説明

超音波画像生成装置および超音波画像生成方法

【課題】穿刺針の繋がりが分かりやすく表示された超音波画像を生成する。
【解決手段】穿刺針等の穿刺器具の刺入角度に応じた形状の穿刺器具強調フィルタを適用して、穿刺器具が刺入される方向に画像の繋がりを良くすることで、途切れ途切れで表示される穿刺針が繋がった画像を生成する。また、穿刺器具強調フィルタの適用前後の超音波画像を合成することで、穿刺器具がユーザに分かりやすく表示された超音波画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像生成装置および超音波画像生成方法に関し、特に生体組織と共に穿刺器具を画面上に表示する超音波画像生成装置および超音波画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、超音波画像生成装置が診察や検査に広く用いられている。超音波画像生成装置は、超音波探触子と共に用いられ、超音波探触子から被検者に超音波を照射し、そのエコー(反響)信号から被検者の断層画像(以下、超音波画像という)を生成する装置である。
【0003】
超音波探触子は、アレイ状に配列された複数の圧電素子からなる圧電素子アレイを有し、圧電素子アレイから被検者に超音波を照射するとともに、超音波が被検者によって反射されたエコー信号を受信する。超音波画像生成装置は、エコーを受信した超音波探触子が出力するエコー信号に基づいて、被検者の超音波画像を生成してモニタに表示する。
【0004】
また、超音波画像生成装置は、細胞組織診断のため、医師が穿刺器具(例えば穿刺針)を所望の部位に穿刺して組織サンプルを採取する穿刺術を行う場合にも用いられている。
【0005】
穿刺術においては、モニタ上で穿刺針を確認できること、及び目的物や目的部位まで穿刺針を到達させることが重要である。医師は、確実に目的物や目的部位まで穿刺針を到達させるため、超音波画像を見ながら予め決めた刺入経路(穿刺針が被検者中を刺入される経路)通りに穿刺針を刺入させる。
【0006】
穿刺術は、針が細くなればなるほど患者への負担軽減や侵襲性低減となるため、リスク等に合わせて可能な限り細い穿刺針が選択される。しかし、針が細くなるに従って、超音波画像上への描出力も低下してしまい、針が途切れ途切れに描出されてしまう。
【0007】
特許文献1には、強いエコー信号が得られた方向に対して、さらに超音波を照射して取得した複数枚の画像を合成し、穿刺針が途切れ途切れに表示されることを低減する超音波診断装置が開示されている。特許文献2には、組織の局所的な性状に応じて画像処理条件を適応的に変化させることで、スペックルを低減しつつも組織の構造を明確にする超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−320378号公報
【特許文献2】特開2007−222264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示の超音波診断装置においては、ある程度穿刺針を繋がりよく表示することができるが、合成対象の複数の画像における穿刺針の途切れ箇所が、画像の同じ位置に生じている場合には、画像を合成しても途切れを解消することができないという問題がある。また、硬めの組織内を穿刺する場合、針が撓みやすく、強いエコー信号が常に返ってくるわけではないので、特許文献1に開示の技術を用いることができないという問題もある。さらに、特許文献2の超音波診断装置では、穿刺針の輝度が他の組織の輝度よりも低い状態で描出され、途切れ途切れになってしまった場合には、組織の構造は明確に表示できても、穿刺針の位置または形状は明確に表示できないという問題がある。
【0010】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、穿刺器具がユーザに見やすく表示される超音波画像を生成する超音波画像生成装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る超音波画像生成装置は、穿刺器具が刺入された被検体に対して探触子から超音波を照射し、被検体および穿刺器具から反射されるエコー信号を探触子で受信し、エコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成装置であって、被検体に対して穿刺器具が刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得手段と、刺入角度に基づいた穿刺器具強調フィルタを適用して超音波画像中の穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理手段と、穿刺器具の強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成手段と、合成画像を表示部に表示させる表示制御部と、を具備する構成、または、上記の穿刺器具強調処理手段の代わりに、刺入角度に基づいて、表示部に表示される穿刺器具の角度が水平となるように超音波画像を回転させる画像回転手段と、穿刺器具強調フィルタを適用して、回転させた超音波画像中の穿刺器具を強調処理する第2の穿刺器具強調処理手段と、を具備する構成を採る。
【0012】
また、穿刺器具強調フィルタは、刺入角度に基づいて縦横比が決められたものである。
【0013】
また、本発明に係る超音波画像生成方法は、穿刺器具が刺入された被検体に対して超音波を照射し、被検体および穿刺器具から反射されるエコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成方法であって、穿刺器具が被検体に刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得ステップと、刺入角度に基づいた穿刺器具強調フィルタを適用して超音波画像中の穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理ステップと、穿刺器具の強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、合成画像を表示部に表示させる表示ステップと、を含む、または、上記の穿刺器具強調処理ステップの代わりに、刺入角度に基づいて、表示部に表示される穿刺器具の角度が水平となるように超音波画像を回転させる画像回転ステップと、穿刺器具強調フィルタを適用して、回転させた超音波画像中の穿刺器具を強調処理する第2の穿刺器具強調処理ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、穿刺針がユーザに分かりやすく表示された超音波画像を生成することができる。
また、本発明によれば、穿刺器具の形状や刺入角に合わせて穿刺器具強調処理を適用することができる。
また、本発明によれば、スペックル除去などの前処理を適用し、穿刺器具強調処理の精度を上げることができる。
また、本発明によれば、穿刺器具強調フィルタ適用後に、穿刺針などの穿刺器具の直線を強調するための処理を適用することができる。
また、本発明によれば、穿刺針などの穿刺器具以外の層構造を取り除く前処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態1に係る超音波画像生成装置の機能ブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る穿刺器具強調データ生成部の詳細な構成を示した機能ブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る超音波画像生成装置の動作および本発明の超音波画像生成方法の一例を表すフローチャートである。
【図4】穿刺器具強調データを生成する工程の詳細を表すフローチャートである。
【図5】(A)は、刺入角度10度の場合における実施の形態1に係る穿刺器具強調フィルタの例、(B)は、Bモード画像中で穿刺針が途切れた領域を拡大して描いた図、(C)は刺入角度30度の場合における実施の形態1に係る穿刺器具強調フィルタの例である。
【図6】(A)は、各要素に均等にフィルタ係数を割り振った場合のフィルタ係数を示した図、(B)は、ガウスフィルタのフィルタ係数を示した図である。
【図7】(A)は、穿刺器具強調処理前の超音波画像、(B)は、合成後の超音波画像である。
【図8】刺入角度10度の場合における実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタの例である。
【図9】実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタのフィルタ係数を決定するベースとなるフィルタ係数の数値の大小を濃度の濃淡で表した図である。
【図10】(A)は、穿刺器具強調処理前の超音波画像、(B)は、合成後の超音波画像である。
【図11】実施の形態3に係る超音波画像生成装置の機能ブロック図である。
【図12】実施の形態3に係る穿刺器具強調データ生成部の詳細な構成を示した機能ブロック図である。
【図13】穿刺器具を示す画像が水平となるように回転処理された超音波画像である。
【図14】実施の形態3に係る穿刺器具強調フィルタのフィルタ係数を決定するベースとなるガウスフィルタの一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波画像生成装置100の主要な構成を示した機能ブロック図である。
【0018】
同図に示す超音波画像生成装置100は、送受信制御部102、エコー信号記憶部104、超音波画像生成部106、穿刺器具強調データ生成部108、穿刺器具情報記憶部110、超音波画像合成部112および超音波画像表示制御部114を有する。超音波画像生成装置100は、モニタ116および探触子118と電気的に接続されて使用される。また、探触子118は、穿刺アダプタ120と共に用いられる。
【0019】
送受信制御部102は、図示しないが、高電圧の電気信号を発生するパルサ、被検者によって反射したエコー信号を増幅する増幅器、エコー信号の高周波成分をカットするローパスフィルタおよびアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を有する。送受信制御部102は、超音波送信パルスを探触子118内の圧電素子(図示せず)に印加し、探触子118から超音波を発生させる。
【0020】
穿刺アダプタ120は、探触子118と物理的にも電気的にも接続して用いられ、穿刺針を被検者に刺入させるガイドとなる。穿刺針は、穿刺アダプタ120が有する溝に沿って刺入されることで、被検者に一定の角度で刺入される。すなわち、被検者に対する穿刺アダプタ120の溝の角度により、穿刺針が被検者に刺入される角度(以下、刺入角度という)が決まる。穿刺アダプタ120が有する溝は、被検者に対する角度を異ならせることが可能であり、刺入角度を調節することが可能となっている。穿刺アダプタ120は、刺入角度に関する情報を保持しており、探触子118と物理的に接続されると電気的にも接続されるので、刺入角度を表す信号を探触子118に出力する。また、穿刺アダプタ120は、被検者に対する溝の角度が変更される毎に現在の刺入角度を表す信号を探触子118に出力する。
【0021】
探触子118は、図示しないが、複数の圧電素子を有し、複数の圧電素子から被検者に向けて超音波を送信するとともに被検者から反射したエコー信号を受信する。圧電素子は、エコー信号を受信すると電気信号を発生する。探触子118は、圧電素子によって電気信号に変換されたエコー信号を送受信制御部102へ出力する。また、探触子118は、穿刺アダプタ120から出力された刺入角度を送受信制御部102へ出力する。
【0022】
送信制御部102は、探触子118から出力されたエコー信号を増幅し、ローパスフィルタで高周波成分をカットした後、A/D変換を行って、エコー信号記憶部104へ出力する。また、送信制御部102は、穿刺アダプタ120から出力された刺入角度を、穿刺器具情報記憶部110へ出力する。
【0023】
エコー信号記憶部104は、デジタル信号となったエコー信号を一時的に記憶する。
【0024】
超音波画像生成部106は、図示しないが、遅延回路、加算回路およびSTC(自己補正型タイミング制御:Sensitivity Time Control)回路を有する。超音波画像生成部106は、エコー信号記憶部104に記憶されたエコー信号を、圧電素子の位置に応じて遅延させて加算し、音線信号を形成する。超音波画像生成部106は、音線信号をSTC回路によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正をした後、Bモード画像データを生成する。ここで、Bモード画像データとは、いわゆる超音波画像データであり、音線信号の振幅を輝度により表した画像データをいい、Bモード画像とは、いわゆる超音波画像をいう。
【0025】
穿刺器具情報記憶部110は、穿刺器具に関する情報を記憶する。穿刺器具に関する情報とは、具体的には、穿刺器具の刺入角度、太さや、穿刺ターゲット(目的物や部位)等である。
【0026】
穿刺器具強調データ生成部108は、超音波画像生成部106によって生成されたBモード画像データに対し、各種ノイズ除去の処理を行う。また、穿刺器具強調データ生成部108は、穿刺器具情報記憶部110に記憶された刺入角度に基づいて、ノイズ除去後のBモード画像データに対して穿刺器具を強調するフィルタ(以下、穿刺器具強調フィルタという)による穿刺器具強調処理を行う。穿刺器具強調データ生成部108は、穿刺器具強調フィルタによって強調処理された画像データ、すなわち穿刺器具強調データを超音波画像合成部112へ出力する。なお、穿刺器具強調データ生成部108の詳細な構成については、後述する。
【0027】
超音波画像合成部112は、超音波画像生成部106に記憶されたBモード画像データと、穿刺器具強調データ生成部108によって生成された穿刺器具強調データとを合成して合成Bモード画像データを生成する。超音波画像合成部112は、合成Bモード画像データを超音波画像表示制御部114へ出力する。
【0028】
超音波画像表示制御部114は、DSC(デジタルスキャンコンバータ:digital scan converter)を有する。画像表示制御部114は、超音波画像合成部112によって合成された合成Bモード画像データを、DSCによって通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像データに変換し、階調処理等の必要な画像処理を施して、モニタ116へ出力する。こうして、モニタ116には、合成Bモード画像(合成超音波画像)が表示される。
【0029】
図2は、穿刺器具強調データ生成部108のより詳細な構成を表した機能ブロック図である。穿刺器具強調データ生成部108は、スペックルノイズ除去部122、層構造除去部124、フィルタ記憶部126、フィルタ適用処理部128およびエッジ強調処理130を有する。
【0030】
スペックルノイズ除去部122は、超音波画像生成部106で生成されたBモード画像データのスペックルノイズを除去させる。例えば、ここでは、メディアンフィルタを適用する。
【0031】
層構造除去部124は、スペックルノイズ除去部122でスペックルノイズが除去されたBモード画像データに対して、層構造の除去処理を行う。例えば、CFAR(Constant False Alarm Rate)処理およびMIP(Maximum intensity projection)処理を行う。CFAR処理としては、特開2006−305337号公報に記載の方法を用いることができる。
【0032】
フィルタ記憶部126には、Bモード画像データに適用される複数種類の穿刺器具強調フィルタが記憶されている。フィルタ記憶部126には、例えば、刺入角度10度〜60度に対応した穿刺器具強調フィルタが、10度刻みで6種類記憶されている。
【0033】
フィルタ適用処理部128は、穿刺器具情報記憶部110に記憶された刺入角度に基づいて、使用する穿刺器具強調フィルタを特定して、フィルタ記憶部126から読み出す。例えば、刺入角度が10度の場合は、刺入角度10度用の穿刺器具強調フィルタを読み出す。フィルタ適用処理部128は、読み出した穿刺器具強調フィルタを層構造除去後のBモード画像データに適用する。ここで用いられる穿刺器具強調フィルタは、穿刺針の刺入角度に合ったフィルタであるため、穿刺針が刺入される方向に画像をぼかして、途切れ途切れだった穿刺針画像の繋がりを良くする。
【0034】
エッジ強調処理部130は、穿刺器具強調フィルタが適用されたBモード画像データに対してBモード画像のエッジ強調処理を行う。例えば、穿刺針に対して垂直方向の1次元エッジ強調処理を行って、穿刺針のエッジを強調する。
【0035】
超音波画像合成部112は、穿刺針が刺入される方向に繋がりが良くなったBモード画像(画像データ)と元のBモード画像(画像データ)とを重畳合成して合成Bモード画像(画像データ)を生成する。これにより、組織内における穿刺針の全体像をわかりやすく表示することができる。
【0036】
図3は、超音波画像生成装置100の動作を表すフローチャートである。ステップST300で、Bモード画像(超音波画像)データを生成し、ステップST302で穿刺器具強調データを生成する。ステップST304で穿刺器具強調データをBモード画像データに合成して合成Bモード画像を生成する。ステップST306で合成Bモード画像データのスキャンコンバートを行い、ステップ308でスキャンコンバート合成Bモード画像データを用いて合成Bモード画像をモニタ116に表示して終了する。
【0037】
図4は、ステップST302の穿刺器具強調データの生成動作をより詳細に説明したフロー図である。ステップST400でBモード画像(超音波画像)データ中のスペックルノイズを除去し、ステップST402でBモード画像データ中の層構造を除去する。ステップST404で穿刺器具の刺入角度を特定し、ステップST406で穿刺器具強調フィルタをBモード画像データに適用する。ステップST408で穿刺器具のエッジ強調処理を行って穿刺器具強調データを生成し、ステップST304へ進む。
【0038】
図5(A)および図5(C)は、それぞれ穿刺器具強調データの生成に用いられる穿刺器具強調フィルタの形状を示した図である。Bモード画像を2次元座標上の画素の集合と考えると、穿刺器具強調フィルタは、穿刺器具強調処理を行う対象の画素(以下対象画素という)の値(画像データ)を、対象画素の周囲にある特定の画素の値(画像データ)と重み付け加算するものである。フィルタ適用処理部128は、対象画素の位置を順に異ならせ、Bモード画像中の全ての画素の画像データに対して、刺入角度に応じて決定した穿刺器具強調フィルタによる穿刺器具強調処理を行う。
【0039】
図5(A)は、刺入角度10度の場合に使用される穿刺器具強調フィルタ138の形状を示した図である。穿刺器具強調フィルタ138を構成する要素136a〜要素136tは、重み付け加算をする画素を表し、要素136a〜要素136tの位置は、重み付け加算をする画素の位置を表す。穿刺器具強調フィルタ138のサイズは、縦21画素、横3画素である。穿刺器具強行フィルタ138の形状は、上から下へ7画素ごとに一画素ずつ右にずらす形状となっている。穿刺器具強調フィルタ138の形状を、21行3列の2次元の行列として考えると、1列目の1行目から7行目(要素136a〜136g)、2列目の8行目から14行目(要素136h〜136m)、3列目の15行目から21行目(要素136n〜136t)のそれぞれにフィルタ係数を持つ。つまり、1列目の1行目から所定の行数ごとに右隣の列にずらす形状となっている。
【0040】
穿刺器具強調フィルタ138の中心に黒色で示した要素134は、対象画素であり、要素134の位置は、対象画素の位置であり、対象画素は、穿刺器具強調フィルタ138の中心に位置する。斜線を付した要素136aは、対象画素の重み付け加算に使用される1画素を表す。要素136b〜136tは、斜線は付さないが、要素136aと同様にそれぞれ対象画素の重み付け加算に使用される1画素を表し、要素136a〜136tの位置は、重み付け加算に使用される画素の位置を表す。例えば、要素134の図面上方に隣接した要素136jは、対象画素の図面上方に隣接した画素の値を使用して重み付け加算を行うことを表す。すなわち、穿刺器具強調フィルタの形状は、対象画素の穿刺器具強調処理をする際に使用する周囲の画素の位置を表す。穿刺器具強調フィルタ138では、対象画素は、図面上に隣接した3画素および下に隣接した3画素(要素136h〜136m)の値と、左隣の列の4〜10画素上方にある画素(要素136a〜136g)の値と、右隣の列の4〜10画素下方にある画素(要素136n〜136t)の値と、対象画素自身が持つ値を用いて重み付け加算される。つまり、対象画素は、周囲の20画素の持つ値と自身の持つ値を用いて重み付け加算される。
【0041】
穿刺器具強調フィルタ138の形状を、1列目の1行目から所定の行数ごとに右隣の列にずらす形状とする理由は、刺入角度に基づいて、穿刺針が刺入される方向にある画素を用いて対象画素と重み付け加算を行い、穿刺針が刺入される方向にBモード画像中の穿刺針画像の繋がりを良くするためである。ここでは、刺入角度10度の場合において、所定長として7行(画素)ごとに右にずらす形状としたが、刺入角度が異なれば所定長も異なる。本実施の形態では、図面左上から右下に向けて穿刺針が刺入されているため、穿刺器具強調フィルタ138の形状を、1列目の1行目から所定の行数ごとに右隣の列にずらす形状とする。
【0042】
また、穿刺針は、Bモード画像(超音波画像)上で直線状に表示されるため、穿刺針が刺入される方向にある画素には、穿刺針が存在する可能性が高い。従って、刺入角度に基づいた位置にある画素を用いて重み付け加算を行うことで、対象画素に近接した画素だけでなく、対象画素から離れた位置にあり、かつ穿刺針が存在する可能性が高い位置にある画素も用いて重み付け加算を行うことができる。
【0043】
また、穿刺器具強調フィルタのサイズは、Bモード画像中で穿刺針が途切れている距離間隔に基づいたサイズとなっている。図5(B)は、穿刺器具強調フィルタのサイズを説明するため、Bモード画像中で穿刺針が途切れた領域139を拡大して描いた図である。ここでは、穿刺器具強調フィルタ138を例に取って、穿刺器具領域139は、穿刺器具強調フィルタ138を適用するのに適した間隔で穿刺針が途切れて表示されている。図5(B)中に黒色で示す画素137a、137b、137cおよび137dは、穿刺針を表している画素である。領域139中の穿刺針は、画素137bと画素137cとの間の画素(縦19画素、横1画素)において途切れている。穿刺器具強調フィルタ138は、穿刺針が途切れた画素より上下左右に1画素ずつ大きいサイズとなっている。すなわち、穿刺器具強調フィルタ138のサイズは、縦21画素、横3画素のサイズである。このように穿刺器具強調フィルタのサイズは、Bモード画像中で穿刺針が途切れた間隔より大きいサイズとなっている。
【0044】
穿刺器具強調フィルタのサイズを穿刺針が途切れた間隔より大きいサイズとすると、穿刺針が途切れている箇所の中心の画素に対して穿刺器具強調フィルタを適用しても、穿刺器具強調フィルタの両端部には、穿刺針を表示している画素が含まれる。すなわち、穿刺器具強調フィルタは、Bモード画像中で穿刺針が途切れている箇所に適用されると、穿刺針を表示している画素を少なくとも一画素使用した重み付け加算を行わせるフィルタである。これにより、Bモード画像中で穿刺針が途切れている箇所においても、対象画素から離れた位置にある穿刺針を表示している画素を用いて重み付け加算を行うことができ、対象画素の輝度を周囲の穿刺針画像と近い輝度とすることができる。
【0045】
図5(C)は、刺入角度30度の場合に使用される穿刺器具強調フィルタ144の形状を示した図である。穿刺器具強調フィルタ144のサイズは、縦21画素、横2画素である。穿刺器具強調フィルタ144の形状を、21行2列の2次元の行列として考えると、1列目の1行目から11行目、2列目の12行目から21行目のそれぞれの要素にフィルタ係数を持つ。穿刺器具強調フィルタ144の形状も、1列目の1行目から所定の行数ごとに右隣の列にずらす形状となっている。図5(A)と同様に、斜線を付した要素142が1画素を表し、黒色で示した要素140が対象画素を表す。刺入角度30度の場合、対象画素は、自身の図面上方10画素の値と、自身の図面右隣の列の1〜10画素下にある画素の値と、対象画素自身が持つ値を用いて重み付け加算される。このように、刺入角度が異なれば、適用される穿刺器具強調フィルタの形状、すなわち重み付け加算に使用する画素の位置も異なる。フィルタ記憶部126には、このように刺入角度に対応した形状を持つ穿刺器具強調フィルタが複数記憶されている。
【0046】
穿刺器具強調フィルタは、重み付け加算に使用する画素の指定と共に、指定した各画素に対してフィルタ係数による重みを付けて加算を行う。図6(A)および図6(B)は、穿刺器具強調フィルタ144において、重み付け加算に使用する各要素のフィルタ係数を示した図である。穿刺器具強調フィルタ144の各要素内の数値はフィルタ係数を表す。例えば、図6(A)において、要素140のフィルタ係数は、0.091である。穿刺器具強調フィルタ144の各要素の内側に記載したフィルタ係数は、小数点第3位を四捨五入して示してある。
【0047】
図6(A)は、穿刺器具強調フィルタ144の中心にある要素140の位置を基準として、図面上下の要素に均等にフィルタ係数を割り振った場合を示す図である。すなわち、穿刺器具強調フィルタ144の中心にある要素140(サンプル点番号11)のフィルタ係数を最大とし、要素140からの図面縦方向の距離に比例してフィルタ係数が減少するものとする。各要素のフィルタ係数の総合計は、1となるように正規化されている。図6(A)において、穿刺器具強調フィルタ144と対比して示したグラフは、穿刺器具強調フィルタ144の各要素内の数値を、縦軸をサンプル点番号、横軸をフィルタ係数として示したグラフである。図6(A)のグラフの縦軸のサンプル点番号は、穿刺器具強調フィルタ144を二次元の行列と考えた場合に要素の位置を表す行数を表す。例えば、サンプル点番号1は、1列目の1行目にある要素を表す。要素140(1列目の11行目)に対応するサンプル点番号は11である。
【0048】
各要素に対するフィルタ係数を決定する別の方法について説明する。例えば、次式(1)に示すガウスフィルタを用いてフィルタ係数を生成する。
【0049】
【数1】

【0050】
ここで、μは平均、σは分散、xはサンプル点番号11を0とした場合の図面縦方向の画素の位置を表す。例えば、x=−1はサンプル点番号10、x=1はサンプル点番号12となる。上記式(1)において、平均μ=0、分散σ=1として、縦軸をサンプル点番号とし、横軸をフィルタ係数f(x)として描いたグラフが図6(B)に示すグラフである。図6(B)において、グラフと対比して示した穿刺器具強調フィルタ144内の数値は、各要素のフィルタ係数の値である。例えば、要素140(サンプル点番号11)のフィルタ係数は、0.080となる。このように各画素のフィルタ係数を決定することで、対象画素に近い位置にある画素のフィルタ係数をより増加させた重み付け加算を行うことができる。
【0051】
穿刺器具強調フィルタは、その形状(要素の位置)によって重み付け加算に使用する画素を指定し、指定した画素が持つ値にフィルタ係数を乗じた重み付け加算をして対象画素の値とするフィルタである。フィルタ適用処理部128は、刺入角度に応じて決定した穿刺器具強調フィルタによる穿刺器具強調処理を全ての画素に対して行う。
【0052】
図7(A)は、穿刺器具強調処理を行っていないBモード画像を表し、図7(B)は、図7(A)のBモード画像と穿刺器具強調処理後のBモード画像との合成画像を表す。
図7(B)に示す合成画像は、図7(A)に示す穿刺器具強調処理前のBモード画像を刺入角度方向にぼかした画像となり、穿刺針が繋がり良く表示される。なお、図7(A)および図7(B)では、穿刺器具強調フィルタによる穿刺器具強調処理による違いを分かりやすくするために、スペックルノイズ除去、層構造の除去およびエッジ強調は行われていない。超音波画像生成装置100は、スペックルノイズおよび層構造が除去された画像(画像データ)に対して穿刺器具強調フィルタの適用を行い、さらにエッジ強調を行った後のBモード画像と穿刺器具強調処理前のBモード画像との合成を行う。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施の形態1に係る超音波画像生成装置100によれば、穿刺針の刺入角度に基づいて使用する穿刺器具強調フィルタを決定し、穿刺器具強調フィルタによって穿刺針が刺入される方向にBモード画像の繋がりを良くする穿刺器具強調処理を行う。そのため、途切れ途切れで表示される穿刺針が繋がった画像を生成することができる。また、穿刺器具強調処理後のBモード画像と穿刺器具強調処理前のBモード画像とを合成するため、穿刺針がユーザに分かりやすく表示された超音波画像を生成することができる。
【0054】
また、スペックルノイズの除去は必ずしも行わなくても良い。しかし、スペックルノイズが除去されたBモード画像に対して穿刺器具強調フィルタを適用すると、穿刺器具強調フィルタのサイズを必要以上に大きくすることがなく、穿刺器具強調フィルタの適用効果を高めることができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、フィルタ記憶部126に記憶する穿刺器具強調フィルタの形状を6種類としたが、更に多くても良い。また、刺入角度10度〜60度までの間に対応した形状の穿刺器具強調フィルタを用意したが、刺入角度10度以下や、60度以上に対応した形状を持つ穿刺器具強調フィルタ、または15度や25度に対応した形状を持つ穿刺器具強調フィルタを用意しても良い。
【0056】
また、穿刺器具情報として、穿刺針の太さを記憶しておき、使用する穿刺針の太さに応じて穿刺器具強調フィルタの形状を変えても良い。例えば、太い穿刺針においては、穿刺針が存在する可能性のある領域が広がるため、刺入角度に応じて、より広い範囲の画素を用いて重み付け加算を行う態様とすることができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、穿刺アダプタによる刺入角度に基づいて使用する穿刺器具強調フィルタが決定されたが、必ずしも穿刺アダプタによる刺入角度に基づいて決定する必要はない。例えば、画像から取得される刺入角度に基づいて穿刺器具強調フィルタを決定してもよい。すなわち、複数のBモード画像から穿刺針の先端に相当する高輝度点をそれぞれ抽出し、抽出した複数の先端位置から穿刺針の刺入角度を取得し、刺入角度に基づく穿刺器具強調フィルタを決定しても良い。
【0058】
(実施の形態2)
実施の形態1では、穿刺器具強調フィルタの形状を階段状として、穿刺針が刺入される方向にある画素を重み付け加算に用いる場合を例にとって説明したが、本発明は、特にこれに限定されない。以下の実施の形態2では、穿刺器具強調フィルタの形状を矩形とし、穿刺針が刺入される方向にある画素のフィルタ係数を大とした重み付け加算を行う態様について説明する。本発明の実施の形態2に係る超音波画像生成装置は、実施の形態1で示した超音波画像生成装置100と基本的構成は同一であるため、機能ブロック図は省略する。また、基本的動作も超音波画像生成装置100と同一であるため省略する。
【0059】
図8は、実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタ202の一例を示す。穿刺器具強調フィルタ202は、刺入角度10度の場合における穿刺器具強調フィルタである。穿刺器具強調フィルタ202は、縦21画素、横3画素のサイズを有し、その形状は、矩形である。フィルタ記憶部126には、刺入角度に応じた縦横比を持つ矩形のフィルタが複数記憶されている。複数種類の穿刺器具強調フィルタは、穿刺針の刺入角度に合わせて縦横比が異なる。穿刺器具強調フィルタは、10度〜60度の間で、10度刻みで6種類記憶されている。また、穿刺器具強調フィルタは、Bモード画像中で穿刺針が途切れている間隔に基づいたサイズとなっている。実施の形態1では、穿刺器具強調フィルタの形状を階段状にし、穿刺針が刺入される方向にある画素を用いて重み付け加算を行ったが、本実施の形態では、穿刺針が刺入される方向か否かに関わらず周囲の画素を用い、穿刺針が刺入される方向にある画素に対するフィルタ係数を大とする。
【0060】
実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタは、ユーザが予め作成してフィルタ記憶部に保存しておく。実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタは、対象画素が中心に来るように縦横共に奇数画素となっている。
【0061】
実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタにおける各画素のフィルタ係数を決定する方法を説明する。
【0062】
本実施の形態2では、次式(2)に示すガウス関数を適用して、穿刺器具強調フィルタを生成する。
【0063】
【数2】

【0064】
ここで、f(x、y)はフィルタ係数、μx、μyはx、y方向の平均、σ、σはx、y方向の分散、ρは相関値であり、μx=μy=0、σ=σ=40、ρ=0.9とすると、図9に模式的に示すような縦81×横81のサイズを持つフィルタが生成できる。図9は、フィルタのフィルタ係数の大小を、濃度の濃淡で表すものである。このようにして、穿刺針が刺入される方向にある画素に対するフィルタ係数を大とするフィルタ係数を作成することができる。
【0065】
図9において、中央に近い程フィルタ係数は大きく、中央の画素を中心とした同心楕円上のフィルタ係数は同一となっている。なお、図9においては、理解の容易性ために、同心楕円を、境界を付けて描いているが、図示のような境界が存在しているわけではないことは言うまでもない。楕円の長手方向は穿刺針の刺入方向と同方向である。すなわち、穿刺針の刺入方向のフィルタ係数を大とすることで、穿刺針が存在する可能性が高い位置にある画素のフィルタ係数を大とした重み付け加算を行う。
【0066】
図9に示すフィルタをベースとして、各穿刺器具強調フィルタのサイズとなるようにリニア補間することで、各穿刺器具強調フィルタに用いられるフィルタ係数を生成する。図9に示す縦81×横81のサイズを持つフィルタを、例えば、縦に15画素、横に27画素のサイズを持つ穿刺器具強調フィルタ(図示せず)なるようにリニア補間することができる。こうして得られた縦に15画素、横に27画素のサイズを持つ穿刺器具強調フィルタは、刺入角度10度の場合における穿刺器具強調フィルタである。刺入角度に応じてリニア補間による縦横比が決定される。この穿刺器具強調フィルタにおいても、中心部のフィルタ係数が最も大きく、次いで穿刺針が刺入される方向に沿ってフィルタ係数を大きく分布させている。中心にある対象画素は、対象画素を中心とした周囲の縦15画素×横27画素を用いて重み付け加算される。各画素が持つ値に対し、この穿刺器具強調フィルタのフィルタ係数を乗じて重み付け加算を行った結果が対象画素の値となる。このようにして作成した刺入角度に応じた縦横比を持つ穿刺器具強調フィルタをフィルタ記憶部に記憶しておく。
【0067】
本実施の形態に係る超音波画像生成装置は、刺入角度に応じて使用する穿刺器具強調フィルタを決定し、決定した穿刺器具強調フィルタを用いて、周囲の画素との重み付け加算を行う穿刺器具強調処理を全画素に対して行い、穿刺器具を強調処理した画像を生成することができる。
【0068】
図10(A)は、穿刺器具強調処理を行っていないBモード画像を表し、図10(B)は、穿刺器具強調フィルタを適用後のBモード画像と、穿刺器具強調処理前のBモード画像と、を合成した合成画像を表す。図10(B)に示す合成画像は、穿刺器具強調処理前のBモード画像を刺入角度方向にぼかした画像となる。なお、図10(A)および(B)は、フィルタ処理による違いを分かりやすくするために、スペックルノイズ除去、層構造の除去およびエッジ強調は行っていない。本発明の実施の形態2に係る超音波画像生成装置は、スペックルノイズおよび層構造が除去された画像に対して、穿刺器具強調処理を行い、さらにエッジ強調を行ったBモード画像と、穿刺器具強調処理前のBモード画像との合成を行う。
【0069】
なお、ここでは縦15画素、横27画素のサイズに変換する場合を例にとって説明したが、異なるサイズを持つ穿刺器具強調フィルタにおいても、ベースとなる図9に示す縦81×横81のサイズを持つフィルタに対してリニア補間をすることで、各穿刺器具強調フィルタのサイズに対応したフィルタ係数を生成することができる。
【0070】
以上説明したように、本発明の実施の形態2に係る超音波画像生成装置によれば、刺入角度に応じた縦横比を持った矩形の穿刺器具強調フィルタを用い、穿刺針が刺入される方向にある画素のフィルタ係数を大とする重み付け加算を全画素に対して行ったため、穿刺針が刺入される方向にBモード画像の繋がりを良くすることができ、途切れ途切れで表示される穿刺針が繋がった画像を生成することができる。また、穿刺器具強調フィルタ適用後の画像を穿刺器具強調フィルタ適用前のBモード画像と合成したため、穿刺針がユーザに分かりやすく表示された超音波画像を生成することができる。
【0071】
また、本発明の実施の形態2に係る穿刺器具強調フィルタは、サイズが十分に大きいため、スペックルの影響を受けにくい。そのため、スペックルノイズ除去は行わなくても良い。
【0072】
なお、本実施の形態では、穿刺器具強調フィルタの形状を6種類としたが、更に多くても良い。また、刺入角度10度〜60度までの間に対応した形状の穿刺器具強調フィルタを用意したが、刺入角度10度以下や、60度以上に対応した形状を持った穿刺器具強調フィルタを用意しても良い。
【0073】
なお、本実施の形態では、刺入角度に基づいて使用する穿刺器具強調フィルタが決定されたが、必ずしも刺入角度に基づいて決定する必要はない。例えば、画像から取得される刺入角度に基づいて穿刺器具強調フィルタを決定してもよい。すなわち、複数のBモード画像から穿刺針の先端に相当する高輝度点をそれぞれ抽出し、抽出した複数の先端位置から穿刺針の刺入角度を取得し、刺入角度に基づく穿刺器具強調フィルタを決定する。
【0074】
(実施の形態3)
実施の形態1および2では、穿刺針の刺入角度に応じた形状を持つ穿刺器具強調フィルタを用いてBモード画像の穿刺器具強調処理を行ったが、実施の形態3では、刺入角度に応じてBモード画像を回転させ、同一の穿刺器具強調フィルタを用いて穿刺器具強調処理を行う。
【0075】
図11は、本発明の実施の形態3に係る超音波画像生成装置300の主要な構成を示すブロック図である。なお、実施の形態1で示した超音波画像生成装置100と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
超音波画像生成装置300は、超音波画像生成装置100と比べ、主に穿刺器具強調データ生成部302の構成が異なる。
【0077】
図12は、穿刺器具強調データ生成部302のより詳細な構成を表した機能ブロック図である。穿刺器具強調データ生成部302は、スペックルノイズ除去部122、層構造除去部124、画像回転部304、フィルタ記憶部306、フィルタ適用処理部308、画像回転部310およびエッジ強調処理130を有する。
【0078】
画像回転部304は、層構造除去部124によって層構造が除去されたBモード画像(画像データ)に対し、穿刺器具情報記憶部110に記憶された刺入角度に応じた回転処理を行う。具体的には、穿刺針が水平に表示されるようにBモード画像データに対して画像の回転処理を行う。
【0079】
フィルタ記憶部306は、穿刺針が水平に表示された場合に適した穿刺器具強調フィルタが記憶されている。穿刺器具強調フィルタのサイズは、Bモード画像中で穿刺針が途切れる間隔に基づいたサイズとなっている。具体的には、Bモード画像中で穿刺針が途切れている間隔よりやや長い横幅を持ったサイズである。すなわち、穿刺器具強調フィルタは、回転後のBモード画像中で穿刺針が途切れている箇所に適用すると、穿刺針の一部が必ず含まれる。穿刺器具が途切れている間隔は、事前にユーザがBモード画像に基づいて測定を行う。
【0080】
フィルタ適用処理部308は、フィルタ記憶部306に記憶された穿刺器具強調フィルタを用いて、回転後のBモード画像(画像データ)の穿刺器具強調処理を行う。
【0081】
画像回転部310は、穿刺器具強調処理後のBモード画像が、画像回転部304で回転される前の角度で表示されるようBモード画像データに対して回転処理を行う。
【0082】
図13は、画像回転部304での回転処理後のBモード画像を表す。Bモード画像は、図13に示すように、刺入角度に基づいて穿刺針が水平となる角度だけ回転される。例えば、穿刺針が左上から右下に刺入されていて刺入角度が30度の場合は、Bモード画像を30度だけ反時計方向に回転させる。
【0083】
実施の形態3に係る穿刺器具強調フィルタは、実施の形態2の場合と同様にユーザが予め作成してフィルタ記憶部306に保存しておく。フィルタ記憶部306に記憶されている穿刺器具強調フィルタは、穿刺針が水平に表示される場合に適したフィルタである。
【0084】
図14は、実施の形態3において使用する穿刺器具強調フィルタにおいて各画素にフィルタ係数を割り当てるベースとなるガウスフィルタの一例である。下面の2次元座標は位置を表し、縦軸はフィルタ係数を表す。このガウスフィルタは、平均μ=0、分散σ=25、相関値ρ=0の2次元ガウスフィルタである。このガウスフィルタのフィルタ係数は、2次元座標の中心部が最大となっており、中心から離れるほど減少する。2次元座標の中心部を中心とした同心円上の画素のフィルタ係数は同一となる。このガウスフィルタに対してリニア補間を行うことで、Bモード画像中で穿刺針が途切れている間隔よりやや長い横幅を持ったサイズを持ち、穿刺針が水平に表示される場合に適した穿刺器具強調フィルタを生成する。
【0085】
超音波画像生成装置300は、穿刺針が水平に表示されるように回転されたBモード画像(画像データ)に対して、穿刺針が水平に表示される場合に適した穿刺器具強調フィルタを適用する。すなわち、刺入角度がいずれの角度であっても、使用する穿刺器具強調フィルタは穿刺針が水平に表示される場合に適したフィルタである。超音波画像生成装置300は、穿刺器具強調処理後のBモード画像(画像データ)を穿刺針が元の角度となるように回転させて、エッジ強調処理を行う。超音波画像生成装置300は、穿刺器具強調フィルタを適用され、エッジ強調処理をされたBモード画像と穿刺器具強調処理前のBモード画像とを合成して表示する。
【0086】
以上説明したように、本発明の実施の形態3に係る超音波画像生成装置300によれば、刺入角度に応じてBモード画像を回転させ、穿刺針が水平に表示されるBモード画像に対して穿刺器具強調フィルタを適用して、穿刺針が刺入される方向にBモード画像の繋がりを良くするため、途切れ途切れで表示される穿刺針が繋がった画像を生成することができる。また、刺入角度に応じてBモード画像を回転させて穿刺針が水平に表示される画像を生成するため、穿刺針が水平に表示される場合に適した穿刺器具強調フィルタのみを用意すれば良く、刺入角度に応じて複数の穿刺器具強調フィルタを用意する必要がなくなる。また、穿刺器具強調フィルタを適用されたBモード画像と元のBモード画像とを合成したため、穿刺針がユーザに分かりやすく表示された超音波画像を生成することができる。
【0087】
なお、スペックルノイズの除去は必ずしも行わなくても良い。スペックルノイズが除去されたBモード画像に対して穿刺器具強調フィルタを適用すると、穿刺器具強調フィルタのサイズを小さくできる。
【0088】
以上説明したように、本発明によれば、穿刺針の刺入角度に応じた穿刺器具強調フィルタを用いてBモード画像に穿刺器具強調処理を行い、し穿刺器具強調処理前のBモード画像と合成したため、途切れ途切れで表示される穿刺針が繋がった画像を生成することができる。
【0089】
なお、上記各実施の形態では、スキャンコンバート前のBモード画像に対して、穿刺器具強調処理や画像合成処理を行った例を説明したが、かかる処理をスキャンコンバート後に行ってもよい、すなわち、スキャンコンバートは、穿刺器具強調データを生成する前で行ってもよい。したがって、スキャンコンバートは、超音波画像生成部106で行っても良いし、超音波画像合成部112で行っても良い。また、上記各実施の形態では、穿刺器具強調処理を行ったBモード画像と穿刺器強調処理前のBモード画像とを重畳合成して合成Bモード画像を生成する例を説明したが、穿刺器具強調処理を行ったBモード画像と穿刺器具強調処理前のBモード画像とをそれぞれスキャンコンバートしてから並列配置となるように合成して並列配置の合成Bモード画像を生成するようにしてもよい。
【0090】
また、上記各実施の形態では、刺入角度を穿刺アダプタから出力したが、必ずしも穿刺アダプタから出力する必要はない。例えば、ユーザが、超音波画像を見て刺入角度を計測して入力を行っても良いし、穿刺アダプタの設定を調べて予め穿刺器具情報記憶部110に記憶させておいても良い。
【0091】
また、上記の各実施の形態では、予め穿刺器具強調フィルタをフィルタ記憶部に記憶しておいたが、被検者に適した穿刺器具強調フィルタをユーザが作成できる態様としても良い。例えば、ユーザが穿刺器具強調フィルタの設定項目として、フィルタサイズ、分散、平均、相関値等を入力することで新たに穿刺器具強調フィルタを作成する。新たに作成された穿刺器具強調フィルタは、フィルタ記憶部に記憶され、何度も利用できることが望ましい。
【0092】
また、上記各実施の形態において、層構造の除去は必ずしも行わなくても良い。層構造の除去を行う利点としては、層構造を除去したBモード画像に対して穿刺器具強調フィルタを適用すると、穿刺針以外の連結成分を除去することができ、穿刺器具強調フィルタの適用効果を高めることができる。
【0093】
なお、上記各実施の形態において、エッジ強調処理は必ずしも行う必要はない。エッジ強調処理を行う利点としては、穿刺針とその他の部分とのエッジが強調できるため、ユーザが穿刺針の位置を認識しやすくなる。また、エッジ強調処理として穿刺針に対して直角方向の1次元エッジ強調処理を行ったが、エッジ強調処理は1次元に限られず、例えば、穿刺針に対して直角方向の2次元エッジ強調処理でも良い。
【0094】
なお、上記各実施の形態において、スペックルノイズを除去する処理として、メディアンフィルタによる処理を行ったが、スペックルノイズを除去する処理は、メディアンフィルタによる処理に限られない。例えば、空間コンパウンド法、周波数コンパウンド法、モフォロジー処理等を行っても良い。
【0095】
また、上記各実施の形態において、異なるタイミングで穿刺器具強調フィルタ適用後の画像を複数生成し、各画像を加算平均して、時間的な平均を取ったBモード画像を生成しても良い。また、時間に応じてフィルタ係数を適宜変化させる3次元フィルタを適用しても良い。
【0096】
また、上記各実施の形態において、穿刺器具強調フィルタ適用後の画像に対して、さらに画像中の穿刺針の途切れを連結させる穿刺器具連結処理を行っても良い。例えば、穿刺器具強調フィルタ適用処理後の画像に対して2値化を行って高輝度点を抽出し、抽出した高輝度点に対してハフ変換を行うことで穿刺針の途切れを繋げる直線の生成を行う。生成した直線を穿刺針と重ねて表示すれば、ユーザは、穿刺器具が連結されたように見える。なお、穿刺器具連結処理は必ずしも穿刺器具強調フィルタ適用処理後の画像に対して行う必要はなく、例えば、エッジ強調処理後の画像に対して行っても良い。
【0097】
なお、以上説明した本発明に係る実施の形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明の構成を限定するものではない。本発明に係る超音波画像生成装置および超音波画像生成方法は、上記の各実施の形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明に係る超音波画像生成装置および超音波画像生成方法は、超音波を用いて、穿刺器具を刺入した被検体の断層画像を取得する場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0099】
100,300 超音波画像生成装置
106 超音波画像生成部
108,302 穿刺器具強調データ生成部
110 穿刺器具情報記憶部
112 超音波画像合成部
114 超音波画像表示制御部
116 モニタ
118 探触子
120 穿刺アダプタ
122 スペックルノイズ除去部
124 層構造除去部
126,306 フィルタ記憶部
128,308 フィルタ適用処理部
130 エッジ強調処理部
304,310 画像回転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿刺器具が刺入された被検体に対して探触子から超音波を照射し、前記被検体および前記穿刺器具から反射されるエコー信号を前記探触子で受信し、前記エコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成装置であって、
前記被検体に対して前記穿刺器具が刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得手段と、
前記刺入角度に基づいた穿刺器具強調フィルタを適用して前記超音波画像中の前記穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理手段と、
前記穿刺器具の強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成手段と、
前記合成画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする超音波画像生成装置。
【請求項2】
前記穿刺器具強調フィルタは、前記刺入角度に基づいて縦横比が決められたものであることを特徴とする請求項1の超音波画像生成装置。
【請求項3】
前記穿刺器具強調フィルタは、前記超音波画像上で前記穿刺器具を示す画像が途切れている間隔に基づいたサイズであることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項4】
さらに、前記超音波画像中のスペックルノイズを除去させるスペックルノイズ除去手段を備え、
前記穿刺器具強調処理手段は、前記スペックルノイズ除去手段によって前記スペックルノイズが除去された前記超音波画像に対して、前記穿刺器具強調フィルタによる前記穿刺器具の強調処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項5】
さらに、前記超音波画像中の層構造を除去させる層構造除去手段を備え、
前記穿刺器具強調処理手段は、前記層構造除去手段によって前記層構造が除去された前記超音波画像に対して、前記穿刺器具強調フィルタによる前記穿刺器具の強調処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項6】
さらに、前記超音波画像中のスペックルノイズを除去させるスペックルノイズ除去手段と、
記超音波画像中の層構造を除去させる層構造除去手段と、を備え、
前記穿刺器具強調処理手段は、前記スペックルノイズ除去後に前記層構造を除去した前記超音波画像に対して、前記穿刺器具強調フィルタによる前記穿刺器具の強調処理を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項7】
さらに、前記超音波画像上の前記穿刺器具を示す画像の途切れを繋げる穿刺器具連結処理を行う穿刺器具連結処理手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項8】
さらに、前記刺入角度に応じた複数種類の穿刺器具強調フィルタが記憶されたフィルタ記憶手段を備え、
前記穿刺器具強調処理手段は、前記フィルタ記憶手段に記憶された複数種類の前記穿刺器具強調フィルタから、使用する前記穿刺器具強調フィルタを特定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項9】
前記刺入角度取得手段は、
前記穿刺器具を前記被検者に刺入するガイドとなる穿刺アダプタから前記刺入角度を取得することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項10】
前記刺入角度取得手段は、
複数の前記超音波画像から前記穿刺器具の先端位置を抽出し、
抽出した複数の前記先端位置から前記刺入角度を取得することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の超音波画像生成装置。
【請求項11】
穿刺器具が刺入された被検体に対して探触子から超音波を照射し、前記被検体および前記穿刺器具から反射されるエコー信号を前記探触子で受信し、前記エコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成装置であって、
前記被検体に対して前記穿刺器具が刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得手段と、
前記刺入角度に基づいて、前記表示部に表示される前記穿刺器具の角度が水平となるように前記超音波画像を回転させる画像回転手段と、
穿刺器具強調フィルタを適用して、回転させた前記超音波画像中の前記穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理手段と、
穿刺器具強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成手段と、
前記合成画像を前記表示部に表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波画像生成装置。
【請求項12】
穿刺器具が刺入された被検体に超音波を照射し、前記被検体および前記穿刺器具から反射されるエコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成方法であって、
前記穿刺器具が前記被検体に刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得ステップと、
前記刺入角度に基づいた穿刺器具強調フィルタを適用して前記超音波画像中の前記穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理ステップと、
前記穿刺器具の強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、
前記合成画像を前記表示部に表示させる表示ステップと、
を含むことを特徴とする超音波画像生成方法。
【請求項13】
穿刺器具が刺入された被検体に超音波を照射し、前記被検体および前記穿刺器具から反射されるエコー信号から超音波画像を生成して表示部に表示させる超音波画像生成方法であって、
前記穿刺器具が前記被検体に刺入される刺入角度を取得する刺入角度取得ステップと、
前記刺入角度に応じて前記表示部に表示される前記穿刺器具の角度が水平となるように前記超音波画像を回転させる画像回転ステップと、
穿刺器具強調フィルタを適用して、回転させた前記超音波画像中の前記穿刺器具を強調処理する穿刺器具強調処理ステップと、
前記穿刺器具の強調処理前後の画像を合成して合成画像を生成する画像合成ステップと、
前記合成画像を前記表示部に表示させる表示ステップと、
を有することを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図7】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−70816(P2012−70816A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216512(P2010−216512)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】