説明

超音波診断装置および超音波画像生成方法

【課題】簡単な構造の超音波探触子を用いながらも、効率よく超音波の送出を行って高画質の超音波画像を生成することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】有機圧電素子34の有機圧電体34aは無機圧電素子32から送信される超音波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さDを有し、信号線電極層34bに有機圧電素子34の静電容量に対し0.1〜5倍の範囲内の静電容量を有する伝送ケーブル54を介して受信回路5内の有機圧電素子用アンプ52が接続され、複数の有機圧電素子34は、送信時に音響整合層33に続く第2の音響整合層として作用し、受信時には、非共振型の受信デバイスとして利用され、受信信号が信号線電極層34bから伝送ケーブル54を介して有機圧電素子用アンプ52に伝送されて増幅された後、有機圧電素子用A/Dコンバータ53でA/D変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波診断装置および超音波画像生成方法に係り、特に、アレイ状に配列された複数の有機圧電素子を用いて超音波の送受信を行う超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、超音波探触子から被検体内に向けて超音波ビームを送信し、被検体からの超音波エコーを超音波探触子で受信して、その受信信号を電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
また、近年、より正確な診断を行うために、被検体の非線形性により超音波波形が歪むことで発生する高調波成分を受信して映像化するハーモニックイメージングが脚光を浴びつつある。
このハーモニックイメージングに適した超音波探触子として、例えば、特許文献1に開示されているように、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の無機圧電体を用いた複数の無機圧電素子とポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の有機圧電体を用いた複数の有機圧電素子とを積層形成したものが提案されている。
無機圧電素子により高出力の超音波ビームを送信し、有機圧電素子により高調波の信号を高感度に受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−155863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の無機圧電素子と複数の有機圧電素子との間には、無機圧電素子から発せられた超音波を効率よく送出させるために音響整合層が配置される。この音響整合層は、無機圧電素子から送信される基本波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さを有し、これにより、音響整合層の表面での反射を防止すると共に、無機圧電素子の音響インピーダンスと生体である被検体の音響インピーダンスとの中間的な値の音響インピーダンスを有する材料から形成されることで、音響インピーダンスのマッチングを行い、無機圧電素子から送信される超音波を効率よく被検体内に入射させるように構成されている。
【0006】
しかしながら、無機圧電素子と被検体とでは、固有の音響インピーダンスが大きく異なるため、1つの音響整合層では十分なマッチング効果を得ることができない場合がある。
互いに異なる音響インピーダンスを有する複数の音響整合層を音響インピーダンスの値の順序で積層して使用する方法もあるが、超音波探触子の構造が複雑になってしまう。
【0007】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、簡単な構造の超音波探触子を用いながらも、効率よく超音波の送出を行って高画質の超音波画像を生成することができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る超音波診断装置は、音響整合層を挟んで複数の無機圧電素子と複数の有機圧電素子とが互いに積層された超音波探触子を用いて超音波の送受信を行うことにより得られる受信信号に基づき超音波画像を生成して表示する超音波診断装置であって、複数の有機圧電素子を第2の音響整合層として複数の無機圧電素子から超音波を送信する送信回路と、複数の有機圧電素子を非共振型の受信デバイスとして利用して超音波エコーを受信することにより得られた受信信号を処理してサンプルデータを生成する受信回路と、受信回路で生成されたサンプルデータに基づいて超音波画像を生成する画像生成部とを備えたものである。
【0009】
複数の有機圧電素子は、複数の無機圧電素子から送信される基本波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さを有することが好ましい。
画像生成部は、複数の有機圧電素子により得られた受信信号を任意の周波数で画像化することにより超音波画像を生成することができる。好ましくは、画像生成部は、複数の有機圧電素子により得られた受信信号を、複数の無機圧電素子から送信される基本波に対するn次高調波の周波数で画像化することにより超音波画像を生成する。
受信回路は、複数の無機圧電素子により得られた受信信号と複数の有機圧電素子により得られた受信信号の双方に基づいてサンプルデータを生成することもできる。
受信回路は、それぞれの有機圧電素子に対して0.1〜5倍の静電容量を有する伝送ケーブルを介して有機圧電素子で得られた受信信号をアンプに伝送して増幅することが好ましい。
【0010】
この発明に係る超音波画像生成方法は、音響整合層を挟んで複数の無機圧電素子と複数の有機圧電素子とが互いに積層された超音波探触子を用いて超音波画像を生成する方法であって、複数の有機圧電素子を第2の音響整合層として複数の無機圧電素子から超音波を送信し、複数の有機圧電素子を非共振型の受信デバイスとして利用して超音波エコーを受信し、複数の有機圧電素子により得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、複数の有機圧電素子を第2の音響整合層として複数の無機圧電素子から超音波を送信すると共に、複数の有機圧電素子を非共振型の受信デバイスとして利用して超音波エコーを受信するので、簡単な構造の超音波探触子を用いながらも、効率よく超音波の送出を行って高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態で用いられた超音波探触子の構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態における超音波探触子と受信回路の接続状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、この超音波プローブ1に接続された診断装置本体2とを備えている。
超音波プローブ1は、超音波探触子3を有し、この超音波探触子3に送信回路4と受信回路5が接続され、送信回路4および受信回路5にプローブ制御部6が接続されている。
【0014】
診断装置本体2は、超音波プローブ1の受信回路5に接続された信号処理部11を有し、この信号処理部11にDSC(Digital Scan Converter)12、画像処理部13、表示制御部14および表示部15が順次接続されている。画像処理部13には、画像メモリ16が接続され、信号処理部11、DSC12、画像処理部13および画像メモリ16により画像生成部17が形成されている。信号処理部11、DSC12および表示制御部14に本体制御部18が接続されており、本体制御部18に操作部19および格納部20がそれぞれ接続されている。
また、超音波プローブ1のプローブ制御部6と診断装置本体2の本体制御部18が互いに接続されている。
【0015】
超音波プローブ1の超音波探触子3は、アレイ状に配列された複数の超音波トランスデューサを有している。
送信回路4は、例えば、複数のパルサを含んでおり、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、超音波探触子3の複数の超音波トランスデューサから送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数の超音波トランスデューサに供給する。
【0016】
受信回路5は、超音波探触子3の各超音波トランスデューサで得られた受信信号を増幅してA/D変換した後、プローブ制御部6からの制御信号に応じて選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速または音速の分布に従い、各受信信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたサンプルデータ(音線信号)が生成される。
プローブ制御部6は、診断装置本体2の本体制御部18から伝送される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ1の各部の制御を行う。
【0017】
診断装置本体2の信号処理部11は、超音波プローブ1の受信回路6で生成されたサンプルデータに対し、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
DSC12は、信号処理部11で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部13は、DSC12から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部14に出力する、あるいは画像メモリ16に格納する。
【0018】
表示制御部14は、画像処理部13によって画像処理が施されたBモード画像信号に基づいて、表示部15に超音波診断画像を表示させる。
表示部15は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部14の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0019】
操作部19は、操作者が入力操作を行うためのもので、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
格納部20は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD−ROM、DVD−ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0020】
本体制御部18は、操作者により操作部19から入力された各種の指令信号等に基づいて、診断装置本体2内の各部の制御を行うものである。
なお、信号処理部11、DSC12、画像処理部13および表示制御部14は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0021】
ここで、超音波探触子3の構造を図2に示す。
バッキング材31の表面上に複数の無機圧電素子32が配列形成されている。複数の無機圧電素子32は、互いに分離された複数の無機圧電体32aを有し、それぞれの無機圧電体32aの一方の面に信号線電極層32bが接合され、他方の面に接地電極層32cが接合されている。すなわち、それぞれの無機圧電素子32は、専用の無機圧電体32aと信号線電極層32bと接地電極層32cから形成されている。
このような複数の無機圧電素子32の上に音響整合層33が接合されている。音響整合層33は、複数に分断されることなく、複数の無機圧電素子32の全体にわたって延在している。
【0022】
この音響整合層33の上に複数の有機圧電素子34が配列形成されている。複数の有機圧電素子34は、これら複数の有機圧電素子34にわたって延在する共通の有機圧電体34aを有している。そして、音響整合層33に対向する有機圧電体34aの面上に複数の有機圧電素子34に対応して互いに分離された複数の信号線電極層34bが接合され、音響整合層33とは反対側の有機圧電体34aの全面上に複数の有機圧電素子34にわたって延在する共通の接地電極層34cが接合されている。
【0023】
すなわち、それぞれの有機圧電素子34は、専用の信号線電極層34bと、複数の有機圧電素子34に共通の有機圧電体34aおよび接地電極層34cから形成されている。このため、複数の有機圧電素子34の配列ピッチは、有機圧電体34aの面上に接合された複数の信号線電極層34bの配列ピッチのみにより決定されることとなる。この実施の形態においては、複数の信号線電極層34bは、無機圧電素子32の配列ピッチよりも狭いピッチで配列され、これにより、無機圧電素子32よりも狭いピッチで配列された複数の有機圧電素子34が形成されている。
さらに、複数の有機圧電素子34の上に保護層35を介して音響レンズ36が接合されている。
【0024】
無機圧電素子32の無機圧電体32aは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)に代表される圧電セラミックまたはマグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体(PMN−PT)に代表される圧電単結晶から形成されている。一方、有機圧電素子34の有機圧電体34aは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体等の高分子圧電素子から形成されている。
【0025】
音響整合層33は、複数の無機圧電素子32から送信される基本波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さを有すると共に、複数の無機圧電素子32から送信される超音波を効率よく被検体内に入射させるように、無機圧電素子32の音響インピーダンスと有機圧電素子34の音響インピーダンスの中間的な値の音響インピーダンスを有する材料から形成されている。
【0026】
図3に示されるように、受信回路5には、複数の無機圧電素子用A/Dコンバータ51と、複数の有機圧電素子用アンプ52および複数の有機圧電素子用A/Dコンバータ53が内蔵されており、それぞれの無機圧電素子32の信号線電極層32bに受信回路5内の対応する無機圧電素子用A/Dコンバータ51が接続され、それぞれの有機圧電素子34の信号線電極層34bに伝送ケーブル54を介して受信回路5内の対応する有機圧電素子用アンプ52および有機圧電素子用A/Dコンバータ53が順次接続されている。また、それぞれの無機圧電素子32の接地電極層32cおよびそれぞれの有機圧電素子34の接地電極層34cは共に接地されている。
さらに、図3に示されていないが、それぞれの無機圧電素子32の信号線電極層32bに送信回路4が接続されている。
【0027】
また、複数の有機圧電素子34は、複数の無機圧電素子32による超音波の送信時には、音響整合層33に続く第2の音響整合層として利用される。このため、それぞれの有機圧電素子34の有機圧電体34aは、複数の無機圧電素子32から送信される基本波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さDを有すると共に、音響整合層33の音響インピーダンスと生体である被検体の音響インピーダンスの中間的な値の音響インピーダンスを有している。
例えば、無機圧電体32aを構成するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、約35×10(kg/ms)、有機圧電体34aを構成するポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、約4×10(kg/ms)、生体物質は、骨部を除くと、1〜2×10(kg/ms)程度の固有の音響インピーダンスを有している。そこで、音響整合層33の音響インピーダンスを、無機圧電体32aの音響インピーダンスと有機圧電体34aの音響インピーダンスの中間的な値に設定すれば、無機圧電素子32から音響整合層33および有機圧電素子34を介して被検体まで、次第に音響インピーダンスの値が小さくなるような配列となり、十分なマッチング効果を発揮することができる。
【0028】
また、複数の有機圧電素子34は、超音波エコーの受信時には、非共振型の受信デバイスとして利用される。一般に、有機圧電体34aを構成するポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはポリフッ化ビニリデン三フッ化エチレン共重合体等の高分子圧電素子は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックに比べて、機械的品質係数Qmが極めて低く、超音波診断における超音波エコーを受信する際に共振受信をすることがほとんどない。そこで、複数の有機圧電素子34を非共振型の受信デバイスとして扱うことで、幅広い波長の超音波を受信することができ、任意の周波数で画像化することが可能となる。
【0029】
なお、アレイ化された有機圧電素子34は、数pF〜10pF程度の極めて小さな静電容量を有するので、有機圧電素子34で得られた受信信号の減衰を防ぐため、それぞれの有機圧電素子34の信号線電極層34bと受信回路5内の有機圧電素子用アンプ52とを接続する伝送ケーブル54の静電容量が、有機圧電素子34の静電容量に対して0.1〜5倍の範囲内の値に制限される。可能であれば、有機圧電素子用アンプ52が有機圧電素子34の信号線電極層34bに直結されるのが望ましい。
【0030】
次に、この実施の形態の動作について説明する。
例えば、複数の無機圧電素子32が超音波の送信専用のトランスデューサとして、複数の有機圧電素子34が超音波の受信専用のトランスデューサとしてそれぞれ使用される。
超音波プローブ1の送信回路4からの駆動信号に従って、複数の無機圧電素子32の信号線電極層32bと接地電極層32cの間にそれぞれパルス状または連続波の電圧が印加され、それぞれの無機圧電素子32の無機圧電体32aが伸縮してパルス状または連続波の超音波が発生する。これらの超音波は、音響整合層33、有機圧電素子34、保護層35および音響レンズ36を介して被検体内に入射する。このとき、複数の有機圧電素子34が音響整合層33に続く第2の音響整合層として作用するため、十分なマッチング効果が発揮され、超音波が効率よく被検体内に入射することとなる。
被検体内に入射した超音波は互いに合成され、超音波ビームを形成して被検体内を伝搬する。
【0031】
被検体からの超音波エコーが音響レンズ6および保護層5を介してそれぞれの有機圧電素子34に入射すると、有機圧電体34aが超音波の高調波成分に高感度に応答して伸縮し、信号線電極層34bと接地電極層34cの間に電気信号が発生し、受信信号として出力される。このとき、有機圧電素子34は、非共振型の受信デバイスとして利用されるので、幅広い波長の超音波を受信することができ、例えば、複数の無機圧電素子32から送信される基本波に対するn次高調波成分も受信することができる。
【0032】
それぞれの有機圧電素子34の信号線電極層34bから出力された受信信号は、受信回路5内の有機圧電素子用アンプ52で増幅された後、有機圧電素子用A/Dコンバータ53でA/D変換され、さらに受信フォーカス処理が行われてサンプルデータが生成される。このとき、有機圧電素子34の静電容量に対し0.1〜5倍の範囲内の静電容量を有する伝送ケーブル54を介してそれぞれの有機圧電素子34の信号線電極層34bから受信信号が受信回路5内の有機圧電素子用アンプ52に伝送されるため、伝送に伴う受信信号の減衰を軽減することができる。
【0033】
複数の有機圧電素子34からの受信信号により受信回路5で生成されたサンプルデータに基づいて、診断装置本体2の画像生成部17で高調波画像に対する画像信号が生成され、さらに、この画像信号に基づいて表示制御部14により高調波画像が表示部15に表示される。
このようにして、複数の有機圧電素子34で得られた受信信号を、複数の無機圧電素子32から送信される基本波に対するn次高調波の周波数で画像化する等、任意の周波数で画像化して、超音波画像を生成することができる。
【0034】
また、複数の無機圧電素子32を超音波の送受信兼用のトランスデューサとして使用することもできる。
この場合には、音響レンズ36および保護層35を介して有機圧電素子34で受信された超音波エコーが、さらに有機圧電素子34および音響整合層33を介してそれぞれの無機圧電素子32に入射し、無機圧電体32aが主に超音波の基本波成分に応答して伸縮し、信号線電極層32bと接地電極層32cの間に電気信号を発生する。この電気信号が、受信信号として出力され、受信回路5内の無機圧電素子用A/Dコンバータ51でA/D変換される。
【0035】
そして、A/D変換された、複数の無機圧電素子32から得られた基本波成分に対応する受信信号と複数の有機圧電素子34から得られた高調波成分に対応する受信信号の双方に基づいて、受信回路5でサンプルデータが生成され、診断装置本体2の画像生成部17で画像信号が生成され、さらに、この画像信号に基づいて表示制御部14により超音波画像が表示部15に表示される。
このようにして、基本波成分と高調波成分を複合したコンパウンド画像を生成することができる。
【0036】
この実施の形態においては、超音波エコーの受信時に、複数の有機圧電素子34を非共振型の受信デバイスとして利用するので、複数の無機圧電素子32からの送信超音波の波長を任意に設定することができる。また、複数の無機圧電素子32から送信される基本波が広帯域で、いわゆるリンギングが極めて少なく、高画質の超音波画像の生成を図ることができる。
さらに、複数の有機圧電素子34により幅広い波長の超音波を受信することができるため、奥行き分解能が向上すると共に、検波周波数/フィルタ周波数を任意に2種類以上の周波数に設定することができ、画像設計の自由度が向上する。
【0037】
なお、複数の有機圧電素子34は、必ずしも複数の無機圧電素子32の配列ピッチより狭いピッチで配列形成する必要はなく、例えば、複数の有機圧電素子34を複数の無機圧電素子32と同じ配列ピッチ、または、複数の無機圧電素子32の配列ピッチより広いピッチで配列してもよい。ただし、図2に示したように、複数の有機圧電素子34が、複数の無機圧電素子32の配列ピッチよりも狭いピッチで配列されていれば、有機圧電素子34により高次の高調波成分を受信しても、グレーティングローブが発生しにくくなり、高画質の超音波画像を生成することが可能となる。
【0038】
また、超音波プローブ1と診断装置本体2との接続は、有線による接続および無線通信による接続のいずれの形態をとることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 超音波プローブ、2 診断装置本体、3 超音波探触子、4 送信回路、5 受信回路、6 プローブ制御部、11 信号処理部、12 DSC、13 画像処理部、14 表示制御部、15 表示部、16 画像メモリ、17 画像生成部、18 本体制御部、19 操作部、20 格納部、31 バッキング材、32 無機圧電素子、32a 無機圧電体、32b 信号線電極層、32c 接地電極層、33 音響整合層、34 有機圧電素子、34a 有機圧電体、34b 信号線電極層、34c 接地電極層、35 保護層、36 音響レンズ、51 無機圧電素子用A/Dコンバータ、52 有機圧電素子用アンプ、53 有機圧電素子用A/Dコンバータ、54 伝送ケーブル、D 有機圧電体の厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響整合層を挟んで複数の無機圧電素子と複数の有機圧電素子とが互いに積層された超音波探触子を用いて超音波の送受信を行うことにより得られる受信信号に基づき超音波画像を生成して表示する超音波診断装置であって、
前記複数の有機圧電素子を第2の音響整合層として前記複数の無機圧電素子から超音波を送信する送信回路と、
前記複数の有機圧電素子を非共振型の受信デバイスとして利用して超音波エコーを受信することにより得られた受信信号を処理してサンプルデータを生成する受信回路と、
前記受信回路で生成されたサンプルデータに基づいて超音波画像を生成する画像生成部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記複数の有機圧電素子は、前記複数の無機圧電素子から送信される基本波の波長λに対してλ/4共振条件を満たす厚さを有する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記画像生成部は、前記複数の有機圧電素子により得られた受信信号を任意の周波数で画像化することにより超音波画像を生成する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記画像生成部は、前記複数の有機圧電素子により得られた受信信号を、前記複数の無機圧電素子から送信される基本波に対するn次高調波の周波数で画像化することにより超音波画像を生成する請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記受信回路は、前記複数の無機圧電素子により得られた受信信号と前記複数の有機圧電素子により得られた受信信号の双方に基づいてサンプルデータを生成する請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記受信回路は、それぞれの前記有機圧電素子に対して0.1〜5倍の静電容量を有する伝送ケーブルを介して前記有機圧電素子で得られた受信信号をアンプに伝送して増幅する請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
音響整合層を挟んで複数の無機圧電素子と複数の有機圧電素子とが互いに積層された超音波探触子を用いて超音波画像を生成する方法であって、
前記複数の有機圧電素子を第2の音響整合層として前記複数の無機圧電素子から超音波を送信し、
前記複数の有機圧電素子を非共振型の受信デバイスとして利用して超音波エコーを受信し、
前記複数の有機圧電素子により得られた受信信号に基づいて超音波画像を生成する
ことを特徴とする超音波画像生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−70734(P2013−70734A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210349(P2011−210349)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】