説明

超音波画像診断装置

【課題】所望とする周波数特性である広帯域の送信超音波を出力することができる超音波画像診断装置を提供する。
【解決手段】超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反対超音波を受信することにより受信信号を出力する。送信部12は、駆動信号を出力することにより超音波探触子2によって送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス周期が2Tである基本パルス信号に、パルス幅Aである同極性の2つの第1のパルス信号と、第1のパルス信号とは極性の異なるパルス信号であって、パルス幅Bである第2のパルス信号とを合成して送信パルス信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波画像診断装置は、超音波探触子によって、生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信し、受信した超音波(反射超音波)を受信信号に変換し、これに基づいて超音波画像を表示する。反射超音波は被検体内の状態を示す情報を含んでいるため、良質な反射超音波を得ることが良質な超音波画像を得るために重要となっている。受信信号に対する信号処理等によって超音波画像の画質を向上させることはできるが、本質的には、送信超音波が良質であることが望ましい。
【0003】
良質である送信超音波とは、時間分解能や空間分解能に優れたものであるといわれている。これらのうち、時間分解能(深さ方向の分解能)の向上については、送信超音波の周波数帯域を広帯域とすることにより実現することができる。
【0004】
このような状況に鑑み、従来の超音波画像診断装置において、パルス矩形波による駆動信号(パルス信号)のパルス幅を漸次可変させてパルス信号を調整し、超音波の被検体内での伝播により生じる2次高調波成分を取得できるようにしたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5833614号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、図8に示される波形に代表される矩形波による周期的なパルス信号は、その周期によって決定される周波数特性(振幅・位相)を持っている。なお、図8に示されるパルス信号は、1周期が2Tである関数f(x)で示されるパルス信号であって、このパルス信号の波形をフーリエ変換すると、下記式(1)のように表すことができる。なお、下記式(1)において、ωは周波数を表し、iは虚数単位を表している。
【数1】

【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明では、例えば、上記式(1)で表される関数をどのように変更すれば、使用する超音波探触子の特性を考慮した周波数特性とすることができるかなど、超音波探触子の特性を考慮した所望とする周波数特性である送信超音波を出力することは困難であった。すなわち、所望とする周波数特性である送信超音波を出力するためには、パルス信号の生成において特定の周波数の増減を行うなど、特別な周波数設計手段を要していた。
【0008】
本発明の課題は、所望とする周波数特性である広帯域の送信超音波を出力することができる超音波画像診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
前記駆動信号を出力することにより前記超音波探触子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、パルス周期が2Tである基本パルス信号に、パルス幅A(A<T)である同極性の2つの第1のパルス信号と、該第1のパルス信号とは極性の異なるパルス信号であって、パルス幅B(B=T−2A)である第2のパルス信号とを合成して、矩形波の前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記2つの第1のパルス信号が前記第2のパルス信号に対して時系列的に対称となる位置に配置されるように前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記第1のパルス信号のパルス幅Aを前記第2のパルス信号のパルス幅Bよりも小さくして前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記2つの第1のパルス信号のうちの一が前記駆動信号の始期となるように前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、前記第1のパルス信号のパルス幅A及び前記第2のパルス信号のパルス幅Bを可変可能としたことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置において、
前記送信部は、下記式を含んで表される矩形駆動波形である前記駆動信号を生成することを特徴とする。
【数2】


ここで、ωは周波数、iは虚数単位である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、所望とする周波数特性である広帯域の送信超音波を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】超音波画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】超音波画像診断装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】送信部の概略構成を示すブロック図である。
【図4】パルス信号の駆動波形について説明する図である。
【図5】送信するパルス信号の波形について説明する図である。
【図6】超音波探触子の周波数応答特性について説明する図である。
【図7】送信するパルス信号の波形の他の例について説明する図である。
【図8】従来のパルス信号の波形について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る超音波画像診断装置について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲は図示例に限定されない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有するものについては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0018】
本実施の形態に係る超音波画像診断装置Sは、図1及び図2に示すように、超音波画像診断装置本体1と超音波探触子2とを備えている。超音波探触子2は、図示しない生体等の被検体に対して超音波(送信超音波)を送信するとともに、この被検体で反射した超音波の反射波(反射超音波:エコー)を受信する。超音波画像診断装置本体1は、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2に電気信号の駆動信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して送信超音波を送信させるとともに、超音波探触子2にて受信した被検体内からの反射超音波に応じて超音波探触子2で生成された電気信号である受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する。
【0019】
超音波探触子2は、圧電素子からなる振動子2aを備えており、この振動子2aは、例えば、方位方向に一次元アレイ状に複数配列されている。本実施の形態では、例えば、192個の振動子2aを備えた超音波探触子2を用いている。なお、振動子2aは、二次元アレイ状に配列されたものであってもよい。また、振動子2aの個数は、任意に設定することができる。また、本実施の形態では、超音波探触子2について、リニア走査方式の電子スキャンプローブを採用したが、電子走査方式あるいは機械走査方式の何れを採用してもよく、また、リニア走査方式、セクタ走査方式あるいはコンベックス走査方式の何れの方式を採用することもできる。超音波探触子における帯域幅は任意に設定することができる。
【0020】
超音波画像診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、画像生成部14と、メモリー部15と、DSC(Digital Scan Converter)16と、表示部17と、制御部18とを備えて構成されている。
【0021】
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力などを行うための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を備えており、操作信号を制御部18に出力する。
【0022】
送信部12は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2にケーブル3を介して電気信号である駆動信号を供給して超音波探触子2に送信超音波を発生させる回路である。より具体的には、送信部12は、図3に示すように、例えば、クロック発生回路121、パルス発生回路122、パルス幅設定部123及び遅延回路124を備えている。
【0023】
クロック発生回路121は、駆動信号の送信タイミングや送信周波数を決定するクロック信号を発生させる回路である。
パルス発生回路122は、所定の周期で駆動信号としてのパルス信号を発生させるための回路である。パルス発生回路122は、例えば、図4に示すように、3値の電圧を切り替えて出力することにより、矩形波によるパルス信号を発生させることができる。このとき、パルス信号の振幅については、正極性及び負極性で同一となるようにしたが、これに限定されない。なお、2値の電圧を切り替えてパルス信号を発生させる構成であってもよい。
パルス幅設定部123は、パルス発生回路122から出力されるパルス信号のパルス幅を設定する。すなわち、パルス発生回路122は、パルス幅設定部123によって設定されたパルス幅に従ったパルス波形によるパルス信号を出力する。パルス幅は、例えば、操作入力部11による入力操作により可変することができる。また、超音波画像診断装置本体1に接続された超音波探触子2を識別することにより、識別した超音波探触子2に対応するパルス幅が設定されるように構成してもよい。なお、パルス幅設定部123によるパルス幅の設定の詳細については、後述する。
【0024】
遅延回路124は、駆動信号の送信タイミングを振動子毎に対応した個別経路毎に遅延時間を設定し、設定された遅延時間だけ駆動信号の送信を遅延させて送信超音波によって構成される送信ビームの集束を行うための回路である。
【0025】
以上のように構成された送信部12は、制御部18の制御に従って、駆動信号を供給する複数の振動子2aを、超音波の送受信毎に所定数ずらしながら順次切り替え、出力の選択された複数の振動子2aに対して駆動信号を供給することにより走査を行う。
【0026】
図2に示すように、受信部13は、制御部18の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路である。受信部13は、例えば、増幅器、A/D変換回路、整相加算回路を備えている。増幅器は、受信信号を、振動子2a毎に対応した個別経路毎に、予め設定された所定の増幅率で増幅させるための回路である。A/D変換回路は、増幅された受信信号をアナログ−デジタル変換(A/D変換)するための回路である。整相加算回路は、A/D変換された受信信号に対して、振動子2a毎に対応した個別経路毎に遅延時間を与えて時相を整え、これらを加算(整相加算)して音線データを生成するための回路である。
【0027】
画像生成部14は、受信部13からの音線データに対して包絡線検波処理や対数増幅などを実施し、ゲインの調整等を行って輝度変換することにより、Bモード画像データを生成する。すなわち、Bモード画像データは、受信信号の強さを輝度によって表したものである。画像生成部14にて生成されたBモード画像データは、メモリー部15に送信される。
【0028】
メモリー部15は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの半導体メモリーによって構成されており、画像生成部14から送信されたBモード画像データをフレーム単位で記憶する。すなわち、メモリー部15は、フレーム単位により構成された超音波診断画像データとして記憶することができる。メモリー部15に記憶された超音波診断画像データは、制御部18の制御に従って読み出され、DSC16に送信される。
【0029】
DSC16は、メモリー部15より受信した超音波診断画像データをテレビジョン信号の走査方式による画像信号に変換し、表示部17に出力する。
【0030】
表示部17は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode-Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electronic Luminescence)ディスプレイ、無機ELディスプレイ及びプラズマディスプレイ等の表示装置が適用可能である。表示部17は、DSC16から出力された画像信号に従って表示画面上に超音波診断画像の表示を行う。なお、表示装置に代えてプリンター等の印刷装置等を適用してもよい。
【0031】
制御部18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えて構成され、ROMに記憶されているシステムプログラム等の各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムに従って超音波画像診断装置Sの各部の動作を集中制御する。
ROMは、半導体等の不揮発メモリー等により構成され、超音波画像診断装置Sに対応するシステムプログラム及び該システムプログラム上で実行可能な各種処理プログラムや、各種データ等を記憶する。これらのプログラムは、コンピューターが読み取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPUは、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
RAMは、CPUにより実行される各種プログラム及びこれらプログラムに係るデータを一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0032】
以上のように構成された、超音波画像診断装置Sの送信部12によって生成される駆動信号について図5を参照しながら説明する。
【0033】
図5は、本実施の形態において用いられる超音波探触子2の振動子2aに対して与えられる、好ましい駆動信号の波形の一例を示している。
すなわち、図5に示される駆動信号の波形は、上述した1周期が2Tであって関数f(x)で表される基本パルス信号に、予め設定されたパルス幅である2種類のパルス信号が合成されたものである。
【0034】
より具体的には、送信部12のパルス幅設定部123は、先ず、上述の基本パルス信号を設定し、その始期にパルス幅Aである極性(+)のパルス信号を設定する。このパルス信号を第1のパルス信号ということがある。続いて、パルス幅設定部123は、この第1のパルス信号に連続して、パルス幅Bである極性(−)のパルス信号を設定する。このパルス信号を第2のパルス信号ということがある。すなわち、第2のパルス信号は、第1のパルス信号とは異なる極性のパルス信号ということができる。そして、第2のパルス信号に連続して、上述の第1のパルス信号を設定する。これにより、超音波探触子2に送信する送信パルス信号が生成される。すなわち、送信パルス信号は、2つの第1のパルス信号及び1つの第2のパルス信号を基本パルス信号に合成して得られたパルス信号である。
なお、第1のパルス信号及び第2のパルス信号は、図5に示すものとは反対の極性であってもよい。
【0035】
上述したようにして生成された送信パルス信号は、2つの第1のパルス信号と第2のパルス信号とのパルス幅の和(2A+B)が基本パルス信号の半周期Tと同一となるように設定されている。ここで、第1のパルス信号のパルス幅A及び第2のパルス信号のパルス幅Bは、2つの第1のパルス信号と第2のパルス信号とのパルス幅の和が基本パルス信号の半周期Tとなる範囲で任意に設定することができる。
【0036】
上述したようにして生成された送信パルス信号の波形をフーリエ変換すると、下記式(3)のように表すことができる。なお、下記式(3)において表される送信パルス信号は、1周期が2Tであって関数f(x)で表される。また、下記式(3)において、ωは周波数を表し、iは虚数単位を表している。
【数3】

【0037】
ここで、送信パルス信号に含まれる第1のパルス信号のパルス幅Aが比較的小さく設定された場合には、上記式(3)の第1項及び第2項において求められる値はそれぞれ上述した基本パルス信号の周波数特性に近似するようになる。このとき、第3項において求められる値は、パルス幅Aが小さいため、これに係る係数「sin(A/2)ω」によって高周波側まで帯域を持つ広い周波数特性を持つようになる。その結果、「e^{i(A/2)ω}」によって求められる値との組み合わせにより、高周波部分にその周波数のピークを持つことが期待できる。したがって、送信パルス信号を上述のようにして生成することで、ピークを複数(双峰性)有する周波数特性である送信超音波を容易に得ることができ、また、この送信超音波の周波数特性を制御することができる。
【0038】
以上のようにして生成された送信パルス信号に対する超音波探触子2の周波数応答特性は、図6に示すようになる。ここで、図6中、Wは送信パルス信号の周波数特性を示し、Pは超音波探触子2の周波数応答特性を示し、Qは送信パルス信号に対する超音波探触子2の周波数応答特性を示す。
【0039】
図6に示すように、一般に超音波探触子の周波数応答特性は、正規分布のような釣鐘状をなしており、高周波部分及び低周波部分においてその特性がピークに比べて低くなる。一方、超音波探触子から送信される送信超音波をより広帯域とすることができれば、その送信超音波は、時間軸でみた場合、短パルス化されることにより非常に高い局在性を有するようになる。すなわち、送信超音波をより広帯域化することができれば、時間分解能に優れた送信超音波とすることができるようになる。
【0040】
ここで、送信超音波を広帯域化するための方法として、超音波探触子の周波数応答特性とは逆の周波数特性である送信パルス信号を超音波探触子に与えることが考えられる。すなわち、超音波探触子の周波数応答特性の低い高周波部分及び低周波部分において、高い周波数特性を有する送信パルス信号を超音波探触子に与えることができれば、送信超音波を広帯域化することができるようになる。このような周波数応答特性は、一般には双峰性を有することになる。
【0041】
本実施の形態では、上述のようにして送信パルス信号を生成するようにしたので、図6に示すように、双峰性を有する周波数応答特性を得ることができ、矩形波である送信パルス信号でありながら、超音波探触子の特性に応じた広帯域の送信超音波の設計を容易に行うことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、その周波数特性が上記式(3)で記述されており、第1のパルス信号のパルス幅A及び第2のパルス信号のパルス幅Bを調整することにより、送信パルス信号に対する超音波探触子の周波数応答特性の示すピークの位置を所望の周波数帯域に変更することができる。すなわち、送信パルス信号に対する超音波探触子の周波数応答特性の示す、双峰性を有するピークの位置を制御することができる。そのため、例えば、使用する超音波探触子の周波数応答特性に応じて適切な周波数応答特性を得ることができ、効率よく超音波探触子を利用することができるようになる。このとき、第1のパルス信号のパルス幅Aを第2のパルス信号のパルス幅Bよりも小さくすることで、送信パルス信号に対する超音波探触子の、より好ましい周波数応答特性を得ることができる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によれば、超音波探触子2は、駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反対超音波を受信することにより受信信号を出力する。送信部12は、駆動信号を出力することにより超音波探触子2によって送信超音波を生成させる。送信部12は、パルス周期が2Tである基本パルス信号に、パルス幅Aである同極性の2つの第1のパルス信号と、第1のパルス信号とは極性の異なるパルス信号であって、パルス幅Bである第2のパルス信号とを合成して、矩形波の駆動信号を生成する。その結果、駆動信号に対する超音波探触子の周波数応答特性に双峰性を持たせることができる。また、超音波探触子の周波数応答特性に適した駆動信号の設計を容易に行うことができる。そのため、所望とする周波数特性である広帯域の送信超音波を容易に出力することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、2つの第1のパルス信号が第2のパルス信号に対して時系列的に対称となる位置に配置されるように駆動信号を生成する。その結果、駆動信号の設計をより容易に行うことができる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、第1のパルス信号のパルス幅Aを第2のパルス信号のパルス幅Bよりも小さくして駆動信号を生成する。その結果、駆動信号に対する超音波探触子の、より好ましい周波数応答特性を得ることができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、2つの第1のパルス信号のうちの一が駆動信号の始期となるように駆動信号を生成する。その結果、駆動信号に対する超音波探触子の、より好ましい周波数応答特性を得ることができる。
【0047】
また、本実施の形態によれば、送信部12は、第1のパルス信号のパルス幅A及び第2のパルス信号のパルス幅Bを可変可能にしたので、駆動信号に対する超音波探触子の周波数応答特性の示すピークの位置を変更することができる。すなわち、駆動信号に対する超音波探触子の周波数応答特性の示す、双峰性を有するピークの位置を制御することができる。そのため、例えば、使用する超音波探触子の周波数応答特性に応じて適切な周波数応答特性を得ることができ、効率よく超音波探触子を利用することができるようになる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態における記述は、本発明に係る超音波画像診断装置の一例であり、これに限定されるものではない。超音波画像診断装置を構成する各機能部の細部構成及び細部動作に関しても適宜変更可能である。
【0049】
また、本実施の形態では、図5に示すような送信パルス信号を生成したが、例えば、図7に示すように、送信パルス信号の出力タイミングを変更するようにしてもよい。ここで、図7の矢印はY軸を表しており、パラメーターtを変更することで中心位置がスライドしていくことを示している。このときの送信パルス信号の波形をフーリエ変換すると、下記式(4)のように表すことができる。なお、下記式(4)において表される送信パルス信号は、1周期が2Tであって関数f(x−t)で表される。また、下記式(4)において、ωは周波数を表し、iは虚数単位を表し、tは時間方向遅延量を表す。
【数4】

【0050】
上記式(4)に示すように、この場合、送信パルス信号の全体に対して係数「eit」が周波数特性として掛ることとなる。これにより、遅延量tに依存して、送信パルス信号の周波数特性は周期的な影響を受けるが、基本パルス信号に対して所定の大きさの振幅であって一定の周期性を有する周期信号が、図6において示されたような、送信パルス信号に対する超音波探触子の周波数応答特性の双峰性にかかり、その性質は影響を受けるものの潜在的には保持されると考えられる。
【0051】
また、本実施の形態では、基本パルス信号の始期に第1のパルス信号を設定し、これに連続して第2のパルス信号及び第1のパルス信号を設定して送信パルス信号を生成するようにしたが、第1のパルス信号及び第2のパルス信号を設定する位置はこれに限らず、好ましい周波数応答特性を得るために、適宜の位置に設定してもよい。
また、第1のパルス信号と第2のパルス信号の配置順は、上述した順序に限らず、好ましい周波数応答特性を得るために、適宜設定してもよい。
また、2つの第1のパルス信号と第2のパルス信号が連続して配置されたものでなくてもよい。
すなわち、2つの第1のパルス信号は第2のパルス信号に対して時系列的に対称に配置されるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
S 超音波画像診断装置
1 超音波画像診断装置本体
2 超音波探触子
2a 振動子
12 送信部
122 パルス発生回路
123 パルス幅設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号によって被検体に向けて送信超音波を出力するとともに、被検体からの反射超音波を受信することにより受信信号を出力する超音波探触子と、
前記駆動信号を出力することにより前記超音波探触子によって前記送信超音波を生成させる送信部と、
を備えた超音波画像診断装置において、
前記送信部は、パルス周期が2Tである基本パルス信号に、パルス幅A(A<T)である同極性の2つの第1のパルス信号と、該第1のパルス信号とは極性の異なるパルス信号であって、パルス幅B(B=T−2A)である第2のパルス信号とを合成して、矩形波の前記駆動信号を生成することを特徴とする超音波画像診断装置。
【請求項2】
前記送信部は、前記2つの第1のパルス信号が前記第2のパルス信号に対して時系列的に対称となる位置に配置されるように前記駆動信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波画像診断装置。
【請求項3】
前記送信部は、前記第1のパルス信号のパルス幅Aを前記第2のパルス信号のパルス幅Bよりも小さくして前記駆動信号を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波画像診断装置。
【請求項4】
前記送信部は、前記2つの第1のパルス信号のうちの一が前記駆動信号の始期となるように前記駆動信号を生成することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記第1のパルス信号のパルス幅A及び前記第2のパルス信号のパルス幅Bを可変可能としたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【請求項6】
前記送信部は、下記式を含んで表される矩形駆動波形である前記駆動信号を生成することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の超音波画像診断装置。
【数1】


ここで、ωは周波数、iは虚数単位である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102852(P2013−102852A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247363(P2011−247363)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】