説明

超音波装置

【課題】 反射率断像画像と弾性画像の取得時の両立を図り、診断に適した画像を表示できるようにする。
【解決手段】 制御手段は、断像画像の取得に最適な第1の超音波送受信処理と弾性画像の取得に最適な第2の超音波送受信処理を実行する。第1の超音波送受信処理は、通常の超音波装置が実行する反射率断層データの取得に適した処理であり、第2の超音波送受信処理は、弾性画像データの取得に適した処理である。制御手段は、この第1又は第2の超音波送受信処理を時間的に異なるタイミング、すなわち反射率断層データ取得時間では、第1の超音波送受信処理を実行して反射率断像画像に最適な超音波送受信を行い、弾性データ取得時間では、例えば大振幅超音波送信または多波数超音波送信のような第2の超音波送受信処理を実行して弾性画像演算に最適な超音波送受信を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波を利用して被検体内の診断部位について超音波画像を得て表示する超音波装置に係り、特に生体組織の反射率断像画像と弾性率画像又は弾性歪画像を表示することができる超音波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波装置は、超音波探触子を用いて超音波を被検体に照射し、その反射波を利用して被検体内の生体組織の超音波反射率を計測し、その反射率を輝度として表示することによって生体組織の断像画像を表示するものである。最近では、この超音波装置を用いて、診断部位の生体組織の弾性率あるいは弾性歪を計測し、これを弾性率画像あるいは弾性歪画像(以下これらを弾性画像とする)として表示することが行われるようになってきた。このような超音波装置として、例えば特許文献1に記載されたものなどがある。
【0003】
【特許文献1】特開2000-60853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波装置を用いて弾性画像を描出するためには、生体組織の変移量を演算するために超音波受信データ間で相関処理等を行いながら弾性画像の演算を実行している。本来、生体組織の微小な位置変移を検出するためには、通常の断層画像を取得するための超音波信号の送受信とは異なった大振幅超音波送信または多波数超音波送信を行うことが望ましい。しかし、従来は断層画像取得時と同じ条件で超音波の送受信を行っていた。従って、取得された弾性画像は診断に適さないという可能性があった。逆に、弾性画像取得時の条件、すなわち大振幅超音波送信または多波数超音波送信で送受信を行った場合、受信された信号は過大超音波受信信号となるため、それを処理して取得された断層画像は診断に適さないという可能性があった。
【0005】
また、通常の超音波装置では、1秒間におよそ30フレーム以上の反射率断像画像を表示することが一般的になっている。一方、弾性画像を取得するために、超音波探触子を用いて生体を圧迫することにより生体組織に変移を与えたり、心拍、呼吸あるいは運動により生体組織に位置変移を与えたりする。このような場合に、生体組織位置の変移量として、隣接表示フレーム間を使用すると、弾性画像演算に充分な変移量が与えられないことが多いので、断層画像を表示する場合と同じように表示フレーム数で弾性画像を演算・表示する必要は必ずしもないのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、上述の点に鑑みてなされたものであり、反射率断像画像と弾性画像の取得時の両立を図り、診断に適した画像を表示することのできる超音波装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された本発明の超音波装置は、被検体との間で超音波の送受信を行う超音波探触子と、超音波送信信号を生成して前記超音波探触子に送信する送信手段と、前記超音波探触子により受信される反射エコー信号を受信する受信手段と、該受信手段により処理された受信信号に基づいて断層画像を構成する断層画像構成手段と、該受信手段により処理された受信信号に基づいて弾性画像を構成する弾性画像構成手段と、前記断層画像と前記弾性画像の少なくとも一方を表示する表示手段と、断層画像モードと弾性画像モードを切り替える切替手段とを備え、前記受信手段は、前記断層画像用の第1の受信処理手段と、前記弾性画像用の第2の受信処理手段とを有し、前記切替に合わせて、前記第1の受信処理手段と前記第2の受信処理手段を切り替える制御手段を備えることを特徴とする超音波装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、反射率断像画像と弾性画像の取得時の両立を図り、診断に適した画像を表示することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に従って説明する。図1は、本発明の超音波装置の第1の実施の形態を示すブロック構成図である。図1では、超音波送受信信号の流れを太線で示し、制御信号の流れを細線で示している。図2は、この実施の形態に係る超音波装置と被検体との関係を示す図である。図2では、被検体20は、ベッド21の上に横臥しており、その被検体20の臓器を圧迫するように超音波探触子1が接触している。超音波探触子1と超音波装置10との間は接触子ケーブルで接続されている。超音波装置10の画像表示機器7には、反射率断層画像7aと弾性画像7bが同時に表示されている。
【0010】
この超音波装置10は、超音波探触子1と、送信回路系2と、受信回路系3と、断層画像表示回路系4と、弾性画像表示回路系5と、表示重ね合わせ回路6と、画像表示機器7と、弾性データ取得時間設定部9とを具備して構成される。
【0011】
超音波探触子1は、被検体20の計測対象の部位に超音波を送受信するものである。すなわち、超音波探触子1は、被検体20内に超音波を送信するとともに、被検体20内からの超音波の反射波を受信する機能を備えており、超音波を打ち出すとともに反射波を受信するように構成された一次元または二次元に配列された複数の振動子を有して構成されている。
【0012】
送信回路系2は、この超音波探触子1に送信波の送信フォーカス処理を行って超音波を送信する送信手段である。すなわち、送信回路系2は、超音波探触子1に対して超音波の送受信を行うものであり、複数の振動子を駆動して複数のチャンネルの超音波を送信するにあたって、チャンネルごとに異なった遅延時間を与える送信フォーカス処理をして送信する。特に、この実施の形態に係る超音波装置10は、後述する弾性データ取得時間設定部9により設定されたタイミングに従って、反射率断層画像あるいは弾性画像に対応したそれぞれに最適の送信フォーカス処理の切替えを行うようになっている。
【0013】
受信回路系3は、超音波探触子1から出力される受信波の受信フォーカス処理を行う整相手段を含むものである。すなわち、受信回路系3は、超音波探触子1の複数の振動子により受信された複数チャンネルの反射波を取り込み、チャンネルごとに異なった遅延時間を与えて受信フォーカス処理、つまり整相処理を行う。特に、この実施の形態に係る超音波装置10においては、後述する弾性データ取得時間設定部9により設定されたタイミングに従って、反射率断層画像あるいは弾性画像に対応したそれぞれに最適の受信フォーカス処理の切替えを行うようになっている。
【0014】
断層画像表示回路系4は、受信回路系3から出力される受信信号に種々の演算処理を施して反射率断層画像を生成して、表示重ね合わせ回路6に出力するものである。すなわち、断層画像表示回路系4は、受信回路系3の出力から反射率断層画像を構築するものであり、特にこの実施の形態では、後述する弾性データ取得時間設定部9により設定された反射率断層データ取得時間内における受信回路系3からの出力を用いて反射率断層画像を構築する。
【0015】
弾性画像表示回路系5は、受信回路系3から出力される受信信号に種々の演算処理を施して弾性像を生成して、表示重ね合わせ回路6に出力するものである。すなわち、弾性画像表示回路系5は、受信回路系4の出力から弾性画像を演算して表示するものであり、特にこの実施の形態では、後述する弾性データ取得時間設定部9により設定された弾性データ取得時間内における受信回路系3からの出力を用いて弾性画像を構築する。
【0016】
表示重ね合わせ回路6は、断層画像表示回路系4及び弾性画像表示回路系5からの出力を重ね合わせ表示したり、あるいは選択して表示したり、あるいは両者を別々に表示したりするように画像を処理し、それを画像表示機器7に出力して表示させるものである。特に、この実施の形態においては、弾性データ取得時間設定部9の設定情報に応じて、画像表示機器7への表示方法を切替えるものである。画像表示機器7は、通常のモニタ装置などで構成される。
【0017】
弾性データ取得時間設定部9は、弾性画像を作成するための弾性データを取得する時間、あるいは、断層画像を作成するための反射率断層データを取得する時間をそれぞれ設定するものであり、次の3つの機能を備えている。第1の機能は、弾性データ取得開始時間及び終了時間の設定を行う機能である。第2の機能は、弾性データ取得時間と反射率断層データ取得時間との切替えを行う機能である。第3の機能は、第1及び第2の機能によって取得された情報に基づいて、送信回路系2、受信回路系3、反射率断層画像表示回路系4、弾性画像表示回路系5及び表示重ね合わせ回路6の動作を制御する機能である。
【0018】
弾性データ取得時間設定部9の第1の機能は、弾性データ取得開始時間及び終了時間の設定を行うものであり、これは、超音波探触子1に付随したスイッチ8、図示していないフットスイッチ、キーボードなどのヒューマンインターフェース機器などで構成され、これらのスイッチ8を操作することによって弾性データ取得開始時間及び終了時間の設定が行えるようになっている。具体的には、術者が、弾性データを取得しようとする際、超音波探触子1に付随したスイッチ8などを押し下げることにより、弾性データ取得の開始を行うようになっている。実際に、術者は、弾性画像を取得する時、超音波探触子1に付随したスイッチ8を押し下げると同時に超音波探触子1を被検者に押し付けるという動作を行う必要がある。逆に予め超音波探触子1を被検者に押し付けている場合にはスイッチ8の押し上げると同時に超音波探触子1を引き上げると言う動作を行う必要がある。なお、ここでは、超音波探触子1の押し付けを術者が直接行う場合を例示したが、超音波探触子1を機械的に押し付けたりする場合は、別途用意したスイッチ8等のヒューマンインターフェース機器により、超音波探触子1を押し下げる機械を用いて超音波探触子1を被検者に押しつけたり、あるいは、被検体に超音波探触子1を予め押し付けておいて引き上げると共に弾性データ取得開始時間及び終了時間の設定を行うようにしてもよい。
【0019】
弾性データ取得時間設定部9の第2の機能は、弾性データ取得時間と反射率断層データ取得時間との切替えを行うものであり、これは、弾性データの取得繰り返し期間と、弾性データ取り込み位置の指定を行うものである。具体的には、反射率断層画像を取得中の指定領域でのみ弾性データを指定した間隔で取得するように動作するものである。図3は、この第2の機能の動作概念を説明する図であり、図4は、この第2の機能の動作例を示すタイミングチャート図である。図5は、この第2の機能の動作の詳細を示すフローチャート図である。
【0020】
図3及び図4において、B-startは反射率断層画像走査開始位置を、S-startは弾性画像走査開始位置を、S-endは弾性画像走査終了位置を、B-endは反射率断層画像走査終了位置をそれぞれ示す。図において、Bは断層データ取得時間を示し、Sは弾性データ取得時間を示す。
【0021】
まず、術者が超音波探触子1のスイッチ8を押し下げる(スイッチオンする)ことによって、図5の超音波走査開始処理がスタートする。そして、ステップS51では、超音波走査終了か否かの判定を行い、そうでない(no)場合はステップS52に進み、終了(yes)の場合は直ちに超音波走査処理を終了する。
【0022】
ステップS52では、現在の時間が弾性画像取得時間(S)の期間であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS58に進み、そうでない(no)場合はステップS53に進む。ステップS53では、前のステップS52で現在の時間が弾性画像取得時間(S)の期間でない(no)と判定されたので、断層画像の取得を開始するために、断層画像取得位置レジスタにB-startを格納する。ステップS54では、断層画像取得位置レジスタの値がB-end、すなわち断層画像最終取得位置であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS57に進み、断層画像の取得を終了し、ステップS51にリターンし、noの場合はステップS55に進む。ステップS55では、断層画像取得位置レジスタの値を1だけインクリメントする。ステップS56では、断層画像対応の超音波送受信として、例えば、1波送信でダイナミックフィルタを用いた断層画像取得処理を実行し、ステップS54にリターンする。ダイナミックフィルタを用いて超音波送受信を行うことによって、受信深度に応じて受信周波数を可変とし、断層画像の取得に適した超音波送受信を行うようにした。ステップS54〜ステップS56の処理によって、B-startの位置から走査方向31に沿って反射率断層画像32の走査が行われ、B-endの位置まで反射率断層画像32の取得が行われる。
【0023】
ステップS58では、前のステップS52で現在の時間が弾性画像取得時間(S)の期間である(yes)と判定されたので、弾性画像の取得を開始するために、弾性画像取得位置レジスタにS-startを格納する。ステップS59では、弾性画像取得位置レジスタの値がS-end、すなわち弾性画像最終取得位置であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS5Cに進み、弾性画像の取得を終了し、ステップS51にリターンし、noの場合はステップS5Aに進む。ステップS5Aでは、弾性画像取得位置レジスタの値を1だけインクリメントする。ステップS5Bでは、弾性画像対応の超音波送受信として、例えば、2波送信で固定フィルタを用いた弾性画像取得処理を実行し、ステップS59にリターンする。固定フィルタを用いて超音波送受信を行うことによって、受信周波数を一定とし、弾性画像の取得に適した超音波送受信を行うようにした。ステップS59〜ステップS5Bの処理によって、S-startの位置から走査方向31に沿って弾性画像33の走査が行われ、S-endの位置まで弾性画像33の取得が行われる。図3では、弾性画像33の中に疾患部位34が表示されている。弾性画像33の取得が終了したら、再び、ステップS51の判定を行い、その結果に応じて反射率断層画像32又は弾性画像33の取得処理が実行される。術者がスイッチ8の押し下げを開放(スイッチオフ)すると、再びスイッチ8を押し下げるまでは、反射率断層画像を取得するように動作する。
【0024】
図6は、この実施の形態の弾性データ取得時間設定部9の第2の機能の別の動作例を示すタイミングチャート図である。図7〜図9は、この第2の機能の別の動作の詳細を示すフローチャート図である。術者が超音波探触子1のスイッチ8を押し下げる(スイッチオンする)ことによって、図7の超音波走査開始処理がスタートする。そして、ステップS71では、超音波走査終了か否かの判定を行い、そうでない(no)場合はステップS72に進み、終了(yes)の場合は直ちに超音波走査処理を終了する。
【0025】
ステップS72では、現在の走査位置レジスタの値がB-start以上で、S-start未満の位置であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS73に進み、noの場合は次のステップS74に進む。ステップS73では、図8の断層画像取得ルーチンが実行される。断層画像取得ルーチンは、断層画像対応の超音波送受信として、例えば、1波送信でダイナミックフィルタを用いた断層画像取得処理を実行し、走査位置レジスタの値を1だけインクリメントして、図7のステップS71にリターンする。以後、走査位置レジスタの値がB-startからS-startに達するまで、ステップS73の断層画像取得ルーチンを実行し、反射率断層画像データ32を取得する。
【0026】
ステップS74では、現在の走査位置レジスタの値がS-start以上で、S-end以下の位置であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS75に進み、noの場合は次のステップS76に進む。ステップS75では、図9の弾性画像・断層画像取得ルーチンが実行される。弾性画像・断層画像取得ルーチンは、弾性データを取得し、取得後は、反射率断層データ取得が実施され、所定の間隔後、再び、弾性画像走査を行うという動作を繰り返し実行する。弾性画像・断層画像取得ルーチンでは、弾性画像対応の超音波送受信として、例えば、2波送信で固定フィルタを用いた弾性画像取得処理を実行し、次に、断層画像対応の超音波送受信として、例えば、1波送信でダイナミックフィルタを用いた断層画像取得処理を実行し、走査位置レジスタの値を1だけインクリメントして、図7のステップS71にリターンする。以後、走査位置レジスタの値がS-startからS-endに達するまでは、ステップS75の弾性画像・断層画像取得ルーチンを実行し、反射率断層の走査と弾性画像の走査を交互に繰り返して画像を取得する。
【0027】
ステップS76では、現在の走査位置レジスタの値がS-endより大きくて、B-end以下の位置であるか否かの判定を行い、yesの場合はステップS77に進み、noの場合は次のステップS71にリターンする。すなわち、S-endの位置まで弾性画像走査が終了したならば、B-endの位置まで反射率断層データ取得を繰り返す。ステップS77では、図8の断層画像取得ルーチンが実行される。断層画像取得ルーチンは、断層画像対応の超音波送受信として、例えば、1波送信でダイナミックフィルタを用いた断層画像取得処理を実行し、走査位置レジスタの値を1だけインクリメントして、図7のステップS71にリターンする。以後、走査位置レジスタの値がS-endからS-startに達するまで、ステップS77の断層画像取得ルーチンを実行し、反射率断層画像データ32を取得する。
【0028】
そして、再び、術者がスイッチ8を押し下げるまで、B-startからB-endまで反射率断層データの取得が行われる。術者がスイッチ8を再び押し下げたならば、最初にもどり、B-startの位置より反射率断層画像の走査からの一連の動作を繰り返すものである。
【0029】
この実施の形態の弾性データ取得時間設定部9の第3の機能は、弾性データ取得時間設定部9の第1の機能、第2の機能をもとに、送信回路系2、受信回路系3、反射率断層画像表示回路系4、弾性画像表示回路系5、表示重ね合わせ回路6をそれぞれ制御するものである。具体的には、超音波探触子1に付随したスイッチ8を押し下げると同時に超音波探触子1を被検者に押し付け開始するとともに、先に指定された弾性データ取り込み位置の超音波送受信を弾性データの取得繰り返し期間毎に行うように制御する。特に、送信回路系2、受信回路系3では、弾性データ取得に適した超音波送受信を行うとともに、弾性画像表示回路系5にて、弾性画像の演算・表示を行うよう制御する。
【0030】
さらに、表示重ね合わせ回路6に対しては、弾性画像表示回路系5にて新しく作成された弾性画像を選択的に画像表示機器7に対して表示させるように制御する。反射率断層画像表示回路系4に対しては、弾性データ取得時間中は受信回路系3にて整相処理された弾性画像用受信データを入力せずに、先に取得した反射率断層データを用いた断層画像を表示するよう制御する。一方、弾性データ取得時間でない時間は、反射率断層データの取得表示を行うように制御する。特に、送信回路系2、受信回路系3では、反射率断層データ取得に適した超音波送受信を行い、反射率断層画像表示回路系5にて、断層画像の表示を行うよう制御する。さらに、表示重ね合わせ回路6に対しては、断層画像表示回路系4にて新しく作成された反射率断層を選択的に画像表示機器7に対して表示するように制御する。弾性画像演算表示回路系4に対しては、断層データ取得時間中は、受信回路系3にて整相処理された反射率断層画像用受信データを入力せず、先に取得した弾性画像用データを用いた弾性画像を表示するように制御する。
【0031】
図6では、反射率断層データ取得時間はBとして、弾性データ取得時間はSとして示され、それぞれの時間における処理内容がそれぞれ示されている。例えば、Bの反射率断層データ取得時間時中は、送信回路系2から1波数の超音波送信がダイナミックフィルタを用いて実行され、Sの弾性データ取得時間中は、送信回路系2から2波数の超音波送信が固定フィルタを用いて実行される。これによって、反射率断層データ取得時間および弾性データ取得時間において、それぞれの画像処理に最適な送信処理が実行されることになる。
【0032】
弾性データ取得時間設定部9は、弾性データ取得時間および反射率断層データ取得時間における各部位での動作を超音波走査位置を変えながら繰り返し実行し、所定の弾性画像走査範囲の超音波送受信を終了すると、再びスイッチ8の押し下げ開始まで、反射率断層データの取得および従前に取得表示した弾性画像と、最新の反射率断層画像を画像表示機器7に表示するように制御する。
【0033】
上述の実施の形態のように、弾性データ取得時間設定部を新しく設けたために、反射率断層画像と弾性画像を各々独立した時間で超音波の送受信を行うことが可能となり、そのため、反射率断層画像と弾性画像のそれぞれに最適な超音波送受信の条件にて、超音波送受信を行うことが可能となり、反射率断層画像と弾性画像の両者に最適な超音波画像を構築表示が可能となる。また、診断に適した画像を術者に提供することができるようになり、診断能の向上に役立つ超音波装置を術者に提供することができる。
【0034】
なお、上述の実施の形態では、弾性データ取得時に多波数超音波送信を用いて弾性受信データの信号強度を上げるようにする場合について説明したが、これに代えて大振幅超音波送信を用いにようにしてもよいし、多波数超音波送信及び大振幅超音波送信の両方を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の超音波装置の第1の実施の形態を示すブロック構成図。
【図2】この実施の形態に係る超音波装置と被検体との関係を示す図。
【図3】弾性データ取得時間設定部の第2の機能の動作概念を説明する図。
【図4】弾性データ取得時間設定部の第2の機能の動作例を示すタイミングチャート図。
【図5】弾性データ取得時間設定部の第2の機能の動作の詳細を示すフローチャート図。
【図6】この実施の形態の弾性データ取得時間設定部の第2の機能の別の動作例を示すタイミングチャート図。
【図7】弾性データ取得時間設定部の第2の機能の別の動作の詳細を示すフローチャート図。
【図8】図7のフローチャトの断層画像取得ルーチンの詳細を示す図。
【図9】図7のフローチャトの弾性画像・断層画像取得ルーチンの詳細を示す図。
【符号の説明】
【0036】
1 超音波探触子、2 送信回路系、3 受信回路系、4 断層画像表示回路系、5 弾性画像表示回路系、6 表示重ね合わせ回路、7 画像表示機器、8 スイッチ、9 弾性データ取得時間設定部、10 超音波装置、20 被検体、21 ベッド、31 走査方向、32 反射率断層画像データ、33 弾性画像データ、34 疾患部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体との間で超音波の送受信を行う超音波探触子と、
超音波送信信号を生成して前記超音波探触子に送信する送信手段と、
前記超音波探触子により受信される反射エコー信号を受信する受信手段と、
該受信手段により処理された受信信号に基づいて断層画像を構成する断層画像構成手段と、
該受信手段により処理された受信信号に基づいて弾性画像を構成する弾性画像構成手段と、
前記断層画像と前記弾性画像の少なくとも一方を表示する表示手段と、
断層画像モードと弾性画像モードを切り替える切替手段とを備え、
前記受信手段は、前記断層画像用の第1の受信処理手段と、前記弾性画像用の第2の受信処理手段とを有し、前記切替に合わせて、前記第1の受信処理手段と前記第2の受信処理手段を切り替える制御手段を備えることを特徴とする超音波装置。
【請求項2】
請求項1において、前記制御手段は、前記切替手段によって設定された前記断層画像取得時間及び前記弾性画像取得時間に応じて、前記送信手段、前記第1の受信処理手段と前記第2の受信処理手段、前記断層画像手段及び前記弾性画像手段に実行させることを特徴とする超音波装置。
【請求項3】
請求項1において、前記切替手段は、前記超音波探触子に設けられたヒューマンインターフェース機器から構成され、前記切替手段からの制御信号に応じて前記制御手段は前記弾性画像の取り込みを開始することを特徴とする超音波装置。
【請求項4】
請求項1において、前記制御手段は、前記切替手段によって設定された前記弾性画像取得時間内に所定のタイミング毎に前記弾性画像を取得することを特徴とする超音波装置。
【請求項5】
請求項1において、前記弾性画像の取得に最適な第2の超音波送受信処理として、大振幅超音波送信及び多波数超音波送信の少なくとも一方の超音波送信を行うことによって、弾性受信データの信号強度を上げるようにしたことを特徴とする超音波装置。
【請求項6】
請求項1において、前記第1の超音波送受信処理手段は、受信周波数を受信深度に応じて可変させるダイナミックフィルタ処理を含む受信処理を行い、前記第2の超音波送受信処理手段は、受信周波数を一定にする固定フィルタ処理を含む受信処理を行うことを特徴とする超音波装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、前記表示手段は、前記断像画像及び前記弾性画像の両者を重ね合わせた画像、両者を選択的に表示した画像、両者を同時に並列的に表示した画像を、選択的に表示することを特徴とする超音波装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項において、前記断像画像に表示された任意の領域に対して選択的に弾性画像の取得を行い、取得された弾性画像を表示することを特徴とする超音波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−78169(P2009−78169A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314003(P2008−314003)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【分割の表示】特願2002−312023(P2002−312023)の分割
【原出願日】平成14年10月28日(2002.10.28)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】