超音波照射装置
【課題】照射効率の高い超音波照射装置を提供する。
【解決手段】音響レンズ32の内周部を円弧状に形成するとともに、外周部を内周部に沿って屈曲した多面体で構成し、外周部の各面36A、36B、36Cに平板状に形成された超音波振動子34A、34B、34Cを取り付ける。これにより、音響レンズ32の厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【解決手段】音響レンズ32の内周部を円弧状に形成するとともに、外周部を内周部に沿って屈曲した多面体で構成し、外周部の各面36A、36B、36Cに平板状に形成された超音波振動子34A、34B、34Cを取り付ける。これにより、音響レンズ32の厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波照射装置に係り、特に超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や半導体の製造工程には、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板を高い清浄度で洗浄することが要求される工程がある。このような工程では、従来、薬品を用いた洗浄と超純水を用いたリンスを繰り返す方法が用いられていた。
【0003】
しかし、このような方法でガラス基板や半導体ウエハなどの基板を洗浄すると、薬品や超純水が大量に必要になるという問題があった。このため、近年は超音波を利用して基板を洗浄する方法が広く用いられており、その洗浄効果を高める方法も種々提案されている。たとえば、特許文献1では、洗浄液中に機能性のガスを溶解させ、この機能性のガスを溶解させた洗浄液に所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波を照射して、基板に供給する方法が提案されている。この方法によれば、洗浄液中の溶存ガスとキャビティの生成圧壊効果により、反応性の高いラジカルを発生させることができ、基板上の汚染物を効果的に分解除去することができる。
【0004】
ところで、このように超音波を利用して基板を洗浄する方法では、一般に平板状に形成された超音波振動子が用いられるが、このような平板状の超音波振動子は、発生面全域に超音波が照射されるため、洗浄対象領域以外にも超音波が照射されてしまい、照射効率が悪いという欠点があった。
【0005】
そこで、特許文献2では、平板状の超音波振動子に音響レンズを取り付け、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて基板に照射する方法が提案されている。この方法に用いられる音響レンズ1は、図11に示すように、下面が円弧状に形成されるとともに、上面が平坦に形成されており、超音波振動子2は、その平坦な上面に直接取り付けられていた。
【特許文献1】特許3521393号公報
【特許文献2】特開2006−110418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の音響レンズのように、レンズの中心部の厚さ(h)と周辺部の厚さ(H)が大きく異なると、効率よく超音波を照射することができないという欠点がある。すなわち、音響レンズは、レンズ中を伝播する超音波の波長λに応じて最適な厚さが存在し、この最適な厚さを外れると、超音波の透過性能が急激に低下するという性質がある。このため、従来の音響レンズのように、レンズの中心部の厚さと周辺部の厚さが大きく異なると、効率よく超音波を照射することができなくなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、照射効率の高い超音波照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、音響レンズの内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成される。そして、その音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置を提供する。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成される。このように、音響レンズの厚みの比率を超音波透過率で規定することにより、超音波の透過率の高い最適な形状の音響レンズを製作することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、音響レンズの内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、その音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さを均一にすることができ、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記音響レンズは、外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられるとともに、各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波の該音響レンズ中での波長の1/2の整数倍で形成されることを特徴とする請求項3に記載の超音波照射装置を提供する。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、音響レンズの外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられる。そして、その音響レンズの各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波のレンズ中の波長の1/2の整数倍で形成される。これにより、異なる周波数の超音波を効率よく照射することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、該音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、音響レンズの内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、その音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さを均一にすることができ、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、音響レンズの厚さ変化を少なくすることにより、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波照射装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0020】
図1は、本発明に係る超音波照射装置が組み込まれた超音波洗浄装置の一例を示す模式図である。
【0021】
この超音波洗浄装置10は、たとえば、液晶表示装置用の大型ガラス基板の洗浄装置として構成され、水平に搬送されるガラス基板Gの表面に超音波を照射した洗浄液を供給して、ガラス基板Gを洗浄する。ガラス基板Gの搬送は、たとえばコンベアによって行われ、そのコンベアの上方に設置された洗浄用ヘッド12から超音波が照射された洗浄液がカーテン状に供給される。
【0022】
図2、図3は、それぞれ洗浄用ヘッド12の概略構成を示す正面断面図と側面断面図である。
【0023】
同図に示すように、洗浄用ヘッド12は、先端がテーパ状に加工された横長の箱型形状に形成されており、その先端(下端)にスリット状の洗浄液吐出口14が形成されている。
【0024】
洗浄用ヘッド12の内部には、長手方向(基板の搬送方向と直交する方向)に沿って複数の超音波照射装置30が並列して取り付けられており、この超音波照射装置30から所定の集束焦点にライン状に集束させた超音波が、内部の洗浄液に照射される。このように、超音波を集束させることにより、集束焦点近傍で効率よく洗浄に寄与するラジカルを発生させることができる。したがって、この集束焦点は、ガラス基板Gの表面近傍に設定することが好ましい。この超音波照射装置30の構成については、後に詳述する。
【0025】
洗浄用ヘッド12の側面には、供給口12Aが形成されており、この供給口12Aから洗浄用ヘッド内に洗浄液が供給される。洗浄液には、たとえば超純水が用いられ、図示しない供給源から脱気膜モジュール20、ガス溶解膜モジュール22を介して供給口12Aに供給される。
【0026】
脱気膜モジュール20は、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気し、この脱気膜モジュール20で脱気した洗浄液にガス溶解膜モジュール22で機能性のガスを溶解させて供給口12Aに供給する。このように、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気後、機能性のガスを供給し、水中に溶存させることで、洗浄に寄与するガスの溶存量を増加させることができ、洗浄効率を一層向上させることができる。なお、溶存させるガスについては、特に限定されない。また、このように脱気した洗浄液に機能性のガスを溶解させる構成に代えて、洗浄液に空気を飽和させる構成としてもよい。
【0027】
供給口12Aから洗浄用ヘッド内に供給された洗浄液は、超音波照射装置30から集束超音波が照射されて、洗浄液吐出口14からカーテン状に吐出される。
【0028】
ガラス基板Gは、洗浄液吐出口14を直交するように搬送され、その洗浄液吐出口14の下部を通過する際、洗浄液吐出口14から吐出された洗浄液が表面に供給されて、表面が洗浄される。
【0029】
以上のように構成された超音波洗浄装置10の作用は次のとおりである。
【0030】
洗浄対象のガラス基板Gは、図示しないコンベアによって所定の搬送経路を水平に搬送される。そして、洗浄用ヘッド12の下部を通過する際、洗浄液吐出口14からカーテン状に吐出される洗浄液が表面に供給されて、表面が洗浄される。
【0031】
この洗浄液は、図示しない供給源から供給され、この供給源から供給された洗浄液が、脱気膜モジュール20で脱気後、ガス溶解膜モジュール22で機能性のガスが溶解されて洗浄用ヘッド12に供給される。洗浄用ヘッド12に供給された洗浄液は、超音波照射装置30よって集束超音波が照射された後、洗浄液吐出口14から吐出され、ガラス基板Gに供給される。
【0032】
図4は、超音波照射装置30の構成を示す側面図である。同図に示すように、超音波照射装置30は、ライン状の焦点Pを有する音響レンズ32と、その音響レンズ32に取り付けられた3枚の超音波振動子34A、34B、34Cとで構成されている。
【0033】
音響レンズ32は、全体として樋状に形成されており、内周部が所定の曲率半径の円弧状に形成されるとともに、外周部が、その内周部に沿って屈曲した多面体(本実施の形態では3面)で形成されている。
【0034】
外周部の各面36A、36B、36Cは、ライン状に形成された音響レンズ32の焦点Pを臨むようにして、左右対称に形成されている。そして、その各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0が、音響レンズ中における超音波(超音波振動子34A、34B、34Cから発生させた超音波)の波長λの1/2の整数倍で形成されている。
【0035】
超音波振動子34A、34B、34Cは、それぞれ平板状に形成されており、音響レンズ32の外周部の各面36A、36B、36Cの中央に取り付けられている。この超音波振動子34A、34B、34Cからは、それぞれ所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0036】
以上のように、本実施の形態の超音波照射装置30では、音響レンズ32の内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が多面体で形成される。そして、その多面体で形成された外周部の各面36A、36B、36Cに平板状に形成された超音波振動子34A、34B、34Cが取り付けられる。これにより、音響レンズ34の厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めることができる。すなわち、音響レンズは、レンズ中を伝播する超音波の波長λに応じて最適な厚さが存在し、この最適な厚さを外れると、超音波の透過性能が急激に低下するという性質があるが、本実施の形態の音響レンズ32のように外周部を多面体で構成することにより、厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めることができる。
【0037】
なお、レンズの厚さは、レンズ中を伝播する超音波(超音波振動子34A、34B、34Cから発生させた超音波)の波長λの1/2の整数倍に設定することで、最も効率よく超音波を透過させることができる。このため、本実施の形態の音響レンズ32では、外周部を構成する各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0が超音波の波長λの1/2の整数倍となるように形成されている。これにより、効率よく超音波を透過させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、音響レンズ32の外周部を3面で構成しているが、外周部を構成する多面体の数は、これに限定されるものではない。たとえば、図5に示すように、5面で構成し、各面に平板状の超音波振動子を取り付けるようにしてもよい。同様に6面、7面、…等で構成するようにしてもよい。
【0039】
また、超音波の透過効率をさらに向上させるためには、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0を音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成するとともに、全域で1%以上の透過率が得られるように形成することが好ましい。以下、この点について、さらに説明する。
【0040】
図6は、音響レンズの厚さに対する超音波の透過率を表したグラフである。このグラフは、同図に示した音響レンズの超音波透過率を表す算出式から求めたグラフである。
【0041】
このグラフに示されるように、音響レンズは、超音波の波長に応じて最適な厚さが存在し、その前後数mmの範囲(超音波透過範囲)でのみ超音波を透過する。
【0042】
したがって、音響レンズを製作する際は、外周部の各面の中心部での厚さが音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍となるように形成するととともに、全域でその厚さが超音波透過範囲内に収まるように、すなわち、全域で少なくとも1%以上の透過率が得られるように形成することで、その形状を最適化することができる。この場合、内周部の曲率等に応じて、外周部に形成する面の幅、数等を調整して、少なくとも1%以上の透過率が得られるように形成することができる。
【0043】
本実施の形態の音響レンズ32の場合、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部で最も厚さが薄くなり、各面36A、36B、36Cの両端部で最も厚さが厚くなる。したがって、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部の厚さh0を音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成するとともに、両端部において、少なくとも1%以上の透過率が得られる厚さh1で形成することにより、その形状を最適化することができる。そして、この両端部での厚さh1が、中心部での厚さh0に近づけば近づくほど、全体の透過性能を向上させることができ、最適な形状に形成することができる。
【0044】
このように、音響レンズの厚みの比率を超音波の波長に応じた透過性能で規定することにより、超音波の透過率の高い最適な音響レンズを作成することができる。
【0045】
図7は、本発明に係る超音波照射装置の第2の実施の形態の構成を示す側面図である。
【0046】
同図に示すように、本実施の形態の超音波照射装置40は、音響レンズ42が、円弧状に形成され、その外周部に円弧状に形成された一枚の超音波振動子44が取り付けられて構成される。
【0047】
音響レンズ42は、内周部と外周部が同じ曲率の円弧状に形成されており、その厚さh0が均一に形成されている。
【0048】
超音波振動子44は、音響レンズ42の外周部とほぼ同じ曲率の円弧状に形成されており、音響レンズ42の外周部に貼り付けられている。この超音波振動子44からは、所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0049】
以上のように構成された本実施の形態の超音波照射装置40によれば、音響レンズ42の厚さが均一に形成されるので、超音波の透過効率を最大限に高めることができ、超音波振動子44から発生させた超音波を効率よく照射することができる。
【0050】
なお、上記のように、音響レンズ42は、その厚さを音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍とすることで、透過率を最大にすることができるので、本実施の形態の音響レンズ42においても、その厚さh0は超音波振動子44から発する超音波の波長の1/2の整数倍に設定される。これにより、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【0051】
図8は、本発明に係る超音波照射装置の第3の実施の形態の構成を示す側面図である。
【0052】
同図に示すように、本実施の形態の超音波照射装置50は、音響レンズ52の外周部と内周部が共に多面体(本例では3面)で構成され、外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子54A、54B、54Cが取り付けられて構成される。
【0053】
音響レンズ52は、全体として樋状に形成されており、内周部の各面56A、56B、56Cは、ライン状に形成された音響レンズ52の焦点Pを臨むようにして、左右対称に形成されている。外周部の各面58A、58B、58Cは、それぞれ対応する内周部の各面56A、56B、56Cと平行に形成されており、これにより、音響レンズ52は、全体として厚さh0が均一に形成されている。
【0054】
超音波振動子54A、54B、54Cは、それぞれ平板状に形成されており、音響レンズ52の外周部の各面58A、58B、58Cの中央に取り付けられている。この超音波振動子54A、54B、54Cからは、それぞれ所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0055】
以上のように構成された本実施の形態の超音波照射装置50によれば、音響レンズ52の厚さ(外周部の各面と内周部の各面との間の厚さh0)が均一に形成されるので、超音波の透過効率を最大限に高めることができ、各超音波振動子54A、54B、54Cから発生させた超音波を効率よく照射することができる。
【0056】
なお、上記同様、音響レンズ52は、その厚さを音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍とすることで、透過率を最大にすることができるので、本実施の形態の音響レンズ52においても、その厚さ(外周部の各面と内周部の各面との間の厚さ)h0は、各超音波振動子54A、54B、54Cから発する超音波の波長の1/2の整数倍に設定される。
【0057】
したがって、外周部の各面58A、58B、58Cに設置する超音波振動子54A、54B、54Cの発生周波数が異なる場合は、図9に示すように、各面58A、58B、58Cに取り付けられる超音波振動子54A、54B、54Cの発生周波数λA、λB、λCに応じて、各面における厚さhA、hB、hCを変えて音響レンズ52を製作することが好ましい。すなわち、外周部の各面58A、58B、58Cの厚さhA、hB、hCは、そこに取り付けられる超音波振動子54A、54B、54Cの音響レンズ中の波長の1/2の整数倍に設定する。これにより、各超音波振動子54A、54B、54Cから発生された超音波を効率よく照射することができる。また、このように異なる周波数の超音波振動子を取り付けることにより、異なる周波数での洗浄を同時に行うことができ、洗浄効率も向上させることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、音響レンズ52の外周部を3面で構成しているが、外周部を構成する多面体の数は、これに限定されるものではない。たとえば、図10に示すように、5面で構成し、各面に平板状の超音波振動子を取り付けるようにしてもよい。同様に6面、7面、…等で構成するようにしてもよい。
【0059】
また、上記一連の実施の形態では、超音波洗浄装置に組み込まれた超音波照射装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではなく、他の機器に組み込まれる超音波照射装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】超音波洗浄装置の一例を示す模式図
【図2】洗浄用ヘッドの概略構成を示す正面断面図
【図3】洗浄用ヘッドの概略構成を示す側面断面図
【図4】超音波照射装置の構成を示す側面図
【図5】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図6】音響レンズの厚さに対する超音波の透過率を表したグラフ
【図7】超音波照射装置の第2の実施の形態の構成を示す側面図
【図8】超音波照射装置の第3の実施の形態の構成を示す側面図
【図9】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図10】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図11】従来の超音波照射装置の構成を示す側面図
【符号の説明】
【0061】
10…超音波洗浄装置、12…洗浄用ヘッド、14…洗浄液吐出口、20…脱気膜モジュール、22…ガス溶解膜モジュール、30…超音波照射装置、32…音響レンズ、34A〜34E…超音波振動子、36A〜36E…音響レンズの外周部の各面、40…超音波照射装置、42…音響レンズ、44…超音波振動子、50…超音波照射装置、52…音響レンズ、54A〜54C…超音波振動子、56A〜56B…音響レンズの内周部の各面、58A〜58B…音響レンズの外周部の各面
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波照射装置に係り、特に超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や半導体の製造工程には、ガラス基板や半導体ウエハなどの基板を高い清浄度で洗浄することが要求される工程がある。このような工程では、従来、薬品を用いた洗浄と超純水を用いたリンスを繰り返す方法が用いられていた。
【0003】
しかし、このような方法でガラス基板や半導体ウエハなどの基板を洗浄すると、薬品や超純水が大量に必要になるという問題があった。このため、近年は超音波を利用して基板を洗浄する方法が広く用いられており、その洗浄効果を高める方法も種々提案されている。たとえば、特許文献1では、洗浄液中に機能性のガスを溶解させ、この機能性のガスを溶解させた洗浄液に所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波を照射して、基板に供給する方法が提案されている。この方法によれば、洗浄液中の溶存ガスとキャビティの生成圧壊効果により、反応性の高いラジカルを発生させることができ、基板上の汚染物を効果的に分解除去することができる。
【0004】
ところで、このように超音波を利用して基板を洗浄する方法では、一般に平板状に形成された超音波振動子が用いられるが、このような平板状の超音波振動子は、発生面全域に超音波が照射されるため、洗浄対象領域以外にも超音波が照射されてしまい、照射効率が悪いという欠点があった。
【0005】
そこで、特許文献2では、平板状の超音波振動子に音響レンズを取り付け、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて基板に照射する方法が提案されている。この方法に用いられる音響レンズ1は、図11に示すように、下面が円弧状に形成されるとともに、上面が平坦に形成されており、超音波振動子2は、その平坦な上面に直接取り付けられていた。
【特許文献1】特許3521393号公報
【特許文献2】特開2006−110418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の音響レンズのように、レンズの中心部の厚さ(h)と周辺部の厚さ(H)が大きく異なると、効率よく超音波を照射することができないという欠点がある。すなわち、音響レンズは、レンズ中を伝播する超音波の波長λに応じて最適な厚さが存在し、この最適な厚さを外れると、超音波の透過性能が急激に低下するという性質がある。このため、従来の音響レンズのように、レンズの中心部の厚さと周辺部の厚さが大きく異なると、効率よく超音波を照射することができなくなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、照射効率の高い超音波照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0009】
請求項1に係る発明によれば、音響レンズの内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成される。そして、その音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記目的を達成するために、前記音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置を提供する。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成される。このように、音響レンズの厚みの比率を超音波透過率で規定することにより、超音波の透過率の高い最適な形状の音響レンズを製作することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、音響レンズの内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、その音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さを均一にすることができ、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記目的を達成するために、前記音響レンズは、外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられるとともに、各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波の該音響レンズ中での波長の1/2の整数倍で形成されることを特徴とする請求項3に記載の超音波照射装置を提供する。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、音響レンズの外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられる。そして、その音響レンズの各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波のレンズ中の波長の1/2の整数倍で形成される。これにより、異なる周波数の超音波を効率よく照射することができる。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記目的を達成するために、超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、前記音響レンズは、内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、該音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置を提供する。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、音響レンズの内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、その音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられる。これにより、音響レンズの厚さを均一にすることができ、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、音響レンズの厚さ変化を少なくすることにより、超音波の透過効率を高めて、照射効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波照射装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0020】
図1は、本発明に係る超音波照射装置が組み込まれた超音波洗浄装置の一例を示す模式図である。
【0021】
この超音波洗浄装置10は、たとえば、液晶表示装置用の大型ガラス基板の洗浄装置として構成され、水平に搬送されるガラス基板Gの表面に超音波を照射した洗浄液を供給して、ガラス基板Gを洗浄する。ガラス基板Gの搬送は、たとえばコンベアによって行われ、そのコンベアの上方に設置された洗浄用ヘッド12から超音波が照射された洗浄液がカーテン状に供給される。
【0022】
図2、図3は、それぞれ洗浄用ヘッド12の概略構成を示す正面断面図と側面断面図である。
【0023】
同図に示すように、洗浄用ヘッド12は、先端がテーパ状に加工された横長の箱型形状に形成されており、その先端(下端)にスリット状の洗浄液吐出口14が形成されている。
【0024】
洗浄用ヘッド12の内部には、長手方向(基板の搬送方向と直交する方向)に沿って複数の超音波照射装置30が並列して取り付けられており、この超音波照射装置30から所定の集束焦点にライン状に集束させた超音波が、内部の洗浄液に照射される。このように、超音波を集束させることにより、集束焦点近傍で効率よく洗浄に寄与するラジカルを発生させることができる。したがって、この集束焦点は、ガラス基板Gの表面近傍に設定することが好ましい。この超音波照射装置30の構成については、後に詳述する。
【0025】
洗浄用ヘッド12の側面には、供給口12Aが形成されており、この供給口12Aから洗浄用ヘッド内に洗浄液が供給される。洗浄液には、たとえば超純水が用いられ、図示しない供給源から脱気膜モジュール20、ガス溶解膜モジュール22を介して供給口12Aに供給される。
【0026】
脱気膜モジュール20は、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気し、この脱気膜モジュール20で脱気した洗浄液にガス溶解膜モジュール22で機能性のガスを溶解させて供給口12Aに供給する。このように、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気後、機能性のガスを供給し、水中に溶存させることで、洗浄に寄与するガスの溶存量を増加させることができ、洗浄効率を一層向上させることができる。なお、溶存させるガスについては、特に限定されない。また、このように脱気した洗浄液に機能性のガスを溶解させる構成に代えて、洗浄液に空気を飽和させる構成としてもよい。
【0027】
供給口12Aから洗浄用ヘッド内に供給された洗浄液は、超音波照射装置30から集束超音波が照射されて、洗浄液吐出口14からカーテン状に吐出される。
【0028】
ガラス基板Gは、洗浄液吐出口14を直交するように搬送され、その洗浄液吐出口14の下部を通過する際、洗浄液吐出口14から吐出された洗浄液が表面に供給されて、表面が洗浄される。
【0029】
以上のように構成された超音波洗浄装置10の作用は次のとおりである。
【0030】
洗浄対象のガラス基板Gは、図示しないコンベアによって所定の搬送経路を水平に搬送される。そして、洗浄用ヘッド12の下部を通過する際、洗浄液吐出口14からカーテン状に吐出される洗浄液が表面に供給されて、表面が洗浄される。
【0031】
この洗浄液は、図示しない供給源から供給され、この供給源から供給された洗浄液が、脱気膜モジュール20で脱気後、ガス溶解膜モジュール22で機能性のガスが溶解されて洗浄用ヘッド12に供給される。洗浄用ヘッド12に供給された洗浄液は、超音波照射装置30よって集束超音波が照射された後、洗浄液吐出口14から吐出され、ガラス基板Gに供給される。
【0032】
図4は、超音波照射装置30の構成を示す側面図である。同図に示すように、超音波照射装置30は、ライン状の焦点Pを有する音響レンズ32と、その音響レンズ32に取り付けられた3枚の超音波振動子34A、34B、34Cとで構成されている。
【0033】
音響レンズ32は、全体として樋状に形成されており、内周部が所定の曲率半径の円弧状に形成されるとともに、外周部が、その内周部に沿って屈曲した多面体(本実施の形態では3面)で形成されている。
【0034】
外周部の各面36A、36B、36Cは、ライン状に形成された音響レンズ32の焦点Pを臨むようにして、左右対称に形成されている。そして、その各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0が、音響レンズ中における超音波(超音波振動子34A、34B、34Cから発生させた超音波)の波長λの1/2の整数倍で形成されている。
【0035】
超音波振動子34A、34B、34Cは、それぞれ平板状に形成されており、音響レンズ32の外周部の各面36A、36B、36Cの中央に取り付けられている。この超音波振動子34A、34B、34Cからは、それぞれ所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0036】
以上のように、本実施の形態の超音波照射装置30では、音響レンズ32の内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が多面体で形成される。そして、その多面体で形成された外周部の各面36A、36B、36Cに平板状に形成された超音波振動子34A、34B、34Cが取り付けられる。これにより、音響レンズ34の厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めることができる。すなわち、音響レンズは、レンズ中を伝播する超音波の波長λに応じて最適な厚さが存在し、この最適な厚さを外れると、超音波の透過性能が急激に低下するという性質があるが、本実施の形態の音響レンズ32のように外周部を多面体で構成することにより、厚さ変化を少なくすることができ、超音波の透過効率を高めることができる。
【0037】
なお、レンズの厚さは、レンズ中を伝播する超音波(超音波振動子34A、34B、34Cから発生させた超音波)の波長λの1/2の整数倍に設定することで、最も効率よく超音波を透過させることができる。このため、本実施の形態の音響レンズ32では、外周部を構成する各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0が超音波の波長λの1/2の整数倍となるように形成されている。これにより、効率よく超音波を透過させることができる。
【0038】
なお、本実施の形態では、音響レンズ32の外周部を3面で構成しているが、外周部を構成する多面体の数は、これに限定されるものではない。たとえば、図5に示すように、5面で構成し、各面に平板状の超音波振動子を取り付けるようにしてもよい。同様に6面、7面、…等で構成するようにしてもよい。
【0039】
また、超音波の透過効率をさらに向上させるためには、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部での厚さh0を音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成するとともに、全域で1%以上の透過率が得られるように形成することが好ましい。以下、この点について、さらに説明する。
【0040】
図6は、音響レンズの厚さに対する超音波の透過率を表したグラフである。このグラフは、同図に示した音響レンズの超音波透過率を表す算出式から求めたグラフである。
【0041】
このグラフに示されるように、音響レンズは、超音波の波長に応じて最適な厚さが存在し、その前後数mmの範囲(超音波透過範囲)でのみ超音波を透過する。
【0042】
したがって、音響レンズを製作する際は、外周部の各面の中心部での厚さが音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍となるように形成するととともに、全域でその厚さが超音波透過範囲内に収まるように、すなわち、全域で少なくとも1%以上の透過率が得られるように形成することで、その形状を最適化することができる。この場合、内周部の曲率等に応じて、外周部に形成する面の幅、数等を調整して、少なくとも1%以上の透過率が得られるように形成することができる。
【0043】
本実施の形態の音響レンズ32の場合、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部で最も厚さが薄くなり、各面36A、36B、36Cの両端部で最も厚さが厚くなる。したがって、外周部の各面36A、36B、36Cの中心部の厚さh0を音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成するとともに、両端部において、少なくとも1%以上の透過率が得られる厚さh1で形成することにより、その形状を最適化することができる。そして、この両端部での厚さh1が、中心部での厚さh0に近づけば近づくほど、全体の透過性能を向上させることができ、最適な形状に形成することができる。
【0044】
このように、音響レンズの厚みの比率を超音波の波長に応じた透過性能で規定することにより、超音波の透過率の高い最適な音響レンズを作成することができる。
【0045】
図7は、本発明に係る超音波照射装置の第2の実施の形態の構成を示す側面図である。
【0046】
同図に示すように、本実施の形態の超音波照射装置40は、音響レンズ42が、円弧状に形成され、その外周部に円弧状に形成された一枚の超音波振動子44が取り付けられて構成される。
【0047】
音響レンズ42は、内周部と外周部が同じ曲率の円弧状に形成されており、その厚さh0が均一に形成されている。
【0048】
超音波振動子44は、音響レンズ42の外周部とほぼ同じ曲率の円弧状に形成されており、音響レンズ42の外周部に貼り付けられている。この超音波振動子44からは、所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0049】
以上のように構成された本実施の形態の超音波照射装置40によれば、音響レンズ42の厚さが均一に形成されるので、超音波の透過効率を最大限に高めることができ、超音波振動子44から発生させた超音波を効率よく照射することができる。
【0050】
なお、上記のように、音響レンズ42は、その厚さを音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍とすることで、透過率を最大にすることができるので、本実施の形態の音響レンズ42においても、その厚さh0は超音波振動子44から発する超音波の波長の1/2の整数倍に設定される。これにより、超音波の透過効率を最大限に高めることができる。
【0051】
図8は、本発明に係る超音波照射装置の第3の実施の形態の構成を示す側面図である。
【0052】
同図に示すように、本実施の形態の超音波照射装置50は、音響レンズ52の外周部と内周部が共に多面体(本例では3面)で構成され、外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子54A、54B、54Cが取り付けられて構成される。
【0053】
音響レンズ52は、全体として樋状に形成されており、内周部の各面56A、56B、56Cは、ライン状に形成された音響レンズ52の焦点Pを臨むようにして、左右対称に形成されている。外周部の各面58A、58B、58Cは、それぞれ対応する内周部の各面56A、56B、56Cと平行に形成されており、これにより、音響レンズ52は、全体として厚さh0が均一に形成されている。
【0054】
超音波振動子54A、54B、54Cは、それぞれ平板状に形成されており、音響レンズ52の外周部の各面58A、58B、58Cの中央に取り付けられている。この超音波振動子54A、54B、54Cからは、それぞれ所定周波数(たとえば、20kHz以上)の超音波が発生される。
【0055】
以上のように構成された本実施の形態の超音波照射装置50によれば、音響レンズ52の厚さ(外周部の各面と内周部の各面との間の厚さh0)が均一に形成されるので、超音波の透過効率を最大限に高めることができ、各超音波振動子54A、54B、54Cから発生させた超音波を効率よく照射することができる。
【0056】
なお、上記同様、音響レンズ52は、その厚さを音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍とすることで、透過率を最大にすることができるので、本実施の形態の音響レンズ52においても、その厚さ(外周部の各面と内周部の各面との間の厚さ)h0は、各超音波振動子54A、54B、54Cから発する超音波の波長の1/2の整数倍に設定される。
【0057】
したがって、外周部の各面58A、58B、58Cに設置する超音波振動子54A、54B、54Cの発生周波数が異なる場合は、図9に示すように、各面58A、58B、58Cに取り付けられる超音波振動子54A、54B、54Cの発生周波数λA、λB、λCに応じて、各面における厚さhA、hB、hCを変えて音響レンズ52を製作することが好ましい。すなわち、外周部の各面58A、58B、58Cの厚さhA、hB、hCは、そこに取り付けられる超音波振動子54A、54B、54Cの音響レンズ中の波長の1/2の整数倍に設定する。これにより、各超音波振動子54A、54B、54Cから発生された超音波を効率よく照射することができる。また、このように異なる周波数の超音波振動子を取り付けることにより、異なる周波数での洗浄を同時に行うことができ、洗浄効率も向上させることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、音響レンズ52の外周部を3面で構成しているが、外周部を構成する多面体の数は、これに限定されるものではない。たとえば、図10に示すように、5面で構成し、各面に平板状の超音波振動子を取り付けるようにしてもよい。同様に6面、7面、…等で構成するようにしてもよい。
【0059】
また、上記一連の実施の形態では、超音波洗浄装置に組み込まれた超音波照射装置に本発明を適用した場合を例に説明したが、本発明の適用は、これに限定されるものではなく、他の機器に組み込まれる超音波照射装置にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】超音波洗浄装置の一例を示す模式図
【図2】洗浄用ヘッドの概略構成を示す正面断面図
【図3】洗浄用ヘッドの概略構成を示す側面断面図
【図4】超音波照射装置の構成を示す側面図
【図5】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図6】音響レンズの厚さに対する超音波の透過率を表したグラフ
【図7】超音波照射装置の第2の実施の形態の構成を示す側面図
【図8】超音波照射装置の第3の実施の形態の構成を示す側面図
【図9】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図10】超音波照射装置の他の実施の形態の構成を示す側面図
【図11】従来の超音波照射装置の構成を示す側面図
【符号の説明】
【0061】
10…超音波洗浄装置、12…洗浄用ヘッド、14…洗浄液吐出口、20…脱気膜モジュール、22…ガス溶解膜モジュール、30…超音波照射装置、32…音響レンズ、34A〜34E…超音波振動子、36A〜36E…音響レンズの外周部の各面、40…超音波照射装置、42…音響レンズ、44…超音波振動子、50…超音波照射装置、52…音響レンズ、54A〜54C…超音波振動子、56A〜56B…音響レンズの内周部の各面、58A〜58B…音響レンズの外周部の各面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項2】
前記音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項3】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項4】
前記音響レンズは、外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられるとともに、各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波の該音響レンズ中での波長の1/2の整数倍で形成されることを特徴とする請求項3に記載の超音波照射装置。
【請求項5】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、該音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項1】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部が円弧状に形成されるとともに、外周部が内周部に沿って屈曲した多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項2】
前記音響レンズは、外周部の各面の中心部の厚さが、音響レンズ中の超音波の波長の1/2の整数倍で形成されるとともに、全域にわたって少なくとも1%以上の超音波の透過率が得られる厚さで形成されることを特徴とする請求項1に記載の超音波照射装置。
【請求項3】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部と外周部が互いに平行な多面体で形成され、該音響レンズの外周部の各面に平板状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【請求項4】
前記音響レンズは、外周部の各面に発生周波数の異なる超音波振動子が取り付けられるとともに、各面の厚さが、その面に取り付けられた超音波振動子から発生される超音波の該音響レンズ中での波長の1/2の整数倍で形成されることを特徴とする請求項3に記載の超音波照射装置。
【請求項5】
超音波振動子から発生させた超音波を音響レンズでライン状に集束させて照射する超音波照射装置において、
前記音響レンズは、内周部と外周部が、ほぼ同じ曲率の円弧状に形成され、該音響レンズの外周部に円弧状に形成された超音波振動子が取り付けられることを特徴とする超音波照射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−238004(P2008−238004A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79873(P2007−79873)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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