説明

超音波液面計

【課題】容器底部に取り付けた超音波トランスジューサにより液面検出する際に、容器底部の板厚による誤差を生じにくい超音波液面計を提供する。
【解決手段】周波数を変化させながら超音波トランスジューサ2をバースト駆動して容器30の底部を経て液面に向け超音波を発射すると、該駆動に伴ない当該超音波トランスジューサ2に発生する各周波数での検出情報には異次数の板厚固有周波数の出現に対応して極値が周期的に現れるので、これを利用すれば容器30の底部の次数の異なる複数の板厚固有周波数を特定することができる。そして、液面検知用駆動周波数での液面反射波RWの受信信号に基づいて容器30内の液面高さを算出する際に、上記板厚tの値により補正することにより、容器30板厚が変動した場合も液面高さを常に正確に特定でき、例えば、液面高さから容器30内のガス残量を検針する際の信頼性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波液面計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器底部下面に超音波トランスジューサを取り付け、容器底部を介して液面に向け測定用超音波を送出し、該測定用超音波が液面位置で反射して戻ってくるまでの伝播往復時間を計測することにより液面高さを知ることができるようにした超音波液面計が知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3378231号公報
【特許文献2】特許4083038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記超音波液面計においては、測定により得られた往復伝播時間を実際の液面高さ情報に変換するために、液体の音速が正確に特定されている必要がある。しかし、音速は液体の種別(例えば、収容されている液体が都市ガスやLPGの場合はガスの組成)や温度によって変化するので、液面測定上の誤差要因となる。従来の超音波液面計では、音速一定の条件で伝播時間から液面高さが算出・出力されるようになっており、このような測定誤差解消のための補正を、その出力された液面高さを温度ないし組成を勘案して、ユーザーサイドでマニュアル計算により把握することが行われていた。しかし、このようなことは、わざわざ補正換算して液残量を把握せねばならず、利便性が悪く手間がかり、また、マニュアル計算により液面高さ(すなわち、容器中の液残量)を把握するにしても、温度やガス組成等に応じた補正係数をユーザーが把握していることが条件となるので、補正係数自体が未知であれば、そもそも対応不能であることはいうまでもない。
【0005】
本発明の課題は、容器底部に取り付けた超音波トランスジューサにより液面検出する際に、種々の要因による測定誤差を簡便な方式により液面計側で自発的に補正することができ、ひいては測定精度を向上できる超音波液面計を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の超音波液面計は、
液体を収容した容器からなる被測定系において容器底部に取り付けられ、該容器底部を介して液体中に測定用超音波を送出するとともに該測定用超音波の反射波を受信する超音波トランスジューサと、
超音波トランスジューサによる受信波形において、測定用超音波のメインローブに由来したメイン反射波形とサイドローブに由来したサイド反射波形とを分離して特定する反射波形特定手段と、
メイン反射波形とサイド反射波形との双方に基づいて容器中の液面位置に関する情報を生成する液面位置情報生成手段と、
生成した液面位置情報を出力する液面位置情報出力手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
超音波トランスジューサが発する超音波ビームには、送信面の法線方向(すなわち、中心軸線方向)に生ずる音圧の高いメインローブ(主極)と、法線方向から外れた向きに斜めに広がりながら送出される音圧の低いサイドローブ(副極)とがある。従来の超音波液面計においては専らメインローブのみが用いられていたのに対し、本発明においてはサイドローブも併用し、メインローブに由来したメイン反射波形とサイドローブに由来したサイド反射波形との双方に基づいて容器中の液面位置に関する情報を生成するようにしたので、メインローブのみを用いる場合と比較して液面検出の精度を高めることができる。
【0008】
超音波トランスジューサは、従来通り、板状の容器底部裏面に対しメインローブの液面反射波を直接受信可能な位置に取り付けることができる。液面によるメインローブの直接反射波形を受信することで、従来の液面系と同様に、該直接反射波形の情報を液面位置の基礎情報として用いることができる。他方、超音波トランスジューサの該取付形態を採用した場合、サイドローブはメインローブから側壁内面側に遠ざかりながら広がるように送出されるので、これを考慮して次のような構成を採用することができる。
【0009】
すなわち、容器の側壁内面に、液面に向けてメインローブは通過させる一方、容器底部に対し超音波トランスジューサの受信面から外れた位置に反射波が入射するようにサイドローブを反射する反射部材を取り付ける。反射波形特定手段は、メインローブの液面反射波形をメイン反射波形として、容器底部に入射し該容器底部内を多重反射しつつ超音波トランスジューサの受信面に到達するサイドローブの波形をサイド反射波形として特定するものとして構成する。超音波トランスジューサから送信されたメインローブは液面で直角に反射し、無反射で超音波トランスジューサに戻ってくるので、液面高さによらず伝播経路は送信面法線方向と一致しており、伝播長は液面高さに比例して変化する。しかし、サイドローブは送信面法線方向に対して傾いている関係上、液面で反射させる形態を採用すると、該液面と容器側壁内面や底部内面にて繰り返し反射を起こし、その伝播経路は液面位置に応じて大きく変化する。そこで、上記の構成では、液面位置とは無関係にサイドローブに対して定常的な反射面を与える反射部材を容器内部に配置し、該反射部材によりサイドローブの反射位置を固定化したので、サイドローブの反射伝播経路が液面位置に影響されなくなり、サイド反射波形を考慮した液面位置算出アルゴリズムを大幅に簡略化できる。
【0010】
具体的には、液面位置情報生成手段は、測定用超音波を送出してからメイン反射波形を検出するまでのメインローブの液面往復伝播時間を計測するメインローブ液面伝播時間計測手段と、測定用超音波を送出してからサイド反射波形を検出するまでのサイドローブの伝播時間を計測するサイドローブ伝播時間計測手段とを有するものとして構成できる。また、液面位置情報生成手段は、メインローブの液面往復伝播時間とサイドローブの伝播時間との双方に基づいて容器中の液面高さを液面位置に関する情報として演算するものとして構成できる。液面位置とは無関係にサイドローブの反射伝播経路が一定化することで、測定系に誤差要因が全く存在しなければサイドローブの伝播時間は一定となる。逆に言えば、サイドローブの伝播時間に変化が生ずれば、その変化は測定系に生じた誤差要因を反映したものとなる。上記の構成によれば、メインローブの液面往復伝播時間とサイドローブの伝播時間との双方に基づいて、測定系の誤差要因を考慮した液面高さの演算が簡単に実現できる。
【0011】
より具体的には、液面位置情報生成手段は、メインローブの液面往復伝播時間に基づいて容器中の液面高さを演算する液面高さ演算手段と、演算された液面高さをサイドローブの伝播時間に基づいて補正する液面高さ補正手段とを有するものとして構成できる。メインローブの液面往復伝播時間から演算される液面高さを、サイドローブの伝播時間に基づいて補正することで、簡便な手法により液面高さの特定精度を大幅に向上することができる。
【0012】
例えば、液面位置情報生成手段は、サイドローブの伝播時間に基づいて液体中の音速を演算する音速演算手段と、メインローブの液面往復伝播時間と、サイドローブの伝播時間に基づいて演算された音速とに基づいて容器中の液面高さを演算する液面高さ演算手段とを有するものとして構成できる。液体の種別が相違したり、あるいは液面検出温度が変化する場合は液体中の音速が変化したりする。サイドローブの伝播経路が一定であれば、液体中の音速が変化することにより伝播時間が変化するので、当該サイドローブの伝播時間の計測結果から液体中の音速を正確に特定することができる。そして、その特定された音速とメインローブの液面往復伝播時間とを用いれば、容器中の液面高さを正確に算出することができる。液体中の音速は、例えばサイドローブの伝播時間と音速との関係を予め伝播時間/音速情報として記憶保持ないし取得しておくことで、簡単に特定することができる。
【0013】
この場合、容器内に収容可能な液体の種別と各液体の音速との相関を特定する液体種別・音速相関情報を取得する液体種別・音速相関情報取得手段を設けることができる。液体種別・音速相関情報取得手段は、例えば液体種別・音速相関情報の記憶手段(メモリ)として構成してもよいし、液体種別・音速相関情報を無線ないし有線にて通信取得する通信手段として構成してもよい。例えば、容器に収容される液体が都市ガスやLPGなど複数種類の炭化水素の混合物の場合は、その組成に応じて液体中の音速が変化するので、これを液体種別・音速相関情報として事前に取得・把握しておくことにより、サイドローブの伝播時間の計測結果から特定された音速から液体の組成を特定することが可能となる。そこで、音速演算手段が演算する音速に対応する液体種別を、液体種別・音速相関情報を参照して特定する液体種別特定手段と、特定された液体種別を出力する液体種別出力手段とを設けることで、容器中の液体種別が不明の場合は、演算により得られた音速からこれを逆特定でき、その特定結果を出力することができる。
【0014】
次に、本発明の超音波液面計には、容器内の液体の温度を測定する温度測定手段と、音速演算手段が演算する音速又は液面高さ演算手段が演算する液面高さを、測定された温度にて補正する温度補正手段とを備えるものとして構成できる。液体の音速(ひいてはその音速に基づいて算出される液面高さ)は、液体の温度によって変化するので、容器内の液体の温度を測定により特定できれば、音速ひいては液面高さをより精密に補正できる。特に、液体の種別による音速変化と、液体の温度による音速変化とが競合する場合でも、液体の温度が測定により別途特定されることにより、液体の種別による音速変化のみをサイドローブの伝播時間から特定することで液面高さを正確に求めることができる。この場合、サイドローブ伝播時間と音速との関係(伝播時間/音速情報)を、種々の温度毎に用意しておき、測定された温度に対応する伝播時間/音速情報を用いて、液面高さ算出のための音速を正確に特定することが可能となる。
【0015】
次に反射部材は、メイン反射波形により検出可能な最低液面位置又はそれよりも低位置に取り付けることができる。液面位置情報生成手段は、メイン反射波形とサイド反射波形との双方が検出されないことを条件として、液面高さが最低液面位置未満であると判定する最低液面判定手段を有するものとして構成できる。容器内の液面位置が低くなるとメイン反射波形の伝播時間が短くなり、メインローブ遮断後の残響にメイン反射波形が埋没しやすくなって、液面位置の特定精度が低下する。しかし、最低液面位置又はそれよりも低位置に反射部材を設けておけば、メイン反射波形が検知不能となっても、反射部材によるサイド反射波形が検知されるか否かに基づき、液面が最低液面位置未満にあるか否かを容易に特定できる。
【0016】
本発明の超音波液面計には、超音波トランスジューサを予め定められた帯域内にて周波数を変更しつつ駆動することにより、個々の周波数におけるサイド反射波形の受信強度を特定し、該受信強度が最大化される周波数を見出して超音波トランスジューサの駆動周波数として設定する駆動周波数調整・設定手段を設けることができる。超音波の容器底部の透過効率は、超音波の周波数が容器底部の板厚固有周波数と一致している場合に最も良好となり、逆に、互いに隣りあう異次数の板厚固有周波数(隣接板厚固有周波数)の中間に超音波の周波数が位置するときに境界反射の影響が最も大となって、透過効率は極小化する。この事情は、メインローブとサイドローブとの双方について同様に成り立つ。サイドローブの送信強度はメインローブよりも小さいので、サイド反射波形検出に際して、その受信強度が最大化される周波数を選んで超音波トランスジューサを駆動することによりサイド反射波形の特定精度を高めることができる。
【0017】
容器底部内面への超音波入射点における法線方向を基準に入射角度θを定義すれば、容器底部へ入射する縦波音波の波長をλ、容器底部の板厚をtとすると、共振条件では、
t/cosθ=m・λ/2 ‥(1)
あるいは、
λ=2t/(m・cosθ) ‥(1)’
である。従って、縦波の音速をCとすると、超音波入射角度方向における板厚固有周波数fは、
=C/λ ‥(2)
なので、(1)’(2)より、
=(m・cosθ)・C/2t ‥(3)
ここに、mは固有振動の次数を示す整数である。メインローブの容器底部への入射角度をθ、サイドローブの容器底部への入射角度をθとすれば、メイン反射波形の受信強度が最大化される周波数fmmは、
mm=(m・cosθ)・C/2t ‥(4)
であり、サイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmsは、
ms=(m・cosθ)・C/2t ‥(5)
である。一般に、θ≠θであり、メイン反射波形を検出する際には超音波トランスジューサをfmmで駆動し、サイド反射波形を検出する際には超音波トランスジューサを、それとは異なるfmsで駆動することが、個々の反射波形のS/N比を向上する上で有利であるといえる。例えば、θ=90゜であり、θ<90゜の場合は、
mm=m・C/2t ‥(4)’
ms=(m・cosθ)・C/2t ‥(5)’
となる。
【0018】
具体的には、容器底部の板厚方向の縦波振動に係る固有周波数を板厚固有周波数として、超音波トランスジューサを互いに異なる第一板厚固有周波数(例えば、上記のfmm)と第二板厚固有周波数(例えば、上記のfms)とにより逐次駆動する超音波駆動手段を設けることができる。反射波形特定手段は、超音波トランスジューサを第一板厚固有周波数にて駆動した場合の受信波形においてはメイン反射波形のみを特定し、同じく第二板厚固有周波数にて駆動した場合の受信波形においてはサイド反射波形のみを特定するものとして構成すればよい。
【0019】
他方、容器底部の板厚方向の縦波振動に係る固有周波数を板厚固有周波数として、互いに異なる第一板厚固有周波数と第二板厚固有周波数とを定めるとともに、第一板厚固有周波数による駆動波形と第二板厚固有周波数による駆動波形とを合成した合成駆動波形により超音波トランスジューサを駆動する超音波駆動手段を設けることもできる。反射波形特定手段は、合成駆動波形により超音波トランスジューサを駆動した場合に得られる受信波形のうち、第一板厚固有周波数による波形成分からメイン反射波形を特定し、第二板厚固有周波数による波形成分からサイド反射波形を特定するものとして構成する。このようにすると、超音波トランスジューサを上記合成駆動波形により1回駆動するだけで、メイン反射波形とサイド反射波形との双方を、それぞれ受信強度が最適化された形で同時に検出でき、個々の反射波形のS/N比向上を効率的に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の超音波液面計の取付形態を例示する模式図。
【図2】図1の超音波液面計の電気的構成を示すブロック図。
【図3】サイドローブに対する反射板の作用と、その反射波の伝播経路を説明する図。
【図4】反射板の取付位置と液面位置との関係を説明する図。
【図5】LPGの音速の温度依存性の一例を示すグラフ。
【図6】図1の超音波液面計の測定波形の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る超音波液面計の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1は、容器30はLPGやLNG等の液化ガスや灯油等の液体を収容するものであり(本実施形態ではLPGとする)、超音波液面計1は、収容された液体の液面31の容器内底面からの高さ(ひいては、液体貯蔵量)を測定するためのものである。超音波液面計1は制御回路10と超音波トランスジューサ2とを要部とし、超音波トランスジューサ2は容器30の底部下面に図示しないマグネット等により設置され、ケーブルCを介して制御回路10に接続されている。超音波トランスジューサ2は、容器底部を介して液面31に向け測定用超音波PW(メインローブ)を送出し、該測定用超音波の液面反射波RW(メイン反射波)を受信する。
【0022】
容器30は鋼鉄製のタンクであり、図2に示すように、その底面に圧電素子にて構成された超音波トランスジューサ2が、音響整合層3及びシリコーンシートからなる共振結合抑制層4を介して取り付けられている。超音波液面計1は、上記超音波トランスジューサ2により、容器30内の液面31の高さを、容器外から測定できるように構成されている。図2には、制御回路10の電気的構成をブロック図の形で示している。超音波トランスジューサ2は、板厚方向に分極処理された板状の圧電セラミック素子2Pと、該圧電セラミック素子2Pの各主表面を覆う形で該圧電セラミック素子2Pを挟んで対向形成された電極対2e,2eとを備える。この電極対2e,2eは、測定用超音波ビームの送信駆動時には該圧電セラミック素子2Pを超音波振動させるための駆動電圧が印加される駆動電極となり、反射超音波の受信時には圧電セラミック素子2Pの振動に伴う電気信号を出力する出力電極となる。
【0023】
音響整合層3は、圧電セラミック素子(ペロブスカイト型酸化物:例えば、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛など)よりも大きい音響インピーダンス密度を有する材料で構成することが望ましい。音響インピーダンスは材料の密度ρと音速Cとの積に音波通過断面積Sを乗じた値S・ρ・Cとして定義され、特に密度ρと音速Cとの積ρ・Cを固有音響インピーダンスないし音響インピーダンス密度と称する。このような音響整合層の構成材料としては、アルミニウムないしその合金(例えばAl−Mg系合金、Al−Mg−Cu系合金、Al−Zn−Mg系、Al−Li系合金など)、マグネシウムないしその合金(例えば、Mg−Zn系合金、Mg−Al−Zn系合金、Mg−Zr系合金など)、チタンないしその合金、ベリリウム、ステンレス鋼などの金属系材料や、共振結合抑制層よりも硬質の樹脂材料、例えばABS樹脂等を採用するのが特に好適である。これらのうち、特に、音響インピーダンス密度の値において音速Cの寄与が大きい材料(具体的には、C/(ρ・C)1/2の値が1を超える材料)を採用することが望ましい。C/(ρ・C)1/2の値は、より望ましくは1.3以上であり、これに該当する材料としてアルミニウム(1.54)、マグネシウム(1.58)、ABS樹脂(1.46)、ガラス(1.46)、ベリリウム(2.62)を例示できる。
【0024】
超音波トランスジューサ2が発する超音波ビームには、送信面の法線方向(すなわち、中心軸線方向)に生ずる音圧の高いメインローブML(主極)と、法線方向から外れた向きに斜めに広がりながら送出される音圧の低いサイドローブSL(副極)とがある。本実施形態においてはメインローブMLとサイドローブSLとを併用し、メインローブMLに由来したメイン反射波形とサイドローブSLに由来したサイド反射波形との双方に基づいて容器中の液面位置に関する情報を生成する。
【0025】
超音波トランスジューサ2は、板状の容器底部30Bの裏面に対しメインローブMLの液面反射波を直接受信可能な位置に取り付けられている。容器30の本体30Mは円筒状に構成される一方、底部30Bは下向きに凸となる半回転楕円体状に形成され、本体30Mの下側の開口を塞ぐように溶接接合されている。超音波トランスジューサ2は送信面の中心を通る法線(つまり、メインローブMLのビーム中心線が本体30Mの中心軸線と一致するように、容器底部30Bの裏面中央に取り付けられている。これにより、超音波トランスジューサ2から送出されたメインローブMLは容器底部30Bを板厚方向に横切って液中へ透過し、さらに液面31で直角に反射され、その反射波が超音波トランスジューサ2の送信面に無反射で戻ってくるようになっている。
【0026】
他方、サイドローブSLは、メインローブMLから側壁内面側に遠ざかりながら広がるように送出される。他方、容器30の本体30Mの側壁内面には、液面31に向けてのメインローブMLは反射せず(つまり、液面31に向けた通過は許容する)、サイドローブSLは反射する反射板(反射部材)30Kが取り付けられている。超音波トランスジューサ2のサイドローブSLの放射角度と放射面の寸法、及び反射板30Kの容器半径方向長さは、容器底部30Bに対し超音波トランスジューサ2の受信面から外れた位置に反射波が入射するように定められている。
【0027】
反射板30Kにより反射して、回転楕円体曲面をなす容器底部30Bの底面に入射したサイドローブSLは、該底面で反射された後、入射時とほぼ同じ伝播軌跡をたどって再び超音波トランスジューサ2で受信される音波と、容器底部30B内部に入射して多重反射しながら再び超音波トランスジューサ2で受信される音波とを生じ、これら音波が、図6に示すように、メインローブMLによる反射波形であるメイン反射波形(A)とは別に、サイド反射波形(B)として検出されることとなる。
【0028】
図3に示すように、液体の音速V1と容器底部30Bをなす金属(鋼鉄)中の音速V2との比から、液体から容器底部30Bに入射するサイドローブSLの全反射臨界角度θsを計算により規定することができる。例えば、具体的には、反射板30Kによるサイドローブ反射波の、容器底部30Bへの入射角度をθ1とし、入射後の音波の屈折角度をθ2とすると、スネルの法則により、
sinθ2/sinθ1=V2/V1 ‥(6)
あるいは、
θ2=Sin−1{sinθ1・(V2/V1)} ‥(6)’
となる。臨界角度θsは、
sinθs=V1/V2 ‥(7)
であり、例えばV1=760m/sec、V2=5900m/sとすると、
θs=7.401°‥(8)
となる。従って、入射角度θ1が該θsより小さくなるように、サイドローブSLの角度と放射面の寸法、及び反射板30Kの容器半径方向長さを規定しておけば、サイドローブSLの一部が容器底部30Bに必ず入射でき、容器底部30B内を多重反射伝播して超音波トランスジューサ2に到達するサイド反射波形を発生させることができる。例えば、θ1=5゜のときは、容器底部30B内に進入するサイドローブの屈折角θ2は(6)より、42.58゜と計算される。
【0029】
図2は、制御回路10の電気的構成を示すものである。制御回路10はマイコン100を有し、超音波トランスジューサ2の電極対2e,2eは、切替スイッチ104及び反射超音波計測部103を介してマイコン100の入出力部99に接続されている。マイコン100は、該入出力部99と、処理主体となるCPU98、その作業エリアとなるRAM96及び制御プログラム(超音波トランスジューサ2の駆動制御(切替スイッチ104によるモード切替処理を含む)及び液面高さの算出処理制御とを行なう)を格納したROM97とを有する。入出力部99には、測定された液面高さを表示出力するモニタ94と、容器底部の板厚値の入力等に使用するキーボード95(入力部)が接続されている。
【0030】
また、超音波トランスジューサ2には、マイコン100からの指令により動作する切替スイッチ104を介して、駆動回路105と受信回路103とが接続されている。駆動回路105は、マイコン100からの制御パルス信号を受けてバーストパルス駆動信号を発生し、切替スイッチ104を介して超音波トランスジューサ2へ出力する。駆動周波数は、マイコン100による制御パルス信号の周波数設定値に応じて変更可能である。
【0031】
また、受信回路103は、受信信号から不要残響波等をフィルタリングするフィルタ103a、フィルタリング後の受信信号を増幅するアンプ103b、受信振動波形を包絡線検波する検波回路103c、及び、検波後の受信信号を解析し、残響信号レベルや液面反射信号レベルを特定するとともに、超音波トランスジューサ2へのバースト矩形波の出力タイミングに対応してマイコン100から出力されるトリガ信号を受けて起動し、液面反射信号を受信するまでの伝播時間を計測する信号処理部103dを有する。
【0032】
測定に際しては、マイコン100からのスイッチ制御信号により、切替スイッチ104が超音波トランスジューサ2をバースト矩形波駆動回路105に接続し、予め定められた駆動周波数にて測定用超音波(メインローブ及びサイドローブ)がバースト矩形波として送出されるように駆動される。駆動動作の詳細は、特許文献1,2により周知なので詳細な説明は省略する。測定用超音波の送出後は、マイコン100からのスイッチ制御信号により、切替スイッチ104が超音波トランスジューサ2の接続状態を受信回路103側に切り替える。これにより、測定用超音波PWの液面での反射波が超音波トランスジューサ2により受信される。
【0033】
受信回路103は、受信信号から不要残響波等をフィルタリングするフィルタ103a、フィルタリング後の受信信号を増幅するアンプ103b、受信振動波形を包絡線検波する検波回路103c、及び、検波後の受信信号を解析し、残響信号レベルや液面反射信号レベルを特定するとともに、超音波トランスジューサ2へのバースト矩形波の出力タイミングに対応してマイコン100から出力されるトリガ信号を受けて起動し、液面反射信号を受信するまでの往復伝播時間(図1にて、入射波PWと反射波RWの各伝播時間の合計)を計測する信号処理部103dを有する。
【0034】
図6に示すように、超音波トランスジューサ2を、予め設定された液面検知用駆動周波数faの駆動パルスにて超音波トランスジューサ2をバースト駆動し、駆動パルスを遮断すると、超音波トランスジューサ2の検出出力には容器底部30Bによる残響信号が現れる(これは、マイクロコンピュータ100側にてマスク時間tmxを設定することにより測定から除外できる)。
【0035】
図3のごとく、容器30の内部に反射板30Kを設けることで、超音波トランスジューサ2の受信波形には、容器底部30を透過して液面31で反射したメインローブMLによる反射エコー信号(メイン反射波形(A))に加え、反射板30KによるサイドローブSLの反射エコー信号(サイド反射波形(B))が現れる。超音波トランスジューサ2の駆動を開始してからメイン反射波形(A)が検出されるまでの時間t1は、メインローブMLの液面までの往復伝播時間であり、基本的にはこの往復伝播時間で液中の音速を除した値の1/2が超音波トランスジューサ2の超音波放出面から液面までの距離(つまり、液面高さ)を反映した情報として算出される。すなわち、往復伝播時間をt1、液体中の音速をCとすれば、液面高さhは、
h=(t1/2)・C
としてマイコン100により算出される。
【0036】
一方、メインローブMLの往復伝播時間は液面31の高さが低くなるほど(つまり、容器30内の液体残量が少なくなるほど)短くなり、ある最低液面高さ(図4:hmin)未満になると、メイン反射波形(A)は残響信号に埋没して検出不能となる。そして、サイド反射波形(B)を作る反射板30Kの位置は、この最低液面高さhminに対応する高さ、具体的には、該反射板30KによるサイドローブSLの反射波が、残響信号に埋没しない最低限の伝播時間を生ずる高さ位置に設定されている。
【0037】
上記のような反射板30Kを設けることにより、メイン反射波形(A)とサイド反射波形(B)の出現形態は、液面31の位置に応じて次のようなものとなる。
(1)液面31が反射板30Kよりも高位置にある場合は、サイド反射波形(B)とメイン反射波形(A)とは双方ともに検出され、かつ、サイド反射波形(B)がメイン反射波形(A)よりも必ず先に現れる。また、サイドローブSLの強度はメインローブMLよりも低いので、サイド反射波形(B)の検出強度はメイン反射波形(A)よりは低くなる。
(2)液面31が反射板30Kよりも低位置にある場合は、サイド反射波形(B)とメイン反射波形(A)とがともに残響信号に埋没し、検出不能となる。換言すれば、サイド反射波形(B)とメイン反射波形(A)とがともに検出できない場合は、液面31が反射板30Kよりも低位置にあると判定できる。
【0038】
ここで、容器底部に対する超音波透過率は、駆動周波数faが容器底部の共振点に一致するとき容器底部の超音波透過率は極大となり、反共振点に一致するとき極小なる。当然、反射エコーの検出レベル残響レベルは極大となる。本発明では、送信角度の異なるメインローブMLとサイドローブSLとの双方を利用するが、前述のごとく、メインローブMLの容器底部30Bへの入射角度を90゜、サイドローブSLの容器底部30Bへの入射角度をθとしたとき、メイン反射波形の受信強度が最大化される周波数fmm(第一板厚固有周波数)は、
mm=m・C/2t ‥(4)’
であり、サイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fms(第二板厚固有周波数)は、
ms=(m・cosθ)・C/2t ‥(5)’
となって、両者は基本的に不一致となる。例えば、サイドローブSLの強度はメインローブMLよりも低いことを考慮して、駆動周波数faをサイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmsに一致させておけば、サイド反射波形のS/N比を高めることができる。この場合、液面高さの測定に先立って、図2のマイクロコンピュータ100から出力する制御回路105への制御パルス信号の周波数を種々に変更しつつ超音波トランスジューサ2をバースト駆動し、該駆動に伴ない当該超音波トランスジューサ2に発生する各周波数でのサイド反射波形の検出強度を特定する。そして、その検出強度が極大化される固有周波数を駆動周波数faとして設定する(図6参照)。
【0039】
図4に示すごとく、容器30内に反射板30Kを設けることで、サイドローブSLの反射伝播経路は液面31の位置とは無関係に一定化することになる。従って、測定系に誤差要因が全く存在しなければサイドローブSLの伝播時間は一定となる。逆に言えば、サイドローブSLの伝播時間に変化が生ずれば、その変化は測定系に生じた誤差要因を反映したものとなる。その誤差要因は、主に液体の温度と組成である。前者については、媒質中の音速が温度によって変化することは周知であり、例えば図2に示すように、容器底部に取り付けた温度検出素子(例えばサーミスタ)からの温度検出出力を、増幅回路9を介してマイクロコンピュータ100に入力し、マイクロコンピュータ100側にて当該温度検出入力を参照して、液面高さを算出するための音速を補正することが可能である。
【0040】
しかし、サイドローブSLの反射波を液面測定に利用しようとする場合、音速の温度補正に関しては次のような問題を生ずる。すなわち、図3に示すごとく、サイドローブSLの反射伝播経路には、液中伝播部分と金属製容器底部の伝播部分とを含む。当然、液体と金属とでは音速及びその温度依存性も相違するので、サイドローブSLの反射伝播経路における両伝播部分の比率に特定する必要がある。しかし、サイドローブSLの送信角度ひいては反射伝播経路には一定の拡がりがあり、上記各伝播部分の比率を計算により正確に特定するのは、一般には困難である。
【0041】
他方、液体組成の音速に及ぼす影響について考える。LPG(液化石油ガス)は、「プロパンガス」と通称される通り、その主成分はプロパンであるが、プロパン以外の炭化水素成分、特にブタンが第二成分として混入していることが多い。このブタンの組成比はLPGの供給元(特に、産地等に起因する)によって異なり、一般に流通しているLPGのブタン組成比は全体の30%程度までの範囲で分布を有することが多い。当然、LPG中を伝播する音速もブタン組成比によって変化する。
【0042】
そこで、容器30に取り付けた超音波トランスジューサ2により、温度、液体組成及び液面高さ(つまり、液量)が予め知れている条件にて、メインローブMLによる伝播時間を計測すれば、当該の液体組成及び温度における液中の音速を見積もることができる。また、このときに生ずるサイドローブSLの伝播時間を合わせて測定しておく。このような測定を、第1温度T(例えば0℃)にて種々の液組成毎に行なえば、該第1温度Tでの液組成毎の音速及びサイドローブSLの伝播時間の組が測定結果として得られる。また、第1温度Tとは異なる第二温度Tにて同様の測定を行なえば、該第二温度Tでの液組成毎の音速及びサイドローブSLの伝播時間の組が得られる。このような測定結果の組を、図2のROM97内に、組成・音速マップ(液体種別・音速相関情報)として記憶しておく。表1は、該組成・音速マップの一例を示すものである。なお、第1温度Tとは異なる第二温度Tとにおいて直読可能な伝播時間(t1、t2、t3‥)は互いに合わせ込んでおくことが、以降の補間演算をスムーズに行なう観点にて望ましい。
【0043】
【表1】

【0044】
このような組成・音速マップを利用すれば、容器中の液面高さを、その精度を高めた形で以下のごとく測定することができる。すなわち、図2において、マイクロコンピュータ100はスイッチ制御信号により切替スイッチを駆動回路105側に切り替え、超音波トランスジューサ2が該駆動回路105に接続された状態とする。そして、サイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmsを駆動周波数として設定し、超音波トランスジューサ2をバースト駆動して測定用超音波(メインローブ+サイドローブ)を送信する。次いで、スイッチ制御信号により切替スイッチを反射超音波計測部103側に切り替え、超音波トランスジューサ2を反射超音波計測部103に接続された状態とする。これにより、測定用超音波に由来した図6の下に示すような反射波形が超音波トランスジューサ2により受信される。反射超音波計測部103では、駆動周波数近傍の波形成分のみが帯域通過フィルタ103aにより抽出され、アンプ103bで増幅された後、検波回路103cを経て信号処理部103dに入力される。
【0045】
受信波形の初期には前述の残響信号が現れるので、これは信号マスキングにより検出しないようにする。そして、信号マスキング解除後、最初に現れる波形はサイド反射波形Bであり、波形の所定順位(例えば3番目)のゼロクロス点(第一のゼロクロス点)が図2の信号処理部103dにより検出され、その検出信号がマイクロコンピュータ100に入力される。マイクロコンピュータ100では、超音波トランスジューサ2のバースト駆動を遮断してから、この第1のゼロクロス点が検出されるまでの時間をサイドローブSLの伝播時間trとして特定する。
【0046】
続いて、受信波形には、サイド反射波形よりも大振幅のメイン反射波形Aが現れる。信号処理部103dは、このメイン反射波形Aのゼロクロス点(第二の第1のゼロクロス点)も検出し、その検出信号をマイクロコンピュータ100に入力する。マイクロコンピュータ100では、超音波トランスジューサ2のバースト駆動を遮断してから、この第二のゼロクロス点が検出されるまでの時間をメインローブSLの伝播時間txとして特定する。また、温度検出素子8が検出する液体温度Tも、その入力値から特定する。
【0047】
なお、表1の組成・音速マップでは、温度に関してはTa=20℃とT0=0℃との2水準のみを採用していたが、第三温度以降の組成・音速マップを併用する、あるいは組成と温度とをパラメータとする音速の二次元マップを用いることも可能である(一例として、温度を2℃刻み程度、ブタン組成比αを5%刻み程度としたものなど)。また、マップの代わりに近似式を記憶し、演算させるようにすることも可能である。例えば、ブタン組成比αが0%(すなわち、プロパン100%)の場合、音速V100を表す近似式は、
100≒−6.6631T+883.63(m/sec) ‥(9)
となる(図5にこれをグラフ化したものを示す)。また、ブタン組成比αが10%(すなわち、プロパン90%)では、音速V90を表す近似式は、
90≒−6.4945・T+900.04(m/sec) ‥(10)
であり、このような近似式を種々のブタン組成比毎(例えば、5%刻み)に用意しておけばよい。
【0048】
以上の結果を受け、マイクロコンピュータ100では、表1の組成・音速マップにおいて、測定されたサイドローブSLの伝播時間trに対応する音速V及びVを温度T及びTの各マップ上にて見出す。そして、両音速V及びVを用いて、検出された液体温度Tに対応する音速Vを線形補間により算出する。この音速Vは、液体組成と温度との双方による補正を経た値であり、メインローブSLの伝播時間txの1/2を該値Vにて除することにより、最終的な液面高さが算出され、さらに周知の方法により容器内残液量に換算された形でモニタ94に出力される。
【0049】
また、上記サイドローブSLの伝播時間trが示す音速V(温度T)及びV(温度T)に対応するブタン組成比α、αを表1の組成・音速マップから読み取ることができる。このブタン組成比α、αを同様に、測定温度による比率にて線形補間することで、容器内の液体のブタン組成比αを算出することができる。該ブタン組成比αの算出結果もモニタ94に出力される。
【0050】
サイドローブの伝播時間trは、その伝播経路長をLcとして、
tr=tc(Constant)+Lc/(2・Vc) ‥(11)
にて表すことができる。tcは容器底部の伝播時間分を示すが、反射板から反射してくるこの反射時間には常にこの値が含まれ共通である。また、容器底部をなす鉄の音速の温度係数は、LPGの音速の温度係数よりも3桁程度低く、金属中の温度による伝播速度の変化は使用温度範囲内では無視できる。このため、20℃におけるプロパン100%での伝播時間に対して、例えば、配合比が異なる場合(プロパン:ブタン=100−α:α)の液体を同一温度で計測した時は、その伝播時間tα=tc+Lc/(2・Va)より音速Vaが決定されるので、音速Vaからブタン組成比をマップないし近似式から算出でき、モニタ94への表示出力が可能である。
【0051】
さらに、液体の真の音速Vaが決定されるので、メインローブの伝播時間tをVaで除することにより正確な液量が演算できる。例えば、温度Ta=20℃において、液体のブタン組成比をα、その音速をVa=Y[m/s]とした場合、
=tc+Lc/(2・Y) ‥(12)
なので、
Y=Va=Lc/[2・{t−tr+Lc/(2・Vc)}] ‥(13)
となる。この音速Yを、前述のマップないし近似式より求め、該Y(=Va)に対応するブタン組成比αを算出できる。
【0052】
なお、上記の実施形態では、サイド反射波形の振幅が最大化される固有周波数にて1回のみ超音波トランスジューサ2をバースト駆動するようにしていたが、超音波トランスジューサ2を、メイン反射波形の受信強度が最大化される周波数fmm(前述の(4)式:第一板厚固有周波数)と、サイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmS(前述の(5)式:第二板厚固有周波数)で逐次駆動するように構成してもよい。この場合、超音波トランスジューサ2をfmmにて駆動した場合の受信波形においてはメイン反射波形(図6:伝播時間tx)のみを特定し、同じくfmSにて駆動した場合の受信波形においてはサイド反射波形(図6:伝播時間tr)のみを特定する。これにより、メイン反射波形のS/N比も向上でき、より高精度な液面測定が可能となる。
【0053】
他方、超音波トランスジューサ2を、メイン反射波形の受信強度が最大化される周波数fmm(前述の(4)式:第一板厚固有周波数)と、サイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmS(前述の(5)式:第二板厚固有周波数)とによる各駆動波形を合成した合成駆動波形により超音波トランスジューサ2を駆動するようにしてもよい。この場合、合成駆動波形により超音波トランスジューサ2を駆動した場合に得られる受信波形のうち、fmmによる波形成分からメイン反射波形を特定し、fmSによる波形成分からサイド反射波形を特定する。このようにすると、超音波トランスジューサ2を上記合成駆動波形により1回駆動するだけで、メイン反射波形とサイド反射波形との双方を、それぞれ受信強度が最適化された形で同時に検出でき、個々の反射波形のS/N比向上を効率的に図ることができる。図2においては、第二の反射超音波計測部103’を追加し、第一の反射超音波計測部103に含まれる帯域通過フィルタ103aの通過帯域をメイン反射波形の受信強度が最大化される周波数fmmに合わせこみ、第二の反射超音波計測部103’に含まれる帯域通過フィルタ103’aの通過帯域をサイド反射波形の受信強度が最大化される周波数fmSに合わせこむことで、各波形を同時に検出できるように構成してある。
【符号の説明】
【0054】
1 超音波液面計
2 超音波トランスジューサ
8 温度検出素子(温度測定手段)
30 容器
30K 反射板(反射部材)
94 モニタ(液面位置情報出力手段、液体種別出力手段)
100 マイコン(反射波形特定手段、メインローブ液面伝播時間計測手段、サイドローブ伝播時間計測手段、音速演算手段、液面高さ演算手段、液体種別・音速相関情報取得手段、液体種別特定手段、温度補正手段、最低液面判定手段、駆動周波数調整・設定手段)
105 駆動回路(超音波駆動手段)
200 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容した容器からなる被測定系において容器底部に取り付けられ、該容器底部を介して前記液体中に測定用超音波を送出するとともに該測定用超音波の反射波を受信する超音波トランスジューサと、
前記超音波トランスジューサによる受信波形において、前記測定用超音波のメインローブに由来したメイン反射波形とサイドローブに由来したサイド反射波形とを分離して特定する反射波形特定手段と、
前記メイン反射波形と前記サイド反射波形との双方に基づいて前記容器中の液面位置に関する情報を生成する液面位置情報生成手段と、
生成した前記液面位置情報を出力する液面位置情報出力手段と、
を備えたことを特徴とする超音波液面計。
【請求項2】
前記超音波トランスジューサが板状の容器底部裏面に対し前記メインローブの液面反射波を直接受信可能な位置に取り付けられ、
前記容器の側壁内面には、前記液面に向けて前記メインローブを通過させる一方、前記容器底部に対し前記超音波トランスジューサの受信面から外れた位置に反射波が入射するように前記サイドローブを反射する反射部材が取り付けられ、
前記反射波形特定手段は、前記メインローブの液面反射波形を前記メイン反射波形として、前記容器底部に入射し該容器底部内を多重反射しつつ前記超音波トランスジューサの前記受信面に到達する前記サイドローブの波形を前記サイド反射波形として特定するものである請求項1記載の超音波液面計。
【請求項3】
前記液面位置情報生成手段は、
前記測定用超音波を送出してから前記メイン反射波形を検出するまでの前記メインローブの液面往復伝播時間を計測するメインローブ液面伝播時間計測手段と、
前記測定用超音波を送出してから前記サイド反射波形を検出するまでの前記サイドローブの伝播時間を計測するサイドローブ伝播時間計測手段とを有し、
前記液面位置情報生成手段は、前記メインローブの前記液面往復伝播時間と前記サイドローブの伝播時間との双方に基づいて前記容器中の液面高さを前記液面位置に関する情報として演算するものである請求項2記載の超音波液面計。
【請求項4】
前記液面位置情報生成手段は、前記メインローブの前記液面往復伝播時間に基づいて前記容器中の液面高さを演算する液面高さ演算手段と、演算された液面高さを前記サイドローブの伝播時間に基づいて補正する液面高さ補正手段とを有する請求項3記載の超音波液面計。
【請求項5】
前記液面位置情報生成手段は、前記サイドローブの伝播時間に基づいて前記液体中の音速を演算する音速演算手段と、前記メインローブの前記液面往復伝播時間と、前記サイドローブの伝播時間に基づいて演算された音速とに基づいて前記容器中の液面高さを演算する液面高さ演算手段とを有する請求項3又は請求項4に記載の超音波液面計。
【請求項6】
前記容器内に収容可能な液体の種別と各液体の音速との相関を特定する液体種別・音速相関情報を取得する液体種別・音速相関情報取得手段と、
前記音速演算手段が演算する音速に対応する液体種別を、前記液体種別・音速相関情報を参照して特定する液体種別特定手段と、
特定された液体種別を出力する液体種別出力手段とを備える請求項5記載の超音波液面計。
【請求項7】
前記容器内の前記液体の温度を測定する温度測定手段と、
前記音速演算手段が演算する前記音速又は前記液面高さ演算手段が演算する前記液面高さを、測定された前記温度にて補正する温度補正手段とを備える請求項5又は請求項6に記載の超音波液面計。
【請求項8】
前記反射部材は、前記メイン反射波形により検出可能な最低液面位置又はそれよりも低位置に取り付けられ、
前記液面位置情報生成手段は、前記メイン反射波形と前記サイド反射波形との双方が検出されないことを条件として、前記液面高さが前記最低液面位置未満であると判定する最低液面判定手段を有する請求項3ないし請求項7のいずれか1項に記載の超音波液面計。
【請求項9】
前記超音波トランスジューサを予め定められた帯域内にて周波数を変更しつつ駆動することにより、個々の周波数における前記サイド反射波形の受信強度を特定し、該受信強度が最大化される周波数を見出して前記超音波トランスジューサの駆動周波数として設定する駆動周波数調整・設定手段を有する請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の超音波液面計。
【請求項10】
前記容器底部の板厚方向の縦波振動に係る固有周波数を板厚固有周波数として、前記超音波トランスジューサを互いに異なる第一板厚固有周波数と第二板厚固有周波数とにより逐次駆動する超音波駆動手段が設けられ、
前記反射波形特定手段は、前記超音波トランスジューサを前記第一板厚固有周波数にて駆動した場合の受信波形においては前記メイン反射波形のみを特定し、同じく前記第二板厚固有周波数にて駆動した場合の受信波形においては前記サイド反射波形のみを特定する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の超音波液面計。
【請求項11】
前記容器底部の板厚方向の縦波振動に係る固有周波数を板厚固有周波数として、互いに異なる第一板厚固有周波数と第二板厚固有周波数とを定めるとともに、前記第一板厚固有周波数による駆動波形と前記第二板厚固有周波数による駆動波形とを合成した合成駆動波形により前記超音波トランスジューサを駆動する超音波駆動手段が設けられ、
前記反射波形特定手段は、前記合成駆動波形により前記超音波トランスジューサを駆動した場合に得られる受信波形のうち、前記第一板厚固有周波数による波形成分から前記メイン反射波形を特定し、前記第二板厚固有周波数による波形成分から前記サイド反射波形を特定する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の超音波液面計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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