説明

超音波画像処理装置

【課題】超音波診断装置によって取得された画像について、血管壁を容易に特定することを目的とする。
【解決手段】フレームデータ領域22−1から読み込まれたフレームデータに対し、ノイズ等を低減するフィルタ処理(S102)が施された後、境界判定処理(S103)が実行される。境界判定処理は、フレームデータ画像における観測境界線を求める処理である。血管壁で反射する超音波のレベルが弱い場合、境界線は断片的に観測され、境界線を断片的に表す複数の観測境界線によって1つの境界線が特定される。境界判定処理の後、観測境界線の間を補間する境界線修正処理(S104)が実行され、補間後境界線が求められる。補間後境界線は、フレームデータ画像に重ねてディスプレイに表示される(S105、S106)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、画像上において血管壁の境界線を特定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の循環器、血管等を診断する装置として超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、超音波を被検体に向けて送信し、被検体内で反射した超音波に基づいて断層画像をディスプレイに表示する。血管の診断に際しては血管断面が断層画像に表示され、ユーザは、動脈硬化の有無等を把握する。
【0003】
超音波診断装置には、下記の特許文献1に記載されているように、血管断面を表す断層画像データに対する数値演算に基づいて、IMT(Intima-Media Thickness)等の診断数値を取得するものがある。また、超音波診断装置には、取得された超音波画像から血管を識別するものがある。例えば、特許文献2に記載されている超音波血流診断装置においては、複数のフレーム画像のそれぞれにおいて血管の領域を探索し、連続した血管を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−75306号公報
【特許文献2】特開平7−178091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断層画像に基づく血管の診断においては、血管壁を構成する内膜、中膜および外膜の画像が用いられることが多い。例えば、IMTは、内膜の画像に基づいて求められる。しかし、血管壁には、反射する超音波の強度が十分でない領域が生じることがある。この場合、血管壁を特定することが困難となり、血管の診断に困難を伴う場合があった。
【0006】
本発明は、超音波診断装置によって取得された画像について、血管壁を容易に特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、前記画像データが示す画像について、前記血管壁の境界線の一部を示す有効区間、および前記有効区間に挟まれる無効区間を特定する区間特定部と、前記無効区間に対する補間処理を実行する補間処理部と、前記補間処理によって求められた補間線および前記有効区間に基づいて、前記境界線を求める境界線決定部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、血管で反射し受信された超音波に基づいて画像データが生成される。そして、画像データが示す画像について、有効区間と無効区間とが特定され、無効区間に対する補間処理によって境界線が求められる。これによって、無効区間に対応する区間についても境界線が求められ、血管壁が容易に特定される。
【0009】
また、本発明に係る超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記区間特定部は、観測された前記境界線を示す観測境界線を求める観測境界線決定手段と、前記観測境界線として求められていない非線状区間を特定する非線状区間特定手段と、前記観測境界線の一端側または両端側にある前記非線状区間の長さに応じた区間を、前記観測境界線の当該一端側または両端側から除去し、前記有効区間を特定する有効区間特定手段と、前記有効区間に挟まれる区間を前記無効区間として特定する無効区間特定手段と、を備える。
【0010】
本発明においては、観測された境界線を示す観測境界線が求められ、観測境界線として求められていない非線状区間が特定される。そして観測境界線の一端側または両端側にある非線状区間の長さに応じた区間が、観測境界線の当該一端側または両端側から除去され、有効区間が特定される。観測境界線の両端においては反射する超音波の強度が十分でないことが多く、観測境界線の両端は境界線の形状を適切に表していないことがある。本発明によれば、観測境界線の一端側または両端側にある非線状区間の長さに応じた区間が、観測境界線の一端側または両端側から除去されるため、観測境界線のうち境界線の形状を適切に表していない部分が除去される。
【0011】
本発明における超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記観測境界線決定手段は、所定の長さを超える線状の図形を前記観測境界線として求める。
【0012】
観測境界線のうち長さが短いものには、ノイズ等により実際の境界線を適切に表さないものがある。本発明によれば、所定の長さ以下の観測境界線が処理対象から除外される。これによって、不適切な境界線が特定されることが回避される。
【0013】
本発明における超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記補間処理は、前記無効区間の両端と、当該両端に繋がる各前記有効区間上に設定された補間点と、に対する処理である。
【0014】
本発明によれば、有効区間に設定された補間点および無効区間に対して補間処理が実行される。これによって、有効区間および無効区間を滑らかに結ぶ補間線が求められ、自然な境界線が特定される。
【0015】
本発明における超音波画像処理装置においては、望ましくは、前記補間点は、各前記有効区間と前記無効区間との各接続端から、前記無効区間の長さに応じた長さだけ、各前記有効区間側に変位した位置に設定される。
【0016】
本発明によれば、補間点は、各有効区間と無効区間との各接続端から、無効区間の長さに応じた長さだけ、各有効区間側に変位した位置に設定される。これによって、予め定められた数値計算処理に当てはめて補間処理を実行することが容易となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波診断装置によって取得された画像について、血管壁を容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】フレームデータが示す画像の例を示す図である。
【図3】境界特定・画像表示処理において画像解析部が実行する処理を示すフローチャートである。
【図4】1つのライン画像における画素値の分布を概念的に示した図である。
【図5】境界判定処理のフローチャートである。
【図6】境界線修正処理のフローチャートである。
【図7A】境界線修正処理を概念的に示す図である。
【図7B】境界線修正処理を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成が示されている。超音波診断装置は、被検体の組織の断面を画像の輝度の強弱によって示す断層画像を表示する。この超音波診断装置は、断層画像上に血管断面を表した場合には、断層画像上における血管壁を特定する機能を有する。血管壁の特定は、断層画像を示すフレームデータに基づいて、血管壁の境界線を求めることによって行われる。境界線には、血管壁と血管外側の領域との間の境界、血管壁を形成する外膜、中膜、および内膜の膜間の境界、ならびに、血管壁と血管内腔との間の境界を表すものがある。境界線は断層画像に重ねて表示される。また、求められた境界線に基づいてIMT等の診断数値が計算される。
【0020】
超音波診断装置は、超音波プローブ10、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、操作パネル20、メモリ22、画像表示部24、およびコントローラ26を備える。コントローラ26は、操作パネル20における動作設定に応じて、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18および画像表示部24を制御する。
【0021】
また、送信部12、受信部14、断層画像生成部16、画像解析部18、および画像表示部24は、演算処理を実行するプロセッサを備え、それぞれ、演算の過程で得られた情報を記憶する局所的メモリを有する。これらの構成要素は、自らの局所的メモリに情報を記憶させる他、コントローラ26の制御を介してメモリ22に情報を記憶させ、コントローラ26の制御を介して必要に応じてメモリ22からその情報を読み込んでもよい。
【0022】
断層画像を示すフレームデータを取得するための構成および処理につき説明する。超音波プローブ10には、例えば、複数の振動子が配列されたアレイ振動子プローブが用いられる。超音波診断装置においては、超音波プローブ10による送受信ビーム30の二次元走査面28が観測面とされ、その観測面における断層画像が画像表示部24に表示される。そのため、超音波プローブ10は、超音波が送受信される面が被検体に向けられ、二次元走査面が診断対象の血管の軸断面と一致する姿勢で支持される。
【0023】
送信部12は、パルス変調された電気信号(パルス変調信号)を超音波プローブ10の各振動子に出力する。各振動子は、送信部12から出力されたパルス変調信号に基づいて、超音波パルスを発生する。この際、送信部12は、送信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、送信部12は、各振動子に出力する信号の遅延時間を制御して送信ビームを形成し、送信ビームを二次元走査する。この二次元走査には、超音波プローブ10側を軸として扇状に送信ビームを走査するセクタ走査を採用してもよい。
【0024】
超音波プローブ10の各振動子は、被検体内において反射した超音波パルスを受信する。各振動子は、受信した超音波パルスに基づいて電気信号を発生し、その電気信号を受信部14に出力する。受信部14は、受信される超音波パルスのビームフォーマとして機能する。すなわち、受信部14は、複数の振動子から出力された複数の電気信号を整相加算して受信ビームを形成し、送信ビームと方向を同じくして、受信ビームを二次元走査する。
【0025】
受信部14は、受信された超音波パルスに対応するビームデータを生成する。このビームデータは、特定の送受信ビーム方向(送信ビームおよびそれに対応する受信ビームの方向)について、超音波プローブ10からの各距離上で生じた反射波の強度を時間軸上に表したデータである。受信部14は、このように生成したビームデータを断層画像生成部16に出力する。
【0026】
送信部12および受信部14は、被検体に対し送受信ビームの二次元走査を複数回に亘って繰り返し行う。断層画像生成部16は、一断面ごとに得られるビームデータ群に基づいてフレームデータを生成し、コントローラ26の制御を介してフレームデータをメモリ22のフレームデータ領域22−1に記憶させる。
【0027】
フレームデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)に従うフォーマットでフレームデータ領域22−1に保存される。この場合、コントローラ26は、一断面ごとに得られるビームデータ群を、DICOMに従うフォーマットに変換してフレームデータを生成する。
【0028】
画像解析部18は、繰り返し行われる二次元走査によって、順次、フレームデータ領域22−1に記憶されたフレームデータに基づいて画像データを生成し、画像表示部24に出力する。画像表示部24は、ディジタルスキャンコンバータ、ディスプレイ等を備え、画像データをビデオ信号に変換してディスプレイに出力する。ディスプレイは、ビデオ信号に基づいて画像を表示する。
【0029】
なお、ここでは、超音波プローブ10として、アレイ振動子プローブについて説明したが、超音波が送受信される面に複数の振動子が配列され、複数の振動子のうち超音波ビームの形成に寄与させるものを選択して電子走査を行うコンベックスプローブ等を採用してもよい。また、送受信ビームを二次元走査面でセクタ走査する構成の他、リニア走査を行う構成を採用してもよい。リニア走査を行う構成としては、複数の振動子が直線状に配列され、超音波を送受信する振動子を配列の一端から他端へと切り替えていく構成や、振動子を直線状に移動させる構成を採用してもよい。
【0030】
図2には、フレームデータが示す画像(以下、フレームデータ画像とする。)の例が概念的に示されている。フレームデータ画像においては、図2の拡大部分に示されているように、縦方向(被検体に対する深さ方向)に複数の画素34が配列されたライン画像32が、横方向に並べて配列されている。
【0031】
血管壁は、内膜36、中膜38および外膜40から構成される。内膜36に囲まれた領域42は、血管内腔と称される。血管壁には、反射する超音波の強度が弱い領域が生じることがある。図2は、内膜36において反射する超音波の強度が、血管中の他の部位で反射する超音波の強度よりも弱い例を示している。この場合、図2に示されているように、内膜36の画像は、その一部が薄くなったり、欠落したりする。そのため、画像認識処理によって血管壁の各境界線を表した場合、血管内腔42と内膜36との間の境界線が断片的に表されることがある
【0032】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置は、以下に説明する境界特定・画像表示処理によって、断片的に観測された境界線を観測境界線として求める。そして、観測境界線に挟まれる区間に対する補間処理によって補間後境界線を求め、補間後境界線をフレームデータ画像に重ねて表示する。図2には、浅い側の血管壁(前壁)の内膜36と血管内腔42との間に観測境界線44が白線を以て仮想的に描かれており、この白線の欠落部分に対する補間処理によって境界線が特定される。
【0033】
境界特定・画像表示処理において、画像解析部18が実行する処理について説明する。図3にはそのフローチャートが示されている。この処理においては、フレームデータ領域22−1から読み込まれたフレームデータに対し(S101)、ノイズ等を低減するフィルタ処理(S102)が施された後、境界判定処理(S103)が実行される。境界判定処理は、フレームデータ画像における観測境界線を求める処理である。血管壁で反射する超音波のレベルが弱い場合、境界線は断片的に観測され、境界線を断片的に表す複数の観測境界線によって1つの境界線が特定される。境界判定処理の後、観測境界線の間を補間する境界線修正処理(S104)が実行され、補間後境界線が求められる。補間後境界線は、フレームデータ画像に重ねてディスプレイに表示される(S105〜S107)。以下では、境界特定・画像表示処理の各ステップについて説明する。
【0034】
画像解析部18は、コントローラ26による制御を介して、境界特定・画像表示処理の対象とするフレームデータをフレームデータ領域22−1から読み込む(S101)。画像解析部18は、フレームデータに対しフィルタ処理を施す(S102)。この処理においては、例えば、次のような平均化フィルタ処理が実行される。すなわち、画像解析部18は、処理対象の画素と、その画素の周辺の画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、処理対象の画素の画素値を、その求められた平均値に置き換える。
【0035】
このような平均化フィルタ処理には、kタップ移動平均フィルタ処理がある。この処理は、処理対象の画素と、その上方向のk個の画素(上方向にある画素の個数がk未満であるときは、上方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理、あるいは、処理対象の画素と、その下方向のk個の画素(下方向にある画素の個数がk未満であるときは、下方向の総ての画素)とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理である。
【0036】
また、処理対象の画素と、右方向または左方向の画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。さらに、処理対象の画素と、その画素を囲む画素とを平均値計算の母集団に含めて平均値(処理対象の画素を囲む画素の総てが存在しない場合には、存在する画素の限りにおける平均値)を求め、求められた平均値を処理対象の画素の画素値とする処理を実行してもよい。
【0037】
また、フィルタ処理は、各画素について、画素値が所定の閾値以下である場合に、その画素値を0に置き換えるノイズ除去処理を含むものとしてもよい。
【0038】
フレームデータに対して、フィルタ処理を施すことで、フレームデータ画像が平滑化され、画像の欠落部分を減少させることができる。また、超音波診断装置を構成する各回路で生じる電気的なノイズ、超音波の多重反射等によって血管内腔等に生じるノイズを低減することができる。
【0039】
画像解析部18は、フィルタ処理が施されたフレームデータについて、境界判定処理を実行する(S103)。この処理は、フレームデータが示す各ライン画像について、観測境界線上の点を境界点として検出し、各ライン画像について検出された境界点の集合によって、観測境界線を特定する処理である。
【0040】
図4には、1つのライン画像における画素値の分布が概念的に示されている。x軸は超音波の深さ方向の位置を示し、y軸は画素値を示す。x軸の正方向は深さが深い方向を示す。
【0041】
ここでは、浅い側の血管壁を前壁と称し、深い側の血管壁を後壁と称する。図4における画素値分布の極小点A1は、前壁における外膜と中膜との間の境界点を示し、極小点A2は、前壁における中膜と内膜との間の境界点を示す。前壁の外側で画素値が零となるゼロ点A0は、前壁と血管外側の領域との間の境界点を示し、前壁の内側で画素値が零となるゼロ点A3は、内膜と血管内腔との間の境界点を示す。
【0042】
また、画素値分布の極小点P1は、後壁における外膜と中膜との間の境界点を示し、極小点P2は、後壁における中膜と内膜との間の境界点を示す。後壁の外側で画素値が零となるゼロ点P0は、後壁と血管外側の領域との間の境界点を示し、後壁の内側で画素値が零となるゼロ点P3は、内膜と血管内腔との間の境界点を示す。
【0043】
図5には、境界判定処理のフローチャートが示されている。画像解析部18は、各ライン画像について境界点A0〜A3および境界点P0〜P3を探索し、探索された境界点の各座標値を求める(S103−1)。
【0044】
画像解析部18は、境界点の座標値に基づいて、前壁および後壁のそれぞれにおける血管壁と血管外側の領域との間の境界線(第1境界線L1)、外膜と中膜との間の間の境界線(第2境界線L2)、中膜と内膜との間の境界線(第3境界線L3)、および、内膜と血管内腔との境界線(第4境界線L4)のそれぞれについて、各観測境界線を表す観測境界線データを求める(S103−2)。ここで、1つの観測境界線データは、1つの観測境界線をなす複数の境界点の各座標値を含む座標値群である。
【0045】
画像解析部18は、前壁の第1境界線L1〜第4境界線L4のそれぞれについて、各境界線に対応して求められた各観測境界線データをメモリ22の境界線データ領域22−2に記憶する(S103−3)。同様に、画像解析部18は、後壁の第1境界線L1〜第4境界線L4のそれぞれについて、各境界線に対応して求められた各観測境界線データをメモリ22の境界線データ領域22−2に記憶する(S103−3)。
【0046】
このような境界判定処理によれば、前壁および後壁のそれぞれにおける各境界線について観測境界線が求められ、各観測境界線データが境界線データ領域22−2に記憶される。1つの境界線を断片的に表す複数の観測境界線は、フレームデータ画像上においてその境界線が及んでいる可能性が高い区間を示す。以下に説明する境界修正処理(S104)では、複数の観測境界線の間を補間する処理が実行され、補間後境界線が求められる。
【0047】
図6には、境界線修正処理(S104)のフローチャートが示されている。また、図7Aおよび図7Bには、1つの境界線について実行される境界線修正処理が概念的に示されている。ここでは、図7Aおよび図7Bに示されるように、1つの境界線に対応する境界線修正処理について説明する。
【0048】
画像解析部18は、処理対象の境界線に対応する複数の観測境界線データを境界線データ領域22−2から読み込む(S104−1)。図7A(a)には、境界線データ領域22−2から読み込まれた4つの観測境界線データに対応する4つの観測境界線Q1〜Q4が示されている。
【0049】
画像解析部18は、隣接する2つの観測境界線の間に非線状区間を特定する(S104−2)。非線状区間は、隣接する2つの観測境界線における近接する各一端を直線で結んだ区間である。図7A(b)においては、観測境界線Q1およびQ2について、近接する各一端を直線で結んだ非線状区間R12が示されている。また、観測境界線Q2およびQ3について、近接する各一端を直線で結んだ非線状区間R23が示され、観測境界線Q3およびQ4について、近接する各一端を直線で結んだ非線状区間R34が示されている。
【0050】
画像解析部18は、複数の観測境界線のうち、長さが閾値TL以下のものを境界線修正処理の対象から除外する(S104−3)。閾値TLは、観測境界線に隣接する非線状区間の長さに基づいて、例えば、次のように決定される。
【0051】
(i)観測境界線の一端側に非線状区間があり、観測境界線の他端がフレームデータ画像の外縁に接している場合には、その観測境界線に対する閾値TLは、その一端側の非線状区間の長さのa倍とする。ここで、aは1未満の正の数であり、操作パネル20においてユーザによって設定される。
【0052】
(ii)観測境界線の両端側に非線状区間がある場合には、その観測境界線に対する閾値TLは、両端の非線状区間を合計した長さの0.5a倍とする。また、両端の非線状区間のうち操作パネル20において選択された方の長さのa倍を閾値TLとしてもよい。
【0053】
図7A(a)に示される観測境界線Q1〜Q4の例では、図7A(c)に示されるように、観測境界線Q3が処理対象から除外されている。すなわち、観測境界線Q3の長さが、閾値TL=0.5a(w23+w34)以下であるため、観測境界線Q3は、処理対象から除外されている。図7A(c)に示されるように、観測境界線が除外された部分には、新たな非線状区間R24が示されている。
【0054】
観測境界線のうち長さが短いものには、ノイズ等により実際の境界線を適切に表さないものがある。ステップS104−3によれば、所定の長さ以下の観測境界線が境界線修正処理の対象から除外される。これによって、不適切な境界線が特定されることを回避することができる。
【0055】
画像解析部18は、観測境界線の一端側にある非線状区間の長さに応じた切断区間Ctを、観測境界線のその一端側から除去する(S104−4)。切断区間Ctの長さは、例えば、削除される一端側にある非線状区間の長さのb倍とする。ここで、bは1未満の正の数であり、操作パネル20においてユーザによって設定される。bは、切断区間Ctの除去によりその総てが除去されてしまう観測境界線が生じないように決定してもよい。より具体的に、画像解析部18は、次のような処理を実行する。
【0056】
(i)観測境界線の一端側に非線状区間があり、観測境界線の他端がフレームデータ画像の外縁に接している場合には、その非線状区間の長さに応じた切断区間Ctをその一端側から除去する。
【0057】
(ii)観測境界線の両端側に非線状区間がある場合には、一端側に繋がる非線状区間の長さに応じた切断区間Ctをその一端側から除去し、他端側に繋がる非線状区間の長さに応じた切断区間Ctをその他端側から除去する。
【0058】
図7B(d)に示される例では、bが0.5に設定され、非線状区間R12の長さw12の0.5倍の長さの切断区間Ct12が、観測境界線Q1およびQ2から除去されている。また、非線状区間R24の長さw24の0.5倍の長さの切断区間Ct24が、観測境界線Q2およびQ4から除去されている。以下の説明では、切断区間が除去された観測境界線を有効区間と称し、有効区間の間を直線で結んだ区間を無効区間と称する。有効区間は、血管壁の境界線の一部を示す区間であるといえる。
【0059】
図7B(e)には、観測境界線Q1、Q2およびQ4に基づく有効区間が、それぞれ、符号E1、E2およびE4によって示されている。また、有効区間E1と有効区間E2との間の無効区間、および、有効区間E2および有効区間E4との間の無効区間が、それぞれ、符号N12およびN24によって示されている。
【0060】
観測境界線の両端においては、反射する超音波の強度が十分でないことがある。そのため、観測境界線の両端は、境界線の形状を適切に表していないことがある。ステップS104−4によれば、観測境界線の一端側または両端側にある非線状区間の長さに応じた区間が、観測境界線の一端側または両端側から除去される。これによって観測境界線のうち、境界線の形状を適切に表していない部分を除去することができる。
【0061】
画像解析部18は、有効区間と無効区間との接続端から、その無効区間の長さに応じた長さだけ有効区間側に変位した位置に補間点を設定する(S104−5)。変位の長さは、例えば、無効区間の長さの半分とする。図7B(e)に示される例では、有効区間E1と無効区間N12との接続点から、無効区間N12の長さd12の半分、すなわち、0.5d12だけ有効区間E1側に変位した位置に、補間点S1bが設定されている。また、有効区間E2と無効区間N12との接続点から、0.5d12だけ有効区間E2側に変位した位置に、補間点S2aが設定されている。さらに、有効区間E2と無効区間N24との接続点から、無効区間N24の長さd24の半分、すなわち、0.5d24だけ有効区間E2側に変位した位置に、補間点S2bが設定され、有効区間E4と無効区間N24との接続点から、0.5d24だけ有効区間E4側に変位した位置に、補間点S4aが設定されている。
【0062】
画像解析部18は、補間処理によって、無効区間の両端、および有効区間上に設定された補間点を通る補間線を求める(S104−6)。この補間処理には、ニュートン補間処理、ラグランジュ補間処理、スプライン補間処理等が用いられる。
【0063】
ここで、図7B(f)に示されるように、無効区間N12の有効区間E1側の一端をT12a、無効区間N12の有効区間E2の側の一端をT12b、無効区間N24の有効区間E2側の一端をT24a、無効区間N24の有効区間E4の側の一端をT24bとする。
【0064】
図7B(f)に示される例では、有効区間E1上の補間点S1b、無効区間N12の両端T12aおよびT12b、ならびに、有効区間E2上の補間点S2aに対し、補間処理が実行され、補間線U12が求められる。また、有効区間E2上の補間点S2b、無効区間N24の両端T24aおよびT24b、ならびに、有効区間E4上の補間点S4aに対し、補間処理が実行され、補間線U24が求められる。
【0065】
画像解析部18は、各補間線と、各有効区間における補間された区間外の区間とを合わせて、1つの補間後境界線を求め(S104−7)、その1つの補間境界線を表す境界線データを境界線描画データ領域22−3に記憶させる(S104−8)。
【0066】
本実施形態に係る補間処理においては、有効区間上に補間点が設定される。そのため、有効区間および無効区間を滑らかに結ぶ補間線が求められ、自然な境界線が特定される。さらに、補間点は、有効区間と無効区間との接続端から、その無効区間の長さに応じた長さだけ、その有効区間側に変位した位置に設定される 。これによって、ニュートン補間処理、ラグランジュ補間処理、スプライン補間処理等、予め定められた数値計算処理に当てはめて補間処理を実行することが容易となる。
【0067】
なお、ここでは、1つの境界線に着目して境界線データを生成する処理について説明した。この処理は、前壁および後壁のそれぞれにおける第1境界線L1〜第4境界線L4の総てについて、または、これらのうち選択されたものに対して実行することができる。
【0068】
図3のフローチャートに戻り、画像解析部18は、表示対象の境界線に対応する境界線データを境界線描画データ領域22−3から読み込む(S105)。表示対象の境界線は、例えば、操作パネル20における操作に基づき選択される。画像解析部18は、ステップS101で読み込まれたフレームデータに基づくフレームデータ画像に、境界線データに基づく境界線を重ねた画像を示す画像データを生成する(S106)。そして、その画像データを画像表示部24に出力し、画像データに基づく画像をディスプレイ表示させる(S107)。
【0069】
このような境界特定・画像表示処理によれば、フレームデータ画像において観測境界線が求められ、有効区間および無効区間が特定される。無効区間に対しては補間処理が実行され補間後境界線が求められる。有効区間の特定に際しては、観測境界線のうち長さが不十分であるものが有効区間を特定する処理から除外される。さらに、各観測境界線の両端は、両端に接続される非線状区間の長さに応じて除去される。これによって、適切なデータに基づいて補間後境界線が求められ、IMT(Intima-Media Thickness)等の診断数値を正確に求めると共に、血管壁の境界線を高精度でディスプレイに表示することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 超音波プローブ、12 送信部、14 受信部、16 断層画像生成部、18 画像解析部、20 操作パネル、22 メモリ、22−1 フレームデータ領域、22−2 境界線データ領域、22−3 境界線描画データ領域、24 画像表示部、26 コントローラ、28 二次元走査面、30 送受信ビーム、32 ライン画像、34 画素、36 内膜、38 中膜、40 外膜、42 血管内腔、44 観測境界線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内における血管で反射した超音波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された超音波に基づいて画像データを生成する画像生成部と、
前記画像データが示す画像について、前記血管壁の境界線の一部を示す有効区間、および前記有効区間に挟まれる無効区間を特定する区間特定部と、
前記無効区間に対する補間処理を実行する補間処理部と、
前記補間処理によって求められた補間線および前記有効区間に基づいて、前記境界線を求める境界線決定部と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記区間特定部は、
観測された前記境界線を示す観測境界線を求める観測境界線決定手段と、
前記観測境界線として求められていない非線状区間を特定する非線状区間特定手段と、
前記観測境界線の一端側または両端側にある前記非線状区間の長さに応じた区間を、前記観測境界線の当該一端側または両端側から除去し、前記有効区間を特定する有効区間特定手段と、
前記有効区間に挟まれる区間を前記無効区間として特定する無効区間特定手段と、
を備えることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波画像処理装置において、
前記観測境界線決定手段は、
所定の長さを超える線状の図形を前記観測境界線として求めることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記補間処理は、前記無効区間の両端と、当該両端に繋がる各前記有効区間上に設定された補間点と、に対する処理であることを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項4に係る超音波画像処理装置において、
前記補間点は、各前記有効区間と前記無効区間との各接続端から、前記無効区間の長さに応じた長さだけ、各前記有効区間側に変位した位置に設定されることを特徴とする超音波画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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