説明

超音波診断装置

【課題】 浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することのできる超音波診断装置を提供すること。
【解決手段】 制御器15には、帯域選択フィルタ19において選択する周波数帯域および送信パルス形状は予め設定されており、どの帯域を用いるかでどの程度のタイミングずれが生じるかも設定されていて、制御器15は、これらの設定に基づいて、浅い部位から深い部位の信号を取り込みつつ、帯域選択フィルタ19により選択した周波数帯域に対応するタイミングずれに応じて、可変遅延手段20の遅延量を制御してタイミングずれを補正する(浅い部位では遅延を大きく、深い部位になるにつれ遅延を小さくする)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子を用いて被検体に超音波信号を送受信して被検体内の情報を得る超音波診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
振動子を用いて被検体に超音波信号を送受信して被検体内の情報を得る超音波診断装置が知られている。
【0003】
この超音波診断装置は、二次元走査の方式の違いから、メカニカルセクタ走査方式、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式などに区分されている。
【0004】
ここでは電子リニア走査方式の超音波診断装置における信号処理の概略について説明する。
【0005】
図8は、電子リニア走査方式の超音波診断装置のブロック図である。
【0006】
図8において、超音波診断装置は、被検体に超音波信号を送受信する振動子81と、1側端子および2側端子それぞれに接続された振動子81のいずれか一方を選択する高耐圧スイッチ(HV−MUX)82と、振動子81により被検体に送信するパルスを発生する送信パルス発生器83と、送信パルス発生器83のパルス発生のトリガを発生してパルス発生のタイミングを制御する送信トリガ発生器84と、装置各部を制御する制御器85と、振動子81により受信した信号を増幅する受信アンプ86と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器87と、受信信号から受信ビームを形成するビーム形成器88と、ビーム形成器88が出力する受信ビームを検波する検波器89と、検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータ(DSC)90と、DSC90で走査変換された画像を表示する表示器91とを備えている。
【0007】
このような電子リニア走査方式の超音波診断装置は、振動子81と送信パルス発生器83(もしくは受信アンプ86)との間に設けた高耐圧スイッチ82で振動子81を選択し、開口の位置をずらして送受信を繰り返すことで二次元走査を行うものである。
【0008】
例えば、最初の送受信において、高耐圧スイッチ82a〜82hは全て1側端子を選択するように設定され、振動子81a〜81hで送受信を行う。次の送受信では、高耐圧スイッチ82aのみが2側端子を選択するように切り替えられ(他は1側端子のまま)、これにより振動子81b〜81iが選択され、開口が振動子一つ分ずれることになる。
【0009】
このように、高耐圧スイッチ82により選択する振動子81を切り替えることで開口を変えて二次元画像を得るようになっている。
【0010】
次に、電子リニア走査方式におけるビーム集束について説明する。電子リニア走査方式においては、複数に分割した振動子を用い、ビームの集束条件を変化させることを特徴としている。
【0011】
ビーム集束は波の重ね合わせの原理を用いており、例えば、ビームを集束させたい場合、それぞれの振動子から送信されるパルスが集束させたい場所に同じタイミングで到達するように、送信時に各振動子からパルスを発生させるタイミングを調整することで実現できる。
【0012】
受信時には、被検体内の反射点から各振動子に到達した信号のタイミングを電気的に遅延をかけて調節し、加算することで実現できる。
【0013】
図9はビーム形成器88の内部構成を示すブロック図である。ビーム形成器88は、各振動子で得た受信信号を遅延させる可変遅延手段881a〜881hと、可変遅延手段881a〜881hで遅延された信号を加算する加算器882とを備えている。
【0014】
信号の経路長が異なるために、浅い部位からの反射信号が、深い部位からの反射信号より速く戻ってくることを利用すると、受信においては、浅い部位にも深い部位にもビームの集束を行うことができる。なお、集束位置を浅い部位から深い部位に順次ずらしていく手法はダイナミックフォーカスと呼ばれる。
【0015】
図10はダイナミックフォーカスを説明するための図である。図10(a)に示すように、振動子81a〜81hは、図中E0〜E7を基準座標点としている。電子リニア走査方式においては、開口の中心(図中O)から振動子81a〜81hの配列方向に対し垂直に送受信を行うので、垂直線上の図中AまたはBに受信ビームを集束させることになる。
【0016】
まず、Aに集束させる際には、図10(b)に示すように、振動子81a〜81hで受信した信号に、可変遅延手段881a〜881hにより、それぞれDA0〜DA7の遅延をかけ、加算器882により加算する。
【0017】
次に、Bに集束させる際には、図10(c)に示すように、振動子81a〜81hで受信した信号に、可変遅延手段881a〜881hにより、それぞれDB0〜DB7の遅延をかけ、加算器882により加算するが、Bに集束させる場合の方が、Aに集束させる場合に比べ、反射点から各振動子までの距離の違いが小さいので、Bに集束させる場合の方が遅延量の差が小さくなる。
【0018】
A、Bへの集束を行うタイミングとは、各振動子から送信された送信パルスが、それぞれの反射点で反射し、各振動子に戻った時点となる。
【0019】
なお、図10(b)、(c)においては、遅延量の違いを視覚的に分かるように、可変遅延手段881a〜881hの長方形の辺の長さを、遅延量に対応させて変えている。
【0020】
実際の装置では、集束位置はA、Bの2点だけではなく多段となる。制御器85の制御信号により、可変遅延手段881a〜881hの遅延量を変化させ、浅い部位から深い部位までに集束させるようになっている。
【0021】
ビーム形成器88で遅延加算された信号は、検波器89で検波され、DSC90において走査変換される。
【0022】
図11はDSC90の内部構成を示すブロック図である。DSC90では、超音波の音響線方向の信号を、表示器91の走査線方向に変換するのが主目的であり、検波出力を一旦二次元メモリ901に記憶させ、走査線方向に読み出すことで目的を達成する。二次元メモリ901への記憶および読出のアドレス制御はアドレス制御器902で行う。また、超音波の走査線密度の過不足を補正し、均等な画質を得るために補間フィルタ903が用いられる。
【0023】
次に、送信パルスの波形について説明する。超音波診断装置の送信パルス波形としては、図12(a)に示すような単一周期の波形が多く用いられている。
【0024】
体内においては、周波数に依存する減衰があり、一般に0.7dB/MHz・cm程度であり、周波数が高いほど、また伝搬距離が長いほど減衰が大きい。
【0025】
一般に周波数が高い方が方位分解能が優れるが、体内の深いところでは高い周波数は減衰が大きいので、十分な強度のエコー信号が得られないという課題があった。
【0026】
そこで、図12(b)に示すように、単一周期ではなく、周期の異なる、すなわち周波数の異なるパルスを複合した送信パルス(複合周期送信パルス)を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0027】
図13は、この送信パルスを用いた超音波診断装置のブロック図である。なお、図8に示した超音波診断装置と同様な構成には同一の符号を付して特徴部分のみ説明する。
【0028】
図13に示すように、この超音波診断装置では、ビーム形成器88と検波器89との間に帯域選択フィルタ92を備えている。
【0029】
この超音波診断装置の受信動作を図14により説明する。
【0030】
図14(a)に示したようなパルス波形で送信した場合、浅い部位で反射されたエコー信号は図14(b)のようになり、パルス波形の全ての部分が戻ってくる。
【0031】
この信号をこのまま検波器89において検波し、画像を構成するとパルス長が長いために深さ方向の分解能が劣化するという問題が発生する。
【0032】
そこで、帯域選択フィルタ(バンドパスフィルタ)92において、パルスの前半の比較的高い周波数部分を選択すると、図14(c)のような波形が得られる。図14(c)のような波形では、周波数が高いため方位分解能がよく、またパルス長が短いため深さ方向の分解能にも優れている。
【0033】
一方、深い部位からのエコー信号は、図14(d)に示すように、高い周波数部分は減衰して失われ、低い成分のみが残っている。そこで、帯域選択フィルタ92で、この低い部分のみを抽出することで、ノイズしかない高い周波数部分をカットし、S/N比を向上させることができる。
【0034】
つまり、この方式では、高い周波数の単一周期のパルスを用いた場合に起こる深い部位での信号強度不足と、低い周波数の単一周期のパルスを用いた場合に起こる浅い部位での方位方向の分解能不足を解決することができる。
【特許文献1】特開2001−95798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
しかしながら、従来の複合周期送信パルスを用いた方式では、次のような問題点がある。
【0036】
浅い部位においては周波数の高い部分を用いるため波形の先頭に近い部分を用いるが、、深い部位では波形の後ろの部分を用いる。より広い周波数帯域をカバーするためには周期の短いパルスから周期の長いパルスまで揃える必要があり、波数が多くなり、波数が多くなるとパルス長が長くなる。一般に体内での超音波の伝搬速度は一定として装置は構成されているが、パルス長が長くなると、先頭部分にタイミングを合わせると浅い部位でのエコー信号の位置情報は正確になるが、深い部位では揃わなくなり、末尾部分を揃えるとその逆になる。
【0037】
この問題をさらに具体的に述べると、二つの問題に分けることができる。
【0038】
一つは、画像構成上の問題である。浅い部位を基準として画像を構成すれば、深い部位において信号の現れる時間が遅くなるため、実際より深い位置に画像が構成されるという問題がある。逆に深い部位を基準とすれば、浅い部位で実際より浅い位置に画像が表示されることになる。
【0039】
もう一つの問題は、遅延加算のタイミングの問題である。上述したように、受信ビームの集束はダイナミックに変化し、この変化は反射信号が振動子に戻ってくるタイミングに連動する。しかし、複合周期送信パルスにおいては、深さにより波形のうちの用いる部分が異なるため、例えば、波形先頭にビーム集束タイミングを合わせれば浅部においてタイミングが合うが、波形後部を用いる深部においてタイミングがずれ、正しいビーム集束が行われなくなる。
【0040】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することのできる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の超音波診断装置は、一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号に可変に遅延を付加する可変遅延手段と、前記遅延を付加された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記可変遅延手段は、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応した遅延量を付加する構成を有している。
【0042】
この構成により、帯域選択された周波数帯域に対応する深さに応じて遅延量が付加され、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができる。
【0043】
また、本発明の超音波診断装置は、一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ビーム形成器は、前記受信エコー信号に前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応した遅延量を付加する構成を有している。
【0044】
この構成により、帯域選択された周波数帯域に対応する深さに応じて遅延量が付加され、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができる。
【0045】
さらに、本発明の超音波診断装置は、一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ディジタルスキャンコンバータは、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応して走査変換を補正する構成を有している。
【0046】
この構成により、帯域選択された周波数帯域に対応する深さに応じて走査変換時の変換先の位置(深さ)が補正され、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができる。
【0047】
さらに、本発明の超音波診断装置は、一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ビーム形成器は、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応してビーム集束の位置を補正する構成を有している。
【0048】
この構成により、帯域選択された周波数帯域に対応する深さに応じてビーム集束の位置が補正され、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、帯域選択された周波数帯域に対応する深さに応じて受信信号に遅延を付加することにより、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0051】
(第1の実施の形態)
図1は本発明の第1の実施の形態の超音波診断装置を示す図である。
【0052】
図1において、本実施の形態の超音波診断装置は、被検体に超音波信号を送受信する振動子11a〜11pと、1側端子および2側端子それぞれに接続された振動子11a〜11pのいずれか一方を選択する高耐圧スイッチ(HV−MUX)12a〜12hと、振動子11a〜11pにより被検体に送信する複合周期送信パルスを発生する送信パルス発生器13a〜13hと、送信パルス発生器13a〜13hのパルス発生のトリガを発生してパルス発生のタイミングを制御する送信トリガ発生器14と、装置各部を制御する制御器15と、振動子11a〜11pにより受信した信号を増幅する受信アンプ16a〜16hと、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器17a〜17hと、受信信号から受信ビームを形成するビーム形成器18と、設定された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタ19と、遅延量を可変に設定可能な可変遅延手段20と、可変遅延手段20が出力する受信ビームを検波する検波器21と、検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータ(DSC)22と、DSC22で走査変換された画像を表示する表示器23とを備えている。
【0053】
可変遅延手段20は、例えば、同時に入力・出力が可能なメモリFIFO(First-In First-Out)などを有し、このメモリFIFOに入力を等間隔で行い、読出を不等間隔に行うことで遅延量を変化させる。
【0054】
制御器15では、帯域選択フィルタ19において選択する周波数帯域および送信パルス形状は予め設定されており、どの帯域を用いるかでどの程度のタイミングずれが生じるかも設定されている。
【0055】
制御器15は、これらの設定に基づいて、浅い部位から深い部位の信号を取り込みつつ、帯域選択フィルタ19により選択した周波数帯域に対応するタイミングずれに応じて、可変遅延手段20の遅延量を制御してタイミングずれを補正する(浅い部位では遅延を大きく、深い部位になるにつれ遅延を小さくする)ことで、位置ずれを補正する。
【0056】
このように本実施の形態においては、制御器15が可変遅延手段20により、帯域選択フィルタ19で選択した周波数帯域に応じた遅延量を付加してタイミングずれを補正しているので、位置ずれを補正することができ、高精度な画像を提供することができる。
【0057】
(第2の実施の形態)
次に、図2は本発明の第2の実施の形態の超音波診断装置を示す図である。なお、本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様に構成されているので、同様な構成には同一の符号を付して特徴部分のみ説明する。
【0058】
本実施の形態のビーム形成器32は、図3に示すように、ビーム形成情報に基づいてビーム形成のために遅延を付加する第1の可変遅延手段321a〜321hと、送信パルス遅延情報に基づいてタイミングずれを補正するために遅延を付加する第2の可変遅延手段322a〜322hと、第2の可変遅延手段322a〜322hで遅延された信号を加算する加算器323とを備えている。
【0059】
制御器31には、上述の第1の実施の形態と同様に、帯域選択フィルタ19において選択する周波数帯域および送信パルス形状や、どの帯域を用いるかでどの程度のタイミングずれが生じるかが設定されており、制御器31は、この設定に基づいて、浅い部位から深い部位の信号を取り込みつつ、ビームを集束させたい位置に応じたビーム形成情報を作成してビーム形成器32に入力するとともに、帯域選択フィルタ19により選択する周波数帯域に対応するタイミングずれに応じて、タイミングずれを補正するための送信パルス遅延情報を作成してビーム形成器32に入力する。
【0060】
ビーム形成器32の第1の可変遅延手段321a〜321hは、ビーム形成情報に基づいて遅延量を付加してビームを集束させ、第2の可変遅延手段322a〜322hは、送信パルス遅延情報に基づいて遅延量を付加してタイミングずれを補正する(浅い部位では遅延を大きく、深い部位になるにつれ遅延を小さくする)ことで、位置ずれを補正する。
【0061】
このように本実施の形態においては、ビーム形成器32に送信パルス遅延情報に基づいて遅延を付加する第2の可変遅延手段322a〜322hを設け、制御器31が設定された情報に基づいて送信パルス遅延情報を作成し、第2の可変遅延手段322a〜322hにより、帯域選択フィルタ19で選択する周波数帯域に応じた遅延量を付加してタイミングずれを補正しているので、位置ずれを補正することができ、高精度な画像を提供することができる。
【0062】
なお、第1の可変遅延手段321a〜321hと第2の可変遅延手段322a〜322hをそれぞれ一体として(例えば、第1の可変遅延手段321aと第2の可変遅延手段322aとを一体とする)、ビーム形成のための遅延量とタイミングずれを補正するための遅延量の両方を、一体とした可変遅延手段により制御するようにしてもよい。このようにすれば、可変遅延手段を増やさなくてよく、部品量を削減することができる。
【0063】
(第3の実施の形態)
次に、図4は本発明の第3の実施の形態の超音波診断装置を示す図である。なお、本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様に構成されているので、同様な構成には同一の符号を付して特徴部分のみ説明する。
【0064】
本実施の形態のDSC42は、図5に示すように、検波出力の二次元メモリ423への記憶および読出のアドレス制御を行うアドレス制御器421と、送信パルス位置ずれ情報に基づいて二次元メモリ423への書込アドレスを補正するアドレス情報補正部422と、検波出力を一旦記憶しておく二次元メモリ423と、超音波の走査線密度の過不足を補正し、均等な画質を得るための補間フィルタ424とを備えている。
【0065】
制御器41には、上述の第1の実施の形態と同様に、帯域選択フィルタ19において選択する周波数帯域および送信パルス形状や、どの帯域を用いるかでどの程度のタイミングずれが生じるかが設定されており、制御器41は、この設定に基づいて、浅い部位から深い部位の信号を取り込みつつ、帯域選択フィルタ19により選択した周波数帯域に対応するタイミングずれに応じて、送信パルス位置ずれ情報を作成してDSC42に入力し、DSC42のアドレス情報補正部422は送信パルス位置ずれ情報に基づいて二次元メモリ423への書込アドレスを補正する。
【0066】
アドレス情報補正部422は、送信パルスの位置ずれを加味し、深い部位の信号をより浅い位置を示すアドレスに書き込み、送信パルスに起因する位置ずれを補正する。
【0067】
このように本実施の形態においては、DSC42に、送信パルス位置ずれ情報に基づいて検波出力を二次元メモリ423への書込アドレスを補正するアドレス情報補正部422を設け、制御器41が設定された情報に基づいて送信パルス位置ずれ情報を作成して位置ずれを補正しているので、高精度な画像を提供することができる。
【0068】
(第4の実施の形態)
次に、図6は本発明の第4の実施の形態の超音波診断装置を示す図である。なお、本実施の形態は、上述の第1の実施の形態と略同様に構成されているので、同様な構成には同一の符号を付して特徴部分のみ説明する。
【0069】
本実施の形態のビーム形成器52は、図7に示すように、集束位置補正部523の出力する情報に基づいてビーム形成のために遅延を付加する可変遅延手段521a〜521hと、可変遅延手段521a〜521hで遅延された信号を加算する加算器522と、ビーム形成情報および集束位置補正情報に基づいて可変遅延手段521a〜521hの遅延量を制御して集束位置を補正する集束位置補正部523とを備えている。
【0070】
制御器51には、上述の第1の実施の形態と同様に、帯域選択フィルタ19において選択する周波数帯域および送信パルス形状や、どの帯域を用いるかでどの程度のタイミングずれが生じるかが設定されており、制御器51は、この設定に基づいて、浅い部位から深い部位の信号を取り込みつつ、ビームを集束させたい位置に応じたビーム形成情報を作成してビーム形成器52に入力するとともに、帯域選択フィルタ19により選択する周波数帯域に対応するタイミングずれに応じて、ビームの集束位置を補正するための集束位置補正情報を作成しビーム形成器52に入力する。
【0071】
ビーム形成器52の集束位置補正部523は、集束位置補正情報に基づいてビーム形成情報による可変遅延手段521a〜521hそれぞれの遅延量を補正してタイミングずれを補正することで、位置ずれを補正する。
【0072】
このように本実施の形態においては、ビーム形成器52に集束位置補正情報に基づいて集束位置を補正する集束位置補正部523を設け、制御器51が設定された情報に基づいて集束位置補正情報を作成し、可変遅延手段521a〜521hにより、帯域選択フィルタ19で選択する周波数帯域に応じた遅延量を付加してビーム集束のタイミングをずらしているので、位置ずれを補正することができ、高精度な画像を提供することができる。
【0073】
なお、上述の各実施の形態においては、電子リニア方式の場合について説明したが、電子セクタ方式においても、第1から第4の実施の形態と同様に実施可能である。また、メカニカルセクタ方式においても、第1または第3の実施の形態と同様に実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上のように、本発明にかかる超音波診断装置は、浅い部位でも深い部位でも位置および集束状態がずれない高精度の画像を提供することができるという効果を有し、振動子を用いて被検体に超音波信号を送受信して被検体内の情報を得る超音波診断装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施の形態における超音波診断装置のブロック図
【図2】本発明の第2の実施の形態における超音波診断装置のブロック図
【図3】本発明の第2の実施の形態における超音波診断装置のビーム形成器のブロック図
【図4】本発明の第3の実施の形態における超音波診断装置のブロック図
【図5】本発明の第3の実施の形態における超音波診断装置のディジタルスキャンコンバータのブロック図
【図6】本発明の第4の実施の形態における超音波診断装置のブロック図
【図7】本発明の第4の実施の形態における超音波診断装置のビーム形成器のブロック図
【図8】第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のブロック図
【図9】第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のビーム形成器のブロック図
【図10】(a)第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の受信ビームの集束点を示す図 (b)第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のビーム形成器の遅延量の第1例を示す図 (c)第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のビーム形成器の遅延量の第2例を示す図
【図11】第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のディジタルスキャンコンバータのブロック図
【図12】(a)第1の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の送信信号波形を示す図 (b)第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の送信信号波形を示す図
【図13】第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置のブロック図
【図14】(a)第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の送信信号の波形を示す図 (b)第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の浅い部位で反射されたエコー信号の波形を示す図 (c)第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の浅い部位で反射されたエコー信号の比較的高い周波数部分を選択した信号の波形を示す図 (d)第2の従来例の電子リニア走査方式の超音波診断装置の深い部位で反射されたエコー信号の波形を示す図
【符号の説明】
【0076】
11a〜11p 振動子
12a〜12h 高耐圧スイッチ(HV−MUX)
13a〜13h 送信パルス発生器
14 送信トリガ発生器
15 制御器
16a〜16h 受信アンプ
17a〜17h A/D変換器
18 ビーム形成器
19 帯域選択フィルタ
20 可変遅延手段
21 検波器
22 ディジタルスキャンコンバータ(DSC)
23 表示器
31 制御器
32 ビーム形成器
321a〜321h 第1の可変遅延手段
322a〜322h 第2の可変遅延手段
323 加算器
41 制御器
42 ディジタルスキャンコンバータ(DSC)
421 アドレス制御器
422 アドレス情報補正部
423 二次元メモリ
424 補間フィルタ
51 制御器
52 ビーム形成器
521a〜521h 可変遅延手段
522 加算器
523 集束位置補正部
81a〜81p 振動子
82a〜82h 高耐圧スイッチ(HV−MUX)
83a〜83h 送信パルス発生器
84 送信トリガ発生器
85 制御器
86a〜86h 受信アンプ
87a〜87h A/D変換器
88 ビーム形成器
881a〜881h 可変遅延手段
882 加算器
89 検波器
90 ディジタルスキャンコンバータ(DSC)
901 二次元メモリ
902 アドレス制御器
903 補間フィルタ
91 表示器
92 帯域選択フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号に可変に遅延を付加する可変遅延手段と、前記遅延を付加された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記可変遅延手段は、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応した遅延量を付加することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ビーム形成器は、前記受信エコー信号に前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応した遅延量を付加することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ディジタルスキャンコンバータは、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応して走査変換を補正することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
一周期の長さが異なるパルスを複合した送信パルスを発生する送信パルス発生器と、受信エコー信号をビーム集束して受信ビームを出力するビーム形成器と、前記受信ビームの指示された周波数帯域を選択的に通過させる帯域選択フィルタと、前記帯域選択された信号を検波する検波器と、前記検波された信号を走査変換するディジタルスキャンコンバータとを備え、前記ビーム形成器は、前記帯域選択フィルタで選択した帯域に対応してビーム集束の位置を補正することを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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