液供給ノズル
18 基板ホルダー
19 第一の洗浄液
20 第二の洗浄液
54 第一の供給部
55 第一の排出部
58 第二の供給部
59 第二の排出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物の一面に微細気泡を含有する第一の洗浄液を供給する第一の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面に微細気泡を含有しない第二の洗浄液を供給する第二の洗浄液供給経路と、前記被洗浄物の他面側から前記被洗浄物を通して前記第一の洗浄液と接する前記被洗浄物の一面に超音波を付与する超音波振動子とを有することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波洗浄装置において、前記第二の洗浄液が脱気水であることを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超音波洗浄装置において、前記第一の洗浄液供給経路と前記第二の洗浄液供給経路とが前記被洗浄物によって分離されていて、超音波照射領域において、第一の洗浄液と第二の洗浄液とが混合しないことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波洗浄装置において、前記第一の洗浄液供給経路および第二の洗浄液供給経路に、それぞれの洗浄液の供給口および排出口が設けられて、それぞれの洗浄液供給経路内の圧力調整機構を有することを特徴とする超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−34916(P2013−34916A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170897(P2011−170897)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】