説明

超音波診断装置、及び超音波診断プログラム

【課題】 ドプラ波形を用いた診断をより簡便に行う。
【解決手段】 実施例によれば、スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、前記エコー信号からドプラ信号を抽出するドプラ信号抽出手段と、前記ドプラ信号に基づいて、複数心拍に亘る第1のドプラ波形画像を生成する第1のドプラ波形画像生成手段と、前記ドプラ信号に基づいて、前記複数心拍より少ない心拍数に亘る第2のドプラ波形画像を生成する第2のドプラ波形画像生成手段と、前記第1のドプラ波形画像と前記第2のドプラ波形画像とを並べて表示する表示手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波のドプラ波形を用いて診断を行う超音波診断装置、及び超音波診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブに内蔵された超音波振動子から超音波を被検体に対して送信し、被検体内で生じた反射波(以下、単にエコー信号と記載する)を超音波振動子で受信して、エコー信号に基づく超音波画像を生成する装置である。
【0003】
近年、被検体の任意の位置における血流速度を計測する方法として、ドプラスペクトラム法が普及している。このドプラスペクトラム法では、被検体の同一部位に対して一定間隔で複数回の超音波送受波を行い、血球などの移動反射体において反射した超音波反射波からドプラ信号を検出する。そして、このドプラ信号にスペクトル解析を施すことにより、ドプラ波形(ドプラスペクトラムの画像データ)を生成する。このドプラ波形の時間変化から、例えば任意の位置の血流速度の最大流速や平均流速といった血流に関する情報を計測することができる(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−240198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述したような超音波診断装置を用いてドプラ波形に基づいた計測作業を行う場合には、まず被検体に超音波を送受信するプローブを当接させた状態でドプラ信号の収集を行い、リアルタイムで更新されるドプラ波形をモニタ上に表示する。一般的にはこのとき、心臓が5〜6心拍分拍動する期間に収集されたドプラ波形が1画面中に表示される。プローブがリアルタイムでドプラ信号を収集するのに合わせて、画面中のドプラ波形も順次最新の波形に更新される。
【0006】
ここで、ドプラ波形を用いた計測は、通常被験体の拍動が安定した状態で行われる。被検体の拍動の安定は、モニタに表示されるドプラ波形が周期的に変化することによって読み取れる。超音波診断装置の操作者は、モニタに表示されたドプラ波形が周期的に変化していることを確認すると、プローブによるドプラ信号の収集を停止させて、モニタ上のドプラ波形の更新を停止させた(フリーズ表示した)状態で計測を行う。
【0007】
ここで、操作者による計測は、ドプラ波形上にマーカなどを配置してマーカ間の距離を測定することにより行われる。ここで、モニタ上には5〜6心拍などの多数の心拍を1画面中に表示させているために、1心拍あたりのドプラ波形の表示領域は小さいものとなってしまう。モニタ上に小さく表示されたドプラ波形上にマーカを配置しなければならないため、波形の細部の観察が困難であり、正しい位置にマーカを配置しばらつきの少ない計測を行うことは操作者にとって困難であった。一方モニタ上に5心拍などの多数の心拍が表示された状態から、画面を拡大表示する操作を行って1心拍を表示することも考えられるが、計測を行うたびに拡大表示する操作を行うことは操作者にとって操作負担が大きく、また複数心拍のうちどの心拍について表示を行っているか把握することが困難であるという課題もある。
【0008】
そこで本願においては、ドプラ波形を用いた計測をより簡便に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため実施形態の超音波診断装置においては、スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、前記エコー信号からドプラ信号を抽出するドプラ信号抽出手段と、前記ドプラ信号に基づいて、複数心拍に亘る第1のドプラ波形画像を生成する第1のドプラ波形画像生成手段と、前記ドプラ信号に基づいて、前記複数心拍より少ない心拍数に亘る第2のドプラ波形画像を生成する第2のドプラ波形画像生成手段と、前記第1のドプラ波形画像と前記第2のドプラ波形画像とを並べて表示する表示手段とを有する。
【0010】
また、上記課題を解決するため実施形態の超音波診断プログラムは、コンピュータに、ドプラ信号を記憶する手段と、前記ドプラ信号に基づいて、複数心拍に亘る第1のドプラ波形画像を生成する手段と、前記ドプラ信号に基づいて、前記複数心拍より少ない心拍数に亘る第2のドプラ波形画像を生成する手段と、前記第1のドプラ波形画像と前記第2のドプラ波形画像とを並べて表示する手段とを機能させることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に係る超音波診断装置の内部構成を示すブロック図。
【図2】実施例に係るドプラ波形及び超音波画像の表示例を示す図。
【図3】実施例に係るドプラ波形の処理に関連する各構成要素についての、機能的な接続態様を示したブロック図。
【図4】実施例に係るリングバッファの構成について示す図。
【図5】実施例に係る拡大ドプラ波形を表示する時間領域の表示例を示す図。
【図6】実施例に係る平均ドプラ波形を拡大ドプラ波形と重畳表示した際の表示例を示す図。
【図7】実施例に係る心拍の安定を示す情報の表示例を示す図。
【図8】実施例に係る、拡大ドプラ波形を表示する処理に関連する処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(超音波診断装置1の構成)
以下、本開示の実施例について図面を参照して説明する。図1は、各実施例に係る超音波診断装置1の構成を示したブロック図である。超音波診断装置1は、システム制御部10、入力部21、表示部23、超音波プローブ30、及び生体信号検出ユニット40を組み合わせることにより構成される。なお、本発明における超音波診断装置1の構成はこれに限られるものではなく、適宣構成要素を追加しても構わないし、超音波診断装置1の構成要素の幾つかを省略して、超音波診断装置1の外部に接続した装置が省略された構成要素の役割を果たすものであっても構わない。例えば後述するドプラ波形処理部17などのドプラ波形の生成や処理に用いる構成要素を超音波診断装置1の外部接続した外部処理装置に行われる構成としても構わない。あるいは本実施例に述べるドプラ波形の拡大表示機能やドプラ波形処理機能を実行するためのプログラムを任意のコンピュータにインストールして実行することで、コンピュータを実質的に超音波診断装置1として動作させるものであっても構わない。
【0013】
超音波プローブ30はシステム制御部10に接続される、超音波を送受波するための部材である。超音波プローブ30は超音波振動子31を内蔵し、送受信部13から出力された駆動信号に基づいて超音波振動子31を駆動する。
【0014】
超音波振動子31は、送受信部13を介して入力された駆動信号に基づいて超音波を発生し、また被検体から反射された超音波を受信して電気信号へと変換する部材である。超音波振動子31は超音波を受信することにより生じた電気信号(以下、単にエコー信号と記載する)を送受信部13へと出力する。なお、本実施例における超音波振動子31は、リニア形、コンベックス形、セクタ形などの2次元領域をスキャンしうる種々の形状によって構成されていても構わない。
【0015】
システム制御部10は、記憶部12、超音波画像生成部15、ドプラ波形処理部17、Bモード処理部18、ドプラ処理部19から構成される。システム制御部10はシステム制御部10に接続された各構成要素へ制御命令を出力し、超音波診断装置1を統括的に制御する。
【0016】
送受信部13は、超音波プローブ30が受信したエコー信号を処理するアンプ回路、A/D変換器、加算器などを備える。アンプ回路は、超音波プローブ30が受信したエコー信号を増幅し、A/D変換器へ出力する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号の受信指向性を決定するために必要な遅延時間をエコー信号に与え、加算器へと出力する。加算器は遅延時間を与えられたエコー信号を加算することで、超音波を送信するスキャンラインに対応したエコー信号を得る。送受信部21はスキャンラインに対応したエコー信号をBモード処理部18あるいはドプラ処理部19へと出力する。また送受信部13は、超音波振動子31を駆動し超音波を送信するための駆動信号を超音波超音波プローブ30へと出力する。
【0017】
Bモード処理部18は、送受信部13が出力したエコー信号の振幅強度に応じて変化するBモード信号を生成する。Bモード処理部18は生成したBモード信号を記憶部12へ出力する。
【0018】
ドプラ処理部19は、エコー信号に対し直交位相検波処理を施すことにより、エコー信号の周波数遷移を示すドプラ信号を生成する。このドプラ信号の収集位置は、超音波画像中に表示したサンプルゲートの位置を調節することによって設定される。図2にサンプルゲートの表示例を示す。超音波診断装置1の操作者は入力部21を操作して、超音波画像100中のドプラ信号を収集した領域にサンプルゲート102を位置させる。送受信部13はサンプルゲート102を通る走査線101に対して超音波の送信を行い、ドプラ処理部19へと出力する。ドプラ処理部19はドプラ信号を生成すると、これを記憶部12へ出力する。
【0019】
超音波画像生成部15は、Bモード処理部18から出力されたBモード信号、あるいはドプラ処理部19から出力されたドプラ信号を記憶部12から読み出して、超音波画像を生成する。超音波画像生成部15がBモード信号を用いて超音波画像(以下、単にBモード画像と記載する)を生成する場合は、超音波画像生成部15はBモード信号の振幅値から算出された画素値を超音波の送受信方向に対応した2次元平面へマッピングすることでBモード画像を生成する。一方超音波画像生成部15がドプラ信号に基づいて超音波画像(以下、単にドプラ画像と記載する)を生成する場合には、超音波画像生成部15はドプラ処理部19から受けたドプラ信号にフィルタ処理を施すことにより、被検体中の移動していない組織から得られたクラッタ成分を除去し、血流によって得られたドプラ信号のみを抽出する。そして、抽出したドプラ信号に自己相関処理を施して、血流の平均流速値や分散値を色情報に変換したカラードプラ信号を得る。そして、超音波画像生成部15はこのカラードプラ信号を超音波の送受信方向に対応した2次元平面へマッピングすることで、ドプラ画像を生成する。
【0020】
ドプラ波形処理部17は、ドプラ処理部19から出力された所定の期間中のドプラ信号を記憶部12から読み出して、ドプラ信号の時間的な変化を示すドプラ波形を生成する。このドプラ波形は、縦軸を流速として、横軸を時間軸とした2次元波形である。ドプラ波形処理部17は記憶部12からドプラ信号を循環的に読み出してドプラ波形の生成処理を行う。このドプラ波形の生成処理については後に詳しく述べる。
【0021】
ドプラ波形処理部17は、所定の期間に亘るドプラ信号の変化を標準ドプラ波形として生成し表示部23へと出力する。標準ドプラ波形には、例えば被検体の約6心拍分のドプラ信号の変化が収まるような、比較的長い期間のドプラ信号の変化が表される。ドプラ波形処理部17は標準ドプラ波形を生成する一方で、標準ドプラ波形から1心拍分のドプラ波形の変化を切り出した拡大ドプラ波形を生成して表示部23へと出力する。なお、これ以降標準ドプラ波形と拡大ドプラ波形とを総称する場合には、単にドプラ波形とだけ記載する。またドプラ波形処理部17は、ドプラ波形の形状をより分かりやすく表示するために、各時点におけるドプラ信号の最大値を抽出して最大値波形(以下、オートトレース波形と記載する)を出力するオートトレース機能を備える。表示部23はドプラ波形上に、オートトレース波形を示す曲線211を表示する。
【0022】
またドプラ波形処理部17は、ドプラ処理部19から出力されたドプラ信号と後述する生体信号検出ユニット40から出力される生体信号とを組み合わせて、ドプラ信号に対する計測処理を行う。具体的には、ドプラ波形処理部17は生体信号をもとにドプラ波形中の1心拍の期間、拡張期の時相、収縮期の時相を設定し、1心拍期間中のドプラ信号を用いて計測処理を行い、ドプラ計測値として最高流速値(Vmax)、平均流速値(Vmean)、抵抗指数(RI値)、拍動指数(PI値)を算出する。なお、最高流速値(Vmax)は、1心拍期間中に得られた最大のドプラ信号値を示す。平均流速値(Vmean)は、1心拍期間中の平均のドプラ信号値を示す。抵抗指数(RI値)は、(収縮期流速−拡張期流速)/収縮期流速を計算することにより求められる。拍動指数(PI値)は、(収縮期流速−拡張期流速)/平均流速を計算することにより求められる。なお、ドプラ波形処理部17が算出するドプラ計測値の種類は、ここに挙げたものに限定されない。
【0023】
またドプラ波形処理部17は、過去の心拍におけるドプラ計測値と拡大ドプラ波形210におけるドプラ計測値とを比較して、最新の心拍が安定しているか否かを判断する安定検出機能を備える。心拍の安定検出方法については後に詳しく述べる。
【0024】
記憶部12は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やフラッシュメモリ、及びHDD(Hard Disk Drive)などから構成される記憶媒体である。記憶部12は超音波画像生成部16が生成した超音波画像や、あるいはドプラ処理部19が出力したドプラ信号、あるいはドプラ波形処理部17が出力したドプラ計測値などを記憶する。また、記憶部12は過去の検査データとして、過去に測定して得た被検体のドプラ波形のデータやドプラ計測値、あるいは標準の検査データとして、健常者のドプラ波形のデータやドプラ計測値を記憶する。
【0025】
入力部21は、例えば機械的なボタン、ダイヤル、トラックボール、ジョイスティック、スライダやホイールなどの種々の操作デバイスを用いて構成され、オペレータの入力操作を受け付けて、入力操作を電気信号に変換してシステム制御部10へ出力する部材である。入力部21は受け付けた入力操作に応じて、例えば送受信部13にスキャンの開始・停止を指示する指示信号や、表示部23に表示される標準ドプラ波形と拡大ドプラ波形の更新を停止させて計測モードへ移行するフリーズ信号をシステム制御部10へ出力する。
【0026】
表示部23は、例えばLCD(Lucid Crystal Display)ディスプレイや有機EL(Electro luminescence)ディスプレイ、あるいはブラウン管ディスプレイなどの任意のディスプレイにより構成される。表示部23は、参照画像やライブ像を表示する。あるいは、送受信部13がスキャンを行う際のスキャンパラメータや、超音波画像生成部15がライブ像を生成する際の画像化パラメータ、参照画像生成部13が参照ボリュームデータから参照画像を生成する際の画像化パラメータ、種々のメッセージなどを表示する。
【0027】
生体信号検出ユニット40は、被検体に取り付けられ、被検体から定期的に発せられる生体信号を電気信号に変換して制御部10へ出力する部材である。ドプラ波形処理部17は、生体信号検出ユニット40から出力される電気信号に基づいて被検体の心時相を検出して、ドプラ波形の生成や計測処理を行う。例えば生体信号検出ユニット40は心電計によって構成され、被検体に取り付けた電極から心拍に同期して発せられる電気信号を検出して、ECG(心電波形)として制御部10へ出力する。また例えば生体信号検出ユニット40は心音計によって構成され、被検体に取り付けた小型のスピーカから心拍に同期して発せられる心音信号を検出して、PCG(心音波形)として制御部10へ出力する。出力された生体信号は、図2中の生体信号波形212に示されるようにドプラ波形と並べて表示される。以降の実施例では、例として生体信号検出ユニット40が心電計によって構成されるものとして述べる。なお、ドプラ波形処理部17がドプラ信号の変化に基づいて心時相を検出する場合には、生体信号検出ユニット40の構成及び生体信号波形212を省略して超音波診断装置1を構成しても構わない。
【0028】
(拡大ドプラ波形の表示処理)
先に述べた各構成要素に基づいて、超音波診断装置1は標準ドプラ波形200及び拡大ドプラ波形210の生成及び表示を行う。図2は、表示部23に表示されるBモード画像100、標準ドプラ波形200、及び拡大ドプラ波形210の表示例を示した図である。例えば表示部23の右上の領域には、サンプルゲート102を設定するためにBモード画像100が表示される。操作者は入力部21を用いてBモード画像100に表示されたサンプルゲート102の表示位置を変化させて、ドプラ信号を収集するための領域を設定する。Bモード画像100上には、サンプルゲート102と合わせてサンプルゲート102を通過する走査線101の位置が表示される。
【0029】
例えばBモード画像100の下には、ドプラ波形処理部17が生成した標準ドプラ波形200が表示される。標準ドプラ波形200は先述したように、例えば被検体の約6心拍分を表示するような、長い時間領域のドプラ信号の変化が表示される。ここで、標準ドプラ波形200と並べて心電波形を表示しても構わない。また、標準ドプラ波形200上には、現在の時相の位置を示すムービングバー201が表示される。また、標準ドプラ波形200上には、拡大ドプラ波形210が対応する領域を示す枠線202が表示される。
【0030】
例えばBモード画像100の左には、ドプラ波形処理部17が生成した拡大ドプラ波形210が表示される。拡大ドプラ波形210は、標準ドプラ波形200のうち最新の1心拍分を拡大して表示した波形である。拡大ドプラ波形210上には、オートトレース波形211が重畳して表示される。なお、標準ドプラ波形200と並べて心電波形を表示している場合には、拡大ドプラ波形210と並べて心電波形を表示しても構わないし、更に心電波形上に心電波形の平均値を示す心電オートトレース波形212を重畳して表示しても構わない。また、表示部23は、例えば拡大ドプラ波形210の心拍に関するドプラ計測値を計測値表示領域220に表示する。
【0031】
ここで図2に示されるように、拡大ドプラ波形210は、1心拍分あたりの表示領域が標準ドプラ波形200よりも大きくなるように大きな表示領域に表示される。これにより、操作者は被検体の最新の心拍がどのように変化しているかを大きな表示領域で視認し、心拍が安定しているか否かをより簡便に判断することができる。また、ドプラ波形の表示をフリーズし、ドプラ波形上に手動でマーカを配置する計測操作を行う際にも、大きく表示された拡大ドプラ波形210を用いてより正確にマーカを配置することができる。また、大きな表示領域でドプラ波形を視認する際に操作者の拡大操作などが不要であるため、操作者の操作負担を軽減することができる。
【0032】
なお、図2において示した各画像やドプラ波形の表示位置あるいは表示方法は単なる例であり、表示位置あるいは表示方法はここに挙げたものに限定されない。例えばBモード画像100の表示を省略して標準ドプラ波形200と拡大ドプラ波形210を並べて表示しても構わないし、標準ドプラ波形200の表示を省略してBモード画像100と拡大ドプラ波形210とを並べて表示しても構わない。あるいは、各画像やドプラ波形の表示位置を並べ替えても構わない。
【0033】
(リングバッファを用いたドプラ波形の生成処理)
図3は、ドプラ波形の処理に関連する各構成要素についての、機能的な接続態様を示したブロック図である。ここで、記憶部12は複数の記憶領域を繋げて構成したリングバッファ121によって構成される。ここでは、リングバッファ12を用いたドプラ波形の生成処理及びドプラ計測値の算出処理について述べる。
【0034】
まずドプラ処理部19は、送受信部13から出力されたエコー信号にドプラ処理を施し、ドプラ信号として記憶部12へと出力する。リングバッファ121は、ドプラ信号が出力された時刻に合わせて記憶領域を順に変化させながら記憶を行う。リングバッファ121は、例えば時刻t0〜t1の期間中に出力されたドプラ信号を領域0に、時刻t1〜t2の期間中に出力されたドプラ信号を領域1に記憶する。リングバッファ12は時刻が進むのに合わせて記憶領域を変化させながらドプラ信号の記憶を続け、tn−1〜tnの期間中に出力された領域を最後の領域である領域nに記憶すると、次のtn〜tn+1の期間中に出力されたドプラ信号を、最初の領域0へ上書きする。更に次のtn+1〜tn+2の期間中に出力されたドプラ信号は、次の領域1へ上書きされる。このように、リングバッファ12はドプラ信号の記憶領域を時刻の変化と共に変化させながら記憶を行い、すべての記憶領域に記憶を行うと最初の記憶領域から順にドプラ信号を上書きしてゆく。
【0035】
一方ドプラ波形処理部17が標準ドプラ波形200を生成する場合には、記憶領域を順に変化させながらドプラ信号を読み出して、波形生成処理を行う。まずドプラ波形処理部17は領域0に記憶されたドプラ信号を読み出してこれを画像情報へ変換する。次にドプラ波形処理部17は領域1に記憶されたドプラ信号を読み出して画像情報へ変換し、これを領域0における画像情報に付け加える。ドプラ波形処理部17は記憶領域を変化させながら画像情報の変換処理を続け、m個(ここで、mはm<nを満たす数)のドプラ信号による画像情報を繋ぎ合わせることで、これを標準ドプラ波形200として表示部23へ出力する。そして、ドプラ信号を読み出す領域が最後の領域である領域nに到達すると、次は領域0に戻ってドプラ信号の読み出し及び画像情報の変換処理を続ける。ドプラ処理部19によるリングバッファ12への書き込み及び、ドプラ波形処理部17によるドプラ信号の読み出しが循環的に行われることによって、ドプラ処理部19によるドプラ信号の書き込みとドプラ波形処理部17による読み出しと画像情報の生成処理がリアルタイムで行われる。
【0036】
なお、リングバッファ12の各領域へはドプラ信号と合わせて生体信号検出ユニット40から検出された時相情報が合わせて記憶される。図4は、各領域に書き込まれるドプラ信号及び時相情報の様子を模式的に表した図である。生体信号検出ユニット40は、心電波形上で特徴的な波形であるR波を検出すると、これをR波タグデータとしてドプラ処理部19へと出力する。ドプラ処理部19はR波タグデータを受け取ると、ドプラ信号と合わせてこれをリングバッファ12へと出力する。図4に示すように、リングバッファ12はドプラ信号を時系列順に記憶するとともに、R波タグデータが得られた時刻のドプラ信号と同じ領域にR波タグデータを記憶する。
【0037】
ドプラ波形処理部17は、リングバッファ12に記憶されたR波タグデータを利用して、拡大ドプラ波形210中のドプラ計測値を算出するためのドプラ信号読み出し領域を設定する。即ち、ドプラ波形処理部17はR波タグデータが記憶された領域からp個の領域分離れた領域を始点として、約1心拍分の領域数であるq個(ここで、qはq<mを満たす数)のドプラ信号を抽出し、このq個のドプラ信号を用いてドプラ計測値を算出する。図4を用いて具体的に説明すると、ドプラ波形処理部17は図4に示すように、R波タグデータが得られた領域から2領域分離れた領域を始点とした、X(k)に示す6個分のドプラ信号を抽出する。そして、ドプラ波形処理部17は抽出した6個のドプラ信号を基にドプラ計測値を算出する。リングバッファ12上の各領域のドプラ信号はドプラ信号の収集に合わせて次々と上書きされてゆくため、ドプラ波形処理部17は上書きされるドプラ信号に合わせてドプラ信号読み出し領域を変化させながらドプラ計測値の算出を行う。過去の時点において算出されたドプラ計測値(図4中でX(k−1)で示される領域から得られたドプラ計測値)は、過去のドプラ計測値として記憶部12に記憶される。
【0038】
図5(a)は、拡大ドプラ波形210を表示する時間領域を標準ドプラ波形200上に示した図である。心電波形上でR波が得られた時刻をTecgとすると、ドプラ波形処理部17はTecgから得られた時刻からdToffcetだけ離れた時間領域(即ち、リングバッファ12上でp個分のドプラ信号を記憶する時間領域)を始点として、dTcutの時間領域(即ち、リングバッファ12上でq個分のドプラ信号を記憶する時間領域)内にあるドプラ信号を抽出する。
【0039】
なお、ドプラ波形処理部17はR波タグデータを用いる代わりに、オートトレース波形を用いてドプラ計測値を算出するためのドプラ信号読み出し領域を設定しても構わない。この場合、リングバッファ12上にはオートトレース波形で最大値を検出した時相と対応する領域に、最大値タグデータが書き込まれる。最大値タグデータが得られた時刻をTmaxとすると、ドプラ波形処理部17はTmaxが得られた時刻からdToffcetだけ離れた時間領域を始点として、dTcutの時間領域内にあるドプラ信号を抽出する。
【0040】
dToffcet及びdTcutの長さは、例えば入力部21を用いて操作者が任意に設定するものであっても構わないし、例えば心電波形やオートトレース波形から検出された心拍の時間間隔に基づいて制御部10が設定するものであっても構わない。
【0041】
(拡大ドプラ波形の平均化機能)
ドプラ波形処理部17は先述した拡大ドプラ波形210を表示する際に、最新の一心拍を拡大して表示する表示モードの他に、過去の数心拍を平均化した平均ドプラ波形211を拡大ドプラ波形210の表示領域に重畳して表示する機能を備える。例えば入力部21の操作によって平均ドプラ波形211を表示することが指示される。すると、ドプラ波形処理部17は過去の例えば5心拍に亘るドプラデータを平均化して、平均ドプラ波形211を生成する。具体的には、ドプラ波形処理部17は平均ドプラ波形211を以下の数式(数1)によって生成する。
【0042】
(数1) Y(N) =SUM(aiX(N−i)) i=0 to N
上述の(数1)において、SUM()は括弧内の合計値を、Y(N)は平均ドプラ波形211のドプラ値を、Nは平均化を行う心拍の数を、X(i)は各心拍におけるドプラ値を、aiは平均化演算を行う際の各心拍に対する重みづけ係数をそれぞれ示している。例えば5心拍分のドプラデータを重み付けなしで平均化する際には、N=5、a1〜a5=1として(数1)の演算を行えばよい。平均化を行う心拍の数や重みづけ係数はここにあげたものに限られず、例えば2心拍について平均化を行っても構わないし、あるいは重みづけ係数を最新の心拍に近いドプラ波形ほど大きくなるように設定して、平均ドプラ波形211の表示がより最新の心拍の変化を反映するようにしても構わない。
【0043】
図6に、平均ドプラ波形211を拡大ドプラ波形210と重畳表示した際の画面表示例を示す。図2に示した拡大ドプラ波形210の表示領域内に、平均ドプラ波形211が点線で重畳表示される。ここで、平均ドプラ波形211の表示はオートトレース波形として示しているが、単にオートトレース処理を行う前のドプラ値を平均化した波形を表示するものであっても構わない。この場合、拡大ドプラ波形210と平均ドプラ波形211の表示領域が重なるために、表示部23は拡大ドプラ波形210と平均ドプラ波形211の表示色を変化させて、両者を区別して表示する。また、平均ドプラ波形211のオートトレース波形を表示する際には、過去の心拍のオートトレースによって得られた値をX(n)として(数1)に述べた演算を行っても構わない。これにより、より少ない演算数で平均ドプラ波形211のオートトレース波形を算出することができる。また、ドプラ波形だけでなく心電波形を平均化した平均心電波形を更に表示しても構わない。
【0044】
また、図2に示したときと同様に、Bモード画像100の下には標準ドプラ波形200が表示される。標準ドプラ波形200内には、拡大ドプラ波形210および平均ドプラ波形211が対応する領域を示す枠線202が表示される。
【0045】
この平均ドプラ波形211を表示する機能により、操作者は最新の心拍の様子を表す拡大ドプラ波形210と、過去の心拍変化の概要を表す平均ドプラ波形211とを同じ表示領域に重畳表示して、両者の違いを見比べながら診断を行うことができる。
【0046】
(ドプラ波形の安定検出処理)
ドプラ波形処理部17は先述した拡大ドプラ波形210を表示する機能の他に、被検体の心拍が安定しているか否かを検出する安定検出機能を更に備える。安定検出機能は、例えば被検体の最新の心拍におけるドプラ計測値と、過去の数心拍において得られたドプラ計測値の平均値とを比較することによって、最新の心拍が過去の心拍に比べて大きく変化していないか、即ち心拍が安定しているかを検出する機能である。
【0047】
例えば入力部21の操作によってドプラ波形処理部17の安定検出機能を動作させるよう指示を受けると、ドプラ波形処理部17は過去の数心拍に亘るドプラ計測値と、最新の心拍におけるドプラ計測値との差を比較する。このとき比較に用いるドプラ計測値は、先にドプラ計測値の例として挙げた最高流速値(Vmax)、平均流速値(Vmean)、抵抗指数(RI値)、拍動指数(PI値)のいずれかを用いる。いずれを用いるかは例えば入力部21の操作によって定められるものであっても構わないし、複数の計測値を用いて比較を行っても構わない。
【0048】
ドプラ波形処理部17は、過去数心拍のドプラ計測値と最新の1心拍におけるドプラ計測値との標準偏差を比較し、偏差の値が予め定めた閾値以下の値に収まった場合には心拍が安定しているものと判断する。なお、心拍の安定を判断する閾値はここに挙げた値の他に、任意に設定されるものであって構わない。例えば過去数心拍のドプラ計測値の平均値と、最新の1心拍におけるドプラ計測値との値の差を求め、この差がドプラ計測値の平均値に対して20%以下であった場合に心拍の安定を判断しても構わない。
【0049】
また、ドプラ波形処理部17はリアルタイムでドプラ値を取得して、最新の1心拍のドプラ計測値を算出するたびに上述したドプラ計測値の比較を行う。そして、最新の1心拍のドプラ計測値が安定していると連続で5回判断されたときに、現在の心拍が安定していると判断する。なお、心拍の安定を判断する回数は5回に限られず、入力部21の操作によって任意の値に変更するものであっても構わない。
【0050】
ドプラ波形処理部17は現在の心拍が安定していると判断すると、表示部23に心拍の安定を示す情報を表示させる。図7に心拍の安定を示す情報の表示例を示す。図7(a)は心拍が安定していない時の拡大ドプラ波形210の表示領域を、図7(b)は心拍が安定した時の拡大ドプラ波形210の表示領域をそれぞれ示している。ドプラ波形処理部17は表示部23を用いて、図7(b)に示すように計測値表示ウインドウ220の表示を白黒反転させ、また拡大ドプラ波形210の表示領域下部に心拍が安定したことを示すメッセージを表示させる。更に、拡大ドプラ波形210の表示領域を示す枠線を例えば太くしたり、色を変えたりして強調表示する。なお、心拍が安定したことを示す方法はここに挙げた動作に限られず、例えばオートトレース波形の色を変化させたり、あるいは音声やビープ音などを発することで心拍の安定を操作者に示しても構わない。
【0051】
この動作によれば、操作者は過去の心拍におけるドプラ計測値と最新の心拍におけるドプラ計測値の比較に基づいて、被検体の心拍の安定を検出することができる。これにより、波形の目視に基づいて心拍の安定を判断する従来の手法に比べて、より定量的な診断を行うことが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態においては平均ドプラ計測値と最新の心拍におけるドプラ計測値とを比較すると述べたが、動作はこれに限られるものではない。例えばドプラ計測値の代わりに、過去の心拍におけるドプラ値と最新の心拍におけるドプラ値とを比較して心拍の安定を検出しても構わないし、あるいはドプラ計測値の平均化を行なわず、過去の心拍それぞれで得られたドプラ計測値と最新の心拍のドプラ計測値とをそれぞれ比較しても構わない。
【0053】
またあるいは、ドプラ波形処理部17が現在の波形が安定していることを検出すると、自動的に超音波プローブ30による超音波の送受信を停止し、ドプラ波形の更新を停止するフリーズ動作を行い、更に標準ドプラ波形200や拡大ドプラ波形210中にマーカを配置して計測値を得る計測モードへの移行を自動的に行っても構わない。これにより、操作者は心拍が安定した時に逐一フリーズ操作と計測モードへの移行動作を行う必要がなく、操作者の操作負担を軽減した迅速な診断を行うことができる。
【0054】
またあるいは、記憶部12に過去の検査で得られた被検体のドプラ計測値や、あるいは検査を行う被検体と同一の年代、性別の健常者の被検体を検査して得られたドプラ計測値を比較対象として記憶しておく。ドプラ波形処理部17は、記憶部12に記憶されたドプラ計測値と、最新のドプラ計測値とを比較して現在の心拍が異常値であるか否かを検出しても構わない。先述した実施例においては心拍が安定した場合に心拍が安定したことを示すメッセージを表示させていたが、例えば健常者のドプラ計測値との比較を行う場合、健常者のドプラ計測値と最新のドプラ計測値との差が大きい場合には現在の心拍が異常な値を示していることを示す警告メッセージを表示させても構わない。このとき、過去のドプラ計測値や健常者のドプラ計測値は記憶部12に記憶される場合に限られず、例えば超音波診断装置1の外部に接続された記憶装置から読みだすものであっても構わないし、あるいは超音波診断装置1にネットワーク接続された他の端末からドプラ計測値を取得するものであっても構わない。
【0055】
(ドプラ波形表示処理の流れ)
図8は、超音波診断装置1が拡大ドプラ波形210を表示した上で、心拍安定検出機能に基づいて安定を検出して計測モードへ移行する際の、一連の処理の流れを示したフローチャートである。以下、図8に沿って処理の流れについて述べる。
【0056】
まず、超音波診断装置1の使用者がドプラ波形の計測を開始する(ステップ1000)と、超音波プローブ30は超音波の送受信を行う。そして、ドプラ処理部19が出力したドプラデータに基づいて、ドプラ波形処理部17が標準ドプラ波形200を生成する(ステップ1001)。ドプラ波形処理部17は標準ドプラ波形200を生成すると、ドプラ値を用いてオートトレース処理を行う(ステップ1002)。ドプラ波形処理部17は、生成した標準ドプラ波形200及びオートトレース波形を表示部23へ表示させる。
【0057】
ドプラ波形処理部17が標準ドプラ波形200を生成しオートトレース処理を終えると、ドプラ波形処理部17は最新の1心拍分のドプラデータを記憶部12から抽出し、抽出したドプラデータから拡大ドプラ波形210を生成する(ステップ1003)。ドプラ波形処理部17は、生成した拡大ドプラ波形210を表示部23へ表示させる。更に、ドプラ波形処理部17は抽出したドプラデータに基づいて、最新の1心拍に関するドプラ計測値を算出する(ステップ1004)。ドプラ波形処理部17は、算出したドプラ計測値を心拍毎に区別して記憶部12に記憶する。ここまでの動作により、表示部23には標準ドプラ波形200とは別に、最新の1心拍を表す拡大ドプラ波形210と拡大ドプラ波形210のドプラ計測値が表示部23中に表示される。
【0058】
次に、ドプラ波形処理部17は記憶部12に記憶された過去の心拍におけるドプラ計測値と、最新の1心拍におけるドプラ計測値との差を比較する。そして、ドプラ計測値同士の差異が所定の閾値以下に収まっているか否かを判断する。ドプラ波形処理部17は差異が連続でN回以上閾値以下に収まっていると判断すると(ステップ1005のYes)、拡大ドプラ波形210の表示領域内に心拍が安定したことを示すメッセージを表示させる(ステップ1006)。一方ドプラ波形処理部17が、ドプラ計測値同士の差異が連続して閾値以下に収まっている回数がN回以下であると判断すると(ステップ1005のNo)、ドプラ波形処理部17はステップ1001に戻ってドプラ波形の生成を繰り返す。
【0059】
表示部23がステップ1006にて心拍が安定したことを示すメッセージを表示させると、ドプラ波形処理部17は記憶部12に記憶された過去の被検体のドプラ計測値、あるいは健常者のドプラ計測値と最新の1心拍におけるドプラ計測値との差異を比較する(ステップ1007)。そして、ドプラ波形処理部17は差異が所定の閾値以上であると判断すると(ステップ1007のNo)、拡大ドプラ波形210の表示領域に現在の心拍におけるドプラ計測値が異常値であることを示すメッセージを表示させる(ステップ1008)。
【0060】
ドプラ波形処理部17が、差異が所定の閾値以下であると判断する(ステップ1007のYes)か、あるいはドプラ計測値が異常値であることを示すメッセージを表示させる(ステップ1008)と、超音波プローブ30は超音波の送受信を停止する。更に、ドプラ波形処理部17は標準ドプラ波形200及び拡大ドプラ波形210の生成を停止し、表示部23に表示させる標準ドプラ波形200及び拡大ドプラ波形210を停止させる、いわゆるフリーズ動作を行う(ステップ1009)。ドプラ波形処理部17がフリーズ動作を行うと、制御部10は表示部23にマーカを表示させて、入力部21の操作によってマーカを移動させてマーカの位置に基づく計測値を表示させる計測モードへと移行して(ステップ1010)、処理を終了する(ステップ1011)。
【0061】
なお、図8に述べた処理ではステップ1007に述べた過去のドプラ計測値あるいは健常者のドプラ計測値との比較を心拍安定後に行うものとして述べた。しかし、動作はこれに限られるものではなく、例えばステップ1004で最新の1心拍の計測値を算出するたびごとに過去のドプラ計測値あるいは健常者のドプラ計測値との比較を行っても構わない。
【0062】
以上に述べた処理により、超音波診断装置1は1心拍分あたりの表示領域を標準ドプラ波形200よりも大きくした拡大ドプラ波形210を表示する。これにより、操作者は被検体の最新の心拍がどのように変化しているかを大きな表示領域で視認し、心拍が安定しているか否かをより簡便に判断することができる。また、ドプラ波形の表示をフリーズし、ドプラ波形上に手動でマーカを配置する計測操作を行う際にも、大きく表示された拡大ドプラ波形210を用いてより正確にマーカを配置することができる。また、大きな表示領域でドプラ波形を視認する際に操作者の拡大操作などが不要であるため、操作者の操作負担を軽減することができる。
【0063】
また以上に述べた処理により、超音波診断装置1は拡大ドプラ波形210に重畳して、過去の心拍におけるドプラ波形を平均化した平均ドプラ波形211を表示する。これにより、操作者は拡大ドプラ波形210と平均ドプラ波形211とを比較して、現在の心拍が過去の心拍と比較して安定しているかを確認し、また心拍のどの時相上で差異が大きいかを容易に確認することができる。
【0064】
また以上に述べた処理により、超音波診断装置1は現在の心拍が安定しているか否かを自動で検出し、検出結果を表示部23に表示する。心拍の安定を機械的に検出することができるため、操作者の標準ドプラ波形200の目視による安定検出に比べてより定量的な判断を行うことができる。また、操作者は標準ドプラ波形200を観察し続ける必要がないため、診断に係る操作者の負担をより軽減することができる。
【0065】
また以上に述べた処理により、超音波診断装置1は被検体の過去のドプラ計測値や健常者のドプラ計測値を比較して、現在の心拍が異常であるか否かを自動で検出し、検出結果を表示部23に表示する。心拍の異常を機械的に検出することができ、操作者が心拍の異常を判断し損ねる事態を防止することができる。
【0066】
また以上に述べた処理により、超音波診断装置1は心拍が安定したことを検出すると、フリーズ操作及び計測モードへの移行を自動的に行う。これにより、心拍が安定した際に素早く計測モードへ移行することができる。更に、フリーズ操作及び計測モードへの移行操作が不要になるために、操作者の操作負担をより軽減することができる。
【0067】
なお、本実施例における超音波診断装置1の構成はこれに限定されず、適宣構成や動作を省略し、あるいは追加しても構わない。例えば図2の画面表示例では標準ドプラ波形200と拡大ドプラ波形210とを並べて表示するものとして述べたが、標準ドプラ波形200の表示を省略しても構わない。あるいはドプラ波形処理部17が心拍の安定を検出したときに標準ドプラ波形200の表示を消去し、代わりに拡大ドプラ波形210を表示させる動作を行なっても構わない。
【0068】
以上に本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1 超音波診断装置
10 システム制御部
12 記憶部
13 送受信部
15 超音波画像生成部
17 ドプラ波形処理部
18 Bモード処理部
19 ドプラ処理部
21 入力部
23 表示部
30 超音波プローブ
31 超音波振動子
40 生体信号検出ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャン領域へ超音波を送信し、その反射波を受信することによりエコー信号を得る超音波プローブと、
前記エコー信号からドプラ信号を抽出するドプラ信号抽出手段と、
前記ドプラ信号に基づいて、複数心拍に亘る第1のドプラ波形画像を生成する第1のドプラ波形画像生成手段と、
前記ドプラ信号に基づいて、前記複数心拍より少ない心拍数に亘る第2のドプラ波形画像を生成する第2のドプラ波形画像生成手段と、
前記第1のドプラ波形画像と前記第2のドプラ波形画像とを並べて表示する表示手段と
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記ドプラ信号に基づいて、前記ドプラ信号における心拍毎のばらつきを示す指標値を検出する安定検出手段とを更に備え、
前記表示手段は、前記ばらつきを示す指標値に基づいて、前記ばらつきに関する情報を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記安定検出手段が検出した指標値に基づいて、
前記超音波プローブによる前記超音波の送信を停止し、
前記第2のドプラ波形画像を用いて計測を行う計測モードへ移行する計測部と
を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
予め取得した基準ドプラ信号を記憶する記憶部と、
前記基準ドプラ信号と前記ドプラ信号との心拍毎の比較に基づいて、前記ドプラ信号におけるばらつきを示す指標値を検出する安定検出手段とを更に備え、
前記表示手段は、前記ばらつきを示す指標値に基づいて、前記ばらつきに関する情報を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
コンピュータに、
ドプラ信号を記憶する手段と、
前記ドプラ信号に基づいて、複数心拍に亘る第1のドプラ波形画像を生成する手段と、
前記ドプラ信号に基づいて、前記複数心拍より少ない心拍数に亘る第2のドプラ波形画像を生成する手段と、
前記第1のドプラ波形画像と前記第2のドプラ波形画像とを並べて表示する手段と
を機能させることを特徴とする超音波診断プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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