説明

超音波診断装置及びデジタル信号の出力方法

【課題】ビームフォーマから出力されるデジタル信号の計算量を比較的一定に調整するための超音波診断装置及びデジタル信号の出力方法を提供する。
【解決手段】超音波診断システムに関し、対象体から反射される超音波信号を所定の帯域幅を有するアナログ信号に変換して提供するプローブと、前記プローブから入力される前記変換素子のアナログ信号を変換して、多数のデジタル信号を形成するアナログ‐デジタルコンバータと、前記アナログ信号の中心周波数の整数倍のレートで前記デジタル信号のうちの一部を抽出して受信ビームを形成するビームフォーマとを備える超音波診断システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断システムに関し、特に、ビームフォーマから出力されるデジタル信号の量を調節するための超音波診断システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断システムは、検査しようとする対象体に超音波信号を送信し、対象体から反射される超音波信号を受信して、受信された超音波反射信号を電気的映像信号に変換して対象体の内部映像を提供するシステムであって、医療診断、非破壊検査及び水中探索などに広く用いられている。超音波信号は、プローブを通じて送受信される。このために、プローブは電気信号を超音波信号に変換し、対象体から反射される超音波信号を電気信号に変換するための変換素子を備える。多様な形態で配列されている多数の変換素子を備えるプローブを用いる場合、解像度を向上させることができる。
【0003】
多数の変換素子で構成されている配列型変換器を備えるプローブの例を示す図1を参照すれば、プローブの各変換素子T−Tから送信される超音波信号は、解像度のよい超音波映像を得るために、深さdに位置する集束点に同一の時刻に集束されなければならない。各変換素子10から集束点に至る距離は、中心変換素子Tで最も短く、縁部変換素子Tで最も長い。そのため、従来の超音波診断装置は、集束点から各変換素子10に至る距離の差を反映させた電気的送信信号を形成するためのビームフォーマを備える。ビームフォーマは各変換素子と集束点の距離差が反映された遅延プロファイルに基づいて多数の電気的送信信号、即ち送信ビームを形成する。送信ビームは、プローブの各変換素子10に伝達された後、超音波信号に変換されて集束点に送信される。
【0004】
集束点から反射される超音波信号が各変換素子10に到達する時間も互いに異なる。即ち、中央の変換素子Tへ向かう超音波反射信号は距離rを通過してきた信号であるのに対し、中央の変換素子Tから距離xだけ離れた変換素子Tに到達する超音波反射信号は、距離r+Δrを通過してきた信号である。従って、集束点で同一の時刻に反射されて変換素子Tに到達する超音波信号は、変換素子Tに到達する超音波信号よりも距離差Δrに対応する時間だけ遅れる。ビームフォーマは、各変換素子に到達して電気信号に変換された受信信号の遅延時間を中心変換素子Tcの位置を基準として補償する。
【0005】
近年、プローブは広帯域の超音波信号を送信して超音波映像の画質を改善している。プローブから生成されて媒質の中を伝播する超音波信号は吸収、散乱、反射などによって強度が減衰する。特に、超音波信号の中心周波数が高いほど、反射超音波信号の減衰がさらに大きくなる。従来の超音波診断装置のADC(analog−digital converter)は、図2に示すように、入力される信号の中心周波数に関係なく、一定の間隔でアナログ信号をサンプリングしてデジタル信号に変換する。従って、ナイキスト定理(Nyquist theorem)によって、エイリアシングの発生を防止できるサンプリングレートで信号をサンプリングする場合、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数が相対的に低い場合はデジタル信号の量が比較的に多く、中心周波数が相対的に高い場合にはデジタル信号の量が比較的に少ない(図3参照)。これにより、プローブが変わる度にデジタル信号を受信して処理するプロセッサのデータ処理能力が、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数に応じて変わらなければならないので、システム設計上の制約になるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ビームフォーマから出力されるデジタル信号の計算量を比較的一定に調整するための超音波診断装置及びデジタル信号の出力方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の超音波診断システムは、対象体から反射される超音波信号を、所定の帯域幅を有するアナログ信号に変換して提供するプローブと、前記プローブから入力される前記変換素子のアナログ信号を変換して、多数のデジタル信号を形成するアナログ‐デジタルコンバータと、前記アナログ信号の中心周波数の整数倍のレートで前記デジタル信号のうちの一部を抽出して受信ビームを形成するビームフォーマとを備える。
【0008】
本発明に係る超音波診断装置において、デジタル信号の出力を調節する方法は、a)対象体から反射される超音波信号を所定の帯域幅を有するアナログ信号に変換する段階と、b)前記アナログ信号を変換して多数のデジタル信号を得る段階と、c)前記アナログ信号の中心周波数の整数倍のレートで前記デジタル信号の一部を抽出する段階とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ビームフォーマから比較的一定の計算量のためのデジタル信号データを出力することによって、DSPまたはPCのような映像処理部の処理能力が超音波診断装置の設計に大きな制約として作用しないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数の整数倍に該当するレートでデジタル信号の一部を抽出し、映像処理のためのデジタル信号の計算量を一定にすることにその特徴がある。
以下、添付する図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0011】
図4に示すように、本発明の実施形態に係る超音波診断装置100は、プローブ110、ADC(analog−digital converter)120、ビームフォーマ130、格納部140、DSP(digital signal processor)150、DSC(digital scan converter)160及びディスプレイ部170とを備える。
【0012】
プローブ110は、電気信号を超音波信号に変換して対象体(焦点)に送信し、対象体から反射される超音波信号を受信して電気的信号(アナログ信号)に変換するための少なくとも一つの変換素子を備える。プローブ110から出力されるアナログ信号は広帯域幅を有し、アナログ信号の中心周波数は変換素子の特性及び対象体組織の特性と関連性を有する。
【0013】
ADC120は、プローブ110から出力されるアナログ信号を一定のサンプリングレート、例えば60MHZでサンプリングしてデジタル信号に変換する。ADC120ではアナログ信号の中心周波数と関係なく、一定のレートでサンプリングが進められるため、アナログ信号の中心周波数が低い場合は、相対的に多くのデジタル信号が得られ、中心周波数が高い場合には、相対的に少ないデジタル信号が得られる。プローブ110が多数の変換素子を備える場合、変換素子数分のADC120が備えられて各変換素子にADC120が一つずつ対応する。
【0014】
ビームフォーマ130は、中心周波数の整数倍のレートでデジタル信号のうちの一部を抽出して受信ビームを形成する。即ち、ビームフォーマ130は、ADC120から出力されるデジタル信号を一定数のデジタル信号に変換する。格納部140はビームフォーマで形成されるデータを格納する。DSP150はビームフォーマ130から出力されるデジタル信号または格納部140に格納されているデジタル信号を処理して、B、CまたはDモード映像などを表現するための映像データを形成する。DSC160はDSP150から入力される映像データをディスプレイするためにスキャン変換し、ディスプレイ部160は映像フレームデータの入力を受けて超音波映像をディスプレイする。ビームフォーマ130はADC120で一定のサンプリングレートでサンプリングされて得られたデジタル信号を遅延させ、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数の整数倍に該当するレートで一部のデジタル信号を抽出してデジタル信号の量を調整する。さらに、抽出されたデジタル信号を補間する。このために、図5に示すように、本発明に係るビームフォーマ130は、粗い遅延部131及びADC120から出力されるデジタル信号の量を一定に調整するための抽出部132、補間部133、そして制御部134を備える。制御部134は、粗い遅延部131、抽出部132及び補間部133を制御する。さらに、図5には示していないが、ビームフォーマ130は一般の超音波診断装置に備えられるビームフォーマの基本的な機能を実現するために、送信ビーム形成部及び受信ビーム形成部などを備える。また、ビームフォーマは減衰を補償する利得調節部などをさらに備える。
【0015】
好ましくは、粗い遅延部131はデュアルポートRAMで実現される。図6に示すように、デュアルポートRAMは多数の格納領域R1〜R4を有する。デュアルポートRAMの各格納領域は、書き込みポインタと読み出しポインタにより指定される。図6には示していないが、デュアルポートRAMはデータ書き込みピンと読み出しピンを備え、書き込みピンを通じて入力されるデータを書き込みポインタが指定する格納領域に格納し、読み出しポインタが指定する領域に格納されているデータを読み出しピンを通じて読み出す。各変換素子に対応するADC120からデジタル信号は変換素子別に区分されて格納領域R1〜R4に格納される。各格納領域は細部領域R11...R4Nに分離されて同一の変換素子に対応するデジタル信号がストリームに区分されて格納される。各変換素子のデジタル信号ストリームがデュアルポートRAMに書き込まれる前、2ポインタは初期化されてデュアルポートRAMの同一の細部領域、例えばR11をさす。ADC120から入力される各変換素子のデジタル信号ストリームは、書き込みポインタが指定する格納領域に格納され、各格納領域は該当格納領域にデジタル信号ストリームが格納されている時刻から、または書き込みポインタにより該当格納領域が指定される時刻から予め定められた時間が経過した後に読み出しポインタにより指定される。予め定められた時間は、変換素子と対象体内の焦点距離などを反映させて形成される遅延プロファイルに従う。前述したように、ADC120において一定のサンプリングレートでサンプリングされた各変換素子に対応するデジタル信号ストリームは粗い遅延部131で遅延される。
【0016】
図7に示すように、抽出部132は、シフトレジスタ132a、プロセッシングレジスタ132bを備える。シフトレジスタ132aとプロセッシングレジスタ132bは、それぞれ変換素子の数だけ備えられる。抽出部132は予め設定されたアナログ信号の中心周波数を基準としてデジタル信号の量を調整する。本発明の他の実施形態に係る超音波診断装置100は、プローブ110から出力されるアナログ信号を分析して中心周波数情報を抽出部132または制御部134に提供する中心周波数情報提供部をさらに備える。
【0017】
制御部134の制御によって読み出しポインタにより指定される格納領域のデジタル信号ストリームは、シフトレジスタ132aに移される。好ましくは、各変換素子に該当するデジタル信号ストリームは該当変換素子に対応するシフトレジスタ132aに移される。制御部134の制御によってプローブから受信されるアナログ信号の中心周波数のn倍のレートで各シフトレジスタ132aに格納されているデジタル信号ストリームから一部のデジタル信号を抽出する。ここで、nは正の整数である。即ち、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数のn倍に該当するレートでシフトレジスタ132aに格納されているデジタル信号ストリームからデジタル信号を抽出してプロセッシングレジスタ132bに移す。好ましくは、下記の数式1のように定義される抽出レートDRで各シフトレジスタ132に格納されているデジタル信号ストリームから一部のデジタル信号を抽出する。
【0018】
【数1】

【0019】
式1において、fはプローブから出力されるアナログ信号の中心周波数である。nは正の整数である。即ち、エイリアシングの減少を目的にナイキスト定理によって最大周波数の少なくとも2倍となるレートで信号を抽出するために、正の整数nは4になることが好ましいが、これに限定されるのではない。
【0020】
シフトレジスタ132aに格納されているデジタル信号ストリームからアナログ信号の中心周波数のn倍のレートでデジタル信号を抽出することで、ADC120から相対的に少数のデジタル信号が出力される場合、相対的に高いレートでデジタル信号を抽出し、多数のデジタル信号が出力される場合、相対的に低いレートでデジタル信号を抽出する。言い換えれば、1フレーム当りのスキャンラインの数とフレームレートとが同一である場合、図8に示すように、アナログ信号の中心周波数が高い場合(高周波信号の場合)は比較的に高いレートでデジタル信号を抽出し、アナログ信号の中心周波数が低い場合(低周波信号の場合)には比較的に低いレートでデジタル信号を抽出する。従って、プローブから出力されるアナログ信号の中心周波数に影響を受けることなく、ほぼ一定量のデジタル信号をビームフォーマから出力できる(図9参照)。一方、説明の便宜のために、図8には高周波信号と低周波信号の波形がアナログ信号の波形で示されたが、デジタル信号形態の高周波信号または低周波信号からデジタル信号が抽出される。
【0021】
補間部133は、プロセッシングレジスタ132bから出力されるデジタル信号を補間する。このために、補間部133は、係数RAM133a、乗算器133b、加算器133c及びレジスタ133dを備える。係数RAM133aは補間フィルタ係数のルック‐アップテーブルを提供する。補間は乗算器133bがプロセッシングレジスタ132bから入力されるデジタル信号に係数RAM133aに格納されている補間フィルタ係数を乗じ、乗算器133bの出力信号を加算器133cで加える過程を含む。加算器133cの出力信号である受信ビームはレジスタ133dに格納される。
【0022】
図10に示すように、本発明の他の実施形態に係る超音波診断装置200は、図4に示したDSP150とDSC160に代わってPC(personal computer)210を備える。即ち、DSPとDSC機能をPC210を通じてソフトウェアで実現する。本発明のビームフォーマはプローブから出力されるアナログ信号の中心周波数のサイズに関係なく、ほぼ一定量のデジタル信号を出力することによって、定められた信号処理能力を有するPC210でDSPとDSCの機能を実現できる。
【0023】
本発明の好適な実施の形態について説明し、例示したが、本発明の特許請求の範囲の思想及び範疇を逸脱することなく、当業者は種々の改変をなし得ることが分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の配列型変換素子を用いた超音波信号の送受信集束方法を説明するための概略図である。
【図2】従来の高周波信号と低周波信号のサンプリングを説明するための例示図である。
【図3】従来の超音波診断装置から出力されるデジタル信号の計算量と中心周波数との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係るビームフォーマの細部構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態のデュアルポートRAMを用いたデータ遅延を説明するための概略図である。
【図7】本発明の実施形態に係るデジタル信号の量を調整するための抽出部の細部構成と補間部の細部構成を示すブロック図である。
【図8】本発明に係る高周波信号と低周波信号の抽出を説明するための例示図である。
【図9】本発明に係る超音波診断装置から出力されるデジタル信号の計算量と中心周波数との関係を示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
110:プローブ
120:ADC
130:ビームフォーマ
140:格納部
150:DSP
160:DSC
170:ディスプレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体から反射される超音波信号を、所定の帯域幅を有するアナログ信号に変換して提供するプローブと、
前記プローブから入力される前記変換素子のアナログ信号を変換して、多数のデジタル信号を形成するアナログ‐デジタルコンバータと、
前記アナログ信号の中心周波数の整数倍のレートで前記デジタル信号のうちの一部を抽出して受信ビームを形成するビームフォーマと
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記ビームフォーマは、
前記デジタル信号の一部を抽出して出力されるデジタル信号の量を調整するための抽出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記抽出部は、
前記アナログ‐デジタルコンバータから入力されるデジタル信号を格納するためのシフトレジスタと、
前記中心周波数の整数倍のレートで前記シフトレジスタに格納されているデジタル信号の一部を抽出して格納するためのプロセッシングレジスタと
を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記ビームフォーマは、抽出部から出力されるデジタル信号を補間するための補間部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記補間部は、
補間フィルタ係数のルック‐アップテーブルを提供するための係数RAMと、
前記プロセッシングレジスタから出力される前記デジタル信号に前記補間フィルタ係数を反映させてデジタル信号を補間するための乗算器と、
前記補間されたデータを集束するための加算器と
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記プローブは多数の変換素子を備え、
前記ビームフォーマは前記各変換素子の位置を反映させて各変換素子に対応するデータを遅延させるための遅延器を備えることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記遅延器は、デュアルポートRAMからなることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
超音波診断装置において、
a)対象体から反射される超音波信号を所定の帯域幅を有するアナログ信号に変換し、
b)前記アナログ信号を変換して多数のデジタル信号を得、
c)前記アナログ信号の中心周波数の整数倍のレートで前記デジタル信号の一部を抽出するデジタル信号の出力を調節する方法。
【請求項9】
前記c)段階は、
c1)前記デジタル信号を格納する段階と、
c2)前記レートで前記デジタル信号の一部を抽出する段階と
を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記c)段階は、
c3)前記抽出されたデジタル信号を補間する段階をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記c3)段階は、
c31)補間フィルタ係数のルックアップテーブルを提供する段階と、
c32)前記抽出されたデジタル信号に前記補間フィルタ係数を乗じて補間する段階と、
c33)前記補間されたデジタル信号を合せる段階と
を備えることを特徴とする請求項10に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate