超音波画像処理方法および超音波画像処理装置
ドプラスペクトルの最大周波数が求められ、エイリアシングの検出に利用される。エイリアシングが発生すると、周波数限界を超えた周波数が、一方の周波数領域から他方の周波数領域へ変化する。エイリアシングが検出された場合、その後のエイリアシングを防止するためにゼロ周波数ベースラインがシフトされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超音波画像の分野に関する。具体的には、本発明の実施形態は、スペクトル画像のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、種々の臓器、心臓、肝臓、胎児、血管を画像化するのに使用される。心血管疾病の診断には、血流速度の測定にスペクトルドプラが通常使用される。パルススペクトルドプラ法が通常使用されるが、これは、空間識別能がなく超音波ビームに沿ってすべての信号をサンプリングする連続波(CW)法と比較して、血管内での速度のサンプリングができる空間サンプリング能を有するためである。
【0003】
ドプラ法において、超音波は、パルス繰り返し周波数(PRF)で送信され、血流速度は、受信超音波信号の周波数の偏移(ドプラ偏移周波数)として検知される。受信超音波は、送信超音波周波数と同一の周波数の同相(0度)参照信号および直交(90度)参照信号と混合される。高周波成分(すなわち、二次高調波)に低域フィルタを施した後、ベースバンド信号のみが得られる。ベースバンド信号に対して、ウォールフィルタ(例えば、高域通過フィルタ)をかけ、組織や血管壁などのゆっくりと動く組織から強力なクラッタノイズを除去して複素I−Pドプラ信号が得られる。
【0004】
一般的に、I−Qドプラ信号は、高速フーリエ変換(FFT)などのスペクトルアナライザへ入力され、血流を表すドプラスペクトルが得られる。ドプラ偏移周波数と血流速度は、以下の関係にある。
【0005】
【数1】
【0006】
ただし、Δfはドプラ偏移周波数、ftは送信周波数、vは血流速度、θは、超音波ビーム方向と速度ベクトル間の角度、cは音速である。
【0007】
128点、256点、または512点高速フーリエ変換(FFT)がよく使用される。ドプラ信号は、パルス超音波(およびサンプリング)法によって取得されるため、サンプリング理論によって最大周波数限界が決定される。最大周波数は、一般的に、パルス繰り返し周波数(PRF)またはfPRFの2分の1である。複素I−Qドプラ信号にFFTを施すため、負方向の血流速度は負の周波数領域に現れる。したがって、ドプラスペクトルのFFT出力は、負速度に相当する負の周波数を有する。こうして、ドプラスペクトルは、通常、周波数において−(fPRF/2)から(fPRF/2)の範囲を有する。ただし、負の周波数範囲は、(fPRF/2)より大きいfPRF以下の正の周波数を表すよう割り当てられる。逆に、正の周波数範囲は、−(fPRF/2)より小さい−fPRF以下の負の周波数を表すように割り当てられる。ドプラスペクトルモードにおいては、これは、ベースラインシフトによって実施される。ベースラインシフトは、ゼロ周波数ベースラインの位置を正方向または負方向に移動する。こうして、ドプラスペクトルは、ベースラインシフトによって、極端な場合では、−fPRFから0までの範囲、または0からfPRFまでの範囲を有する。周波数範囲の全体は、常にfPRFである。
【0008】
心血管系への適用では、しばしば、血流速度がこれらの最大速度を上回り、エイリアシングとなる。エイリアシングが起きると、周波数スペクトルは、正の最大周波数で折り返して、最大限界を超過した周波数が負の周波数に現れた状態か、または、負の最大周波数で折り返して、負の最大限界を超過した周波数が正の周波数に現れた状態となる。エイリアシングによって、血流速度判定は困難になる。
【0009】
逆に、fPRFが大きすぎて、血流速度を正確に測定できないこともありうる。最大血流速度(最大周波数)が、最大周波数限界のたった10分の1程度になることもあり、表示スペクトルが小さくなりすぎて正確に測定できない。
【0010】
超音波応用の多くでは、ユーザが、血流速度に対応するPRFおよび/または周波数スペクトルスケールで速度ゼロに相当するゼロ周波数位置であるベースラインを、手作業で調節する。しかし、これらの設定を調節する際に、ユーザは、診断に費やしたほうがよいであろう時間を浪費することになる。
【0011】
これらの問題を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、ドプラスペクトルの最大周波数を取得しエイリアシングの検出に利用するシステムおよび方法を有することが望ましいことを発見した。エイリアシングが生じた場合、最大周波数が、正の周波数から負の周波数へ、または負の周波数から正の周波数へ折り返す。エイリアシングが検出された場合、ベースラインをシフトして折り返された周波数の大きさを正しい周波数極性へ調整する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様では、ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正する方法が提供される。本発明のこの態様による方法は、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、または、負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、エイリアシングが検出された場合に、ドプラスペクトルの負の周波数領域と正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトすること、を含む。
【0014】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法が提供される。本発明のこの態様による方法は、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、最高値highfmaxと最低値lowfminとを比較して、最大周波数fmaxと最小周波数fminが双極であるか、または、負もしくは正の単極であるかを判断し、双極の場合には、最高の最大周波数highfmaxと、最低の最小周波数lowfminとの間の差に基づいて周波数スパンを決定し、周波数スパンと現在のPRF設定値とを比較し、周波数スパンが現在のPRF設定値よりも大きい場合、PRF設定値を増加し、周波数スパンが現在のPRF設定値の所定の分数よりも小さい場合、PRF設定値を低減し、周波数スパンが現在のPRF設定値よりも小さく、かつ、現在のPRF設定値の所定の分数よりも大きい場合、現在のPRF設定値を使用し、正の単極の場合には、最高の最大周波数highfmaxと現在の正の最大周波数限界b1fPRFとを比較し、最高の最大周波数highfmaxが現在の正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合には、現在のPRF設定値を、最高の最大周波数highfmaxに相当する設定まで増加し、最高の最大周波数highfmaxが現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合には、最高の最大周波数highfmaxと低レベル閾値b2b1fPRFとを比較し、最高の最大周波数highfmaxが低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合は、PRFを、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで低減し、負の単極の場合には、最低の最小周波数lowfminの絶対値と現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合は、現在のPRF設定値を、最低の最小周波数lowfminの絶対値に相当する設定へ増加し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、最低の最小周波数lowfminの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、PRFを最低の最小周波数lowfminの絶対値と等しくなるまで低減すること、を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法が提供される。本発明のこの実施形態による方法では、初期パルス繰り返し周波数を設定し、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、最高の最大値highfmaxの絶対値と最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、正の周波数領域または負の周波数領域の優勢を判断し、最高の最大値highfmaxが大きい場合、正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、最高の最大周波数highfmaxを、正の最大周波数限界b1fPRFと正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較して、最高の最大周波数highfmaxが正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、正の最大周波数限界b1fPRFが最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、PRFを低減し、また、最高の最大周波数highfmaxが正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、PRFは、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで増加し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が大きい場合、負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、最低の最小周波数lowfminの絶対値を、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値が最低の最小周波数lowfminの絶対値となるか、または、正の周波数限界でエイリアシングが生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、PRFは低減され、最低の最小周波数lowfminの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、PRFを、最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで増加させること、を含む。
【0016】
本発明の別の態様では、ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正するシステムが提供される。本発明のこの実施形態によるシステムでは、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算する手段と、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、エイリアシングが検出された場合に、ドプラスペクトルの負の周波数領域と正の周波数領域とを分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする手段と、を備える。
【0017】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定するシステムが提供される。本発明のこの実施形態によるシステムでは、初期パルス繰り返し周波数を設定する手段と、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算する手段と、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込む手段と、最高の最大値highfmaxの絶対値と最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して正の周波数領域または負の周波数領域の優勢を判断する手段と、を備え、最高の最大値highfmaxが大きい場合、正の周波数領域が優勢として、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、超音波診断システムは、さらに、最高の最大周波数highfmaxを正の最大周波数限界b1fPRFと正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する手段であって、最高の最大周波数highfmaxが正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、正の最大周波数限界b1fPRFが最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、またはエイリアシングが負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまでPRFが低減され、最高の最大周波数highfmaxが正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまでPRFが増加される手段を備え、最低の最小周波数lowfminの絶対値が大きい場合、負の周波数領域が優勢として低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、超音波システムは、さらに、最低の最小周波数lowfminの絶対値を、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較する手段であって、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値が最低の最小周波数lowfminの絶対値となるか、または、エイリアシングが正の周波数限界で生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまでPRFが低減され、最低の最小周波数lowfminの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、最低の最小周波数lowfminと等しくなるまでPRFは増加される手段、を備える。
【0018】
本発明の一つまたは複数の実施態様の詳細を添付の図面および以下の説明において説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エイリアシングを示す最大ドプラ周波数を示す例示的な図である。
【図2A】周波数スペクトルの最大ドプラ周波数をパーセントとして示す例示的な図である。
【図2B】周波数スペクトルの最小ドプラ周波数をパーセントとして示す例示的な図である。
【図3】修正ベースラインシフト後の最大ドプラ周波数を示す例示的な図である。
【図4】周波数スペクトルの最小周波数、平均(mean)周波数、最大周波数を示す例示的な図である。
【図5A】ドプラスペクトルの双極の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図5B】ドプラスペクトルの単極の正の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図5C】ドプラスペクトルの単極の負の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図6】自動ベースラインシフト方法を説明する例示的なフローチャートである。
【図7】自動PRF設定およびベースラインシフト方法を説明する例示的なフローチャートである。
【図8】固定ベースライン法を使用した自動PRF設定を説明する例示的なフローチャートである。
【図9】自動ベースラインシフトおよびPRF設定付きの超音波システムを示す図である。
【図10】最大周波数および最小周波数を示す経時的なドプラスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に説明するが、図面全体を通じて同一番号は同一要素を表している。本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明において説明された実施例の詳細、または、図面に図示された実施例の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態でも可能であり、種々の応用および種々の用途において実行または実施することが可能である。また、本明細書で使用される用語の使用方法や専門用語は、説明を目的としたものであって、制限的なものとしてみなすべきではないことを理解されたい。本明細書では、「含む」、「備える」、「有する」およびこれらの変化形は、それら以降に記載される項目、およびその同等物、さらに追加項目を包含することを意味する。「搭載した」、「接続した」、「連結した」という用語も広義に使用され、直接的および間接的な、搭載、接続、連結を包含する。さらに「接続した」および「連結した」は、物理的あるいは機械的な接続または連結に制限されるものではない。
【0021】
本発明は、図面において説明または含意されたどんな特定のソフトウェア言語にも限定されないことを留意されたい。本願の実装において種々の代替のソフトウェア言語を用いてもよいことは当業者には明らかである。当分野ではよくあることだが、構成要素および項目の中にはハードウェア要素であるかのように図示および説明されるものがあることを理解されたい。しかし、当業者には、この詳細な説明を読めば、少なくともある実施形態においては、本方法および本システムにおける構成要素がソフトウェアまたはハードウェアのいずれかで実装されることが理解されるだろう。
【0022】
図9は、自動ベースラインシフトおよびPRF設定機能付きの超音波診断システム901を示している。図6、7、8はシステム901によって使用される様々な方法を説明するフローチャートである。超音波信号は、送信/受信スイッチ907を介して、送信器905により駆動される超音波プローブ903から送信される。受信器909は、スイッチ907を介して受信超音波信号をプローブ903から受信し、その信号911を処理する。
【0023】
処理された信号913は、ドプラスペクトルプロセッサ915と、カラーフロープロセッサ921と、Bモード画像プロセッサ923とに結合される。ドプラスペクトルプロセッサ915は、ドプラ信号プロセッサ917とスペクトルアナライザ919とを含み、ドプラフローの速度信号を処理してドプラスペクトル925を計算して出力する。カラーフロープロセッサ921は、受信信号913を処理して、速度、パワー、分散信号927を計算して出力する。Bモード画像プロセッサ923は、受信信号913を処理して、Bモード画像929か、または振幅検出によりその信号の振幅を計算して出力する。
【0024】
ドプラスペクトル信号925と、カラーフロー処理信号(速度、パワー、分散)927と、Bモード処理信号929とが、これらの信号を走査用信号に変換するスキャンコンバータ931に接続されている。スキャンコンバータ931の出力は、超音波画像を表示するディスプレイモニタ933に接続される。
【0025】
処理済み信号913は、ドプラフロー信号を時間領域で演算するドプラ信号プロセッサ917に接続される。ドプラフロー信号は、時間領域のドプラ信号をそれらのスペクトル周波数成分925に変換するスペクトルアナライザ919に接続される。周波数成分か、またはスペクトル925が、パルス繰り返し周波数(PRF)生成器935に間接的に接続される。PRF生成器935は、PRF生成器935に接続されている手動ユーザ入力装置937からスイッチ939を介した入力、または、自動ベースラインシフト/PRF設定プロセッサ941からの入力にしたがって、パルス繰り返し周波数(PRF)を生成する。自動ベースラインシフト/PRF設定プロセッサ941は、PRF設定943と、ベースライン配置945と、DSP、FPGA、ASIC、または個別要素として実装されるプロセッサ947とを含む。プロセッサ947は、ベースラインシフトおよび/またはPRF生成器935に接続されるPRF設定を得る。ベースラインシフトは、スイッチ959を介してユーザ入力装置961によって制御されるか、または、スイッチ959を介してベースライン配置装置945によって自動的に制御される。スイッチ959は、ユーザに対して、ユーザ入力モードまたは自動モードを選択させる。
【0026】
プロセッサ947は、ドップラスペクトル925から最大周波数および最小周波数949を計算し、エイリアシングおよび偏差951を検出し、最大周波数953と最小周波数955と平均周波数957とをトラッキングする、エンジンを含む。プロセッサ947は、ドプラ周波数スペクトル925を分析することによって画像化を最適化し、PRF設定943と、必要に応じてベースラインゼロ周波数シフト945とを生成する。
【0027】
図6を参照する。超音波システム901は、使用に際して、心臓、頚動脈、肝臓などの画像化といった具体的な適用には、既定の(default)PRFを使用して血流ドプラスペクトルを観察(ステップ602)してもよい。最大PRFは、超音波システムの最高周波数範囲または最高速度範囲である。
【0028】
ドプラスペクトル画像出力925は、典型的には、図10に示されるような経時的に変化する周波数スペクトルか、または輝度としてのパワーを伴った周波数(縦軸)対時間(横軸)である。ドプラスペクトルの輝度は、その周波数でのスペクトルのパワーを示す。最大ドプラ周波数949は、ドプラスペクトル925から計算され、図10に示されるように最大周波数の曲線として経時的にトラッキングされる。
【0029】
最大周波数エンジン949は、最大周波数をパーセンタイル周波数として計算する。ドプラスペクトルの全領域は、字式の分母において示されるように、全周波数のパワーの積分によって最初に求められる。
【0030】
【数2】
【0031】
ただし、pは、スペクトルのパワー(または、スペクトルの振幅a、または、累乗パワーab(bは実数)、または、振幅から導かれるあらゆる信号)である。99パーセントまたは99.9パーセントなどの率(percentile)は、パーセンタイル領域を生じさせている全領域(すなわち、数式(2)の分母)に適用される。第2積分(数式(2)の分子)は、0周波数で開始し積分がそのパーセンタイル領域に到達すると終了する。最大周波数は、積分が停止した周波数である。スペクトルエイリアシングの場合は、たとえその積分(数式(2)の分子)が、最大周波数範囲に到達していても、数式(2)は満たされない。この場合、積分は、負の最大周波数範囲へと継続され、数式(2)が満たされるまで負の周波数範囲において0周波数へと向かって進んでいく。
【0032】
図2Aは、所与の時間における周波数対パワー図としてのドプラスペクトルを示している。図2Aは、99パーセントの周波数が最大周波数値fmaxを表し、その正および負の周波数範囲間のスペクトルサンプル(ステップ604)は、−(1−b1)fPRFからb1fPRFに限定されるドプラスペクトルを示している。ここで、b1は、0から1の間の分数であり、0周波数ベースラインの位置、および正と負の周波数範囲である−(1−b1)fPRFから0と、0からb1fPRFとを決定する。b1=(1/2)の場合、正と負の周波数範囲は、等しくなる。各スペクトルサンプルの最大周波数値fmaxは、曲線のように経時的にトラッキングされる。
【0033】
ノイズ除去技術を使用して、ドプラスペクトル925からノイズを除去してもよい。ドプラスペクトルのパワーは、ノイズ除去利得制御によって抑制される。パワースペクトルを、振幅スペクトルa、累乗パワーab(bは実数)、または、振幅から導かれるいかなる信号で代替しても良い。
【0034】
図1は、折り返しの生じた最大周波数fmaxのカーブ101を示している。最大周波数曲線101は、ゼロ周波数ベースライン103に関して正又は負の周波数方向において移動する。
【0035】
しかし、最大周波数fmaxが、PRF周波数範囲制限、すなわち、正の最大周波数限界b1fPRFまたは負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFを超過した場合、周波数制限を超える周波数が、b1fPRFにおいて表されるように逆の最大周波数領域に変化する(折り返す)。この突然の極性の変化は、エイリアシング検知器および偏差エンジン951によってエイリアシングとして検知される(ステップ606、610)。極性の変化は、エイリアシングがなくても、正から負への周波数遷移105が生じるベースラインの近くで自然に発生することもある。
【0036】
エイリアシングが検出されると、正の最大周波数範囲制限b1fPRF、または負の最大周波数範囲制限−(1−b1)fPRFから折り返し周波数の大きさに相当する最大周波数偏差faが、偏差エンジン951によって計算される。図1では、負の最大周波数範囲−(1−b1)fPRFから最大偏差faが計算される。PRFが小さすぎ、エイリアシングが発生した場合は、1以上の周波数極値が、fa1、fa2、fa3などとエイリアシング(周波数折り返し)となる。エイリアシング検出器や偏差エンジン951は、各エイリアス(周波数折り返し)を検知して、観察期間中に折り返しが生じた全ての周波数を比較し、最大周波数偏差faを見つける。
【0037】
最大周波数偏差faは、正、負の周波数のどちらが折り返しているかによって、正、負のいずれかの周波数方向においてベースライン103をオフセットするために使用される。所定の周波数安全マージン(safety margin)fsを最大偏差faに加算して、ベースライン103のシフトの実施後に、周波数が正の最大周波数限界b1fPRFまたは負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFより大きくならないようにしてもよい。ベースラインシフトは、次式により決定される。
ベースラインシフト=±(fa+fs)・・・(3)
【0038】
数式(3)における記号は、ベースラインシフトの方向を示している。マイナスは、負の周波数方向へのベースラインシフトを示し、プラスは、負の周波数方向へのベースラインシフトを示す。
【0039】
図3は、図1での折り返しの生じた最大周波数fmaxの曲線101に対するベースラインシフトの結果を表している。ベースラインシフト301において、正または負の周波数方向にベースラインを調整して、折り返しのない最大周波数fmaxの曲線303を得る。図1の最大周波数偏差faは負の周波数領域で検出されたため、数式(3)より方向は負となり、ベースライン103は、数式(3)の最大周波数偏差faと所定の周波数安全マージンfsとを含む計算されたベースラインシフト303だけ偏位される(ステップ608)。図6の方法では、ベースラインを調整して一定のPRF設定を維持する。
【0040】
ベースラインがシフトされると、正および負の周波数範囲は、ベースラインシフトとともに変化する。ベースラインシフト後、正の最大周波数限界は、b1fprf+fa+fs1となり、負の最大周波数は、−(1−b1)fprf+fa+fs1となる。例えば、図1に対して計算されたベースラインシフトが、数式(3)において、−(1/4)fprfとなった場合、図3のベースライン301は、(1/4)fprfだけ、負の周波数方向にシフトされる。現在のPRF分数b1が、(1/2)の場合、つまり負および正の周波数範囲が、−(1/2)fprf〜0、0〜(1/2)fprfの場合、新しい負の周波数範囲は、−(1/4)fprf〜0となり、新しい正の周波数範囲は、0〜(3/4)fprfとなる。ベースラインシフトはPRF比b1を調整して、次式となる。
b1newfprf=b1currentfprf−「ベースラインシフト」・・・(4)
【0041】
上述の最大周波数fmaxを使用したベースラインシフトは、正の周波数限界で生じたエイリアシングを修正するためのものである。この方法は、最小周波数fminを使用することにより負の周波数限界にも適用される。最小周波数fminは、パーセンタイル値として算出される。ドプラスペクトルの全領域は、以下の式の分母において示されるように、全周波数におけるパワーの積分によって、最初に求められる。
【0042】
【数3】
【0043】
ただし、pは、スペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。99パーセントあるいは99.9パーセントなどの率(パーセンタイル)は、パーセンタイル領域を生じさせている全領域に適用される。第2積分(数式(5)の分子)は、図2Bに示されるように、0周波数で開始し、積分がそのパーセンタイル領域に到達すると終了する。最大周波数は、積分が停止した周波数である。エイリアシングが負の最大周波数を含む場合には、最大周波数を使用したベースラインシフトは、単に、最小周波数によるベースラインシフトへ変更される。負の周波数領域でのエイリアシングは、最小周波数が、負の最大周波数限界から正の最大周波数限界へ変化した(折り返した)場合に検出される。折り返しの生じた部分は、正の最大周波数範囲でのエイリアシングに対して前述されたように、反対方向へのベースラインシフトによって修正される。
【0044】
さらに、最大周波数および最小周波数は、以下の代替方法において求められてもよい。
【0045】
最初に、平均周波数fmeanは、以下を使用して求められる。
【0046】
【数4】
【0047】
次に、最大周波数fmaxと最小周波数fminを以下のように計算する。
【0048】
【数5】
【0049】
ただし、fは周波数、pは、ドプラスペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。
【0050】
図7は、PRF設定の調整も含むベースラインシフトの変形例を示したフローチャートである。最大PRFを使用して、エイリアシングの危険を冒すことなく、血流ドプラスペクトルを最初に観察してもよい(ステップ702)。または、所定のPRFを最初に使用してもよい。
【0051】
上記と同様、ドプラ最大周波数fmaxを計算する場合には、最小ドプラ周波数fminと平均ドプラ周波数fmeanとが、最大エンジン953と、最小エンジン955と、平均エンジン957によって計算される。図4は、そのスペクトルの、計算された最大周波数値fmaxと、最小周波数値fminと、平均周波数値fmeanとを特定するドプラパワースペクトルを示す。各スペクトルサンプルの、最大周波数値fmaxと、最小周波数値fminと、平均周波数値fmeanは、曲線のように経時的にトラッキングされる。
【0052】
平均周波数fmeanは、以下のようにスペクトル925からの第1モーメントとして以下のように最初に計算される。
【0053】
【数6】
【0054】
ただし、fは周波数、pはドプラスペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。
【0055】
平均周波数fmeanが、スペクトルから計算された後、最大ドプラ周波数fmax、最小ドプラ周波数fminが計算される。
【0056】
最大周波数fmaxおよび最小周波数fminは、算出された平均周波数fmeanからスペクトルのパーセント値として計算される。例えば、平均周波数fmeanから正の周波数方向に49.9パーセントの最大周波数fmaxが、平均周波数fmeanから計算される。最小周波数fminは、負の方向において同様に計算される。
【0057】
同時に、最大周波数fmaxおよび最小周波数fminにより、次式のように、99.8パーセントの全スペクトルパワーの合成境界(combined boundary)を設定する。
【0058】
【数7】
【0059】
平均周波数値fmeanは、スペクトルの加重平均周波数であるため、最大周波数値fmaxおよび最小周波数値fminは、パーセンタイル値が50パーセント未満である限りにおいては、数式(10)と数式(11)とを使用して最大エンジン953および最小エンジン955によって計算される。あるいは、最大周波数値および最小周波数値は、それぞれ、数式(2)と数式(5)を使用して計算されてもよい。
【0060】
図5A、図5B、図5Cは、時間経過後の計算された最大周波数値fmax(501)および最小周波数値fmin(503)を示す。これらの曲線は、ドプラスペクトル境界の高境界であるhighfmax505と、低境界であるlowfmin507とを決定している。最大ドプラ周波数曲線fmaxの最高値highfmax505と、最小ドプラ周波数曲線fminの最低値lowfminが、取り込まれ、記録される。
【0061】
観察期間中に、最大周波数曲線fmaxおよび最小周波数曲線fminが、(図1のように)エイリアシングを生じた場合、エイリアシング検出器および偏差エンジン951は、各折り返しの生じた周波数に発生した偏差を、それぞれの切り取られた(clipped)頂点へ足すことによって、最大周波数曲線fmaxおよび最小周波数曲線fminをトラッキングし続ける。クリッピングが、正および負の最大周波数範囲の両方で検出された場合、現在のPRF設定は小さすぎることになる。
【0062】
全ての周波数成分が、正の周波数領域(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には、修正された折り返し周波数を含む)に存在する場合、スペクトルは単極で正となる。全ての周波数成分が、負の周波数領域(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には修正されたエイリアシング周波数を含む)に存在する場合、スペクトルは単極で負となる。周波数成分が、(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には、エイリアシングを修正した後)正および負の周波数領域の両方に存在する場合、スペクトルは双極となる。
【0063】
図5Aは、双極のスペクトルを示している。最高の最大周波数highfmax505と、最低の最小周波数lowfmin507との間の周波数スパン(frequency span)509が計算され、観察期間に基づいた最良の画像表示のために新しいPRFを決定するために使用される。次式で得られる周波数スパンが、観察された血流記録の最小PRFであると考えられる。
周波数スパン=(highfmax)−(lowfmin)・・・(12)
周波数範囲509を調整するために、周波数安全マージンfs1、fs2を追加して、スペクトルと最大周波数範囲との間に適度のマージンを確保してもよい。
調整済み周波数スパン=((highfmax)−(lowfmin))+fs1+fs2・・・(13)
【0064】
調整済み周波数スパンは、現在のPRF設定と比較される(ステップ706)。調整済み周波数スパンが、現在のPRF設定943よりも大きい場合には、
調整済み周波数スパン>現在のPRF・・・(14)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって調整済み周波数スパンに対応する設定へ増加され、PRF生成器935へ出力される(ステップ718)。調整された周波数スパンが、現在のPRF設定よりも小さい場合には、エイリアシングは生じていないものの現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0065】
調整済み周波数スパンは、さらに、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するために、現在のPRF設定の分数と比較される。PRF設定が血流速度に対して大きすぎる場合、ドプラスペクトル925の表示が、血流速度を正確に表すには小さくなりすぎる。
【0066】
現在のPRFの比(fraction)は、低レベル閾値として使用される。0と1との間の所定の数、例えば、(1/2)が、その比として使用されてよい。
(比)×(現在のPRF)<調整済み周波数スパン<現在のPRF・・・(15)
【0067】
調整済み周波数スパンが、分数PRFより小さい場合、ドプラスペクトル画像は、その大きさを増加させる必要がある(ステップ708)。従って、PRF943を調整済み周波数スパンへと低減して、PRF生成器935へ出力する(ステップ716)。PRF設定は、調整済み周波数スパンが、現在のPRF設定より小さくかつ比PRFより大きくなるまで低減または増加される。
【0068】
図5Bは、単極で正のスペクトルを示している。この場合、最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものが、新しいPRFを決定するために使用される。最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものを、現在の正の最大周波数限界b1fPRFと比較する。最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRF943より大きい場合、
(highfmax+fs1)>b1fPRF・・・(16)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって、最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものに対応する設定へと増加され、PRF生成器935へと出力される。最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合、エイリアシングは生じないものの、現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0069】
最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものを、さらに、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するため、現在の正の最大周波数限界b1fPRFの分数と比較する。PRF設定が、血流速度を測定するには小さすぎる場合、エイリアシングが生じる。しかし、PRF設定が、血流速度に対して、大きすぎる場合には、ドプラスペクトル925の表示は小さくなりすぎ、血流速度を正確に表すことが不可能となる。
【0070】
正の低レベル閾値b2b1fPRF(ただしb2は、0から1の間の比)が、計算され、最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものと比較される。
b2b1fPRF<(highfmax+fs1)・・・(17)
【0071】
最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合は、ドプラスペクトル画像は、サイズを増加させる必要がある。従って、PRF943を、最高の最大周波数に周波数安全マージンを加えたもの、つまり、highfmax+fs1へと低減して、PRF生成器935へ出力する。PRF設定は、最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さく、かつ正の低レベル閾値b2b1fPRFよりも大きくなるまで低減または増加される。
【0072】
図5Cは、単極で負のスペクトルを示している。この場合、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものが、新しいPRFを決定するのに使用される。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものを、現在の負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFと比較する。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRF943の絶対値より大きい場合、
(|low fmin|+fs2)>(1−b1)fPRF・・・(18)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値に対応する設定へと増加され、PRF生成器935へと出力される。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、エイリアシングは生じないものの、現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0073】
最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値を、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するため、さらに、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値の分数と比較する。PRF設定が、血流速度を測定するには小さすぎる場合、エイリアシングが生じる。しかし、血流速度に対してPRF設定が大きすぎる場合には、ドプラスペクトル925の表示は、小さくなりすぎ、血流速度を正確に表すことが不可能となる。
【0074】
負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRF(ただしb2は、0から1の間の分数)が、計算され、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたもの、と比較され、次に、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFと比較される。
b2(1−b1)fPRF<(|low fmin|+fs)・・・(19)
【0075】
最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値の分数より小さい場合は、ドプラスペクトル画像は、サイズを増加させる必要がある。従って、PRF943を、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値へと低減して、PRF生成器935へ出力する。PRF設定は、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さく、かつ負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値よりも大きくなるまで低減または増加される。
【0076】
スペクトルが双極か、正または負の単極かどうかに係らず、PRFを調整した後にエイリアシングが検出された場合、エイリアシングは、上述のようにベースラインシフトによって修正される(ステップ710、720、712、714)。PRFが決定された観察期間中にエイリアシングが生じなかったとしても、PRFを調整した後に発生することもあり、これは、スペクトルが必ずしも周波数範囲の中央にあるわけではないためである。PRFを低減した後、最高周波数、または、最低周波数が、対応する限界を超過することがある。
【0077】
図8は、ベースラインシフトを行わずにPRF設定を調整する変形例について説明したフローチャートを示している。ベースラインは、正の最大周波数範囲と負の最大周波数範囲の間のどこか所定の位置に固定されていてもよい。まず、PRFが、既定PRF値、または最大PRFに設定される(ステップ802)。このPRFで超音波が送信され、ドプラスペクトル925の処理が実行され、ドプラスペクトルが求められる。
【0078】
最大ドプラ周波数fmaxおよび最小ドプラ周波数fminは、数(10)および数(11)に上述されたように計算される。最大ドプラ周波数fmaxおよび最小ドプラ周波数fminは、観察期間(例えば、少なくとも一心周期か、一拍動か、または一心周期未満)にわたってモニタされ、最大ドプラ周波数曲線fmaxの最高値highfmax、および最小ドプラ周波数曲線fminの最低値lowfminが記録される。
【0079】
周波数安全マージンfs1、fs2を、最高の最大周波数highfmaxの絶対値と、最低の最小周波数lowfminの絶対値とに加えてもよく、つまり
|high fmax|+fs1・・・(20)
|low fmin|+fs2・・・(21)
となる。数式(20)および数式(21)は、最良のPRF設定を見つけるために使用される。
【0080】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものと正の最大周波数限界b1fPRFとを比較する。最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも大きい場合、PRFを、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたもののレベルへ増加させる。反対に、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたもの絶対値と負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFとを比較する。
【0081】
最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、PRFを、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値へ増加させる(ステップ806、818)。最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも小さい場合、かつ、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものが、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFよりも小さい場合、最高の最大周波数highfmaxの絶対値と、最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、どちら側の周波数成分が優勢かを判断する(ステップ808)。
【0082】
この比較により、正の周波数領域が優勢か負の周波数領域が優勢かを判断する。
(|high fmax|+fs1)>(|low fmin|+fs2)・・・(22)
が成り立つならば、正の周波数領域が優勢であり、正の低レベル閾値b2b1fPRF(ただし、b2は、0から1の間の比)が計算される。
【0083】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものを、正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する(ステップ820)。
b2b1fPRF<(highfmax+fs1)・・・(23)
【0084】
数式(23)が満たされると、PRF設定が完了する(ステップ814)。数式(12)において最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、負の周波数領域でエイリアシングのない状態を維持したまま、PRFは低減されてこの条件を満たす(ステップ816)。エイリアシングが発生し始めた場合は、この条件(23)が満たされる前であっても、PRFの低減を停止する。
【0085】
数式(22)が満たされない場合は、負の周波数領域が優勢であり、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算される(ステップ808)。
【0086】
最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値を、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較する(ステップ822)。
(|low fmin|+fs2)>b2(1−b1)FPRF・・・(24)
【0087】
数式(24)が満たされると、PRF設定が完了する(ステップ814)。最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値よりも小さい場合、正の周波数側でエイリアシングのない状態を維持したままPRFは低減されてこの条件を満たす。エイリアシングが発生し始めた場合は、この条件(24)が満たされる前であっても、PRFの低減を停止する。
【0088】
一回のテストで、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものがエイリアシングの正の最大周波数限界b1fPRFよりも大きいか、または、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値がエイリアシングの負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きいかが判断される。
【0089】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも小さく、かつ、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合に、別のテストが実施される。
【0090】
別のテストでは、正の周波数が優勢の場合(または数式(22)が成り立つ場合)に、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の低レベル閾値b2b1fPRFよりも大きい否か、または、負の周波数が優勢の場合(または数式(22)が成り立たない場合)に、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より大きいか否かが判断される。このテストにより、ドプラスペクトルは、表示に十分な大きさになることが確実となる。PRFが高すぎる場合は、ドプラスペクトルの表示は損なわれ、正確な医療診断用としては受け入れられないものとなる。この変形例において、ベースライン103は、固定されており、ベースラインシフトされない。
【0091】
ベースラインがシフトされないため、PRFを低減すると、優勢でない方の周波数領域のスペクトルでエイリアシングが引き起こされる可能性がある。例えば、正の周波数が優勢の場合には、上述の条件テストにおいて、現在のPRFが正の周波数最大値に基づいて調整され、それに沿ってPRFが調整される。PRFを低減する際、スペクトルに伴う負の部分にエイリアシングが発生し始める。スペクトルの負の部分にエイリアシングが発生し始めた場合は、PRFの低減を停止する。
【0092】
以上、本発明の一または複数の実施形態を説明したが、本発明の精神および範囲に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは明らかである。したがって、他の実施形態も添付の請求の範囲内となる。
【符号の説明】
【0093】
903 超音波プローブ、905 送信器、907 S/W、909 受信器、915 ドプラスペクトルプロセッサ、917 ドプラ信号プロセッサ、919 スペクトルアナライザ、921 カラーフロープロセッサ、923 Bモード画像プロセッサ、931 スキャンコンバータ、933 表示モニタ、935 PRF生成器、937 ユーザ入力、943 PRF設定、945 ベースライン配置、947 プロセッサ、949 最大周波数、951 エイリアシング判定および偏差、953 周波数トラッキング最大、955 最小、957 平均、961 ユーザ入力。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して超音波画像の分野に関する。具体的には、本発明の実施形態は、スペクトル画像のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波は、種々の臓器、心臓、肝臓、胎児、血管を画像化するのに使用される。心血管疾病の診断には、血流速度の測定にスペクトルドプラが通常使用される。パルススペクトルドプラ法が通常使用されるが、これは、空間識別能がなく超音波ビームに沿ってすべての信号をサンプリングする連続波(CW)法と比較して、血管内での速度のサンプリングができる空間サンプリング能を有するためである。
【0003】
ドプラ法において、超音波は、パルス繰り返し周波数(PRF)で送信され、血流速度は、受信超音波信号の周波数の偏移(ドプラ偏移周波数)として検知される。受信超音波は、送信超音波周波数と同一の周波数の同相(0度)参照信号および直交(90度)参照信号と混合される。高周波成分(すなわち、二次高調波)に低域フィルタを施した後、ベースバンド信号のみが得られる。ベースバンド信号に対して、ウォールフィルタ(例えば、高域通過フィルタ)をかけ、組織や血管壁などのゆっくりと動く組織から強力なクラッタノイズを除去して複素I−Pドプラ信号が得られる。
【0004】
一般的に、I−Qドプラ信号は、高速フーリエ変換(FFT)などのスペクトルアナライザへ入力され、血流を表すドプラスペクトルが得られる。ドプラ偏移周波数と血流速度は、以下の関係にある。
【0005】
【数1】
【0006】
ただし、Δfはドプラ偏移周波数、ftは送信周波数、vは血流速度、θは、超音波ビーム方向と速度ベクトル間の角度、cは音速である。
【0007】
128点、256点、または512点高速フーリエ変換(FFT)がよく使用される。ドプラ信号は、パルス超音波(およびサンプリング)法によって取得されるため、サンプリング理論によって最大周波数限界が決定される。最大周波数は、一般的に、パルス繰り返し周波数(PRF)またはfPRFの2分の1である。複素I−Qドプラ信号にFFTを施すため、負方向の血流速度は負の周波数領域に現れる。したがって、ドプラスペクトルのFFT出力は、負速度に相当する負の周波数を有する。こうして、ドプラスペクトルは、通常、周波数において−(fPRF/2)から(fPRF/2)の範囲を有する。ただし、負の周波数範囲は、(fPRF/2)より大きいfPRF以下の正の周波数を表すよう割り当てられる。逆に、正の周波数範囲は、−(fPRF/2)より小さい−fPRF以下の負の周波数を表すように割り当てられる。ドプラスペクトルモードにおいては、これは、ベースラインシフトによって実施される。ベースラインシフトは、ゼロ周波数ベースラインの位置を正方向または負方向に移動する。こうして、ドプラスペクトルは、ベースラインシフトによって、極端な場合では、−fPRFから0までの範囲、または0からfPRFまでの範囲を有する。周波数範囲の全体は、常にfPRFである。
【0008】
心血管系への適用では、しばしば、血流速度がこれらの最大速度を上回り、エイリアシングとなる。エイリアシングが起きると、周波数スペクトルは、正の最大周波数で折り返して、最大限界を超過した周波数が負の周波数に現れた状態か、または、負の最大周波数で折り返して、負の最大限界を超過した周波数が正の周波数に現れた状態となる。エイリアシングによって、血流速度判定は困難になる。
【0009】
逆に、fPRFが大きすぎて、血流速度を正確に測定できないこともありうる。最大血流速度(最大周波数)が、最大周波数限界のたった10分の1程度になることもあり、表示スペクトルが小さくなりすぎて正確に測定できない。
【0010】
超音波応用の多くでは、ユーザが、血流速度に対応するPRFおよび/または周波数スペクトルスケールで速度ゼロに相当するゼロ周波数位置であるベースラインを、手作業で調節する。しかし、これらの設定を調節する際に、ユーザは、診断に費やしたほうがよいであろう時間を浪費することになる。
【0011】
これらの問題を克服する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、ドプラスペクトルの最大周波数を取得しエイリアシングの検出に利用するシステムおよび方法を有することが望ましいことを発見した。エイリアシングが生じた場合、最大周波数が、正の周波数から負の周波数へ、または負の周波数から正の周波数へ折り返す。エイリアシングが検出された場合、ベースラインをシフトして折り返された周波数の大きさを正しい周波数極性へ調整する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様では、ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正する方法が提供される。本発明のこの態様による方法は、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、または、負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、エイリアシングが検出された場合に、ドプラスペクトルの負の周波数領域と正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトすること、を含む。
【0014】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法が提供される。本発明のこの態様による方法は、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、最高値highfmaxと最低値lowfminとを比較して、最大周波数fmaxと最小周波数fminが双極であるか、または、負もしくは正の単極であるかを判断し、双極の場合には、最高の最大周波数highfmaxと、最低の最小周波数lowfminとの間の差に基づいて周波数スパンを決定し、周波数スパンと現在のPRF設定値とを比較し、周波数スパンが現在のPRF設定値よりも大きい場合、PRF設定値を増加し、周波数スパンが現在のPRF設定値の所定の分数よりも小さい場合、PRF設定値を低減し、周波数スパンが現在のPRF設定値よりも小さく、かつ、現在のPRF設定値の所定の分数よりも大きい場合、現在のPRF設定値を使用し、正の単極の場合には、最高の最大周波数highfmaxと現在の正の最大周波数限界b1fPRFとを比較し、最高の最大周波数highfmaxが現在の正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合には、現在のPRF設定値を、最高の最大周波数highfmaxに相当する設定まで増加し、最高の最大周波数highfmaxが現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合には、最高の最大周波数highfmaxと低レベル閾値b2b1fPRFとを比較し、最高の最大周波数highfmaxが低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合は、PRFを、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで低減し、負の単極の場合には、最低の最小周波数lowfminの絶対値と現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合は、現在のPRF設定値を、最低の最小周波数lowfminの絶対値に相当する設定へ増加し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、最低の最小周波数lowfminの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、PRFを最低の最小周波数lowfminの絶対値と等しくなるまで低減すること、を含む。
【0015】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法が提供される。本発明のこの実施形態による方法では、初期パルス繰り返し周波数を設定し、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、最高の最大値highfmaxの絶対値と最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、正の周波数領域または負の周波数領域の優勢を判断し、最高の最大値highfmaxが大きい場合、正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、最高の最大周波数highfmaxを、正の最大周波数限界b1fPRFと正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較して、最高の最大周波数highfmaxが正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、正の最大周波数限界b1fPRFが最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、PRFを低減し、また、最高の最大周波数highfmaxが正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、PRFは、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで増加し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が大きい場合、負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、最低の最小周波数lowfminの絶対値を、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較し、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値が最低の最小周波数lowfminの絶対値となるか、または、正の周波数限界でエイリアシングが生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、PRFは低減され、最低の最小周波数lowfminの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、PRFを、最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで増加させること、を含む。
【0016】
本発明の別の態様では、ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正するシステムが提供される。本発明のこの実施形態によるシステムでは、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算する手段と、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、エイリアシングが検出された場合に、ドプラスペクトルの負の周波数領域と正の周波数領域とを分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする手段と、を備える。
【0017】
本発明の別の態様では、超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定するシステムが提供される。本発明のこの実施形態によるシステムでは、初期パルス繰り返し周波数を設定する手段と、ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算する手段と、ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算する手段と、最大周波数fmaxと最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、トラッキングされた最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、最小周波数fminの最低値lowfminを取り込む手段と、最高の最大値highfmaxの絶対値と最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して正の周波数領域または負の周波数領域の優勢を判断する手段と、を備え、最高の最大値highfmaxが大きい場合、正の周波数領域が優勢として、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、超音波診断システムは、さらに、最高の最大周波数highfmaxを正の最大周波数限界b1fPRFと正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する手段であって、最高の最大周波数highfmaxが正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、正の最大周波数限界b1fPRFが最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、またはエイリアシングが負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまでPRFが低減され、最高の最大周波数highfmaxが正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまでPRFが増加される手段を備え、最低の最小周波数lowfminの絶対値が大きい場合、負の周波数領域が優勢として低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、超音波システムは、さらに、最低の最小周波数lowfminの絶対値を、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較する手段であって、最低の最小周波数lowfminの絶対値が低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値が最低の最小周波数lowfminの絶対値となるか、または、エイリアシングが正の周波数限界で生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまでPRFが低減され、最低の最小周波数lowfminの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、最低の最小周波数lowfminと等しくなるまでPRFは増加される手段、を備える。
【0018】
本発明の一つまたは複数の実施態様の詳細を添付の図面および以下の説明において説明する。本発明の他の特徴、目的および利点は、説明および図面から、また特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エイリアシングを示す最大ドプラ周波数を示す例示的な図である。
【図2A】周波数スペクトルの最大ドプラ周波数をパーセントとして示す例示的な図である。
【図2B】周波数スペクトルの最小ドプラ周波数をパーセントとして示す例示的な図である。
【図3】修正ベースラインシフト後の最大ドプラ周波数を示す例示的な図である。
【図4】周波数スペクトルの最小周波数、平均(mean)周波数、最大周波数を示す例示的な図である。
【図5A】ドプラスペクトルの双極の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図5B】ドプラスペクトルの単極の正の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図5C】ドプラスペクトルの単極の負の最大周波数および最小周波数を示す例示的な図である。
【図6】自動ベースラインシフト方法を説明する例示的なフローチャートである。
【図7】自動PRF設定およびベースラインシフト方法を説明する例示的なフローチャートである。
【図8】固定ベースライン法を使用した自動PRF設定を説明する例示的なフローチャートである。
【図9】自動ベースラインシフトおよびPRF設定付きの超音波システムを示す図である。
【図10】最大周波数および最小周波数を示す経時的なドプラスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に説明するが、図面全体を通じて同一番号は同一要素を表している。本発明の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明において説明された実施例の詳細、または、図面に図示された実施例の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態でも可能であり、種々の応用および種々の用途において実行または実施することが可能である。また、本明細書で使用される用語の使用方法や専門用語は、説明を目的としたものであって、制限的なものとしてみなすべきではないことを理解されたい。本明細書では、「含む」、「備える」、「有する」およびこれらの変化形は、それら以降に記載される項目、およびその同等物、さらに追加項目を包含することを意味する。「搭載した」、「接続した」、「連結した」という用語も広義に使用され、直接的および間接的な、搭載、接続、連結を包含する。さらに「接続した」および「連結した」は、物理的あるいは機械的な接続または連結に制限されるものではない。
【0021】
本発明は、図面において説明または含意されたどんな特定のソフトウェア言語にも限定されないことを留意されたい。本願の実装において種々の代替のソフトウェア言語を用いてもよいことは当業者には明らかである。当分野ではよくあることだが、構成要素および項目の中にはハードウェア要素であるかのように図示および説明されるものがあることを理解されたい。しかし、当業者には、この詳細な説明を読めば、少なくともある実施形態においては、本方法および本システムにおける構成要素がソフトウェアまたはハードウェアのいずれかで実装されることが理解されるだろう。
【0022】
図9は、自動ベースラインシフトおよびPRF設定機能付きの超音波診断システム901を示している。図6、7、8はシステム901によって使用される様々な方法を説明するフローチャートである。超音波信号は、送信/受信スイッチ907を介して、送信器905により駆動される超音波プローブ903から送信される。受信器909は、スイッチ907を介して受信超音波信号をプローブ903から受信し、その信号911を処理する。
【0023】
処理された信号913は、ドプラスペクトルプロセッサ915と、カラーフロープロセッサ921と、Bモード画像プロセッサ923とに結合される。ドプラスペクトルプロセッサ915は、ドプラ信号プロセッサ917とスペクトルアナライザ919とを含み、ドプラフローの速度信号を処理してドプラスペクトル925を計算して出力する。カラーフロープロセッサ921は、受信信号913を処理して、速度、パワー、分散信号927を計算して出力する。Bモード画像プロセッサ923は、受信信号913を処理して、Bモード画像929か、または振幅検出によりその信号の振幅を計算して出力する。
【0024】
ドプラスペクトル信号925と、カラーフロー処理信号(速度、パワー、分散)927と、Bモード処理信号929とが、これらの信号を走査用信号に変換するスキャンコンバータ931に接続されている。スキャンコンバータ931の出力は、超音波画像を表示するディスプレイモニタ933に接続される。
【0025】
処理済み信号913は、ドプラフロー信号を時間領域で演算するドプラ信号プロセッサ917に接続される。ドプラフロー信号は、時間領域のドプラ信号をそれらのスペクトル周波数成分925に変換するスペクトルアナライザ919に接続される。周波数成分か、またはスペクトル925が、パルス繰り返し周波数(PRF)生成器935に間接的に接続される。PRF生成器935は、PRF生成器935に接続されている手動ユーザ入力装置937からスイッチ939を介した入力、または、自動ベースラインシフト/PRF設定プロセッサ941からの入力にしたがって、パルス繰り返し周波数(PRF)を生成する。自動ベースラインシフト/PRF設定プロセッサ941は、PRF設定943と、ベースライン配置945と、DSP、FPGA、ASIC、または個別要素として実装されるプロセッサ947とを含む。プロセッサ947は、ベースラインシフトおよび/またはPRF生成器935に接続されるPRF設定を得る。ベースラインシフトは、スイッチ959を介してユーザ入力装置961によって制御されるか、または、スイッチ959を介してベースライン配置装置945によって自動的に制御される。スイッチ959は、ユーザに対して、ユーザ入力モードまたは自動モードを選択させる。
【0026】
プロセッサ947は、ドップラスペクトル925から最大周波数および最小周波数949を計算し、エイリアシングおよび偏差951を検出し、最大周波数953と最小周波数955と平均周波数957とをトラッキングする、エンジンを含む。プロセッサ947は、ドプラ周波数スペクトル925を分析することによって画像化を最適化し、PRF設定943と、必要に応じてベースラインゼロ周波数シフト945とを生成する。
【0027】
図6を参照する。超音波システム901は、使用に際して、心臓、頚動脈、肝臓などの画像化といった具体的な適用には、既定の(default)PRFを使用して血流ドプラスペクトルを観察(ステップ602)してもよい。最大PRFは、超音波システムの最高周波数範囲または最高速度範囲である。
【0028】
ドプラスペクトル画像出力925は、典型的には、図10に示されるような経時的に変化する周波数スペクトルか、または輝度としてのパワーを伴った周波数(縦軸)対時間(横軸)である。ドプラスペクトルの輝度は、その周波数でのスペクトルのパワーを示す。最大ドプラ周波数949は、ドプラスペクトル925から計算され、図10に示されるように最大周波数の曲線として経時的にトラッキングされる。
【0029】
最大周波数エンジン949は、最大周波数をパーセンタイル周波数として計算する。ドプラスペクトルの全領域は、字式の分母において示されるように、全周波数のパワーの積分によって最初に求められる。
【0030】
【数2】
【0031】
ただし、pは、スペクトルのパワー(または、スペクトルの振幅a、または、累乗パワーab(bは実数)、または、振幅から導かれるあらゆる信号)である。99パーセントまたは99.9パーセントなどの率(percentile)は、パーセンタイル領域を生じさせている全領域(すなわち、数式(2)の分母)に適用される。第2積分(数式(2)の分子)は、0周波数で開始し積分がそのパーセンタイル領域に到達すると終了する。最大周波数は、積分が停止した周波数である。スペクトルエイリアシングの場合は、たとえその積分(数式(2)の分子)が、最大周波数範囲に到達していても、数式(2)は満たされない。この場合、積分は、負の最大周波数範囲へと継続され、数式(2)が満たされるまで負の周波数範囲において0周波数へと向かって進んでいく。
【0032】
図2Aは、所与の時間における周波数対パワー図としてのドプラスペクトルを示している。図2Aは、99パーセントの周波数が最大周波数値fmaxを表し、その正および負の周波数範囲間のスペクトルサンプル(ステップ604)は、−(1−b1)fPRFからb1fPRFに限定されるドプラスペクトルを示している。ここで、b1は、0から1の間の分数であり、0周波数ベースラインの位置、および正と負の周波数範囲である−(1−b1)fPRFから0と、0からb1fPRFとを決定する。b1=(1/2)の場合、正と負の周波数範囲は、等しくなる。各スペクトルサンプルの最大周波数値fmaxは、曲線のように経時的にトラッキングされる。
【0033】
ノイズ除去技術を使用して、ドプラスペクトル925からノイズを除去してもよい。ドプラスペクトルのパワーは、ノイズ除去利得制御によって抑制される。パワースペクトルを、振幅スペクトルa、累乗パワーab(bは実数)、または、振幅から導かれるいかなる信号で代替しても良い。
【0034】
図1は、折り返しの生じた最大周波数fmaxのカーブ101を示している。最大周波数曲線101は、ゼロ周波数ベースライン103に関して正又は負の周波数方向において移動する。
【0035】
しかし、最大周波数fmaxが、PRF周波数範囲制限、すなわち、正の最大周波数限界b1fPRFまたは負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFを超過した場合、周波数制限を超える周波数が、b1fPRFにおいて表されるように逆の最大周波数領域に変化する(折り返す)。この突然の極性の変化は、エイリアシング検知器および偏差エンジン951によってエイリアシングとして検知される(ステップ606、610)。極性の変化は、エイリアシングがなくても、正から負への周波数遷移105が生じるベースラインの近くで自然に発生することもある。
【0036】
エイリアシングが検出されると、正の最大周波数範囲制限b1fPRF、または負の最大周波数範囲制限−(1−b1)fPRFから折り返し周波数の大きさに相当する最大周波数偏差faが、偏差エンジン951によって計算される。図1では、負の最大周波数範囲−(1−b1)fPRFから最大偏差faが計算される。PRFが小さすぎ、エイリアシングが発生した場合は、1以上の周波数極値が、fa1、fa2、fa3などとエイリアシング(周波数折り返し)となる。エイリアシング検出器や偏差エンジン951は、各エイリアス(周波数折り返し)を検知して、観察期間中に折り返しが生じた全ての周波数を比較し、最大周波数偏差faを見つける。
【0037】
最大周波数偏差faは、正、負の周波数のどちらが折り返しているかによって、正、負のいずれかの周波数方向においてベースライン103をオフセットするために使用される。所定の周波数安全マージン(safety margin)fsを最大偏差faに加算して、ベースライン103のシフトの実施後に、周波数が正の最大周波数限界b1fPRFまたは負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFより大きくならないようにしてもよい。ベースラインシフトは、次式により決定される。
ベースラインシフト=±(fa+fs)・・・(3)
【0038】
数式(3)における記号は、ベースラインシフトの方向を示している。マイナスは、負の周波数方向へのベースラインシフトを示し、プラスは、負の周波数方向へのベースラインシフトを示す。
【0039】
図3は、図1での折り返しの生じた最大周波数fmaxの曲線101に対するベースラインシフトの結果を表している。ベースラインシフト301において、正または負の周波数方向にベースラインを調整して、折り返しのない最大周波数fmaxの曲線303を得る。図1の最大周波数偏差faは負の周波数領域で検出されたため、数式(3)より方向は負となり、ベースライン103は、数式(3)の最大周波数偏差faと所定の周波数安全マージンfsとを含む計算されたベースラインシフト303だけ偏位される(ステップ608)。図6の方法では、ベースラインを調整して一定のPRF設定を維持する。
【0040】
ベースラインがシフトされると、正および負の周波数範囲は、ベースラインシフトとともに変化する。ベースラインシフト後、正の最大周波数限界は、b1fprf+fa+fs1となり、負の最大周波数は、−(1−b1)fprf+fa+fs1となる。例えば、図1に対して計算されたベースラインシフトが、数式(3)において、−(1/4)fprfとなった場合、図3のベースライン301は、(1/4)fprfだけ、負の周波数方向にシフトされる。現在のPRF分数b1が、(1/2)の場合、つまり負および正の周波数範囲が、−(1/2)fprf〜0、0〜(1/2)fprfの場合、新しい負の周波数範囲は、−(1/4)fprf〜0となり、新しい正の周波数範囲は、0〜(3/4)fprfとなる。ベースラインシフトはPRF比b1を調整して、次式となる。
b1newfprf=b1currentfprf−「ベースラインシフト」・・・(4)
【0041】
上述の最大周波数fmaxを使用したベースラインシフトは、正の周波数限界で生じたエイリアシングを修正するためのものである。この方法は、最小周波数fminを使用することにより負の周波数限界にも適用される。最小周波数fminは、パーセンタイル値として算出される。ドプラスペクトルの全領域は、以下の式の分母において示されるように、全周波数におけるパワーの積分によって、最初に求められる。
【0042】
【数3】
【0043】
ただし、pは、スペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。99パーセントあるいは99.9パーセントなどの率(パーセンタイル)は、パーセンタイル領域を生じさせている全領域に適用される。第2積分(数式(5)の分子)は、図2Bに示されるように、0周波数で開始し、積分がそのパーセンタイル領域に到達すると終了する。最大周波数は、積分が停止した周波数である。エイリアシングが負の最大周波数を含む場合には、最大周波数を使用したベースラインシフトは、単に、最小周波数によるベースラインシフトへ変更される。負の周波数領域でのエイリアシングは、最小周波数が、負の最大周波数限界から正の最大周波数限界へ変化した(折り返した)場合に検出される。折り返しの生じた部分は、正の最大周波数範囲でのエイリアシングに対して前述されたように、反対方向へのベースラインシフトによって修正される。
【0044】
さらに、最大周波数および最小周波数は、以下の代替方法において求められてもよい。
【0045】
最初に、平均周波数fmeanは、以下を使用して求められる。
【0046】
【数4】
【0047】
次に、最大周波数fmaxと最小周波数fminを以下のように計算する。
【0048】
【数5】
【0049】
ただし、fは周波数、pは、ドプラスペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。
【0050】
図7は、PRF設定の調整も含むベースラインシフトの変形例を示したフローチャートである。最大PRFを使用して、エイリアシングの危険を冒すことなく、血流ドプラスペクトルを最初に観察してもよい(ステップ702)。または、所定のPRFを最初に使用してもよい。
【0051】
上記と同様、ドプラ最大周波数fmaxを計算する場合には、最小ドプラ周波数fminと平均ドプラ周波数fmeanとが、最大エンジン953と、最小エンジン955と、平均エンジン957によって計算される。図4は、そのスペクトルの、計算された最大周波数値fmaxと、最小周波数値fminと、平均周波数値fmeanとを特定するドプラパワースペクトルを示す。各スペクトルサンプルの、最大周波数値fmaxと、最小周波数値fminと、平均周波数値fmeanは、曲線のように経時的にトラッキングされる。
【0052】
平均周波数fmeanは、以下のようにスペクトル925からの第1モーメントとして以下のように最初に計算される。
【0053】
【数6】
【0054】
ただし、fは周波数、pはドプラスペクトルパワー(またはスペクトル振幅a、または累乗パワーab(bは実数)、または振幅から導かれるあらゆる信号)である。
【0055】
平均周波数fmeanが、スペクトルから計算された後、最大ドプラ周波数fmax、最小ドプラ周波数fminが計算される。
【0056】
最大周波数fmaxおよび最小周波数fminは、算出された平均周波数fmeanからスペクトルのパーセント値として計算される。例えば、平均周波数fmeanから正の周波数方向に49.9パーセントの最大周波数fmaxが、平均周波数fmeanから計算される。最小周波数fminは、負の方向において同様に計算される。
【0057】
同時に、最大周波数fmaxおよび最小周波数fminにより、次式のように、99.8パーセントの全スペクトルパワーの合成境界(combined boundary)を設定する。
【0058】
【数7】
【0059】
平均周波数値fmeanは、スペクトルの加重平均周波数であるため、最大周波数値fmaxおよび最小周波数値fminは、パーセンタイル値が50パーセント未満である限りにおいては、数式(10)と数式(11)とを使用して最大エンジン953および最小エンジン955によって計算される。あるいは、最大周波数値および最小周波数値は、それぞれ、数式(2)と数式(5)を使用して計算されてもよい。
【0060】
図5A、図5B、図5Cは、時間経過後の計算された最大周波数値fmax(501)および最小周波数値fmin(503)を示す。これらの曲線は、ドプラスペクトル境界の高境界であるhighfmax505と、低境界であるlowfmin507とを決定している。最大ドプラ周波数曲線fmaxの最高値highfmax505と、最小ドプラ周波数曲線fminの最低値lowfminが、取り込まれ、記録される。
【0061】
観察期間中に、最大周波数曲線fmaxおよび最小周波数曲線fminが、(図1のように)エイリアシングを生じた場合、エイリアシング検出器および偏差エンジン951は、各折り返しの生じた周波数に発生した偏差を、それぞれの切り取られた(clipped)頂点へ足すことによって、最大周波数曲線fmaxおよび最小周波数曲線fminをトラッキングし続ける。クリッピングが、正および負の最大周波数範囲の両方で検出された場合、現在のPRF設定は小さすぎることになる。
【0062】
全ての周波数成分が、正の周波数領域(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には、修正された折り返し周波数を含む)に存在する場合、スペクトルは単極で正となる。全ての周波数成分が、負の周波数領域(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には修正されたエイリアシング周波数を含む)に存在する場合、スペクトルは単極で負となる。周波数成分が、(スペクトルに一度折り返しが生じた場合には、エイリアシングを修正した後)正および負の周波数領域の両方に存在する場合、スペクトルは双極となる。
【0063】
図5Aは、双極のスペクトルを示している。最高の最大周波数highfmax505と、最低の最小周波数lowfmin507との間の周波数スパン(frequency span)509が計算され、観察期間に基づいた最良の画像表示のために新しいPRFを決定するために使用される。次式で得られる周波数スパンが、観察された血流記録の最小PRFであると考えられる。
周波数スパン=(highfmax)−(lowfmin)・・・(12)
周波数範囲509を調整するために、周波数安全マージンfs1、fs2を追加して、スペクトルと最大周波数範囲との間に適度のマージンを確保してもよい。
調整済み周波数スパン=((highfmax)−(lowfmin))+fs1+fs2・・・(13)
【0064】
調整済み周波数スパンは、現在のPRF設定と比較される(ステップ706)。調整済み周波数スパンが、現在のPRF設定943よりも大きい場合には、
調整済み周波数スパン>現在のPRF・・・(14)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって調整済み周波数スパンに対応する設定へ増加され、PRF生成器935へ出力される(ステップ718)。調整された周波数スパンが、現在のPRF設定よりも小さい場合には、エイリアシングは生じていないものの現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0065】
調整済み周波数スパンは、さらに、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するために、現在のPRF設定の分数と比較される。PRF設定が血流速度に対して大きすぎる場合、ドプラスペクトル925の表示が、血流速度を正確に表すには小さくなりすぎる。
【0066】
現在のPRFの比(fraction)は、低レベル閾値として使用される。0と1との間の所定の数、例えば、(1/2)が、その比として使用されてよい。
(比)×(現在のPRF)<調整済み周波数スパン<現在のPRF・・・(15)
【0067】
調整済み周波数スパンが、分数PRFより小さい場合、ドプラスペクトル画像は、その大きさを増加させる必要がある(ステップ708)。従って、PRF943を調整済み周波数スパンへと低減して、PRF生成器935へ出力する(ステップ716)。PRF設定は、調整済み周波数スパンが、現在のPRF設定より小さくかつ比PRFより大きくなるまで低減または増加される。
【0068】
図5Bは、単極で正のスペクトルを示している。この場合、最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものが、新しいPRFを決定するために使用される。最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものを、現在の正の最大周波数限界b1fPRFと比較する。最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRF943より大きい場合、
(highfmax+fs1)>b1fPRF・・・(16)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって、最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものに対応する設定へと増加され、PRF生成器935へと出力される。最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合、エイリアシングは生じないものの、現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0069】
最高の最大周波数highfmax501に周波数安全マージンfs1を加えたものを、さらに、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するため、現在の正の最大周波数限界b1fPRFの分数と比較する。PRF設定が、血流速度を測定するには小さすぎる場合、エイリアシングが生じる。しかし、PRF設定が、血流速度に対して、大きすぎる場合には、ドプラスペクトル925の表示は小さくなりすぎ、血流速度を正確に表すことが不可能となる。
【0070】
正の低レベル閾値b2b1fPRF(ただしb2は、0から1の間の比)が、計算され、最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものと比較される。
b2b1fPRF<(highfmax+fs1)・・・(17)
【0071】
最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合は、ドプラスペクトル画像は、サイズを増加させる必要がある。従って、PRF943を、最高の最大周波数に周波数安全マージンを加えたもの、つまり、highfmax+fs1へと低減して、PRF生成器935へ出力する。PRF設定は、最高の最大周波数highfmax505に周波数安全マージンfs1を加えたものが、現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さく、かつ正の低レベル閾値b2b1fPRFよりも大きくなるまで低減または増加される。
【0072】
図5Cは、単極で負のスペクトルを示している。この場合、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものが、新しいPRFを決定するのに使用される。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものを、現在の負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFと比較する。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRF943の絶対値より大きい場合、
(|low fmin|+fs2)>(1−b1)fPRF・・・(18)
となり、現在のPRF設定943は、プロセッサ947によって、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値に対応する設定へと増加され、PRF生成器935へと出力される。最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合、エイリアシングは生じないものの、現在のPRF設定が大きすぎる可能性がある。
【0073】
最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値を、最良の画像表示を生成する値までPRFを低減するため、さらに、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値の分数と比較する。PRF設定が、血流速度を測定するには小さすぎる場合、エイリアシングが生じる。しかし、血流速度に対してPRF設定が大きすぎる場合には、ドプラスペクトル925の表示は、小さくなりすぎ、血流速度を正確に表すことが不可能となる。
【0074】
負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRF(ただしb2は、0から1の間の分数)が、計算され、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたもの、と比較され、次に、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFと比較される。
b2(1−b1)fPRF<(|low fmin|+fs)・・・(19)
【0075】
最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値の分数より小さい場合は、ドプラスペクトル画像は、サイズを増加させる必要がある。従って、PRF943を、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値へと低減して、PRF生成器935へ出力する。PRF設定は、最低の最小周波数lowfmin507に周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さく、かつ負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値よりも大きくなるまで低減または増加される。
【0076】
スペクトルが双極か、正または負の単極かどうかに係らず、PRFを調整した後にエイリアシングが検出された場合、エイリアシングは、上述のようにベースラインシフトによって修正される(ステップ710、720、712、714)。PRFが決定された観察期間中にエイリアシングが生じなかったとしても、PRFを調整した後に発生することもあり、これは、スペクトルが必ずしも周波数範囲の中央にあるわけではないためである。PRFを低減した後、最高周波数、または、最低周波数が、対応する限界を超過することがある。
【0077】
図8は、ベースラインシフトを行わずにPRF設定を調整する変形例について説明したフローチャートを示している。ベースラインは、正の最大周波数範囲と負の最大周波数範囲の間のどこか所定の位置に固定されていてもよい。まず、PRFが、既定PRF値、または最大PRFに設定される(ステップ802)。このPRFで超音波が送信され、ドプラスペクトル925の処理が実行され、ドプラスペクトルが求められる。
【0078】
最大ドプラ周波数fmaxおよび最小ドプラ周波数fminは、数(10)および数(11)に上述されたように計算される。最大ドプラ周波数fmaxおよび最小ドプラ周波数fminは、観察期間(例えば、少なくとも一心周期か、一拍動か、または一心周期未満)にわたってモニタされ、最大ドプラ周波数曲線fmaxの最高値highfmax、および最小ドプラ周波数曲線fminの最低値lowfminが記録される。
【0079】
周波数安全マージンfs1、fs2を、最高の最大周波数highfmaxの絶対値と、最低の最小周波数lowfminの絶対値とに加えてもよく、つまり
|high fmax|+fs1・・・(20)
|low fmin|+fs2・・・(21)
となる。数式(20)および数式(21)は、最良のPRF設定を見つけるために使用される。
【0080】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものと正の最大周波数限界b1fPRFとを比較する。最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも大きい場合、PRFを、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたもののレベルへ増加させる。反対に、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたもの絶対値と負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFとを比較する。
【0081】
最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合、PRFを、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値へ増加させる(ステップ806、818)。最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも小さい場合、かつ、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものが、負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFよりも小さい場合、最高の最大周波数highfmaxの絶対値と、最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、どちら側の周波数成分が優勢かを判断する(ステップ808)。
【0082】
この比較により、正の周波数領域が優勢か負の周波数領域が優勢かを判断する。
(|high fmax|+fs1)>(|low fmin|+fs2)・・・(22)
が成り立つならば、正の周波数領域が優勢であり、正の低レベル閾値b2b1fPRF(ただし、b2は、0から1の間の比)が計算される。
【0083】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものを、正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する(ステップ820)。
b2b1fPRF<(highfmax+fs1)・・・(23)
【0084】
数式(23)が満たされると、PRF設定が完了する(ステップ814)。数式(12)において最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、負の周波数領域でエイリアシングのない状態を維持したまま、PRFは低減されてこの条件を満たす(ステップ816)。エイリアシングが発生し始めた場合は、この条件(23)が満たされる前であっても、PRFの低減を停止する。
【0085】
数式(22)が満たされない場合は、負の周波数領域が優勢であり、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算される(ステップ808)。
【0086】
最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値を、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値と比較する(ステップ822)。
(|low fmin|+fs2)>b2(1−b1)FPRF・・・(24)
【0087】
数式(24)が満たされると、PRF設定が完了する(ステップ814)。最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値よりも小さい場合、正の周波数側でエイリアシングのない状態を維持したままPRFは低減されてこの条件を満たす。エイリアシングが発生し始めた場合は、この条件(24)が満たされる前であっても、PRFの低減を停止する。
【0088】
一回のテストで、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものがエイリアシングの正の最大周波数限界b1fPRFよりも大きいか、または、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値がエイリアシングの負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きいかが判断される。
【0089】
最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の最大周波数限界b1fPRFよりも小さく、かつ、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、負の最小周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合に、別のテストが実施される。
【0090】
別のテストでは、正の周波数が優勢の場合(または数式(22)が成り立つ場合)に、最高の最大周波数highfmaxに周波数安全マージンfs1を加えたものが、正の低レベル閾値b2b1fPRFよりも大きい否か、または、負の周波数が優勢の場合(または数式(22)が成り立たない場合)に、最低の最小周波数lowfminに周波数安全マージンfs2を加えたものの絶対値が、負の低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より大きいか否かが判断される。このテストにより、ドプラスペクトルは、表示に十分な大きさになることが確実となる。PRFが高すぎる場合は、ドプラスペクトルの表示は損なわれ、正確な医療診断用としては受け入れられないものとなる。この変形例において、ベースライン103は、固定されており、ベースラインシフトされない。
【0091】
ベースラインがシフトされないため、PRFを低減すると、優勢でない方の周波数領域のスペクトルでエイリアシングが引き起こされる可能性がある。例えば、正の周波数が優勢の場合には、上述の条件テストにおいて、現在のPRFが正の周波数最大値に基づいて調整され、それに沿ってPRFが調整される。PRFを低減する際、スペクトルに伴う負の部分にエイリアシングが発生し始める。スペクトルの負の部分にエイリアシングが発生し始めた場合は、PRFの低減を停止する。
【0092】
以上、本発明の一または複数の実施形態を説明したが、本発明の精神および範囲に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは明らかである。したがって、他の実施形態も添付の請求の範囲内となる。
【符号の説明】
【0093】
903 超音波プローブ、905 送信器、907 S/W、909 受信器、915 ドプラスペクトルプロセッサ、917 ドプラ信号プロセッサ、919 スペクトルアナライザ、921 カラーフロープロセッサ、923 Bモード画像プロセッサ、931 スキャンコンバータ、933 表示モニタ、935 PRF生成器、937 ユーザ入力、943 PRF設定、945 ベースライン配置、947 プロセッサ、949 最大周波数、951 エイリアシング判定および偏差、953 周波数トラッキング最大、955 最小、957 平均、961 ユーザ入力。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正する方法であって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているか否かを検出し、または、前記負の周波数領域の負の周波数が前記正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているか否かを検出し、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする、方法。
【請求項2】
前記ドプラスペクトル信号は、振幅スペクトルa、パワースペクトルa2または累乗パワーab(bは実数)からなる群のうちいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最大周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、さらに、(正または負の)一方領域から(正または負の)他方領域へ折り返した周波数の大きさから前記最大周波数偏差faを決定することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
周波数安全マージンfsを前記最大周波数偏差faへ加算し、
前記周波数スペクトルベースラインを前記最大周波数偏差に安全マージンを加算した±(fa+fs)だけシフトする、
ことを含む方法。
【請求項7】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法であって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、
前記最高値highfmaxと前記最低値lowfminとを比較して、前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminが双極であるか、または、負もしくは正の単極であるかを判断し、
双極の場合には、
前記最高の最大周波数highfmaxと、前記最低の最小周波数lowfminとの間の差に基づいて周波数スパンを決定し、
前記周波数スパンと現在のPRF設定値とを比較し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値よりも大きい場合、前記PRF設定値を増加し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値の所定の分数よりも小さい場合、前記PRF設定値を低減し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値よりも小さく、かつ、前記現在のPRF設定値の前記所定の分数よりも大きい場合、前記現在のPRF設定値を使用し、
正の単極の場合には、
前記最高の最大周波数highfmaxと現在の正の最大周波数限界b1fPRFとを比較し、前記最高の最大周波数highfmaxが前記現在の正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合には、前記現在のPRF設定値は、前記最高の最大周波数highfmaxに相当する設定まで増加され、
前記最高の最大周波数highfmaxが前記現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合には、前記最高の最大周波数highfmaxと低レベル閾値b2b1fPRFとを比較し、前記最高の最大周波数highfmaxが前記低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合は、前記PRFは、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで低減され、
負の単極の場合には、
前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合は、前記現在のPRF設定値は、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値に相当する設定へ増加され、
前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、前記PRFは、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と等しくなるまで低減される、方法。
【請求項8】
前記ドプラスペクトル信号は、振幅スペクトルa、パワースペクトルa2または累乗パワーab(bは実数)からなる群のうちいずれかである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記最小周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ折り返された場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ折り返された場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域とを分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ折り返された場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
負の周波数領域の周波数が正の周波数領域へ折り返された場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
エイリアシングが検出された場合には、折り返された周波数偏差を、前記折り返しの生じた最大周波数と前記折り返しの生じた最小周波数に加える、方法。
【請求項13】
前記周波数偏差は、さらに、
(正または負の)一方領域から(負または正の)他方領域へ折り返された周波数の大きさから、前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
周波数安全マージンを、前記最大周波数偏差faに加え、
前記周波数スペクトルベースラインを、前記最大周波数偏差faに安全マージンを加えた分だけシフトさせる、方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
周波数安全マージンを、前記周波数スパンか、前記最高の最大周波数highfmaxか、または前記最低の最小周波数lowfminの絶対値、に加え、
前記現在のPRFと比較する、方法。
【請求項16】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法であって、
初期パルス繰り返し周波数を設定し、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、
前記最高の最大値highfmaxの絶対値と前記最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、前記正の周波数領域または前記負の周波数領域の優勢を判断し、
前記最高の最大値highfmaxが大きい場合、前記正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、
前記最高の最大周波数highfmaxを、前記正の最大周波数限界b1fPRFと前記正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較して、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、前記正の最大周波数限界b1fPRFが前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、前記PRFは低減され、
前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、前記PRFは、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで増加され、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が大きい場合、前記負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値を、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と、前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値と比較し、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値より小さい場合、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値が前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値となるか、または、前記正の周波数限界でエイリアシングが生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、前記PRFは低減され、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値より大きい場合、前記PRFは、前記前記最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで増加される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、さらに、前記最高の最大周波数highfmaxと、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値とに、周波数安全マージンを加算することを含む、方法。
【請求項18】
前記正の最大周波数限界b1fPRFと、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFは、前記PRFと、固定されたゼロ周波数ベースライン位置とによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル周波数である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記最小周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル周波数である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
計測期間は、一心周期より短いか、または、少なくとも一つの一心周期の長さ分の期間であってよい、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとは、ノイズ低減あり、または、ノイズ低減なしのドプラスペクトルから計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出して修正するシステムであって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算する手段と、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、
前記負の周波数領域の負の周波数が前記正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする手段と、
を備えるシステム。
【請求項24】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定するシステムであって、
初期パルス繰り返し周波数を設定する手段と、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算する手段と、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込む手段と、
前記最高の最大値highfmaxの絶対値と前記最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、前記正の周波数領域または前記負の周波数領域の優勢を判断する手段と、を備え、
前記最高の最大値highfmaxが大きい場合、前記正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、
前記超音波診断システムは、さらに、
前記最高の最大周波数highfmaxを、前記正の最大周波数限界b1fPRFと前記正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する手段であって、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、前記正の最大周波数限界b1fPRFが前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで前記PRFが低減され、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで前記PRFが増加される手段を備え、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が大きい場合、前記負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、
前記超音波診断システムは、さらに、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値を、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値と比較する手段であって、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値より小さい場合、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値が前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値となるか、または、エイリアシングが前記正の周波数限界で生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで前記PRFが低減され、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値より大きい場合、前記最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで前記PRFが増加される手段、を備えるシステム。
【請求項1】
ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出し修正する方法であって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているか否かを検出し、または、前記負の周波数領域の負の周波数が前記正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているか否かを検出し、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする、方法。
【請求項2】
前記ドプラスペクトル信号は、振幅スペクトルa、パワースペクトルa2または累乗パワーab(bは実数)からなる群のうちいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記最大周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、さらに、(正または負の)一方領域から(正または負の)他方領域へ折り返した周波数の大きさから前記最大周波数偏差faを決定することを含む、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、さらに、
周波数安全マージンfsを前記最大周波数偏差faへ加算し、
前記周波数スペクトルベースラインを前記最大周波数偏差に安全マージンを加算した±(fa+fs)だけシフトする、
ことを含む方法。
【請求項7】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法であって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、
前記最高値highfmaxと前記最低値lowfminとを比較して、前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminが双極であるか、または、負もしくは正の単極であるかを判断し、
双極の場合には、
前記最高の最大周波数highfmaxと、前記最低の最小周波数lowfminとの間の差に基づいて周波数スパンを決定し、
前記周波数スパンと現在のPRF設定値とを比較し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値よりも大きい場合、前記PRF設定値を増加し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値の所定の分数よりも小さい場合、前記PRF設定値を低減し、
前記周波数スパンが前記現在のPRF設定値よりも小さく、かつ、前記現在のPRF設定値の前記所定の分数よりも大きい場合、前記現在のPRF設定値を使用し、
正の単極の場合には、
前記最高の最大周波数highfmaxと現在の正の最大周波数限界b1fPRFとを比較し、前記最高の最大周波数highfmaxが前記現在の正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合には、前記現在のPRF設定値は、前記最高の最大周波数highfmaxに相当する設定まで増加され、
前記最高の最大周波数highfmaxが前記現在の正の最大周波数限界b1fPRFより小さい場合には、前記最高の最大周波数highfmaxと低レベル閾値b2b1fPRFとを比較し、前記最高の最大周波数highfmaxが前記低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合は、前記PRFは、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで低減され、
負の単極の場合には、
前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より大きい場合は、前記現在のPRF設定値は、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値に相当する設定へ増加され、
前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記現在の負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値とを比較し、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの絶対値より小さい場合は、前記PRFは、前記最低の最小周波数lowfminの絶対値と等しくなるまで低減される、方法。
【請求項8】
前記ドプラスペクトル信号は、振幅スペクトルa、パワースペクトルa2または累乗パワーab(bは実数)からなる群のうちいずれかである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記最小周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル値である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ折り返された場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
負の周波数領域の負の周波数が正の周波数領域へ折り返された場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域とを分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする、方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ折り返された場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
負の周波数領域の周波数が正の周波数領域へ折り返された場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出し、
エイリアシングが検出された場合には、折り返された周波数偏差を、前記折り返しの生じた最大周波数と前記折り返しの生じた最小周波数に加える、方法。
【請求項13】
前記周波数偏差は、さらに、
(正または負の)一方領域から(負または正の)他方領域へ折り返された周波数の大きさから、前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを決定する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
周波数安全マージンを、前記最大周波数偏差faに加え、
前記周波数スペクトルベースラインを、前記最大周波数偏差faに安全マージンを加えた分だけシフトさせる、方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法であって、さらに、
周波数安全マージンを、前記周波数スパンか、前記最高の最大周波数highfmaxか、または前記最低の最小周波数lowfminの絶対値、に加え、
前記現在のPRFと比較する、方法。
【請求項16】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定する方法であって、
初期パルス繰り返し周波数を設定し、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算し、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算し、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングし、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込み、
前記最高の最大値highfmaxの絶対値と前記最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、前記正の周波数領域または前記負の周波数領域の優勢を判断し、
前記最高の最大値highfmaxが大きい場合、前記正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、
前記最高の最大周波数highfmaxを、前記正の最大周波数限界b1fPRFと前記正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較して、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、前記正の最大周波数限界b1fPRFが前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、前記PRFは低減され、
前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、前記PRFは、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで増加され、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が大きい場合、前記負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値を、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と、前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値と比較し、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値より小さい場合、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値が前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値となるか、または、前記正の周波数限界でエイリアシングが生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで、前記PRFは低減され、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値より大きい場合、前記PRFは、前記前記最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで増加される、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、さらに、前記最高の最大周波数highfmaxと、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値とに、周波数安全マージンを加算することを含む、方法。
【請求項18】
前記正の最大周波数限界b1fPRFと、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFは、前記PRFと、固定されたゼロ周波数ベースライン位置とによって決定される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記最大周波数fmaxは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル周波数である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記最小周波数fminは、前記ドプラ周波数スペクトルのパーセンタイル周波数である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
計測期間は、一心周期より短いか、または、少なくとも一つの一心周期の長さ分の期間であってよい、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとは、ノイズ低減あり、または、ノイズ低減なしのドプラスペクトルから計算される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
ドプラ周波数スペクトルにおけるエイリアシングを検出して修正するシステムであって、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxと最小周波数fminとを計算する手段と、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、
正の周波数領域の周波数が負の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最大周波数fmaxからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、
前記負の周波数領域の負の周波数が前記正の周波数領域へ変化(折り返し)した場合に、前記最小周波数fminからエイリアシングが発生しているかどうかを検出する手段と、
エイリアシングが検出された場合に、前記ドプラスペクトルの前記負の周波数領域と前記正の周波数領域と分離するゼロ周波数ベースラインを、最大周波数偏差faにしたがって、正の方向または負の方向へシフトする手段と、
を備えるシステム。
【請求項24】
超音波診断システム用のパルス繰り返し周波数を決定するシステムであって、
初期パルス繰り返し周波数を設定する手段と、
ドプラ周波数スペクトル信号を経時的に受信する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最大周波数fmaxを計算する手段と、
前記ドプラ周波数スペクトルから最小周波数fminを計算する手段と、
前記最大周波数fmaxと前記最小周波数fminとを経時的にトラッキングする手段と、
トラッキングされた前記最大周波数fmaxの最高値highfmaxと、前記最小周波数fminの最低値lowfminを取り込む手段と、
前記最高の最大値highfmaxの絶対値と前記最低の最小周波数lowfminの絶対値とを比較して、前記正の周波数領域または前記負の周波数領域の優勢を判断する手段と、を備え、
前記最高の最大値highfmaxが大きい場合、前記正の周波数領域が優勢となり、正の低レベル閾値b2b1fPRFが計算され、
前記超音波診断システムは、さらに、
前記最高の最大周波数highfmaxを、前記正の最大周波数限界b1fPRFと前記正の低レベル閾値b2b1fPRFと比較する手段であって、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の低レベル閾値b2b1fPRFより小さい場合、前記正の最大周波数限界b1fPRFが前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるか、または、エイリアシングが前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFで生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで前記PRFが低減され、前記最高の最大周波数highfmaxが前記正の最大周波数限界b1fPRFより大きい場合、前記最高の最大周波数highfmaxと等しくなるまで前記PRFが増加される手段を備え、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が大きい場合、前記負の周波数領域が優勢となり、低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFが計算され、
前記超音波診断システムは、さらに、
前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値を、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの絶対値と前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値と比較する手段であって、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記低レベル閾値−b2(1−b1)fPRFの前記絶対値より小さい場合、前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値が前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値となるか、または、エイリアシングが前記正の周波数限界で生じ始めるか、いずれか早い方が到来するまで前記PRFが低減され、前記最低の最小周波数lowfminの前記絶対値が前記負の最大周波数限界−(1−b1)fPRFの前記絶対値より大きい場合、前記最低の最小周波数lowfminと等しくなるまで前記PRFが増加される手段、を備えるシステム。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−522581(P2010−522581A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541652(P2009−541652)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/JP2008/056728
【国際公開番号】WO2008/123596
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【国際出願番号】PCT/JP2008/056728
【国際公開番号】WO2008/123596
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
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