超音波診断装置、超音波画像処理装置及び超音波画像処理プログラム
【課題】例えば乳腺等の連続構造物と微小石灰化部分等の微小構造物とを正確に区別し、微小構造物を抽出することができる超音波診断装置等を提供すること。
【解決手段】第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【解決手段】第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織のエコー信号から、生体臓器中の微小な構造物を抽出し表示する超音波診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。この他、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便な診断手法であると言える。この超音波診断において用いられる超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
このような種々の長所を持つ超音波診断の一つに、乳がんの早期診断がある。乳房組織においては、乳癌の徴候として微小石灰化が発生するケースが多いことが知られている。微小石灰化病変は1個あるいは数個で局所に散在する。石灰は生体組織に比べ硬いため、超音波をよく反射するため画像上高輝度となることが期待される。しかしながら、実際に画像の中から目視する場合には、数百ミクロン程度であっても抽出するのは難しいと言われている。
【0004】
ところで、超音波画像上には、超音波のランダムな干渉に起因するスペックルパタンと呼ばれる干渉縞が発生する場合がある。このスペックルパタンは、肝硬変の診断等に利用される。その一方で、例えば上記乳癌検診の場合には見落とされがちな微小石灰化等の微小構造物と酷似しており、場合によっては紛らわしい画像情報となる。従って、乳癌診断等においてはスペックルパタンを除去したいというニーズがあり、そのための技術として、例えば空間コンパウンド、CFAR(Contrast False Alarm Rate:一定誤警報率)処理、類似度フィルタ等がある。ここで、空間コンパウンドとは、異なる方向からの送受信信号を重畳しスペックルを平滑化するものである(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。CFAR処理とは、対象画素を周囲の輝度平均で減算し、これを用いて高輝度部分を抽出するものである(例えば、特許文献1参照)。類似度フィルタとは、その統計的性質を利用して、スペックルを除去するものである。また、これらのスペックルパタン除去の手法の他、超音波診断の分野ではないが、微小石灰化を自動認識する試みが、主にX線診断画像の応用として種々報告されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
さらに、微小石灰化に代表される微小構造物を抽出するための他の技術としてMIP処理がある。これは、複数の画像フレームの最大輝度を代表値として、一枚のフレームに投影するというものである。主に3次元画像処理において、ボリュームデータを二次元画像として表示する際に用いられる。理想的には、複数フレームの情報が一枚に重畳され、情報量の高い画像を得ることができる。また、その他、従来の超音波診断装置に搭載されている画質調整パラメータを変更しスペックルパタンを軽減することも可能である。また、例えばダイナミックレンジを小さくすると特定の狭い範囲の信号のみが表示される。さらに、ゲインを低く設定するなど最適な調整を行えば、相対的に信号の小さいスペックルパタンは表示されず、相対的に信号の大きい微小構造物のみが画像化できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特昭61−189476号公報
【特許文献2】特開2001−238884号公報
【特許文献3】特開2003−61964号公報
【特許文献4】特開2004−321582号公報
【特許文献5】特許第3596792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、微小物構造物を抽出するための従来の手法には、例えば次のような問題がある。
【0008】
診断対象の乳腺は乳管などの構造が複雑であり、もとより均質な臓器ではない。従って、従来のフィルタ処理を行うと、微小石灰化が検出されると同時に、乳腺構造も(構造物として)抽出されてしまい、両者を十分に区別することができない。
【0009】
また、乳管などは微小石灰化に比べて明らかに大きな構造物であるため、フィルタ処理にて残存しても、目視にて弁別が可能となることが期待されるが、それでも弁別が困難となることを、発明者らは研究でしばしば経験している。特に乳腺構造の一部のみが残存する場合は、フィルタ後の画像は点状に見えるため、微小石灰化に類似した画像となる場合がある。
【0010】
さらに、画像上のスペックルパタンがランダムに変動する場合がある。係る場合には、所定のスペックルリダクション処理を行ったとしても、スペックルが残存してしまい、石灰化部位と区別が困難になる。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、例えば乳腺等の連続構造物と微小石灰化部分等の微小構造物とを正確に区別し、微小構造物を抽出することができる超音波診断装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る超音波診断装置は、第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、位置検出装置15の一例を示した図である。
【図3】図3は、微小構造物抽出処理を説明するための図である。
【図4】図4(a)は対象画像の模式図を、図4(b)は参照画像の模式図をそれぞれ示している。
【図5】図5は、画素毎の信号強度(画像の輝度)の変化例を示した図である。
【図6】図6は、画素毎の信号強度(画像の輝度)の変化例を示した図である。
【図7A】図7Aは、微小構造物抽出画像の表示形態の一例を示した図である。
【図7B】図7Bは、微小構造物抽出画像の表示形態の他の例を示した図である。
【図7C】図7C(a)は、通常のBモード画像を示した図であり、図7C(b)は、微小構造物抽出画像を示した図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第4の実施形態に係る画像処理装置2の構成を示したブロック図である。
【図12】図12は、微小構造物抽出処理専用デバイス52の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12と装置本体11、入力装置13、モニター14、外部記憶装置16を具備している。また、装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成部27、制御プロセッサ(CPU)28、内部記憶部29、インターフェース部30を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0016】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本超音波装置1が具備する超音波プローブ12は、被検体の3次元領域を超音波走査可能なものである。そのため、超音波プローブ12は、振動子をその配列方向の直交方向に沿って機械的に揺動させ、3次元領域を超音波走査する構成、又は二次元的に配列された二次元振動素子を用いて電気的制御により3次元領域を超音波走査する構成等を有する。前者の構成を採用する場合、被検体の3次元的走査は前記揺動回路によって行われるため、検査者はプローブ本体を被検体に接触させるだけで、自動的に複数の二次元断層像を取得することができる。制御された揺動速度から断面間の正確な距離も検知できる。また、後者の構成を採用する場合には、原理的には、従来の二次元断層像を取得するのと同じ時間で、3次元領域を超音波走査することができる。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0019】
モニター14は、スキャンコンバータ25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(Bモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、これらの組み合わせを画像として表示する。
【0020】
外部記憶装置16は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体、及びこれらの媒体に記録された情報を読み出す装置である。各種記録媒体から読み出された情報は、インタフェース部30を介して制御プロセッサ28に転送される。
【0021】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0022】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ28の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0024】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、スキャンコンバータ25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0025】
ドプラ処理ユニット24は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0026】
画像生成ユニット25は、一般的には、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。
【0027】
また、画像生成ユニット25は、スキャンコンバート以外の種々の画像処理を実行する。すなわち、画像生成ユニット25は、後述する微小構造物抽出処理の他、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いた輝度の最大値画像を再生成する方法(平滑化処理)、画像間の差分を用いる方法(差分演算)等を実行する。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0028】
画像メモリ(シネメモリ)26は、例えばフリーズする直前の複数フレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。この画像メモリ26に記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0029】
画像合成部27は、画像生成ユニット25又から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号としてモニター14に出力する。
【0030】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ28は、内部記憶部29から微小構造物抽出機能を実現するための専用プログラム、所定の画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0031】
内部記憶部29は、所定のスキャンシーケンス、各実施形態に係る微小構造物抽出機能を実現するための専用プログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、CFAR処理制御プログラム、ボディマーク生成プログラムその他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶部29のデータは、インターフェース部30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0032】
インターフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインターフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0033】
なお、本超音波診断装置1には、必要に応じて、位置検出装置15を設けることが可能である。この装置は、撮影対象(すなわち、診断部位)に対する超音波プローブ12の位置に関する情報を検出するものである。ここで、超音波プローブ12の位置に関する情報とは、プローブ12の絶対位置情報、相対位置情報、プローブ12の可動前の位置情報と可動速度及び時間、その他の走査時における超音波プローブ12の位置を特定するための情報である。
【0034】
図2は、位置検出装置15の一例を示した図である。同図に示すように、位置検出装置15は、可動ステージ150、駆動部151を有している。可動ステージ150には、専用アダプタを介して超音波プローブ12を設置することができる。駆動部151は、制御プロセッサ28からの制御に基づいて、設置された超音波プローブ12を可動ステージ150に沿って移動させる。また、駆動部151は、内部にロータリーエンコーダ等を有しており、可動ステージ150上における超音波プローブ12の位置を検出し、その検出結果を制御プロセッサ28に逐次送信する。
【0035】
超音波画像の取得に際しては、診断対象である乳房は、水槽17に水深させた状態で所定の位置に配置され、検査中は動かないよう固定される。また、超音波プローブ12及び位置検出器15は、水槽17の底面側に配置される。制御プロセッサ28は、超音波プローブ12が所定の速度で移動するように駆動部151を制御させつつ超音波送受信を実行することで、自走式超音波走査を実行する。プローブ12からの画像は、実施例1同様に装置本体に送られる。また、駆動部151から取得する位置情報は、後述するプローブ位置に関する情報生成にリアルタイムで利用されると共に、各フレームの付帯情報として記入され管理される。
【0036】
(微小構造物抽出機能)
超音波断層像(Bモード像)で微小な構造物と思われる輝点(以下、単に輝点)が観察されたとき、実際にはそれが本当に微細石灰化のような構造物であるか、乳腺のような組織構造の一部なのかは、判断しにくい。特に1枚の静止画像では診断することができないと言われている。
【0037】
しかし両者は、例えば次のような点で異なる。
【0038】
(A)微細石灰の組成は生体組織よりも硬く、原理的にはより大きな超音波反射信号が得られているはずである。我々の研究結果からも、微細石灰化による輝点の信号レベルは周囲のスペックルパタンの最大値よりもいくらか高いことが判明した。ただし輝度としてモニター表示された場合、この信号レベルの差を目視で判定することは難しいわけである。
【0039】
(B)微細石灰化は局在する微小構造物であり、一方で乳腺等の生体組織は3次元的に一定の範囲で連続する構造を持つ連続構造物であり、その空間分布の形態において、本質的に大きく異なる。よって奥行き方向の3次元的な連続性も加味すれば、両者の違いが判定できると期待できる。
【0040】
本機能は、この点に着目し、例えば乳房、肝臓、膵臓等の診断において、輝度の微小な違い、および空間分布の形態に基づいて両者を区別し、微小構造物が積極的に抽出された画像生成(微小構造物抽出画像)を生成するものである。
【0041】
なお、本微小構造物抽出機能を用いた処理(微小構造物抽出処理)は、画像群データをその対象とする。ここで、画像群データとは、複数の二次元画像を有するボリュームデータ、或いは異なる複数の二次元画像から構成されるデータ(完全なボリュームデータを必ずしも構成しない)を意味する。本実施形態においては、説明を具体的にするため、ボリュームデータとしての画像群データを用いた微小構造物抽出処理について説明する。この様な画像群データは、超音波プローブ12を、その振動子配列方向と直交する方向に沿って機械的に揺動させ、3次元領域を超音波走査することで取得することができる。この他、超音波振動素子が二次元的に配列された超音波プローブ12を用いて、電気的制御により3次元領域を超音波走査することでも、同様に取得することができる。さらに、図2に示した自走式走査が可能なデバイスを用いる撮影、或いは、超音波振動素子が1次元的に配列された超音波プローブ(必要に応じて、位置センサが設けられたもの)を用いて、手動によって複数断層を取得する撮影等でも、同様に取得することができる。
【0042】
図3は、微小構造物抽出処理を説明するための図である。同図に示すように、画像部データに含まれる複数の二次元画像から、対象画像31と参照画像32とを選択する。対象画像31は、本微小構造物抽出処理の対象とされる画像である。参照画像32は、対象画像31とは空間的に異なる(例えば、対象画像からkフレーム離れた)別の断層像であり、本微小構造物抽出処理に利用されるものである。これらの画像は、Bモード診断同様、プローブ本体から垂直方向の断面であることが望ましい。
【0043】
図4(a)は対象画像の模式図を、図4(b)は参照画像の模式図をそれぞれ示している。本微小構造物抽出処理では、対象画像から参照画像を差し引くことによって、差分画像を生成する。このとき、対象画像上の各画素(xi,yi)(対象画素)に対して、参上画像上に設定される参照領域Ri内に存在する画素の代表値を決定し、これを対象画素(xi,yi)の値から差し引くものとする。ここで、参照領域とは、参照画像上の座標が対象画素と同一な画素(対応画素)を含むように、任意のサイズで参照画像上に設定されるものである。なお、参照領域Riの代表値は、参照領域Riの特徴を代表するものであればどんなものでもよい。具体例としては、最大値、平均値、中央値等を挙げることができる。本実施形態においては、代表値として最大値を採用するものとする。この差分画像の生成は、次の式(1)ように表すことができる。
【0044】
Qi(xi,yi) = Pi(xi,yi) - MAX [ Pi-k (xi+m,yi+n) ] (1)
ここで、Qi(xi,yi)は差分画像の各画素の値、Pi(xi,yi)は対象画像上の対象画素の値、Pi-k (xi,yi)はPi(xi,yi)と空間的に対応する位置にある参照画像上の各画素の値、Pi-k (xi+m,yi+n)は参照領域Ri内の各画素の値、m、nは参照領域の大きさを指定する任意の値、MAX[]は[]内から最大値を選択する演算をそれぞれ示している。従って、図4(b)は、x軸方向及びy軸方向共に±2画素、計25画素からなる参照領域Riを例示したものとなっている。なお、この減算処理において、結果が負数の場合は全てゼロ(輝度地=黒)とするのが望ましい。
【0045】
本微小構造物抽出処理によって生成される差分画像は、連続構造物及びランダムなスペックルパタンを除去し、微小構造物を好適に映像化するものとなる。これは、以下の理由による。すなわち、画像群データを構成する二次元超音波画像上に残存する連続構造物は、微小石灰より大きな構造物であり、奥行き方法の連続性を持っていると考えられる。この観点より、超音波断層像のある1点に注目する場合、連続構造物は、例えば図5に示すような信号強度(画像の輝度)(a)の変化が緩やかであることが予想される。一方、微小構造物では、図5の信号強度(b)のごとく、特定の画像にのみ含まれることが予想される。従って、連続或いは近接するフレーム画像から差分画像を生成(例えば、画像Fi(対象画像)から画像Fi-1(参照画像)を減算)すると、当該差分画像により、不連続に存在する微小構造物(例えば微小石灰化部分)のみ抽出することができる場合がある。
【0046】
しかしながら、この様な画像間の差分だけでは、有効な抽出が行われないケースがあることも、発明者等の検討で明らかになっている。係るケースは、例えば対象画像上にスペックルパタンがランダムに発生する場合、対象画像と参照画像との間で空間的位置にずれが発生する場合等に顕著である。
【0047】
本微小構造物抽出処理では、対象画像上の各画素(xi,yi)につき、参照画像上に設定された参照領域Ri内に存在する画素の最大値を画素(xi,yi)の値から差し引くことで、微小構造物抽出画像としての差分画像を生成する。従って、例えば、対象画像と参照画像との間で空間的位置にずれが発生する場合であっても、対象画像上の対象画素によって映像化された部位は、参照画像上の参照領域に存在することになる。その結果、微小構造物の抽出性能を向上させることができる。
【0048】
本微小構造物抽出処理は、参照画像の選択、及び参照領域サイズの選択には拘泥されないが、その基準としては例えばものを挙げることができる。
【0049】
第1に、映像化ターゲット(今の場合、石灰化部位)の大きさに基づいて、参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、フレーム間の距離が小さいと画像間の差が小さくなる。従って、微小構造物の大きさが画像間の差を上回る場合には、差分結果がゼロとなることが予想される。この様な問題を解決するため、対象画像から、予測される微小構造物の大きさを上回る程度離れたフレームを、参照画像として選択することが好ましい。
【0050】
第2に、対象画像と参照画像との間で予想される位置ずれの大きさに基づいて、参照領域サイズを選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間の位置ずれが参照領域サイズを上回る場合には、対象画像上の対象画素によって映像化された部位が、参照画像上の参照領域に存在しなくなってしまう。係る問題を解決するため、参照領域は、対象画像と参照画像との間で予想される位置ずれの大きさを上回るサイズを持つことが好ましい。
【0051】
第3に、スペックルパタンの大きさに基づいて、参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間隔がスペックルパタンのサイズを上回る場合には、差分結果がゼロとなり、スペックルパタンを微小構造物と共に抽出してしまう。この様な問題を解決するため、対象画像との間隔がスペックルパタンの大きさを下回るように、参照画像を選択することが好ましい。なお、スペックルパタンのサイズは、送信超音波の周波数に依存する。従って、送信超音波の周波数に応じても、参照画像を選択することがさらに好ましい。
【0052】
第4に、映像化対象以外の構造物のサイズに基づいて、参照領域サイズ及び参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間隔が映像化対象以外の構造物のサイズを上回る場合には、差分結果がゼロとなり、当該構造物を映像化対象と共に抽出してしまう。この様な問題を解決するため、対象画像との間隔が映像化対象以外の構造物の大きさを下回るように、参照画像を選択することが好ましい。
【0053】
以上の基準に基づいて、参照画像の位置及び参照領域サイズは、入力装置13を介したマニュアル操作により、任意の値に設定することができる。また、参照画像の位置については、超音波断層面の奥行き方向に揺動もしくは走査する速度を制御することによっても、決定することができる。本実施形態においては、説明を具体的にするため、対象画像と参照画像との間の間隔及び参照領域サイズは、共に数ミリ程度であるとする。
【0054】
参照画像の位置は、以下のような手法により、自動的に決定することも可能である。すなわち、まず、画像生成ユニット25は、参照画像としてフレームFi-1を選択し、これを対象画像Fiとを用いて差分処理を行う。次に、結果として得られた差分画像上の輝度値(画素値)の総和S1を演算する。他のフレームFi-2、Fi-3、・・・を参照画像として同様の処理を実行し、各総和S2、 S3、・・・を同様に演算する。一般に、診断画像内の微小構造物は大量に存在しない。従って、各総和Siの多くは組織構造の微小な変化による残差であり、これはフレーム距離が離れるに従い増大していく。この点に着目し、予め定めた閾値より大きくなった総和Siに対応するフレームを、差分演算に好適な参照画像として選択することができる。
【0055】
ところで、ある画素の輝度値の変化が図5(b)に示す形態であれば、参照画像は対象画像に対し一枚で問題あっても、微小構造物と、連続構造物及びランダムなスペックルパタンとを好適に区別することができる。しかしながら、ある画素の輝度値の変化が図5(c)に示す形態である場合には、参照画像32が一枚だけでは、微小構造物と、連続構造物及びランダムなスペックルパタンとを好適に区別することができない。なぜなら、輝度値変化が図5(c)に示す形態である場合には、微小構造物では内にも関わらず、対象画像Fiと参照画像Fi+mとの差分はゼロにはならないからである。
【0056】
この様な問題を解決するため、本超音波診断装置1では、参照画像32を二枚以上設定することができる。例えば、図6に示すように対象画像から前後に±mフレーム離れた二つの参照画像を用いて、対象画像Fiと参照画像Fi+mとの差分値及び対象画像Fiと参照画像Fi-mとの差分値を計算する。その結果、双方の差分値の間で大小関係がある場合には、輝度値変化が図5(c)に示す形態であると推定できるため、差分画像の当該画素についての値として小さい方の差分値を採用する。なお、参照画像32を二枚以上設定する場合であっても、各参照画像の選択基準は既述の通りである。また、より好適な微小構造物抽出を可能とするため、参照画像は対象画像に対して対称に選択されることが好ましい。
【0057】
(差分画像の表示形態)
次に、微小構造物抽出処理によって得られる微小構造物抽出画像の表示形態について説明する。なお、以下に述べる各実施例に係る表示形態は、単独で、或いは複数を組み合わせて用いることが可能である。
【0058】
(実施例1)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出画像としての差分画像を、当該差分画像の生成に用いた対象画像の取得時の超音波プローブ位置を示す情報と共に表示するものである。超音波プローブ位置を示す情報は、その目的を果たすものであればどの様なものであってもよいが、典型例としては、図7Aに示すような、ボディマーク上に設定される超音波プローブ12の模式図を挙げることができる。この様な超音波プローブ位置を示す情報は、例えば図2に示した位置検出装置16により検出さるプローブ位置情報に基づいて生成することができる。図7Aのボディマークの場合、画像合成部27は、制御プロセッサ28の制御に従って、プローブ位置が示されたボディマークを生成し、差分画像と合成してモニター14に送り出す。これにより、図7Aに示した形態で、超音波プローブ位置を示す情報と共に差分画像を表示することができる。なお、必要に応じて、画像群データを構成する二次元画像の全てのプローブ位置情報に基づいて、超音波プローブ12の走査範囲或いは既に表示済みの領域を「軌跡」として、ボディマーク上に色別表示するようにしてもよい。
【0059】
(実施例2)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出処理によって得られる複数の差分画像(例えば、画像群データに対応する差分画像)を用いて図7Bに示すようなMIP処理(Maximan Intensity Projection:最大値投影処理)を実行し、その結果得られるMIP画像を微小構造物抽出画像として表示するものである。これにより、複数の差分画像に含まれる微小構造物の情報を、1枚のMIP画像に凝縮することができる。このMIP画像を電子カルテ等の添付データとして利用することで、管理データサイズの縮減を図ることができる。
【0060】
(実施例3)
本実施例に係る表示形態は、定量的解析を用いて画像群データから一定の信頼性を持つ差分画像を抽出し、これを用いて上記実施例2に係るMIP処理を実行するものである。すなわち、画像群データに対応する差分画像の各画素について輝度曲線を生成し、これを用いてある期間(例えばフレーム間隔)での時間的変化量及びその標準偏差を算出する。得られた結果のうち著しく異なる値を示す標準偏差(例えば、所定の閾値以上を持つ標準偏差)に対応する画素は、微小構造物である可能性が高いということができる。従って、当該画像を有する差分画像を抽出し、これらを用いたMIP処理を行うことで、微小構造物の抽出精度を向上させることができる。
【0061】
(実施例4)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出処理前のBモード画像、微小構造物抽出画像、差分画像を用いたMIP処理によって得られるMIP画像を、重畳表示、Dual表示、Triplex表示のいずれかの形態で表示することができる。重畳表示の場合、スペックルパタン除去前のBモード画像と、除去後の新たな画像は、基本色をそれぞれ変えて重畳することで、両者の識別が可能となる。また、Dual表示のような並列表示において、異なる種類の画像が同時に表示される各表示形態においては、各画像において同一の位置に対応するようにカーソルが配置される。従って、医師等の観察者は、目的に応じて所望の表示形態、所望のタイミングにて微小構造物抽出画像を表示できると共に、複数種類の画像によって微小構造物を迅速且つ簡単に特定し観察することができる。
【0062】
(動作)
図8は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。なお、説明を具体的にするため、図8の例では、上記実施例1に係る表示形態を採用するものとする。同図に示すように、まず、ボリューム走査開始に伴って微小構造物抽出処理へ遷移する指令を受けて、必要なパラメータ群が読み込まれる(ステップS1、S2)。ここで、微小構造物抽出処理に必要なパラメータ群とは、参照画像の数、対象画像との距離、平滑処理(最大値演算)の領域等である。
【0063】
次に、所定の手法を用いたボリュームスキャンによって乳房に関する画像群データが取得され、メモリに格納される(ステップS3)。その後、画像生成ユニット25は、参照画像毎の参照領域の代表値を算出し(ステップS4)、これを用いて既述の微小構造物抽出処理を実行することで、画像群データに対応する複数の差分画像を生成する(ステップS5)。得られた差分画像は、モニター14に例えばプローブ位置情報を有するボディマークと共に表示され、自動的に保存される(ステップS6)。
【0064】
その後、画像フリーズもしくは本発明の映像モードを終了する指令が行われるまで、診断装置は本微小構造物抽出処理を繰り返し実行する。
【0065】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0066】
本超音波診断装置によれば、例えば乳房、肝臓、膵臓等の診断において、不連続に存在する微小構造物を、当該画像と実質的に直交する方向(奥行き方向)関する情報をも用いて、抽出している。特に、微小構造物抽出処理における最大値平滑化は、対象画像と参照画像との単なる差分では除去しきれない、スペックルパタンの変動や、構造物の断面方向の位置ずれによる残存をも効果的に除去することが可能となる。
【0067】
図7C(a)は、通常のBモード画像を示した図であり、図7C(b)は、微小構造物抽出画像を示した図である。双方を比較した場合、図7C(a)に示す通常のBモード画像では、微小石灰化部位に加えて、組織の一部をも映像化されてしまっており、点状の高輝度部位が多く散在している。従って、どの点が微小石灰化部位に対応するのかを、肉眼で識別することはできない。一方、図7C(b)に示す微小構造物抽出画像では、微小石灰化部位のみが抽出され、点状の高輝度部位として映像化されている。
【0068】
従って、3次元的に連続して分布する連続構造物と局在する微小構造物とを弁別し、微小構造物が抽出された微小構造物抽出画像をリアルタイムで生成し表示することができる。医師等は、この微小構造物抽出画像を観察することで、目視ではスペックルパタンとの分別が難しく、且つある特定の断面像にのみ現れるような微小構造物を、短時間で発見することが可能となる。
【0069】
また、本超音波診断装置では、微小構造物抽出処理に用いる参照画像とするフレーム及び参照領域のサイズを任意に選択することができる。従って、検査目的や個体差に応じた参照画像とするフレーム及び参照領域のサイズを設定することで、個々の状況に対応させた微小構造物の好適な映像化が可能である。
【0070】
また、本超音波診断装置では、対象画像取得時のプローブ位置及び走査範囲が設定されたボディマークと共に微小構造物抽出画像を表示する、微小構造物抽出処理で得られた差分画像を用いて生成されるMIP画像を所定の形態で表示する、微小構造物抽出前後の画像を所定の形態で表示する等、種々の表示形態を採用することができる。従って、医師等は、所望の表示形態で微小構造物抽出画像を観察、又は種々の表示形態による微小構造物抽出画像を比較することで、目視ではスペックルパタンとの分別が難しく、かつある特定の断面像にのみ現れるような微小構造物を、短時間で発見することが可能となる。
【0071】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る超音波診断装置1は、画像群データに対し所定のスペックルリダクション処理(前段スペックルリダクション処理)を施した後、第1の実施形態で述べた微小構造物抽出処理を実行するものである。前段スペックルリダクション処理は、連続構造物及びスペックルパタン(ランダムなものも含む)の少なくとも一方の除去を目的とするものであれば、どの様なものであってもよい。具体例としては、画像群データを用いた3次元CFAR(Contrast False Alarm Rate)処理、画像群データを構成する各二次元画像に対する二次元CFAR処理、異なる方向からの送受信信号を重畳させてスペックルパタンを平滑化させる空間コンパウンド法、統計的性質を利用してスペックルパタンを除去する類似度フィルタ法等を挙げることができる。
【0072】
図9は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、ボリューム走査開始に伴って微小構造物抽出処理へ遷移する指令を受けて、必要なパラメータ群が読み込まれ、スキャンによって乳房に関する画像群データが取得され、メモリに格納される(ステップS1、S2、S3)。次に、画像生成ユニット25は、画像群データに対して前段スペックルリダクション処理が施した後(ステップS3')、参照画像毎の参照領域の代表値を算出し(ステップS4)、これを用いて既述の微小構造物抽出処理を実行することで、画像群データに対応する複数の差分画像を生成する(ステップS5)。得られた差分画像は、モニター14に例えばプローブ位置情報を有するボディマークと共に表示され、自動的に保存される(ステップS6)。
【0073】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、第3実施形態に係る超音波診断装置1は、3次元画像用の揺動プローブもしくは3次元画像用二次元振動子プローブではなく、1次元配列素子からなる二次元画像用プローブを用いて第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理又は第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理を実行するものである。本実施形態に係る超音波診断装置の構成は、超音波プローブ12が二次元画像用プローブである点以外は、図1に示したものと略同一である。なお、以下説明を具体的にするため、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理を行う場合を例とする。
【0075】
図10は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、被検体の走査が行われる(ステップS11)。この際、操作者は走査断層面を少しずつ変えながら、異なる断層像を取得することが前提となる。これらの画像は装置内メモリ(あるいは装置内ハードディスクなど)に逐次記録されていく(ステップ12)。
【0076】
画像取得が終了すると、入力装置13からの指示に従って微小構造物抽出処理へ遷移し、この時、記録された複数の画像が呼び出され、既述の(第1の実施形態で述べた)各処理が実行され、その結果が微小構造物抽出画像としてモニター14に表示される(ステップS13、S14)。操作者はこの新たな画像を見て読影を行い、好適な診断が行われれば、本フローを終了する(ステップS15)。一方、適当な診断情報が得られなかった場合は、微小構造物抽出処理のためのパラメータを変更するなどを行い(ステップS15、16)、新しいパラメータの基いて再度ステップS13、S14の各処理を繰り返す。
【0077】
本実施形態に係る超音波診断装置では、二次元画像用プローブを用いて少しずつ走査位置を変更しながら超音波画像を取得し、これを一旦メモリに格納する。その後、格納された超音波画像を読み出し、これを用いて微小構造物抽出処理を実行するという構成となっている。従って、超音波プローブ12が電子的制御又は機械的制御によって3次元領域を走査可能なものでない場合であっても、微小構造物抽出機能を実現することができる。また、微小構造物抽出画像はリアルタイムでは得られないものの、対象画像フレームを挟んだ両側の参照画像の情報が使用できるなど、利点は大きい。
【0078】
(第4の実施形態)
本実施形態では、事前に取得された画像群データを用いて、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理又は第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理を実行する画像処理装置に付いて説明する。この様な画像処理装置は、微小構造物抽出機能に係る各処理を実行するプログラム(微小構造物抽出プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、微小構造物抽出プログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0079】
図11は、第4の実施形態に係る画像処理装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本画像処理装置5は、操作部51、微小構造物抽出処理専用デバイス52、表示部53、制御部55、記憶部57、画像処理部58、送受信部59を具備している。
【0080】
操作部51は、操作者からの各種指示、条件、等を当該装置1に取り込むためのトラックボール、各種スイッチ、マウス、キーボード等を有している。
【0081】
表示部53は、超音波画像(Bモード画像、微小構造物抽出画像等)、所定の操作を行うための入力画面等を所定の形態にて表示する。
【0082】
制御部55は、当該画像処理装置5を構成する各ユニットを動的又は静的に制御する。特に、制御部5は、記憶部57に格納される微小構造物抽出プログラムを自身のメモリ上に展開し、これに従って表示に53、画像処理部58等を統括的に制御する。
【0083】
記憶部57は、微小構造物抽出プログラムを格納する。また、記憶部57は、ネットワークを介して送受信部59が取得した画像群データ、或いは脱着可能な記憶媒体を介して取得した画像データ等を格納する。
【0084】
画像処理部58は、制御部55の制御のもと、既述の微小構造物抽出処理を実行する。
【0085】
送受信部59は、ネットワークを介して超音波診断装置やPACS(Picture Archiving and Communication System)サーバと画像データを含む情報の送受信を行う。
【0086】
また、本画像処理装置5は、微小構造物抽出処理専用デバイス52を具備している。このデバイスは、当該画像処理装置5において微小構造物処理を行う際に必須とされるものではないが、事後的に微小構造物処理を行う場合により良好な操作性を実現するためのものである。具体例としては、以下の構成を持つものを挙げることができる。
【0087】
図12は、微小構造物抽出処理専用デバイス52の一例を示した図である。同図に示すように、微小構造物抽出処理専用デバイス52は、一般のパソコンに付属されるキーボード520の他に、超音波プローブ型ジョイスティック521、読影用専用ボタン522、及びトラックボール523からなる。ジョイスティック521は、少なくとも前後に移動可能なレバー型の操作具であり、診断対象の画像データに対し、表示させるフレーム位置を制御することが可能となっている。具体的には、動画像の再生、逆再生、コマ送り、早送り再生などが、操作者が移動させたジョイスティック521の位置等と連動するようになっている。このジョイスティック521は、好適には超音波プローブと同様な形状を有する。これによって操作者は、動画フレームを再生し、診断に必要な微小構造物を発見した時(普通、人間は認識に時間がかかるので、発見と同時にフレームを停止できない)、数フレーム戻って再確認する動作を、コンピュータによる事後読影診断であっても、実際に被検体を走査するのと同様な感覚で、プローブの移動を停止したり、走査方向を変えたりできることができる。
【0088】
また読影用専用ボタン522は、微小構造物抽出処理を組み合わせた読影を効率的に行うための種々の機能が割り付けられている。例えば、モニターに表示する画像は、微小構造物抽出処理前後の画像をボタン入力により切り替えが可能となっている。その他、所望の画像フレームを静止画として別途保存するボタン、画像中に注釈文字や矢印の入力など、診断装置上と同様の操作を指示する。またトラックボール523は、モニター上のポインターである。言うまでも無く、マウスで代用してもよい。
【0089】
なお、本画像処理装置5によって第1の微小構造物抽出処理を実行する場合には、記憶部57に格納された画像群データに対して図8に示すステップS4〜S6までの処理が、また、第2の微小構造物抽出処理を実行する場合には、同じく記憶部57に格納された画像群データに対して図に示すステップS3'〜S6までの処理が、それぞれ実行されることになる。
【0090】
本実施形態に係る画像処理装置によれば、第1又は第2の微小構造物抽出処理を事後的に、例えば医用ワークステーション等の端末において実行することができる。また、その際、微小構造物抽出処理専用デバイスを用いることで、撮影事後での画像観察であるにも関わらず、実際に被検体を走査中にプローブの移動を停止したり、走査方向を変えたりする状況と同様な感覚で、微小構造物抽出画像を表示することができる。その結果、好適な微小構造物抽出画像を、高い操作性にて効率よく観察することができ、医師等の作業負担を軽減させることができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0092】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上本発明によれば、例えば乳腺等の連続構造物と微小石灰化部分等の微小構造物とを正確に区別し、微小構造物を抽出することができる超音波診断装置等を実現することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…超音波診断装置、5…画像処理装置、12…超音波プローブ、11…装置本体、13…入力装置、14…モニター、15…位置検出装置、16…外部記憶装置、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…画像メモリ、27…画像合成部、28…制御プロセッサ(CPU)、29…内部記憶部、30…インターフェース部、51…操作部、52…微小構造物抽出処理専用デバイス、53…表示部、55…制御部、57…記憶部、58…画像処理部、59…送受信部、520…キーボード、521…超音波プローブ型ジョイスティック、522…読影用専用ボタン、523…トラックボール
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織のエコー信号から、生体臓器中の微小な構造物を抽出し表示する超音波診断装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査を行うことができる。この他、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便な診断手法であると言える。この超音波診断において用いられる超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
このような種々の長所を持つ超音波診断の一つに、乳がんの早期診断がある。乳房組織においては、乳癌の徴候として微小石灰化が発生するケースが多いことが知られている。微小石灰化病変は1個あるいは数個で局所に散在する。石灰は生体組織に比べ硬いため、超音波をよく反射するため画像上高輝度となることが期待される。しかしながら、実際に画像の中から目視する場合には、数百ミクロン程度であっても抽出するのは難しいと言われている。
【0004】
ところで、超音波画像上には、超音波のランダムな干渉に起因するスペックルパタンと呼ばれる干渉縞が発生する場合がある。このスペックルパタンは、肝硬変の診断等に利用される。その一方で、例えば上記乳癌検診の場合には見落とされがちな微小石灰化等の微小構造物と酷似しており、場合によっては紛らわしい画像情報となる。従って、乳癌診断等においてはスペックルパタンを除去したいというニーズがあり、そのための技術として、例えば空間コンパウンド、CFAR(Contrast False Alarm Rate:一定誤警報率)処理、類似度フィルタ等がある。ここで、空間コンパウンドとは、異なる方向からの送受信信号を重畳しスペックルを平滑化するものである(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。CFAR処理とは、対象画素を周囲の輝度平均で減算し、これを用いて高輝度部分を抽出するものである(例えば、特許文献1参照)。類似度フィルタとは、その統計的性質を利用して、スペックルを除去するものである。また、これらのスペックルパタン除去の手法の他、超音波診断の分野ではないが、微小石灰化を自動認識する試みが、主にX線診断画像の応用として種々報告されている(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
さらに、微小石灰化に代表される微小構造物を抽出するための他の技術としてMIP処理がある。これは、複数の画像フレームの最大輝度を代表値として、一枚のフレームに投影するというものである。主に3次元画像処理において、ボリュームデータを二次元画像として表示する際に用いられる。理想的には、複数フレームの情報が一枚に重畳され、情報量の高い画像を得ることができる。また、その他、従来の超音波診断装置に搭載されている画質調整パラメータを変更しスペックルパタンを軽減することも可能である。また、例えばダイナミックレンジを小さくすると特定の狭い範囲の信号のみが表示される。さらに、ゲインを低く設定するなど最適な調整を行えば、相対的に信号の小さいスペックルパタンは表示されず、相対的に信号の大きい微小構造物のみが画像化できる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特昭61−189476号公報
【特許文献2】特開2001−238884号公報
【特許文献3】特開2003−61964号公報
【特許文献4】特開2004−321582号公報
【特許文献5】特許第3596792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、微小物構造物を抽出するための従来の手法には、例えば次のような問題がある。
【0008】
診断対象の乳腺は乳管などの構造が複雑であり、もとより均質な臓器ではない。従って、従来のフィルタ処理を行うと、微小石灰化が検出されると同時に、乳腺構造も(構造物として)抽出されてしまい、両者を十分に区別することができない。
【0009】
また、乳管などは微小石灰化に比べて明らかに大きな構造物であるため、フィルタ処理にて残存しても、目視にて弁別が可能となることが期待されるが、それでも弁別が困難となることを、発明者らは研究でしばしば経験している。特に乳腺構造の一部のみが残存する場合は、フィルタ後の画像は点状に見えるため、微小石灰化に類似した画像となる場合がある。
【0010】
さらに、画像上のスペックルパタンがランダムに変動する場合がある。係る場合には、所定のスペックルリダクション処理を行ったとしても、スペックルが残存してしまい、石灰化部位と区別が困難になる。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、例えば乳腺等の連続構造物と微小石灰化部分等の微小構造物とを正確に区別し、微小構造物を抽出することができる超音波診断装置等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本実施形態に係る超音波診断装置は、第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、前記処理画像を表示する表示手段と、を具備することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、位置検出装置15の一例を示した図である。
【図3】図3は、微小構造物抽出処理を説明するための図である。
【図4】図4(a)は対象画像の模式図を、図4(b)は参照画像の模式図をそれぞれ示している。
【図5】図5は、画素毎の信号強度(画像の輝度)の変化例を示した図である。
【図6】図6は、画素毎の信号強度(画像の輝度)の変化例を示した図である。
【図7A】図7Aは、微小構造物抽出画像の表示形態の一例を示した図である。
【図7B】図7Bは、微小構造物抽出画像の表示形態の他の例を示した図である。
【図7C】図7C(a)は、通常のBモード画像を示した図であり、図7C(b)は、微小構造物抽出画像を示した図である。
【図8】図8は、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第4の実施形態に係る画像処理装置2の構成を示したブロック図である。
【図12】図12は、微小構造物抽出処理専用デバイス52の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置1の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本超音波診断装置1は、超音波プローブ12と装置本体11、入力装置13、モニター14、外部記憶装置16を具備している。また、装置本体11は、超音波送信ユニット21、超音波受信ユニット22、Bモード処理ユニット23、ドプラ処理ユニット24、画像生成ユニット25、画像メモリ26、画像合成部27、制御プロセッサ(CPU)28、内部記憶部29、インターフェース部30を具備している。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0016】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0017】
なお、本超音波装置1が具備する超音波プローブ12は、被検体の3次元領域を超音波走査可能なものである。そのため、超音波プローブ12は、振動子をその配列方向の直交方向に沿って機械的に揺動させ、3次元領域を超音波走査する構成、又は二次元的に配列された二次元振動素子を用いて電気的制御により3次元領域を超音波走査する構成等を有する。前者の構成を採用する場合、被検体の3次元的走査は前記揺動回路によって行われるため、検査者はプローブ本体を被検体に接触させるだけで、自動的に複数の二次元断層像を取得することができる。制御された揺動速度から断面間の正確な距離も検知できる。また、後者の構成を採用する場合には、原理的には、従来の二次元断層像を取得するのと同じ時間で、3次元領域を超音波走査することができる。
【0018】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール、マウス、キーボード等を有している。例えば、操作者が入力装置13の終了ボタンやFREEZEボタンを操作すると、超音波の送受信は終了し、当該超音波診断装置は一時停止状態となる。
【0019】
モニター14は、スキャンコンバータ25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報(Bモード画像)、血流情報(平均速度画像、分散画像、パワー画像等)、これらの組み合わせを画像として表示する。
【0020】
外部記憶装置16は、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体、及びこれらの媒体に記録された情報を読み出す装置である。各種記録媒体から読み出された情報は、インタフェース部30を介して制御プロセッサ28に転送される。
【0021】
超音波送信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0022】
なお、超音波送信ユニット21は、制御プロセッサ28の指示に従って所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0023】
超音波受信ユニット22は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0024】
Bモード処理ユニット23は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、スキャンコンバータ25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニター14に表示される。
【0025】
ドプラ処理ユニット24は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。
【0026】
画像生成ユニット25は、一般的には、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。
【0027】
また、画像生成ユニット25は、スキャンコンバート以外の種々の画像処理を実行する。すなわち、画像生成ユニット25は、後述する微小構造物抽出処理の他、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いた輝度の最大値画像を再生成する方法(平滑化処理)、画像間の差分を用いる方法(差分演算)等を実行する。なお、当該画像生成ユニット25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0028】
画像メモリ(シネメモリ)26は、例えばフリーズする直前の複数フレームに対応する超音波画像を保存するメモリである。この画像メモリ26に記憶されている画像を連続表示(シネ表示)することで、超音波動画像を表示することも可能である。
【0029】
画像合成部27は、画像生成ユニット25又から受け取った画像を種々のパラメータの文字情報や目盛等と共に合成し、ビデオ信号としてモニター14に出力する。
【0030】
制御プロセッサ28は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する。制御プロセッサ28は、内部記憶部29から微小構造物抽出機能を実現するための専用プログラム、所定の画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出して自身が有するメモリ上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する。
【0031】
内部記憶部29は、所定のスキャンシーケンス、各実施形態に係る微小構造物抽出機能を実現するための専用プログラム、画像生成、表示処理を実行するための制御プログラム、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、CFAR処理制御プログラム、ボディマーク生成プログラムその他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶部29のデータは、インターフェース部30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0032】
インターフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインターフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インターフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0033】
なお、本超音波診断装置1には、必要に応じて、位置検出装置15を設けることが可能である。この装置は、撮影対象(すなわち、診断部位)に対する超音波プローブ12の位置に関する情報を検出するものである。ここで、超音波プローブ12の位置に関する情報とは、プローブ12の絶対位置情報、相対位置情報、プローブ12の可動前の位置情報と可動速度及び時間、その他の走査時における超音波プローブ12の位置を特定するための情報である。
【0034】
図2は、位置検出装置15の一例を示した図である。同図に示すように、位置検出装置15は、可動ステージ150、駆動部151を有している。可動ステージ150には、専用アダプタを介して超音波プローブ12を設置することができる。駆動部151は、制御プロセッサ28からの制御に基づいて、設置された超音波プローブ12を可動ステージ150に沿って移動させる。また、駆動部151は、内部にロータリーエンコーダ等を有しており、可動ステージ150上における超音波プローブ12の位置を検出し、その検出結果を制御プロセッサ28に逐次送信する。
【0035】
超音波画像の取得に際しては、診断対象である乳房は、水槽17に水深させた状態で所定の位置に配置され、検査中は動かないよう固定される。また、超音波プローブ12及び位置検出器15は、水槽17の底面側に配置される。制御プロセッサ28は、超音波プローブ12が所定の速度で移動するように駆動部151を制御させつつ超音波送受信を実行することで、自走式超音波走査を実行する。プローブ12からの画像は、実施例1同様に装置本体に送られる。また、駆動部151から取得する位置情報は、後述するプローブ位置に関する情報生成にリアルタイムで利用されると共に、各フレームの付帯情報として記入され管理される。
【0036】
(微小構造物抽出機能)
超音波断層像(Bモード像)で微小な構造物と思われる輝点(以下、単に輝点)が観察されたとき、実際にはそれが本当に微細石灰化のような構造物であるか、乳腺のような組織構造の一部なのかは、判断しにくい。特に1枚の静止画像では診断することができないと言われている。
【0037】
しかし両者は、例えば次のような点で異なる。
【0038】
(A)微細石灰の組成は生体組織よりも硬く、原理的にはより大きな超音波反射信号が得られているはずである。我々の研究結果からも、微細石灰化による輝点の信号レベルは周囲のスペックルパタンの最大値よりもいくらか高いことが判明した。ただし輝度としてモニター表示された場合、この信号レベルの差を目視で判定することは難しいわけである。
【0039】
(B)微細石灰化は局在する微小構造物であり、一方で乳腺等の生体組織は3次元的に一定の範囲で連続する構造を持つ連続構造物であり、その空間分布の形態において、本質的に大きく異なる。よって奥行き方向の3次元的な連続性も加味すれば、両者の違いが判定できると期待できる。
【0040】
本機能は、この点に着目し、例えば乳房、肝臓、膵臓等の診断において、輝度の微小な違い、および空間分布の形態に基づいて両者を区別し、微小構造物が積極的に抽出された画像生成(微小構造物抽出画像)を生成するものである。
【0041】
なお、本微小構造物抽出機能を用いた処理(微小構造物抽出処理)は、画像群データをその対象とする。ここで、画像群データとは、複数の二次元画像を有するボリュームデータ、或いは異なる複数の二次元画像から構成されるデータ(完全なボリュームデータを必ずしも構成しない)を意味する。本実施形態においては、説明を具体的にするため、ボリュームデータとしての画像群データを用いた微小構造物抽出処理について説明する。この様な画像群データは、超音波プローブ12を、その振動子配列方向と直交する方向に沿って機械的に揺動させ、3次元領域を超音波走査することで取得することができる。この他、超音波振動素子が二次元的に配列された超音波プローブ12を用いて、電気的制御により3次元領域を超音波走査することでも、同様に取得することができる。さらに、図2に示した自走式走査が可能なデバイスを用いる撮影、或いは、超音波振動素子が1次元的に配列された超音波プローブ(必要に応じて、位置センサが設けられたもの)を用いて、手動によって複数断層を取得する撮影等でも、同様に取得することができる。
【0042】
図3は、微小構造物抽出処理を説明するための図である。同図に示すように、画像部データに含まれる複数の二次元画像から、対象画像31と参照画像32とを選択する。対象画像31は、本微小構造物抽出処理の対象とされる画像である。参照画像32は、対象画像31とは空間的に異なる(例えば、対象画像からkフレーム離れた)別の断層像であり、本微小構造物抽出処理に利用されるものである。これらの画像は、Bモード診断同様、プローブ本体から垂直方向の断面であることが望ましい。
【0043】
図4(a)は対象画像の模式図を、図4(b)は参照画像の模式図をそれぞれ示している。本微小構造物抽出処理では、対象画像から参照画像を差し引くことによって、差分画像を生成する。このとき、対象画像上の各画素(xi,yi)(対象画素)に対して、参上画像上に設定される参照領域Ri内に存在する画素の代表値を決定し、これを対象画素(xi,yi)の値から差し引くものとする。ここで、参照領域とは、参照画像上の座標が対象画素と同一な画素(対応画素)を含むように、任意のサイズで参照画像上に設定されるものである。なお、参照領域Riの代表値は、参照領域Riの特徴を代表するものであればどんなものでもよい。具体例としては、最大値、平均値、中央値等を挙げることができる。本実施形態においては、代表値として最大値を採用するものとする。この差分画像の生成は、次の式(1)ように表すことができる。
【0044】
Qi(xi,yi) = Pi(xi,yi) - MAX [ Pi-k (xi+m,yi+n) ] (1)
ここで、Qi(xi,yi)は差分画像の各画素の値、Pi(xi,yi)は対象画像上の対象画素の値、Pi-k (xi,yi)はPi(xi,yi)と空間的に対応する位置にある参照画像上の各画素の値、Pi-k (xi+m,yi+n)は参照領域Ri内の各画素の値、m、nは参照領域の大きさを指定する任意の値、MAX[]は[]内から最大値を選択する演算をそれぞれ示している。従って、図4(b)は、x軸方向及びy軸方向共に±2画素、計25画素からなる参照領域Riを例示したものとなっている。なお、この減算処理において、結果が負数の場合は全てゼロ(輝度地=黒)とするのが望ましい。
【0045】
本微小構造物抽出処理によって生成される差分画像は、連続構造物及びランダムなスペックルパタンを除去し、微小構造物を好適に映像化するものとなる。これは、以下の理由による。すなわち、画像群データを構成する二次元超音波画像上に残存する連続構造物は、微小石灰より大きな構造物であり、奥行き方法の連続性を持っていると考えられる。この観点より、超音波断層像のある1点に注目する場合、連続構造物は、例えば図5に示すような信号強度(画像の輝度)(a)の変化が緩やかであることが予想される。一方、微小構造物では、図5の信号強度(b)のごとく、特定の画像にのみ含まれることが予想される。従って、連続或いは近接するフレーム画像から差分画像を生成(例えば、画像Fi(対象画像)から画像Fi-1(参照画像)を減算)すると、当該差分画像により、不連続に存在する微小構造物(例えば微小石灰化部分)のみ抽出することができる場合がある。
【0046】
しかしながら、この様な画像間の差分だけでは、有効な抽出が行われないケースがあることも、発明者等の検討で明らかになっている。係るケースは、例えば対象画像上にスペックルパタンがランダムに発生する場合、対象画像と参照画像との間で空間的位置にずれが発生する場合等に顕著である。
【0047】
本微小構造物抽出処理では、対象画像上の各画素(xi,yi)につき、参照画像上に設定された参照領域Ri内に存在する画素の最大値を画素(xi,yi)の値から差し引くことで、微小構造物抽出画像としての差分画像を生成する。従って、例えば、対象画像と参照画像との間で空間的位置にずれが発生する場合であっても、対象画像上の対象画素によって映像化された部位は、参照画像上の参照領域に存在することになる。その結果、微小構造物の抽出性能を向上させることができる。
【0048】
本微小構造物抽出処理は、参照画像の選択、及び参照領域サイズの選択には拘泥されないが、その基準としては例えばものを挙げることができる。
【0049】
第1に、映像化ターゲット(今の場合、石灰化部位)の大きさに基づいて、参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、フレーム間の距離が小さいと画像間の差が小さくなる。従って、微小構造物の大きさが画像間の差を上回る場合には、差分結果がゼロとなることが予想される。この様な問題を解決するため、対象画像から、予測される微小構造物の大きさを上回る程度離れたフレームを、参照画像として選択することが好ましい。
【0050】
第2に、対象画像と参照画像との間で予想される位置ずれの大きさに基づいて、参照領域サイズを選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間の位置ずれが参照領域サイズを上回る場合には、対象画像上の対象画素によって映像化された部位が、参照画像上の参照領域に存在しなくなってしまう。係る問題を解決するため、参照領域は、対象画像と参照画像との間で予想される位置ずれの大きさを上回るサイズを持つことが好ましい。
【0051】
第3に、スペックルパタンの大きさに基づいて、参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間隔がスペックルパタンのサイズを上回る場合には、差分結果がゼロとなり、スペックルパタンを微小構造物と共に抽出してしまう。この様な問題を解決するため、対象画像との間隔がスペックルパタンの大きさを下回るように、参照画像を選択することが好ましい。なお、スペックルパタンのサイズは、送信超音波の周波数に依存する。従って、送信超音波の周波数に応じても、参照画像を選択することがさらに好ましい。
【0052】
第4に、映像化対象以外の構造物のサイズに基づいて、参照領域サイズ及び参照画像を選択することができる。すなわち、差分処理を行うにあたり、対象画像と参照画像との間隔が映像化対象以外の構造物のサイズを上回る場合には、差分結果がゼロとなり、当該構造物を映像化対象と共に抽出してしまう。この様な問題を解決するため、対象画像との間隔が映像化対象以外の構造物の大きさを下回るように、参照画像を選択することが好ましい。
【0053】
以上の基準に基づいて、参照画像の位置及び参照領域サイズは、入力装置13を介したマニュアル操作により、任意の値に設定することができる。また、参照画像の位置については、超音波断層面の奥行き方向に揺動もしくは走査する速度を制御することによっても、決定することができる。本実施形態においては、説明を具体的にするため、対象画像と参照画像との間の間隔及び参照領域サイズは、共に数ミリ程度であるとする。
【0054】
参照画像の位置は、以下のような手法により、自動的に決定することも可能である。すなわち、まず、画像生成ユニット25は、参照画像としてフレームFi-1を選択し、これを対象画像Fiとを用いて差分処理を行う。次に、結果として得られた差分画像上の輝度値(画素値)の総和S1を演算する。他のフレームFi-2、Fi-3、・・・を参照画像として同様の処理を実行し、各総和S2、 S3、・・・を同様に演算する。一般に、診断画像内の微小構造物は大量に存在しない。従って、各総和Siの多くは組織構造の微小な変化による残差であり、これはフレーム距離が離れるに従い増大していく。この点に着目し、予め定めた閾値より大きくなった総和Siに対応するフレームを、差分演算に好適な参照画像として選択することができる。
【0055】
ところで、ある画素の輝度値の変化が図5(b)に示す形態であれば、参照画像は対象画像に対し一枚で問題あっても、微小構造物と、連続構造物及びランダムなスペックルパタンとを好適に区別することができる。しかしながら、ある画素の輝度値の変化が図5(c)に示す形態である場合には、参照画像32が一枚だけでは、微小構造物と、連続構造物及びランダムなスペックルパタンとを好適に区別することができない。なぜなら、輝度値変化が図5(c)に示す形態である場合には、微小構造物では内にも関わらず、対象画像Fiと参照画像Fi+mとの差分はゼロにはならないからである。
【0056】
この様な問題を解決するため、本超音波診断装置1では、参照画像32を二枚以上設定することができる。例えば、図6に示すように対象画像から前後に±mフレーム離れた二つの参照画像を用いて、対象画像Fiと参照画像Fi+mとの差分値及び対象画像Fiと参照画像Fi-mとの差分値を計算する。その結果、双方の差分値の間で大小関係がある場合には、輝度値変化が図5(c)に示す形態であると推定できるため、差分画像の当該画素についての値として小さい方の差分値を採用する。なお、参照画像32を二枚以上設定する場合であっても、各参照画像の選択基準は既述の通りである。また、より好適な微小構造物抽出を可能とするため、参照画像は対象画像に対して対称に選択されることが好ましい。
【0057】
(差分画像の表示形態)
次に、微小構造物抽出処理によって得られる微小構造物抽出画像の表示形態について説明する。なお、以下に述べる各実施例に係る表示形態は、単独で、或いは複数を組み合わせて用いることが可能である。
【0058】
(実施例1)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出画像としての差分画像を、当該差分画像の生成に用いた対象画像の取得時の超音波プローブ位置を示す情報と共に表示するものである。超音波プローブ位置を示す情報は、その目的を果たすものであればどの様なものであってもよいが、典型例としては、図7Aに示すような、ボディマーク上に設定される超音波プローブ12の模式図を挙げることができる。この様な超音波プローブ位置を示す情報は、例えば図2に示した位置検出装置16により検出さるプローブ位置情報に基づいて生成することができる。図7Aのボディマークの場合、画像合成部27は、制御プロセッサ28の制御に従って、プローブ位置が示されたボディマークを生成し、差分画像と合成してモニター14に送り出す。これにより、図7Aに示した形態で、超音波プローブ位置を示す情報と共に差分画像を表示することができる。なお、必要に応じて、画像群データを構成する二次元画像の全てのプローブ位置情報に基づいて、超音波プローブ12の走査範囲或いは既に表示済みの領域を「軌跡」として、ボディマーク上に色別表示するようにしてもよい。
【0059】
(実施例2)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出処理によって得られる複数の差分画像(例えば、画像群データに対応する差分画像)を用いて図7Bに示すようなMIP処理(Maximan Intensity Projection:最大値投影処理)を実行し、その結果得られるMIP画像を微小構造物抽出画像として表示するものである。これにより、複数の差分画像に含まれる微小構造物の情報を、1枚のMIP画像に凝縮することができる。このMIP画像を電子カルテ等の添付データとして利用することで、管理データサイズの縮減を図ることができる。
【0060】
(実施例3)
本実施例に係る表示形態は、定量的解析を用いて画像群データから一定の信頼性を持つ差分画像を抽出し、これを用いて上記実施例2に係るMIP処理を実行するものである。すなわち、画像群データに対応する差分画像の各画素について輝度曲線を生成し、これを用いてある期間(例えばフレーム間隔)での時間的変化量及びその標準偏差を算出する。得られた結果のうち著しく異なる値を示す標準偏差(例えば、所定の閾値以上を持つ標準偏差)に対応する画素は、微小構造物である可能性が高いということができる。従って、当該画像を有する差分画像を抽出し、これらを用いたMIP処理を行うことで、微小構造物の抽出精度を向上させることができる。
【0061】
(実施例4)
本実施例に係る表示形態は、微小構造物抽出処理前のBモード画像、微小構造物抽出画像、差分画像を用いたMIP処理によって得られるMIP画像を、重畳表示、Dual表示、Triplex表示のいずれかの形態で表示することができる。重畳表示の場合、スペックルパタン除去前のBモード画像と、除去後の新たな画像は、基本色をそれぞれ変えて重畳することで、両者の識別が可能となる。また、Dual表示のような並列表示において、異なる種類の画像が同時に表示される各表示形態においては、各画像において同一の位置に対応するようにカーソルが配置される。従って、医師等の観察者は、目的に応じて所望の表示形態、所望のタイミングにて微小構造物抽出画像を表示できると共に、複数種類の画像によって微小構造物を迅速且つ簡単に特定し観察することができる。
【0062】
(動作)
図8は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。なお、説明を具体的にするため、図8の例では、上記実施例1に係る表示形態を採用するものとする。同図に示すように、まず、ボリューム走査開始に伴って微小構造物抽出処理へ遷移する指令を受けて、必要なパラメータ群が読み込まれる(ステップS1、S2)。ここで、微小構造物抽出処理に必要なパラメータ群とは、参照画像の数、対象画像との距離、平滑処理(最大値演算)の領域等である。
【0063】
次に、所定の手法を用いたボリュームスキャンによって乳房に関する画像群データが取得され、メモリに格納される(ステップS3)。その後、画像生成ユニット25は、参照画像毎の参照領域の代表値を算出し(ステップS4)、これを用いて既述の微小構造物抽出処理を実行することで、画像群データに対応する複数の差分画像を生成する(ステップS5)。得られた差分画像は、モニター14に例えばプローブ位置情報を有するボディマークと共に表示され、自動的に保存される(ステップS6)。
【0064】
その後、画像フリーズもしくは本発明の映像モードを終了する指令が行われるまで、診断装置は本微小構造物抽出処理を繰り返し実行する。
【0065】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0066】
本超音波診断装置によれば、例えば乳房、肝臓、膵臓等の診断において、不連続に存在する微小構造物を、当該画像と実質的に直交する方向(奥行き方向)関する情報をも用いて、抽出している。特に、微小構造物抽出処理における最大値平滑化は、対象画像と参照画像との単なる差分では除去しきれない、スペックルパタンの変動や、構造物の断面方向の位置ずれによる残存をも効果的に除去することが可能となる。
【0067】
図7C(a)は、通常のBモード画像を示した図であり、図7C(b)は、微小構造物抽出画像を示した図である。双方を比較した場合、図7C(a)に示す通常のBモード画像では、微小石灰化部位に加えて、組織の一部をも映像化されてしまっており、点状の高輝度部位が多く散在している。従って、どの点が微小石灰化部位に対応するのかを、肉眼で識別することはできない。一方、図7C(b)に示す微小構造物抽出画像では、微小石灰化部位のみが抽出され、点状の高輝度部位として映像化されている。
【0068】
従って、3次元的に連続して分布する連続構造物と局在する微小構造物とを弁別し、微小構造物が抽出された微小構造物抽出画像をリアルタイムで生成し表示することができる。医師等は、この微小構造物抽出画像を観察することで、目視ではスペックルパタンとの分別が難しく、且つある特定の断面像にのみ現れるような微小構造物を、短時間で発見することが可能となる。
【0069】
また、本超音波診断装置では、微小構造物抽出処理に用いる参照画像とするフレーム及び参照領域のサイズを任意に選択することができる。従って、検査目的や個体差に応じた参照画像とするフレーム及び参照領域のサイズを設定することで、個々の状況に対応させた微小構造物の好適な映像化が可能である。
【0070】
また、本超音波診断装置では、対象画像取得時のプローブ位置及び走査範囲が設定されたボディマークと共に微小構造物抽出画像を表示する、微小構造物抽出処理で得られた差分画像を用いて生成されるMIP画像を所定の形態で表示する、微小構造物抽出前後の画像を所定の形態で表示する等、種々の表示形態を採用することができる。従って、医師等は、所望の表示形態で微小構造物抽出画像を観察、又は種々の表示形態による微小構造物抽出画像を比較することで、目視ではスペックルパタンとの分別が難しく、かつある特定の断面像にのみ現れるような微小構造物を、短時間で発見することが可能となる。
【0071】
(第2の実施形態)
本実施形態に係る超音波診断装置1は、画像群データに対し所定のスペックルリダクション処理(前段スペックルリダクション処理)を施した後、第1の実施形態で述べた微小構造物抽出処理を実行するものである。前段スペックルリダクション処理は、連続構造物及びスペックルパタン(ランダムなものも含む)の少なくとも一方の除去を目的とするものであれば、どの様なものであってもよい。具体例としては、画像群データを用いた3次元CFAR(Contrast False Alarm Rate)処理、画像群データを構成する各二次元画像に対する二次元CFAR処理、異なる方向からの送受信信号を重畳させてスペックルパタンを平滑化させる空間コンパウンド法、統計的性質を利用してスペックルパタンを除去する類似度フィルタ法等を挙げることができる。
【0072】
図9は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、ボリューム走査開始に伴って微小構造物抽出処理へ遷移する指令を受けて、必要なパラメータ群が読み込まれ、スキャンによって乳房に関する画像群データが取得され、メモリに格納される(ステップS1、S2、S3)。次に、画像生成ユニット25は、画像群データに対して前段スペックルリダクション処理が施した後(ステップS3')、参照画像毎の参照領域の代表値を算出し(ステップS4)、これを用いて既述の微小構造物抽出処理を実行することで、画像群データに対応する複数の差分画像を生成する(ステップS5)。得られた差分画像は、モニター14に例えばプローブ位置情報を有するボディマークと共に表示され、自動的に保存される(ステップS6)。
【0073】
以上述べた構成によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、第3実施形態に係る超音波診断装置1は、3次元画像用の揺動プローブもしくは3次元画像用二次元振動子プローブではなく、1次元配列素子からなる二次元画像用プローブを用いて第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理又は第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理を実行するものである。本実施形態に係る超音波診断装置の構成は、超音波プローブ12が二次元画像用プローブである点以外は、図1に示したものと略同一である。なお、以下説明を具体的にするため、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理を行う場合を例とする。
【0075】
図10は、本実施形態に係る微小構造物抽出処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、被検体の走査が行われる(ステップS11)。この際、操作者は走査断層面を少しずつ変えながら、異なる断層像を取得することが前提となる。これらの画像は装置内メモリ(あるいは装置内ハードディスクなど)に逐次記録されていく(ステップ12)。
【0076】
画像取得が終了すると、入力装置13からの指示に従って微小構造物抽出処理へ遷移し、この時、記録された複数の画像が呼び出され、既述の(第1の実施形態で述べた)各処理が実行され、その結果が微小構造物抽出画像としてモニター14に表示される(ステップS13、S14)。操作者はこの新たな画像を見て読影を行い、好適な診断が行われれば、本フローを終了する(ステップS15)。一方、適当な診断情報が得られなかった場合は、微小構造物抽出処理のためのパラメータを変更するなどを行い(ステップS15、16)、新しいパラメータの基いて再度ステップS13、S14の各処理を繰り返す。
【0077】
本実施形態に係る超音波診断装置では、二次元画像用プローブを用いて少しずつ走査位置を変更しながら超音波画像を取得し、これを一旦メモリに格納する。その後、格納された超音波画像を読み出し、これを用いて微小構造物抽出処理を実行するという構成となっている。従って、超音波プローブ12が電子的制御又は機械的制御によって3次元領域を走査可能なものでない場合であっても、微小構造物抽出機能を実現することができる。また、微小構造物抽出画像はリアルタイムでは得られないものの、対象画像フレームを挟んだ両側の参照画像の情報が使用できるなど、利点は大きい。
【0078】
(第4の実施形態)
本実施形態では、事前に取得された画像群データを用いて、第1の実施形態に係る微小構造物抽出処理又は第2の実施形態に係る微小構造物抽出処理を実行する画像処理装置に付いて説明する。この様な画像処理装置は、微小構造物抽出機能に係る各処理を実行するプログラム(微小構造物抽出プログラム)をワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、微小構造物抽出プログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。
【0079】
図11は、第4の実施形態に係る画像処理装置5の構成を示したブロック図である。同図に示すように、本画像処理装置5は、操作部51、微小構造物抽出処理専用デバイス52、表示部53、制御部55、記憶部57、画像処理部58、送受信部59を具備している。
【0080】
操作部51は、操作者からの各種指示、条件、等を当該装置1に取り込むためのトラックボール、各種スイッチ、マウス、キーボード等を有している。
【0081】
表示部53は、超音波画像(Bモード画像、微小構造物抽出画像等)、所定の操作を行うための入力画面等を所定の形態にて表示する。
【0082】
制御部55は、当該画像処理装置5を構成する各ユニットを動的又は静的に制御する。特に、制御部5は、記憶部57に格納される微小構造物抽出プログラムを自身のメモリ上に展開し、これに従って表示に53、画像処理部58等を統括的に制御する。
【0083】
記憶部57は、微小構造物抽出プログラムを格納する。また、記憶部57は、ネットワークを介して送受信部59が取得した画像群データ、或いは脱着可能な記憶媒体を介して取得した画像データ等を格納する。
【0084】
画像処理部58は、制御部55の制御のもと、既述の微小構造物抽出処理を実行する。
【0085】
送受信部59は、ネットワークを介して超音波診断装置やPACS(Picture Archiving and Communication System)サーバと画像データを含む情報の送受信を行う。
【0086】
また、本画像処理装置5は、微小構造物抽出処理専用デバイス52を具備している。このデバイスは、当該画像処理装置5において微小構造物処理を行う際に必須とされるものではないが、事後的に微小構造物処理を行う場合により良好な操作性を実現するためのものである。具体例としては、以下の構成を持つものを挙げることができる。
【0087】
図12は、微小構造物抽出処理専用デバイス52の一例を示した図である。同図に示すように、微小構造物抽出処理専用デバイス52は、一般のパソコンに付属されるキーボード520の他に、超音波プローブ型ジョイスティック521、読影用専用ボタン522、及びトラックボール523からなる。ジョイスティック521は、少なくとも前後に移動可能なレバー型の操作具であり、診断対象の画像データに対し、表示させるフレーム位置を制御することが可能となっている。具体的には、動画像の再生、逆再生、コマ送り、早送り再生などが、操作者が移動させたジョイスティック521の位置等と連動するようになっている。このジョイスティック521は、好適には超音波プローブと同様な形状を有する。これによって操作者は、動画フレームを再生し、診断に必要な微小構造物を発見した時(普通、人間は認識に時間がかかるので、発見と同時にフレームを停止できない)、数フレーム戻って再確認する動作を、コンピュータによる事後読影診断であっても、実際に被検体を走査するのと同様な感覚で、プローブの移動を停止したり、走査方向を変えたりできることができる。
【0088】
また読影用専用ボタン522は、微小構造物抽出処理を組み合わせた読影を効率的に行うための種々の機能が割り付けられている。例えば、モニターに表示する画像は、微小構造物抽出処理前後の画像をボタン入力により切り替えが可能となっている。その他、所望の画像フレームを静止画として別途保存するボタン、画像中に注釈文字や矢印の入力など、診断装置上と同様の操作を指示する。またトラックボール523は、モニター上のポインターである。言うまでも無く、マウスで代用してもよい。
【0089】
なお、本画像処理装置5によって第1の微小構造物抽出処理を実行する場合には、記憶部57に格納された画像群データに対して図8に示すステップS4〜S6までの処理が、また、第2の微小構造物抽出処理を実行する場合には、同じく記憶部57に格納された画像群データに対して図に示すステップS3'〜S6までの処理が、それぞれ実行されることになる。
【0090】
本実施形態に係る画像処理装置によれば、第1又は第2の微小構造物抽出処理を事後的に、例えば医用ワークステーション等の端末において実行することができる。また、その際、微小構造物抽出処理専用デバイスを用いることで、撮影事後での画像観察であるにも関わらず、実際に被検体を走査中にプローブの移動を停止したり、走査方向を変えたりする状況と同様な感覚で、微小構造物抽出画像を表示することができる。その結果、好適な微小構造物抽出画像を、高い操作性にて効率よく観察することができ、医師等の作業負担を軽減させることができる。
【0091】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0092】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上本発明によれば、例えば乳腺等の連続構造物と微小石灰化部分等の微小構造物とを正確に区別し、微小構造物を抽出することができる超音波診断装置等を実現することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…超音波診断装置、5…画像処理装置、12…超音波プローブ、11…装置本体、13…入力装置、14…モニター、15…位置検出装置、16…外部記憶装置、21…超音波送信ユニット、22…超音波受信ユニット、23…Bモード処理ユニット、24…ドプラ処理ユニット、25…画像生成ユニット、26…画像メモリ、27…画像合成部、28…制御プロセッサ(CPU)、29…内部記憶部、30…インターフェース部、51…操作部、52…微小構造物抽出処理専用デバイス、53…表示部、55…制御部、57…記憶部、58…画像処理部、59…送受信部、520…キーボード、521…超音波プローブ型ジョイスティック、522…読影用専用ボタン、523…トラックボール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の超音波画像は、奥行き方向に離間していることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
複数の超音波画像を記憶する記憶手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記複数の超音波画像の中から、前記第1の超音波画像の撮像位置に基づいて前記第2の超音波画像を選択すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記参照領域内の画素値の最大値、平均値、あるいは中央値のうちいずれかを前記代表画素値として決定することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記所定の画素と前記代表画素値との比較に基づいて前記処理画像の画素値を決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記所定の画素と空間的に対応する画素を含む領域を前記参照領域として設定することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定し、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定することで、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を所定の形態にて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記参照領域は、前記処理画像の画像面に対し、奥行き方向に離間した位置に配置されることを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
複数の超音波画像の中から、前記第2の超音波画像を指定するための指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数の超音波画像のそれぞれと前記第1の超音波画像とを用いた差分処理を実行することで、前記複数の超音波画像のそれぞれに対応する差分画像を取得し、前記各差分画像の輝度値の総和に基づいて前記第2の超音波画像を指定する指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記参照領域のサイズを指定するための指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記第2の超音波画像は、前記第1の超音波画像に関して対称に位置する二つの超音波画像であって、
前記画像処理手段は、前記第2の超音波画像のそれぞれについて前記画像処理を実行した結果に基づいて、前記画像処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記画像処理手段は、複数の前記第1の超音波画像について前記画像処理を実行することで、複数の処理画像を生成し、前記複数の処理画像を用いた最大値投影処理を実行することで、前記処理画像を生成し、
前記表示手段は、前記最大値投影画像を所定の形態にて表示すること、
を特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は、
前記第1の超音波画像について、スペックルパタン成分を除去するための所定の処理を実行し、
前記所定の処理後の前記第1の超音波画像を用いて、前記画像処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至13のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記表示手段は、前記第1の超音波画像に付加された超音波プローブの位置に関する情報に基づいて、超音波プローブの位置が示されたボディマークを表示することを特徴とする請求項1乃至14のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記画像処理を実行する場合に、その空間的な動きに連動して前記第1の超音波画像の位置を指定する指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至15のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項17】
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項18】
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定し、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定することで、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を所定の形態にて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項19】
コンピュータに、
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像上に設定させ、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定させる画像処理を実行させ、処理画像を生成させる画像処理機能と、
前記処理画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項20】
コンピュータに、
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定させ、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定させることで、処理画像を生成させる画像処理機能と、
前記処理画像を所定の形態にて表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項21】
被検体の所定領域をBモードで超音波走査し、複数の超音波データを取得するデータ取得手段と、
前記複数の超音波データを用いて、Bモード画像と前記所定領域における微小構造物を抽出した抽出画像とを生成する画像生成手段と、
前記抽出画像を、前記Bモード画像とは異なる色彩を割り当てて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の超音波画像は、奥行き方向に離間していることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
複数の超音波画像を記憶する記憶手段を更に備え、
前記画像処理手段は、前記複数の超音波画像の中から、前記第1の超音波画像の撮像位置に基づいて前記第2の超音波画像を選択すること、
を特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、前記参照領域内の画素値の最大値、平均値、あるいは中央値のうちいずれかを前記代表画素値として決定することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記画像処理手段は、前記所定の画素と前記代表画素値との比較に基づいて前記処理画像の画素値を決定することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記所定の画素と空間的に対応する画素を含む領域を前記参照領域として設定することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定し、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定することで、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を所定の形態にて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記参照領域は、前記処理画像の画像面に対し、奥行き方向に離間した位置に配置されることを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
複数の超音波画像の中から、前記第2の超音波画像を指定するための指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
複数の超音波画像のそれぞれと前記第1の超音波画像とを用いた差分処理を実行することで、前記複数の超音波画像のそれぞれに対応する差分画像を取得し、前記各差分画像の輝度値の総和に基づいて前記第2の超音波画像を指定する指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記参照領域のサイズを指定するための指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記第2の超音波画像は、前記第1の超音波画像に関して対称に位置する二つの超音波画像であって、
前記画像処理手段は、前記第2の超音波画像のそれぞれについて前記画像処理を実行した結果に基づいて、前記画像処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項13】
前記画像処理手段は、複数の前記第1の超音波画像について前記画像処理を実行することで、複数の処理画像を生成し、前記複数の処理画像を用いた最大値投影処理を実行することで、前記処理画像を生成し、
前記表示手段は、前記最大値投影画像を所定の形態にて表示すること、
を特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は、
前記第1の超音波画像について、スペックルパタン成分を除去するための所定の処理を実行し、
前記所定の処理後の前記第1の超音波画像を用いて、前記画像処理を実行すること、
を特徴とする請求項1乃至13のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項15】
前記表示手段は、前記第1の超音波画像に付加された超音波プローブの位置に関する情報に基づいて、超音波プローブの位置が示されたボディマークを表示することを特徴とする請求項1乃至14のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項16】
前記画像処理を実行する場合に、その空間的な動きに連動して前記第1の超音波画像の位置を指定する指定手段をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至15のうちいずれか一項記載の超音波診断装置。
【請求項17】
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像に設定し、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定する画像処理を行って、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項18】
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定し、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定することで、処理画像を生成する画像処理手段と、
前記処理画像を所定の形態にて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波画像処理装置。
【請求項19】
コンピュータに、
第1の超音波画像と、前記第1の超音波画像と撮像位置の異なる第2の超音波画像と、を用いた画像処理であって、第1の超音波画像の所定の画素に対応する参照領域を前記第2の超音波画像上に設定させ、前記参照領域の代表画素値と前記所定の画素の画素値とに基づいて画素値を決定させる画像処理を実行させ、処理画像を生成させる画像処理機能と、
前記処理画像を表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項20】
コンピュータに、
超音波画像データの所定位置の画素に対し離間した参照領域内の代表画素値を決定させ、前記所定位置の画素値と前記代表画素値とに基づいて前記所定位置の画素値を決定させることで、処理画像を生成させる画像処理機能と、
前記処理画像を所定の形態にて表示させる表示機能と、
を実現させることを特徴とする超音波画像処理プログラム。
【請求項21】
被検体の所定領域をBモードで超音波走査し、複数の超音波データを取得するデータ取得手段と、
前記複数の超音波データを用いて、Bモード画像と前記所定領域における微小構造物を抽出した抽出画像とを生成する画像生成手段と、
前記抽出画像を、前記Bモード画像とは異なる色彩を割り当てて表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−56178(P2013−56178A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−243871(P2012−243871)
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2006−147265(P2006−147265)の分割
【原出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年11月5日(2012.11.5)
【分割の表示】特願2006−147265(P2006−147265)の分割
【原出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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