説明

超音波薬液反応装置

【課題】 ガラス・シリコン薄膜・フイルム等の大面積基板の薬液反応において、薬液との接液を面状態とし、さらに節液状態で行える超音波薬液反応装置を提供することにある。
【解決手段】 薬液供給口21,32より薬液60を上下薬液槽20,30に送り、上部薬液槽20の液吸引パイプ23からの流量バランスで、基板出入り口になる上下槽間の空隙部12に薬液60を保持する。薬液60には下部槽30より超音波定在波13が付加され、振動波の最大振幅位置と一致させた空隙レベルに基板50をローラー40で搬送し、キャビテーション効果で基板表裏の薬液反応を促進化させる。液吸引パイプ23の位置を振動波の最小振幅位置と一致させ液面レベルを反射面として機能させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波薬液反応装置に係わり、薬液中の被反応物である基板の両面で、超音波のキャビテーション効果が最大となり、さらに理論値に近い超節液状態で薬液反応が行われる超音波薬液反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、LCD・半導体基板の製造工程では基板表面の有機物残渣の除去を目指して、エキシマUV・APプラズマなどのドライ洗浄やSC−1・SC−2などの薬液洗浄、さらに高圧水シャワーやブラッシング洗浄などが組み合わされている。
【0003】
これらの技術では、単体ユニットの高コスト化、薬液大量使用での排液処理問題、ブラシでの擦過傷や剥離物の再付着などの品質課題や液晶用大型ガラス基板・広幅フィルムなどでの装置ライン長の短縮化などの設備的課題などがある。
【0004】
従来技術の応用として、特許文献1にライン状の超音波シャワーがあるが、これで薬液処理をした場合、基板上では搬送方向と直角の基板幅方向に線状の軌跡が模様となるため、品質低下の改善及び薬液使用量の低減化に課題がある。また、液は線状に接液するため高速搬送では反応時間が短い状況であり、面状態で処理できる装置が期待されている。
【0005】
特許文献2によるウェット処理方式は、広幅の対向ノズルからの薬液供給と吸引のバランスで上・下液槽間の隙間部に液膜を保持して薬液処理する面処理方式であるが、バランスに高度な制御技術が必要である事、広幅ノズルの製作寸法に限界値があり高価格である事などの理由により、コスト競争の激しい製造現場での採用は困難となっている。また基板搬送時に、基板の後部端面が通過する時に内部減圧により空気が吸い込まれ、上部超音波振動子の底面に泡となって長期間滞在し、超音波機能の障害や振動子の故障原因となる。
【0006】
特許文献3には、超音波洗浄でウェット方式の面処理方式があるが、この技術は薬液オーバーフロータイプで液の使用量は従来よりも少ないが、液流速による超音波の乱れがあるため、大型基板で使用するには面全体での反応ムラの改善が必要である。
【先行技術文献】
【0007】
【特許文献1】特許公開平10−209104
【0008】
【特許文献2】特許公開2003−200120
【0009】
【特許文献3】特許公開2009−61359
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は大型ガラス基板や広幅フィルムに対し、処理薬液の使用量を大幅に低減し、且つ超音波による薬液反応効果が向上し、基板全面で均一な反応効果を発揮する省スペース・低コストな超音波薬液反応装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波薬液反応装置は、超音波ラインケースと、薬液を蓄える上・下薬液槽と、薬液を供給する上・下薬液供給ノズルと、上・下薬液槽間に基板を搬送する隙間部と、基板を搬送する搬送ローラーと、薬液吸引パイプを設置し、超音波ラインケースは、搬送ローラー面より下部に設置し、薬液吸引口は搬送ローラー面より上部に設置することを特徴とする。
【0012】
本発明の上下部薬液供給ノズルは、薬液供給弁から液が供給された場合、上部の空気層で自動的に圧力を生じ、基板搬送方向と直角方向の基板幅方向に液が均等に供給されることを特徴とする。
【0013】
本発明の上・下薬液槽間の隙間部は、上・下薬液供給ノズルからの液供給量と上部液吸引パイプからの吸引流量の粗制御のみで、薬液を自動的に保持できることを特徴とする。
【0014】
本発明の搬送ローラー面は、超音波ラインケースより超音波波長の1/4に設置することを特徴とする
【0015】
本発明の排液パイプの設置は、超音波ラインケースより超音波波長の1/4の奇数倍の位置とし、薬液面レベルを超音波反射面に利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、大型ガラス基板・広幅フィルム等の大面積高速搬送薬液処理において、空気混入や液流速による超音波機能の障害が無いため、面状態接液で超音波による安定反応が促進され、しかも省スペースである事を特徴とする超音波薬液反応装置を低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による超音波薬液反応装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明による超音波薬液反応装置を示す装置構成図である。図1において、超音波薬液反応装置100は、超音波振動子10を直線状に並べた超音波ラインケース11と、被反応物である基板50を搬送する搬送ローラー40と、薬液60を供給する薬液供給ノズル21,31と上部薬液吸引パイプ23と薬液60を蓄える薬液槽20,30から主に構成される。
【0019】
上・下部薬液供給ノズル21,31は、薬液供給弁22,32から1本のパイプで液が供給された場合でも、ノズル上部の空気層25,35によって自動的に圧力が生じるため、基板搬送方向と直角方向の基板幅方向に液が均等に供給され、基板全面に均一な反応ができる。
【0020】
上・下薬液槽間の隙間部12は、最初に液吸引弁24による上部液吸引パイプ23からの吸引作用で上部液槽20の空気層26が減圧され、上・下薬液供給ノズル21,31からの液は上部液吸引パイプ23に到達した時点で吸引されるため、供給流量と吸引流量の粗制御のみで、薬液を自動的に保持できる。
【0021】
搬送ローラー面は、超音波ラインケース11の上面より超音波波長の1/4に設置されるため、定在波13の最大振幅点が被反応物である基板50の両面の位置になり、最大の超音波反応効果を得ることになる。
【0022】
排液パイプ23の設置は、超音波ラインケース11の上面より超音波波長の1/4の奇数倍の位置とし、薬液面レベルを超音波反射面として再び定在波13を形成する。
【0023】
薬液が上部液吸引パイプに到達すると、被反応物の基板50は搬送ローラー40によって搬送される。搬送空間である上・下槽間の隙間部12の寸法は4〜5mmであり、基板の反り寸法が大きくても非接触で通過できる。また、隙間がこの寸法内であれば隙間部での高温・低表面張力の薬液保持が可能である。
【0024】
薬液は、薬液供給量と薬液排液量をバランスさせて上・下槽間の隙間部12に保持されるため、薬液の循環系にフィルターなどを設置した完全クローズ化が可能であり、外部への薬液漏洩は基板50の前部端面の通過時のみであり、数式1に相当する漏洩量の最少化が可能である。
【0025】
[数式1] Q=L×B×t
ここで、Q:液漏れ量(cc)
L:接液部長さ(cm)
B:基板の幅(cm)
t:基板の厚さ(cm)
【0026】
基板50の後部端面通過時に液中の基板体積の減少に伴い、液中均衡圧力が低下するため式1に相当する空気量が吸い込まれるが、空気泡群は上部薬液槽20に設置されている排液パイプ23で吸引されるため超音波機能の障害や振動子の故障原因とはならない。
【0027】
以上説明したように本発明によると、大型ガラス基板や広幅フィルムの高温薬液反応において、薬液使用量を最小限に抑え、しかも超音波による反応効果が最大限に発揮できる省スペース型の超音波薬液反応装置の提供が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10 超音波振動子
11 超音波ラインケース
12 上下槽間の隙間部
13 定在波
20 上部薬液槽
21 上部薬液供給ノズル
22 上部薬液供給弁
23 液吸引パイプ
24 液吸引弁
25 上部ノズル空気層
26 上部薬液槽の空気層
30 下部薬液槽
31 下部薬液供給ノズル
32 下部薬液供給弁
35 下部ノズル空気層
40 ローラー
50 基板
60 薬液
100 超音波薬液反応装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波薬液反応のための超音波ラインケースと、薬液を保持する上・下薬液槽と、薬液を供給する上・下薬液供給ノズルと、上・下薬液槽間に基板を搬送する隙間部と、基板を搬送する搬送ローラーと、薬液吸引パイプを設置し、
超音波ラインケースは、搬送ローラー面より下部に設置し、薬液吸引口は搬送ローラー面より上部に設置することを特徴とする超音波薬液反応装置。
【請求項2】
前記上・下部薬液供給ノズルは、薬液供給弁から液が供給された場合、上部の空気層で自動的に圧力を生じ、基板搬送方向と直角方向の基板幅方向に液が均等に供給されることを特徴とする請求項1に記載の超音波薬液反応装置。
【請求項3】
前記上部薬液槽は空気層ができる構造とし、上・下薬液供給ノズルからの液供給量と上部液吸引パイプからの吸引流量の調整で、上・下薬液槽間の隙間部では薬液を自動的に保持することを特徴とする請求項1に記載の超音波薬液反応装置。
【請求項4】
前記搬送ローラー面は、前記超音波ラインケースより超音波波長の1/4に設置することを特徴とする請求項1に記載の超音波薬液反応装置。
【請求項5】
上記液吸引パイプの設置は、前記超音波ラインケースより超音波波長の1/4の奇数倍の位置とし、薬液面レベルを超音波反射面に利用することを特徴とする請求項1に記載の超音波薬液反応装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−161781(P2012−161781A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40795(P2011−40795)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(511051074)
【Fターム(参考)】