説明

超音波診断装置及び超音波診断方法

【課題】被検体中に含まれる微小構造物、連続面及びスペックルを正確に弁別することが可能な超音波診断装置及び超音波診断方法を提供する。
【解決手段】孤立点は孤立点特有の時間差で送信波形が保たれたまま受信されるため、孤立点特有の遅延を考慮して各小開口で整合加算した結果が波形レベルで一致する。また、素子データ上において送信波形が保たれているため、小開口の位置に依らずRFデータの距離方向の位相差が一様である。また、連続面は、中心の小開口で振幅が大きい。また、素子データ上において送信波形が保たれているため、RFデータの連続点を含む領域における距離方向の位相差が一様である。また、スペックルは、開口の位置に依らず振幅及びRFデータ(位相)がランダムに変化する。上記のように、各小開口の整合加算後のRFデータ又は振幅画像データの一致性が、孤立点(微小構造物)と、連続面及びスペックルとの間で異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超音波診断装置及び超音波診断方法に係り、特に超音波を用いて被検体の超音波画像を撮影して表示する超音波診断装置及び超音波診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波画像処理において、被検体内に含まれる微小構造物(例えば、乳房の中の石灰化領域)、連続面、スペックル等の反射物性状を解析し、上記反射物性状に基づいて超音波画像中で反射物の表示を強調又は抑制する技術が提案されている。反射物を区別する技術としては、例えば、超音波の振幅情報の値や形状の違いから反射物を区別する技術(例えば、特許文献1から3)や、フレーム間での振幅値の変化の仕方に着目する技術(例えば、特許文献4)が提案されている。また、特許文献5には、乳房の超音波診断において、Bモード画像からスペックルパタンを除去するCFAR(Contrast False Alarm Rate)処理とともにMIP(Maximum Intensity Projection)処理を行うことで、微小石灰化を抽出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−61964号公報
【特許文献2】特開平7−8487号公報
【特許文献3】特開2000−300561号公報
【特許文献4】特開平9−94248号公報
【特許文献5】特開2006−305337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、従来の超音波診断において、振幅画像において微小構造物が孤立した高エコーとして描出されることに基づいて微小構造物を抽出するものが提案されている。しかしながら、振幅画像では、スペックル(超音波のランダムな干渉に起因する干渉縞)や、連続面(音響インピーダンスが一定の面状の領域)がとぎれとぎれに存在する部位も高エコーとして描出されるため、被検体中の微小構造物をスペックル等から弁別して抽出することは困難である。
【0004】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被検体中に含まれる微小構造物、連続面及びスペックルを正確に弁別することが可能な超音波診断装置及び超音波診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る超音波診断装置は、超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して素子データを出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子と、前記超音波トランスデューサから出力された素子データに基づいて、前記超音波探触子に設けられた開口を複数に分割した小開口の素子データの整合加算を行う演算手段と、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ及び振幅画像のうちの少なくとも1つに基づいて、前記被検体内において超音波を反射する反射物の性状を判定する判定手段とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様に係る超音波診断装置は、上記第1の態様において、前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域を微小構造物と判定するようにしたものである。
【0007】
本発明の第3の態様に係る超音波診断装置は、上記第1の態様において、前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域であって、前記小開口の位置によらずRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が所定値以下の領域を微小構造物と判定するようにしたものである。
【0008】
本発明の第4の態様に係る超音波診断装置は、上記第1から第3の態様において、前記判定手段が、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より所定値以上大きい領域を連続面と判定するようにしたものである。
【0009】
本発明の第5の態様に係る超音波診断装置は、上記第1から第3の態様において、前記判定手段が、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より第1の所定値以上大きい領域であって、前記中心に位置する小開口におけるRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が第2の所定値以下の領域を連続面と判定するようにしたものである。
【0010】
本発明の第6の態様に係る超音波診断装置は、上記第1から第5の態様において、前記判定手段が、小開口の位置に依らず、振幅又はRFデータがランダムに変化する領域をスペックルと判定するようにしたものである。
【0011】
本発明の第7の態様に係る超音波診断装置は、上記第6の態様において、前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる微小構造物の混合割合を判定するようにしたものである。
【0012】
本発明の第8の態様に係る超音波診断装置は、上記第6又は第7の態様において、前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる連続面の混合割合を判定するようにしたものである。
【0013】
本発明の第9の態様に係る超音波診断装置は、上記第1から第8の態様に加えて、前記反射物の性状の判定結果を表示する表示手段を更に備えるものである。
【0014】
本発明の第10の態様に係る超音波診断装置は、上記第9の態様において、前記表示手段が、前記反射物の性状の判定結果を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示するようにしたものである。
【0015】
本発明の第11の態様に係る超音波診断装置は、上記第9又は第10の態様に加えて、前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記反射物の性状の判定結果を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替える表示モード切替手段を更に備えるものである。
【0016】
本発明の第12の態様に係る超音波診断方法は、超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して素子データを出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子から出力された素子データに基づいて、前記超音波探触子に設けられた開口を複数に分割した小開口の素子データの整合加算を行う演算工程と、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ及び振幅画像のうちの少なくとも1つに基づいて、前記被検体内において超音波を反射する反射物の性状を判定する判定工程とを備える。
【0017】
本発明の第13の態様に係る超音波診断方法は、上記第12の態様の前記判定工程において、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域を微小構造物と判定するようにしたものである。
【0018】
本発明の第14の態様に係る超音波診断方法は、上記第12の態様の前記判定工程において、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域であって、前記小開口の位置によらずRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が所定値以下の領域を微小構造物と判定するようにしたものである。
【0019】
本発明の第15の態様に係る超音波診断方法は、上記第12から第14の態様の前記判定工程において、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より所定値以上大きい領域を連続面と判定するようにしたものである。
【0020】
本発明の第16の態様に係る超音波診断方法は、上記第12から第14の態様の前記判定工程において、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より第1の所定値以上大きい領域であって、前記中心に位置する小開口におけるRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が第2の所定値以下の領域を連続面と判定するようにしたものである。
【0021】
本発明の第17の態様に係る超音波診断方法は、上記第12から第16の態様の前記判定工程において、小開口の位置に依らず、振幅又はRFデータがランダムに変化する領域をスペックルと判定するようにしたものである。
【0022】
本発明の第18の態様に係る超音波診断方法は、上記第17の態様に加えて、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる微小構造物の混合割合を判定する工程を更に備えるものである。
【0023】
本発明の第19の態様に係る超音波診断方法は、上記第17又は第18の態様に加えて、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる連続面の混合割合を判定する工程を更に備えるものである。
【0024】
本発明の第20の態様に係る超音波診断方法は、上記第12から第19の態様に加えて、前記反射物の性状の判定結果を表示手段に表示する表示工程を更に備えるようにしたものである。
【0025】
本発明の第21の態様に係る超音波診断方法は、上記第20の態様の前記表示工程において、前記反射物の性状の判定結果を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示するようにしたものである。
【0026】
本発明の第22の態様に係る超音波診断方法は、上記第20又は第21の態様に加えて、前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記反射物の性状の判定結果を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替え指示入力をオペレータから受け付けて、表示モードを切り替える表示モード切替手段工程を更に備えるものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、素子データ上で小開口の整合加算を行って、RFデータ及び振幅画像における微小構造物、連続面、及びスペックルの特徴の違いを利用することにより、振幅画像の振幅値や形状に基づく従来の手法では弁別することが困難な微小構造物、連続面及びスペックルを弁別することができ、組織性状を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明に係る超音波診断装置及び超音波診断方法の好ましい実施の形態について説明する。
【0029】
[超音波診断装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す超音波診断装置10は、超音波探触子300から被検体OBJに超音波ビームを送信して、被検体OBJによって反射された超音波ビーム(超音波エコー)を受信し、超音波エコーの検出信号から超音波画像を作成・表示する装置である。
【0031】
CPU(Central Processing Unit)100は、操作入力部200からの操作入力に応じて超音波診断装置10の各ブロックの制御を行う。
【0032】
操作入力部200は、オペレータからの操作入力を受け付ける入力デバイスであり、操作卓202とポインティングデバイス204とを含んでいる。操作卓202は、文字情報(例えば、患者情報)の入力を受け付けるキーボードと、振幅画像(Bモード画像)を単独で表示する通常表示モードと反射物の性状の判定結果(後述)を表示する判定結果表示モードとの間で表示モードを切り替える表示モード切り替えボタンと、ライブモードとフリーズモードとの切り替えを指示するためのフリーズボタンと、シネメモリ再生を指示するためのシネメモリ再生ボタンと、超音波画像の解析・計測を指示するための解析・計測ボタンとを含んでいる。ポインティングデバイス204は、表示部104の画面上における領域の指定の入力を受け付けるデバイスであり、例えば、トラックボール又はマウスである。なお、ポインティングデバイス204としては、タッチパネルを用いることも可能である。
【0033】
格納部102は、CPU100に超音波診断装置10の各ブロックの制御を制御するための制御プログラムが格納する記憶装置であり、例えば、ハードディスク又は半導体メモリである。
【0034】
表示部104は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ又は液晶ディスプレイであり、超音波画像(動画及び静止画)の表示、及び各種の設定画面を表示する。
【0035】
超音波探触子300は、被検体OBJに当接させて用いるプローブであり、1次元又は2次元のトランスデューサアレイを構成する複数の超音波トランスデューサ302を備えている。超音波トランスデューサ302は、送信回路402から印加される駆動信号に基づいて超音波ビームを被検体OBJに送信するとともに、被検体OBJによって反射される超音波ビーム(超音波エコー)を受信して超音波検出信号を出力する。
【0036】
超音波トランスデューサ302は、圧電性を有する材料(圧電体)の両端に電極が形成されて構成された振動子を含んでいる。上記振動子を構成する圧電体としては、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛:Pb (lead) zirconate titanate)のような圧電セラミック、PVDF(ポリフッ化ビニリデン:polyvinylidene difluoride)のような高分子圧電素子を用いることができる。上記振動子の電極に電気信号を送って電圧を印加すると圧電体が伸縮し、この圧電体の伸縮により各振動子において超音波が発生する。例えば、振動子の電極にパルス状の電気信号を送るとパルス状の超音波が発生し、振動子の電極に連続波の電気信号を送ると連続波の超音波が発生する。そして、各振動子において発生した超音波が合成されて超音波ビームが形成される。また、各振動子により超音波を受信すると、各振動子の圧電体が伸縮して電気信号を発生する。各振動子において発生した電気信号は、超音波の検出信号(以下、素子データという。)として受信回路404に出力される。
【0037】
なお、超音波トランスデューサ302としては、超音波変換方式の異なる複数種類の素子を用いることも可能である。例えば、超音波を送信する素子として上記圧電体により構成される振動子を用いて、超音波を受信する素子として光検出方式の超音波トランスデューサを用いるようにしてもよい。ここで、光検出方式の超音波トランスデューサとは、超音波信号を光信号に変換して検出するものであり、例えば、ファブリーペロー共振器又はファイバブラッググレーティングである。
【0038】
次に、ライブモード時における超音波診断処理について説明する。ライブモードは、被検体OBJに超音波探触子300を当接させて超音波の送受信を行うことによって得られた超音波画像(動画)の表示、解析・計測を行うモードである。
【0039】
超音波探触子300が被検体OBJに当接されて、操作入力部200からの指示入力により超音波診断が開始されると、CPU100は、送受信部400に制御信号を出力して、超音波ビームの被検体OBJへの送信、及び被検体OBJからの超音波エコーの受信を開始させる。CPU100は、超音波トランスデューサ302ごとに超音波ビームの送信方向と超音波エコーの受信方向とを設定する。
【0040】
更に、CPU100は、超音波ビームの送信方向に応じて送信遅延パターンを選択するとともに、超音波エコーの受信方向に応じて受信遅延パターンを選択する。ここで、送信遅延パターンとは、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波によって所望の方向に超音波ビームを形成するために駆動信号に与えられる遅延時間のパターンデータであり、受信遅延パターンとは、複数の超音波トランスデューサ302によって受信される超音波によって所望の方向からの超音波エコーを抽出するために検出信号に与えられる遅延時間のパターンデータである。上記送信遅延パターン及び受信遅延パターンは予め格納部102に格納されている。CPU100は、格納部102に格納されているものの中から送信遅延パターン及び受信遅延パターンを選択し、選択した送信遅延パターン及び受信遅延パターンに従って、送受信部400に制御信号を出力して超音波の送受信制御を行う。
【0041】
送信回路402は、CPU100からの制御信号に応じて駆動信号を生成して、該駆動信号を超音波トランスデューサ302に印加する。このとき、送信回路402は、CPU100によって選択された送信遅延パターンに基づいて、各超音波トランスデューサ302に印加する駆動信号を遅延させる。ここで、送信回路402は、複数の超音波トランスデューサ302から送信される超音波が超音波ビームを形成するように、各超音波トランスデューサ302に駆動信号を印加するタイミングを調整する(遅延させる)。なお、複数の超音波トランスデューサ302から一度に送信される超音波が被検体OBJの撮像領域全体に届くように、駆動信号を印加するタイミングを調節するようにしてもよい。
【0042】
受信回路404は、各超音波トランスデューサ302から出力される超音波検出信号を受信して増幅する。上記のように、各超音波トランスデューサ302と被検体OBJ内の超音波反射源との間の距離がそれぞれ異なるため、各超音波トランスデューサ302に反射波が到達する時間が異なる。受信回路404は遅延回路を備えており、CPU100によって選択された受信遅延パターンに基づいて設定される音速(以下、仮定音速という。)又は音速の分布に従って、反射波の到達時刻の差(遅延時間)に相当する分、各超音波トランスデューサ302から出力される検出信号(素子データ)を遅延させる。次に、受信回路404は、遅延時間を与えた検出信号を整合加算することにより受信フォーカス処理を行う。超音波反射源XROIと異なる位置に別の超音波反射源がある場合には、別の超音波反射源からの超音波検出信号は到達時刻が異なるので、上記加算回路で加算することにより、別の超音波反射源からの超音波検出信号の位相が打ち消し合う。これにより、超音波反射源XROIからの受信信号が最も大きくなり、フォーカスが合う。上記受信フォーカス処理によって、超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号(以下、RF信号という。)が形成される。
【0043】
A/D変換器406は、受信回路404から出力されるアナログのRF信号をデジタルRF信号(以下、RFデータという。)に変換する。ここで、RFデータは、受信波(搬送波)の位相情報を含んでいる。A/D変換器406から出力されるRFデータは、信号処理部502とシネメモリ602にそれぞれ入力される。
【0044】
シネメモリ602は、A/D変換器406から入力されるRFデータを順次格納する。また、シネメモリ602は、CPU100から入力されるフレームレートに関する情報(例えば、超音波の反射位置の深度、走査線の密度、視野幅を示すパラメータ)を上記RFデータに関連付けて格納する。
【0045】
信号処理部502は、上記RFデータに対して、STC(Sensitivity Time gain Control)によって、超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正をした後、包絡線検波処理を施し、Bモード画像データ(超音波エコーの振幅を点の明るさ(輝度)により表した画像データ)を生成する。
【0046】
信号処理部502によって生成されたBモード画像データは、通常のテレビジョン信号の走査方式と異なる走査方式によって得られたものである。このため、DSC(Digital Scan Converter)504は、上記Bモード画像データを通常の画像データ(例えば、テレビジョン信号の走査方式(NTSC方式)の画像データ)に変換(ラスター変換)する。画像処理部506は、DSC504から入力される画像データに、各種の必要な画像処理(例えば、階調処理)を施す。
【0047】
画像メモリ508は、画像処理部506から入力される画像データを格納する。D/A変換器510は、画像メモリ508から読み出された画像データをアナログの画像信号に変換して表示部104に出力する。これにより、超音波診断装置10によって撮影された超音波画像(動画)が表示部104に表示される。
【0048】
なお、本実施形態では、受信回路404において受信フォーカス処理が施された検出信号をRF信号としたが、受信フォーカス処理が施されていない検出信号をRF信号としてもよい。この場合、複数の超音波トランスデューサ302から出力される複数の超音波検出信号が、受信回路404において増幅され、増幅された検出信号、即ち、RF信号が、A/D変換器406においてA/D変換されることによってRFデータが生成される。そして、上記RFデータは、信号処理部502に供給されるとともに、シネメモリ602に格納される。受信フォーカス処理は、信号処理部502においてデジタル的に行われる。
【0049】
次に、シネメモリ再生モードについて説明する。シネメモリ再生モードは、シネメモリ602に格納されているRFデータに基づいて超音波診断画像の表示、解析・計測を行うモードである。
【0050】
操作卓202のシネメモリ再生ボタンが押下されると、CPU100は、超音波診断装置10の動作モードをシネメモリ再生モードに切り替える。シネメモリ再生モード時には、CPU100は、オペレータからの操作入力により指定されたRFデータの再生をシネメモリ再生部604に指令する。シネメモリ再生部604は、CPU100からの指令に従って、シネメモリ602からRFデータを読み出して、画像信号生成部500の信号処理部502に送信する。シネメモリ602から送信されたRFデータは、信号処理部502、DSC504及び画像処理部506において所定の処理(ライブモード時と同様の処理)が施されて画像データに変換された後、画像メモリ508及びD/A変換器510を経て表示部104に出力される。これにより、シネメモリ602に格納されたRFデータに基づく超音波画像(動画又は静止画)が表示部104に表示される。
【0051】
ライブモード又はシネメモリ再生モード時において、超音波画像(動画)が表示されているときに操作卓202のフリーズボタンが押下されると、フリーズボタン押下時に表示されている超音波画像が表示部104に静止画表示される。これにより、オペレータは、着目領域(ROI:Region of Interest)の静止画を表示させて観察することができる。
【0052】
操作卓202の計測ボタンが押下されると、オペレータからの操作入力により指定された解析・計測が行われる。データ解析計測部106は、各動作モード時に計測ボタンが押下された場合に、A/D変換器406又はシネメモリ602から、画像処理が施される前のRFデータを取得し、当該RFデータを用いてオペレータ指定の解析・計測(例えば、組織部の歪み解析(硬さ診断)、血流の計測、組織部の動き計測、又はIMT(内膜中膜複合体厚:Intima-Media Thickness)値計測)を行う。データ解析計測部106による解析・計測結果は、画像信号生成部500のDSC504に出力される。DSC504は、データ解析計測部106による解析・計測結果を超音波画像の画像データに挿入して表示部104に出力する。これにより、超音波画像と解析・計測結果とが表示部104に表示される。
【0053】
[微小構造物の判定処理]
次に、微小構造物を判定する方法について説明する。本実施形態に係る超音波診断装置10は、素子データ上で、小開口(例えば、超音波探触子300のすべての素子数の1/2,1/3から1/5の素子数の超音波トランスデューサ302からなる開口)から取得した素子データの整合加算を行い、各整合加算結果のRFデータ及び振幅画像に基づいて反射物性状や組織性状を判定するものである。
【0054】
図2は、素子データの位相整合加算処理を説明するための図である。図3は、素子データを小開口ごとに位相整合加算処理を説明するための図である。また、図4は、孤立点、連続面及びスペックルの小開口の整合加算後のRFデータ又は振幅画像の一致性の違いを説明するための図である。
【0055】
図2に示すように、孤立点は、振幅画像IMGにおいて振幅値が高い(高エコーの)領域として描出される。素子データD上では、孤立点からの超音波エコーは孤立点特有の時間差で送信波形が保たれたまま受信される。従って、図3に示すように、孤立点特有の遅延を考慮して、超音波探触子300上の小開口から取得したRFデータ(素子データ)を整合加算した場合、各小開口での整合加算結果が波形レベルで一致する。ここで、孤立点は、素子データ上では送信波形が保たれているため、小開口の位置に依らずRFデータの距離方向(被検体OBJの深さ方向)の位相差が一様である。
【0056】
本実施形態では、孤立点において各小開口でのRFデータの位相差が小さい特徴に着目して孤立点を抽出する。本実施形態によれば、単に振幅画像の高エコー領域を抽出する従来の方法よりもSNが向上し、孤立点を高精度で抽出することが可能になる。
【0057】
図4(a)に示すように、孤立点は孤立点特有の時間差で送信波形が保たれたまま受信されるため、孤立点特有の遅延を考慮して各小開口で整合加算した結果が波形レベルで一致する。また、素子データ上において送信波形が保たれているため、小開口の位置に依らずRFデータの距離方向の位相差が一様である。
【0058】
また、図4(b)に示すように、連続面は、中心の小開口で振幅が大きい。また、素子データ上において送信波形が保たれているため、RFデータの連続点を含む領域における距離方向の位相差が一様である。また、図4(c)に示すように、スペックルは、開口の位置に依らず振幅及びRFデータ(位相)がランダムに変化する。上記のように、各小開口の整合加算後のRFデータ又は振幅画像データの一致性が、孤立点(微小構造物)と、連続面及びスペックルとの間で異なる。
【0059】
本実施形態に係る超音波診断装置10は、上記特徴を利用して、孤立点、連続面及びスペックルを弁別して抽出すること、また組織性状を判定すること、具体的には、例えば、均質媒質(肝実質)のスペックル中の局所的に強いエコーや連続面を解析し、正常肝実質の中の繊維質が混ざった病変肝を抽出することを可能にするものである。
【0060】
[微小構造物の判定処理]
図5は、微小構造物の判定処理を示すフローチャートである。
【0061】
まず、超音波探触子300から被検体OBJに対して超音波ビームが照射され、被検体OBJからの超音波エコーが受信される。次に、被検体OBJに対する仮定音速の初期値が設定され(ステップS10)、この仮定音速値に基づいて、超音波探触子300の各小開口の素子データが整合加算され、RFデータが生成される(ステップS12)。
【0062】
次に、超音波探触子300の各小開口のRFデータの位相の差分の絶対値が算出される(ステップS14)。そして、差分絶対値が素子データ上の各画素を中心とした所定サイズ(例えば、孤立点に外接するサイズ)のカーネルで積分される(ステップS16)。その次に、超音波探触子300の各画素を中心として算出された差分絶対値の積分値が最小値と比較されて、上記積分値が前に保持された最小値より小さい場合、上記積分値が最小値と置き換えられる。これにより、上記積分値の最小値が画素ごとに保持される(ステップS18)。
【0063】
次に、仮定音速値が1ステップ変更されて(ステップS20のNo、S22)、すべての仮定音速での演算が終了するまで(ステップS20のYes)、ステップS12からS22の工程が繰り返される。そして、すべての仮定音速での演算が終了すると(ステップS20のYes)、ステップS18において保持された各画素の積分値の最小値に基づいて、各画素が微小構造物であるかどうかの判定が行われる(ステップS24)。ステップS24では、積分値の最小値が閾値以下の画素が微小構造物と判定される。
【0064】
なお、差分絶対値は、例えば、小開口が3種類の場合、3種類の差分絶対値が算出される。そして、差分絶対値の和、最小値、最大値又は標準偏差を算出し、各仮定音速値を用いて算出した値が所定値以下の場合に、微小構造物と判定するようにすることも可能である。
【0065】
また、上記図5の処理に加えて、微小構造物がある画素では素子データの距離方向の位相差が一様になる特徴を利用して、微小構造物の判定を行うことも可能である。例えば、差分絶対値を積分する際に、距離方向に位相差をとって、距離方向位相差、又は距離方向位相差の2次微分値の絶対値を乗算してから積分するようにしてもよい。また、距離方向位相差、又は距離方向位相差の2次微分値の絶対値を加算してから積分するようにしてもよい。減衰の影響などから、距離方向の位相差が、距離方向に正確に一定ではないが、方位方向(スキャン方向、超音波トランスデューサ302の配列方向)の一様性も考慮して、上記の距離方向位相差の替わりに方位方向位相差の距離方向の差、又は距離方向位相差の方位方向の差を用いてもよい。即ち、差分絶対値を積分する際に、方位方向位相差の距離方向の差の絶対値、又は距離方向位相差の方位方向の差の絶対値を乗算又は加算してから積分するようにしてもよい。
【0066】
また、最小値の保持ステップ(ステップS18)を省略して、全仮定音速での演算が終了する前に、積分値が閾値以下になった画素を微小構造物と判定し、微小構造物と判定された画素については、他の仮定音速での演算を省略してもよい。
【0067】
また、最小値の代わりに各仮定音速での積分値の和を用いて微小構造物の判定を行ってもよい。
【0068】
上記実施形態では、各小開口で微小構造物のRFデータの位相差が小さい特徴に着目して孤立点を抽出したが、全ての小開口で振幅値が大きくなる特徴を利用してもよい。例えば、素子データ上の各画素を中心とした所定サイズのカーネルで積分された振幅の絶対値、又は上記振幅と前記カーネルの周りのカーネルから求めた振幅の平均との差分値(又は差分値の絶対値)を各小開口で比較し、全て閾値以上の場合、又は各小開口の比が閾値以下の場合に微小構造物と判定してもよい。
【0069】
[連続面の判定処理]
図6は、連続面の判定処理を示すフローチャートである。
【0070】
まず、超音波探触子300から被検体OBJに対して超音波ビームが照射され、被検体OBJからの超音波エコーが受信される。次に、被検体OBJに対する仮定音速の初期値が設定され(ステップS30)、この仮定音速値に基づいて、超音波探触子300の各小開口の素子データが整合加算され、RFデータが生成される。そして、上記RFデータに対して包絡線検波が行われ、超音波エコーの振幅が求められる(ステップS32)。
【0071】
次に、素子データから得られた振幅が、超音波探触子300の各画素を中心とした所定サイズのカーネルで積分される(ステップS34)。そして、中心以外の開口について上記カーネルでの振幅の積分値の平均値が算出される(ステップS36)。また、中心の開口の上記カーネルでの振幅の積分値と中心以外の開口の振幅の積分値の平均値の比(即ち、{中心の開口の振幅の積分値}÷{中心以外の開口の振幅の積分値の平均値})が算出される(ステップS38)。その次に、各画素を中心として求めた比の値と最大値が比較され、上記比の値が前に保持された最大値より大きい場合、上記比の値が最大値と置き換えられる。これにより、上記比の値の最大値が保持される(ステップS40)。
【0072】
次に、仮定音速値が1ステップ変更されて(ステップS42のNo、S44)、すべての仮定音速での演算が終了するまで(ステップS42のYes)、ステップS32からS44の工程が繰り返される。そして、すべての仮定音速での演算が終了すると(ステップS42のYes)、ステップS40において保持された比の値の最大値に基づいて、各画素が連続面であるかどうかの判定が行われる(ステップS46)。ステップS46では、比の値の最大値が閾値以上の画素が連続面と判定される。
【0073】
なお、図6の処理では、振幅の積分値の比の値の代わりに、例えば、中心の開口の上記カーネルでの振幅の積分値と中心以外の開口の振幅の積分値の平均値の差に基づいて連続面の判定を行うことも可能である。
【0074】
また、上記の処理に加えて、連続面がある中心開口では素子データの距離方向の位相差が一様になる特徴を利用して、連続面の判定を行うことも可能である。例えば、中心開口において各画素中心に所定サイズカーネルで振幅を積分する際に、距離方向にRFデータの位相差をとって、距離方向の位相差、又は距離方向位相差の2次微分値の絶対値、又は方位方向位相差の距離方向の差の絶対値を算出し、位相差が小さくなるほど値が大きくなる係数をテーブルに格納しておき、上記振幅にこの係数を乗算してから積分するようにしてもよい。
【0075】
また、最大値の保持ステップ(ステップS40)を省略して、全仮定音速での演算が終了する前に、比の値が閾値以上になった画素を連続面と判定し、連続面と判定された画素を中心としたカーネルについては、他の仮定音速での演算を省略してもよい。
【0076】
また、全ての仮定音速を用いるのではなく、1つの仮定音速のみで連続面の判定を行ってもよい。
【0077】
[スペックルの判定]
振幅画像(Bモード画像)において振幅値が所定値以上の(高エコーの)領域のうち、図5の処理によって判定された微小構造物、及び図6の処理によって判定された連続面以外の画素の領域がスペックルと判定される。
【0078】
[微小構造物の混合割合の判定処理]
次に、上記の図5及び図6の処理によりスペックルと判定された画素領域に含まれる微小構造物及び連続面(微小連続面)の混合割合を算出する処理について図7から図9を参照して説明する。図7は、スペックル中に含まれる微小構造物の混合割合の算出処理を示すフローチャートである。
【0079】
まず、超音波探触子300から被検体OBJに対して超音波ビームが照射され、被検体OBJからの超音波エコーが受信される。次に、被検体OBJに対する仮定音速の初期値が設定され(ステップS50)、この仮定音速値に基づいて、超音波探触子300の各小開口の素子データが整合加算される(ステップS52)。
【0080】
次に、超音波探触子300の各小開口のRFデータの位相の差分の絶対値が算出される(ステップS54)。そして、各画素を中心とした所定サイズのカーネル内において、差分絶対値が小さい方から所定のデータ数分のデータの平均値が算出される(ステップS56)。そして、各画素を中心として求められた平均値が最小値と比較され、上記平均値が最小値より小さい場合、上記平均値が前に保持された最小値と置き換えられる。これにより、中心画素ごとに最小値が求められて保持される(ステップS58)。
【0081】
次に、仮定音速値が1ステップ変更されて(ステップS60のNo、S62)、すべての仮定音速での演算が終了するまで(ステップS60のYes)、ステップS52からS62の工程が繰り返される。そして、すべての仮定音速での演算が終了すると(ステップS60のYes)、ステップS58において保持された平均値の最小値に基づいてスペックル中に混合している微小構造物の混合割合が判定される(ステップS64)。
【0082】
図8は、微小構造物の混合割合と差分絶対値の平均値との関係を示すグラフである。
【0083】
図8に示すように、微小構造物の混合割合が大きいほど、差分絶対値の平均値のゼロに近い領域のデータ数(度数)が多くなる。即ち、スペックル中に含まれる微小構造物の混合割合が大きくなるほど、差分絶対値の平均値は小さくなり、スペックル中に含まれる微小構造物の混合割合が小さくなるほど、差分絶対値の平均値は大きくなる。本実施形態に係る超音波診断装置10は、図8の関係を示すテーブルを格納部102内に格納しており、ステップS64では、このテーブルに基づいてスペックル中の微小混合物の混合割合を判定する。
【0084】
なお、所定数の平均値の代わりに、例えば、差分絶対値の最小値を用いて微小混合物の混合割合を判定することも可能である。
【0085】
また、上記図7の処理に加えて、微小構造物がある画素では素子データの距離方向の位相差が一様になる特徴を利用して、微小構造物の混合割合の判定を行うことも可能である。例えば、距離方向に位相差をとって、距離方向位相差、又は距離方向位相差の2次微分値の絶対値、又は方位方向位相差の距離方向の差の絶対値を乗算又は加算して得られた値の平均値を用いて微小構造物の混合割合を判定することも可能である。
【0086】
また、全ての小開口で微小構造物の振幅値が大きくなる特徴を合わせて利用して、微小混合物の混合割合を判定することも可能である。
【0087】
[微小連続面の混合割合の判定処理]
図9は、スペックル中に含まれる微小連続面の混合割合の算出処理を示すフローチャートである。
【0088】
まず、超音波探触子300から被検体OBJに対して超音波ビームが照射され、被検体OBJからの超音波エコーが受信される。次に、被検体OBJに対する仮定音速の初期値が設定され(ステップS70)、この仮定音速値に基づいて、超音波探触子300の各小開口の素子データが整合加算され、RFデータが生成される。そして、上記RFデータに対して包絡線検波が行われ、超音波エコーの振幅が求められる(ステップS72)。
【0089】
次に、素子データから得られた振幅が、超音波探触子300の各画素を中心とした所定サイズのカーネルで積分される(ステップS74)。そして、中心以外の開口について上記カーネルでの振幅の積分値の平均値が算出される(ステップS76)。中心の開口の上記カーネルでの振幅の積分値と中心以外の開口の振幅の積分値の平均値の比が算出される(ステップS78)。
【0090】
次に、各画素を中心とした所定サイズのカーネル内において、ステップS78において求めた比の値の平均値が小さい方から所定のデータ数分のデータの平均値が算出される(ステップS80)。そして、各画素を中心として求められた比の値の平均値と最大値が比較され、上記比の値の平均値が前に保持された最大値より大きい場合、上記比の値が最大値と置き換えられる。これにより、中心画素ごとに最大値が求められて保持される(ステップS82)。
【0091】
次に、仮定音速値が1ステップ変更されて(ステップS84のNo、S86)、すべての仮定音速での演算が終了するまで(ステップS84のYes)、ステップS72からS86の工程が繰り返される。そして、すべての仮定音速での演算が終了すると(ステップS84のYes)、ステップS82において保持された比の値の平均値の最大値に基づいてスペックル中に混合している微小連続面の混合割合が判定される(ステップS88)。微小連続面の混合割合が大きいほど、上記比の値の平均値が大きい側のデータ数が多くなる。即ち、スペックル中に含まれる微小連続面の混合割合が大きくなるほど、上記比の値の平均値は大きくなり、スペックル中に含まれる微小連続面の混合割合が小さくなるほど、上記比の値の平均値は小さくなる。本実施形態に係る超音波診断装置10は、上記比の値の平均値と微小連続面の混合割合との関係を示すテーブルを格納部102内に格納しており、ステップS88では、このテーブルに基づいてスペックル中の微小連続面の混合割合を判定する。
【0092】
なお、上記の比の値の代わりに、上記カーネルの中心の開口の振幅の積分値と中心以外の開口の振幅の積分値の平均値の差又は前記差の絶対値を用いて微小連続面の混合割合を判定することも可能である。
【0093】
また、上記図9の処理では、比の値の所定数の平均値を用いたが、上記平均値の代わりに、上記比の値の最大値を用いてもよい。
【0094】
また、上記の処理に加えて、連続面がある中心開口では素子データの距離方向の位相差が一様になる特徴を利用して、連続面の判定を行うことも可能である。例えば、中心開口において各画素中心に所定サイズカーネルで振幅を積分する際に、距離方向に位相差をとって、距離方向の位相差、又は距離方向位相差の2次微分値の絶対値、又は方位方向位相差の距離方向の差の絶対値を算出し、位相差が小さくなるほど値が大きくなる係数をテーブルに格納しておき、上記振幅にこの係数を乗算してから積分するようにしてもよい。
【0095】
上記の各処理による反射物の性状の判定結果は、表示部104に出力されて表示される。表示部106の表示モードが判定結果表示モードに設定されると、反射物の性状の判定結果が振幅画像に重畳されるか、又は振幅画像と並べて表示される。判定結果表示モードでは、例えば、微小構造物、連続面、スペックルが色分け又は輝度を変化させることにより表示される。また、微小構造物又は微小連続面の混合割合を振幅画像の色分け又は輝度の変化として表示することも可能である。上記判定結果の表示の態様は、操作入力部200からの操作入力により切り替え可能とすることができる。
【0096】
上記の各実施形態は超音波トランスデューサが2次元に配置されている場合や、超音波トランスデューサが平面でなく任意の曲面状に配置されている場合にも適用できる。
【0097】
本実施形態によれば、素子データ上で小開口の整合加算を行って、RFデータ及び振幅画像における微小構造物、連続面、及びスペックルの特徴の違いを利用することにより、振幅画像の振幅値や形状に基づく従来の手法では弁別することが困難な微小構造物、連続面及びスペックルを弁別することができる。また、例えば、スペックル中の微小構造物及び微小連続面の混合割合のような組織性状の判定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図
【図2】素子データの位相整合加算処理を説明するための図
【図3】素子データを小開口ごとに位相整合加算処理を説明するための図
【図4】孤立点、連続面及びスペックルの小開口の整合加算後のRFデータ又は振幅画像の一致性の違いを説明するための図
【図5】微小構造物の判定処理を示すフローチャート
【図6】連続面の判定処理を示すフローチャート
【図7】スペックル中に含まれる微小構造物の混合割合の算出処理を示すフローチャート
【図8】微小構造物の混合割合と差分絶対値の平均値との関係を示すグラフ
【図9】スペックル中に含まれる微小連続面の混合割合の算出処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0099】
10…超音波診断装置、100…CPU、102…格納部、104…表示部、106…データ解析部、200…操作部、202…操作卓、204…ポインティングデバイス、300…超音波探触子、302…超音波トランスデューサ(素子)、400…送受信部、402…送信回路、404…受信回路、406…A/D変換器、500…画像信号生成部、502…信号処理部、504…DSC、506…画像処理部、508…画像メモリ、510…D/A変換器、600…再生部、602…シネメモリ、604…シネメモリ再生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して素子データを出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子と、
前記超音波トランスデューサから出力された素子データに基づいて、前記超音波探触子に設けられた開口を複数に分割した小開口の素子データの整合加算を行う演算手段と、
前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ及び振幅画像のうちの少なくとも1つに基づいて、前記被検体内において超音波を反射する反射物の性状を判定する判定手段と、
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域を微小構造物と判定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域であって、前記小開口の位置によらずRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が所定値以下の領域を微小構造物と判定する請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記判定手段が、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より所定値以上大きい領域を連続面と判定する請求項1から3のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記判定手段が、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より第1の所定値以上大きい領域であって、前記中心に位置する小開口におけるRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が第2の所定値以下の領域を連続面と判定する請求項1から3のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記判定手段が、小開口の位置に依らず、振幅又はRFデータがランダムに変化する領域をスペックルと判定する請求項1から5のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる微小構造物の混合割合を判定する請求項6記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記判定手段が、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる連続面の混合割合を判定する請求項6又は7記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記反射物の性状の判定結果を表示する表示手段を更に備える請求項1から8のいずれか1項記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記表示手段が、前記反射物の性状の判定結果を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示する請求項9記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記反射物の性状の判定結果を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替える表示モード切替手段を更に備える請求項9又は10記載の超音波診断装置。
【請求項12】
超音波を被検体に送信するとともに、該被検体によって反射される超音波を受信して素子データを出力する複数の超音波トランスデューサを含む超音波用探触子から出力された素子データに基づいて、前記超音波探触子に設けられた開口を複数に分割した小開口の素子データの整合加算を行う演算工程と、
前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ及び振幅画像のうちの少なくとも1つに基づいて、前記被検体内において超音波を反射する反射物の性状を判定する判定工程と、
を備える超音波診断方法。
【請求項13】
前記判定工程では、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域を微小構造物と判定する請求項12記載の超音波診断方法。
【請求項14】
前記判定工程では、前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータの位相が略一致する領域であって、前記小開口の位置によらずRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が所定値以下の領域を微小構造物と判定する請求項12記載の超音波診断方法。
【請求項15】
前記判定工程では、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より所定値以上大きい領域を連続面と判定する請求項12から14のいずれか1項記載の超音波診断方法。
【請求項16】
前記判定工程では、前記素子データの所定の領域の中心に位置する小開口における振幅が、中心以外の小開口における振幅より第1の所定値以上大きい領域であって、前記中心に位置する小開口におけるRFデータの位相、又は前記超音波探触子の距離方向の位相差のスキャン方向又は距離方向の変化が第2の所定値以下の領域を連続面と判定する請求項12から14のいずれか1項記載の超音波診断方法。
【請求項17】
前記判定工程では、小開口の位置に依らず、振幅又はRFデータがランダムに変化する領域をスペックルと判定する請求項12から16のいずれか1項記載の超音波診断方法。
【請求項18】
前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる微小構造物の混合割合を判定する工程を更に備える請求項17記載の超音波診断方法。
【請求項19】
前記各小開口の素子データを整合加算した結果得られたRFデータ又は振幅画像に基づいて、前記スペックルに含まれる連続面の混合割合を判定する工程を更に備える請求項17又は18記載の超音波診断方法。
【請求項20】
前記反射物の性状の判定結果を表示手段に表示する表示工程を更に備える請求項12から19のいずれか1項記載の超音波診断方法。
【請求項21】
前記表示工程では、前記反射物の性状の判定結果を、前記振幅画像に重畳させるか、又は前記振幅画像と並べて表示する請求項20記載の超音波診断方法。
【請求項22】
前記振幅画像を単独で表示する第1の表示モードと、前記反射物の性状の判定結果を表示する第2の表示モードとの間で表示モードを切り替え指示入力をオペレータから受け付けて、表示モードを切り替える表示モード切替手段工程を更に備える請求項20又は21記載の超音波診断方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−75329(P2010−75329A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245520(P2008−245520)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】