説明

超音波照射デバイスおよび超音波照射装置

【課題】照射対象によって容器を換えるだけで、超音波を使用した様々なアプリケーションに対応する。
【解決手段】一方向に開放された開口を有するとともに、壁面の少なくとも一部に超音波を透過する超音波透過膜5を有し、超音波を伝播する超音波伝播液16を貯留する容器3を着脱可能に取り付けて開口を閉塞する超音波照射デバイス2であって、容器3を取り付けた状態で、該容器3内において超音波透過膜5に対向する位置に配置され、超音波を射出する射出面7を備える超音波素子8と、容器3を取り付けた状態で、該容器3内に存在する気泡を超音波素子8から射出される超音波の伝播領域外に制限する気泡制限部13とを備える超音波照射デバイス2を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波照射デバイスおよび超音波照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焦点領域に超音波を照射し治療を行う超音波照射デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この超音波照射デバイスでは、超音波を発生する送受波器と超音波を透過させるカップリング膜とを備えたアプリケータ内に超音波伝播液を充満させており、異なる照射対象の治療を行う場合には、アプリケータを送受波器ごと交換することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−167034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献の超音波照射デバイスでは、超音波を発生する送受波器を含むアプリケータを照射対象ごとに用意しなければならず、照射対象が多数に及ぶ場合にはコストが高く付くという不都合がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、低コストで多数の照射対象に適用することができる超音波照射デバイスおよび超音波照射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、一方向に開放された開口を有するとともに、壁面の少なくとも一部に超音波を透過する超音波透過膜を有し、超音波を伝播する超音波伝播液を貯留する容器を着脱可能に取り付けて前記開口を閉塞する超音波照射デバイスであって、前記容器を取り付けた状態で、該容器内において前記超音波透過膜に対向する位置に配置され、超音波を射出する射出面を備える超音波素子と、前記容器を取り付けた状態で、該容器内に存在する気泡を前記超音波素子から射出される超音波の伝播領域外に制限する気泡制限部とを備える超音波照射デバイスを提供する。
【0007】
本発明によれば、超音波伝播液を貯留した容器の開口を閉塞するように取り付けると、超音波素子の射出面と容器内の超音波透過膜とが対向配置され、超音波の射出領域が超音波伝播液で満たされる。したがって、超音波素子の射出面から超音波が射出されると、超音波は超音波伝播液を伝播し、超音波透過膜を透過して照射対象に到達する。
【0008】
この場合に、容器内の超音波伝播液内に気泡が混入することがあるが、その場合においても気泡が気泡制限部によって、超音波の伝播領域内に入らないように制限される。伝播領域外に気泡を制限することで、気泡による超音波の乱反射や気泡の超音波素子への付着による故障等を抑えることができ、照射対象に効率良く超音波を照射することができる。
【0009】
上記発明においては、前記射出面を露出させた状態に前記超音波素子を保持するとともに、前記容器を着脱可能に取り付ける保持部を備え、該保持部に、前記気泡制限部が設けられていてもよい。
このようにすることで、保持部に容器を取り付けると、容器内に射出面が露出するよう超音波素子が配置されるとともに気泡制限部が容器内に配置される。これにより、容器を保持部に取り付けるだけで、保持部に設けられた気泡制限部によって気泡を超音波の伝播領域外に制限しつつ、超音波伝播液を介して超音波を照射可能な超音波照射デバイスの構造を簡単にすることができる。
【0010】
また、上記発明においては、前記気泡制限部が、凹部であってもよい。
このようにすることで、容器を取り付ける際に容器内の超音波伝播液内に気泡が混入した場合においても、凹部が下向きに開口する姿勢に配置することで、超音波伝播液内を上昇する気泡を凹部内に捕捉して、簡易に超音波の伝播領域内に入らないように制限することができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記気泡制限部が、前記超音波素子の周縁よりも外側に全周にわたって配置されていてもよい。
このようにすることで、容器内の超音波伝播液内に混入した気泡が、超音波伝播領域内に存在する場合には、どの方向に超音波照射デバイスを傾けても、周方向のいずれかの位置に配置されている気泡制限部によって、気泡を超音波の伝播領域外に制限することができる。
【0012】
また、上記発明においては前記保持部に、前記容器が取り付けられた状態で、一端が前記容器内に開口し、他端が前記容器外に開口する貫通孔が設けられていてもよい。
このようにすることで、容器を取り付けた後に、容器外から貫通孔を介して超音波伝播液を注入することができる。これにより、開口部を開放したままの状態で超音波伝播液を貯留した容器を取り扱わずに済み、容器を取り付ける際や持ち運ぶ際などでの取扱いが容易になる。
【0013】
また、上記発明においては、前記気泡制限部が凹部であり、前記貫通孔が前記凹部内に開口していてもよい。
このようにすることで、凹部に捕捉して、超音波の伝播領域外に制限した気泡を、凹部に開口する貫通孔を介して容器外に逃がすことができる。
【0014】
また、本発明は、超音波を照射する射出面を有する超音波素子を備える超音波照射デバイスと、該超音波照射デバイスに対して着脱可能に設けられ、一方向に開放された開口を有するとともに、壁面の少なくとも一部に超音波を透過する超音波透過膜を有し、超音波を伝播する超音波伝播液を貯留する容器とを備え、前記超音波素子が、前記超音波照射デバイスを前記容器に前記開口を閉塞するように取り付けたときに、前記容器の前記超音波透過膜に対向するように配置され、前記容器または前記超音波照射デバイスの少なくとも一方に、または、前記超音波照射デバイスと前記容器との間に、前記容器を前記超音波照射デバイスに取り付けて、前記容器内部を超音波伝播液によって満たしたときに、前記容器内に存在する気泡を前記超音波素子から射出される超音波の伝播領域外に制限する気泡制限部を備える超音波照射装置を提供する。
【0015】
本発明によれば、超音波伝播液を貯留した容器の開口を閉塞するように取り付けると、超音波素子の射出面と容器内の超音波透過膜とが対向配置され、超音波の射出領域が超音波伝播液で満たされる。したがって、超音波素子の射出面から超音波が射出されると、超音波は超音波伝播液を伝播し、超音波透過膜を透過して照射対象に到達する。
【0016】
この場合に、容器内の超音波伝播液内に気泡が混入することがあるが、その場合においても気泡が、容器または超音波照射デバイスの少なくとも一方、または、容器と超音波照射デバイスとの間に設けた気泡制限部によって、伝播領域内に入らないように制限される。伝播領域外に気泡を制限することで、気泡による超音波の乱反射や気泡の超音波素子への付着による故障等を抑えることができ、照射対象に効率良く超音波を照射することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コストで多数の照射対象に適用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波照射デバイスおよび超音波照射装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の超音波照射デバイスを組み立てた超音波照射装置を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の変形例に係る超音波照射装置を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る可変分光素子を示す縦断面図である。
【図5】図2の超音波照射装置の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る超音波照射デバイス2および超音波照射装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る超音波照射装置1は、図1(a)に示される超音波照射デバイス2と、該超音波照射デバイス2に着脱可能に取り付けられる容器3(図1(b)参照。)とを備えている。
【0020】
容器3は、図1(b)に示されるように、略中央に厚さ方向に貫通するテーパ状の中央穴4aを有し硬質な材料からなる容器本体4と、該容器本体4の中央穴4aの小径側の開口を閉塞するように張られた超音波透過膜5とを備えている。これにより、超音波透過膜5を底面とし、中央穴4aの大径側に一方向に開放され、内部に超音波伝播液A(図2参照。)を液密状態に貯留可能な容器3が構成されている。容器3の開放された大径側の開口には、後述する超音波照射デバイス2を嵌合させる円筒面からなる嵌合内面6が設けられている。
【0021】
超音波透過膜5は、超音波U(図2参照。)を透過させる性質を有している。超音波透過膜5は、容器3内に貯留する超音波伝播液(本実施形態においては水)Aと略同等の音響インピーダンスを有し、超音波伝播液A内を伝播してきた超音波Uに対して超音波透過膜5が伝播の障害とならないようになっている。
【0022】
本実施形態に係る超音波照射デバイス2は、図1(a)に示されるように、超音波Uを射出する射出面7を備える集束超音波素子8(超音波素子)と、集束超音波素子8の射出面7を露出させるように保持する保持部材9とを備えている。
集束超音波素子8の射出面7は、放物曲面からなる凹面状に形成されており、超音波伝播液A内においては、該射出面7から所定の距離だけ離れた一点に集束する超音波Uを射出するようになっている。
【0023】
保持部材9は、容器3の開口を閉塞するように容器3の嵌合内面6と嵌合する嵌合外面10を有している。嵌合外面10は、容器3の嵌合内面6の内径寸法より若干小さい外径寸法を有する円筒面によって構成されている。嵌合外面10の軸方向の途中位置には、全周にわたって周溝10aが形成され、該周溝10a内には、嵌合内面6と嵌合外面10との間を液密状態に密閉するOリング11が配置されている。
【0024】
また、保持部材9は、嵌合外面10の半径方向内方に位置する端面12の中央に集束超音波素子8を備えている。そして、保持部材9の端面12には、該集束超音波素子8の外側を取り囲む位置に形成された円環の溝状の凹部13(気泡制限部)が設けられている。
【0025】
超音波照射デバイス2の嵌合外面10と超音波伝播液Aを満たした容器3の嵌合内面6とを嵌合させると、図2に示されるように、保持部材9によって容器3の開口が閉塞され、容器3内の空間が密閉される。このとき、閉塞された容器3内には、集束超音波素子8および凹部13が配置され、集束超音波素子8の射出面7が超音波透過膜5に対向して配置され、射出面7と超音波透過膜5との間に超音波伝播液Aが満たされるようになっている。
【0026】
そして、このようにして組み立てられた超音波照射装置1を、容器3が超音波照射デバイス2の下側に配されるように配置すると、容器3内において保持部材9の端面12に設けられている凹部13が下向きに開口するようになっている。
【0027】
集束超音波素子8から射出される超音波Uの焦点距離は一定であるため、容器3の中央穴4aの軸方向長さを変更することにより、超音波透過膜5の位置から、超音波透過膜5を透過して容器3の外部に射出される超音波Uの焦点位置までの距離を変更することができるようになっている。つまり、照射対象および照射目的に応じて、異なる深さの容器3が選択的に取り付けられるようになっている。
図中、符号14は、集束超音波素子8を駆動するための駆動部、符号15は、駆動部14と集束超音波素子8とを接続するケーブルである。
【0028】
このように構成された本実施形態に係る超音波照射デバイス2および超音波照射装置1の作用について、図2を用いて説明する。
本実施形態に係る超音波照射デバイス2を用いて、照射対象として、例えば、生体B内に存在する病変部Cに超音波Uを照射するには、予め生体B表面から病変部Cまでの距離を超音波探査等によって把握しておき、この距離を集束超音波素子8の焦点距離から減算した深さ寸法の容器3を選択する。そして、選択された容器3が完全に浸る容積の水槽内に超音波伝播液Aを貯留しておき、容器3を水槽内に沈めて、容器3内全体が超音波伝播液Aで満たされるようにする。
【0029】
続いて、同じ水槽内に超音波照射デバイス2の端面12を沈めて、集束超音波素子8の射出面7を超音波伝播液A内に浸す。そして、水槽内で保持部材9の嵌合外面10と、容器3の嵌合内面6とを嵌合させる。これにより、集束超音波素子8の射出面7と容器3の底面に配置されている超音波透過膜5とが対向し、射出面7と超音波透過膜5との間に超音波伝播液Aが満たされた状態で、容器3の開口が保持部材9によって密閉される。
【0030】
超音波照射装置1を使用して生体B内の病変部Cに超音波Uを照射するには、超音波照射デバイス2が上部に、容器3が下部となるように配置して、上向きに配置され超音波ゼリー等が塗布された生体Bの表面に容器3の底面を押し当てる。これにより、容器3内において保持部材9の端面12に設けられている凹部13が上に凸となるので、超音波伝播液A内に気泡17が存在している場合には、超音波伝播液A内を上昇する気泡17を凹部13内に容易に収容することが可能となる。
【0031】
例えば、気泡17が集束超音波素子8の照射面7近傍に位置する場合には、気泡17は凹面状の照射面7に留まりやすいが、超音波照射装置1を傾けることにより、容易に照射面7から半径方向外方に気泡17を逃がし、集束超音波素子8の半径方向外方に配置されている凹部13内に収容することができる。ここで、本実施形態においては、凹部13が、集束超音波素子8の半径方向外方に全周にわたって配置されているので、超音波照射装置1をいずれの方向に傾けても、気泡17を凹部13に逃がすことができる。
【0032】
そして、気泡17は、凹部13内に一旦収容されると、超音波照射装置1を大きく傾けない限り、凹部13内に捕獲された状態に維持され、集束超音波素子8と超音波透過膜5との間に形成される超音波Uの伝播領域内に入らないように、伝播領域外に制限される。
【0033】
この状態で、駆動部14から発せられた駆動信号がケーブル15を通して集束超音波素子8に送られることにより、射出面7から超音波Uが射出される。集束超音波素子8から射出された超音波Uは、容器3内の超音波伝播液A内を伝播し、超音波透過膜5を透過して、生体B内に照射される。超音波伝播膜5から超音波Uの焦点位置までの距離が、予め把握されている生体B表面から病変部Cまでの深さに一致するように容器3が選択されているので、生体B内に照射された超音波Uは、生体B内の病変部Cの位置に精度よく焦点を結び、病変部Cに高強度の超音波Uを照射することができる。
【0034】
そして、この場合において、容器3の着脱時に容器3内に気泡17が混入していたとしても、その気泡17を凹部13内に捕獲させることによって、超音波Uの照射時には伝播領域外に制限されるので、気泡17が病変部Cに照射される超音波Uの障害とならないようにすることができる。
また、生体B表面から病変部Cまでの距離を変えて照射したい場合は、その照射距離を焦点距離から減算した深さ寸法の容器3に交換し、同様の手順で超音波Uを照射する。
【0035】
すなわち、本実施形態に係る超音波照射デバイス2および超音波照射装置1によれば、超音波素子8ごと容器3を交換する従来の装置とは異なり、容器3だけを照射距離に応じて着脱可能に接続するので、高価な集束超音波素子8を交換せずに済み、低コストで多くの照射対象に適用することができるという利点がある。
【0036】
なお、本実施形態においては、容器3を照射対象である生体Bの表面に直接接触させる用途について説明したが、これに代えて、容器3を照射対象に直接接触させない用途に使用することにしてもよい。
【0037】
例えば、図3に示されるように、照射対象として生体から取り出した細胞Dが選択される場合には、遺伝子とマイクロバブルあるいはナノバブルとを含む培養液Eを満たしたシャーレ等の培養容器18内に細胞Dを収容した状態で、容器3の超音波透過膜5を培養液Eに接触させ、超音波Uを照射する。超音波照射デバイス2から細胞Dに向けて超音波Uを照射すると、細胞D近傍に存在しているマイクロバブルあるいはナノバブルを破砕し、その際に発生する衝撃によって細胞D表面に穴を開け、その穴に培養液E内の遺伝子を導入する用途にも適用することができる。
【0038】
さらに具体的には、培養液Eで満たした培養容器18内に細胞Dを収容し、培養液E内にマイクロバブルと遺伝子を注入しておく。この状態で、超音波照射装置1の底面を培養容器18に接触させる。このとき、容器3底面の超音波透過膜5と培養容器18との間に空気層がなくなるように培養液Eを満たしておき、超音波照射装置2の容器3の下端に配されている超音波透過膜5と培養液Eとが接するように設置する。これにより、細胞Dに向けて超音波Uを照射することが可能となり、これにより、培養液E中に注入されている遺伝子を、超音波Uの照射によって開いた穴に導入することができる。
【0039】
超音波Uが細胞Dの近傍で集束することとなる深さの容器3を選択して、培養容器18の上端に容器3の底面を押し当てることで、照射対象である細胞Dに直接触れなくても超音波Uを照射することができる。
また、容器3の剛性が高いため、培養容器18に容器3を設置した際に、超音波デバイス2を安定させることができ、照射位置がブレることを防止して、細胞Dに向けて精度よく超音波Uを照射することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、照射対象として培養容器18に入った細胞Dに超音波Uを照射したが、照射対象は細胞Dに限らない。また、照射目的も治療用や遺伝子を導入することに限定されるものではない。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る超音波照射デバイス20および超音波照射装置21について以下に説明する。
なお、本実施形態において、上述した第1の実施形態に係る超音波照射デバイス1および超音波照射装置2と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る超音波照射デバイス20は、図4に示されるように、保持部材9に貫通孔22を有する点で、第1の実施形態に係る超音波デバイス1と相違している。
貫通孔22は、その一端が凹部13内に開口し、他端は端面12以外の外面、例えば側面9aに開口している。これにより、保持部材9に容器3が取り付けられた状態では、貫通孔22は、一端が容器3内に開口し、他端が容器3外に開口するようになっている。また、本実施形態では、貫通孔22は、周方向に間隔をあけた2箇所に設けられている。
【0043】
このように構成された本実施形態に係る超音波照射デバイス20および超音波照射装置21の作用について説明する。
超音波照射デバイス20と、超音波伝播液Aの入っていない空の容器3とを接続させた後に、一方の貫通孔22を介して容器3側面の開口から超音波伝播液Aを注入する。貫通孔22は2箇所に設けられているので、一方の貫通孔22を介して容器3内に超音波伝播液Aを注入し、他方の貫通孔22から容器3内に存在している空気を同時に放出させることができる。
【0044】
貫通孔22から注入された超音波伝播液Aは保持部材9によって開口部分を閉塞された状態の容器3内に充填されていく。したがって、超音波照射デバイス20に容器3を取り付ける際に、超音波伝播液Aを貯留した開放された容器3を取り扱う必要がなく、超音波伝播液Aがこぼれないように容器3を慎重に取り扱わずに済むという利点がある。すなわち、容器3を取り付ける際や持ち運ぶ際などでの取扱いが容易になる。
また、貫通孔22を凹部13内に開口させているので、凹部13によって捕捉した気泡17を貫通孔22を介して容器3外に逃がすことができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、貫通孔22の外側の開口を蓋部材(図示略)によって閉塞してもよい。このようにすることで、超音波照射装置21を傾けたときに、貫通孔22から超音波伝播液Aが外部にこぼれるのを防ぐことができる。
【0046】
また、本実施形態においては、貫通孔22が凹部13内に開口していることとしたが、貫通孔22が凹部13内に開口していなくてもよい。この場合、保持部9に容器3が取り付けられた状態で、一端が凹部13ではない端面12に開口し、他端が容器3外に開口していればよい。
【0047】
本実施形態では、気泡制限部として凹部13を例示したが、気泡制御部は端面12から突出する周壁状に形成されていてもよい。この場合、集束超音波素子8の周縁よりも外側の凹部13と同等の位置に全周にわたって配置すればよい。
容器3内の超音波伝播液A内に混入した気泡17が、超音波Uの伝播領域内に存在する場合に、超音波照射装置21を傾けて周方向のいずれか位置において周壁状の気泡制限部の外側に気泡を制限することができる。
【0048】
また、凹部13として、集束超音波素子8の半径方向外方に全周にわたって形成された周溝状のものを例示したが、これに代えて、周方向の一部に設けられた一つ以上の窪みからなる凹部13を採用してもよい。また、周方向に間隔をあけた複数の窪みからなる凹部13を採用してもよい。
【0049】
また、上記各実施形態に係る超音波照射デバイス2,20および超音波照射装置1,21においては、保持部材9の端面12に凹部13等の気泡制限部を設けることとしたが、容器3側に設けてもよいし、容器3および端面12の両方に設けてもよい。
また、図5に示されるように、保持部材9の端面12に、集束超音波素子8を保持する凸部9aを設け、集束超音波素子8を容器3の中央穴4a内に突出させることで、容器3と保持部材9の凸部9aとの間に環状の凹部13を形成することにしてもよい。図5に示す例では、容器3の先端の形状として、培養液を収容した培養容器18のセルの内面に嵌合する形状を採用している。
【0050】
また、本実施形態では超音波伝播液Aとして水を用いているが、他の液体や、診断で使われる超音波ゼリーのようなものを採用してもよい。また、超音波透過膜5は、高分子材料からなり、超音波伝播液Aとほぼ等しい音響インピーダンスを持つものであればよい。
【0051】
さらに、容器3の深さおよび形状は本実施形態に限らない。照射対象に合わせて、超音波透過膜5から照射対象までの距離を焦点距離から引いた分の深さの容器3および形状を選択し、交換することが可能である。
【0052】
保持部材9の嵌合外面10は液密に接続されていればよく、嵌合外面10に設けたOリング11の位置は、第1の実施形態の位置に限らない。また、嵌合部は、嵌合外面10に代えてネジを採用し、Oリング11に代えて、シールテープ等のシール材により締結されるネジ間の隙間を液密状態に密閉することにしてもよい。
【0053】
超音波透過膜5の位置および保持部材9が保持する集束超音波素子8の位置は、上記実施形態の位置に限定されるものではなく、集束超音波素子8の射出面7が超音波透過膜5と対向するように容器3と超音波照射デバイス2が接続されていればよい。
また、本実施形態では、貫通孔22の数を2つとしたが、1つ以上あればよい。その場合、超音波伝播液Aを貫通孔22を介して注入しながら、同じ貫通孔22を介して容器3の内部の空気を容器3外に放出させればよい。
【0054】
本実施形態では、容器3としては、変形の少ない硬質な材料からなるものを用いることとして説明したが、軟質な材料からなるものを用いてもよい。このようにする場合でも、容器3を観察対象に直接接触させる場合には、照射対象と密着するため照射距離が固定される。さらに、軟質材料からなる容器3を用いれば、柔軟な照射対象に密着させ易く、超音波Uの照射効率を向上させることができる。さらに、照射対象の表面を傷つけにくいという利点もある。
【0055】
また、本実施形態においては、超音波素子として、超音波伝播液A内において、射出面7から所定の距離だけ離れた一点に集束する超音波Uを射出する集束超音波素子8を例示したが、これに代えて、平面波からなる超音波Uを射出するものを採用してもよい。この場合においても、容器3が接触することとなる培養容器18や照射対象自体の形態に合わせた形態の容器3に交換して取り付け、その際に、伝播領域内から気泡を排除して、超音波Uを効率よく照射することができる。
【符号の説明】
【0056】
A 超音波伝播液
U 超音波
1,21 超音波照射装置
2,20 超音波照射デバイス
3 容器
5 超音波透過膜
7 射出面
8 集束超音波素子(超音波素子)
9 保持部材(保持部)
13 凹部(気泡制限部)
22 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に開放された開口を有するとともに、壁面の少なくとも一部に超音波を透過する超音波透過膜を有し、超音波を伝播する超音波伝播液を貯留する容器を着脱可能に取り付けて前記開口を閉塞する超音波照射デバイスであって、
前記容器を取り付けた状態で、該容器内において前記超音波透過膜に対向する位置に配置され、超音波を射出する射出面を備える超音波素子と、
前記容器を取り付けた状態で、該容器内に存在する気泡を前記超音波素子から射出される超音波の伝播領域外に制限する気泡制限部とを備える超音波照射デバイス。
【請求項2】
前記射出面を露出させた状態に前記超音波素子を保持するとともに、前記容器を着脱可能に取り付ける保持部を備え、
該保持部に、前記気泡制限部が設けられている請求項1に記載の超音波照射デバイス。
【請求項3】
前記気泡制限部が、凹部である請求項1または請求項2に記載の超音波照射デバイス。
【請求項4】
前記気泡制限部が、前記超音波素子の周縁よりも外側に全周にわたって配置されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の超音波照射デバイス。
【請求項5】
前記保持部に、容器が取り付けられた状態で、一端が容器内に開口し、他端が容器外に開口する貫通孔が設けられている請求項2に記載の超音波照射デバイス。
【請求項6】
前記気泡制限部が凹部であり、前記貫通孔が前記凹部内に開口している請求項5に記載の超音波照射デバイス。
【請求項7】
超音波を照射する射出面を有する超音波素子を備える超音波照射デバイスと、
該超音波照射デバイスに対して着脱可能に設けられ、一方向に開放された開口を有するとともに、壁面の少なくとも一部に超音波を透過する超音波透過膜を有し、超音波を伝播する超音波伝播液を貯留する容器とを備え、
前記超音波素子が、前記超音波照射デバイスを前記容器に前記開口を閉塞するように取り付けたときに、前記容器の前記超音波透過膜に対向するように配置され、
前記容器または前記超音波照射デバイスの少なくとも一方に、または、前記超音波照射デバイスと前記容器との間に、前記容器を前記超音波照射デバイスに取り付けて、前記容器内部を超音波伝播液によって満たしたときに、前記容器内に存在する気泡を前記超音波素子から射出される超音波の伝播領域外に制限する気泡制限部を備える超音波照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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