説明

超音波診断装置、画像処理装置及びプログラム

【課題】エッジが違和感無く強調され、かつ、スペックルが除去された超音波画像を生成すること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、分解部161、拡散フィルタ部162、調整部163及び再構成部164を備える。分解部161は、多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する。拡散フィルタ部162は、最下位階層では当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに、最下位階層以外の階層では1段下の階層からの出力データ及び高域分解画像データに拡散フィルタを施す。調整部163は、拡散フィルタ処理後の高域分解画像データの信号レベルの調整をエッジ情報に基づいて行なう。再構成部164は、信号レベル調整に用いられなかった拡散フィルタ処理後のデータと信号レベル調整後のデータとを多重解像度解析により再構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波画像に発生するスペックルを除去するための処理として、多重解像度解析と非線形異方性拡散フィルタとを組み合わせたフィルタ処理が知られている。
【0003】
非線形異方性拡散フィルタを用いた拡散フィルタ処理では、エッジ部位と、エッジ部位以外の部位とで施す処理を変えることにより、エッジが強調され、かつ、スペックルが除去された画像を得ることができる。また、多重解像度解析を行なうことで、低分解能の画像を処理対象とする大局的な処理から、高分解能の画像の画像を処理対象とする局所的な処理へと順を追って処理することで、拡散フィルタ処理をより高速かつ効率的に処理することが可能となる。
【0004】
すなわち、上記のフィルタ処理では、多重解像度分解した低域画像、若しくは、一段下からの出力データである高次の多重解像度分解画像に拡散フィルタ処理を施している。ここで、非線形異方性拡散フィルタは、エッジ強調機能を有している。しかし、空間周波数が低い画像に対して拡散フィルタ処理を行なうと、大局的な構造が強調されてしまい、強いエッジ強調を掛けにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−153918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、エッジが違和感無く強調され、かつ、スペックルが除去された超音波画像を生成することができる超音波診断装置、画像処理装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の超音波診断装置は、分解部と、拡散フィルタ部と、調整部と、再構成部とを備える。分解部は、階層的な多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する。拡散フィルタ部は、前記所定複数階層の最下位階層においては当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。また、前記拡散フィルタ部は、前記最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの多重解像度解析による再構成後のデータである出力データ及び当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。調整部は、前記非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、当該高域分解画像データの階層と同一階層において前記拡散フィルタ部が前記非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう際に検出したエッジ情報に基づいて行なう。再構成部は、前記拡散フィルタ部の処理後のデータであって前記調整部の処理に用いられなかったデータと当該データと同一階層における前記調整部の処理後のデータとを多重解像度解析により再構成する。前記再構成部は、前記所定複数階層における最上位階層より下位の階層においては再構成後のデータを1段上の階層にて前記拡散フィルタ部が処理を行なう前記出力データとして出力する。前記再構成部は、前記最上位階層においては再構成後のデータを前記超音波画像データの補正データとして出力する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を説明するための図である。
【図2】図2は、レベル数が3に設定された場合の画像処理部の機能的構成例を説明するための図である。
【図3】図3は、従来方法を説明するための図である。
【図4】図4は、従来方法の課題を説明するための図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る画像処理部によるスペックル除去処理を説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態の効果を説明するための図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る分解部の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】図8は、本実施形態に係る画像処理部のレベル3での処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、本実施形態に係る画像処理部のレベル2での処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、本実施形態に係る画像処理部のレベル1での処理を説明するためのフローチャートである。
【0009】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成例を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0011】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層と、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。なお、超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0012】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
ここで、本実施形態は、超音波プローブ1が、超音波により被検体Pを2次元で走査する超音波プローブである場合であっても、被検体Pを3次元で走査する超音波プローブである場合であっても適用可能である。被検体Pを3次元で走査する超音波プローブ1としては、被検体Pを2次元で走査する複数の超音波振動子を所定の角度(揺動角度)で揺動させることで、被検体Pを3次元で走査するメカニカルスキャンプローブがある。また、被検体Pを3次元で走査する超音波プローブ1としては、複数の超音波振動子がマトリックス状に配置されることで、被検体Pを3次元で超音波走査することが可能な2次元超音波プローブ(2Dプローブ)がある。なお、2Dプローブは、超音波を集束して送信することで、被検体Pを2次元で走査することも可能である。
【0014】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像等を表示したりする。
【0016】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、図1に示すように、送信部11と、受信部12と、Bモード処理部13と、ドプラ処理部14と、画像生成部15と、画像処理部16と、画像メモリ17と、制御部18と、内部記憶部19とを有する。
【0017】
送信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路及びパルサ回路等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、遅延回路は、各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0018】
なお、送信部11は、後述する制御部18の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0019】
受信部12は、アンプ回路、A/D変換器、加算器等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、A/D変換器によって処理された反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0020】
このように、送信部11及び受信部12は、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0021】
ここで、超音波プローブ1が3次元走査可能である場合、送信部11及び受信部12それぞれは、超音波プローブ1から被検体Pに対して3次元の超音波ビームを送信させ、超音波プローブ1が受信した3次元の反射波信号から3次元の反射波データを生成することも可能である。
【0022】
Bモード処理部13は、受信部12から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理等を行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0023】
ドプラ処理部14は、受信部12から受信した反射波データから速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0024】
なお、本実施形態に係るBモード処理部13及びドプラ処理部14は、2次元の反射波データ及び3次元の反射波データの両方について処理可能である。すなわち、Bモード処理部13は、2次元の反射波データから2次元のBモードデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のBモードデータを生成することも可能である。また、ドプラ処理部14は、2次元の反射波データから2次元のドプラデータを生成し、3次元の反射波データから3次元のドプラデータを生成することも可能である。
【0025】
画像生成部15は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部15は、Bモード処理部13及びドプラ処理部14が生成したデータから、モニタ2に出力するための超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部15は、Bモード処理部13が生成した2次元のBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像データを生成する。また、画像生成部15は、ドプラ処理部14が生成した2次元のドプラデータから移動体情報を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのドプラ画像データを生成する。
【0026】
ここで、画像生成部15は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部15は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じた座標変換処理を行なうことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部15は、表示用の超音波画像データに、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等を合成する。
【0027】
すなわち、Bモードデータ及びドプラデータは、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部15が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、Bモードデータ及びドプラデータは、生データ(Raw Data)とも呼ばれる。
【0028】
また、画像生成部15は、3次元の超音波画像データを生成することも可能である。すなわち、画像生成部15は、Bモード処理部13が生成した3次元のBモードデータに対して座標変換処理を行なうことで、3次元のBモード画像データを生成することも可能である。また、画像生成部15は、ドプラ処理部14が生成した3次元のドプラデータに対して座標変換処理を行なうことで、3次元のカラードプラ画像データを生成することも可能である。
【0029】
また、画像生成部15は、3次元の超音波画像データ(ボリュームデータ)に対して、各種レンダリング処理を行なうことも可能である。具体的には、画像生成部15は、3次元の超音波画像データをレンダリング処理することで、表示用の2次元超音波画像データを生成することが可能である。なお、画像生成部15が行なうレンダリング処理としては、断面再構成法(MPR:Multi Planer Reconstruction)を行なってMPR画像を再構成する処理がある。また、画像生成部15が行なうレンダリング処理としては、3次元の情報を反映した2次元画像を生成するボリュームレンダリング(VR:Volume Rendering)処理がある。
【0030】
画像処理部16は、超音波画像データに対して各種画像処理を行なう処理部である。本実施形態では、画像処理部16は、超音波画像データに対して、スペックル除去及びエッジ強調を行なうための処理を行なう。
【0031】
かかる処理を行なうための処理部として、画像処理部16は、図1に示すように、分解部161、拡散フィルタ部162、調整部163及び再構成部164を有する。分解部161は、多重解像度解析により画像データを低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する処理部である。拡散フィルタ部162は、画像データからエッジ情報を検出し、検出したエッジ情報に基づいて非線形異方性拡散フィルタを施す処理部である。調整部163は、画像データの信号レベルの調整を行なう処理部である。再構成部164は、多重解像度解析により低域分解画像データと高域分解画像データとを合成する再構成処理を行なう処理部である。
【0032】
ここで、本実施形態では、分解部161が多重解像度解析による分解処理としてウェーブレット変換を行ない、再構成部164が多重解像度解析による合成処理(再構成処理)としてウェーブレット逆変換を行なう場合について説明する。ただし、本実施形態は、分解部161及び再構成部164が多重解像度分解及び多重解像度合成をラプラシアン・ピラミッド法により行なう場合であっても適用可能である。
【0033】
また、画像処理部16が処理対象とする超音波画像データは、Bモード処理部13やドプラ処理部14が生成した生データであっても、画像生成部15が生成した表示用の超音波画像データであっても良い。なお、本実施形態に係る画像処理部16の処理については、後に上述する。
【0034】
画像メモリ17は、画像生成部15が生成した超音波画像データや、画像処理部16の処理結果を記憶するメモリである。また、画像メモリ17は、Bモード処理部13やドプラ処理部14が生成した生データ(Raw Data)を記憶することも可能である。
【0035】
内部記憶部19は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部19は、必要に応じて、画像メモリ17が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部19が記憶するデータは、図示しないインターフェース回路を経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0036】
制御部18は、情報処理装置としての機能を実現する制御プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)であり、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部18は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部19から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信部11、受信部12、Bモード処理部13、ドプラ処理部14、画像生成部15、画像処理部16の処理を制御する。また、制御部18は、画像メモリ17が記憶する超音波画像データや、内部記憶部19が記憶する各種画像データ、又は、画像処理部16による処理を行なうためのGUI、画像処理部16の処理結果等をモニタ2にて表示するように制御する。
【0037】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成において、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波送受信により超音波画像の撮像を行なう。ここで、送信超音波の波長に比べ遥かに小さな反射体が密集している場合、反射波信号は、互いに干渉する。干渉の強弱は、反射波信号の振幅の強弱となり、かかる振幅情報を画像化した超音波画像内には、点状のアーチファクト(スペックル)が生じる。
【0038】
このスペックルは、生体組織の境界の位置や生体組織の形状を正確に観測することの妨げとなる。このため、従来、スペックルを除去するための各種処理が行なわれている。例えば、多重解像度解析(MRA: Multi-Resolution Analysis)によるスペックル除去方法では、超音波画像データを多重解像度分解し、各レベルで分解した画像の高域成分に閾値処理や重み付け処理等を行なう。これにより、スペックルが除去されるが、かかる処理後の超音波画像データを表示した超音波画像は、観察者にとって人工的な感じになる場合がある。
【0039】
また、例えば、非線形異方性拡散フィルタ(Nonlinear Anisotropic Diffusion Filter)を用いたスペックル除去方法では、エッジ部位(組織間の境界部位)と、エッジ部位以外の部位とで施す処理を変えることにより、エッジが強調され、かつ、スペックルが除去された画像を得ることができる。しかし、非線形異方性拡散フィルタは、偏微分方程式を解法して解を算出する処理を必要とするため、演算処理に時間がかかる。また、非線形異方性拡散フィルタによる単独処理では、ある程度スペックルを低減する効果があるものの、スペックル除去効果が十分とならない場合がある。
【0040】
そこで、近年、多重解像度解析と非線形異方性拡散フィルタとを組み合わせたフィルタ処理によるスペックル除去方法が開発されている。以下、多重解像度解析と非線形異方性拡散フィルタとを組み合わせたフィルタ処理によるスペックル除去方法を「従来方法」と記載する。
【0041】
従来方法では、例えば、ウェーブレット変換により、超音波画像データを所定複数階層(所定複数レベル)の低域分解画像データ及び高域分解画像データに多重解像度分解する。そして、従来方法では、下位レベルの画像データから上位レベルの画像データへと順を追って非線形異方性拡散フィルタにより処理する。
【0042】
以下、図1に示す画像処理部16が従来方法を実行する場合について説明する。例えば、多重解像度分解のレベル数が「3」である場合、制御部18の制御により、図1に示す画像処理部16が有する分解部161と拡散フィルタ部162と調整部163と再構成部164とは、図2に例示するような機能的な構成となる。図2は、レベル数が3に設定された場合の画像処理部の機能的構成例を説明するための図である。
【0043】
レベル数が「3」と設定された場合、レベル1、レベル2及びレベル3それぞれの処理を行なうため、分解部161は、図2に示すように、第1分解部161a、第2分解部161b及び第3分解部161cの3つの機能的処理部として構成される。また、レベル1、レベル2及びレベル3それぞれの処理を行なうため、拡散フィルタ部162は、図2に示すように、第1拡散フィルタ部162a、第2拡散フィルタ部162b及び第3拡散フィルタ部162cの3つの機能的処理部として構成される。
【0044】
また、レベル1、レベル2及びレベル3それぞれの処理を行なうため、調整部163は、図2に示すように、第1調整部163a、第2調整部163b及び第3調整部163cの3つの機能的処理部として構成される。また、レベル1、レベル2及びレベル3それぞれの処理を行なうため、調整部163は、図2に示すように、第1再構成部164a、第2再構成部164b及び第3再構成部164cの3つの機能的処理部として構成される。
【0045】
図3は、従来方法を説明するための図である。図3に示す一例では、画像処理部16の処理対象となる原画像データをBモード処理部13により生成されたBモードデータとしている。
【0046】
第1分解部161aは、多重解像度解析により、Bモードデータを低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する。具体的には、第1分解部161aは、ウェーブレット変換(離散ウェーブレット変換)により、Bモードデータを、低域分解画像データである「LL」と、高域分解画像データである「HL、LH、HH」とに分解する。ここで、LLは、水平方向及び垂直方向がともに低周波成分である画像データである。また、HLは、水平方向が高周波成分であり垂直方向が低周波成分である画像データである。また、LHは、水平方向が低周波成分であり垂直方向が高周波成分である画像データである。また、HHは、水平方向及び垂直方向がともに高周波成分である画像データである。
【0047】
第1分解部161aは、図3に示すように、レベル1のLLである「LL(1次)」を、第2分解部161bに出力し、レベル1のHL、LH、HHである「HL(1次)、LH(1次)、HH(1次)」を第1調整部163aに出力する。
【0048】
第2分解部161bは、LL(1次)を低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する。すなわち、第2分解部161bは、図3に示すように、LL(1次)を、レベル2の低域分解画像データである「LL(2次)」と、レベル2の高域分解画像データである「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」とに分解する。そして、第2分解部161bは、図3に示すように、「LL(2次)」を第3分解部161cに出力し、「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」を第2調整部163bに出力する。
【0049】
第3分解部161cは、LL(2次)を低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する。すなわち、第3分解部161cは、図3に示すように、LL(2次)を、レベル3の低域分解画像データである「LL(3次)」と、レベル3の高域分解画像データである「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」とに分解する。そして、第3分解部161cは、図3に示すように、「LL(3次)」を第3拡散フィルタ部162cに出力し、「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」を第3調整部163cに出力する。
【0050】
なお、多重解像度分解の結果、分解後の画像データは、分解前に比べ縦横の長さが半分の長さとなる。すなわち、レベル1の画像データの分解能は、Bモードデータの分解能の「(1/2)×(1/2)=1/4」となる。また、レベル2の画像データの分解能は、Bモードデータの分解能の「(1/4)×(1/4)=1/16」となる。また、レベル3の画像データの分解能は、Bモードデータの分解能の「(1/8)×(1/8)=1/64」となる。
【0051】
多重解像度分解後、レベル3、レベル2、レベル1の順に処理が行なわれる。第3拡散フィルタ部162cは、図3に示すように、「LL(3次)」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「LL(3次)」のエッジに関する情報(エッジ情報)を検出する。そして、第3拡散フィルタ部162cは、図3に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「LL(3次)」に対して非線形異方性拡散フィルタ(3次)を施す。そして、第3拡散フィルタ部162cは、図3に示すように、「フィルタ処理済みLL(3次)」を第3再構成部164cに出力する。
【0052】
また、第3調整部163cは、図3に示すように、第3拡散フィルタ部162cが検出したエッジ情報を用いて、「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」の信号レベルを調整する。そして、第3調整部163cは、図3に示すように、「調整済みHL(3次)、調整済みLH(3次)、調整済みHH(3次)」を第3再構成部164cに出力する。
【0053】
第3再構成部164cは、図3に示すように、多重解像度合成により、「フィルタ処理済みLL(3次)」と「調整済みHL(3次)、調整済みLH(3次)、調整済みHH(3次)」とを再構成する。具体的には、第3再構成部164cは、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みLL(3次)」と「調整済みHL(3次)、調整済みLH(3次)、調整済みHH(3次)」とを合成する。そして、第3再構成部164cは、図3に示すように、再構成後のデータである「レベル3出力データ」をレベル2の第2拡散フィルタ部162bに出力する。第3再構成部164cの処理により「レベル3出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能の「1/16」となる。
【0054】
レベル2において、第2拡散フィルタ部162bは、図3に示すように、「レベル3出力データ」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「レベル3出力データ」のエッジ情報を検出する。そして、第2拡散フィルタ部162bは、図3に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「レベル3出力データ」に対して非線形異方性拡散フィルタ(2次)を施す。そして、第2拡散フィルタ部162bは、図3に示すように、「フィルタ処理済みレベル3出力データ」を第2再構成部164bに出力する。
【0055】
また、第2調整部163bは、図3に示すように、第2拡散フィルタ部162bが検出したエッジ情報を用いて、「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」の信号レベルを調整する。そして、第2調整部163bは、図3に示すように、「調整済みHL(2次)、調整済みLH(2次)、調整済みHH(2次)」を第2再構成部164bに出力する。
【0056】
第2再構成部164bは、図3に示すように、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みレベル3出力データ」と「調整済みHL(2次)、調整済みLH(2次)、調整済みHH(2次)」とを合成する。そして、第2再構成部164bは、図3に示すように、再構成後のデータである「レベル2出力データ」をレベル1の第1拡散フィルタ部162aに出力する。第2再構成部164bの処理により「レベル2出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能の「1/4」となる。
【0057】
レベル1において、第1拡散フィルタ部162aは、図3に示すように、「レベル2出力データ」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「レベル2出力データ」のエッジ情報を検出する。そして、第1拡散フィルタ部162aは、図3に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「レベル2出力データ」に対して非線形異方性拡散フィルタ(1次)を施す。そして、第1拡散フィルタ部162aは、図3に示すように、「フィルタ処理済みレベル2出力データ」を第1再構成部164aに出力する。
【0058】
また、第1調整部163aは、図3に示すように、第1拡散フィルタ部162aが検出したエッジ情報を用いて、「HL(1次)、LH(1次)、HH(1次)」の信号レベルを調整する。そして、第1調整部163aは、図3に示すように、「調整済みHL(1次)、調整済みLH(1次)、調整済みHH(1次)」を第1再構成部164aに出力する。
【0059】
第1再構成部164aは、図3に示すように、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みレベル2出力データ」と「調整済みHL(1次)、調整済みLH(1次)、調整済みHH(1次)」とを合成する。そして、第1再構成部164aは、図3に示すように、再構成後のデータである「レベル1出力データ」を出力する。具体的には、第1再構成部164aは、「レベル1出力データ」を「補正Bモードデータ」として画像生成部15に出力する。第1再構成部164aの処理により「レベル1出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能となる。画像生成部15は、補正Bモードデータをスキャンコンバートすることで表示用の超音波画像データを生成する。
【0060】
このように、図3に例示した従来方法では、多重解像度分解した低域分解画像データ、若しくは、一段下からの出力データである高次の多重解像度分解画像に拡散フィルタ処理を施す。これにより、従来方法では、拡散フィルタ処理をより高速かつ効率的に処理することができ、更に、多重解像度解析と非線形異方性拡散フィルタ処理との相乗効果により、スペックル除去を精度良く行なうことができる。
【0061】
しかし、上記の従来方法では、例えば、LL(3次)のように、空間周波数が低い画像に対して非線形異方性拡散フィルタによるエッジ強調も行なっているため、大局的な構造が強調されてしまう。例えば、上記の従来方法により強いエッジ強調を行なうと、斜めの構造物が段々に見える階段状の構造物の様に強調されてしまう。図4は、従来方法の課題を説明するための図である。
【0062】
上述したように、レベル3の画像データの分解能は、Bモードデータの分解能の「1/64」となっている。このため、例えば、図4の(A)に示すように、レベル3のエッジ検出結果(図中の格子上の網掛けを参照)を、Bモードデータ(レベル0)の画素数に拡大して重畳すると、斜めの構造物のエッジ部位が段々となってしまう。このため、各レベルで強いエッジ強調を行なうと、モニタ2に表示される超音波画像内に描出される斜めの構造物は、図4の(B)に示すように、本来の形状ではなく、階段状の形状となる。このように、従来方法により生成される超音波画像に描出されるエッジ強調の結果は、観察者にとっては違和感がある場合があった。
【0063】
そこで、本実施形態に係る画像処理部16の分解部161、拡散フィルタ部162、調整部163及び再構成部164は、エッジが違和感無く強調され、かつ、スペックルが除去された超音波画像を生成するために、以下の処理を行なう。
【0064】
本実施形態に係る分解部161は、階層的な多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する。
【0065】
そして、本実施形態に係る拡散フィルタ部162は、所定複数階層の最下位階層においては当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。また、本実施形態に係る拡散フィルタ部162は、最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの多重解像度解析による再構成後のデータである出力データ及び当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。
【0066】
そして、本実施形態に係る調整部163は、非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、当該高域分解画像データの階層と同一階層において拡散フィルタ部162が非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう際に検出したエッジ情報に基づいて行なう。具体的には、本実施形態に係る調整部163は、非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、最下位階層においては当該階層の低域分解画像データから拡散フィルタ部162が検出したエッジ情報に基づいて行なう。また、本実施形態に係る調整部163は、非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの出力データから拡散フィルタ部162が検出したエッジ情報に基づいて行なう。
【0067】
そして、本実施形態に係る再構成部164は、拡散フィルタ部162の処理後のデータであって調整部163の処理に用いられなかったデータと当該データと同一階層における調整部163の処理後のデータとを多重解像度解析により再構成する。そして、本実施形態に係る再構成部164は、所定複数階層における最上位階層より下位の階層においては再構成後のデータを1段上の階層にて拡散フィルタ部162が処理を行なう出力データとして出力する。また、本実施形態に係る再構成部164は、最上位階層においては再構成後のデータを超音波画像データの補正データとして出力する。
【0068】
なお、本実施形態に係る拡散フィルタ部162は、具体的には、最下位階層においては当該階層の低域分解画像データから検出したと構造テンソルとエッジ情報に基づいて算出した拡散フィルタ係数により当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。また、本実施形態に係る拡散フィルタ部162は、最下位階層より上位の階層においては1段下の階層から再構成部164が出力した出力データから検出した構造テンソルとエッジ情報とに基づいて算出した拡散フィルタ係数により当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す。
【0069】
以下、階層数(レベル数)が「3」と設定され、処理対象となる超音波画像データがBモードデータである場合を一例として、本実施形態に係る分解部161、拡散フィルタ部162、調整部163及び再構成部164の処理について図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る画像処理部によるスペックル除去処理を説明するための図である。
【0070】
なお、本実施形態では、従来方法との違いを明確にするため、上記の従来方法の説明で用いた各処理部の符号と同様の符号を用いて説明する。すなわち、レベル数が「3」と設定された場合、分解部161、拡散フィルタ部162、調整部163及び再構成部164それぞれは、レベル1、レベル2及びレベル3それぞれの処理を行なうため、図2に示す3つの機能的処理部として構成される。
【0071】
まず、第1分解部161aは、図5に示すように、ウェーブレット変換(離散ウェーブレット変換)により、Bモードデータを、低域分解画像データである「LL(1次)」と、高域分解画像データである「HL(1次)、LH(1次)、HH(1次)」とに分解する。第1分解部161aは、図5に示すように、「LL(1次)」を、第2分解部161bに出力する。また、第1分解部161aは、図5に示すように、「HL(1次)、LH(1次)、HH(1次)」を第1拡散フィルタ部162aに出力する。
【0072】
第2分解部161bは、図5に示すように、LL(1次)を「LL(2次)」と、「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」とに分解する。そして、第2分解部161bは、図5に示すように、「LL(2次)」を第3分解部161cに出力する。また、第2分解部161bは、図5に示すように、「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」を第2拡散フィルタ部162bに出力する。
【0073】
第3分解部161cは、図5に示すように、LL(2次)を「LL(3次)」と、「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」とに分解する。そして、第3分解部161cは、図5に示すように、「LL(3次)」及び「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」を第3拡散フィルタ部162cに出力する。
【0074】
多重解像度分解後、レベル3、レベル2、レベル1の順に処理が行なわれる。第3拡散フィルタ部162cは、図5に示すように、「LL(3次)」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「LL(3次)」のエッジ情報を検出する。そして、第3拡散フィルタ部162cは、図5に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「LL(3次)」に対して非線形異方性拡散フィルタ(3次)を施す。そして、第3拡散フィルタ部162cは、図5に示すように、「フィルタ処理済みLL(3次)」を第3再構成部164cに出力する。
【0075】
更に、第3拡散フィルタ部162cは、図5に示すように、「LL(3次)」から算出した拡散テンソルの拡散フィルタ係数により、「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」に非線形異方性拡散フィルタ(3次)を施し、第3調整部163cに出力する。
【0076】
第3調整部163cは、図5に示すように、第3拡散フィルタ部162cが検出したエッジ情報を用いて、拡散フィルタ処理後の「拡散フィルタ処理済みHL(3次)、拡散フィルタ処理済みLH(3次)、拡散フィルタ処理済みHH(3次)」の信号レベルを調整する。そして、第3調整部163cは、図5に示すように、「調整済みHL(3次)、調整済みLH(3次)、調整済みHH(3次)」を第3再構成部164cに出力する。
【0077】
第3再構成部164cは、図5に示すように、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みLL(3次)」と「調整済みHL(3次)、調整済みLH(3次)、調整済みHH(3次)」とを合成する。そして、第3再構成部164cは、図5に示すように、再構成後のデータである「レベル3出力データ」をレベル2の第2拡散フィルタ部162bに出力する。図5に示す「レベル3出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能の「1/16」となる。ただし、図5に示す「レベル3出力データ」は、従来方法とは異なり、レベル3の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施した後に信号レベルを調整したデータと、「フィルタ処理済みLL(3次)」とを合成したデータである。図5に示す「レベル3出力データ」は、Bモードデータの分解能の「1/16」となる。
【0078】
レベル2において、第2拡散フィルタ部162bは、図5に示すように、「レベル3出力データ」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「レベル3出力データ」のエッジ情報を検出する。そして、第2拡散フィルタ部162bは、図5に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「レベル3出力データ」に対して非線形異方性拡散フィルタ(2次)を施す。そして、第2拡散フィルタ部162bは、図5に示すように、「フィルタ処理済みレベル3出力データ」を第2再構成部164bに出力する。
【0079】
更に、第2拡散フィルタ部162bは、図5に示すように、「レベル3出力データ」から算出した拡散テンソルの拡散フィルタ係数により、「HL(2次)、LH(2次)、HH(2次)」に非線形異方性拡散フィルタ(2次)を施し、第2調整部163bに出力する。
【0080】
第2調整部163bは、図5に示すように、第2拡散フィルタ部162bが検出したエッジ情報を用いて、拡散フィルタ処理後の「拡散フィルタ処理済みHL(2次)、拡散フィルタ処理済みLH(2次)、拡散フィルタ処理済みHH(2次)」の信号レベルを調整する。そして、第2調整部163bは、図5に示すように、「調整済みHL(2次)、調整済みLH(2次)、調整済みHH(2次)」を第2再構成部164bに出力する。
【0081】
第2再構成部164bは、図5に示すように、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みレベル3出力データ」と「調整済みHL(2次)、調整済みLH(2次)、調整済みHH(2次)」とを合成する。そして、第2再構成部164bは、図5に示すように、再構成後のデータである「レベル2出力データ」をレベル1の第1拡散フィルタ部162aに出力する。図5に示す「レベル2出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能の「1/16」となる。ただし、図5に示す「レベル2出力データ」は、従来方法とは異なり、レベル2の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施した後に信号レベルを調整したデータと、「フィルタ処理済みレベル3出力データ」とを合成したデータである。図5に示す「レベル2出力データ」は、Bモードデータの分解能の「1/4」となる。
【0082】
レベル1において、第1拡散フィルタ部162aは、図5に示すように、「レベル2出力データ」を用いて構造テンソルを算出し、構造テンソルから「レベル2出力データ」のエッジ情報を検出する。そして、第1拡散フィルタ部162aは、図5に示すように、構造テンソルとエッジ情報とから拡散テンソルを算出し、算出した拡散テンソルを用いて、「レベル2出力データ」に対して非線形異方性拡散フィルタ(1次)を施す。そして、第1拡散フィルタ部162aは、図5に示すように、「フィルタ処理済みレベル2出力データ」を第1再構成部164aに出力する。
【0083】
更に、第1拡散フィルタ部162aは、図5に示すように、「レベル2出力データ」から算出した拡散テンソルの拡散フィルタ係数により、「HL(1次)、LH(1次)、HH(1次)」に非線形異方性拡散フィルタ(1次)を施し、第1調整部163aに出力する。
【0084】
第1調整部163aは、図5に示すように、第1拡散フィルタ部162aが検出したエッジ情報を用いて、拡散フィルタ処理後の「拡散フィルタ処理済みHL(1次)、拡散フィルタ処理済みLH(1次)、拡散フィルタ処理済みHH(1次)」の信号レベルを調整する。そして、第1調整部163aは、図5に示すように、「調整済みHL(1次)、調整済みLH(1次)、調整済みHH(1次)」を第1再構成部164aに出力する。
【0085】
第1再構成部164aは、図5に示すように、ウェーブレット逆変換により「フィルタ処理済みレベル2出力データ」と「調整済みHL(1次)、調整済みLH(1次)、調整済みHH(1次)」とを合成する。そして、第1再構成部164aは、図5に示すように、再構成後のデータである「レベル1出力データ」を「補正Bモードデータ」として画像生成部15に出力する。画像生成部15は、補正Bモードデータをスキャンコンバートすることで表示用の超音波画像データを生成する。レベル1の第1拡散フィルタ部162aに出力する。図5に示す「レベル1出力データ」の分解能は、Bモードデータの分解能となる。ただし、図5に示す「レベル1出力データ」は、従来方法とは異なり、レベル1の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施した後に信号レベルを調整したデータと、「フィルタ処理済みレベル2出力データ」とを合成したデータである。図5に示す「レベル1出力データ」は、Bモードデータの分解能となる。
【0086】
以下、上述した本実施形態に係る拡散フィルタ部162及び調整部163が行なう処理について、数式等を用いて改めて説明する。
【0087】
拡散フィルタ部162は、入力画像データの画素レベル(輝度値)を水平方向(横方向、x方向)と垂直方向(縦方向、y方向)に微分して、構造テンソル(Structure Tensor)を算出する。構造テンソルは、エッジの大きさと向きとを検出するために算出されるテンソルである。構造テンソルの固有値は、エッジの大きさに関連付けられ、構造テンソルの固有ベクトルは、エッジの向きを表す。構造テンソル「S」は、以下の式(1)のように定義される。
【0088】
【数1】

【0089】
ここで、式(1)に示す「I」は、入力画像データの画素レベル「I」のx方向の空間微分であり、式(1)に示す「I」は、「I」のy方向の空間微分である。また、「Gρ」は、2次元ガウス関数を表し、演算子「*」は、畳み込みを表す。例えば、第3拡散フィルタ部162cは、「LL(3次)」を水平方向(横方向、x方向)と垂直方向(縦方向、y方向)に微分して、式(1)に示す構造テンソル「s11,s12,s22」を算出する。
【0090】
なお、構造テンソルの算出は、必ずしも上記の方法に厳密に従わなくともよく、処理の第1段階として「I」及び「I」を演算するかわりに、ソーベルフィルタ(sobel filter)を適用してもよい。
【0091】
そして、拡散フィルタ部162は、算出した構造テンソルの各要素からエッジ情報(エッジの位置、大きさ及び向き)を検出する。具体的には、拡散フィルタ部162は、構造テンソルの各要素からエッジ情報を検出し、更に、拡散テンソル(Diffusion Tensor)の算出に用いる拡散フィルタ係数を算出する。そして、拡散フィルタ部162は、拡散テンソル(Diffusion Tensor)を算出する。拡散テンソル(D)は、以下の式(2)により定義される。
【0092】
【数2】

【0093】
ここで、式(2)に示す「R」は、回転行列であり、「R」は、「R」の転置行列である。また、式(2)に示す「λ,λ」は、エッジ情報により求めた拡散フィルタ係数である。例えば、第3拡散フィルタ部162cは、式(2)により、「LL(3次)」の拡散テンソル「d11,d12,d22」を算出する。
【0094】
そして、拡散フィルタ部162は、「I」に対して、拡散テンソルによる非線形異方性拡散フィルタを施す。非線形異方性拡散フィルタは、以下の偏微分方程式である式(3)で表される。
【数3】

【0095】
ここで、式(3)に示す「∇I(ナブラI)」は、「I」の勾配ベクトル(gradient vector)であり、式(3)に示す「t」は、処理に関わる時刻である。また、式(3)に示す「div」は、発散(Divergence)である。
【0096】
すなわち、拡散フィルタ部162が式(1)で行なう演算処理「D∇I」は、各画素の勾配ベクトルに対し特定の向きと、当該向きの垂直方向とのそれぞれに、「λ」と「λ」とを掛ける演算処理である。ここで、上記の特定の向きとは、画像データのエッジの向きであり、拡散フィルタ係数は、エッジの大きさに応じて算出される。
【0097】
そして、拡散フィルタ部162は、式(1)の偏微分方程式の数値解析的計算を1回、又は、複数回繰り返し実行することで、非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう。例えば、拡散フィルタ部162は、時刻「t」において、ある点における画素と当該画素の周囲の複数点(例えば9点)における各画素レベル及び拡散テンソルの各要素値から、時刻「t+Δt」における各点の新たな画素レベルを求め、次に、「t+Δt」を新たな「t」として、同様の計算を1回から数回繰り返す。かかる非線形異方性拡散フィルタ処理を、例えば、第3拡散フィルタ部162cは、「LL(3次)」及び「HL(3次)、LH(3次)、HH(3次)」に対して行なう。
【0098】
なお、「λ,λ」の算出方法は、各診断分野における超音波画像の特性によって変更できるように、一般的な数式を用意して、いくつかのパラメータによって調整できるようすることが望ましい。
【0099】
また、調整部163は、拡散フィルタ処理済みの高域分解画像データ「拡散フィルタ処理済みHL、拡散フィルタ処理済みLH、拡散フィルタ処理済みHH」の信号レベル調整を「エッジ情報である構造テンソルの固有値」に基づいて行なう。上述したように、構造テンソルの固有値は、エッジの大きさを示す。調整部163は、構造テンソルの固有値に基づき規格化されたエッジの大きさと、各高域分解画像データとの積を画素ごとに算出し、算出結果に、各高域分解画像データに対して設定された制御係数を掛け合わせることで、高域レベル調整を行なう。或いは、調整部163は、エッジの大きさに閾値を設定して閾値以上をエッジとみなし、エッジ以外の領域に各高域分解画像データの制御係数を掛け合わせることで、高域レベル調整を行なっても良い。
【0100】
このように、本実施形態では、高域分解画像データに対しても、非線形異方性拡散フィルタを施す。具体的には、本実施形態では、低域分解画像データ、又は、1段階下の再構成後のデータのと構造テンソルとエッジ情報を用いて、高域分解画像データに対して非線形異方性拡散フィルタを施す。図6は、本実施形態の効果を説明するための図である。
【0101】
高域分解画像データに対して非線形異方性拡散フィルタを施すことで、高域分解画像データでは不明瞭であった斜め方向の構造物は、図6の(A)に示すように、斜め方向に繋がった様相に調整することができる。具体的には、拡散フィルタ係数を調整することで、高域分解画像データにおいても、的確なエッジ強調を行なうことができる。本実施形態では、このような拡散フィルタ処理を行なった高域分解画像データに対して信号レベルの調整を行なって再構成処理を行なう。その結果、本実施形態に係る第1再構成部164aが出力する補正Bモードデータをスキャンコンバートすることで生成表示される超音波画像は、図6の(B)に示すように、斜めの構造物が略滑らかな形状となる。
【0102】
次に、図7〜図10を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図7は、本実施形態に係る分解部の処理を説明するためのフローチャートであり、図8は、本実施形態に係る画像処理部のレベル3での処理を説明するためのフローチャートであり、図9は、本実施形態に係る画像処理部のレベル2での処理を説明するためのフローチャートであり、図10は、本実施形態に係る画像処理部のレベル1での処理を説明するためのフローチャートである。
【0103】
図7に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置の第1分解部161aは、Bモードデータが画像メモリ17に格納されたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、Bモードデータが格納されていない場合(ステップS101否定)、第1分解部161aは、待機状態となる。
【0104】
一方、Bモードデータが格納された場合(ステップS101肯定)、第1分解部161aは、Bモードデータをウェーブレット変換によりレベル1の低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する(ステップS102)。
【0105】
そして、第2分解部161bは、レベル1の低域分解画像データをウェーブレット変換によりレベル2の低域分解画像データと高域分解画像データとに分解する(ステップS103)。
【0106】
そして、第3分解部161cは、レベル2の低域分解画像データをウェーブレット変換によりレベル3の低域分解画像データと高域分解画像データとに分解し(ステップS104)、分解処理を終了する。
【0107】
その後、レベル3の処理が図8に示すように行なわれる。すなわち、図8に示すように、第3拡散フィルタ部162cは、レベル3の低域分解画像データと高域分解画像データとを取得したか否かを判定する(ステップS201)。ここで、取得していない場合(ステップS201否定)、第3拡散フィルタ部162cは、待機状態となる。
【0108】
一方、レベル3の低域分解画像データと高域分解画像データとを取得した場合(ステップS201肯定)、第3拡散フィルタ部162cは、レベル3低域分解画像データから構造テンソルを算出し(ステップS202)、更に、構造テンソルからエッジ情報を検出する(ステップS203)。そして、第3拡散フィルタ部162cは、構造テンソル及びエッジ情報から拡散テンソルを算出する(ステップS204)。
【0109】
そして、第3拡散フィルタ部162cは、レベル3低域分解画像データ及びレベル3高域分解画像データに対して、拡散テンソルにより非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう(ステップS205)。
【0110】
そして、第3調整部163cは、拡散フィルタ処理済みのレベル3高域分解画像データの信号レベルを調整し(ステップS206)、第3再構成部164cは、ウェーブレット逆変換によりレベル3出力データを再構成(合成)する(ステップS207)。そして、第3再構成部164cは、レベル3出力データを第2拡散フィルタ部162bに出力し(ステップS208)、レベル3の処理を終了する。
【0111】
その後、レベル2の処理が図9に示すように行なわれる。すなわち、図9に示すように、第2拡散フィルタ部162bは、レベル2高域分解画像データとレベル3出力データとを取得したか否かを判定する(ステップS301)。ここで、取得していない場合(ステップS301否定)、第2拡散フィルタ部162bは、待機状態となる。
【0112】
一方、レベル2高域分解画像データとレベル3出力データとを取得した場合(ステップS301肯定)、第2拡散フィルタ部162bは、レベル3出力データから構造テンソルを算出し(ステップS302)、更に、構造テンソルからエッジ情報を検出する(ステップS303)。そして、第2拡散フィルタ部162bは、構造テンソル及びエッジ情報から拡散テンソルを算出する(ステップS304)。
【0113】
そして、第2拡散フィルタ部162bは、レベル3出力データ及びレベル2高域分解画像データに対して、拡散テンソルにより非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう(ステップS305)。
【0114】
そして、第2調整部163bは、拡散フィルタ処理済みのレベル2高域分解画像データの信号レベルを調整し(ステップS306)、第2再構成部164bは、ウェーブレット逆変換によりレベル2出力データを再構成(合成)する(ステップS307)。そして、第2再構成部164bは、レベル2出力データを第1拡散フィルタ部162aに出力し(ステップS308)、レベル2の処理を終了する。
【0115】
その後、レベル1の処理が図10に示すように行なわれる。すなわち、図10に示すように、第1拡散フィルタ部162aは、レベル1高域分解画像データとレベル2出力データとを取得したか否かを判定する(ステップS401)。ここで、取得していない場合(ステップS401否定)、第1拡散フィルタ部162aは、待機状態となる。
【0116】
一方、レベル1高域分解画像データとレベル2出力データとを取得した場合(ステップS401肯定)、第3拡散フィルタ部162aは、レベル2出力データから構造テンソルを算出し(ステップS402)、更に、構造テンソルからエッジ情報を検出する(ステップS403)。そして、第1拡散フィルタ部162aは、構造テンソル及びエッジ情報から拡散テンソルを算出する(ステップS404)。
【0117】
そして、第1拡散フィルタ部162aは、レベル2出力データ及びレベル1高域分解画像データに対して、拡散テンソルにより非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう(ステップS405)。
【0118】
そして、第1調整部163aは、拡散フィルタ処理済みのレベル1高域分解画像データの信号レベルを調整し(ステップS406)、第1再構成部164aは、ウェーブレット逆変換によりレベル1出力データを再構成(合成)する(ステップS407)。そして、第1再構成部164aは、レベル1出力データを補正Bモードデータとして画像生成部15に出力し(ステップS408)、レベル1の処理を終了する。
【0119】
上述してきたように、本実施形態では、従来方法と同様に、非線形異方性拡散フィルタによりエッジ部位を強調し、エッジ部位以外の部位では拡散処理を行なってスペックル除去を行ない、更に、多重解像度解析を併用することで、非線形異方性拡散フィルタ処理に要する処理負荷を低減する。
【0120】
しかし、本実施形態では、従来方法とは異なり、高域分解画像データに対しても、非線形異方性拡散フィルタを施す。これにより、本実施形態では、拡散フィルタ係数の設定の自由度が広げることができ、超音波画像で発生する段々の構造を低減するため拡散フィルタ係数を調整することができる。その結果、本実施形態では、エッジが違和感無く強調され、かつ、スペックルが除去された超音波画像を生成することができる。
【0121】
また、本実施形態では、高域分解画像データのエッジ情報ではなく、低域分解画像データ、又は、1段階下の再構成後のデータのエッジ情報を用いて、高域分解画像データに対して非線形異方性拡散フィルタを施す。すなわち、本実施形態では、高域分解画像データの拡散テンソルを演算するのではなく、各階層(各レベル)での拡散テンソルの演算を1回のみとするので、高域成分に拡散フィルタを行う処理における追加演算量が軽減される。その結果、本実施形態では、スペックル除去における高速な演算が可能となる。
【0122】
なお、上記の実施形態は、レベル数が2以上の任意の自然数である場合であっても適用可能である。また、上記の実施形態は、多重解像度解析が「ウェーブレット変換、ウェーブレット逆変換」以外の方法(例えば、ラプラシアン・ピラミッド法等)である場合であっても適用可能である。また、上記の実施形態は、超音波画像データとして「Bモード画像データ」が用いられる場合であっても適用可能である。更に、超音波画像データが2Dプローブやメカニカルスキャンプローブにより生成された3次元超音波画像データであっても適用可能である。
【0123】
また、上記の実施形態では、超音波診断装置において処理が行なわれる場合について説明した。しかし、上記の実施形態で説明した画像処理は、超音波診断装置とは独立に設置された画像処理装置により行なわれる場合であってもよい。具体的には、図1に示す画像処理部16の機能を有する画像処理装置が、超音波診断装置、又は、PACSのデータベースや、電子カルテシステムのデータベースから受信した超音波画像データを受信して上述した画像処理を行なう場合であってもよい。
【0124】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0125】
また、本実施形態で説明した画像処理方法は、あらかじめ用意された画像処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。この画像処理プログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、この画像処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0126】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、エッジが違和感無く強調され、かつ、スペックルが除去された超音波画像を生成することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
10 装置本体
11 送信部
12 受信部
13 Bモード処理部
14 ドプラ処理部
15 画像生成部
16 画像処理部
161 分解部
162 拡散フィルタ部
163 調整部
164 再構成部
17 画像メモリ
18 制御部
19 内部記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階層的な多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する分解部と、
前記所定複数階層の最下位階層においては当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施し、前記最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの多重解像度解析による再構成後のデータである出力データ及び当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す拡散フィルタ部と、
前記非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、当該高域分解画像データの階層と同一階層において前記拡散フィルタ部が前記非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう際に検出したエッジ情報に基づいて行なう調整部と、
前記拡散フィルタ部の処理後のデータであって前記調整部の処理に用いられなかったデータと当該データと同一階層における前記調整部の処理後のデータとを多重解像度解析により再構成し、前記所定複数階層における最上位階層より下位の階層においては再構成後のデータを1段上の階層にて前記拡散フィルタ部が処理を行なう前記出力データとして出力し、前記最上位階層においては再構成後のデータを前記超音波画像データの補正データとして出力する再構成部と、
を備えたことを特徴する超音波診断装置。
【請求項2】
前記拡散フィルタ部は、前記最下位階層においては当該階層の低域分解画像データから検出した構造テンソルとエッジ情報とに基づいて算出した拡散フィルタ係数により当該階層の高域分解画像データに前記非線形異方性拡散フィルタを施し、前記最下位階層より上位の階層においては1段下の階層から前記再構成部が出力した出力データから検出した構造テンソルとエッジ情報とに基づいて算出した拡散フィルタ係数により当該階層の高域分解画像データに前記非線形異方性拡散フィルタを施すことを特徴とする請求項1の記載の超音波診断装置。
【請求項3】
階層的な多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する分解部と、
前記所定複数階層の最下位階層においては当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施し、前記最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの多重解像度解析による再構成後のデータである出力データ及び当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す拡散フィルタ部と、
前記非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、当該高域分解画像データの階層と同一階層において前記拡散フィルタ部が前記非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう際に検出したエッジ情報に基づいて行なう調整部と、
前記拡散フィルタ部の処理後のデータであって前記調整部の処理に用いられなかったデータと当該データと同一階層における前記調整部の処理後のデータとを多重解像度解析により再構成し、前記所定複数階層における最上位階層より下位の階層においては再構成後のデータを1段上の階層にて前記拡散フィルタ部が処理を行なう前記出力データとして出力し、前記最上位階層においては再構成後のデータを前記超音波画像データの補正データとして出力する再構成部と、
を備えたことを特徴する画像処理装置。
【請求項4】
階層的な多重解像度解析により超音波画像データを所定複数階層それぞれの低域分解画像データ及び高域分解画像データに分解する分解手順と、
前記所定複数階層の最下位階層においては当該階層の低域分解画像データ及び高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施し、前記最下位階層より上位の階層においては1段下の階層からの多重解像度解析による再構成後のデータである出力データ及び当該階層の高域分解画像データに非線形異方性拡散フィルタを施す拡散フィルタ手順と、
前記非線形異方性拡散フィルタが施された高域分解画像データの信号レベルの調整を、当該高域分解画像データの階層と同一階層において前記拡散フィルタ手順が前記非線形異方性拡散フィルタ処理を行なう際に検出したエッジ情報に基づいて行なう調整手順と、
前記拡散フィルタ手順の処理後のデータであって前記調整手順の処理に用いられなかったデータと当該データと同一階層における前記調整手順の処理後のデータとを多重解像度解析により再構成し、前記所定複数階層における最上位階層より下位の階層においては再構成後のデータを1段上の階層にて前記拡散フィルタ手順が処理を行なう前記出力データとして出力し、前記最上位階層においては再構成後のデータを前記超音波画像データの補正データとして出力する再構成手順と、
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−13436(P2013−13436A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146254(P2011−146254)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】