説明

超音波画像処理装置

【課題】心臓に対して設定された3つの断面上において定義される複数の区画を表したブルズアイ像を観察する場合に、各区画の三次元位置を把握困難であった。
【解決手段】合成画像100およびブルズアイ像102とともにシェーマ像セット104が表示される。シェーマ像セット104は3つの断面に対応する3つのシェーマ像116,118,120からなる。各シェーマ像104に対しては、ブルズアイ像102およびオーバーレイ像101Bに適用されたカラー表示処理と同じ処理が適用されている。すなわち、各イメージ上において互いに対応関係にある3つの区画に対しては同じカラーが与えられている。枠マーカー112はBモード画像として選択されている断面を表している。選択された断面に対応するシェーマ像およびシェーマ像のみに対してカラー表示処理を適用することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波画像処理装置に関し、特に、ブルズアイ(Bullseye)表示像のような展開イメージを表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において超音波診断装置が活用されている。超音波診断装置は、生体に対する超音波の送受波によって超音波画像を表示する装置である。超音波画像としては二次元断層画像等が周知であり、それは動画像又は静止画像として表示される。超音波画像を基礎として様々な計測が実行されており、特に循環器の分野においては心臓特に左室の機能が超音波画像を基礎として評価される。例えば、時間軸上に存在する複数の断層画像(あるいはフレーム列)において隣接画像間で各観測点の二次元移動が解析され、その解析結果から心筋の動きが表示される。観測点の二次元移動の解析に当たってはパターンマッチング法が利用される。例えば、基準フレーム上において、左室の心筋の内縁と外縁に沿って複数の観測点が指定され(それらの観測点の間に観測点が自動的に追加されることもある)、それに続くフレーム間において各観測点ごとのパターンマッチングが実行され、個々の観測点につきフレーム間での二次元移動が解析される。各フレームにおいては、内縁トレースライン及び外縁トレースラインにより複数の区画(セグメント)が定義される。各区画は運動評価値を観測する個別領域に相当する。上記のフレーム間パターンマッチングの進行により、各フレームごと(時相ごと)且つ各区画ごとに運動評価値が演算される。運動評価値は、ストレイン、ストレインレート、角度、等であって、それらは心筋における局所部位の動きを表している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−142568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、心臓特に左室について各時相ごとに求められた運動評価値は数値としてユーザーに提供される。しかし、数値観察では全体の動きや局所の動きを把握し難いので、全区画を展開図のように表現すると共に、各区画に対して着色処理(カラー処理)を施す技術が普及しつつある。このように表示される画像はブルズアイ表示像とも称されている(特許文献1参照)。超音波診断の分野においては、左室に対して3つの断面を設定し、個々の断面上に定義される複数の区画の集合体としてブルズアイ表示像が構成される。より具体的には、左室の長軸を基準として、互いに直交又は交差する三断面が設定され、あるいは、左室の短軸像として互いに平行な三断面が設定される。そして、各断面ごとに心筋の動きが観測される。ブルズアイ表示像においては、多重リングのような複数の同心円ラインと放射状の複数のラインとによって画定された個々のエリアが個々の区画に相当する。各区画について求められた運動評価値に対応する色相及び輝度によって各区画が着色される。
【0005】
このようなブルズアイ表示像は、左室の内部から外側に左室を眺め、それを二次元に展開させたような座標系を有する。複数の断面上の複数の区画列を同時に視認、把握することができる反面、そこに表示された個々の区画がどの断面上のどの区画であるのか、とりわけ、個々の区画が左室のどの部位に相当するのか、については直感的に理解し難い。従来、ブルズアイ表示像の表示に際しては、三断面の中からユーザー選択された特定の断面を表す二次元断層画像が表示され、そこでは観測点列や区画列が表わされると同時に各区画の運動評価値がカラーによって表現されている。しかし、ブルズアイ表示像上の個々の区画と断層画像上の個々の区画との対応関係については認識し難い。あるいは、その認識には熟練を要する。
【0006】
本発明の目的は、展開イメージが表示される場合に展開イメージ中の個々の区画と組織部位との対応関係を直感的に認識できるようにすることにある。あるいは、逆に特定の断面が展開イメージ上のどこに相当するかを直感的に認識できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、生体内の運動組織に対して設定された複数の断面に対応する複数のフレーム列を処理する超音波画像処理装置において、前記各フレーム列を構成する複数のフレームを時間軸方向に順次解析することにより前記各断面上に定義される複数の区画について区画ごとに且つ時相ごとに運動評価値を演算する演算手段と、前記複数の断面上に定義された区画群の三次元配列を表す展開イメージを生成する手段であって、前記展開イメージの全部又は一部に対して第1の区画別表示処理を施す第1のイメージ生成手段と、前記各断面上の組織形態及び複数の区画を表す模擬イメージセットを生成する手段であって、前記模擬イメージセットの全部又は一部に対して第2の区画別表示処理を施す第2のイメージ生成手段と、を含み、前記第1の区画別表示処理及び前記第2の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、前記第1の区画別表示処理後の展開イメージと共に前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される、ことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、第1の区画別表示処理後の展開イメージと共に第2の区画別表示処理が施された模擬イメージセットが表示される。模擬イメージセットの一部又は全部に対して区画別表示処理が施されるので、展開イメージにおける区画別表示処理結果と模擬イメージにおける区画別表示処理結果との対応関係から、展開イメージにおける個々の区画が生体組織におけるどの部分に相当するのかを直感的に認識することができ、あるいは、その認識を支援することが可能となる。このように模擬イメージセットは展開イメージと実空間(実組織)との間で橋渡しを行うものである。各模擬イメージは組織形態の概略を表したシェーマ像であるのが望ましい。但し解剖図のような詳細図であってもよい。複数の断面上に設定される区画数と展開イメージ上に現れる区画数とが一致していてもよいし、不一致であってもよい。運動評価値は、区画内の局所部位あるいは全体の運動を評価するための値であるのが望ましく、移動量、接線方向のストレイン、接線方向に交差する方向(直交方向、筋組織厚み方向)のストレイン、区画面積(面積変化率)、等であってもよい。各区画は一般に4点以上で指定される二次元区画である。
【0009】
第2の区画別表示処理は、模擬イメージセットを構成する複数の模擬イメージの全部に対して適用され、あるいは、一部に対して適用される。前者によれば、全区画について断面上での位置を把握しつつ運動評価値を観測でき、後者によれば、注目している断面(望ましくは表示断層画像に対応する断面)を意識しつつ当該断面上の区画について運動評価値を観念できる。
【0010】
望ましくは、前記複数の断面の中から選択された選択断面に対応するフレーム列中の各フレームに基づいて断層画像を形成する断層画像形成手段と、前記断層画像に合成され且つ前記選択断面上の複数の区画を表すオーバーレイ画像を生成する手段であって、前記オーバーレイ画像に対して第3の区画別表示処理を施す第3のイメージ生成手段と、を含み、前記第3の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、 前記第1の区画別表示処理後の展開イメージ及び前記断層画像に対して前記第3の区画別表示処理後のオーバーレイ画像を合成することによって生成される合成画像と共に、前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される。この構成によれば、展開イメージにおける特定の区画が、断層画像上及び模擬イメージセット中のどの区画に対応するのかを容易に認識できる。あるいは、断層画像上における特定の区画が、展開イメージ上及び模擬イメージ中のどの区画に対応するのかを容易に認識できる。更に、模擬イメージセット中の特定の区画が、断層画像上及び展開イメージ上のどの区画に対応するのかを容易に認識できる。
【0011】
望ましくは、前記第1のイメージ生成手段は、一部処理モードにおいて、前記展開イメージに表示される区画群の中で前記複数の断面の中から選択された選択断面に対応する複数の区画に対して前記第1の区画別表示処理を施し、前記第2のイメージ生成手段は、前記一部処理モードにおいて、前記模擬イメージセットの中で前記選択断面に対応する模擬イメージに対して前記第2の区画別表示処理を施す。望ましくは、前記第1のイメージ生成手段は、全部処理モードにおいて、前記展開イメージに表示される区画群の全部に対して前記第1の区画別表示処理を施し、前記第2のイメージ生成手段は、前記全部処理モードにおいて、前記模擬イメージセットの全部に対して前記第2の区画別表示処理を施す。
【0012】
望ましくは、前記演算手段は、前記各フレーム列におけるフレーム間において複数の観測点の二次元移動を演算する手段と、前記複数の観測点の二次元移動に基づいて区画単位で運動評価値を演算する手段と、前記複数の観測点の二次元移動及び前記区画単位の運動評価値の少なくとも一方に基づいて、前記複数の観測点の中でエラー点を判定する手段と、を含み、前記第2のイメージ生成手段は、前記模擬イメージセットに対して前記エラー点に対応する区画が識別されるように識別処理を施す。この構成によれば、運動異常あるいはトラッキング異常が生じた場合にそれを模擬イメージセット上において特定できるから、運動評価値の診断を的確に行える。
【0013】
望ましくは、前記第1乃至第3の区画別表示処理は、前記運動評価値に応じて互いに同じ色相及び輝度を与える処理である。この構成によれば、3つの画像間において対応関係を把握することが容易となる。同じ色相及び輝度は、ユーザーから見て同じように見えるものであれば足り、厳密な一致を求めるものではない。断層画像上にオーバーレイ表示されるイメージについては背景画像の輝度等を考慮して色相や輝度に固有の変化をもたせてもよい。
【0014】
本発明に係るプログラムは、生体内の運動組織に対して設定された複数の断面に対応する複数のフレーム列を処理する超音波画像処理装置において実行される超音波画像処理プログラムであって、前記各フレーム列を時間軸方向に順次解析することにより前記各断面上に定義される複数の区画について区画ごとに且つ時相ごとに運動評価値を演算する機能と、前記複数の断面上に定義された区画群の三次元配列を表す展開イメージを生成する機能であって、前記展開イメージの全部又は一部に対して第1の区画別表示処理を施す機能と、前記各断面上の組織形態及び区画列を表す模擬イメージセットを生成する機能であって、前記模擬イメージセットの全部又は一部に対して第2の区画別表示処理を施す機能と、を含み、前記第1の区画別表示処理及び前記第2の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、前記第1の区画別表示処理後の展開イメージと共に前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される、ことを特徴とする。超音波画像処理装置は、超音波診断装置内に組み込まれる装置、それからのデータを処理する情報処理装置、等である。
【0015】
上記構成によれば、展開イメージについての全区画につき同時把握できる利点を得つつも、その欠点である空間的把握の困難性を複数の模擬イメージを媒介させることにより補うことができるから、診断上有益な支援を行える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、展開イメージが表示される場合に展開イメージ中の個々の区画と組織部位との対応関係を直感的に認識できる。あるいは、特定の断面が展開イメージ上のどこに相当するかを直感的に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る超音波診断システムの好適な実施形態を示すブロック図である。
【図2】3つの断面についての第1配列を示す説明図である。
【図3】3つの断面についての第2配列を示す説明図である。
【図4】区画群とブルズアイ像とを示す図である。
【図5】表示画像の一例を示す図である。
【図6】フレーム間パターンマッチング処理を説明するための図である。
【図7】カラー表示処理の一例を示す図である。
【図8】図1に示したシステムにおける表示画像生成処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】表示画像の形成途中における表示内容を示す図である。
【図10】表示画像の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1には、本発明に係る超音波診断システムの好適な実施形態が示されており、図1はその全体構成を示すブロック図である。図1に示される超音波診断システムは医療の分野において用いられるものである。超音波診断システムは、図1に示す例において、上段に示す超音波診断装置と、下段に示すPC(パーソナルコンピュータ)40とにより構成されている。
【0020】
まず、超音波診断装置について説明する。プローブ10は、生体表面上に当接して用いられ、超音波を送受波する送受波器である。本実施形態において、プローブ10は、複数の振動素子からなるアレイ振動子を備えている。そのアレイ振動子は1Dアレイ振動子であり、そのアレイ振動子により超音波ビーム11が形成される。超音波ビーム11に対する電子走査により、走査面が構成される。図において、rが深さ方向すなわちビーム方向を示しており、θが電子走査方向を示している。電子走査方式としては、電子セクタ走査、電子リニア走査等が周知である。1Dアレイ振動子に代えて、2Dアレイ振動子を用いることも可能である。
【0021】
本実施形態においては、心臓、特に左室の機能を超音波診断するために、左室を横断する3つの断面が定められ、各断面に対して繰り返し走査面が形成される。断面の設定にあたっては、画像表示される超音波画像を見ながらプローブ10の当接位置や当接姿勢をユーザーにより調整することにより、適切な位置に断面が定められる。本実施形態においては、左室に対して3つの断面が設定され、その場合において、互いに交差関係をもって3つの断面を設定する第1配列と、互いに平行な関係をもって3つの断面を設定する第2配列とが選択される。もっとも、他の配列が用いられるようにしてもよい。各配列については後に図2、図3を用いて説明する。
【0022】
ちなみに、2Dアレイ振動子を用いれば、プローブの位置等を変更することなく3つの断面についてそれぞれフレーム列(フレームデータ列)を同時に取得することが可能である。いずれにしても、個々の断面毎にフレーム列が取得される。フレーム列は時系列順で並ぶ複数のフレームにより構成され、各フレームは複数のビームデータあるいはラインデータにより構成される。各ビームデータあるいは各ラインデータは複数のエコーデータあるいはピクセルデータにより構成される。
【0023】
送受信部12は送信ビームフォーマおよび受信ビームフォーマとして機能するものである。送信時において、送受信部12からアレイ振動子に対して複数の送信信号が並列的に供給される。これによって送信ビームが形成される。生体内からの反射波が1Dアレイ振動子にて受波されると、1Dアレイ振動子から複数の受信信号が送受信部12に対して並列的に出力される。送受信部12においては、複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、これによって整相加算後の受信信号すなわちビームデータを生成する。そのビームデータは、図示されていない信号処理部を経由してDSC(デジタルスキャンコンバータ)14へ出力される。
【0024】
DSC14は、複数のビームデータに基づいて断層画像データを生成する機能を有し、具体的には、座標変換機能、補間処理機能等を備えている。このDSC14によって、二次元断層画像のデータが生成され、それを構成する複数のラインデータすなわちフレームが表示処理部16へ出力される。
【0025】
本実施形態においては、DSC14から出力されたデータがシネメモリ20にも送られており、シネメモリ20上には一定期間にわたるフレーム列が格納される。シネメモリ20は複数のリングバッファとして機能するものであり、本実施形態においては、3つの断面に対応する3つのフレーム列がシネメモリ20に格納される。また、シネメモリ20には、それぞれのフレーム列を取得する際に同時に取得された心電波形も格納される。その心電波形は心電計19から出力されるものである。
【0026】
符号22は、シネメモリ20の記憶内容を概念的に示したものを表している。シネメモリ20には、3つの断面に対応したデータセットA,B,Cが格納され、ここでデータセットAは、第1断面に対応するフレーム列24と、そのフレーム列24に対応する心電波形26とにより構成される。同様に、第2断面に対応するデータセットBはフレーム列28と心電波形30とにより構成され、第3断面に対応するデータセットCはフレーム列32と心電波形34とにより構成される。それぞれのフレーム列に対して心電波形が対応づけられているのは、それぞれのフレーム列間において時相を合わせるためである。したがって、三次元ボリュームデータが取得され、それぞれのフレーム列の間において時相の対応関係が既知であるならば、心電波形は必ずしも格納する必要はない。
【0027】
DSC14から出力されるフレームは直接的に表示処理部16へ出力されてもよいし、シネメモリ20を経由して表示処理部16へ出力されてもよい。表示処理部16は、画像合成機能等を有し、表示処理部16から出力された画像データが表示部18へ送られる。表示部18には超音波画像が表示される。超音波画像は、例えば二次元断層画像であり、その他の超音波画像としては、二次元ドプラ画像、三次元画像、ドプラ波形画像等をあげることが可能である。
【0028】
PC40は、超音波診断装置、特にシネメモリ20から取得されるデータに基づいて画像処理を実行する情報処理装置である。PC40が、超音波診断装置に対してオンラインで接続されてもよいし、オフラインで接続されてもよい。例えば記憶媒体を経由して超音波診断装置からPC40へデータが渡されてもよい。もちろん、画像処理における一部の機能が超音波診断と同時にリアルタイムで遂行されてもよい。なお、本実施形態においてはDSC14の後のフレームがPC40に出力されているが、DSC14に入力される前のフレームすなわち座標変換前のフレームがPC40へ渡されるようにしてもよい。その場合においてはPC40においてDSC14と同様の処理を実行するようにすればよい。
【0029】
PC40において、トラッキング処理部42は、ユーザーにより選択されたフレーム列に対して時系列順でトラッキング処理を行うモジュールである。具体的には、フレーム間において各観測点毎にパターンマッチング処理を実行している。これにより各観測点の時間軸方向における二次元移動ベクトルが各フレーム毎に演算されることになる。ちなみに、複数の演算により選択された基準フレーム(初期フレーム)上において複数の観測点がマニュアルで指定されており、それ以降の各フレームにおいてはトラッキング処理により各点の動きが自動的に演算されることになる。このような一連の処理は、各フレーム列毎に実行されることになる。
【0030】
計測部44は、フレーム間において演算される観測点毎の二次元移動ベクトルに基づいて、あるいは、各フレーム上における観測点の位置に基づいて、計測値を演算するモジュールである。例えば、各区画のうちの代表観測点について計測値が求められる。そのような計測値としては、長さ、ストレイン、面積、等の各種の計測値をあげることができる。それらのいずれに対しても後述する処理を適用することが可能である。ちなみに計測値の種別についてはユーザーにより選択することが可能である。計測部44は、各フレーム列毎に区画を定義する機能を備えており、すなわち各断面上には複数の区画からなる連結体が定義される。もっとも、各区画の形態は各観測点の運動によって変化することになる。計測部44は、いずれにしても各時相、すなわち各フレーム毎に区画を単位として計測値を演算している。
【0031】
本実施形態において、計測部44は、異常判定部45を備えている。すなわち、計測値の演算において、あるいはトラッキング処理の結果として異常が判定された場合、その異常が判定された区画を識別する機能を備えている。この異常判定部45がトラッキング処理部42内に設けられてもよい。例えばパターンマッチングにおいて相関値が異常値である場合、具体的には類似度が所定値以下である場合に異常を判定するようにしてもよい。このような異常判定によればトラッキング処理や計測値演算において異常が認識された区画をユーザーに提示して、誤った診断を回避することが可能となる。
【0032】
計測部44において演算された計測値はオーバーレイ像生成部46、ブルズアイ像生成部48およびシェーマ像処理部50に送られている。それぞれの生成部46,48および処理部50には必要に応じて他の情報も与えられている。オーバーレイ像生成部46は、二次元断層画像としてのBモード画像上に重ねて表示されるグラフィック画像としてのオーバーレイ像を生成するモジュールである。本実施形態において、オーバーレイ像は、各フレーム毎に特定された複数の観測点により定義される複数の区画を含んでいる。その場合において、必要に応じてカラー表示処理が施され、すなわちカラーペイント処理が施されたオーバーレイ像が生成される。各区画の着色にあたって、色相および輝度(すなわちカラー)が計測値に対応づけられる。
【0033】
ブルズアイ像生成部48は、区画群を含むブルズアイ像を生成するモジュールである。本実施形態においては、カラー表示処理が施されたブルズアイ像が生成される。ブルズアイ像の具体例については後に図4を用いて説明するが、ブルズアイ像は、3つの断面上に設定された複数の区画の全部またはその主な区画を表すものであり、三次元的に存在する複数の区画の展開図に相当するものである。シェーマ像処理部50は、本実施形態における特徴的なモジュールの1つをなすものであり、3つの断面に対応した3つのシェーマ像からなるシェーマ像セットを生成するモジュールである。個々のシェーマ像はそれに対応する断面上の組織形態を模式的に表したものであり、本実施形態においては、さらに組織の形態に対して複数の区画が表現されており、しかも各区画に対してはカラー表示処理を施すことが可能である。オーバーレイ像、ブルズアイ像およびシェーマ像のそれぞれのカラー表示処理にあたっては、基本的に同様のカラー変換が実施されており、すなわち、ある区画に対して与えられた計測値に対応するカラーがそれぞれのイメージにおける対応の区画に与えられている。もっとも、オーバーレイ像はBモード断層画像上に合成されるものであり、すなわち背景の輝度の影響を受けやすいため、その像については輝度を若干変更する等の修正を施すことも可能である。
【0034】
イメージメモリ52内には、本実施形態において交差配列に対応する3つの断面を表す3つのシェーマ像と、平行配列に対応する3つの断面を表す3つのシェーマ像とがグラフィックイメージとして格納されている。符号54はイメージメモリ52の中身を模式的に表したものである。符号56は第一配列に対応した3つのシェーマ像を表しており、符号58は第2配列に対応した3つのシェーマ像を表している。いずれのシェーマ像セットを利用するのかについては、ユーザーにより直接的にまたは間接的に選択される。
【0035】
なお、後に説明するように、3つの断面を構成する各断面上にはそれぞれ所定個の区画が定義される。本実施形態において、それらの総和としての区画数は、ブルズアイ像を構成する区画の数に必ずしも一致していない。それは三次元空間内において重複関係にある複数の区画がいくつか生じているためである。
【0036】
表示処理部60は、表示部62に表示される表示画像の内容を構成するモジュールである。表示画像は、後に説明するように、Bモード画像とオーバレイ像とを合成してなる合成画像と、ブルズアイ像と、シェーマ像セットとを含むものであり、さらに必要に応じて数値表示等が含まれる。イメージメモリ64には、生成されたオーバーレイ像、ブルズアイ像、シェーマ像等が格納される。表示部62には、静止画像としての表示画像が表示され、あるいは動画像としての表示画像が表示される。ちなみに、上述したように複数のフレーム列の相互の時相関係を特定するにあたってはそれぞれの心電信号が用いられる。すなわち、それぞれのフレーム列は互いに異なる時間において取得されたものであるが、左室は周期的に運動する臓器であるため、それぞれのフレーム列において心拍時相が一致すれば実質的に同様の組織形態を有するとみなせる。
【0037】
次に、図2および図3を用いて3つの断面の配列について説明する。図2および図3には対象組織の一例として左室66が模式的に示されている。本実施形態において、第1配列が選択される場合、図2に示されるように、互いに交差関係をもった3つの断面68,70および72が左室に対して設定される。図2においては直交関係をもって3つの断面が設定されている。このような3つの断面はプローブの当接位置および当接姿勢を変えることにより順次設定可能である。図3には、第2配列が示されている。この第2配列においては、左室66に対して互いに平行関係をもって3つの断面74,76,78が設定されている。それぞれの断面上には、左室における心筋の外縁と内縁とに対してそれぞれ観測点列が設定され、2つの観測点列の間を複数のラインでつなげることにより、複数の区画からなる連結体が定義される。3つの断面に対応して3つの連結体が定義されることになるが、それらの全体を同時に表すためにブルズアイ像が用いられる。
【0038】
図4には区画群およびそれを展開したブルズアイ像が例示されている。(A)には三次元的な配列を有する区画群が模式的に表されている。ただし、ここでは左室の下側がやや開いた状態となっている。上方から下方にかけて3つのステージを観念でき、ここにおいて上段は4つの区画H1〜H4で構成され、中段は6つの区画M1〜M6で構成され、下段は6つの区画L1〜L6で構成されている。このような三次元的関係を有する区画群を二次元平面上に展開したものが(B)に示すブルズアイ像82である。上述した3つの段数に対応して、同心円状に3つの領域が存在し、ここで中央領域は4つの区画H1〜H4を有し、中央の領域は6つの区画M1〜M6を有し、外側の領域は6つの区画L1〜L6を有している。三次元的な形状を二次元展開したために各区画の形状サイズは修正あるいは変更されているが、大ざっぱに捉えて区画群全体の配列は維持されている。実際には左室の内部から各区画を眺めたような配列として同心円状のパターンをもってブルズアイ像82が構成されている。ちなみに、(A)に示す区画84Aは(B)に示す区画84Bに対応しており、同じく(A)に示す区画86Aは(B)に示す区画86Bに対応している。
【0039】
なお、本実施形態においては、3つの断面が設定されていたが、2つの断面あるいは4つ以上の断面が設定されてもよい。すなわち図示のようなブルズアイ像の表示を行う場合に限らず、広く展開イメージを表示する場合に本発明を適用することが可能である。
【0040】
図5には、図1に示した表示部62に表示される表示画像の一例が示されている。この表示画像は、合成画像100、ブルズアイ像102、シェーマ像セット104、心電波形106および数値表示欄108を備えている。以下それぞれについて説明する。
【0041】
合成画像100は、図示される例において、Bモード画像(二次元断層画像)101Aと、それに重ねて表示されるオーバーレイ像101Bとからなるものである。Bモード画像101Aは白黒の濃淡画像であり、この例においては心臓の断面が表されている。特に左室の断面が表されている。オーバーレイ像101Bは、上述したようにBモード画像に合成表示されるグラフィック画像であり、それは左室における心筋の外縁上に設定された複数の観測点列と、心筋の内縁上に設定された複数の観測点列とを備えている。それらの観測点列の全部または一部がユーザーにより設定される。ユーザーに設定された複数の観測点に基づいて必要に応じて補間処理等により自動的に観測点が付加される。図においては外縁上に設定される複数の観測点に対してスプライン処理を適用することによりトレースラインが生成されており、同じく、内縁上に設定された複数の観測点に対してスプライン処理を適用することによりトレースラインが生成されている。2つのトレースライン間にはその両端間に複数のラインが設定され、これによって複数の区画、図においては6つの区画が定義されている。
【0042】
各区画は、少なくとも4つの観測点によって定義されるものであり、図示の例においては6つの点で各区画の形状が定義されている。もちろん、さらに多くの観測点によってその形状が定められてもよい。各観測点毎にフレーム間において上述したパターンマッチング処理が適用されフレーム間における二次元移動ベクトルが演算される。
【0043】
オーバーレイ像101Bにおいて、複数の区画により連結体が構成され、それは具体的には6つの区画を連ねたものである。本実施形態においては、上述したように各区画毎に各時相で計測値が演算され、その計測値がカラーにより表現される。具体的には、個々の区画毎に設けられた計測値に対応するカラーが当該区画に与えられ、すなわち区画に対する着色処理が施される(図7参照)。ただし、その着色処理は背景としてのBモード画像の観察を必要以上に妨げないような透明感をもった表示処理である。
【0044】
ブルズアイ像102は、図示の例において、カラー表示処理が施された後のブルズアイ像である。上述したように、ブルズアイ像は複数の区画の集合体として構成され、各区画毎に求められた計測値が各区画の着色内容として表現されている。例えば符号114は1つの区画を表しており、その区画については当該区画について求められた計測値に対応する色素および輝度が与えられる。ちなみに各区画に対しては計測値が数値として表示されており(符号114参照)、数値として具体的に計測値を理解することも可能である。ただし、全体の計測値の傾向や変化を直感的に理解するためには上述したようなカラー処理を施すのが望ましい。
【0045】
シェーマ像セット104は、本実施形態において、3つのシェーマ像により構成される。具体的には、左室に対して設定された3つの断面に対応する。3つのシェーマ像116,118,120が表示される。個々のシェーマ像は、それに対応する断面上に現れる標準的な組織形態を模式図として表したものであり、さらに、本実施形態においては、各シェーマ像は、対応する断面上に設定される複数の区画を表しており、さらに各区画に対してはカラー表示処理が施されている。オーバーレイ像101Bと、ブルズアイ像102と、シェーマ像セット104のそれぞれのカラー表示処理にあたっては同じカラー変換関数が利用されており、すなわち3つのイメージ間においてカラーは互いに対応づけられている。すなわち、ある区画に着目した場合、それぞれのイメージにおいては当該区画が同じカラーによって表現されている。もっとも、その場合におけるカラーの同一性はユーザーの観察上における同一性であれば足りる。
【0046】
図5に示す例においては、表示された3つのシェーマ像116,118,120のそれぞれに対してカラー表示処理が施されている。この例においては、直交関係にある3つの断面に対応する3つのシェーマ像が表されており、そのうちで特定のシェーマ像120に対して枠マーカー112が付されている。この枠マーカー112はハイライト表示体あるいは特定のカラー表示体である。この枠マーカー112が付されているシェーマ像120は、左側に表示されている合成画像100に対応するものであり、すなわち現在選択されている断面を表している。この図5に示す例において、枠マーカー112が付されている断面をブルズアイ像102において認識することはできないが、後に示す図10においては、ブルズアイ像102において、選択されている断面に対応する区画のみがカラー表現されている。これによって断面を直感的に認識することが容易となっている。これについては後に再び説明する。
【0047】
心電波形106は心電信号に基づいて生成され、その心電波形はシネメモリ上に記憶された3つの心電波形のうちで特定の波形を表している。いずれの波形を選択するのかについては適宜定めればよい。本実施形態においては、3つの断面間において心電波形が実質的に同一であることが前提となっているためである。符号124は時相バーを表しており、この時相バーは合成画像100が取得されているタイミングを時間軸上において表したものである。すなわち時相バー124が表している時相に対応するものが合成画像100であり、またブルズアイ像102およびシェーマ像セット104である。時相バー124を固定して、すなわち静止画像としてそれぞれのイメージを表示させることもでき、時相バー124をユーザーにより動かすことにより、任意の時相についてそれぞれのイメージを表示させることも可能である。すなわち時相バー124と各イメージの時相とが連動関係にある。また、自動的に時相を変えて動画像として各イメージを連動表示させることも可能である。この場合においては、時相バー124は時間軸方向に運動することになる。
【0048】
符号108は上述したように数値表示欄を表しており、本実施形態においてはブルズアイ像102が16個の区画を備えており、数値表示欄108においては各区画毎に計測された計測値が数値により表示される。
【0049】
本実施形態においては、上述したように異常判定機能が備えられており、パターンマッチング処理においてあるいは計測値演算処理においてエラーが判定された場合には、そのエラー判定に係る区画を識別するためにエラーマーカー122が表示される。エラーマーカー122は、本実施形態においてシェーマ像セットにおけるエラー発生にかかる区画の近傍に表示される。もちろんそのようなグラフィックマーカーではなく、カラー表現を利用してエラーを積極的に表示するようにしてもよい。またブルズアイ像においてエラー区画を特定できるように表示を制御してもよい。これはBモード画像上においても同様である。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、合成画像とブルズアイ像との他に、シェーマ像セットが表示され、しかもそのシェーマ像セットに対しては一部またはその全部に対して他のイメージと同様のカラー表示処理が適用されるため、そのようなシェーマ像セットを経由してブルズアイ像あるいは合成画像を観察することにより、それらの画像間における区画対応関係を容易に理解することが可能である。また、シェーマ像セットの全てに対してカラー表示処理を適用するならば、それら3つのシェーマ像を観察するだけで、ブルズアイ像を構成する基礎となった計測値の空間的な分布やその変化を容易に認識することが可能となる。すなわちBモード画像には表れていない他の2つの断面上における計測値の変化を画面上で確認することが可能となる。また本実施形態においては、枠マーカーの表示あるいは指定により、現在認識されているBモード断層画像とそれに対応するシェーマ像との関係を即座に認識することが可能である。
【0051】
次に、図8に基づいて、図1に示したPC40における画像処理についてより具体的に説明する。図8に示すフローチャートは、例えば3つの断面についての配列が選択されている状態において実行される。もちろん、そのような選択がフローチャートの実行途中で行われるようにしてもよい。またこのフローチャートはシネメモリからのデータの取り出し後に実行されるものである。
【0052】
S10においては、ユーザーによりビューが選択される。すなわち3つの断面における特定の断面が選択されることになる。この選択はシネメモリ上における特定のフレーム列の選択に相当する。S12においては、選択されたフレーム列に基づいて静止画像あるいは動画像としてBモード断層画像が表示される。ユーザーは、そのような断層画像を見ながら複数の観測点を指定するための基準フレーム(初期フレーム)の選択を行う。S14においては、選択された基準フレーム上においてポインティングデバイスを利用して複数の観測点(トラッキングポイント)がマニュアルにより指定される。この場合においては、基準フレームに表れている心筋の外縁および内縁に沿って複数の観測点列がユーザーにより指定されることになる。必要に応じて、観測点列に対しては補間処理が適用され自動的に補間点が加えられる。
【0053】
このように基準フレームに対して複数の観測点が指定されると、S16においては、基準フレーム以降の各フレーム間において各観測点毎にパターンマッチング処理すなわちトラッキング処理が実行される。これについて図6を用いて説明すると、(A)には前フレームが示されており、(B)には後フレームが示されている。前フレーム上において、今注目点126が特定されている場合、後フレームにおいて注目点126に対応する対応点130が特定され、それを基準として探索エリア132が定義される。探索エリア132内には元ウィンド128と比較される比較ウィンド134がその位置を変化させながら順次設定される。そして各ウィンド位置毎に2つのウィンド間における相関値が演算され、最も良い相関値が得られた位置をもって最良ウィンド位置が特定され、当該ウィンド位置の中心点をなす点が新たな注目点の位置として定められる。従って前フレーム上における注目点と後フレーム上における注目点との間の座標の差として二次元移動ベクトルが定義されることになる。このようなフレーム間におけるパターンマッチング処理が各フレーム毎にすなわち各時相毎に、加えて各観測点毎に実行されることになる。
【0054】
図8に戻って、S16において、本実施形態においてはトラッキングにおいてエラーが判定されており、すなわち例えば異常の相関値が得られた場合にエラーが判定されている。続いて、S18においては、画面内にブルズアイ像および選択されたシェーマ像セットが表示される。すでに表示されている場合にはこの工程は省略される。選択されたシェーマ像セットは、上述した第1配列または第2配列の中からユーザーにより選択された配列に対応するものである。現在認識しているBモード画像すなわち断面に対応するシェーマ像に対して枠マーカーが付加される。この状態が図9に示されている。現在においては1番目のフレーム列の処理が行われており、まだ計測値については演算されていないため、図9に示される各イメージに対してはカラー表示処理が未だ適用されていない。合成画像100AはBモード画像101Aとオーバーレイ像101Cとで構成され、ここでオーバーレイ像101Cは複数の観測点とそれらをつなぐトレースラインを含み、さらに2つのトレースライン間をつなぐ複数のラインを含んでいる。ただし、各区画は定義されているものの、それに対する着色処理は施されていない。同様に、ブルズアイ像102およびシェーマ像セット104Aにおいてもカラー表示処理は施されていない。ただし、枠マーカー142が特定のシェーマ像140に対して付されており、その枠マーカー142は現在注目している断面を表している。すなわち当該断面に対応するシェーマ像140に対しては枠マーカーが付加されている。そのような特定のシェーマ像140に対してはグレー表現が施され、あるいは計測値を表すカラーとは別の色づけがなされる。同様に、ブルズアイ像102Aにおいても現在の断面に対応する複数の区画に対して識別処理が施されている(符号136参照)。断面に対応するシェーマ像140およびブルズアイ像102A上の複数の区画に対応する識別処理は当該断面が直感的に認識できるものであればよく、着色処理あるいはグレー表現によらずに、何らかのマーカーを表示するようにしてもよい。例えば符号138で示すような断面を示すライン状のグラフィックを表現するようにしてもよい。
【0055】
再び図8に戻って、S20においては、フレーム毎に区画単位で計測が実行され、その計測結果がブルズアイ像等に反映される。計測値の反映は個々のフレームの計測値演算処理を行う都度実施するようにしてもよいし、全てのフレームについての計測値演算が終了した後に実施するようにしてもよい。3つの断面についてのS10〜S20の繰り返し数に応じてブルズアイ像においてカラー表示処理が施されているエリアが拡大していくことになる。
【0056】
S22においては、3つの断面すなわち3つのビューのうちで処理を行っていないものがあるか否かが判断され、そのような未処理のビューがあればS10以降の各工程が繰り返し実行される。一方、S22においてそのようなビューがないとするならばS24が実行される。
【0057】
図10には、図8に示したS20の工程が1番目の断面に対して適用された後の状態が示されている。すなわち、ブルズアイ像102Bにおいては、現在選択されている断面に対応する6つの区画に対してのみカラー表示処理が施されている(144参照)。同じく、シェーマ像セット104Bにおいては特定のシェーマ像140に対してのみカラー表示処理が施されており、それを表すために枠マーカー142が表示されている。心電波形106Bにおいては、現在表示している時相が時間軸上において時相マーカー124によって表されている。その合成画像100Bはその時相に対応する断層画像を表しており、具体的には、その合成画像100Bは上述したようにBモード断層画像101Aとカラー表示処理が施されたオーバーレイ像101Bとにより構成されている。オーバーレイ像101Bは透明感をもってペイント処理が施された画像であり、背景としての組織構造をオーバーレイ像101Bを介して観察することが可能である。
【0058】
従って、図8に示したS10〜S20の処理を繰り返すと、ブルズアイ像およびシェーマ像セットにおいてカラー表示処理される領域が増大していくこととなり、最終的には図5に示したような表示画像を得ることが可能となる。もちろん、ユーザーの選択により、図10に示したような特定の断面だけに対してカラー表示処理が施された表示内容を構成することも可能である。すなわち一部処理モードおよび全部処理モードのいずれをも選択することが可能である。
【0059】
図8に戻って、S24においては、ユーザーにより必要に応じて時相が指定され、これによって当該時相に対応する表示内容が画面表示されることになる。その場合においては時相をマニュアルで変更するようにしてもよいし、時相を連続的にすなわち自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0060】
上記実施形態においては、単一カラー表示モードおよび全部カラー表示モードのいずれを選択した場合であっても、カラー表示処理が施されたオーバーレイ像、ブルズアイ像およびシェーマ像セットを得ることができるので、ユーザーはそのようなイメージ上におけるカラー表示処理結果を参照することによりイメージ間における区画の対応関係を直感的に認識でき、特に三次元空間内における断面の位置を容易に把握することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
20 シネメモリ、42 トラッキング部、44 計測部、45 異常判定部、46 オーバレイ像生成部、48 ブルズアイ像生成部、50 シェーマ像処理部、60 表示処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の運動組織に対して設定された複数の断面に対応する複数のフレーム列を処理する超音波画像処理装置において、
前記各フレーム列を構成する複数のフレームを時間軸方向に順次解析することにより前記各断面上に定義される複数の区画について区画ごとに且つ時相ごとに運動評価値を演算する演算手段と、
前記複数の断面上に定義された区画群の三次元配列を表す展開イメージを生成する手段であって、前記展開イメージの全部又は一部に対して第1の区画別表示処理を施す第1のイメージ生成手段と、
前記各断面上の組織形態及び複数の区画を表す模擬イメージセットを生成する手段であって、前記模擬イメージセットの全部又は一部に対して第2の区画別表示処理を施す第2のイメージ生成手段と、
を含み、
前記第1の区画別表示処理及び前記第2の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、
前記第1の区画別表示処理後の展開イメージと共に前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記複数の断面の中から選択された選択断面に対応するフレーム列中の各フレームに基づいて断層画像を形成する断層画像形成手段と、
前記断層画像に合成され且つ前記選択断面上の複数の区画を表すオーバーレイ画像を生成する手段であって、前記オーバーレイ画像に対して第3の区画別表示処理を施す第3のイメージ生成手段と、
を含み、
前記第3の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、
前記第1の区画別表示処理後の展開イメージ及び前記断層画像に対して前記第3の区画別表示処理後のオーバーレイ画像を合成することによって生成される合成画像と共に、前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記第1のイメージ生成手段は、一部処理モードにおいて、前記展開イメージに表示される区画群の中で前記複数の断面の中から選択された選択断面に対応する複数の区画に対して前記第1の区画別表示処理を施し、
前記第2のイメージ生成手段は、前記一部処理モードにおいて、前記模擬イメージセットの中で前記選択断面に対応する模擬イメージに対して前記第2の区画別表示処理を施す、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の装置において、
前記第1のイメージ生成手段は、全部処理モードにおいて、前記展開イメージに表示される区画群の全部に対して前記第1の区画別表示処理を施し、
前記第2のイメージ生成手段は、前記全部処理モードにおいて、前記模擬イメージセットの全部に対して前記第2の区画別表示処理を施す、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の装置において、
前記演算手段は、
前記各フレーム列におけるフレーム間において複数の観測点の二次元移動を演算する手段と、
前記複数の観測点の二次元移動に基づいて区画単位で運動評価値を演算する手段と、
前記複数の観測点の二次元移動及び前記区画単位の運動評価値の少なくとも一方に基づいて、前記複数の観測点の中でエラー点を判定する手段と、
を含み、
前記第2のイメージ生成手段は、前記模擬イメージセットに対して前記エラー点に対応する区画が識別されるように識別処理を施す、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項6】
請求項2記載の装置において、
前記第1乃至第3の区画別表示処理は、前記運動評価値に応じて互いに同じ色相及び輝度を与える処理である、ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項7】
生体内の運動組織に対して設定された複数の断面に対応する複数のフレーム列を処理する超音波画像処理装置において実行される超音波画像処理プログラムであって、
前記各フレーム列を時間軸方向に順次解析することにより前記各断面上に定義される複数の区画について区画ごとに且つ時相ごとに運動評価値を演算する機能と、
前記複数の断面上に定義された区画群の三次元配列を表す展開イメージを生成する機能であって、前記展開イメージの全部又は一部に対して第1の区画別表示処理を施す機能と、
前記各断面上の組織形態及び区画列を表す模擬イメージセットを生成する機能であって、前記模擬イメージセットの全部又は一部に対して第2の区画別表示処理を施す機能と、
を含み、
前記第1の区画別表示処理及び前記第2の区画別表示処理は、区画ごとに且つ時相ごとに演算される運動評価値に応じて個々の区画の表示態様を変化させる処理であり、前記第1の区画別表示処理後の展開イメージと共に前記第2の区画別表示処理後の模擬イメージセットが表示される、ことを特徴とする超音波画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−157608(P2012−157608A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20452(P2011−20452)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】