説明

超音波画像処理装置およびプログラム

【課題】計測条件の変化に応じて適応的に視認性を向上させたドプラ波形画像を生成する。
【解決手段】本発明に係る超音波診断装置は、被検体に向けて送信され、当該被検体内で反射し受信された超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析部と、複数の画素の配列が対応周波数に応じて規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示すラインデータを、周波数スペクトラムデータに基づき生成するラインデータ生成部とを備える。超音波診断装置は、予め定められた時間アドレスにおける1つのラインデータが示す各画素について、ノイズ画素であるか否かの判定が行われる。そして、ノイズ画素である旨の判定がされた画素については、その画素値に0以上1未満の重み付け係数wが乗ぜられ、値が調整される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、ノイズ画素に対する処理の改善に関する。
【0002】
ドプラ法を用いて被検体の血流速度等を計測する超音波診断装置が広く用いられている。このような超音波診断装置には、連続波ドプラ装置、パルスドプラ装置等がある。連続波ドプラ装置は、連続波としての超音波を被検体に向けて送信する。そして、被検体内で反射し、時間的に連続して受信された超音波のドプラシフト周波数成分に基づいて、血流速度の時間変化を示すドプラ波形を表示する。パルスドプラ装置は、パルス変調された超音波を所定の時間間隔で被検体に向けて送信する。そして、被検体内で反射し、計測対象の領域の深さに応じたタイミングで受信された超音波のドプラシフト周波数成分に基づいてドプラ波形を表示する。
【0003】
パルスドプラ装置では、計測可能な速度がパルス変調波の送信時間間隔に応じて制限される。これに対し、連続波ドプラ装置にはそのような制限はなく、他のドプラ法を用いる装置に比べて計測可能な速度の上限が大きい。そのため、連続波ドプラ装置は、循環器の疾患による高速な血流の有無を診断するために用いられることが多い。
【0004】
一般に、超音波診断装置では、外来ノイズ、熱雑音、回路の非線形性等の影響により、計測によって得られた画像上にノイズが現れ、視認性が低下することがある。そこで、超音波診断装置によって得られた画像の視認性を向上する技術が考え出されている。例えば、特許文献1〜3には、超音波診断装置によって得られた画像について、輪郭を強調する技術が記載されている。これらの特許文献に記載されている超音波診断装置は、注目画素を中心とした所定領域の画素群について、画素値の平均値および分散値を求める。そして、注目画素の画素値と、求められた平均値および分散値との大小関係に基づいて、注目画素の値を変更し画像の視認性を向上させる。
【0005】
また、特許文献4には、超音波ドプラ診断装置が記載されている。この装置は、速度ゼロを示すベースラインから所定距離隔てられたドプラ波形画像上の領域をデータサンプル領域として求め、この領域における各画素の輝度分布から基準ノイズレベルを検出する。そして、この基準ノイズレベルを閾値としてドプラ波形をオートトレースする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−164352号公報
【特許文献2】特開平4−122359号公報
【特許文献3】特開平4−12741号公報
【特許文献4】特開平7−241291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
連続波ドプラ装置は、受信された超音波信号に基づいて、ドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムを求める。そして、時間の経過と共に順次求められた複数の周波数スペクトラムに基づいて、図10に示されるようにドプラ波形画像を表示する。この図において横軸は時間を示し縦軸は速度を示す。ドプラ波形画像においては、速度軸方向に1列に配列された複数画素の各画素値が、対応する時間における周波数スペクトラムを示す。このように、連続波ドプラ装置は、時間の経過と共に順次求められた複数の周波数スペクトラムに基づいてドプラ波形画像を表示する。
【0008】
連続波ドプラ装置では、被検体の位置、超音波を送受信する位置、超音波の送受信方向等の計測条件を、診断を行いながら変化させることがある。この場合、時間の経過と共に順次求められる周波数スペクトラムのデータに対し、計測条件の変化に応じて適応的に視認性を向上させる処理を施すことが好ましい。しかし、従来の技術では、計測条件の変化に応じた処理を実行することは困難であることがあった。
【0009】
本発明は、このような課題に対してなされたものである。計測条件の変化に応じて適応的に視認性を向上させたドプラ波形画像を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、計測対象物の速度を示すドプラ波形画像を生成する、超音波画像処理装置において、被検体に向けて送信され、当該被検体内で反射し受信された超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析部と、複数の画素の配列が対応周波数に応じて規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示すラインデータを、前記周波数スペクトラムデータに基づき生成するラインデータ生成部と、時系列順に生成された複数のラインデータによってドプラ波形画像を形成した場合におけるそのドプラ波形画像上に、演算用の窓領域を指定する窓指定部と、前記窓領域における画素値の大きさの傾向を示す傾向値を求める傾向値演算部と、前記ドプラ波形画像上の所定領域における複数の画素値に基づいて、前記傾向値に対する評価用閾値を決定する閾値決定部と、前記傾向値と前記評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整し、調整された画素値を前記注目画素の新たな画素値として出力する画素値調整部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ドプラ波形画像におけるノイズ画素は、その近傍の領域における画素の画素値が所定の値よりも小さくなる傾向にある。本発明は、このような原理に基づき、注目画素に対応する窓領域における傾向値と評価用閾値との比較に基づき、ノイズ画素である可能性の高い注目画素について画素値を調整する。これによって、ドプラ波形画像の視認性を向上させることができる。本発明における傾向値は、窓領域における画素値の大きさの傾向を示す。傾向値としては、例えば、平均値、メジアン、中央値等の統計値や、平均値に一定値を加えた値等が用いられる。
【0012】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記窓領域に含まれる画素値のばらつき度を求めるばらつき度演算部を備え、前記画素値調整部は、前記傾向値と前記評価用閾値との比較に加え、前記ばらつき度と所定の第2の評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整し、調整された画素値を前記注目画素の新たな画素値として出力する。
【0013】
ドプラ波形画像におけるノイズ画素は、その近傍の領域における画素の画素値が所定の値よりも小さくなる傾向にある。さらに、その近傍の領域における複数の画素の画素値のばらつきが小さくなる傾向にある。本発明は、このような原理に基づき、注目画素に対応する窓領域における傾向値と評価用閾値との比較の他、窓領域に含まれる画素値のばらつき度に基づき、ノイズ画素である可能性の高い注目画素についてその画素値を調整する。これによって、ドプラ波形画像の視認性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記ドプラ波形画像上の所定領域は、速度がゼロであることを示すベースラインから、ラインデータの画素配列方向に所定の画素数だけ離れた位置にある領域であり、前記閾値決定部は、前記ドプラ波形画像を形成する複数のラインデータのそれぞれについて、前記所定領域の一部をなす領域における複数の画素値に対する統計値を求め、当該複数のラインデータのそれぞれについて求められた統計値に基づいて前記評価用閾値を求める。
【0015】
本発明においては、傾向値に対する評価用閾値は、ドプラ波形画像上の所定領域における複数の画素値に基づいて決定される。この所定領域は、ドプラ波形画像上のノイズ画素の画素値の傾向を反映させたものであることが好ましい。本発明によれば、ベースラインから、ラインデータの画素配列方向に所定の画素数だけ離れた位置にある領域に当該所定領域が設定される。これによって、ノイズの多い傾向にある領域に当該所定領域が設定され、ノイズ画素の画素値の傾向を評価用閾値に適切に反映させることができる。
【0016】
また、本発明に係る超音波画像処理装置は、望ましくは、前記周波数解析部は、ユーザの操作に基づいて計測速度範囲を取得する計測範囲取得部と、前記計測速度範囲に対応するドプラシフト周波数の正および負にわたる帯域幅よりも大きいサンプリング周波数を以て、受信された超音波に基づく受信信号をサンプリングするサンプリング部と、サンプリングされた前記受信信号に対するフーリエ変換処理に基づいて、前記周波数スペクトラムデータを生成する変換部と、を備える。
【0017】
本発明においては、計測速度範囲に対応するドプラシフト周波数の正および負にわたる帯域幅よりも大きいサンプリング周波数を以て、受信信号に対するサンプリングが行われる。これによって、エイリアジングに基づく不適切な画像が生成される頻度を低減することができる。なお、負のドプラシフト周波数とは、正のドプラシフト周波数に対し、位相回転が逆方向となるドプラシフト周波数成分の周波数をいう。
【0018】
また、本発明は、計測対象物の速度を示すドプラ波形画像を生成する処理をプロセッサに実行させる超音波画像処理プログラムにおいて、被検体に向けて送信され、当該被検体内において反射した超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析処理と、複数の画素の配列が対応周波数に応じて規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示すラインデータを、前記周波数スペクトラムデータに基づき生成するラインデータ生成処理と、時系列順に生成された複数のラインデータによってドプラ波形画像を形成した場合におけるそのドプラ波形画像上に、演算用の窓領域を指定する窓指定処理と、前記窓領域における画素値の大きさの傾向を示す傾向値を求める傾向値演算処理と、前記ドプラ波形画像上の所定領域における複数の画素値に基づいて、前記傾向値に対する評価用閾値を決定する閾値決定処理と、前記傾向値と前記評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整する画素値調整処理と、をプロセッサに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、計測条件の変化に応じて適応的に視認性を向上させたドプラ波形画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】バッファメモリに記憶される画素値の配列を概念的に示す図である。
【図3】ノイズ低減処理のフローチャートである。
【図4】演算用窓を設定する処理を説明する図である。
【図5】演算用窓が画素配列領域からはみ出る様子を概念的に示す図である。
【図6】サンプル領域を設定する処理を説明する図である。
【図7】ディスプレイに表示される画像の例を示す図である。
【図8】ディスプレイに表示される画像の例を示す図である。
【図9】エイリアジングに基づく折り返し現象が生じることを示す図である。
【図10】ドプラ波形画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)超音波診断装置の構成
図1には本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成が示されている。超音波診断装置は、被検体に向けて連続波としての超音波を送信し、当該被検体内で反射し受信された超音波に基づいて、ドプラ波形画像をディスプレイ32に表示する。すなわち、この超音波診断装置は連続波ドプラ装置であり、血流の診断等に用いられる。超音波診断装置の各構成要素は、操作部34におけるユーザの操作に基づいて、システムコントローラ36によって制御される。
【0022】
超音波診断装置の構成について説明する。送信信号生成部10は、連続波形を有する電気信号を送信信号として生成し、その送信信号を送信振動子12に出力する。送信振動子12は、印加された交流電圧に応じて振動する圧電素子等を用いて構成される。送信用振動子は、送信信号生成部10から出力された送信信号に基づいて連続波としての超音波を被検体に向けて送信する。
【0023】
送信振動子12から送信され、被検体内で反射した超音波は、受信振動子14において受信される。受信振動子14は、送信振動子12と同様、圧電素子等を用いて構成される。受信振動子14は、受信された超音波を電気信号に変換し、受信信号として直交検波部16に出力する。
【0024】
送信信号生成部10は、送信振動子12に送信信号を出力する他、直交検波用のローカル信号を直交検波部16に出力する。ローカル信号は、送信信号の周波数と同一の周波数を有する信号としてもよい。この場合、送信信号生成部10は、送信信号をそのままローカル信号として出力する構成としてもよい。
【0025】
直交検波部16、A/D変換部18Iおよび18Q、ハイパスフィルタ20Iおよび20Q、ならびに、FFT演算部22は、受信された超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析部としての機能を有する。
【0026】
直交検波部16は、ローカル信号を用いて受信信号から同相成分信号Iおよび直交成分信号Qを抽出する。そして、抽出された同相成分信号Iおよび直交成分信号Qに対し、高次調波成分を低減するローパスフィルタ処理を施し、それぞれ、A/D変換部18Iおよび18Qに出力する。
【0027】
ここで、同相成分信号Iおよび直交成分信号Qは、互いに90°の位相差があるドプラシフト周波数成分を受信信号から抽出したものであり、これらの周波数はドプラシフト周波数と一致する。
【0028】
A/D変換部18Iおよび18Qは、それぞれ、同相成分信号Iおよび直交成分信号Qを、予め定められたサンプリング周波数fsでサンプリングすると共に、サンプリング後の同相成分信号Iおよび直交成分信号Qをディジタル信号に変換する。そして、ディジタル信号に変換された同相成分信号DIおよび直交成分信号DQを、それぞれ、ハイパスフィルタ20Iおよび20Qに出力する。
【0029】
ハイパスフィルタ20Iおよび20Qは、同相成分信号DIおよび直交成分信号DQに対してハイパスフィルタ処理を施し、それぞれ、同相成分信号DIおよび直交成分信号DQに含まれるクラッタ等の低周波ノイズを低減する。クラッタは、生体組織で反射した超音波に基づくノイズであり、血液等で反射した超音波よりも著しくレベルが大きい。ハイパスフィルタ20Iおよび20Qを設けることで、後段の信号処理において要求されるダイナミックレンジを小さくし、計測精度を向上させることができる。
【0030】
ハイパスフィルタ20Iおよび20Qは、ハイパスフィルタ処理が施された同相成分信号DIおよび直交成分信号DQをFFT演算部22に出力する。FFT演算部22は、同相成分信号DIおよび直交成分信号DQに対して高速フーリエ変換処理を施し、高速フーリエ変換処理によって得られた周波数スペクトラム信号をラインデータ生成部24に出力する。周波数スペクトラム信号は、離散的な周波数値のそれぞれに周波数スペクトラム値としての複素数が対応付けられた複素離散値An+jBn(nは整数)によって表される。
【0031】
ラインデータ生成部24は、周波数領域における1周期分の周波数スペクトラム信号に基づいて、ドプラ波形画像における速度軸方向の1列分の画素値群を、ラインデータとして生成する。具体的には、ラインデータ生成部24は、周波数スペクトラム信号に含まれる各複素離散値の絶対値を求め、各絶対値に基づいて連続的な周波数スペクトラムを表すデータを求める。このデータを求める際には、各絶対値を対数変換すると共にレベルを調整する対数増幅等の処理を行ってもよい。
【0032】
ラインデータ生成部24は、このようにして求めた周波数スペクトラムデータに基づいて、速度軸方向の1列分の画素群のそれぞれに画素値を与える。そして、この1列分の複数の画素値の組を1つのラインデータとしてバッファメモリ26に出力する。このようにして生成されたラインデータは、各画素に対応するドプラシフト周波数に応じて複数の画素の配列が規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示す複数の画素値の組である。
【0033】
ラインデータ生成部24は、FFT演算部22から時間の経過と共に順次新たに出力される周波数スペクトラム信号に基づいて、ラインデータを順次生成し、バッファメモリ26に出力する。図2には、バッファメモリ26に記憶される画素値の配列が概念的に示されている。この図において横方向は時間軸方向に対応し、縦方向は速度軸方向に対応する。図2は画素値の配列を概念的に示すものであるが、各画素値の配列位置に画素値に応じた輝度を有する画素を配列したものはドプラ波形画像となる。そこで、図2に示されるように概念的に画素値が配列された領域を、以下の説明においては画素配列領域と称する。
【0034】
画素配列領域の各配列位置には、速度軸方向に1〜Mの速度アドレスAvが割り当てられ、時間軸方向に1〜Nの時間アドレスAtが割り当てられている。速度軸方向に1列に配列されるM個の画素値は1つのラインデータをなす。最も右側にあるラインデータは、最も先に記憶されたラインデータであり、最も左側にあるラインデータは、最後に記憶されたラインデータである。
【0035】
バッファメモリ26は、ラインデータ生成部24から1つのラインデータが出力されるごとに、最も右側のラインデータを消去し、最も右側のラインデータよりも左側にあるN−1個のラインデータを、それぞれ、1画素分だけ右側にシフトする。そして、新たなラインデータを最も左側の速度アドレスに記憶する。
【0036】
図1に戻り、ノイズ低減部28は、新たなラインデータがバッファメモリ26に記憶されるごとに、予め定められた時間アドレスにおける1つのラインデータに対しノイズ低減処理を施し、ノイズ低減処理後のラインデータを画像生成部30に出力する。画像生成部30は、ノイズ低減部28から時間の経過と共に順次出力されるラインデータに基づいてドプラ波形画像データを生成し、ドプラ波形画像をディスプレイ32に表示させる。
【0037】
本実施形態に係る超音波診断装置においては、ディジタル信号処理を実行する構成要素、すなわち、ハイパスフィルタ20Iおよび20Q、FFT演算部22、ラインデータ生成部24、ノイズ低減部28、ならびに、画像生成部30をプロセッサによって構成してもよい。プロセッサは、超音波診断装置に備えられているメモリに記憶されたプログラムを読み込み、各構成要素のディジタル信号処理を実行する。このようなプロセッサは、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータに組み込まれており、超音波診断装置に汎用のコンピュータを組み込んでもよい。
【0038】
(2)ノイズ低減処理
次に、ノイズ低減処理について説明する。ノイズ低減処理においては、予め定められた時間アドレスにおける1つのラインデータが示す各画素について、ノイズ画素であるか否かの判定が行われる。そして、ノイズ画素である旨の判定がされた画素については、その画素値に0以上1未満の重み付け係数wが乗ぜられ、値が調整される。
【0039】
バッファメモリ26は、ラインデータ生成部24から新たなラインデータが出力されるごとに、記憶するラインデータをシフトさせる。そのため、ラインデータ生成部24から新たなラインデータが出力されるごとに、予め定められた時間アドレスにおけるラインデータが更新され、処理対象のラインデータが更新される。
【0040】
図3にはノイズ低減処理のフローチャートが示されている。ノイズ低減部28は、予め定められた時間アドレスにおけるラインデータが示す複数の画素のうちの1つを、注目画素として指定する(S101)。そして、注目画素を含み、速度軸方向(縦方向)にP画素分の長さを有し、時間軸方向(横方向)にQ画素分の長さを有する演算用窓を設定する(S102)。ここで、PおよびQは2以上の整数である。整数PおよびQは一定値として定めてもよいし、ユーザの操作に基づいて取得するものとしてもよい。すなわち、操作部34においてPおよびQを入力する操作が行われると、システムコントローラ36は、それらの値をノイズ低減部28に出力する。ノイズ低減部28は、システムコントローラ36から出力されたPおよびQの値に基づいてステップS102を実行する。PおよびQを奇数とした場合には、注目画素の位置を重心とする演算用窓を設定することができる。
【0041】
図4に示す例においては、注目画素がハッチングが施された領域を以て示され、演算用窓38が破線を以て示されている。この例では、時間アドレスが6であるラインデータがノイズ低減処理の対象とされ、速度アドレスが5である画素が注目画素として指定されている。そして、注目画素を重心とするP=Q=5の演算用窓38が設定されている。
【0042】
ノイズ低減部28は、演算用窓に含まれる画素について画素値の平均値a、およびばらつき度dを求める(S103)。平均値aは、演算用窓における画素値の大きさの傾向を示す値としての意義を有する。このような技術的意義の下、平均値aの代わりに他の統計的な値が用いられてもよい。ばらつき度は、分散値、標準偏差等、画素値のばらつき度合いを示す統計値であり、演算用窓における画素値のばらつきの傾向を示す値としての意義を有する。分散値は、(1/n)Σ(Xi−a)2として定義される。ここで、nは、演算用窓に含まれる画素の数である。Xiは、演算用窓に含まれる画素の画素値であり、iは画素を特定する整数(1〜n)である。Σは、i=1〜nについて加算合計することを示す。また、標準偏差は、分散値の平方根として定義される。ばらつき度のその他の定義として、(1/n)Σ|Xi−a|を用いてもよい。
【0043】
なお、演算用窓と注目画素の位置関係を一定とした場合、注目画素の位置によっては、画素配列領域から演算用窓がはみ出ることとなる。例えば、P=Q=5の演算用窓の重心に注目画素がある場合には、注目画素の速度アドレスが1、2、M−1およびMのときには、演算用窓は画素配列領域からはみ出る。図5には、注目画素の時間アドレスが6であり、速度アドレスが2であるときに、演算用窓38の最上行が画素配列領域からはみ出る様子が概念的に示されている。このような場合、演算用窓の領域のうち、画素配列領域からはみ出した領域は、画素値の平均値a、およびばらつき度dに寄与させないこととする。すなわち、図5の例では、演算用窓38の最上行は、画素値の平均値a、およびばらつき度dを求める演算に寄与させず、母集団を演算窓内の第2行から第5行までとし、n=20として画素値の平均値a、およびばらつき度dを求めることとする。
【0044】
平均値a、およびばらつき度dを求めた後、ノイズ低減部28は、平均値aが平均値評価用の閾値T1以下であるか否かを判定する(S104)。閾値T1は、ドプラ波形画像のノイズ画素の画素値が大きい程大きくなる傾向にある値であり、後述のように、画素配列領域内に設定された所定のサンプル領域の画素値に基づいて統計的に求められる。
【0045】
ノイズ低減部28は、平均値aが閾値T1より大きいときは、注目画素がノイズ画素でない旨の判定をし、注目画素の画素値をそのまま維持する(S105)。他方、平均値aが閾値T1以下であるときは、ノイズ低減部28は、ばらつき度dがばらつき評価用の閾値T2以下であるか否かを判定する(S106)。閾値T2は、ユーザの操作に基づいて取得される値である。すなわち、操作部34において閾値T2を入力する操作が行われると、システムコントローラ36は、その閾値T2をノイズ低減部28に出力する。ノイズ低減部28は、システムコントローラ36から出力された閾値T2に基づいてステップS106を実行する。
【0046】
ノイズ低減部28は、ばらつき度dが閾値T2より大きいときは、注目画素がノイズ画素でない旨の判定をし、注目画素の画素値をそのまま維持する(S105)。他方、ばらつき度dが閾値T2以下であるときは、ノイズ低減部28は、注目画素がノイズ画素である旨の判定をし、注目画素の画素値に重み付け係数wを乗じた値を注目画素の新たな画素値とする(S107)。ここで、重み付け係数wは、閾値T2と同様、ユーザの操作に基づいて取得される値である。ノイズ低減部28は、処理対象のラインデータが示す総ての画素が注目画素として指定されたか否かを判定する(S108)。そして、注目画素として指定されていない画素がある場合には、ステップS101に戻り、新たな画素を注目画素として指定する(S101)。他方、処理対象のラインデータが示す総ての画素が注目画素として指定された場合には、処理後のラインデータを画像生成部30に出力する(S109)。
【0047】
ステップS101〜S107の処理によれば、処理対象のラインデータが示す画素群のうち注目画素として指定された画素について演算用窓が設定される。そして、演算用窓における画素値について平均値aおよびばらつき度dが求められる。さらに、平均値aが閾値T1以下であり、かつ、ばらつき度dが閾値T2以下であるときは、注目画素がノイズ画素である旨の判定がなされ、その注目画素の画素値が低減される。
【0048】
ノイズ低減部28は、処理対象のラインデータが示す複数の画素のそれぞれを順に注目画素として指定し、ステップS101〜S108の処理を実行する。そして、処理対象のラインデータが示す総ての画素についてノイズ低減処理を実行した後、処理後のラインデータを画像生成部30に出力する(S109)。
【0049】
ノイズ低減部28は、ノイズ低減処理対象のラインデータが更新されるごとにそのラインデータに対してノイズ低減処理を施し、ノイズ低減処理後のラインデータを画像生成部30に出力する。画像生成部30は、ノイズ低減部28から順次出力されるラインデータに基づいてドプラ波形画像データを生成し、ドプラ波形画像をディスプレイ32に表示させる。
【0050】
このようなノイズ処理によって、注目画素がノイズ画素であるか否かの判定が可能であることの原理について説明する。一般に、ドプラ波形画像上に設定された領域内の画素は、その領域における平均値およびばらつき度に応じて次のように分類される。(i)平均値およびばらつき度のいずれもが小さい。(ii)平均値が大きく、ばらつき度が小さい。(iii)平均値が小さく、ばらつき度が大きい。(iv)平均値およびばらつき度のいずれもが大きい。
【0051】
ノイズ画素は、ドプラ波形の波形線を表す画素よりも画素値が小さく、画素値のばらつきが小さい傾向にある。したがって、上記(i)に分類される画素をノイズ画素であると判定することができる。また、ドプラ波形の波形線を表す画素は、ノイズ画素よりも画素値が大きく、画素値のばらつきが小さい。そのため、上記(ii)に分類される画素はドプラ波形の波形線を表す画素である可能性が高い。そして、上記(iii)および(iv)に分類される画素は、ドプラ波形の波形線と背景のノイズとの境界領域を表す画素である可能性が高い。
【0052】
本発明に係るノイズ低減処理は、このような原理に基づいて注目画素がノイズ画素であるか否かの判定を行うものである。すなわち、対応する演算用窓における平均値aが閾値T1以下であり、対応する演算用窓におけるばらつき度dが閾値T2以下である注目画素は、演算用窓における平均値およびばらつき度のいずれもが小さいものとし、その注目画素はノイズ画素である旨の判定をする。そして、ノイズ画素である旨の判定がされた注目画素については画素値を低減する。
【0053】
なお、対応する演算用窓における平均値aが閾値T1以下である場合には、注目画素が上記(i)または(iii)に分類される。ここで、(i)に分類される画素が生じる頻度が(iii)に分類される画素が生じる頻度よりも高い場合には、対応する演算用窓における平均値aが閾値T1以下であることのみを以て、注目画素がノイズ画素である旨の判定をしてもよい。この場合、ステップS106を実行せずスキップしてもよい。
【0054】
また、対応する演算用窓におけるばらつき度dが閾値T2以下である場合には、注目画素が上記(i)または(ii)に分類される。ここで、(i)に分類される画素が生じる頻度が(ii)に分類される画素が生じる頻度よりも高い場合には、対応する演算用窓におけるばらつきdが閾値T2以下であることのみを以て、注目画素がノイズ画素である旨の判定をしてもよい。この場合、ステップS104を実行せずスキップしてもよい。
【0055】
本実施形態では、演算用窓における画素値の大きさの傾向を示す値として平均値を用いている。演算用窓における画素値の大きさの傾向を示す値は、平均値に限られない。例えば、メジアン、中央値等の統計値や、平均値に一定値を加えた値等を用いることができる。
【0056】
また、ステップS107において、注目画素の画素値に重み付け係数wを乗じた値を注目画素の新たな画素値とする代わりに、注目画素の画素値から所定の値を減算する処理を実行してもよい。
【0057】
(3)平均値評価用の閾値T1を決定する処理
ステップS104で用いられる閾値T1を決定する処理について説明する。閾値T1は、図3のフローチャートの処理が実行される前に、画素配列領域内に設定されたサンプル領域の画素値に基づいて統計的に求められる。
【0058】
ノイズ低減部28は、画素配列領域内にサンプル領域を設定する。サンプル領域は、ドプラ波形画像において速度が0であることを示すベースラインを基準として、ノイズ画素が多く存在する傾向にある領域に設定される。サンプル領域は、例えば図6に示されるように、ベースラインを示す行40から速度軸正方向(上方向)に所定の画素数R1を隔て、速度軸負方向(下方向)に所定の画素数R2を隔てて、所定のS行を占める領域として定義される。ハイパスフィルタ20Iおよび20Qの処理によって、ベースラインに相当する行をなす各画素の画素値は極小値となる。そこで、ノイズ低減部28は、画素配列領域内において極小値を有する画素の行をベースラインを示す行40として特定し、ベースラインを示す行40から速度軸正方向に所定の画素数R1を隔て、速度軸負方向に所定の画素数R2を隔てて、所定のS行数を占める領域をサンプル領域として設定する。
【0059】
なお、このようにサンプル領域を設定する代わりに、速度アドレスが1〜SおよびM−S+1〜Mである領域、すなわち、画素配列領域の上下のそれぞれにおいてS行を占める領域としてサンプル領域を設定してもよい。また、上下のサンプル領域で行数を異なるものとしてもよい。
【0060】
閾値T1を決定する処理に際し、ノイズ低減部28は、各ラインデータについて次のような処理を実行する。すなわち、1つのラインデータが示す1列の画素群のうち、サンプル領域をなす部分について画素値の最大値をノイズサンプル値として求める。図6に示される例では、サンプル領域は2つあるため、1列の画素群のうちサンプル領域をなす2つの部分に属する画素に対し、1つのノイズサンプル値が求められる。ノイズ低減部28は、各ラインデータについて求められたノイズサンプル値を用いて、総てのラインデータに亘るノイズサンプル値の平均値を閾値T1として求める。
【0061】
なお、このように総てのラインデータを処理対象とするのではなく、総てのラインデータのうち予め定められた複数のラインデータのそれぞれについてノイズサンプル値を求め、その予め定められたラインデータに亘るノイズサンプル値の平均値を閾値T1として求めてもよい。また、サンプル領域における画素値の最大値をノイズサンプル値として求める代わりに、サンプル領域における画素値の平均値、中央値、メジアン等のその他の統計値をノイズサンプル値として求めてもよい。
【0062】
このような処理によれば、ベースラインを示す行から所定の画素数を隔て、所定の行数を占める領域がサンプル領域として設定され、サンプル領域内に含まれる画素に対する統計的処理によって閾値T1が求められる。一般に、ドプラ波形画像においては、ベースラインから所定距離以上離れた領域には、ノイズ画素が多く存在する傾向がある。したがって、図6に示されるように設定されたサンプル領域には、ノイズ画素が多く存在する傾向がある。これによって、ドプラ波形画像におけるノイズ画素の画素値が大きい傾向にある程、閾値T1は大きい値となる。
【0063】
(4)ノイズ低減処理の効果
本実施形態に係るノイズ低減処理によれば、次に説明するように、計測条件の変化に応じて適応的に視認性を向上させたドプラ波形画像を生成することができる。すなわち、ノイズ低減処理において指定される演算用窓の領域は、処理対象のラインデータよりも先および後にバッファメモリ26に記憶された各ラインデータの画素にまで及ぶ。したがって、処理対象のラインデータに対し時間的に前および後に生成された他のラインデータが考慮された上で、適応的に演算用窓における画素値の平均値aが設定される。さらに、平均値aとの比較によって注目画素がノイズ画素であるか否かを判定するための閾値T1は、ドプラ波形画像におけるノイズ画素の画素値が大きい傾向にある程、大きい値となる。これによって、診断を行いながら計測条件を変化させること等によりノイズ画素の画素値が変化した場合であっても、適応的にドプラ波形画像の視認性を向上させることができる。
【0064】
(5)計測する速度範囲の指定
次に、計測する速度範囲の指定について図1を参照して説明する。本実施形態に係る超音波診断装置においては、ユーザによる操作に基づいて、計測する速度範囲の指定が行われる。そして、指定された速度範囲に応じて、A/D変換部18Iおよび18Qにおけるサンプリング周波数fs、ディスプレイ32における速度の表示範囲等が決定される。
【0065】
操作部34の操作によって速度範囲が、−Vm以上、Vm以下として指定されると、システムコントローラ36は、fs=α・4Vm/λとしてサンプリング周波数を求める。ここで、λは、被検体内を伝搬する超音波の波長、αは、例えば2の自然数乗の値、すなわち、2、4、8、16、・・・・である。システムコントローラ36は、求められたサンプリング周波数fsをA/D変換部18Iおよび18Qに出力する。A/D変換部18Iおよび18Qは、システムコントローラ36から出力されたサンプリング周波数に応じたサンプリング処理を実行する。
【0066】
画像生成部30は、システムコントローラ36の制御に基づいて、速度範囲を−Vm以上、Vm以下としたドプラ波形画像を生成する。図7および図8(a)には、この場合においてディスプレイ32に表示される画像の例が示されている。
【0067】
ここで、図8(a)のように、計測された速度が上限Vmを超えた場合、ベースラインを移動させる操作によって、図8(b)に例示されるように波形全体を表示させることができる。図8(b)の例では、表示範囲は−Vm+v以上、Vm+v以下とされている。
【0068】
従来の超音波診断装置においては、−Vm以上、Vm以下が速度範囲として指定されると、サンプリング周波数fsは、サンプリング定理に従いfs=4Vm/λに設定されることが一般的であった。ここで、fs=4Vm/λは、計測速度範囲に対応するドプラシフト周波数の正および負にわたる帯域幅に相当する。そのため、表示可能な速度範囲は、ドプラシフト周波数がfs/2以下となる範囲、すなわち、−Vm以上、Vm以下の範囲となり、血液等の計測対象物の速度がこの範囲を超えると、図9に示すようにエイリアジングに基づく折り返し現象が生じることがあった。この折り返し現象は、速度がVm以上の波形が、2Vmだけ負方向にシフトして表示される現象である。
【0069】
本実施形態に係る超音波診断装置においては、上述のように、サンプリング周波数はfs=α・4Vm/λに決定されている。ここで、fs=α・4Vm/λは、計測速度範囲に対応するドプラシフト周波数の正および負にわたる帯域幅よりも大きい周波数である。そのため、表示可能な速度範囲は、ドプラシフト周波数がfs/2以下となる範囲、すなわち、−α・Vm以上、α・Vm以下の範囲となる。したがって、図8(b)の例では、Vm+vがα・Vm以下であれば、折り返し現象を生じることなくドプラ波形画像を表示することができる。さらに、サンプリング周波数を従来よりも高い周波数とすることで、計測速度範囲に重畳される計測速度範囲外のノイズが低減され、ドプラ波形画画像のS/N比を向上させることができる。
【符号の説明】
【0070】
10 送信信号生成部、12 送信振動子、14 受信振動子、16 直交検波部、18I,18Q A/D変換部、20I,20Q ハイパスフィルタ、22 FFT演算部、24 ラインデータ生成部、26 バッファメモリ、28 ノイズ低減部、30 画像生成部、32 ディスプレイ、34 操作部、36 システムコントローラ、38 演算用窓、40 ベースラインを示す行。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の速度を示すドプラ波形画像を生成する、超音波画像処理装置において、
被検体に向けて送信され、当該被検体内で反射し受信された超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析部と、
複数の画素の配列が対応周波数に応じて規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示すラインデータを、前記周波数スペクトラムデータに基づき生成するラインデータ生成部と、
時系列順に生成された複数のラインデータによってドプラ波形画像を形成した場合におけるそのドプラ波形画像上に、演算用の窓領域を指定する窓指定部と、
前記窓領域における画素値の大きさの傾向を示す傾向値を求める傾向値演算部と、
前記ドプラ波形画像上の所定領域における複数の画素値に基づいて、前記傾向値に対する評価用閾値を決定する閾値決定部と、
前記傾向値と前記評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整し、調整された画素値を前記注目画素の新たな画素値として出力する画素値調整部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記窓領域に含まれる画素値のばらつき度を求めるばらつき度演算部を備え、
前記画素値調整部は、
前記傾向値と前記評価用閾値との比較に加え、前記ばらつき度と所定の第2の評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整し、調整された画素値を前記注目画素の新たな画素値として出力することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の超音波画像処理装置において、
前記ドプラ波形画像上の所定領域は、
速度がゼロであることを示すベースラインから、ラインデータの画素配列方向に所定の画素数だけ離れた位置にある領域であり、
前記閾値決定部は、
前記ドプラ波形画像を形成する複数のラインデータのそれぞれについて、前記所定領域の一部をなす領域における複数の画素値に対する統計値を求め、当該複数のラインデータのそれぞれについて求められた統計値に基づいて前記評価用閾値を求めることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記周波数解析部は、
ユーザの操作に基づいて計測速度範囲を取得する計測範囲取得部と、
前記計測速度範囲に対応するドプラシフト周波数の正および負にわたる帯域幅よりも大きいサンプリング周波数を以て、受信された超音波に基づく受信信号をサンプリングするサンプリング部と、
サンプリングされた前記受信信号に対するフーリエ変換処理に基づいて、前記周波数スペクトラムデータを生成する変換部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
計測対象物の速度を示すドプラ波形画像を生成する処理をプロセッサに実行させる超音波画像処理プログラムにおいて、
被検体に向けて送信され、当該被検体内において反射した超音波のドプラシフト周波数成分についての周波数スペクトラムデータを生成する周波数解析処理と、
複数の画素の配列が対応周波数に応じて規定され、各画素値がドプラシフト周波数成分の大きさを示すラインデータを、前記周波数スペクトラムデータに基づき生成するラインデータ生成処理と、
時系列順に生成された複数のラインデータによってドプラ波形画像を形成した場合におけるそのドプラ波形画像上に、演算用の窓領域を指定する窓指定処理と、
前記窓領域における画素値の大きさの傾向を示す傾向値を求める傾向値演算処理と、
前記ドプラ波形画像上の所定領域における複数の画素値に基づいて、前記傾向値に対する評価用閾値を決定する閾値決定処理と、
前記傾向値と前記評価用閾値との比較に基づいて、前記窓領域内の注目画素の画素値を調整する画素値調整処理と、
をプロセッサに実行させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−245049(P2012−245049A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117028(P2011−117028)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】