説明

超音波診断装置、及び超音波診断プログラム

【課題】 超音波画像と超音波画像のスキャン領域とを簡便に示す。
【解決手段】 実施例によれば、スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、前記エコー信号に基づいて第1の超音波画像を生成する第1の超音波画像生成手段と、前記スキャン領域の位置情報を検出する位置検出手段と、前記スキャン領域の位置情報に基づいて、前記第1の超音波画像から第2の超音波画像を生成する第2の超音波画像生成手段と、前記第2の超音波画像を表示する表示手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波画像を用いて診断を行う超音波診断装置、及び超音波診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波振動子から超音波を被検体に対して送信し、被検体内で生じた反射波(以下、単にエコー信号と記載する)を超音波振動子で受信して、エコー信号に基づく超音波画像を生成する装置である。
【0003】
超音波画像のスキャン領域が被検体上のどの位置に対応するかを示すために、超音波画像に併せて被検体を模したボディマークをモニタに表示する超音波診断装置が実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−166973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述したような超音波診断装置を用いて、超音波画像を視認しながら被検体の診断を行う場合について考える。診断を行う操作者は、モニタに表示された超音波画像を視認するのと同時に、超音波画像のスキャン領域が被検体上のどの位置に対応しているかを確認するために、超音波プローブの被検体上の接触位置を視認しなければならない。このため、操作者は視線をモニタと超音波プローブとの間で交互に、かつ頻繁に移動させながら診断を行わなければならない。
【0006】
先述したボディマークによるスキャン領域の表示を行った場合であっても、ボディマークと実際の被検体とはその形状が大きく異なり、また超音波プローブと被検体との位置関係をリアルタイムで反映するものではないために、ボディマークによってはスキャン領域の概略しか把握することができない。正しいスキャン領域を把握するためには、操作者は被検体上の超音波プローブの位置を確認する必要があった。
【0007】
被検体上のスキャン領域と超音波画像とを簡便に視認できなかったことは、操作者の視線の移動による負担を強いるとともに、診断の効率を悪化させていた。
【0008】
そこで本開示においては、超音波画像と超音波画像のスキャン領域とを簡便に示すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため実施形態の超音波診断装置においては、スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、前記エコー信号に基づいて第1の超音波画像を生成する第1の超音波画像生成手段と、前記スキャン領域の位置情報を検出する位置検出手段と、前記スキャン領域の位置情報に基づいて、前記第1の超音波画像から第2の超音波画像を生成する第2の超音波画像生成手段と、前記第2の超音波画像を表示する表示手段とを有する。
【0010】
また、上記課題を解決するため実施形態の超音波診断プログラムは、コンピュータに、スキャン領域へ超音波を送信して得られたエコー信号を用いて第1の超音波画像を生成するステップと、前記スキャン領域の位置情報を検出するステップと、前記スキャン領域の位置情報に基づいて、前記第1の超音波画像から第2の超音波画像を生成するステップと、前記第2の超音波画像を表示させるステップとを実現させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に係る超音波診断装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】実施例に係る透過型ゴーグルを示す図。
【図3】実施例に係る超音波プローブを示す図。
【図4】実施例に係る診断の様子と、透過型ゴーグルを通して見た被検体の様子を示す図。
【図5】実施例に係る投影超音波画像の表示処理を示すフローチャート。
【図6】実施例に係る超音波プローブを移動させた際の、透過型ゴーグルを通して見た被検体の様子を示す図。
【図7】実施例に係る超音波プローブを用いてボリュームデータを収集する様子を示す図。
【図8】実施例に係る透過型ゴーグルを複数用いた場合の診断の様子と、各透過型ゴーグルを通して見た被検体の様子を示す図。
【図9】第2の実施例に係る超音波診断装置の内部構成を示すブロック図。
【図10】第3の実施例に係る超音波診断装置の内部構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(超音波診断装置1の構成)
以下、本開示の実施例について図面を参照して説明する。図1は、各実施例に係る超音波診断装置1の内部構成を示したブロック図である。超音波診断装置1は、システム制御部10、超音波プローブ20、および透過型ゴーグル30とを組み合わせることにより構成される。なお、本発明における超音波診断装置1の構成はこれに限られるものではなく、適宣構成要素を追加しても構わないし、超音波診断装置1の構成の幾つかを省略して、超音波診断装置1の外部に接続した処理装置が省略された構成要素の役割を果たすものであっても構わない。例えば超音波の送受信及び超音波画像の生成を行う超音波診断モジュールと、後に述べる投影用超音波画像を表示する表示モジュールと、位置情報を検出して投影用超音波画像を生成する超音波診断プログラムを実行するコンピュータとを別々に設け、それぞれを別体として動作させても構わない。
【0013】
システム制御部10は、入力部11、記憶部12、位置情報処理部13、超音波画像生成部16、送受信部17、Bモード処理部18、ドプラ処理部19から構成される。システム制御部10は各構成要素へ制御命令を出力し、超音波診断装置1を統括的に制御する。 超音波プローブ20は、システム制御部10に接続される部材である。超音波プローブ20は超音波振動子21を内蔵し、送受信部17から出力された駆動信号に基づいて超音波振動子21を駆動するよう制御する。
【0014】
超音波振動子21は、超音波プローブ20を介して入力された駆動信号に基づいて超音波を発生し、また被検体から反射された超音波を受信して電気信号に変換する部材である。超音波振動子21は超音波を受信することにより生じた電気信号(以下、単にエコー信号と記載する)を送受信部17へと出力する。
【0015】
図2に本実施例における超音波プローブ20を示した図である。図2に示すように、超音波プローブ20の例えば側面にはマーカ25が付される。マーカ25は後述する撮像素子32によって撮影され、撮像素子32から見た超音波プローブ20の位置及び方向を確認するためのものである。マーカ25は例えば超音波プローブ20の4つの側面に付され、各側面のマーカ25はそれぞれ異なる形状からなる。本実施例においてマーカ25はそれぞれ形状が異なるものとして示すが、マーカ25の構成はこれに限られるものではない。例えばマーカ25の形状以外に、各側面で色や、記号や文字、あるいは大きさなどが異なるように構成しても構わない。また、本実施例においてマーカ25は超音波プローブ20に接続されるケーブルに近い側に付されるものとして示すが、マーカ25を付す位置はこれに限られるものではない。例えば超音波振動子21が内蔵された側に付しても構わないし、あるいは超音波プローブ20に接続されるケーブルにマーカ25を付しても構わないし、あるいは超音波プローブ20に板状の部材を取り付け、この板状の部材にマーカ25を付しても構わない。
【0016】
また、本実施例における超音波プローブ20は、リニア形、コンベックス形、セクタ形などの2次元平面をスキャンする種々の形状によって構成されていても構わないし、あるいはメカ4Dプローブ(機械式3次元プローブ)あるいは2Dアレイプローブ(マトリクスアレイプローブ)などの3次元空間をスキャンする種々の形状により構成されるものであっても構わない。
【0017】
透過型ゴーグル30は、表示部31と撮像素子32からなる、操作者の頭部に装着されるゴーグルである。図3は透過型ゴーグル30を示した図である。図3に示すように、透過型ゴーグル30には操作者の視界を覆う部分に表示部31が、操作者の視線に対応する方向を撮影するように撮像素子32が設けられる。
【0018】
表示部31は、例えばLCD(Lucid Crystal Display)ディスプレイから構成される、透明且つ板状のディスプレイである。例えば表示部31の上端及び下端には電極が設けられ、各電極は任意の位置にある液晶素子へ電圧を印加する。電圧の印加された液晶素子の透過度が変化する。表示部31は各液晶素子の透過度を制御することにより、ディスプレイ上に任意の画像、例えば超音波画像生成部16から出力された投影用超音波画像を表示する。なお本実施例において表示部31はLCDにより構成されるものとして示すが、表示部31の構成はこれに限られるものではなく、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの任意の方法により表示部31を構成しても構わない。
【0019】
撮像素子32は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサから構成される、映像を撮影するための部材である。撮像素子32は例えば透過型ゴーグル30のつるの部分に設けられ、透過型ゴーグル30を装着した操作者の視界と同じ方向を撮影するように取り付けられ、撮影画像を位置情報処理部13へと出力する。なお本実施例において撮像素子32はCCDイメージセンサにより構成されるものとして示すが、撮像素子32の構成はこれに限られるものではなく、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの任意の方法により撮像素子32を構成しても構わない。
【0020】
送受信部17は、超音波プローブ20が受信したエコー信号を処理するアンプ回路、A/D変換器、加算器などを備える。アンプ回路は、超音波プローブ20が受信したエコー信号を増幅し、A/D変換器へ出力する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号の受信指向性を決定するために必要な遅延時間をエコー信号に与え、加算器へと出力する。加算器は遅延時間を与えられたエコー信号を加算することで、超音波を送信するスキャンラインに対応したエコー信号を得る。送受信部21はスキャンラインに対応したエコー信号をBモード処理部18あるいはドプラ処理部19へと出力する。また送受信部17は、超音波振動子21を駆動し超音波を送信するための駆動信号を超音波プローブ20へと出力する。
【0021】
Bモード処理部18は、送受信部17が出力したエコー信号の振幅強度に応じて変化するBモード信号を生成する。Bモード処理部18はBモード信号を生成すると、これを超音波画像生成部16へと出力する。
【0022】
ドプラ処理部19は、エコー信号の周波数遷移を検出して、組織あるいは血流の移動速度を抽出したドプラ信号を生成する。ドプラ処理部19はドプラ信号を生成すると、これを超音波画像生成部16へと出力する。
【0023】
超音波画像生成部16は、Bモード処理部18あるいはドプラ処理部19から出力されたBモード信号やドプラ信号に基づいて、超音波画像を生成する。超音波画像の生成は、例えばBモード信号から算出された画素値を超音波の送受信方向に対応した2次元平面にマッピングすることにより行われる。超音波画像生成部16が生成する超音波画像はこれに限られるものではなく、例えばドプラ信号から算出された速度値を色情報に変換した画素、変換した色情報を2次元平面にマッピングしても構わない。あるいは、超音波プローブ20が3次元空間のスキャンを行った場合には、超音波画像生成部16はBモード信号やドプラ信号から求められる画素値を3次元空間にマッピングしたボリュームデータを生成する。そして、超音波画像生成部16はボリュームデータを任意の視点から投影した投影画像や、あるいはボリュームデータの任意の断面における画素値を2次元平面にマッピングした断層画像を生成する。
【0024】
更に超音波画像生成部16は、生成した超音波画像の表示位置、表示倍率、及び表示方向などを変更した投影用超音波画像を生成する。この投影用超音波画像の生成は、後述する位置情報処理部13が検出した超音波プローブ20の位置情報に基づいて行われる。位置情報処理部13が超音波プローブ20の位置情報を検出すると、位置情報処理部13は検出した位置情報に基づいて超音波画像の表示位置、表示倍率及び表示方向を算出する。超音波画像生成部16は、位置情報処理部13が算出した各パラメータに基づいて超音波画像を変更して投影用超音波画像を生成する。超音波画像生成部16は生成した投影用超音波画像を表示部31へと出力する。この投影用超音波画像の生成及び表示処理については、後に詳しく述べる。
【0025】
位置情報処理部13は、撮像素子32が撮影した映像に基づいて、超音波プローブ20と透過型ゴーグル30との相対的な位置関係を位置情報として検出する。位置情報処理部13は、撮像素子32が撮影した撮影画像中における、超音波プローブ20上のマーカ25の大きさや位置、傾きに基づいて超音波プローブ20の位置情報を検出する。より具体的には、位置情報処理部13は撮影画像中に写りこむマーカ25を検出するために、まずマーカ25に対応した辞書パターンを記憶部12から読み出す。この辞書パターンは、例えばマーカ25と同じ色・形状を有する画像情報であり、撮像素子32から規定の距離だけ離れた基準位置にマーカ25がある場合に、撮影画像中にどのような大きさでマーカ25が写りこむかを定義する情報である。位置情報処理部13は辞書パターンを読み出すと、撮影画像中にこの辞書パターンと同じ色・形状の画像情報が含まれていないかを探索処理する。位置情報処理部13は辞書パターンの大きさや傾きを様々に変化させながら探索処理を行うことで、例えば撮影画像中にマーカ25が傾いて映っている場合であっても、マーカ25を検出することができる。位置情報処理部13は撮影画像中のマーカ25を検出すると、検出したマーカ25に基づいて超音波プローブ20の位置情報を検出する。より具体的には、例えば超音波プローブ20がある座標Aから、撮像素子32に対し遠ざかった座標Bへと移動したとすると、位置情報処理部13が撮影画像中に検出するマーカ25の大きさは小さいものへ変化する。同様に、例えば超音波プローブ20がある位置Aから回転した位置Bへと移動したとすると、位置情報処理部13が撮影画像中に検出するマーカ25も回転したものへと変化する。位置情報処理部13は記憶部12に記憶された変形度−位置情報変換テーブルを用いて、撮影画像中に検出されたマーカ25の大きさや傾きが、辞書パターンにおけるマーカ25の基準位置からどれだけ変化したかによって、撮像素子32と超音波プローブ20との相対的な位置関係を算出し、相対的な位置関係を位置情報として超音波画像生成部16へと出力する。
【0026】
入力部11は、例えば機械的なボタン、ダイヤル、トラックボール、スライダやホイールなどの種々の操作デバイスを用いて構成され、使用者が行った入力を電気信号に変換してシステム制御部10へ出力する部材である。操作部11は入力に応じて、例えば送受信部17にスキャンの開始・停止を指示する指示信号や、超音波画像生成部16が画像を生成するモードを切り替える指示信号などの種々の指示信号を出力する。
【0027】
記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ、及びHDD(Hard Disk Drive)などから構成される記憶媒体である。記憶部12は超音波画像生成部16が生成した超音波画像や、あるいは位置情報処理部13がマーカ25の検出に用いる辞書パターンなどを記憶する。また、記憶部12は撮影画像中に検出されたマーカ25の大きさや傾きの変化の度合いからマーカ25の位置情報を導出するための変形度−位置情報変換テーブルを記憶する。
【0028】
(投影用超音波画像の表示処理)
先に述べた各構成要素に基づいて、超音波診断装置1は投影用超音波画像の生成及び表示を行う。図4は、被検体Pに超音波プローブ20を接触させてスキャンを行うことにより超音波画像100(以下、本実施例に係る超音波画像を総称して超音波画像100と記載する)を生成するとともに、投影用超音波画像101(以下、本実施例に係る投影用超音波画像を総称して投影用超音波画像101と記載する)を表示部31に投影した様子を示す図である。なお、図4以降の説明においてシステム制御部10を構成するCPUや制御基板などの部材は、筐体40内に収容されるものとする。
【0029】
なお、図4の視界102は投影用超音波画像101を表示部31に投影した状態で、投影型ゴーグル30を装着した操作者が表示部31を通して見た視界の様子を示す。図4に示す視界102からわかるように、投影用超音波画像101は超音波プローブ20のスキャン領域と対応した位置に表示される。これにより、操作者は投影用超音波画像101があたかも超音波プローブ20の先端から表示されているようにして、被検体P及び投影用超音波画像101を観察することができる。これにより、操作者は被検体Pとスキャン領域の位置関係、及び投影用超音波画像101と直感的に結びつけて診断を行うことができる。
【0030】
図5は、投影用超音波画像101の表示処理を行う際の、超音波診断装置1の処理の流れを示したフローチャートである。以下、図5に沿って処理の流れについて述べる。
【0031】
まず、超音波診断装置1の使用者が診断を開始する(ステップ1000)と、システム制御部10は超音波プローブ20によりスキャンを行って、被検体Pのエコー信号を収集する(ステップ1001)。被検体Pのエコー信号の収集は、超音波振動子21の超音波送受信方向と被検体Pの診断部位とが一致するように超音波プローブ20を配置した状態で送受信部17が超音波振動子21に超音波を送信させ、またエコー信号の収集を行わせることで行われる。システム制御部10はエコー信号を収集すると、エコー信号を用いて超音波画像100を生成する(ステップ1002)。超音波画像100の生成は、Bモード処理部18あるいはドプラ処理部19がエコー信号を信号処理し、超音波画像生成部16が信号処理によって得た画素値をマッピングすることにより行われる。なお、本実施例においてはBモード処理部18が信号処理を行うことで、超音波画像生成部16がBモードの2次元画像を生成するものとして説明を行う。しかし、超音波画像生成部16が生成する超音波画像100の種類はこれに限定されるものではなく、例えばドプラ画像やエラストグラフィ画像、あるいは造影像などの任意の手法により撮影された画像を生成するものであっても構わない。
【0032】
システム制御部10が超音波画像100の生成を行うと共に、システム制御部10は撮像素子32を用いて撮影画像を取得する(ステップ1003)。先述したように撮像素子32は投影型ゴーグル30を装着した使用者の視界に対応する範囲を撮影するように向きが調節されて取り付けられている。従って、取得された撮影画像は使用者の視界と同じ範囲を撮影したものとなる。システム制御部100は撮影画像を取得すると、位置情報検出部13を用いて撮影画像中に写りこんだマーカ25を検出し、これに基づいて超音波プローブ20の位置情報を算出する(ステップ1004)。なお図5には図示しないが、位置情報検出部13が撮影画像中にマーカ25を検出できなかった場合は、システム制御部10は表示部31に検出に失敗した旨を示すメッセージを表示し、再びステップ1003の処理に戻る。
【0033】
なお本実施例においては、ステップ1001及びステップ1002がステップ1003及びステップ1004に対し並列に処理されるものとして述べる。しかし各ステップの処理の順番はこれに限られるものではなく、例えばシステム制御部10がステップ1001、ステップ1002、ステップ1003、ステップ1004の順番に各ステップの処理を行うものであっても構わない。
【0034】
システム制御部10が超音波画像100の生成と位置情報の算出を行うと、超音波画像生成部16は位置情報に基づいて、投影用超音波画像101内における超音波画像100の表示方向、表示位置、表示の大きさ(以下、単に変形パラメータ)を設定する(ステップ1005)。例えば辞書パターンに比べて撮影画像中のマーカ25が小さい大きさで検出された場合、つまり超音波プローブ20が辞書パターンの基準位置に比べ遠い位置にある場合には、超音波画像生成部16は超音波画像100を縮小するように変形パラメータを設定する。一方、辞書パターンに比べて撮影画像中のマーカ25が回転した状態で検出された場合、つまり超音波プローブ20が辞書パターンの基準位置に比べ回転した位置にある場合には、超音波画像生成部16は超音波画像100を回転するように変形パラメータを設定する。超音波画像生成部16はこのようにして、表示方向、表示位置、表示の大きさの各パラメータを組み合わせて変形パラメータを設定する。超音波画像生成部16が変形パラメータを設定すると、超音波画像生成部16は変形パラメータに基づいて超音波画像100を変形して、投影用超音波画像101を生成する(ステップ1007)。超音波画像生成部16は投影用超音波画像101を生成すると、これを表示部31へ出力する。
【0035】
表示部31は超音波画像生成部16から出力された投影用超音波画像101を受信すると、これを表示する(ステップ1007)。投影用超音波画像101を表示した表示部31を通して見た視界102は、図4に示すように超音波プローブ20のスキャン領域に投影用超音波画像101が表示されたものとなる。
【0036】
表示部31が投影用超音波画像101を表示すると、システム制御部10は入力部11がスキャンの一時停止を指示する、所謂Freeze操作を検出したか否かを判断する(ステップ1008)。入力部11がFreeze操作を検出した場合(ステップ1008のYes)は、システム制御部10はステップ1003に戻って位置情報の検出及び投影用超音波画像101の生成・表示を行う。このときシステム制御部10はステップ1001及びステップ1002におけるエコーデータの収集及び超音波画像100の生成を行わないため、表示部31に表示される投影用超音波画像101は、過去の時点で生成した超音波画像100と表示内容は変わらず、超音波画像100の表示方向、表示位置、表示の大きさだけがマーカ25の検出位置に応じて変化することとなる。
【0037】
一方入力部11がFreeze操作を検出しなかった場合(ステップ1008のNo)、入力部11はスキャン終了を指示する操作を検出したか否かを判断する(ステップ1009)。入力部11がスキャン終了を指示する操作を検出した場合(ステップ1009のYes)は、システム制御部10はステップ1001及びステップ1003に戻って超音波画像100の生成及び位置情報の検出を行う。この場合、超音波画像100の生成および位置情報の検出の両方を行う。従ってステップ1008でFreeze操作を受け付けた場合とは異なり、表示部31に表示される投影用超音波画像101は、超音波画像100の表示内容と表示方向、表示位置、表示の大きさをそれぞれリアルタイムで更新するものとなる。
【0038】
一方入力部11がスキャン終了を指示する操作を検出した場合(ステップ1009のNo)は、システム制御部10は処理を終了する(ステップ1010)。
【0039】
(ボリューム像の表示)
先述した実施例においては例として、超音波画像生成部16が2次元の画像を生成する場合について述べたが、超音波診断装置1の動作はこれに限られるものではない。例えば超音波プローブ20が3次元の空間領域をスキャンし、超音波画像生成部16がこれを投影したボリューム像(投影像)を生成するものであっても構わない。
【0040】
図6は、超音波画像生成部16がボリューム像を生成する場合の、投影用超音波画像101及び視界102の例である。図6では例として、超音波プローブ20が移動しながらスキャンを行うことで、3次元の空間領域をスキャンする場合を示している。
【0041】
超音波プローブ20が3次元の空間領域をスキャンすると、Bモード処理部18あるいはドプラ処理部19はエコー信号に基づいて画素値を定め、超音波画像生成部16はこの画素値を3次元空間にマッピングしたボリュームデータを生成する。超音波画像生成部16がボリュームデータを生成すると、超音波画像生成部16は位置情報処理部13が検出した位置情報に基づいて、ボリュームデータを所定の方向から投影処理したボリューム像を生成する。ボリューム像の生成は、例えば以下の手順により行われる。まず、超音波画像生成部16はボリュームデータの3次元空間における視点及び視線方向を設定する。この視点及び視線方向は、例えば撮像素子32の配置位置及び撮影方向に対応する。この配置位置及び撮影方向は、位置情報処理部13が検出した撮像素子32と超音波プローブ20の相対的な位置情報に基づいて位置情報処理部13が算出する。視点及び視線方向の設定が行われると、超音波画像生成部16は視点と視線方向に基づくボリューム像の投影面を算出し、ボリュームデータの3次元空間中に投影面を設定する。次に、超音波画像生成部16は視点と投影面とを結ぶ直線状にある各ボクセルのボクセル値を調べ、所定の透過閾値を超えるボクセルのうち、最も視点に近いボクセルのボクセル値を抽出して投影面にマッピングする。このボクセル値の抽出及びマッピングを投影面の各画素について行うことで、超音波画像生成部16はボリューム像の生成を行う。以上の処理によりボリューム像は、ボリュームデータの3次元空間内において透過閾値を超える値を持つ構造物100を、任意の視点から視線方向に沿って見た超音波画像として得られる。
【0042】
超音波画像生成部16はボリューム像を生成すると、位置情報に基づいてボリューム像の表示位置及び表示の大きさを変化させて、投影用超音波画像101を生成する。超音波画像生成部16は投影用超音波画像101を生成すると、これを表示部31に出力する。これにより、視界102には超音波プローブ20のスキャン領域に対応した場所にボリューム像が表示されることとなる。被検体Pのスキャン領域に対応した位置にボリューム像を表示することにより、操作者は被検体Pの体内の様子をより直感的に把握することができる。
【0043】
なお、本実施例においては超音波プローブ20を移動させることにより3次元の空間領域をスキャンする動作について述べたが、超音波診断装置1の構成はこれに限られるものではない。例えば図7に示すように、超音波プローブ20をスキャン方向の中心を回転軸として回転させながらスキャンすることにより、円錐形状の空間領域をスキャンしても構わない。あるいは超音波振動子21をメカ4Dプローブ(機械式3次元プローブ)あるいは2Dアレイプローブ(マトリクスアレイプローブ)を用いて構成することで、3次元の空間領域をスキャンしても構わない。
【0044】
なお、本実施例においては超音波画像生成部16がボリューム像を生成する例について述べたが、超音波診断装置1の構成はこれに限られるものではない。例えば超音波画像生成部16がボリューム像の替わりに、ボリュームデータを任意の断面で切り取った断層画像を生成しても構わない。このとき断層画像を生成する断面は、位置情報処理部13が検出した位置情報に合わせて変更しても構わない。
【0045】
(複数の透過型ゴーグルを用いた表示制御)
これまでの実施例においては透過型ゴーグル30が1つの場合について説明を行ったが、透過型ゴーグル30は1つのシステム制御部10に対して複数設けられるものであっても構わない。図8は、2つの透過型ゴーグル30(a,b)それぞれに投影用超音波画像101(a,b)を表示する例を示している。
【0046】
透過型ゴーグル30(a)の撮像素子32と透過型ゴーグル30(b)の撮像素子32が撮影する超音波プローブ20の向きはそれぞれ異なる。この向きの違いは、撮影画像中に検出されたマーカ25の位置、大きさ、及び傾きの違いとして現れる。位置情報検出部13は透過型ゴーグル30(a)の撮像素子32と透過型ゴーグル30(b)の撮像素子32が撮影した複数の撮影画像それぞれについて、マーカ25の検出及び位置情報の算出を行う。超音波画像生成部16は複数の位置情報に基づいて、それぞれ異なる変形パラメータで超音波画像100を変形した投影用超音波画像101を生成し、各透過型ゴーグル(a,b)の表示部31へと出力する。各透過型ゴーグル(a,b)の表示部31はそれぞれ出力された投影用超音波画像101を表示する。
【0047】
以上の処理により、超音波画像処理部16は位置情報ごとに異なる投影用超音波画像101を生成して、それぞれ異なる透過型ゴーグル30へと出力する。これにより、図8に示すように、例えば超音波プローブ20を右側から見る透過型ゴーグル30(a)を通じた視界102(a)と、左側から見る透過型ゴーグル30(b)を通じた視界102(b)とでは、それぞれ視線方向に合わせて左右反転した投影用超音波画像101が表示されることとなる。
【0048】
これにより、複数人数により被検体Pの診断を行った場合であっても、各透過型ゴーグル30には超音波プローブ20の位置に対応して異なる投影用超音波画像101が表示される。そのため、透過型ゴーグル30を装着した各人が被検体Pとスキャン領域の位置関係、及び投影用超音波画像101と直感的に結びつけて診断を行うことができる。これは、共通の超音波画像100を複数人数で観察できるため、例えば手術などの被検体Pに対する処置を複数人で行う場合に特に有用である。
【0049】
(位置センサを用いた位置情報の検出)
以上の実施例においては撮像素子32とマーカ25とを用いて超音波プローブ20の位置情報を検出する動作について述べたが、位置情報の検出動作はこれに限定されるものではない。図9に、位置センサを用いて超音波プローブ20の位置情報を検出するための、超音波診断装置1の構成を示す。
【0050】
図1との構成の違いは、透過型ゴーグル30の撮像素子32の替わりに位置センサ34が設けられたこと、及び超音波プローブ20にマーカ25の替わりに位置センサ24が設けられたことである。位置センサ34及び位置センサ24は、例えば磁場を検出する磁場センサにより構成され、筐体40の図示せぬ位置に設けられた磁場発生装置から発生した磁場を検出することで磁場発生装置と位置センサ34及び位置センサ24との相対的な位置関係、及び磁場発生装置に対する向きを検出する。位置情報処理部13は、位置センサ34と位置センサ24が検出した位置関係及び向きを比較して、位置センサ34と位置センサ24との相対的な位置関係を位置情報として算出する。位置情報処理部13が算出した位置情報は図5で述べた実施例と同様に、投影用超音波画像101を生成するための変形パラメータの設定に用いられる。マーカ25を用いた場合では例えば操作者の腕などがマーカ25を覆ってしまい、撮像素子32がマーカ25を撮影できない場合があるのに対し、マーカ25と撮像素子32の組み合わせの替わりに位置センサ34及び位置センサ24を用いることにより、操作者は任意の体勢で超音波プローブ20の操作を行うことができる。
【0051】
(モニタを用いた投影用超音波画像の表示)
以上の実施例においては透過型ゴーグル30に投影用超音波画像101を表示する動作について述べたが、投影用超音波画像101を表示する部材はこれに限定されるものではない。図10に、投影型ゴーグル30に替えて表示モニタ40を用いて投影用超音波画像101を表示するための、超音波診断装置1の構成を示す。
【0052】
図1との構成の違いは、表示部31と撮像素子32からなる投影用ゴーグル30の替わりに、表示モニタ40と撮像素子32が別々に設けられる点である。図10の構成においても、超音波プローブ20の例えば側面にはマーカ25が付される。
【0053】
撮像素子32は例えば筐体40の側面や、超音波診断装置1を設置した部屋の壁面に取り付けられる。撮像素子32は撮影画像を位置情報処理部13へ出力するとともに、表示モニタ40へも撮影画像を出力する。撮影画像を受信した位置情報処理部13は撮影画像中のマーカ25を検出して、これを超音波画像生成部16へと出力する。超音波画像生成部16は位置情報に基づいて変形パラメータを設定し、変形パラメータに基づいて超音波画像100を変形した投影用超音波画像101を生成し、これを表示モニタ40へ出力する。
【0054】
表示モニタ40は、撮像素子32が撮影した撮影画像と、投影用超音波画像101を重畳して表示する。これにより、表示モニタ40に表示される重畳画像は、撮像素子32から見た被検体P及び超音波プローブ20と、スキャン領域に対応した投影用超音波画像101とが重ねて表示されたものとなる。操作者は表示モニタ40に表示された重畳画像を視認することにより、被検体Pとスキャン領域の位置関係、及び投影用超音波画像101と直感的に結びつけて診断を行うことができる。更に、操作者は透過型ゴーグル30などの装着する部材なしに重畳画像の視認を行うことができる。
【0055】
(効果)
以上に述べた一実施例によれば、超音波診断装置1が投影用超音波画像101を表示することにより、操作者は被検体Pとスキャン領域の位置関係、及び投影用超音波画像101とを直感的に結びつけて診断を行うことができる。
【0056】
また、以上に述べた一実施例によれば、撮像素子32あるいは位置センサ24、34がリアルタイムに超音波プローブ20の位置情報を検出し、検出した位置情報に合わせて投影用超音波画像101の変形パラメータの設定を行う。これにより、操作者が視線方向や超音波プローブ20の位置を変更させた場合であっても、変更に追従して投影用超音波画像101を更新して表示することができる。
【0057】
また、以上に述べた一実施例によれば、透過型ゴーグル毎30に撮像素子32を設けることにより、複数の透過型ゴーグル30を用いて診断を行う場合であっても、それぞれの透過型ゴーグルの位置に合わせた投影用超音波画像101を表示することができる。これにより、複数人で被検体Pとスキャン領域との位置関係、及び投影用超音波画像101の視認を共有して行うことができる。
【0058】
また、以上に述べた一実施例によれば、マーカ25と撮像素子32の組み合わせの替わりに位置センサ34及び位置センサ24を用いることにより、操作者は任意の体勢で超音波プローブ20の操作を行うことができる。
【0059】
また、以上に述べた一実施例によれば、透過型ゴーグル30を廃して表示モニタ40に重畳画像を表示するため、操作者は透過型ゴーグル30などの装着する部材なしに重畳画像の視認を行うことができる。
【0060】
以上に本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
P 被検体
1 超音波診断装置
10 システム制御部
11 入力部
12 記憶部
13 位置情報処理部
16 超音波画像生成部
17 送受信部
18 Bモード処理部
19 ドプラ処理部
20 超音波プローブ
21 超音波振動子
24 位置センサ
25 マーカ
30 透過型ゴーグル
31 表示部
32 撮像素子
34 位置センサ
40 表示モニタ
100 超音波画像
101 投影用超音波画像
102 視界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、
前記エコー信号に基づいて第1の超音波画像を生成する第1の超音波画像生成手段と、
前記スキャン領域の位置情報を検出する位置検出手段と、
前記スキャン領域の位置情報に基づいて、前記第1の超音波画像から第2の超音波画像を生成する第2の超音波画像生成手段と、
前記第2の超音波画像を表示する表示手段と
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第2の超音波画像生成手段は、前記スキャン領域の位置情報に基づいて前記第1の超音波画像の大きさあるいは傾きの少なくともいずれか一方を変化させ、前記変化させた第1の超音波画像を前記スキャン領域に対応する位置へ配置することで、前記第2の超音波画像を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は撮影画像を取得する撮影手段を有し、
前記超音波プローブは前記超音波プローブの少なくとも一側面に設けられた位置認識マーカを有し、
前記位置検出手段は前記撮影画像中に含まれる前記位置認識マーカに基づいて前記スキャン領域の位置情報を検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記表示手段は、頭部に装着するゴーグル型のディスプレイによって構成されるものであって、
前記撮影手段は前記ディスプレイに設けられ、
前記第2の超音波画像生成手段は、前記変化させた第1の超音波画像を前記撮影画像中における前記スキャン領域に対応する位置へ配置することで、前記第2の超音波画像を生成する
ことを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記位置検出手段は、前記表示手段の位置情報を検出する第1の位置センサと、前記超音波プローブの位置情報を検出する第2の位置センサとを有し、
前記位置検出手段は前記表示手段及び前記超音波プローブの位置情報に基づいて前記スキャン領域の位置情報を検出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
コンピュータに、
スキャン領域へ超音波を送信して得られたエコー信号を用いて第1の超音波画像を生成するステップと、
前記スキャン領域の位置情報を検出するステップと、
前記スキャン領域の位置情報に基づいて、前記第1の超音波画像から第2の超音波画像を生成するステップと、
前記第2の超音波画像を表示させるステップと
を実現させることを特徴とする超音波診断プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−170747(P2012−170747A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37596(P2011−37596)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】