超音波発生デバイスおよび超音波発生装置
【課題】 残響特性に優れた超音波発生デバイスを提供する。
【解決手段】 超音波発生デバイス100は、駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子1を備え、圧電振動子1に印加される駆動信号は、圧電振動子1の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たす。
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
【解決手段】 超音波発生デバイス100は、駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子1を備え、圧電振動子1に印加される駆動信号は、圧電振動子1の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たす。
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波発生デバイスに関し、さらに詳しくは、残響特性に優れた超音波発生デバイスに関する。
【0002】
また、本発明は、上記超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とを備えた超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近時、正確な距離測定方法として、超音波を利用した距離測定方法が活用されている。超音波発生装置から超音波を放出し、被測定物に当て、被測定物から反射した超音波を超音波マイク装置で検出し、放出から検出までに要した時間から、被測定物までの距離を算出する方法である。
【0004】
超音波発生装置は、超音波を放出する超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とを備える。超音波発生デバイスは、圧電振動子などの振動子を振動させて超音波を放出する。超音波発生デバイスにおいては、駆動信号発生回路から駆動信号が印可されている間は振動子が振動して超音波を放出し、駆動信号が印加されなくなると直ちに振動子が振動を停止して不要な超音波を放出しないことが求められる。すなわち、超音波発生デバイスは、残響特性に優れたものであることが求められる。
【0005】
なぜならば、超音波発生デバイスが、距離を測定するための超音波を放出した後も不要な超音波を放出し続けると、その不要な超音波の被測定物からの反射波を、超音波マイク装置が距離を測定するための反射波として誤って検出してしまい、被測定物までの距離を誤算出してしまう恐れがあるからである。
【0006】
このような測定距離の誤算出を防止するためには、たとえば、特許文献1(特許第2587418号公報)に開示された超音波駆動装置の制御方法のように、駆動電圧(駆動信号)の印加が停止された駆動部(振動子)に、駆動電圧とは逆位相の電気信号を印加し、短時間で駆動部の振動を停止させる方法を採用することが考えられる。特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法は、より具体的には、圧電素子を有する超音波共振系に所定の駆動電圧を供給することにより、その超音波共振系を励振して駆動部を駆動する超音波駆動装置において、駆動部を停止する際には、駆動電圧の供給を停止し、その後の超音波共振系の残響を打ち消すように作用する電気信号を超音波共振系に印加して駆動部を停止するようにしている。なお、特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法は、具体的には、超音波モータを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2587418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法を採用すれば、超音波駆動装置(超音波発生デバイス)の残響特性を改善することができ、距離の測定などにおいて誤算出を防止できるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、この方法では、別途、位相を反転させるための回路が必要になり、回路が複雑となって、超音波発生装置のコストが上昇してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものである。その手段として、本発明の超音波発生デバイスは、駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子を備え、圧電振動子に印加される駆動信号が、圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たすようにした。
【0011】
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
なお、上記式は、fp=fr/(1+1/np)であることが好ましい。この場合には、残響特性が最良となり、圧電振動子を停止させた後の不要な超音波の放出がほとんどなくなり、距離測定などにおいて誤算出がなくなるからである。
【0012】
また、駆動信号は、矩形波であることが好ましい。この場合には、駆動信号の作成が容易となるからである。
【0013】
また、駆動パルス数npは、4以下であることが好ましい。
この場合には、残響を抑える効果が十分に大きいからである。
【0014】
また、上述した超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とで、超音波発生装置を構成することができる。この場合には、残響特性に優れた超音波発生装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超音波発生デバイスおよび超音波発生装置は、上述した構成としたため、残響特性に優れている。したがって、距離測定などに使用した場合に、測定距離を誤算出してしまうことがない。しかも、残響特性の向上のために、特別な回路を別途付加する必要もなく、コストの上昇をまねくこともない。
【0016】
なお、本発明の超音波発生デバイスおよび超音波発生装置において、圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、圧電振動子に印加される駆動信号を、
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)とし、より望ましくは、
fp=fr/(1+1/np)
としているが、その理由は次のとおりである。
【0017】
すなわち、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、2種類の周波数の干渉によるうなりの効果を利用して、残響を小さくしている。駆動信号の印加により振動を始めた振動子は、その振動子の共振周波数で振動し続けようとする。一方、駆動信号の周波数を、振動子の共振周波数からずらすと、共振周波数で振動し続けようとする振動子と、強制的に駆動信号の周波数で振動させようとする2つの力が働き、2つの周波数によるうなりが発生する。このうなりによる振動子の変位が、ちょうど零になるタイミングで駆動信号の印加を零、もしくは開放すると、残響が小さい振動特性を得ることができる。
【0018】
そこで、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、望ましくは、
fp=fr/(1+1/np)
を満たすようにした。この式を満たす場合には、上記うなりによる振動子の変位が、ちょうど零になるタイミングで駆動信号の印加を零、もしくは開放することになり、残響が小さい振動特性を得ることができる。
【0019】
ただし、駆動信号の印加を零、もしくは開放するタイミングは、わずかにずれていても、残響を実用上問題がないほどに小さくできる。そこで、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、±2%の幅をもたせて、
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)の式を満たすようにしたのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す断面図であり、図1の鎖線X−X部分を示す。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100に用いられた超音波発生素子1を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100の駆動状態を示す説明図である。
【図5】超音波発生デバイス100を使用した、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生装置200を示す等価回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる超音波発生デバイス300を示す断面図である。
【図7】実施例1にかかる超音波発生装置(200)の残響特性を示すグラフである。(残響特性を示すグラフはすべてFEMの結果である。)
【図8】実施例2にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図9】実施例3にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図10】実施例4にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図11】比較例にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
本欄においては、まず、本実施形態にかかる超音波発生デバイス100について説明する。続いて、超音波発生デバイス100を使用した、本実施形態にかかる超音波発生装置200について説明する。
【0023】
図1、図2に、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す。ただし、図1は斜視図、図2は図1の鎖線X−X部分を示す断面図である。また、図3に、超音波発生デバイス100に使用した超音波発生素子1を示す。ただし、図3は分解斜視図である。
【0024】
超音波発生デバイス100は、超音波発生素子1を備える。
【0025】
超音波発生素子1は、枠体2と、第1のバイモルフ型圧電振動子3と、第2のバイモルフ型圧電振動子4とを備える。本実施形態において、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数は、60kHzである。枠体2は、中央部に貫通孔2aが形成されている。そして、枠体2の下側の主面には、第1のバイモルフ型圧電振動子3が接着剤5aにより接合され、枠体2の上側の主面には、第2のバイモルフ型圧電振動子4が接着剤5bにより接合されている。すなわち、枠体2の貫通孔2aは、第1のバイモルフ型圧電振動子3と、第2のバイモルフ型圧電振動子4とで塞がれた構造となっている。超音波発生素子1は、たとえば、320μm程度の厚みからなる。
【0026】
枠体2は、たとえば、セラミックスからなり、厚みは200μm程度である。貫通孔2aの直径は、たとえば、2.4mm程度である。なお、貫通孔2aに代えて、枠体2の中央部分に溝を形成するようにしても良い。すなわち、枠体2は、閉じた環状の構造体には限られず、一部において開いた環状の構造体であっても良い。
【0027】
第1のバイモルフ型圧電振動子3は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などからなる矩形で平板状の圧電セラミックス3aを備える。そして、圧電セラミックス3aの内部には、内部電極3bが形成され、圧電セラミックス3aの両主面には、それぞれ、外部電極3c,3dが形成されている。内部電極3b、外部電極3c,3dは、たとえば、Ag,Pdからなる励振電極である。内部電極3bは、圧電セラミックス3aの隣合う2つの角部に引出されている。一方、外部電極3c,3dは、内部電極3bが引出されていない、圧電セラミックス3aの隣合う2つの角部にそれぞれ引出されている。第1のバイモルフ型圧電振動子3の厚みは、たとえば、60μm程度である。
【0028】
第2のバイモルフ型圧電振動子4も、第1のバイモルフ型圧電振動子3と同様に、たとえば、PZTなどからなる矩形で平板状の圧電セラミックス4aを備え、圧電セラミックス4aの内部には、内部電極4bが形成され、圧電セラミックス4aの両主面には、それぞれ、外部電極4c,4dが形成されている。内部電極4b、外部電極4c,4dも、たとえば、Ag,Pdからなる励振電極である。そして、内部電極4bは、圧電セラミックス4aの隣合う2つの角部に引出されている。外部電極4c,4dは、内部電極4bが引出されていない、圧電セラミックス4aの隣合う2つの角部にそれぞれ引出されている。第2のバイモルフ型圧電振動子4の厚みも、たとえば、60μm程度である。
【0029】
第1のバイモルフ型圧電振動子3の圧電セラミックス3a、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4の圧電セラミックス4aは、それぞれ、内部において分極されている。なお、圧電セラミックス3aにおいて、外部電極3cと内部電極3bとの間と、内部電極3bと外部電極3dとの間とは、分極方向が同じである。同様に、圧電セラミックス4aにおいて、外部電極4cと内部電極4bとの間と、内部電極4bと外部電極4dとの間とは、分極方向が同じである。
【0030】
一方、圧電セラミックス3aの外部電極3cと内部電極3bとの間、および内部電極3bと外部電極3dとの間と、圧電セラミックス4aの外部電極4cと内部電極4bとの間、および内部電極4bと外部電極4dとの間とは、分極方向が逆である。
【0031】
そして、超音波発生素子1の4つの角部には、それぞれ、引出電極6a,6b,6c,6dが形成されている。隣合う2つの引出電極6a,6bは、いずれも、それぞれ、圧電セラミックス3aの内部電極3b、および、圧電セラミックス4aの内部電極4bと電気的に接続されている。一方、残りの隣合う2つの引出電極6c,6dは、いずれも、それぞれ、圧電セラミックス3aの外部電極3c,3d、および、圧電セラミックス4aの外部電極4c,4dと電気的に接続されている。(引出電極6a,6dは図2に示されているが、引出電極6b,6cは図示を省略しており、いずれの図にも示されていない。)引出電極6a,6b,6c,6dは、たとえば、Agからなる。
【0032】
超音波発生デバイス100は、さらに、基板7と蓋部材8とからなる筺体を備える。
【0033】
基板7は、たとえば、ガラスエポキシからなり、矩形で、平板状である。基板7の上側の主面には、複数のランド電極(図示せず)が形成されている。そして、それらのランド電極に、超音波発生素子1の引出電極6a,6b,6c,6dを導電性接着剤9によりそれぞれ接合することにより、基板7に超音波発生素子1が搭載されている。基板7と超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3)とにより構成される隙間は、第1の音響経路S1を形成し、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波を圧縮し、超音波発生素子1の下側の主面に沿った方向に超音波が伝搬するのに寄与する。すなわち、基板7は、音響経路部材である。基板7と超音波発生素子1とにより構成される隙間(第1の音響経路S1)の長さは、30μm以上に設定され、特に、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波の音波位相をそろえ、音圧を高めるためには、100〜200μmに設定される。なお、超音波発生素子1は、4つの角部で、導電性接着剤9により基板7に接合されるため、超音波発生素子1から放出された超音波の伝搬を阻害しない。
【0034】
蓋部材8は、たとえば、洋白からなり、超音波発生素子1を収容するための開口8aが形成され、さらに天板部分に、矩形の超音波放出孔8bが形成されている。超音波放出孔8bの個数は任意であるが、本実施形態においては、4個の超音波放出孔8bが形成されている。蓋部材8は、開口8aに超音波発生素子1を収容したうえで、開口8aの周縁が、たとえば接着剤(図示せず)により、基板7の上側の主面に接合されている。蓋部材8と超音波発生素子1(第2のバイモルフ型圧電振動子4)とにより構成される隙間は、第1の音響経路S1を形成し、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波を圧縮し、超音波発生素子1の上側の主面に沿った方向に超音波が伝搬するのに寄与する。すなわち、蓋部材8は、音響経路部材である。蓋部材8と超音波発生素子1とにより構成される隙間(第1の音響経路S1)の長さは、30μm以上に設定され、特に、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波の音波位相をそろえ、音圧を高めるためには、100〜200μmに設定される。
【0035】
また、超音波発生デバイス100は、超音波発生素子1の外周面と、基板7と蓋部材8とからなる筺体の内周面とにより構成される隙間により、第2の音響経路S2が形成されている。なお、第2の音響経路S2の一部が、第1のバイモルフ型圧電振動子3の振動の腹の近傍、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4の振動の腹の近傍において、上述の第1の音響経路S1を構成する。第2の音響経路S2は、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出され、第1の音響経路S1を伝搬してきた超音波を、蓋部材8の超音波放出孔8bに向けて伝搬する。
【0036】
次に、超音波発生デバイス100の駆動状態(超音波発生素子1の駆動状態)について説明する。
【0037】
図4(A)、図4(B)は、超音波発生装置100の超音波発生素子1に、所定の周波数の駆動信号を印加した状態を示す。
【0038】
超音波発生素子1を構成する第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4は、上述したとおり内部電極3b,4bと外部電極3c,3d,4c,4dとが形成され、上述したとおり分極されているため、駆動信号が印加されることにより、同じ周波数で相互に逆位相で振動し、図4(A)および図4(B)に示す状態を繰り返す。すなわち、超音波発生素子1は、座屈音叉振動モードにより振動し、第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4から、それぞれ、超音波を放出する。
【0039】
そして、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波は、第1のバイモルフ型圧電振動子3と基板(音響経路部材)7とにより構成される隙間により形成される第1の音響経路S1の、第1のバイモルフ型圧電振動子3の振動の腹(最も大きく振動している部分)の近傍において、圧縮され、破線矢印で示すように、超音波発生素子1の下側の主面に沿った方向に伝搬される。第1の音響経路S1において圧縮された超音波は、位相がそろい、高い音圧となる。
【0040】
一方、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波は、第2のバイモルフ型圧電振動子4と蓋部材(音響経路部材)8とにより構成される隙間により形成される第1の音響経路S1の、第2のバイモルフ型圧電振動子4の振動の腹(最も大きく振動している部分)の近傍において、圧縮され、破線矢印で示すように、超音波発生素子1の上側の主面に沿った方向に伝搬される。第1の音響経路S1において圧縮された超音波は、位相がそろい、高い音圧となる。
【0041】
そして、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波は、それぞれ、図2に破線矢印で示すように、超音波発生素子1の外周面と、基板7と蓋部材8とからなる筺体の内周面とにより構成される隙間により形成される第2の音響経路S2を経由して、超音波放出孔8bに伝搬され、超音波放出口8bから外部に放出される。
【0042】
以上、本実施形態にかかる超音波発生デバイス100の構造、および駆動状態(超音波発生素子1の駆動状態)について説明したが、本実施形態においては、超音波発生デバイス100を使用して、さらに超音波発生装置200が構成される。
【0043】
図5に、本実施形態にかかる超音波発生装置200の等価回路図を示す。
【0044】
超音波発生装置200は、超音波発生デバイス100に加えて、駆動信号発生回路150を備える。
【0045】
駆動信号発生回路150は、従来から一般的に使用されている駆動信号発生回路であり、所定の駆動パルス数np、所定の駆動パルスの周波数fp、所定の駆動電圧からなる、駆動信号である矩形波(パルス波)を発生させる。
【0046】
駆動信号発生回路150は、超音波発生デバイス100に接続されている。より詳しくは、駆動信号発生回路150は、超音波発生デバイス100の超音波発生素子1の第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4に接続されており、発生させた駆動信号により、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4)を駆動するようになっている。
【0047】
超音波発生装置200は、駆動信号発生回路150と超音波発生デバイス100とを別体として構成し、両者間を信号線で接続したものとすることができる。あるいは、駆動信号発生回路150を形成した基板上に、超音波発生デバイス100を実装したうえで、両者間を接続するようにしても良い。
【0048】
駆動信号発生回路150は、超音波発生素子1の第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4の共振周波数frに対し、駆動パルス数np、駆動パルスの周波数fpが、
fp=fr/(1+1/np)
の関係を満たす駆動信号を発生させる。
【0049】
本実施形態においては、上述したとおり、超音波発生デバイス100の超音波発生素子1において、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数は60kHzであるため、fr=60kHzとなる。
【0050】
本実施形態においては、駆動信号発生回路150が発生させる駆動信号の駆動パルス数は1とした。すなわち、np=1とした。
【0051】
したがって、駆動信号の駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/1)=30kHzとなる。
【0052】
本実施形態の駆動信号発生回路150は、駆動パルス数np=1、駆動パルスの周波数fp=30kHz、駆動電圧1Vからなる、矩形波(パルス波)を発生させる。ただし、グラフはFEMの結果である。
【0053】
なお、駆動信号発生回路150で発生させる駆動信号の駆動パルス数npは、1ではなく、2、3、4、あるいは、それ以上であっても良い。
【0054】
ただし、駆動パルス数np=2とする場合には、本実施形態では超音波発生素子1における第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数fr=60kHzであるので、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/2)=40kHzとする。
【0055】
同様に、駆動パルス数np=3とする場合には、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/3)=45kHzとする。
【0056】
同様に、駆動パルス数np=4とする場合には、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/4)=48kHzとする。
【0057】
このような条件で超音波発生素子1に駆動信号が印加される超音波発生装置200(超音波発生デバイス100)は、残響特性に優れており、超音波発生素子1への駆動信号の印加が停止された後に、不要な超音波を放出することがほとんどない。したがって、超音波発生装置200を距離測定に使用した場合には、測定距離を誤算出することがない。
【0058】
以上の構成からなる超音波発生デバイス100および超音波発生装置200は、たとえば、次の方法で製造される。
【0059】
まず、第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4を作製する。具体的には、所定の形状からなる複数枚の圧電セラミックグリーンシートを準備し、それらの表面に、内部電極3b,4b、外部電極3c,3d,4c,4dを形成するための、導電性ペーストを所定の形状に印刷する。次に、所定の圧電セラミックグリーンシートどうしを積層し、加圧したうえ、所定のプロファイルで焼成して、内部電極3b、外部電極3c,3dの形成された第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、内部電極4b、外部電極4c,4dの形成された第2のバイモルフ型圧電振動子4を得る。なお、外部電極3c,3d,4c,4dは、積層した圧電セラミックグリーンシートを焼成した後に、印刷またはスパッタなどによって形成されてもよい。
【0060】
次に、予め所定の形状に作製された枠体2を準備し、枠体2の両主面に、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とを、接着剤5a,5bを用いてそれぞれ接合し、超音波発生素子1を得る。
【0061】
次に、超音波発生素子1の4つの角部に、たとえば、スパッタリングなどの技術を用いて、引出電極6a,6b,6c,6dを形成する。
【0062】
次に、予め所定の形状に作製された基板7と蓋部材8とを準備し、導電性接着剤9を用いて、基板7に超音波発生素子1を搭載したうえ、接着剤(図示せず)を用いて、基板7の上側の主面に蓋部材8を接合し、超音波発生デバイス100を完成させる。
【0063】
また、これとは別に、駆動信号発生回路150を作製する。具体的には、基板(図示せず)を準備し、この基板上に必要な配線パターン(図示せず)を形成し、さらに配線パターンに必要な電子部品(図示せず)を実装して、駆動信号発生回路150を完成させる。
【0064】
そして、駆動信号発生回路150と超音波発生デバイス100とを接続して、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生装置200を完成させる。
【0065】
以上、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100および超音波発生装置200の構造、駆動状態、製造方法の一例について説明した。しかしながら、本発明の超音波発生デバイスや超音波発生装置が上記の内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0066】
たとえば、上記実施形態においては、超音波発生素子1として、枠体2の下側の主面に第1のバイモルフ型圧電振動子3が接合され、枠体2の上側の主面に第2のバイモルフ型圧電振動子4が接合された、座屈音叉振動モードにより振動し、両主面から超音波を放出するものを用いたが、圧電振動子の構造は、これには限られない。また、超音波発生素子1を構成する第1および第2の振動子は、バイモルフ型圧電振動子3,4に代えて、たとえば、ユニモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子など、他の種類の振動子であっても良い。なお、超音波発生素子を構成する振動子がバイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子である場合、振動子の端面に形成した電極によって外部と接続することができるため、ボンディングワイヤを用いる必要がない。このため、ボンディングワイヤを接続するための空間が不要になり、小型化を実現することができるとともに、振動子と音響経路部材とにより構成される隙間が小さくなり、振動子から放出された超音波がより圧縮されて、音圧をより高めることができる。また、バイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子は、圧電セラミックスに印加される電界が強いため、ユニモルフ型圧電振動子と比べて駆動力が大きい。このため、超音波発生素子を構成する振動子がバイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子である場合、音圧をより高めることができる。
【0067】
[第2実施形態]
図6に、本発明の第2実施形態にかかる超音波発生デバイス300を示す。ただし、図6は断面図である。
【0068】
超音波発生デバイス300は、金属板11を備える。
【0069】
金属板11の裏面側には、接着剤12を介して、圧電振動子13が貼付されている。圧電振動子13は、板状の圧電セラミックスと、圧電セラミックスの表裏面に形成されている電極(図示せず)とを有する。金属板11の表面側には、円錐漏斗状の共振子(ホーン)14が取付けられている。金属板11と、圧電振動子13と、共振子14とは、超音波発生素子を構成している。
【0070】
そして、圧電振動子13の裏面側に、緩衝材15を配置したうえで、超音波発生素子全体が、ベース部材16、カバー17からなるケース内に収容されている。
【0071】
かかる構造からなる超音波発生デバイス300には、上述した第1実施形態と同様に、駆動信号発生回路(図示せず)が接続され、本実施形態にかかる超音波発生装置が構成される。駆動信号発生回路は、超音波発生デバイス300の圧電振動子13に対し、圧電振動子13の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、
fp=fr/(1+1/np)
の関係を満たす駆動信号を印加する。
【0072】
本実施形態にかかる超音波発生デバイス300および超音波発生装置は、第1実施形態と同様に、残響特性に優れている。しかも、残響特性の向上のために、位相を反転させるための回路などを別途付加する必要がなく、コストの上昇をまねいていない。
【0073】
このように、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置には、表裏面に電極が形成された圧電セラミックスを備える圧電振動子を使用することもできる。
【実験例】
【0074】
本発明の有効性を確認するために、次の実験をおこなった。
【0075】
実験は、本発明の範囲内にかかる実施例1〜3と、本発明の範囲外にかかる比較例とからなり、それぞれに超音波発生装置を準備しておこなった。
【0076】
実施例1においては、超音波発生装置として、上述した第1実施形態にかかる超音波発生装置200を使用した。超音波発生装置200は、図5に示すように、超音波発生デバイス100と駆動信号発生回路150とを接続した構成からなる。超音波発生デバイス100を構成する超音波発生素子1は、共振周波数fr=60kHzである第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とを備えている。駆動信号発生回路150は、駆動パルス数np=1、駆動パルスの周波数fp=30kHzからなる、矩形波(パルス波)の駆動信号を発生し、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4)に印加する。すなわち、超音波発生装置200は、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/1)=30kHzの条件を満たしている。
【0077】
実施例1にかかる超音波発生装置200の残響特性を図7に示す。ただし、残響特性は、FEMにより計算した。図7からわかるように、実施例1にかかる超音波発生装置200においては、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4)への駆動信号の印加が終了した後、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とはほとんど変位していない。したがって、超音波発生素子1から、不要な超音波はほとんど放出されていない。実施例1にかかる超音波発生装置200は、残響特性が極めて優れたものになっている。
【0078】
実施例2〜4および比較例においても、超音波発生装置の超音波発生デバイスには、実施例1の超音波発生デバイス100と同じものを使用した。したがって、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4との共振周波数fr=60kHzである。
【0079】
一方、実施例2〜4および比較例にかかる超音波発生装置の駆動信号発生回路には、それぞれ、実施例1の駆動信号発生回路150とは異なるものを使用した。
【0080】
具体的には、実施例2では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=2、駆動パルスの周波数fp=40kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例2にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/2)=40kHzの条件を満たしている。
【0081】
実施例3では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=3、駆動パルスの周波数fp=45kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例3にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/3)=45kHzの条件を満たしている。
【0082】
実施例4では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=4、駆動パルスの周波数fp=48kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例4にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/4)=48kHzの条件を満たしている。
【0083】
比較例では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=2、駆動パルスの周波数fp=60kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、比較例にかかる超音波発生装置は、fp=fr/(1+1/np)の条件を満たしていない。
【0084】
実施例2にかかる超音波発生装置の残響特性を図8に、実施例3にかかる超音波発生装置の残響特性を図9に、実施例4にかかる超音波発生装置の残響特性を図10に、比較例にかかる超音波発生装置の残響特性を図11に、それぞれ示す。
【0085】
上述した実施例1にかかる超音波発生装置200の残響特性を示す図7、および実施例2〜4と比較例にかかる各超音波発生装置の残響特性を示す図8〜11を比較してわかるように、残響特性は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4の順番に優れている。実施例4にかかる超音波発生装置であっても、駆動信号の印加が終了した後の圧電振動子の変位は十分に小さく、超音波発生素子から不要な超音波はほとんど放出されておらず、残響特性が優れたものになっている。これに対し、本発明の範囲外である比較例にかかる超音波発生装置は、駆動信号の印加が終了した後も圧電振動子が大きく変位しており、超音波発生素子から不要な超音波が放出され続けており、残響特性が悪い。
【0086】
以上より、本発明の超音波発生装置(超音波発生デバイス)が、残響特性の優れたものであることがわかった。
【0087】
また、本発明の超音波発生装置(超音波発生デバイス)において、圧電振動子の共振周波数frが同一であるならば、駆動パルス数npが少ないほど、残響特性が優れることもわかった。駆動パルス数npは、4以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0088】
1:超音波発生素子
2:枠体
2a:貫通孔
3:第1のバイモルフ型圧電振動子
3a:圧電セラミックス
3b:内部電極
3c,3d:外部電極
4:第2のバイモルフ型圧電振動子
4a:圧電セラミックス
4b:内部電極
4c,4d:外部電極
5a,5b:接着剤
6a,6b,6c,6d:引出電極
7:基板
8:蓋部材
8a:開口
8b:超音波放出孔
9:導電性接着剤
100,300:超音波発生デバイス
150:駆動信号発生回路
200:超音波発生装置
S1,S2:音響経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波発生デバイスに関し、さらに詳しくは、残響特性に優れた超音波発生デバイスに関する。
【0002】
また、本発明は、上記超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とを備えた超音波発生装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近時、正確な距離測定方法として、超音波を利用した距離測定方法が活用されている。超音波発生装置から超音波を放出し、被測定物に当て、被測定物から反射した超音波を超音波マイク装置で検出し、放出から検出までに要した時間から、被測定物までの距離を算出する方法である。
【0004】
超音波発生装置は、超音波を放出する超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とを備える。超音波発生デバイスは、圧電振動子などの振動子を振動させて超音波を放出する。超音波発生デバイスにおいては、駆動信号発生回路から駆動信号が印可されている間は振動子が振動して超音波を放出し、駆動信号が印加されなくなると直ちに振動子が振動を停止して不要な超音波を放出しないことが求められる。すなわち、超音波発生デバイスは、残響特性に優れたものであることが求められる。
【0005】
なぜならば、超音波発生デバイスが、距離を測定するための超音波を放出した後も不要な超音波を放出し続けると、その不要な超音波の被測定物からの反射波を、超音波マイク装置が距離を測定するための反射波として誤って検出してしまい、被測定物までの距離を誤算出してしまう恐れがあるからである。
【0006】
このような測定距離の誤算出を防止するためには、たとえば、特許文献1(特許第2587418号公報)に開示された超音波駆動装置の制御方法のように、駆動電圧(駆動信号)の印加が停止された駆動部(振動子)に、駆動電圧とは逆位相の電気信号を印加し、短時間で駆動部の振動を停止させる方法を採用することが考えられる。特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法は、より具体的には、圧電素子を有する超音波共振系に所定の駆動電圧を供給することにより、その超音波共振系を励振して駆動部を駆動する超音波駆動装置において、駆動部を停止する際には、駆動電圧の供給を停止し、その後の超音波共振系の残響を打ち消すように作用する電気信号を超音波共振系に印加して駆動部を停止するようにしている。なお、特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法は、具体的には、超音波モータを駆動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2587418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、特許文献1に開示された超音波駆動装置の制御方法を採用すれば、超音波駆動装置(超音波発生デバイス)の残響特性を改善することができ、距離の測定などにおいて誤算出を防止できるものと考えられる。
【0009】
しかしながら、この方法では、別途、位相を反転させるための回路が必要になり、回路が複雑となって、超音波発生装置のコストが上昇してしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものである。その手段として、本発明の超音波発生デバイスは、駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子を備え、圧電振動子に印加される駆動信号が、圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たすようにした。
【0011】
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
なお、上記式は、fp=fr/(1+1/np)であることが好ましい。この場合には、残響特性が最良となり、圧電振動子を停止させた後の不要な超音波の放出がほとんどなくなり、距離測定などにおいて誤算出がなくなるからである。
【0012】
また、駆動信号は、矩形波であることが好ましい。この場合には、駆動信号の作成が容易となるからである。
【0013】
また、駆動パルス数npは、4以下であることが好ましい。
この場合には、残響を抑える効果が十分に大きいからである。
【0014】
また、上述した超音波発生デバイスと、その超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路とで、超音波発生装置を構成することができる。この場合には、残響特性に優れた超音波発生装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の超音波発生デバイスおよび超音波発生装置は、上述した構成としたため、残響特性に優れている。したがって、距離測定などに使用した場合に、測定距離を誤算出してしまうことがない。しかも、残響特性の向上のために、特別な回路を別途付加する必要もなく、コストの上昇をまねくこともない。
【0016】
なお、本発明の超音波発生デバイスおよび超音波発生装置において、圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、圧電振動子に印加される駆動信号を、
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)とし、より望ましくは、
fp=fr/(1+1/np)
としているが、その理由は次のとおりである。
【0017】
すなわち、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、2種類の周波数の干渉によるうなりの効果を利用して、残響を小さくしている。駆動信号の印加により振動を始めた振動子は、その振動子の共振周波数で振動し続けようとする。一方、駆動信号の周波数を、振動子の共振周波数からずらすと、共振周波数で振動し続けようとする振動子と、強制的に駆動信号の周波数で振動させようとする2つの力が働き、2つの周波数によるうなりが発生する。このうなりによる振動子の変位が、ちょうど零になるタイミングで駆動信号の印加を零、もしくは開放すると、残響が小さい振動特性を得ることができる。
【0018】
そこで、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、望ましくは、
fp=fr/(1+1/np)
を満たすようにした。この式を満たす場合には、上記うなりによる振動子の変位が、ちょうど零になるタイミングで駆動信号の印加を零、もしくは開放することになり、残響が小さい振動特性を得ることができる。
【0019】
ただし、駆動信号の印加を零、もしくは開放するタイミングは、わずかにずれていても、残響を実用上問題がないほどに小さくできる。そこで、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置は、±2%の幅をもたせて、
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)の式を満たすようにしたのである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す断面図であり、図1の鎖線X−X部分を示す。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100に用いられた超音波発生素子1を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100の駆動状態を示す説明図である。
【図5】超音波発生デバイス100を使用した、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生装置200を示す等価回路図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる超音波発生デバイス300を示す断面図である。
【図7】実施例1にかかる超音波発生装置(200)の残響特性を示すグラフである。(残響特性を示すグラフはすべてFEMの結果である。)
【図8】実施例2にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図9】実施例3にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図10】実施例4にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【図11】比較例にかかる超音波発生装置の残響特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
本欄においては、まず、本実施形態にかかる超音波発生デバイス100について説明する。続いて、超音波発生デバイス100を使用した、本実施形態にかかる超音波発生装置200について説明する。
【0023】
図1、図2に、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100を示す。ただし、図1は斜視図、図2は図1の鎖線X−X部分を示す断面図である。また、図3に、超音波発生デバイス100に使用した超音波発生素子1を示す。ただし、図3は分解斜視図である。
【0024】
超音波発生デバイス100は、超音波発生素子1を備える。
【0025】
超音波発生素子1は、枠体2と、第1のバイモルフ型圧電振動子3と、第2のバイモルフ型圧電振動子4とを備える。本実施形態において、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数は、60kHzである。枠体2は、中央部に貫通孔2aが形成されている。そして、枠体2の下側の主面には、第1のバイモルフ型圧電振動子3が接着剤5aにより接合され、枠体2の上側の主面には、第2のバイモルフ型圧電振動子4が接着剤5bにより接合されている。すなわち、枠体2の貫通孔2aは、第1のバイモルフ型圧電振動子3と、第2のバイモルフ型圧電振動子4とで塞がれた構造となっている。超音波発生素子1は、たとえば、320μm程度の厚みからなる。
【0026】
枠体2は、たとえば、セラミックスからなり、厚みは200μm程度である。貫通孔2aの直径は、たとえば、2.4mm程度である。なお、貫通孔2aに代えて、枠体2の中央部分に溝を形成するようにしても良い。すなわち、枠体2は、閉じた環状の構造体には限られず、一部において開いた環状の構造体であっても良い。
【0027】
第1のバイモルフ型圧電振動子3は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などからなる矩形で平板状の圧電セラミックス3aを備える。そして、圧電セラミックス3aの内部には、内部電極3bが形成され、圧電セラミックス3aの両主面には、それぞれ、外部電極3c,3dが形成されている。内部電極3b、外部電極3c,3dは、たとえば、Ag,Pdからなる励振電極である。内部電極3bは、圧電セラミックス3aの隣合う2つの角部に引出されている。一方、外部電極3c,3dは、内部電極3bが引出されていない、圧電セラミックス3aの隣合う2つの角部にそれぞれ引出されている。第1のバイモルフ型圧電振動子3の厚みは、たとえば、60μm程度である。
【0028】
第2のバイモルフ型圧電振動子4も、第1のバイモルフ型圧電振動子3と同様に、たとえば、PZTなどからなる矩形で平板状の圧電セラミックス4aを備え、圧電セラミックス4aの内部には、内部電極4bが形成され、圧電セラミックス4aの両主面には、それぞれ、外部電極4c,4dが形成されている。内部電極4b、外部電極4c,4dも、たとえば、Ag,Pdからなる励振電極である。そして、内部電極4bは、圧電セラミックス4aの隣合う2つの角部に引出されている。外部電極4c,4dは、内部電極4bが引出されていない、圧電セラミックス4aの隣合う2つの角部にそれぞれ引出されている。第2のバイモルフ型圧電振動子4の厚みも、たとえば、60μm程度である。
【0029】
第1のバイモルフ型圧電振動子3の圧電セラミックス3a、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4の圧電セラミックス4aは、それぞれ、内部において分極されている。なお、圧電セラミックス3aにおいて、外部電極3cと内部電極3bとの間と、内部電極3bと外部電極3dとの間とは、分極方向が同じである。同様に、圧電セラミックス4aにおいて、外部電極4cと内部電極4bとの間と、内部電極4bと外部電極4dとの間とは、分極方向が同じである。
【0030】
一方、圧電セラミックス3aの外部電極3cと内部電極3bとの間、および内部電極3bと外部電極3dとの間と、圧電セラミックス4aの外部電極4cと内部電極4bとの間、および内部電極4bと外部電極4dとの間とは、分極方向が逆である。
【0031】
そして、超音波発生素子1の4つの角部には、それぞれ、引出電極6a,6b,6c,6dが形成されている。隣合う2つの引出電極6a,6bは、いずれも、それぞれ、圧電セラミックス3aの内部電極3b、および、圧電セラミックス4aの内部電極4bと電気的に接続されている。一方、残りの隣合う2つの引出電極6c,6dは、いずれも、それぞれ、圧電セラミックス3aの外部電極3c,3d、および、圧電セラミックス4aの外部電極4c,4dと電気的に接続されている。(引出電極6a,6dは図2に示されているが、引出電極6b,6cは図示を省略しており、いずれの図にも示されていない。)引出電極6a,6b,6c,6dは、たとえば、Agからなる。
【0032】
超音波発生デバイス100は、さらに、基板7と蓋部材8とからなる筺体を備える。
【0033】
基板7は、たとえば、ガラスエポキシからなり、矩形で、平板状である。基板7の上側の主面には、複数のランド電極(図示せず)が形成されている。そして、それらのランド電極に、超音波発生素子1の引出電極6a,6b,6c,6dを導電性接着剤9によりそれぞれ接合することにより、基板7に超音波発生素子1が搭載されている。基板7と超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3)とにより構成される隙間は、第1の音響経路S1を形成し、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波を圧縮し、超音波発生素子1の下側の主面に沿った方向に超音波が伝搬するのに寄与する。すなわち、基板7は、音響経路部材である。基板7と超音波発生素子1とにより構成される隙間(第1の音響経路S1)の長さは、30μm以上に設定され、特に、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波の音波位相をそろえ、音圧を高めるためには、100〜200μmに設定される。なお、超音波発生素子1は、4つの角部で、導電性接着剤9により基板7に接合されるため、超音波発生素子1から放出された超音波の伝搬を阻害しない。
【0034】
蓋部材8は、たとえば、洋白からなり、超音波発生素子1を収容するための開口8aが形成され、さらに天板部分に、矩形の超音波放出孔8bが形成されている。超音波放出孔8bの個数は任意であるが、本実施形態においては、4個の超音波放出孔8bが形成されている。蓋部材8は、開口8aに超音波発生素子1を収容したうえで、開口8aの周縁が、たとえば接着剤(図示せず)により、基板7の上側の主面に接合されている。蓋部材8と超音波発生素子1(第2のバイモルフ型圧電振動子4)とにより構成される隙間は、第1の音響経路S1を形成し、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波を圧縮し、超音波発生素子1の上側の主面に沿った方向に超音波が伝搬するのに寄与する。すなわち、蓋部材8は、音響経路部材である。蓋部材8と超音波発生素子1とにより構成される隙間(第1の音響経路S1)の長さは、30μm以上に設定され、特に、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波の音波位相をそろえ、音圧を高めるためには、100〜200μmに設定される。
【0035】
また、超音波発生デバイス100は、超音波発生素子1の外周面と、基板7と蓋部材8とからなる筺体の内周面とにより構成される隙間により、第2の音響経路S2が形成されている。なお、第2の音響経路S2の一部が、第1のバイモルフ型圧電振動子3の振動の腹の近傍、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4の振動の腹の近傍において、上述の第1の音響経路S1を構成する。第2の音響経路S2は、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出され、第1の音響経路S1を伝搬してきた超音波を、蓋部材8の超音波放出孔8bに向けて伝搬する。
【0036】
次に、超音波発生デバイス100の駆動状態(超音波発生素子1の駆動状態)について説明する。
【0037】
図4(A)、図4(B)は、超音波発生装置100の超音波発生素子1に、所定の周波数の駆動信号を印加した状態を示す。
【0038】
超音波発生素子1を構成する第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4は、上述したとおり内部電極3b,4bと外部電極3c,3d,4c,4dとが形成され、上述したとおり分極されているため、駆動信号が印加されることにより、同じ周波数で相互に逆位相で振動し、図4(A)および図4(B)に示す状態を繰り返す。すなわち、超音波発生素子1は、座屈音叉振動モードにより振動し、第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4から、それぞれ、超音波を放出する。
【0039】
そして、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波は、第1のバイモルフ型圧電振動子3と基板(音響経路部材)7とにより構成される隙間により形成される第1の音響経路S1の、第1のバイモルフ型圧電振動子3の振動の腹(最も大きく振動している部分)の近傍において、圧縮され、破線矢印で示すように、超音波発生素子1の下側の主面に沿った方向に伝搬される。第1の音響経路S1において圧縮された超音波は、位相がそろい、高い音圧となる。
【0040】
一方、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波は、第2のバイモルフ型圧電振動子4と蓋部材(音響経路部材)8とにより構成される隙間により形成される第1の音響経路S1の、第2のバイモルフ型圧電振動子4の振動の腹(最も大きく振動している部分)の近傍において、圧縮され、破線矢印で示すように、超音波発生素子1の上側の主面に沿った方向に伝搬される。第1の音響経路S1において圧縮された超音波は、位相がそろい、高い音圧となる。
【0041】
そして、第1のバイモルフ型圧電振動子3から放出された超音波、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4から放出された超音波は、それぞれ、図2に破線矢印で示すように、超音波発生素子1の外周面と、基板7と蓋部材8とからなる筺体の内周面とにより構成される隙間により形成される第2の音響経路S2を経由して、超音波放出孔8bに伝搬され、超音波放出口8bから外部に放出される。
【0042】
以上、本実施形態にかかる超音波発生デバイス100の構造、および駆動状態(超音波発生素子1の駆動状態)について説明したが、本実施形態においては、超音波発生デバイス100を使用して、さらに超音波発生装置200が構成される。
【0043】
図5に、本実施形態にかかる超音波発生装置200の等価回路図を示す。
【0044】
超音波発生装置200は、超音波発生デバイス100に加えて、駆動信号発生回路150を備える。
【0045】
駆動信号発生回路150は、従来から一般的に使用されている駆動信号発生回路であり、所定の駆動パルス数np、所定の駆動パルスの周波数fp、所定の駆動電圧からなる、駆動信号である矩形波(パルス波)を発生させる。
【0046】
駆動信号発生回路150は、超音波発生デバイス100に接続されている。より詳しくは、駆動信号発生回路150は、超音波発生デバイス100の超音波発生素子1の第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4に接続されており、発生させた駆動信号により、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4)を駆動するようになっている。
【0047】
超音波発生装置200は、駆動信号発生回路150と超音波発生デバイス100とを別体として構成し、両者間を信号線で接続したものとすることができる。あるいは、駆動信号発生回路150を形成した基板上に、超音波発生デバイス100を実装したうえで、両者間を接続するようにしても良い。
【0048】
駆動信号発生回路150は、超音波発生素子1の第1のバイモルフ型圧電振動子3および第2のバイモルフ型圧電振動子4の共振周波数frに対し、駆動パルス数np、駆動パルスの周波数fpが、
fp=fr/(1+1/np)
の関係を満たす駆動信号を発生させる。
【0049】
本実施形態においては、上述したとおり、超音波発生デバイス100の超音波発生素子1において、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数は60kHzであるため、fr=60kHzとなる。
【0050】
本実施形態においては、駆動信号発生回路150が発生させる駆動信号の駆動パルス数は1とした。すなわち、np=1とした。
【0051】
したがって、駆動信号の駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/1)=30kHzとなる。
【0052】
本実施形態の駆動信号発生回路150は、駆動パルス数np=1、駆動パルスの周波数fp=30kHz、駆動電圧1Vからなる、矩形波(パルス波)を発生させる。ただし、グラフはFEMの結果である。
【0053】
なお、駆動信号発生回路150で発生させる駆動信号の駆動パルス数npは、1ではなく、2、3、4、あるいは、それ以上であっても良い。
【0054】
ただし、駆動パルス数np=2とする場合には、本実施形態では超音波発生素子1における第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とのそれぞれの共振周波数fr=60kHzであるので、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/2)=40kHzとする。
【0055】
同様に、駆動パルス数np=3とする場合には、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/3)=45kHzとする。
【0056】
同様に、駆動パルス数np=4とする場合には、駆動パルスの周波数fpは、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/4)=48kHzとする。
【0057】
このような条件で超音波発生素子1に駆動信号が印加される超音波発生装置200(超音波発生デバイス100)は、残響特性に優れており、超音波発生素子1への駆動信号の印加が停止された後に、不要な超音波を放出することがほとんどない。したがって、超音波発生装置200を距離測定に使用した場合には、測定距離を誤算出することがない。
【0058】
以上の構成からなる超音波発生デバイス100および超音波発生装置200は、たとえば、次の方法で製造される。
【0059】
まず、第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、第2のバイモルフ型圧電振動子4を作製する。具体的には、所定の形状からなる複数枚の圧電セラミックグリーンシートを準備し、それらの表面に、内部電極3b,4b、外部電極3c,3d,4c,4dを形成するための、導電性ペーストを所定の形状に印刷する。次に、所定の圧電セラミックグリーンシートどうしを積層し、加圧したうえ、所定のプロファイルで焼成して、内部電極3b、外部電極3c,3dの形成された第1のバイモルフ型圧電振動子3、および、内部電極4b、外部電極4c,4dの形成された第2のバイモルフ型圧電振動子4を得る。なお、外部電極3c,3d,4c,4dは、積層した圧電セラミックグリーンシートを焼成した後に、印刷またはスパッタなどによって形成されてもよい。
【0060】
次に、予め所定の形状に作製された枠体2を準備し、枠体2の両主面に、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とを、接着剤5a,5bを用いてそれぞれ接合し、超音波発生素子1を得る。
【0061】
次に、超音波発生素子1の4つの角部に、たとえば、スパッタリングなどの技術を用いて、引出電極6a,6b,6c,6dを形成する。
【0062】
次に、予め所定の形状に作製された基板7と蓋部材8とを準備し、導電性接着剤9を用いて、基板7に超音波発生素子1を搭載したうえ、接着剤(図示せず)を用いて、基板7の上側の主面に蓋部材8を接合し、超音波発生デバイス100を完成させる。
【0063】
また、これとは別に、駆動信号発生回路150を作製する。具体的には、基板(図示せず)を準備し、この基板上に必要な配線パターン(図示せず)を形成し、さらに配線パターンに必要な電子部品(図示せず)を実装して、駆動信号発生回路150を完成させる。
【0064】
そして、駆動信号発生回路150と超音波発生デバイス100とを接続して、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生装置200を完成させる。
【0065】
以上、本発明の第1実施形態にかかる超音波発生デバイス100および超音波発生装置200の構造、駆動状態、製造方法の一例について説明した。しかしながら、本発明の超音波発生デバイスや超音波発生装置が上記の内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0066】
たとえば、上記実施形態においては、超音波発生素子1として、枠体2の下側の主面に第1のバイモルフ型圧電振動子3が接合され、枠体2の上側の主面に第2のバイモルフ型圧電振動子4が接合された、座屈音叉振動モードにより振動し、両主面から超音波を放出するものを用いたが、圧電振動子の構造は、これには限られない。また、超音波発生素子1を構成する第1および第2の振動子は、バイモルフ型圧電振動子3,4に代えて、たとえば、ユニモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子など、他の種類の振動子であっても良い。なお、超音波発生素子を構成する振動子がバイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子である場合、振動子の端面に形成した電極によって外部と接続することができるため、ボンディングワイヤを用いる必要がない。このため、ボンディングワイヤを接続するための空間が不要になり、小型化を実現することができるとともに、振動子と音響経路部材とにより構成される隙間が小さくなり、振動子から放出された超音波がより圧縮されて、音圧をより高めることができる。また、バイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子は、圧電セラミックスに印加される電界が強いため、ユニモルフ型圧電振動子と比べて駆動力が大きい。このため、超音波発生素子を構成する振動子がバイモルフ型圧電振動子やマルチモルフ型圧電振動子である場合、音圧をより高めることができる。
【0067】
[第2実施形態]
図6に、本発明の第2実施形態にかかる超音波発生デバイス300を示す。ただし、図6は断面図である。
【0068】
超音波発生デバイス300は、金属板11を備える。
【0069】
金属板11の裏面側には、接着剤12を介して、圧電振動子13が貼付されている。圧電振動子13は、板状の圧電セラミックスと、圧電セラミックスの表裏面に形成されている電極(図示せず)とを有する。金属板11の表面側には、円錐漏斗状の共振子(ホーン)14が取付けられている。金属板11と、圧電振動子13と、共振子14とは、超音波発生素子を構成している。
【0070】
そして、圧電振動子13の裏面側に、緩衝材15を配置したうえで、超音波発生素子全体が、ベース部材16、カバー17からなるケース内に収容されている。
【0071】
かかる構造からなる超音波発生デバイス300には、上述した第1実施形態と同様に、駆動信号発生回路(図示せず)が接続され、本実施形態にかかる超音波発生装置が構成される。駆動信号発生回路は、超音波発生デバイス300の圧電振動子13に対し、圧電振動子13の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、
fp=fr/(1+1/np)
の関係を満たす駆動信号を印加する。
【0072】
本実施形態にかかる超音波発生デバイス300および超音波発生装置は、第1実施形態と同様に、残響特性に優れている。しかも、残響特性の向上のために、位相を反転させるための回路などを別途付加する必要がなく、コストの上昇をまねいていない。
【0073】
このように、本発明の超音波発生デバイス、超音波発生装置には、表裏面に電極が形成された圧電セラミックスを備える圧電振動子を使用することもできる。
【実験例】
【0074】
本発明の有効性を確認するために、次の実験をおこなった。
【0075】
実験は、本発明の範囲内にかかる実施例1〜3と、本発明の範囲外にかかる比較例とからなり、それぞれに超音波発生装置を準備しておこなった。
【0076】
実施例1においては、超音波発生装置として、上述した第1実施形態にかかる超音波発生装置200を使用した。超音波発生装置200は、図5に示すように、超音波発生デバイス100と駆動信号発生回路150とを接続した構成からなる。超音波発生デバイス100を構成する超音波発生素子1は、共振周波数fr=60kHzである第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とを備えている。駆動信号発生回路150は、駆動パルス数np=1、駆動パルスの周波数fp=30kHzからなる、矩形波(パルス波)の駆動信号を発生し、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4)に印加する。すなわち、超音波発生装置200は、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/1)=30kHzの条件を満たしている。
【0077】
実施例1にかかる超音波発生装置200の残響特性を図7に示す。ただし、残響特性は、FEMにより計算した。図7からわかるように、実施例1にかかる超音波発生装置200においては、超音波発生素子1(第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4)への駆動信号の印加が終了した後、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4とはほとんど変位していない。したがって、超音波発生素子1から、不要な超音波はほとんど放出されていない。実施例1にかかる超音波発生装置200は、残響特性が極めて優れたものになっている。
【0078】
実施例2〜4および比較例においても、超音波発生装置の超音波発生デバイスには、実施例1の超音波発生デバイス100と同じものを使用した。したがって、第1のバイモルフ型圧電振動子3と第2のバイモルフ型圧電振動子4との共振周波数fr=60kHzである。
【0079】
一方、実施例2〜4および比較例にかかる超音波発生装置の駆動信号発生回路には、それぞれ、実施例1の駆動信号発生回路150とは異なるものを使用した。
【0080】
具体的には、実施例2では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=2、駆動パルスの周波数fp=40kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例2にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/2)=40kHzの条件を満たしている。
【0081】
実施例3では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=3、駆動パルスの周波数fp=45kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例3にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/3)=45kHzの条件を満たしている。
【0082】
実施例4では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=4、駆動パルスの周波数fp=48kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、実施例4にかかる超音波発生装置も、fp=fr/(1+1/np)=60/(1+1/4)=48kHzの条件を満たしている。
【0083】
比較例では、駆動信号発生回路に、駆動パルス数np=2、駆動パルスの周波数fp=60kHzからなる、矩形波の駆動信号を発生させるものを使用した。したがって、比較例にかかる超音波発生装置は、fp=fr/(1+1/np)の条件を満たしていない。
【0084】
実施例2にかかる超音波発生装置の残響特性を図8に、実施例3にかかる超音波発生装置の残響特性を図9に、実施例4にかかる超音波発生装置の残響特性を図10に、比較例にかかる超音波発生装置の残響特性を図11に、それぞれ示す。
【0085】
上述した実施例1にかかる超音波発生装置200の残響特性を示す図7、および実施例2〜4と比較例にかかる各超音波発生装置の残響特性を示す図8〜11を比較してわかるように、残響特性は、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4の順番に優れている。実施例4にかかる超音波発生装置であっても、駆動信号の印加が終了した後の圧電振動子の変位は十分に小さく、超音波発生素子から不要な超音波はほとんど放出されておらず、残響特性が優れたものになっている。これに対し、本発明の範囲外である比較例にかかる超音波発生装置は、駆動信号の印加が終了した後も圧電振動子が大きく変位しており、超音波発生素子から不要な超音波が放出され続けており、残響特性が悪い。
【0086】
以上より、本発明の超音波発生装置(超音波発生デバイス)が、残響特性の優れたものであることがわかった。
【0087】
また、本発明の超音波発生装置(超音波発生デバイス)において、圧電振動子の共振周波数frが同一であるならば、駆動パルス数npが少ないほど、残響特性が優れることもわかった。駆動パルス数npは、4以下であることが好ましい。
【符号の説明】
【0088】
1:超音波発生素子
2:枠体
2a:貫通孔
3:第1のバイモルフ型圧電振動子
3a:圧電セラミックス
3b:内部電極
3c,3d:外部電極
4:第2のバイモルフ型圧電振動子
4a:圧電セラミックス
4b:内部電極
4c,4d:外部電極
5a,5b:接着剤
6a,6b,6c,6d:引出電極
7:基板
8:蓋部材
8a:開口
8b:超音波放出孔
9:導電性接着剤
100,300:超音波発生デバイス
150:駆動信号発生回路
200:超音波発生装置
S1,S2:音響経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子を備えた超音波発生デバイスであって、
前記圧電振動子に印加される駆動信号が、前記圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たす超音波発生デバイス。
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
【請求項2】
前記式がfp=fr/(1+1/np)である、請求項1に記載された超音波発生デバイス。
【請求項3】
前記駆動信号が矩形波である、請求項1または2に記載された超音波発生デバイス。
【請求項4】
前記駆動パルス数npが4以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された超音波発生デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された超音波発生デバイスと、前記超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路と、を備えた超音波発生装置。
【請求項1】
駆動信号が印加されることにより、振動して超音波を発生させる圧電振動子を備えた超音波発生デバイスであって、
前記圧電振動子に印加される駆動信号が、前記圧電振動子の共振周波数をfr、駆動パルス数をnp、駆動パルスの周波数をfpで表したとき、次の式を満たす超音波発生デバイス。
0.98・fr/(1+1/np)≦fp≦1.02・fr/(1+1/np)
【請求項2】
前記式がfp=fr/(1+1/np)である、請求項1に記載された超音波発生デバイス。
【請求項3】
前記駆動信号が矩形波である、請求項1または2に記載された超音波発生デバイス。
【請求項4】
前記駆動パルス数npが4以下である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された超音波発生デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された超音波発生デバイスと、前記超音波発生デバイスに駆動信号を印加する駆動信号発生回路と、を備えた超音波発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−88234(P2013−88234A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227856(P2011−227856)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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