説明

超音波画像処理装置

【課題】注目箇所に設定された設定点の移動を適切に評価する技術を提供する。
【解決手段】画像記憶部22には複数時相の超音波の画像データが記憶される。パターンマッチング処理部30は、画像データ間の相関演算に基づいて、参照時相の画像データ内に設定された設定点に対応した移動点を探索時相の画像データ内で探索する。これにより複数時相に亘って設定点の移動点が探索される。そして、診断情報生成部40は、複数時相に亘って探索される移動点に基づいて設定点の複数時相に亘る移動の主方向を決定し、その主方向を基準として設定点の移動を評価することにより診断情報を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像処理装置に関し、特に、画像データ間において相関演算を実行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波を送受することにより得られる超音波画像の画像データに対して相関演算を行う超音波画像処理装置や超音波診断装置が知られている。例えば、特許文献1,2には、相関演算に基づいたパターンマッチングにより、複数のフレームに亘って心筋の動きを追跡する旨の画期的な技術が提案されている。また、プローブを移動させつつ得られる複数の画像データをパターンマッチングにより部分的に重ね合わせてパノラマ画像を形成する技術なども知られている。
【0003】
画像データ間のパターンマッチングにおいては、例えば、一方の画像データ内において注目箇所にテンプレートが設定され、他方の画像データ内でテンプレートを移動させつつテンプレート内の画像データ同士が相関演算される。そして、他方の画像データ内で最も類似度の大きいテンプレートの位置が注目箇所に対応した位置とされる。
【0004】
これにより、例えば、複数の時相に亘って注目箇所に対応した位置を探索(トラッキング)して、注目箇所が移動する様子を観察することが可能になる。例えば、基準となる固定点を設定し、その固定点からの距離などを算出することにより、注目箇所が移動する様子を定量的に評価することなどが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−130063号公報
【特許文献2】特開2007−143606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、超音波の画像データ間における相関演算について研究開発を重ねてきた。特に注目箇所が移動する様子を観察する機能に注目した。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、注目箇所に設定された設定点の移動を適切に評価する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波画像処理装置は、複数時相の超音波の画像データを記憶する画像記憶部と、画像データ間の相関演算に基づいて、参照時相の画像データ内に設定された設定点に対応した移動点を探索時相の画像データ内で探索する画像処理部と、複数時相に亘って探索される移動点に基づいて前記設定点の複数時相に亘る移動の主方向を決定し、当該主方向を基準として前記設定点の移動を評価することにより診断情報を得る診断情報生成部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、複数時相に亘る移動の主方向を基準として設定点の移動が評価されるため、例えば、移動の影響が比較的強く反映されて移動を敏感に捉えた診断情報を得ることなどが可能になる。
【0010】
望ましい具体例において、前記診断情報生成部は、複数時相に亘って探索される移動点の空間的なばらつきに応じて前記主方向を決定する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記診断情報生成部は、前記主方向に対応した線上に診断のための基準となる固定点を設定する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記診断情報生成部は、前記固定点から移動点までの距離の時間的な変化を示した変位波形を形成する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記画像処理部は、参照時相の画像データ内に設定された設定点に基づいてその設定点に対応したテンプレートを生成するテンプレート生成機能と、探索時相の画像データ内に探索領域を設定する探索領域設定機能と、テンプレートを探索領域内で移動させつつ当該探索領域内の各位置において、参照時相のテンプレートの画像データと、探索時相のテンプレートに重なる画像データと、に基づいて相関演算を実行する相関演算機能と、基準位置から前記探索領域内の各位置までの距離に応じて、当該各位置において得られる前記相関演算の結果に重み付け処理を行う重み付け処理機能と、を有し、前記重み付け処理された相関演算の結果に基づいて、前記探索領域内において前記設定点に対応した移動点を探索する、ことを特徴とする。
【0014】
また、上記目的にかなう好適なプログラムは、複数時相の超音波の画像データを処理するコンピュータに、画像データ間の相関演算に基づいて、参照時相の画像データ内に設定された設定点に対応した移動点を探索時相の画像データ内で探索する画像処理機能と、複数時相に亘って探索される移動点に基づいて前記設定点の複数時相に亘る移動の主方向を決定し、当該主方向を基準として前記設定点の移動を評価することにより診断情報を得る診断情報生成機能と、を実現させることを特徴とする。
【0015】
上記プログラムは、例えば、ディスクやメモリなどのコンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、その記憶媒体を介してコンピュータに提供される。もちろん、インターネット等の電気通信回線を介して上記プログラムがコンピュータに提供されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、注目箇所に設定された設定点の移動を適切に評価することができる。例えば、本発明の好適な態様によれば、複数時相に亘る移動の主方向を基準として設定点の移動が評価されるため、移動の影響が比較的強く反映されて移動を敏感に捉えた診断情報を得ることなどが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】画像データ間のパターンマッチングを説明するための図である。
【図3】移動点の位置に応じた探索領域の設定例を示す図である。
【図4】重み付け処理に利用される重み付け係数の具体例を示す図である。
【図5】パターンマッチング処理部における処理を示すフローチャートである。
【図6】診断における基準となる固定点の設定を説明するための図である。
【図7】変位波形を含んだ表示画像例を示す図である。
【図8】診断情報生成部における処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。図1の超音波診断装置は、本発明に係る超音波画像処理装置の機能を備えている。
【0019】
プローブ10は、例えば心臓や筋肉などの対象物を含む領域に対して超音波を送受する超音波探触子である。プローブ10は、超音波を送受する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が送受信部12によって送信制御されて送信ビームが形成される。また、複数の振動素子が対象物を含む領域内から得られる超音波を受波し、これにより得られた信号が送受信部12へ出力され、送受信部12が受信ビームを形成して受信ビームに沿ってエコーデータが収集される。
【0020】
プローブ10は、超音波ビーム(送信ビームと受信ビーム)を二次元平面内において走査してエコーデータを収集する。もちろん、超音波ビームを三次元空間内において立体的に走査する三次元プローブが利用されてもよい。
【0021】
対象物を含む領域内で超音波ビームが走査され、送受信部12によりエコーデータが収集されると、画像形成部20は、収集されたエコーデータに基づいて超音波の画像データを形成する。画像形成部20は、例えばBモード画像の画像データを形成する。また、画像形成部20は、複数の超音波画像に対応した複数の画像データを形成する。例えば、複数の時刻(複数時相)に亘って対象物を映し出した複数の画像データを形成する。なお、プローブ10を徐々に移動させつつ互いに異なる位置において対象物を映し出した複数の画像データが形成されてもよい。画像形成部20において形成された複数の画像データは画像記憶部22に記憶される。
【0022】
パターンマッチング処理部30は、画像データ間のパターンマッチングを行う画像処理部として機能する。パターンマッチング処理部30は、画像データ内に設定されるテンプレートを生成する機能と、画像データ内に探索領域を設定する機能と、テンプレート内の画像データに基づいて相関演算を実行する機能と、相関演算の結果に重み付け処理を施す機能を備えている。そして、パターンマッチング処理部30は、画像記憶部22に記憶された複数の画像データを対象として、相関演算に基づいて画像データ間のパターンマッチングを行う。
【0023】
図2は、画像データ間のパターンマッチングを説明するための図であり、参照時相の画像データと各探索時相の画像データとの間における処理を示している。参照時相の画像データと各探索時相の画像データは、例えば同じ心臓から互いに異なる時刻に得られる画像データである。パターンマッチングにおいては、まず、検査者などのユーザにより参照時相の画像データ内に設定点Pが設定され、その参照時相の画像データ内において、設定点を取り囲むようにテンプレートTが設定される。図2には、設定点を中心とする正方形状のテンプレートTが示されている。テンプレートTの大きさは、例えば、画素数にして縦20ピクセルで横20ピクセル程度である。なお、テンプレートTの大きさや形状や位置は図2の具体例に限定されない。また、テンプレートTの大きさや形状や位置をユーザが変更できるようにしてもよい。
【0024】
テンプレートTが設定されると、各探索時相の画像データ内において、探索領域SAが設定される。探索領域SAは、例えば、複数の探索時相に亘って画像データ内の同じ位置に固定的に設定される。この場合には、例えば、探索領域SAの大きさや形状も固定的に設定される。なお、探索領域SAの位置を固定するため、探索領域SAの大きさ(広さ)は比較的大きめであることが望ましい。もちろん、各探索時相の画像データの全体を探索領域SAとしてもよい。
【0025】
また、探索領域SAは、複数の探索時相に亘って、各探索時相ごとに、その探索時相に隣接する時相の画像データ内で探索された移動点の位置を取り囲むように設定されてもよい。つまり、後に説明するように、各探索時相の画像データに設定される探索領域SA内において、参照時相の画像データ内に設定された設定点Pに対応する移動点が探索されるため、複数の探索時相に亘って移動点を次々に探索する場合において、ある探索時相の1つ前の時相において探索された移動点を基準として、その探索時相における探索領域SAを決定するようにしてもよい。
【0026】
図3は、移動点の位置に応じた探索領域SAの設定例を示す図である。つまり、各探索時相ごとに、1つ前の時相において探索された移動点P´に応じて、その探索時相の探索領域SAを設定する具体例が示されている。なお、図3において、破線で示す矩形は、参照時相の画像データ内に設定されたテンプレートTに対応する領域である。
【0027】
設定例1では、1つ前の時相において探索された移動点P´を中心とする矩形の探索領域SAが設定されており、テンプレートTに対応する領域が探索領域SA内に収まっている。
【0028】
設定例2においても、まず、1つ前の時相において探索された移動点P´を中心とする矩形の探索領域SAが設定される。ところが、この状態では、テンプレートTに対応する領域が探索領域SAの外にはみ出している。このように、テンプレートTがはみ出している場合には、テンプレートTに対応する領域が探索領域SA内に収まるように、探索領域SAが拡張される。例えば、設定例2においては、テンプレートTが含まれるように上辺と右辺が平行移動されて探索領域SAが拡張される。
【0029】
そして、設定例3においても、まず、1つ前の時相において探索された移動点P´を中心とする矩形の探索領域SAが設定される。ところが、この状態では、テンプレートTに対応する領域が探索領域SAの外側にある。このように、テンプレートTが完全に外側にある場合にも、テンプレートTに対応する領域が探索領域SA内に収まるように、探索領域SAが拡張される。例えば、設定例3においては、テンプレートTが含まれるように右辺が平行移動されて探索領域SAが拡張される。
【0030】
探索される移動点は、1つ前の時相において探索された移動点の近傍に位置する可能性が高いため、図3に示した設定例のように、1つ前の時相において探索された移動点が中心となるように探索領域SAを設定することにより、探索領域SAを比較的狭く設定しても本来検出されるべき移動点を探索することが可能になる。さらに、参照時相のテンプレートTに対応した領域が含まれるように探索領域SAが拡張されるため、例えば、心臓などのように周期的な運動を行う臓器を複数時相に亘って診断し、参照時相に対応した状態に戻った場合でも、参照時相のテンプレートTに対応した領域を移動点の候補に含めることができる。
【0031】
図2に戻り、テンプレートTと探索領域SAが設定されると、各探索時相の画像データの探索領域SA内においてテンプレートTが移動され、各位置において、参照時相の画像データのテンプレートT内の複数の画素と、各探索時相の画像データのテンプレートTに重なる領域内の複数の画素とに基づいて、相関値が算出される。例えば、図2において探索領域SA内に破線の矩形で示される位置を初期位置とし、その初期位置からx方向とy方向に段階的にテンプレートTを移動させ、各位置において相関値が算出され、探索領域SA内の全域に亘る複数の位置に対応した複数の相関値が算出される。
【0032】
なお、相関値とは画像データ間の相関関係の程度(類似の程度)を示す数値であり、相関値の算出には相関演算の各手法に応じた公知の数式を利用することができる。例えば、位相限定相関法や相互相関法のように、類似の度合が大きいほど大きな値を示す相関値を利用してもよいし、最小和絶対差法のように、類似の度合が大きいほど小さな値を示す相関値を利用してもよい。本実施形態では、相関値の具体例として、類似の度合が大きいほど小さな値を示す自己相関値を利用する。さらに、本実施形態においては、探索領域SA内の各位置において得られた相関演算の結果(自己相関値)に対して、後に説明する重み付け処理が行われる。
【0033】
こうして、探索領域SA内の全域に亘る複数の位置の各々において、重み付け処理後の自己相関値が算出されると、複数の位置の中から最も類似の度合が大きい位置が特定されて、その位置が設定点の移動先である移動点とされる。
【0034】
図4は、重み付け処理に利用される重み付け係数の具体例を示す図である。図4の横軸は、自己相関値が算出された各位置に関する基準位置からの距離である。基準位置は、例えば、1つ前の時相において探索された移動点(例えば図3の符号P´)の位置、または参照時相の画像データ内に設定された設定点(例えば図2の符号P)の位置である。図4の縦軸には、重み係数が示されている。図4に示すように、距離dにおける重み係数がk(d)となる。
【0035】
本実施形態においては、相関値の具体例として、類似の度合が大きいほど小さな値を示す自己相関値が利用される。そこで、本実施形態では、類似の度合が大きい可能性の高い基準位置に近い領域ほど重み係数を小さくし、基準位置から遠ざかるほど重み係数を大きくしている。そして、各位置の自己相関値にその位置に応じた重み係数が乗算され、その乗算結果に基づいて、つまり重み付け処理を施された自己相関値に基づいて、設定点の移動先である移動点が探索される。
【0036】
これにより、例えば、探索領域を比較的広くして探索の見落としを低減しつつ、相関の度合が比較的大きいことが予想される基準位置付近の領域を重視した探索が可能になり、探索された移動点が本来の設定点の移動先から大きくずれてしまうことが抑制され、結果として、相関演算に基づいた探索の精度が向上する。
【0037】
なお、図4に示す重み係数の具体例はあくまでも一例に過ぎず、例えば、距離に応じて非線形的に変化する重み係数が利用されてもよいし、距離に応じて段階的に(階段状に)変化する重み係数が利用されてもよい。また、類似の度合が大きいほど大きな値を示す相関値が利用される場合には、基準位置に近いほど大きくなり基準位置から遠ざかるほど小さくなる重み係数が望ましい。
【0038】
図5は、パターンマッチング処理部30(図1)における処理を示すフローチャートである。ユーザにより参照時相の画像データ内に設定点Pが設定されると(S501:図2参照)、参照時相の画像データ内において設定点Pに対応したテンプレートTが設定さる(S502:図2参照)。
【0039】
次に、各探索時相の画像データ内に探索領域SAが設定され(S503:図2,3参照)、探索領域SA内においてテンプレートTが設定され、そのテンプレートTの位置において、参照時相の画像データのテンプレートT内の複数の画素と、各探索時相の画像データのテンプレートTに重なる領域内の複数の画素とに基づいて、自己相関値aが算出される(S504)。
【0040】
次に、基準位置から各位置までの距離dが算出されてその位置の重み係数k(d)が決定され(S505:図4参照)、自己相関値aに重み係数k(d)が乗算されて重み付け処理後の自己相関値a´が算出される(S506)。
【0041】
そして、探索領域SA内の全域に亘る探索が終了したか否かが確認され(S507)、終了していなければ、S504に戻りテンプレートTが次の位置に移動され、新たな位置でS504からS506までの処理が実行される。
【0042】
S504からS506までの処理が繰り返し実行されて、S507において探索領域SA内の全域に亘る探索が終了したことが確認されると、探索領域SA内の全ての位置の中から重み付け処理後の自己相関値a´が最小となる位置が特定され、その特定された位置が設定点の移動点とされる(S508)。こうして、各探索時相の画像データについて移動点が特定される。
【0043】
そして、全ての探索時相に関する探索が終了したか否かが確認され(S509)、終了していなければ、S503に戻り次の探索時相の画像データに関する処理が実行される。S503からS508までの処理が繰り返し実行されて、S509において全ての探索時相に関する探索が終了したことが確認されると、パターンマッチング処理部30における処理が終了する。
【0044】
図1に戻り、パターンマッチング処理部30において全ての探索時相の画像データに関する探索が終了すると、診断情報生成部40は、その探索の結果に基づいて対象組織に関する診断情報を生成する。診断情報生成部40は、診断における基準となる固定点を設定する機能と、診断情報として、その固定点を基準とした移動点に関する変位波形を生成する機能を備えている。そして、診断情報生成部40において形成された変位波形を含む表示画像が表示部50に表示される。
【0045】
図6は、診断における基準となる固定点の設定を説明するための図である。図6には、ある設定点Pについて、複数の探索時相に亘って画像データ内において探索された複数時相の移動点P´が示されている。
【0046】
診断情報生成部40(図1)は、ある設定点Pに関する複数時相の移動点P´に基づいて、その設定点Pの複数時相に亘る移動の主方向を決定する。例えば、図6に示すように複数の移動点P´の全てを取り囲み、4辺に対応した移動点P´に外接する長方形Rが設定され、その長方形Rの中心を通る長軸が主方向Dとされる。もちろん、主方向Dの決定は長方形Rを利用する方法に限定されない。例えば、主成分分析と呼ばれる公知の手法を利用して、移動点P´の空間的なばらつきを最もよく表す方向、つまり移動点P´の分散が最大となる方向を主方向Dとしてもよい。
【0047】
そして、診断情報生成部40は、決定された主方向D上に固定点Fを設定する。なお、予めユーザが仮の固定点Fを設定しておき、その仮の固定点Fを診断情報生成部40において決定された固定点Fに移動するようにしてもよい。固定点Fが設定されると、診断情報生成部40は、設定された固定点Fから各移動点P´までの距離を算出し、複数の時相に亘るその距離の変化を示した変位波形を生成する。
【0048】
図7は、変位波形を含んだ表示画像例を示す図である。図7には、対象組織として心臓を診断した場合に得られる表示画像例が示されている。図7の表示画像内には、その心臓に関する断層画像が含まれており、その断層画像には、心臓の診断のために設定された4つの設定点A,B,C,Dが示されている。
【0049】
そして、各設定点ごとに、複数時相に亘って移動点が探索(トラッキング)されて固定点F(図6参照)が設定される。さらに、各設定点ごとに、固定点Fから各移動点P´(図6参照)までの距離が算出され、複数の時相に亘るその距離の変化を示した変位波形が生成される。図7には、設定点A,B,C,Dの各々から得られる変位波形L1,L2,L3,L4を含んだ表示画像例が示されている。
【0050】
本実施形態においては、複数時相に亘る移動の主方向上に固定点Fが設定されるため、その固定点Fを基準として得られる各変位波形には、各設定点の移動の影響が比較的強く反映され、各設定点の移動が比較的敏感に示される。なお、複数の設定点A,B,C,Dについて、固定点Fは統一的な基準で設定されることが望ましい。例えば、全ての設定点に関する全ての固定点Fが心筋の外側に設定される。もちろん、全ての設定点に関する全ての固定点Fが心筋の内部に設定されてもよい。これにより、例えば、全体として収縮拡張運動を繰り返す心臓について、設定点A,B,C,Dにおける運動開始の時間差などから運動の伝達状況を観察して心筋を診断することなどが可能になる。
【0051】
ちなみに、図7に示す表示画像例には、運動の伝達状況を観察する際の補助的な表示として、変位波形L1,L2,L3,L4の極大値点を結んだ連結曲線104や、設定点間における運動の時間差を表すグラフM1,M2,M3や、ユーザが特定の時相を指定する際に利用されるカーソル106なども含まれている。
【0052】
図8は、診断情報生成部40(図1)における処理を示すフローチャートである。ある設定点について、パターンマッチング処理部30(図1)から全ての探索時相に関する移動点の情報が得られると(S801)、それら複数の移動点に基づいて、設定点に関する複数時相に亘る移動の主方向Dが決定され(S802:図6参照)、その主方向D上に固定点Fが設定される(S803:図6参照)。なお、この固定点Fの設定において、ユーザが主方向D上において心筋の外側または内側を指定し、その指定に応じて固定点Fが設定されてもよい。
【0053】
固定点Fが設定されると、固定点Fと各移動点P´の距離が算出され(S804:図6参照)、複数の時相に亘るその距離の変化を示した変位波形が生成される(S805)。そして、全ての設定点に関する処理が終了したか否かが確認され(S806)、終了していなければ、S801に戻り次の設定点に関する処理が実行される。S801からS805までの処理が繰り返し実行されて、S806において全ての設定点に関する処理の終了が確認されると、診断情報生成部40における処理が終了し、例えば、図7に示した表示画像が表示部50(図1)に表示される。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態である超音波診断装置について説明したが、例えば、上述した図5に係る処理と図8に係る処理に対応したプログラムにより、図1に示したパターンマッチング処理部30と診断情報生成部40の機能をコンピュータで実現し、そのコンピュータを超音波画像処理装置として機能させてもよい。また、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0055】
10 プローブ、20 画像形成部、30 パターンマッチング処理部、40 診断情報生成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数時相の超音波の画像データを記憶する画像記憶部と、
画像データ間の相関演算に基づいて、参照時相の画像データ内に設定された設定点に対応した移動点を探索時相の画像データ内で探索する画像処理部と、
複数時相に亘って探索される移動点に基づいて前記設定点の複数時相に亘る移動の主方向を決定し、当該主方向を基準として前記設定点の移動を評価することにより診断情報を得る診断情報生成部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波画像処理装置において、
前記診断情報生成部は、複数時相に亘って探索される移動点の空間的なばらつきに応じて前記主方向を決定する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波画像処理装置において、
前記診断情報生成部は、前記主方向に対応した線上に診断のための基準となる固定点を設定する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波画像処理装置において、
前記診断情報生成部は、前記固定点から移動点までの距離の時間的な変化を示した変位波形を形成する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波画像処理装置において、
前記画像処理部は、
参照時相の画像データ内に設定された設定点に基づいて、その設定点に対応したテンプレートを生成するテンプレート生成機能と、
探索時相の画像データ内に探索領域を設定する探索領域設定機能と、
テンプレートを探索領域内で移動させつつ当該探索領域内の各位置において、参照時相のテンプレートの画像データと、探索時相のテンプレートに重なる画像データと、に基づいて相関演算を実行する相関演算機能と、
基準位置から前記探索領域内の各位置までの距離に応じて、当該各位置において得られる前記相関演算の結果に重み付け処理を行う重み付け処理機能と、
を有し、
前記重み付け処理された相関演算の結果に基づいて、前記探索領域内において前記設定点に対応した移動点を探索する、
ことを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項6】
複数時相の超音波の画像データを処理するコンピュータに、
画像データ間の相関演算に基づいて、参照時相の画像データ内に設定された設定点に対応した移動点を探索時相の画像データ内で探索する画像処理機能と、
複数時相に亘って探索される移動点に基づいて前記設定点の複数時相に亘る移動の主方向を決定し、当該主方向を基準として前記設定点の移動を評価することにより診断情報を得る診断情報生成機能と、
を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27453(P2013−27453A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163990(P2011−163990)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】