超音波診断装置
【課題】 表示する価値のない弾性の値が演算された領域を識別し、その情報を反映した
弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする。
【解決手段】 歪み弾性画像(弾性フレームデータ)の生成過程で利用される各種データ
(圧力データ、変位フレームデータ、弾性フレームデータ)に基づいて、生成された歪み
弾性画像(弾性フレームデータ)の表示価値を評価し、その評価結果に応じて、歪み弾性
画像に色相情報又は白黒輝度情報を付与して表示を制御する。
弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする。
【解決手段】 歪み弾性画像(弾性フレームデータ)の生成過程で利用される各種データ
(圧力データ、変位フレームデータ、弾性フレームデータ)に基づいて、生成された歪み
弾性画像(弾性フレームデータ)の表示価値を評価し、その評価結果に応じて、歪み弾性
画像に色相情報又は白黒輝度情報を付与して表示を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検体内の診断部位について断層像を得る超音波診断装置に関し、特に時系列に並んだの1組のRF信号フレームデータからその画像上の各点の歪み及び弾性率を演算し、生体組織の硬さまたは柔らかさを表す弾性画像として表示することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な超音波診断装置は、超音波送受信を制御する超音波送受信制御手段と、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段と、この断層走査手段によって得た時系列断層像データを表示する画像表示手段とを有して成っていた。そして、被検体内部の生体組織の構造を例えばBモード像として表示していた。
【0003】
これに対して、近年、超音波探触子の超音波送受信面にて、被検体の体表面から用手的な方法にて外力を与え、生体組織を圧迫し、時系列的に隣接する2フレーム(連続2フレーム)の超音波受信信号の相関演算を利用して、各点における変位を求め、さらにその変位を空間微分することにより歪みを計測し、この歪みデータを画像化する手法、更には、外力による応力分布と歪みデータから、生体組織のヤング率等に代表される弾性率データを画像化する手法が現実的になってきている。このような歪み及び弾性率データ(以下、弾性フレームデータ)を基にした弾性画像によれば、生体組織の硬さや柔らかさを計測して表示することができる。このような超音波診断装置として、特許文献1又は特許文献2に記載されたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-317313号公報
【特許文献2】特開2000-60853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、任意の時刻におけるRF信号フレームデータは、その時刻における生体組織の構造や配置を情報として反映しており、超音波による組織弾性情報を取得する方法として、まず、一定の時間間隔だけ隔てられて取得された1組のRF信号フレームデータを用い、その一定時間の間の生体組織圧迫(加圧、減圧)により生じた、生体組織各部の変位を演算する。更に変位の情報を空間微分することにより、超音波装置において設定された関心領域(ROI)内のすべての点について歪みの値を演算し、画像を構築、表示している
。
【0006】
ところが、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔中に、圧迫によって探触子短軸方向に対象組織が逃げてしまい、計測断面から外れてしまったり、圧迫によって探触子長軸方向若しくは圧迫方向に対象組織が大きな速度を持って変位してしまい、診断装置で設定された所定の変位演算範囲を逸脱してしまうなどという圧迫方向が不適切であったり、圧迫速度が過剰であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内で、正しく変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合がある。
【0007】
また、送信超音波が減衰により到達されない深部の領域や超音波反射体が少ない領域(嚢胞など、内部が液状の病変部など)などについては、対象組織の性状を反映した十分な強度を有した受信信号が得られないことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、同じく正しく変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合もある。
【0008】
上述のような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、正しく演算されなかった変位の値を持つ領域が存在し、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、その歪み画像に対応する領域は正しくない情報となる。 また、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域など、超音波探触子の形状や対象組織の形態が原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、変位を演算することが無意味な領域が存在する場合もある。このような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、意味のない変位の値を持つ領域が存在し、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、同じくその歪み画像に対応する領域は正しくなく意味のない情報となる。
【0009】
更にまた、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、対象組織への圧迫動作が行われていなかったり、対象組織への圧迫速度が小さすぎるたりして、圧迫速度がゼロであったり、不十分であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する場合もある。このような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する為、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した歪み画像も設定された関心領域(ROI)の全域にわたってコントラストがない、もしくは、コントラストが低い画像となる。
【0010】
このような従来の超音波診断装置による弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティーや画質)を評価することなく、設定された関心領域(ROI)のすべての計測点について画像を構築して、表示しているために、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算された領域の画像情報は、表示価値のない情報であるにも関わらず、表示価値のある情報と識別されずに、両情報の領域が混在して分布した1フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果を招いていた。
【0011】
この発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、弾性画像診断において、代表されるような理想的なデータ取得が困難な状況下において、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域を例えばノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値有の場合には、前記歪み及び弾性データに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、前記断層画像データからの断層画像と前記情報付与された前記歪み及び弾性データからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段とを備えたものである。
【0013】
これは、歪み弾性画像を生成する過程では、断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータ、被検体の診断部位の体腔内圧力を表す圧力データ及び断層像上の各点の歪み及び弾性率を表した弾性フレームデータなどの各種データが利用されるので、こられのデータに基づいて、歪み弾性画像の表示価値を評価し、その評価結果に応じて、例えば、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域についてはノイズと識別し、表示を行わずに、表示する価値のある弾性の値が演算された画像情報の領域についてのみ色相情報や白黒輝度情報を付与して表示するようにした。
【0014】
これによって、ノイズと思われるような弾性画像は表示されなくなるので、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0015】
請求項2に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送信及び受信を行い反射エコー信号を出力する超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内のRF信号フレームデータを所定周期で繰り返して取得する断層走査手段と、前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに所定の信号処理を行う信号処理手段と、前記信号処理手段からの時系列の断層フレームデータを断層像データに変換する断層像データ変換手段と、前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに基づいて前記断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを生成する変位計測手段と、前記被検体の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定して圧力データを生成する圧力計測手段と、前記変位フレームデータ及び前記圧力データに基づいて前記断層像上の各点の歪み及び弾性データを表した弾性フレームデータを生成する歪み及び弾性データ演算手段と、前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値有の場合には、前記弾性フレームデータに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、前記断層像データからの断層画像と前記情報付与手段によって情報の付与された前記弾性フレームデータからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と、を備えるものである。これは、弾性フレームデータの生成される。
【0016】
過程を詳細にしたものであり、変位計測手段が断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを、圧力計測手段が被検体の診断部位の体腔内圧力を表す圧力データを、歪み及び弾性率演算手段が断層像上の各点の歪み及び弾性率を表した弾性フレームデータを生成する。表示価値評価手段は、こられのデータの少なくとも一つに基づいて、弾性フレームデータの表示価値を評価し、その評価結果に応じて、例えば、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域についてはノイズと識別し、表示を行わずに、表示する価値のある弾性の値が演算された画像情報の領域についてのみ色相情報や白黒輝度情報を付与して表示するようにした。これによって、ノイズと思われるような弾性画像は表示されなくなるので、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0017】
請求項3に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2において、前記情報付与手段が、表示価値がある領域は階調化した画像情報を付与し、表示価値がない領域は表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両領域を画像上で識別可能にしたものである。これは、表示価値の有無をその弾性フレームデータ上の各領域について行い、表示価値評価手段によって表示価値があるとされた領域については、要素データを例えば8ビットの256段階の値に設定し、表示価値がないとされた領域については、要素データに例えば「0」の値を設定することによって両領域の画像を識別可能したものである。なお、「0」の値が設定されたということは、その領域については表示しないということを意味する。
【0018】
すなわち、弾性フレームデータにおける計測点(画素点)の画像情報を消去(クリヤ)することである。
【0019】
請求項4に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2又は3において、前記情報付与手段が、さらに、表示価値があるフレームは階調化した画像情報を付与し、表示価値がないフレームは表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両フレームを画像上で識別可能にしたものである。これは、表示価値の有無をその弾性フレームデータ毎について行い、表示価値評価手段によって表示価値があるとされたフレームについては、要素データを例えば8ビットの256段階の値に設定し、表示価値がないとされたフレームについては、要素データに例えば「0」の値を設定することによって両フレームの画像を識別可能としたものである。なお、「0」の値が設定されたということは、そのフレームについては表示しないということを意味する。すなわち、弾性フレームデータの全ての計測点(画素点)の画像情報を消去(クリヤ)することである。これによって超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような局面や検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような局面の場合には、弾性画像データは表示されなくなり、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0020】
請求項5に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至4のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データの要素データを母集団とした統計処理を施し、その統計的特徴に基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値評価手段が各種データの要素データに対して統計処理を行い、その統計的特徴に基づいて表示価値を評価するようにしたものである。各種データとしては、後述するような、変位フレームデータ、弾性フレームデータ及び圧力データなどが該当する。これらのデータに対して統計的特徴に基づいて評価を行う。
【0021】
請求項6に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至5のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記変位計測手段から出力される前記変位フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、変位フレームデータを用いるようにしたものである。
【0022】
請求項7に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至6のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記歪み及び弾性率演算手段から出力される前記弾性フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、弾性フレームデータをそのまま用いるようにしたものである。なお、表示価値評価手段は、変位フレームデータと弾性フレームデータの両方に基づいて評価するようにしてもよい。
【0023】
請求項8に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至7のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記圧力計測手段から出力される前記圧力データに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、圧力データを用いたものである。圧力データの示す圧力がある基準圧力よりも小さいか否かによって、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないか多いかの判断をすることができ、表示価値を評価することができる。なお、表示価値評価手段は、圧力データと変位フレームデータの二つのデータ、圧力データと弾性フレームデータの二つのデータ、又は圧力データと変位フレームデータと弾性フレームデータの三つのデータに基づいて、それぞれ評価するようにしてもよい。
【0024】
請求項9に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至8のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記弾性フレームデータの表示価値の結果に応じて、弾性フレームデータを表示する関心領域(ROI)の位置及び範囲の少なくとも一方を自動で設定するようにしたものである。これは、表示価値がないとされた領域については、それを除去領域として、装置で設定された元々の関心領域(ROI)から部分的に除去したり、関心領域(ROI)を縮小したり、又は拡大、移動したりするものであり、除去領域そのものが装置で設定される関心領域(ROI)の範囲外となるように自動で排除するようにしてもよい。
【0025】
請求項10に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至9のいずれか1項において、前記表示手段は、前記表示価値評価手段の評価結果に応じて、前記断層像データのみを表示し、前記弾性フレームデータを表示しないようにしたものである。
【0026】
また、請求項11に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値無の場合には、前記断層画像のみを表示し、前記歪み弾性画像を表示しない表示手段と、を備えたものである。これは、対象組織への圧迫動作が行われていなかったり、対象組織への圧迫速度が小さすぎてゼロであったり、不十分であることが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布するような場合、例えば、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような局面や検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合などには、弾性画像データそのものを表示しないようにしたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、弾性画像診断において、代表されるような理想的なデータ取得が困難な状況下において、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域を例えばノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の表示価値評価部の一実施例を示す図である。
【図3】図2のフレームメモリ回路内に格納されている計測結果フレームデータの一例を示す図である。
【図4】図2の計測クオリティー評価回路によって構築される計測クオリティーフレームデータの一例を示す図である。
【図5】図1の表示価値評価部の別の実施例を示す図である。
【図6】図5の表示判定回路によって構築される判定結果フレームデータの一例を示す図である。
【図7】図6の判定結果フレームデータの具体的な数値を示す図である。
【図8】図1のカラースキャンコンバータの一実施例を示す図である。
【図9】図8の色相情報付与回路によって構築される弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図10】関心領域(ROI)の位置、範囲が自動で制御される場合の処理前の弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図11】関心領域(ROI)の位置、範囲が自動で制御される場合の処理後の弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図12】すべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるような弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の10の診断部位について断層像を得ると共に生体組織の硬さ又は柔らかさを表す弾性画像を表示するものである。この超音波診断装置は、図1に示すように、超音波探触子100と、超音波送受信制御回路101と、送波回路102と、受信回路103と、整相加算回路104と、信号処理部105と、白黒スキャンコンバータ106と、画像表示器107と、RF信号フレームデータ選択部108と、変位計測部109と、圧力計測部110と、歪み及び弾性率演算部111と、弾性データ処理部112と、カラースキャンコンバータ113と、切替加算器114と、表示価値評価部115と、装置制御インタフェース部116とを具備して構成されている。
【0030】
超音波探触子101は、多数の振動子を短冊状に配列して形成されたものであり、機械式または電子的にビーム走査を行って被検体100に超音波を送信及び受信するものであり、図示は省略したがその中には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する振動子が内蔵されている。各振動子は、一般に、入力されるパルス波、または連続波の送波信号を超音波に変換して発射する機能と、被検体100の内部から反射する超音波を受けて電気信号の受波信号に変換して出力する機能を有して形成される。
【0031】
一般に、超音波を用いた弾性の画像化における被検体の圧迫動作は、超音波探触子100で超音波送受信を行いつつ、被検体100の診断部位の体腔内に効果的に応力分布を与える目的で超音波探触子100の超音波送受信面と、この送受信面に面を合わせて圧迫板を装着し、超音波探触子100の超音波送受信面と圧迫板にて構成される圧迫面を被検体の体表に接触させ、圧迫面を用手的に上下動させて被検体を圧迫するという方法をとっている。
【0032】
超音波送受信制御回路101は、超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。送波回路102は、超音波探触子101を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成すると共に、内蔵された送波整相加算回路によって送信される超音波の収束点をある深さに設定するものである。受信回路103は、超音波探触子101で受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅するものである。増幅された各振動子の数に対応した数の受波信号がそれぞれ独立した受波信号として整相加算回路104に入力される。整相加算回路104は、受信回路103で増幅された受波信号を入力し、それらの位相を制御し、一点又は複数の収束点に対して超音波ビームを形成するものである。信号処理部105は、整相加算回路104からの受波信号を入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の各種信号処理を行うものである。
【0033】
これらの超音波探触子101、超音波送受信制御回路101、送波回路102、受信回路103、整相加算回路104及び信号処理部105によって、超音波送受信手段を構成しており、超音波探触子101を用いて超音波ビームを被検体100の体内で一定方向に走査させることにより、一枚の断層像を得るようになっている。
【0034】
白黒スキャンコンバータ106は、前述の超音波送受信手段の信号処理部105から出力される反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体10内のRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、このRF信号フレームデータを表示するためテレビジョン方式の周期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段、例えば、信号処理部105からの反射エコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成される。
【0035】
画像表示器107は、白黒スキャンコンバータ106によって得られた時系列の断層像データすなわちBモード断層像を表示するものであり、切替加算器114を介して白黒スキャンコンバータ106から出力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からのアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
【0036】
この実施の形態においては、整相加算回路104の出力側から分岐してRF信号フレームデータ選択部108と変位計測部109とが設けられると共に、これと並列に圧力計測部110が設けられ、この圧力計測部110と変位計測部109の後段には、歪み及び弾性率演算部111が設けられ、変位計測部109の出力側から分岐して表示価値評価部115が設けられ、歪み及び弾性率演算部111の後段には、弾性データ処理部112とカラースキャンコンバータ113が設けられ、白黒スキャンコンバータ106とカラースキャンコンバータ113との出力側には切替加算器114が設けられている。また、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113には装置制御インタフェース部116を介して検査士などが自由に制御できるようになっている。
【0037】
RF信号フレームデータ選択部108は、整相加算回路104から超音波診断装置のフレームレートで経時的に次々と出力されるRF信号フレームデータをRF信号フレームデータ選択部108に備えられたフレームメモリ内に順次確保し(現在確保されたRF信号フレームデータをRF信号フレームデータNとする)、超音波診断装置の制御命令に従って時間的に過去のRF信号フレームデータN-1、N-2、N-3・・・N-Mの中から1つのRF信号フレームデータを選択し(これをRF信号フレームデータXとする)、変位計測部109に1組のRF信号フレームデータNとRF信号フレームデータXを出力する役割を担うものである。整相加算回路104から出力される信号をRF信号フレームデータと記述したが、これは例えば、RF信号を複合復調したI,Q信号の形式になった信号であっても良いのは言うまでもない。
【0038】
変位計測部109は、RF信号フレームデータ選択部108によって選択された1組のRF信号フレームデータに基づいて1次元もしくは2次元相関処理を実行し、断層像上の各計測点の変位もしくは移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を計測し、変位フレームデータを生成するものである。この移動ベクトルの検出法としては、例えば、特許文献1に記載されたようなブロック・マッチング法とグラジェント法とがある。ブロックマッチング法は、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレームから探索し、これを参照して予測符号化を行うものである。
【0039】
圧力計測部110は、被検体100の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定するものである。圧力計測部110は、超音波探触子100の探触子ヘッドと被検体10との間にどの程度の圧力が印加されているかを計測するものであり、例えば、棒状部材に架かる圧力を検出する圧力センサを探触子ヘッドの側面に取り付け、探触子ヘッドと被検体10との間の圧力を任意の時相で測定し、測定された圧力値を歪み及び弾性率演算部111に送出するように構成することができる。
【0040】
歪み及び弾性率演算部111は、変位計測部109及び圧力計測部110からそれぞれ出力される変位フレームデータ(移動量)及び圧力から断層像上の各計測点の歪み及び弾性率を演算して歪みもしくは弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、それを弾性データ処理部112に出力するものである。歪み及び弾性率演算部111が行う歪みの演算については、例えば、圧力のデータを必要とせず、その変位を空間微分することによって計算上で求めるものとする。また、弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算については、以下の式に示すように、各演算点における応力(圧力)を各演算点における歪み量で除することにより求める。
【0041】
以下の数式において、i,jの指標は、フレームデータの座標を表す。Ymi,j=圧力(応力)ij/(歪み量i,j) (i,j=1,2,3,・・・)
弾性データ処理部112は、歪み及び弾性率演算部111からの弾性フレームデータに座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を施し、処理後の弾性フレームデータをカラースキャンコンバータ113に出力するものである。なお、この弾性データ処理部112の詳細については、本願の出願人が先に出願した特願2003-006932号に記載されているので、ここでは説明を省略する。
【0042】
カラースキャンコンバータ113は、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータと、超音波診断装置制御部からの命令もしくは弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータの中の階調化選択範囲とする上限値及び下限値を入力し、その弾性フレームデータから弾性画像データとして赤、緑、青などの色相情報を付与する色相情報変換手段を含むものであり、例えば、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータにおいて、歪みが大きく計測された領域については、弾性画像データ内の該当領域を赤色コードに変換し、逆に歪みが小さく計測された領域については、弾性画像データ内の該当領域を青色コードに変換するようになっている。また、カラースキャンコンバータ113は白黒スキャンコンバータでも良く、歪みが大きいく計測された領域は、弾性画像データ内の該領域の輝度を明るくさせ、逆に歪みが小さく計測された領域は、弾性画像データ内の該領域の輝度を暗くさせるようにしても良い。
【0043】
切替加算器114は、白黒スキャンコンバータ106からの白黒の断層像データとカラースキャンコンバータ113からのカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を加算又は切り替える手段となるもので、白黒の断層像データだけ又はカラーの弾性画像データだけを出力したり、あるいは両画像データを加算合成して出力したりするように切り替えるようになっている。また、例えば、特許文献2に記載されているように、2画面表示において白黒断層像とカラーもしくは上記白黒スキャンコンバータによる白黒弾性画像を同時に表示しても良い。また、例えば、本願の出願人が先に出願した特願2002-304399号に記載されているように、白黒断層像にカラーの弾性画像を半透明的に重畳して表示するようになっていても良い。そして、この上記切替加算器114から出力された画像データが画像表示器107に出力されるようになっている。
【0044】
次に、本発明で採用した表示価値評価部115の実施例について説明する。変位計測部109から出力される変位フレームデータを利用し、関心領域(ROI)内のすべての計測点のそれぞれについて、画像表示する価値を評価し、無益な情報と有益な情報とを識別し、無益な情報を最終的に画像として残さない(マスキングして隠す)ようにすることを試みる手段となるものであり、以下にその方法を詳細に説明する。
【0045】
図2は、本発明に係る表示価値評価部115において入出力されるデータの流れの一例を示す図である。表示価値評価部115は、フレームメモリ回路1151と計測クオリティー評価回路1152表示判定回路1153を備えて構成されている。
【0046】
フレームメモリ回路1151は、変位計測部109から出力される変位フレームデータを計測結果フレームデータとして確保し、計測クオリティー評価回路1152に出力する。計測クオリティー評価回路1152は、フレームメモリ回路1151から出力される計測結果フレームデータを入力して関心領域(ROI)内のすべての計測点のそれぞれについて、計測結果フレームデータの信頼性、すなわち計測された結果が正常に計測された結果か否かを数値として反映された計測クオリティーフレームデータを構築する。
【0047】
次に、計測クオリティー評価回路1152の動作の一例を説明する。計測クオリティー評価回路1152は、計測結果フレームデータの要素データを母集団とする統計処理を行い、その統計的特徴量を要素データとして計測クオリティーフレームデータを構築する。図3は、統計的特徴量に基づいて計測クオリティーフレームデータを構築する場合の一例を示す図である。
【0048】
まず、図3に示すように、計測結果フレームデータの各要素データをXi,j(i=1,2,3,・・・,N、j=1,2,3,・・・M)で示す。ここで、指標iは弾性画像の横軸方向の座標に、jは縦軸方向の座標に相当し、超音波装置で設定された関心領域(ROI)に含まれるすべての要素データをこの指標にて参照するようになっている。現在、注目している要素データを例えばX4,4とし、X4,4の座標を中心とした3(要素)×5(要素)のサイズのカーネル31を設定し、このカーネル31内に分布する計15個の要素データ群を母集団とした統計的特徴量として、例えば平均と標準偏差を以下のように演算する。
【0049】
(平均)4,4={Σ(計測結果フレームデータXi,j)}2/15{(標準偏差)4,4}2
=Σ{(平均)4,4-(計測結果フレームデータXi,j)}2/15
(3≦i≦5,2≦j≦6)
上述の手順に従い、各注目要素データXi,jについても同様に(標準偏差)i,jを演算し、計測クオリティーフレームデータの各要素データYi,jに対応させて、以下のように入力設定し、図4に示すような計測クオリティーフレームデータを作成する。(計測クオリティーフレームデータYi,j)=(標準偏差)i,j (i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
計測結果フレームデータとして変位フレームデータが入力されているので、演算を行って計測クオリティーフレームデータを構成した場合、計測クオリティーフレームデータを構成する各要素データYi,jには、変位フレームデータにおいて同一座標の要素データXi,jを中心とし、設定されたカーネルサイズ分の領域に分布する要素データ群を母集団とした変位(移動量)の値のばらつきの程度が反映された値が入力され、表示判定回路1153には上述のような計測クオリティーフレームデータが出力されることになる。
【0050】
上述の実施例では、表示価値評価部115において、変位フレームデータを計測結果フレームデータとして入力し、表示価値がある領域と表示価値がない領域を評価するようにしたが、例えば、図5に示すように、歪み及び弾性率演算部111において、変位フレームデータを空間微分して生成される弾性フレームデータを、表示価値評価部115における計測結果フレームデータとして入力するようにしてもよい。これは、弾性フレームデータも変位フレームデータの局所的な離散性を反映しているため、これによっても同様の動作を実現することができるからである。なお、上述のカーネル31のサイズは任意に設定することができる。また、関心領域(ROI)の周辺ではカーネル31のサイズが小さくなっていてもよい。計測クオリティーフレームデータに対して、空間的なスムージング処理、時間軸方向のフレーム間平滑処理などの処理を実行してもよい。
【0051】
表示判定回路1153は、計測クオリティー評価回路1152から出力される計測クオリティーフレームデータを入力し、超音波装置の制御部から出力された閾値制御信号1161を装置制御インタフェース部116を介して入力し、この閾値制御信号1161に従った閾値処理を施すことにより、計測点に対応する画像を表示するか否かを示す判定結果フレームデータを構築し、カラースキャンコンバータ113に出力する。
【0052】
以下、表示判定回路1153の動作の一例を説明する。計測クオリティーフレームデータの要素データには、計測クオリティー評価回路1152の動作説明において示した変位(移動量)の標準偏差の値が反映されているので、計測クオリティーフレームデータの各要素データに対して閾値判定を施すことにより、判定結果フレームデータを構成することができる。
【0053】
計測クオリティー評価回路1152によって生成された上述の計測クオリティーフレームデータの要素データは、大きい値を持った計測クオリティーフレームデータの要素データ程、その要素データの座標を中心として一定領域内に分布している変位の値のばらつきが大きいことを意味する。そこで、表示判定回路1153は、超音波装置制御部から入力される閾値制御信号1161を閾値Thとし、計測クオリティーフレームデータを構成するすべての要素データについて、閾値Thとの大小関係を判定する。例えば、上測クオリティーフレームデータの要素データYi,jが閾値Thより大きい場合は判定結果フレームデータの同一座標の要素データZi,jに「0」を、要素データYi,jが閾値Thより小さい場合はZi,jに「1」を設定し、以下のように入力設定する。
【0054】
(計測クオリティーフレームデータYi,j)>(閾値Th)
⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0(計測クオリティーフレームデータYi,j)≦(閾値Th)
⇒(判定結果フレームデータZi,j)=1 (i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
この結果として生成される判定結果フレームデータZi,jは、例えば、図6のように構成される。
【0055】
このような閾値処理により、すべての要素データZi,jの値に「0」もしくは「1」の入力された判定結果フレームデータが構築され、それがカラースキャンコンバータ113に出力される。図7は、各要素データZi,jに「0」、「1」を入力した結果の判定フレームデータZi,jの一例を示す図である。上述の実施例では、表示価値評価部115において、表示価値がある領域の値を「0」、表示価値がない領域の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成するようにしたが、本発明はこの例に限らず、表示価値の有無を識別できる値が設定されていればよいことはいうまでもない。
【0056】
次に、本発明によるカラースキャンコンバータ113の動作例を説明する。図8は、本発明に係るカラースキャンコンバータ113において入出力されるデータの流れの一例を示す図である。カラースキャンコンバータ113は、フレームメモリ回路1131と、階調化処理回路1132と、色相情報付与回路1133と、画像構築回路1134とを備えて構成されている。階調化処理回路1132は、リジェクション処理回路を備えている。
【0057】
フレームメモリ回路1131は、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータと同時に表示価値評価部115から出力される判定結果フレームデータを確保し、階調化処理回路1132内のリジェクション処理回路に出力する。
【0058】
階調化処理回路1132は、フレームメモリ回路1131から出力される、連続的な値を有する弾性フレームデータを、離散的な値(例えば8ビット、256段階)を有する弾性階調化フレームデータに変換するものであり、この処理をリジェクション処理回路が行う。リジェクション処理回路は、フレームメモリ回路1131から出力される弾性フレームデータと判定結果フレームデータを入力し、判定結果フレームデータの各要素の情報に従い、弾性階調化フレームデータの対応する要素の情報を設定する。
【0059】
階調化処理回路におけるリジェクション処理回路の動作の一例を説明する。判定結果フレームデータの要素データに、表示価値評価部115の動作説明において示した判定結果の値として、図7に示したような表示価値が低い場合は「0」の値が、表示価値が高い場合は「1」の値が入力されている場合に、リジェクション処理回路は、この判定結果フレームデータの要素データの値に応じて、該当する座標の弾性階調化フレームデータの要素データを8ビットの256段階の値に設定する。
【0060】
この設定状況の場合、判定結果フレームデータの要素データとして0の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは無益な情報であることになり、「1」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは有益な情報であることになる。そこで、この判定結果に従い、判定結果フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性階調化フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性フレームデータの要素データの値の大小に関係なく、その値として「0」を設定し、判定結果フレームデータの要素データとして「1」の値を持った座標に該当する弾性階調化フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性フレームデータの要素データの値の大小に応じて、255段階に階調化された値を設定する。つまり、フレームメモリ回路からリジェクション処理回路に入力される弾性フレームデータの要素データをSi,j、判定結果フレームデータをZi,j、リジェクション処理回路において生成された弾性階調化フレームデータの要素データをTi,jと表記すると、以下のような演算を実行することになる。
【0061】
(判定結果フレームデータZi,j)=0
⇒(弾性階調化フレームデータTi,j)=0(判定結果フレームデータZi,j)=1
⇒(弾性階調化フレームデータTi,j)=(Si,jの大小に応じた「1」〜「255」の値)
(i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
このような階調化処理により、すべての要素データTi,jに「0」から「255」の256段階の値が入力された弾性階調化フレームデータが構築される。階調か処理回路113によって得られた弾性階調化フレームデータは、色相情報付与回路1133に入力される。
【0062】
色相情報付与回路1133は、階調化処理回路から出力される弾性階調化フレームデータを入力し、弾性階調化フレームデータの各要素の情報に従い、弾性色相フレームデータを生成する。色相情報付与回路1133の動作の一例を説明する。弾性階調化フレームデータの要素データには、表示価値評価部115と、階調化処理回路1132の動作説明において示した結果として、例えば、表示価値が低い座標の場合には「0」の値が、表示価値が高い座標の場合には「1」から「255」の255段階に階調化された値が入力されており、色相情報付与回路1133において、弾性階調化フレームデータの要素データの値に応じて、該当する座標の弾性色相フレームデータの要素データに色相情報を設定するという一例の処理を行う。
【0063】
この設定状況の場合、弾性階調化フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは、無益な情報であることになり、「1」から「255」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは有益な情報であることになる。そこで、この判定結果に従い、弾性階調化フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性色相フレームデータの要素データ(R:赤、G:緑、B:青)は、その色相情報として例えば、黒色(R=0,G=0,B=0)を設定し、弾性階調化フレームデータの要素データとして「1」から「255」の値を持った座標に該当する弾性色相フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性階調化フレームデータの要素データの値の大小に応じて、例えば、青色から赤色に255段階に階調化された色相情報を設定する。
【0064】
すなわち、階調化処理回路1132から色相情報付与回路1133に入力される弾性階調化フレームデータの要素データをTi,j、色相情報付与回路1133において生成された弾性色相フレームデータの要素データのR(赤)成分、G(緑)成分、B(青)成分をそれぞれ、URij、UGij、UBijと表記すると、以下のような演算が実行されることになる。
【0065】
(弾性階調化フレームデータTi,j)=0
⇒(弾性色相フレームデータURij)=0
(弾性色相フレームデータUGij)=0
(弾性色相フレームデータUBij)=0
(弾性階調化フレームデータTi,j)=1〜255
⇒(弾性色相フレームデータURij)=(Ti,j-1)
(弾性色相フレームデータUGij)=0
(弾性色相フレームデータUBij)=254-(Ti,j-1)
(i=1,2,3,・・・,N、j=1,2,3,・・・M)
例えば、図6の判定結果フレームデータZi,jに対応して上述の処理が施された弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図9のように示される。なお、図面中にて色相情報を表示することができないため、弾性階調化フレームデータTi,j=0に対応する領域を白色に、弾性階調化フレームデータTi,j=1〜255に対応する領域を、その大小に応じて灰色の度合いを階調化させて例示した。このような色相情報付与処理により、すべての要素データUi,jにR、G、Bの色相情報の値が入力された弾性色相フレームデータを構築することができる。色相情報付与回路1133によって色相情報の付与された弾性色相フレームデータは次段の画像構築回路1134に出力される。
【0066】
この実施の形態では、表示価値が高い領域が青色から赤色に階調化され、表示価値が低い領域が黒色の単一の色にて表示する例を示したが、本発明はこの例に限らず、例えば、表示価値が高い領域が黄色から緑色に階調化され、表示価値が低い領域が青色の単一の色にて表示されるなど、上述の説明とは異なる色相の割り当て方法を用いてもよいのはいうまでもなく、表示価値の低い領域を画像として識別することができるようになっていればよい。また、この実施の形態では、弾性色相フレームデータの成分として、RGBの信号形式を用いて説明したが、本発明はこの例に限らず、他の信号形式(例えばYUVなど)にて色相情報を付与する方法にて実現するようになっていてもよい。さらに、この実施の形態では、関心領域(ROI)内において、表示価値のない領域を表示価値のある領域とは相容れない色相情報にて識別する例を示したが、本発明はこの例に限らず、例えば、図10に示すように、弾性色相フレームデータUbi,jの要素データの中で、表示価値のない領域が左側の2列に連続して存在するような場合に、その部分を除去領域として評価する。このように除去領域として評価された場合には、図11に示すように、その部分を除去し、関心領域(ROI)を縮小する。このように超音波診断装置で設定されて表示されている関心領域(ROI)が、縮小、拡大又は移動されることにより、除去領域そのものが装置で設定される関心領域(ROI)の範囲外となるように自動で排除するようにしてもよい。図11の場合には、図10の表示価値のない領域となる左側2列を除去して、関心領域(ROI)を縮小した場合の一例が示されている。
【0067】
画像構築回路1134は、色相情報付与回路1133から出力される弾性色相フレームデータを入力し、超音波装置の制御部から出力された制御信号1164を装置制御インタフェース部116を介して入力し、これに従って、弾性色相フレームデータを元のデータとして、極座標変換、画像拡大縮小、画像上下左右反転回転などの補間処理を含めた画像処理を行い、画素データにより構築された弾性画像データを生成する。なお、画像構築回路1134、階調化処理回路1132及び色相情報付与回路1133は制御信号1162〜1164を装置制御インタフェース部116を介してそれぞれ入力し、これに従って、各機能の採否、動作設定の切替や変更を行うことができるように構成されている。
【0068】
ところで、任意の時刻におけるRF信号フレームデータは、その時刻における生体組織の構造や配置を情報として反映しており、超音波による組織弾性情報を取得する方法として、まず、一定の時間間隔だけ隔てられて取得された1組のRF信号フレームデータを用い、その一定時間の間の生体組織の圧迫(加圧、減圧)により生じた、生体組織各部の変位を演算する。更に変位の情報を空間微分することにより、超音波装置において設定された関心領域(ROI)内のすべての点について歪みの値を演算し、画像を構築、表示している。
【0069】
しかし、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、圧迫により探触子短軸方向に対象組織が逃げてしまい、計測断面から外れるという第1の局面、圧迫により探触子長軸方向、若しくは、圧迫方向に対象組織が大きな速度を持って変位し、診断装置で設定された所定の変位演算範囲を逸脱するという第2の局面などのように、圧迫方向が不適切であったり、圧迫速度が過剰であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、正しい変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合がある。
【0070】
また、送信超音波が減衰により到達しないような深部の領域を関心領域とするような第3の局面、超音波反射体が少ない領域(嚢胞など、内部が液状の病変部など)を関心領域とするような第4の局面などのように、対象組織の性状を反映した十分な強度を有した受信信号が得られないことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、正しい変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合もある。
【0071】
このような第1から第4の各局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、正しく演算されなかった変位の値を持つ領域が存在する可能性が高く、その変位の値を用いて演算された歪みの値を画像として表示した場合、その歪み画像の関心領域には正しくない情報が含まれることになる。また、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような第5の局面などのように、超音波探触子の形状や対象組織の形態が原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、変位を演算することが無意味な領域が存在する場合もある。このような第5の局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、意味のない変位の値を持つ領域が存在することとなり、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、同じくその歪み画像には正しくない意味のない情報を含むことになる。
【0072】
このような第1から第5の局面に代表されるような各局面においては、圧迫により与えられた組織変位の結果として、次のような第1及び第2の領域が観測される。第1の領域は、計測点群が同一方向的に同程度の大きさの変位を有する計測点群の領域(局所的に組織同士が結合して同一方向に集団的に変位するような領域)であり、第2の領域は、計測点群の隣接計測点間で変位の値と方向にバラツキが形成される計測点群の領域(局所的な組織同士の結合がなく、隣接組織間でも様々な方向を持って離散的に変位するような領域)である。このように大別される二つの第1及び第2の領域が一つの変位フレームデータ内に観測される。
【0073】
上述のような第1から第5の局面において、正しい変位を演算できなかった領域や、変位を演算することが無意味な領域は、変位の演算結果として、該当する領域の変位の値と方向がそれぞればらつき、上述の第2の領域のような様相を成し、適切な圧迫を与えられた領域は、変位の演算結果として、上述の第1の領域のような様相を成すこととなる。
【0074】
上述の実施の形態では、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113によって、変位フレームデータを利用した場合について説明したが、このような動作は、変位フレームデータを用い、局所的な変位のバラツキを求め、このバラツキが大きい計測点は、表示価値が低いと評価し、バラツキが小さい計測点は、表示価値が高いと評価し、表示価値が低いと評価された計測点の座標に該当する弾性画像データの画素には黒色の色相情報が、表示価値が高いと評価された計測点の座標に該当する弾性画像データの画素には、計測された弾性フレームデータの該当座標の要素の値の大小に応じて、青色から赤色へ連続的に色調を変化させた色相情報が付与し、表示価値が低い計測点の弾性画像情報が除去され、表示価値が高い計測点のみに色相が付与された弾性画像が超音波診断装置の画面上に表示するという一連の処理を実行するものである。これによって、適切な圧迫を与えられた領域にのみその弾性の値に応じて色相で階調化され表示されると同時に、適切に圧迫することができなかった領域は、階調が除去され、階調化された色相とは相容れない単一の色相にて画像識別できるように表示されることになる。
【0075】
従来の超音波診断装置における弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティー、画質)を評価することなく、設定された関心領域(ROI)のすべての計測点について画像を構築、表示している為、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算された領域の画像情報は、表示価値のない情報であるにも関わらず、表示価値のある情報と識別されずに、両情報の領域が混在して分布した1フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果になっていたが、本発明による表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113を採用することによって、除去されずに残った無意味な弾性画像領域の情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)や装置設定が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされるために、より高画質な画像を取得できるような検査方法(圧迫手法など)を診断現場において即座に提供することが可能となる。
【0076】
なお、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成しているが、これに加えて、判定結果フレームデータのすべての要素(N×M個)の内、判定結果フレームデータの要素が「1」となった計測点が占める比率Rを以下の演算により求めるようにしてもよい。
【0077】
(比率R)=[Σ{(判定結果フレームデータZi,j)=1}]/(N×M)
そして、求められた比率Rがある基準比率Rstd(例えば、0.5)より小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0078】
(比率R)<(基準比率Rstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
このようにすることによって、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが判定結果フレームデータZi,jに対応して、「0」に設定されるため、弾性色相フレームデータUci,jは、例えば、図12に示すようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの記弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。すなわち、弾性画像データの表示が行われなくなる。これによって上述したような超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような第5の局面、これに加えて、検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような局面の場合には、弾性画像データは表示されなくなる。
【0079】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの局所的なカーネルサイズ内に含まれる要素を母集団としたバラツキを評価し、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」とするような判定結果フレームデータを生成する場合について説明したが、これとは異なるものとして、次のような処理を行ってもよい。すなわち、計測結果フレームデータの要素データXi,jのすべての要素を母集団とした統計処理を行い、その統計的特徴量としての平均値Mを以下の演算により求める。
【0080】
(平均値M)={Σ(計測結果フレームデータXi,j)}/(N×M)
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
この平均値Mがある基準平均Mstdより小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0081】
(平均値M)<(基準平均Rstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
これによって、判定結果フレームデータZi,jに対応して、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが「0」に設定されるため、弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図12に示されるようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。
【0082】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの要素を母集団とした評価を行い、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成する場合について説明したが、これとは異なるものとして、次のような処理を行ってもよい。計測結果フレームデータとして、圧力計測部110から出力される圧力データPを入力し、この圧力Pがある基準圧力Pstdより小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0083】
(圧力P)<(基準圧力Pstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
これによって、判定結果フレームデータZi,jに対応して、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが「0」に設定されるため、記弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図12に示されるようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。また、上述の圧力データPが、画像横軸方向への1次元分布として、Pi(i=1,2,3,・・・N)として得られる場合は、それぞれの座標iに応じて、基準圧力Pstdと比較を行い、基準圧力Pstdに満たない座標においては、対応する座標の判定結果フレームデータZi,jを「0」に設定する。
【0084】
なお、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、対象組織への圧迫動作が行われていないという第6の局面、及び対象組織への圧迫速度が小さすぎるという第7の局面などといった、圧迫速度がゼロであったり、不十分であることが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する場合もある。具体的には、前述したように検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合がこれらの局面に該当するものである。このような第6及び第7のような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布するため、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した歪み画像も設定された関心領域(ROI)の全域にわたってコントラストがない、もしくは、コントラストが低い画像となる。さらに、第6及び第7のような局面に代表されるような局面においては、圧迫により与えられた組織変位の結果として、次のような第1及び第2のフレームが観測される。
【0085】
第1のフレームは、計測点群が全域的に変位せず、圧迫されていない(変位もしくは弾性の値の平均値が0である)フレームであり、第2のフレームは、計測点群の全域的は変位が小さく、微小にしか圧迫されていない(変位もしくは弾性の値の平均値が小さい)フレームである。このように二つに大別される第1及び第2のフレームが一連の圧迫過程における複数の弾性画像フレーム内に観測されることがある。
【0086】
上述の実施の形態では、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータを利用した場合について説明したが、この動作は、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの全域的な要素を母集団として、変位、もしくは、弾性の値の平均値を求め、求められた平均値が所定の基準値より小さいフレームは、全域的に表示価値が低いと評価と評価し、全域的に表示価値が低いと判定された場合は、該フレームの弾性画像情報のすべてが除去され、階調化されずに単一の色相が付与された弾性画像が超音波診断装置の画面上に表示されるようにまとめられ、適切な圧迫を与えられた時相のフレームにのみその弾性の値に応じた色相で階調化された弾性画像が表示され、適切に圧迫することができなかった時相のフレームは、階調が除去され、階調化された色相とは相容れない単一の色相にて画像表示され、適切に圧迫が与えられなかった時相のフレームを画像識別できるように表示されることになっている。
【0087】
超音波診断装置による弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティー、画質)を評価することなく、任意の時相のすべてのフレームについて画像を構築、表示している為、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算されたフレームの画像情報は、表示価値のないフレームであるにも関わらず、表示価値のあるフレームと識別されることなく、両フレームが混在した一連の連続フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果になっていたが、本発明によれば、除去されずに残った無意味な弾性画像フレームの情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされるために、より高画質な画像を取得できるような圧迫手法などを診断現場において即座に模索することができる。
【0088】
さらに、本願の出願人が先に出願した特願2002-304399号に記載されているように、白黒断層像にカラーの弾性画像を半透明的に重畳して表示するようになっている構成のものにおいては、本発明の適用により、圧迫動作の最中にのみ弾性画像が重畳されて表示され、検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合などのように圧迫を止めた時相においては、弾性画像が除去されるために、白黒断層像のみが透過して表示されることになる。これによって、弾性診断以外の時相において計測断面の断層像を画像確認することが容易となり、診断の効率を大幅に向上させることができる。 上述の実施の形態では、1フレーム内における領域的な除去処理(領域除去機能)と、1フレーム全体の除去処理(フレーム除去機能)を独立して詳述したが、これに限らず、こられの2つの動作を組み合わせて、同時に行うことも可能であり、そのように構成されていてもよい。
【0089】
また、上述の実施の形態では、フレーム除去機能において、現時刻における表示価値の評価により、フレーム除去と判定された場合に、現時刻のフレームの画像情報を単一の色相に設定して表示するように説明したが、これに限らず、現時刻においてフレーム除去が判定された場合に、除去されずに表示された最も近い過去のフレームを保持し、継続して表示しておくように設定されるようになっていてもよい。また、この動作は、フレーム除去機能にのみに限らず、領域除去機能の動作としても同様の機能を設定することができるようになっていてもよい。
【0090】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115を独立した回路として説明したが、これに限らず、表示価値評価部115の動作をカラースキャンコンバータ113、もしくは、弾性データ処理部112に備えるように構成されていてもよく、また、各回路の処理の順序が入れ替わった構成であってもよい。
【0091】
また、上述の実施の形態では、領域除去処理機能とフレーム除去処理機能の採否選択や、除去処理機能における閾値処理に必要とされる閾値、基準比率、基準平均値などの設定や、除去された領域や除去されたフレームに付与する色相の割り当て、切り替えなどを超音波装置に備えられた装置制御インターフェイス部116を介して、検査士が自由に制御できるようになっている。
【0092】
上述の実施の形態によれば、弾性画像診断において、理想的なデータ取得が困難な状況下においても、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域や、全域的であればフレーム全体を、(ノイズとして)識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を提供することができる。
【0093】
次にこのように構成された超音波診断装置の動作について説明する。まず、超音波送受信制御に従い、被検体10の体表面に接触された超音波探触子100に送波回路102により高電圧電気パルスを印加して超音波を打出し、診断部位からの反射エコー信号を超音波探触子100で受信する。受信された受波信号は、受信回路103へ入力され、そこで前置増幅された後、整相加算回路104へ入力する。この整相加算回路104によって位相が揃えられた受波信号は、次の信号処理部106で圧縮、検波などの信号処理を受けた後、白黒スキャンコンバータ106へ入力する。この白黒スキャンコンバータ106は、受波信号をA/D変換すると共に、時系列的に連続する複数の断層像データとして内部の複数枚のフレームメモリに記憶する。整相加算回路104からは連続的にRF信号フレームデータが出力され、RF信号フレームデータ選択部108に入力される。
【0094】
RF信号フレームデータ選択部108に記憶されたRF信号フレームデータの内、時系列的に連続する複数枚のRF信号フレームデータが選択され、変位計測部109へ入力され、そこで1次元又は2次元変位分布(ΔLi,j)が求められる。変位分布の算出は、前述の移動ベクトルの検出法として、例えばブロック・マッチング法によって行うが、特にこの方法によらなくても良いのは言うまでもなく、一般的に用いられる、2画像データの同一領域における自己相関を計算して変位を算出しても良い。
【0095】
一方、圧力計測部110においては、圧力センサーによって体表面に加えられた圧力が計測され、その圧力情報が圧力計測部110から歪み及び弾性率計測部111に送出される。
【0096】
変位計測部109及び圧力計測部110から出力される変位(ΔLi,j)及び圧力(ΔPi,j)のそれぞれの計測信号は、歪み及び弾性率演算部111に入力される。歪み量分布(εi,j)は変位分布(ΔLi,j)を空間微分(ΔLi,j/ΔX)することによって計算される。また、特に弾性率の内、ヤング率Ymi,jは次式によって計算される。Ymi,j=(ΔPi,j)/(ΔLi,j/ΔX)このようにして求められた弾性率Ymi,jにより、各計測点の弾性率が求められ、弾性フレームデータが生成される。
【0097】
このようにして生成された弾性フレームデータは、弾性データ処理部112に入力され、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理が施される。
【0098】
ここで、表示価値評価部115は、変位計測部109から出力される変位フレームデータもしくは歪み及び弾性率演算部111から出力される弾性フレームデータを入力して、弾性画像として表示する価値の有無を計測点毎もしくはフレーム毎に評価を行い、その評価に応じた評価結果フレームデータを生成し、カラースキャンコンバータ113もしくは白黒スキャンコンバータ106に評価結果フレームデータを出力する。
【0099】
弾性データ処理部112から出力された弾性フレームデータと、表示価値評価部115から出力された評価結果フレームデータがカラースキャンコンバータ113もしくは白黒スキャンコンバータ106に入力され、評価結果フレームデータの情報に従い、無益な弾性の情報には除去処理が施されると同時に、有益な情報には階調化処理が施された色相情報もしくは白黒輝度情報に変換される。
【0100】
その後、切替加算器114を介して、白黒の断層像とカラーの弾性画像が加算合成され、または、白黒の断層像と白黒の弾性画像を加算せずに画像表示器107に送り込み、1画面に半透明処理を施された白黒断層像とカラーの弾性画像を重畳して表示したり、または、白黒断層像と白黒弾性画像を2画面表示により同一画面上に同時に表示したりする。また、白黒断層像は、特に一般のBモード画像のみに限ったものではなく、受信信号の高調波成分を選択して画像化するティシューハーモニック断層像を用いても良い。また、同様に白黒断層像の代わりに、ティシュードプラ像を表示しても良く、その他、2画面に表示する画像を様々な組合せにより選択されても良い。
【0101】
なお、以上の弾性画像の形成については、前述の生体組織の歪みもしくはヤング率Ymを求めて弾性画像データを生成する例を説明したが、これに限らず、例えばスティフネスパラメータβ、圧弾性係数Ep、増分弾性係数Eincなどの他のパラメータを用いて弾性率を演算しても良い(特許文献1を参照)。また、上述の実施の形態では、圧力計測部110を用いる場合について説明したが、本願の出願人が先に出願した特願2003-300325号に記載されているような方法で圧力を計測するようにしてもよい。
【0102】
また、図1では、被検体10の体表面に超音波探触子100を接触させる場合について説明したが、これに限らず、経直腸探触子、経食道探触子、術中用探触子、血管内探触子など、任意の超音波探触子にて同様に適用できる。
【0103】
このような構成により、本発明の超音波診断装置による弾性画像診断において、理想的なデータ取得が困難な状況下においても、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域や、全域的であればフレーム全体を、ノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を実現することができる。
【0104】
なお、弾性画像をリジェクトしないで保持するようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、フレーム除去機能において、現時刻における表示価値の評価により、フレーム除去と判定された場合に、現時刻のフレームの画像情報を単一の色相に設定して表示するように説明したが、これに限らず、現時刻においてフレーム除去が判定された場合に、除去されずに表示された最も近い過去のフレームを保持し、継続して表示しておくように設定してもよい。さらに、この動作は、フレーム除去機能にのみに限らず、領域除去機能の動作としても同様の機能を設定することができるようにしてもよい。
【0105】
以上のようにこの実施の形態によれば、除去されずに残った無意味な弾性画像の情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされる為に、より高画質な画像を取得できるような圧迫手法などを診断現場において即座に模索することができ、超音波診断の実時間性、簡便性を保持した、臨床上有用な超音波装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0106】
10 被検体、100 超音波探触子、101 超音波送受信制御回路、102 送波回路、103 受信回路、104 整相加算回路、105 信号処理部、106 白黒スキャンコンバータ、107 画像表示器、108 RF信号フレームデータ選択部、109 変位計測部、110 圧力計測部、111 歪み及び弾性率演算部、112 弾性データ処理部、113 カラースキャンコンバータ、1131 フレームメモリ回路、1132 階調化処理回路、1133 色相情報付与回路、1134 画像構築回路、114 切替加算器、115 表示価値評価部、1151 フレームメモリ回路、1152 計測クオリティー評価回路、1153 表示判定回路、116 装置制御インタフェース部、1161 閾値制御信号、1162〜1164 制御信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して被検体内の診断部位について断層像を得る超音波診断装置に関し、特に時系列に並んだの1組のRF信号フレームデータからその画像上の各点の歪み及び弾性率を演算し、生体組織の硬さまたは柔らかさを表す弾性画像として表示することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な超音波診断装置は、超音波送受信を制御する超音波送受信制御手段と、被検体に超音波を送信及び受信する超音波送受信手段と、この超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内の断層像データを所定周期で繰り返して得る断層走査手段と、この断層走査手段によって得た時系列断層像データを表示する画像表示手段とを有して成っていた。そして、被検体内部の生体組織の構造を例えばBモード像として表示していた。
【0003】
これに対して、近年、超音波探触子の超音波送受信面にて、被検体の体表面から用手的な方法にて外力を与え、生体組織を圧迫し、時系列的に隣接する2フレーム(連続2フレーム)の超音波受信信号の相関演算を利用して、各点における変位を求め、さらにその変位を空間微分することにより歪みを計測し、この歪みデータを画像化する手法、更には、外力による応力分布と歪みデータから、生体組織のヤング率等に代表される弾性率データを画像化する手法が現実的になってきている。このような歪み及び弾性率データ(以下、弾性フレームデータ)を基にした弾性画像によれば、生体組織の硬さや柔らかさを計測して表示することができる。このような超音波診断装置として、特許文献1又は特許文献2に記載されたものなどがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-317313号公報
【特許文献2】特開2000-60853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、任意の時刻におけるRF信号フレームデータは、その時刻における生体組織の構造や配置を情報として反映しており、超音波による組織弾性情報を取得する方法として、まず、一定の時間間隔だけ隔てられて取得された1組のRF信号フレームデータを用い、その一定時間の間の生体組織圧迫(加圧、減圧)により生じた、生体組織各部の変位を演算する。更に変位の情報を空間微分することにより、超音波装置において設定された関心領域(ROI)内のすべての点について歪みの値を演算し、画像を構築、表示している
。
【0006】
ところが、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔中に、圧迫によって探触子短軸方向に対象組織が逃げてしまい、計測断面から外れてしまったり、圧迫によって探触子長軸方向若しくは圧迫方向に対象組織が大きな速度を持って変位してしまい、診断装置で設定された所定の変位演算範囲を逸脱してしまうなどという圧迫方向が不適切であったり、圧迫速度が過剰であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内で、正しく変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合がある。
【0007】
また、送信超音波が減衰により到達されない深部の領域や超音波反射体が少ない領域(嚢胞など、内部が液状の病変部など)などについては、対象組織の性状を反映した十分な強度を有した受信信号が得られないことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、同じく正しく変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合もある。
【0008】
上述のような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、正しく演算されなかった変位の値を持つ領域が存在し、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、その歪み画像に対応する領域は正しくない情報となる。 また、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域など、超音波探触子の形状や対象組織の形態が原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、変位を演算することが無意味な領域が存在する場合もある。このような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、意味のない変位の値を持つ領域が存在し、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、同じくその歪み画像に対応する領域は正しくなく意味のない情報となる。
【0009】
更にまた、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、対象組織への圧迫動作が行われていなかったり、対象組織への圧迫速度が小さすぎるたりして、圧迫速度がゼロであったり、不十分であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する場合もある。このような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する為、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した歪み画像も設定された関心領域(ROI)の全域にわたってコントラストがない、もしくは、コントラストが低い画像となる。
【0010】
このような従来の超音波診断装置による弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティーや画質)を評価することなく、設定された関心領域(ROI)のすべての計測点について画像を構築して、表示しているために、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算された領域の画像情報は、表示価値のない情報であるにも関わらず、表示価値のある情報と識別されずに、両情報の領域が混在して分布した1フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果を招いていた。
【0011】
この発明は、上述の点に鑑みなされたものであり、弾性画像診断において、代表されるような理想的なデータ取得が困難な状況下において、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域を例えばノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値有の場合には、前記歪み及び弾性データに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、前記断層画像データからの断層画像と前記情報付与された前記歪み及び弾性データからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段とを備えたものである。
【0013】
これは、歪み弾性画像を生成する過程では、断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータ、被検体の診断部位の体腔内圧力を表す圧力データ及び断層像上の各点の歪み及び弾性率を表した弾性フレームデータなどの各種データが利用されるので、こられのデータに基づいて、歪み弾性画像の表示価値を評価し、その評価結果に応じて、例えば、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域についてはノイズと識別し、表示を行わずに、表示する価値のある弾性の値が演算された画像情報の領域についてのみ色相情報や白黒輝度情報を付与して表示するようにした。
【0014】
これによって、ノイズと思われるような弾性画像は表示されなくなるので、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0015】
請求項2に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体に対して超音波の送信及び受信を行い反射エコー信号を出力する超音波送受信手段と、前記超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内のRF信号フレームデータを所定周期で繰り返して取得する断層走査手段と、前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに所定の信号処理を行う信号処理手段と、前記信号処理手段からの時系列の断層フレームデータを断層像データに変換する断層像データ変換手段と、前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに基づいて前記断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを生成する変位計測手段と、前記被検体の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定して圧力データを生成する圧力計測手段と、前記変位フレームデータ及び前記圧力データに基づいて前記断層像上の各点の歪み及び弾性データを表した弾性フレームデータを生成する歪み及び弾性データ演算手段と、前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値有の場合には、前記弾性フレームデータに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、前記断層像データからの断層画像と前記情報付与手段によって情報の付与された前記弾性フレームデータからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と、を備えるものである。これは、弾性フレームデータの生成される。
【0016】
過程を詳細にしたものであり、変位計測手段が断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを、圧力計測手段が被検体の診断部位の体腔内圧力を表す圧力データを、歪み及び弾性率演算手段が断層像上の各点の歪み及び弾性率を表した弾性フレームデータを生成する。表示価値評価手段は、こられのデータの少なくとも一つに基づいて、弾性フレームデータの表示価値を評価し、その評価結果に応じて、例えば、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域についてはノイズと識別し、表示を行わずに、表示する価値のある弾性の値が演算された画像情報の領域についてのみ色相情報や白黒輝度情報を付与して表示するようにした。これによって、ノイズと思われるような弾性画像は表示されなくなるので、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0017】
請求項3に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2において、前記情報付与手段が、表示価値がある領域は階調化した画像情報を付与し、表示価値がない領域は表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両領域を画像上で識別可能にしたものである。これは、表示価値の有無をその弾性フレームデータ上の各領域について行い、表示価値評価手段によって表示価値があるとされた領域については、要素データを例えば8ビットの256段階の値に設定し、表示価値がないとされた領域については、要素データに例えば「0」の値を設定することによって両領域の画像を識別可能したものである。なお、「0」の値が設定されたということは、その領域については表示しないということを意味する。
【0018】
すなわち、弾性フレームデータにおける計測点(画素点)の画像情報を消去(クリヤ)することである。
【0019】
請求項4に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2又は3において、前記情報付与手段が、さらに、表示価値があるフレームは階調化した画像情報を付与し、表示価値がないフレームは表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両フレームを画像上で識別可能にしたものである。これは、表示価値の有無をその弾性フレームデータ毎について行い、表示価値評価手段によって表示価値があるとされたフレームについては、要素データを例えば8ビットの256段階の値に設定し、表示価値がないとされたフレームについては、要素データに例えば「0」の値を設定することによって両フレームの画像を識別可能としたものである。なお、「0」の値が設定されたということは、そのフレームについては表示しないということを意味する。すなわち、弾性フレームデータの全ての計測点(画素点)の画像情報を消去(クリヤ)することである。これによって超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような局面や検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような局面の場合には、弾性画像データは表示されなくなり、質の高い弾性画像診断を可能とすることが出来る。
【0020】
請求項5に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至4のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データの要素データを母集団とした統計処理を施し、その統計的特徴に基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値評価手段が各種データの要素データに対して統計処理を行い、その統計的特徴に基づいて表示価値を評価するようにしたものである。各種データとしては、後述するような、変位フレームデータ、弾性フレームデータ及び圧力データなどが該当する。これらのデータに対して統計的特徴に基づいて評価を行う。
【0021】
請求項6に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至5のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記変位計測手段から出力される前記変位フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、変位フレームデータを用いるようにしたものである。
【0022】
請求項7に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至6のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記歪み及び弾性率演算手段から出力される前記弾性フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、弾性フレームデータをそのまま用いるようにしたものである。なお、表示価値評価手段は、変位フレームデータと弾性フレームデータの両方に基づいて評価するようにしてもよい。
【0023】
請求項8に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至7のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記圧力計測手段から出力される前記圧力データに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたものである。これは、表示価値の評価に用いる弾性の計測を反映したデータとして、圧力データを用いたものである。圧力データの示す圧力がある基準圧力よりも小さいか否かによって、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないか多いかの判断をすることができ、表示価値を評価することができる。なお、表示価値評価手段は、圧力データと変位フレームデータの二つのデータ、圧力データと弾性フレームデータの二つのデータ、又は圧力データと変位フレームデータと弾性フレームデータの三つのデータに基づいて、それぞれ評価するようにしてもよい。
【0024】
請求項9に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至8のいずれか1項において、前記表示価値評価手段が、前記弾性フレームデータの表示価値の結果に応じて、弾性フレームデータを表示する関心領域(ROI)の位置及び範囲の少なくとも一方を自動で設定するようにしたものである。これは、表示価値がないとされた領域については、それを除去領域として、装置で設定された元々の関心領域(ROI)から部分的に除去したり、関心領域(ROI)を縮小したり、又は拡大、移動したりするものであり、除去領域そのものが装置で設定される関心領域(ROI)の範囲外となるように自動で排除するようにしてもよい。
【0025】
請求項10に記載された本発明に係る超音波診断装置は、請求項2乃至9のいずれか1項において、前記表示手段は、前記表示価値評価手段の評価結果に応じて、前記断層像データのみを表示し、前記弾性フレームデータを表示しないようにしたものである。
【0026】
また、請求項11に記載された本発明に係る超音波診断装置は、被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、前記表示価値無の場合には、前記断層画像のみを表示し、前記歪み弾性画像を表示しない表示手段と、を備えたものである。これは、対象組織への圧迫動作が行われていなかったり、対象組織への圧迫速度が小さすぎてゼロであったり、不十分であることが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布するような場合、例えば、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような局面や検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合などには、弾性画像データそのものを表示しないようにしたものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、弾性画像診断において、代表されるような理想的なデータ取得が困難な状況下において、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域を例えばノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】図1の表示価値評価部の一実施例を示す図である。
【図3】図2のフレームメモリ回路内に格納されている計測結果フレームデータの一例を示す図である。
【図4】図2の計測クオリティー評価回路によって構築される計測クオリティーフレームデータの一例を示す図である。
【図5】図1の表示価値評価部の別の実施例を示す図である。
【図6】図5の表示判定回路によって構築される判定結果フレームデータの一例を示す図である。
【図7】図6の判定結果フレームデータの具体的な数値を示す図である。
【図8】図1のカラースキャンコンバータの一実施例を示す図である。
【図9】図8の色相情報付与回路によって構築される弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図10】関心領域(ROI)の位置、範囲が自動で制御される場合の処理前の弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図11】関心領域(ROI)の位置、範囲が自動で制御される場合の処理後の弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【図12】すべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるような弾性色相フレームデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の10の診断部位について断層像を得ると共に生体組織の硬さ又は柔らかさを表す弾性画像を表示するものである。この超音波診断装置は、図1に示すように、超音波探触子100と、超音波送受信制御回路101と、送波回路102と、受信回路103と、整相加算回路104と、信号処理部105と、白黒スキャンコンバータ106と、画像表示器107と、RF信号フレームデータ選択部108と、変位計測部109と、圧力計測部110と、歪み及び弾性率演算部111と、弾性データ処理部112と、カラースキャンコンバータ113と、切替加算器114と、表示価値評価部115と、装置制御インタフェース部116とを具備して構成されている。
【0030】
超音波探触子101は、多数の振動子を短冊状に配列して形成されたものであり、機械式または電子的にビーム走査を行って被検体100に超音波を送信及び受信するものであり、図示は省略したがその中には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する振動子が内蔵されている。各振動子は、一般に、入力されるパルス波、または連続波の送波信号を超音波に変換して発射する機能と、被検体100の内部から反射する超音波を受けて電気信号の受波信号に変換して出力する機能を有して形成される。
【0031】
一般に、超音波を用いた弾性の画像化における被検体の圧迫動作は、超音波探触子100で超音波送受信を行いつつ、被検体100の診断部位の体腔内に効果的に応力分布を与える目的で超音波探触子100の超音波送受信面と、この送受信面に面を合わせて圧迫板を装着し、超音波探触子100の超音波送受信面と圧迫板にて構成される圧迫面を被検体の体表に接触させ、圧迫面を用手的に上下動させて被検体を圧迫するという方法をとっている。
【0032】
超音波送受信制御回路101は、超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。送波回路102は、超音波探触子101を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成すると共に、内蔵された送波整相加算回路によって送信される超音波の収束点をある深さに設定するものである。受信回路103は、超音波探触子101で受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅するものである。増幅された各振動子の数に対応した数の受波信号がそれぞれ独立した受波信号として整相加算回路104に入力される。整相加算回路104は、受信回路103で増幅された受波信号を入力し、それらの位相を制御し、一点又は複数の収束点に対して超音波ビームを形成するものである。信号処理部105は、整相加算回路104からの受波信号を入力してゲイン補正、ログ圧縮、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の各種信号処理を行うものである。
【0033】
これらの超音波探触子101、超音波送受信制御回路101、送波回路102、受信回路103、整相加算回路104及び信号処理部105によって、超音波送受信手段を構成しており、超音波探触子101を用いて超音波ビームを被検体100の体内で一定方向に走査させることにより、一枚の断層像を得るようになっている。
【0034】
白黒スキャンコンバータ106は、前述の超音波送受信手段の信号処理部105から出力される反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体10内のRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、このRF信号フレームデータを表示するためテレビジョン方式の周期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段、例えば、信号処理部105からの反射エコー信号をディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成される。
【0035】
画像表示器107は、白黒スキャンコンバータ106によって得られた時系列の断層像データすなわちBモード断層像を表示するものであり、切替加算器114を介して白黒スキャンコンバータ106から出力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からのアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
【0036】
この実施の形態においては、整相加算回路104の出力側から分岐してRF信号フレームデータ選択部108と変位計測部109とが設けられると共に、これと並列に圧力計測部110が設けられ、この圧力計測部110と変位計測部109の後段には、歪み及び弾性率演算部111が設けられ、変位計測部109の出力側から分岐して表示価値評価部115が設けられ、歪み及び弾性率演算部111の後段には、弾性データ処理部112とカラースキャンコンバータ113が設けられ、白黒スキャンコンバータ106とカラースキャンコンバータ113との出力側には切替加算器114が設けられている。また、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113には装置制御インタフェース部116を介して検査士などが自由に制御できるようになっている。
【0037】
RF信号フレームデータ選択部108は、整相加算回路104から超音波診断装置のフレームレートで経時的に次々と出力されるRF信号フレームデータをRF信号フレームデータ選択部108に備えられたフレームメモリ内に順次確保し(現在確保されたRF信号フレームデータをRF信号フレームデータNとする)、超音波診断装置の制御命令に従って時間的に過去のRF信号フレームデータN-1、N-2、N-3・・・N-Mの中から1つのRF信号フレームデータを選択し(これをRF信号フレームデータXとする)、変位計測部109に1組のRF信号フレームデータNとRF信号フレームデータXを出力する役割を担うものである。整相加算回路104から出力される信号をRF信号フレームデータと記述したが、これは例えば、RF信号を複合復調したI,Q信号の形式になった信号であっても良いのは言うまでもない。
【0038】
変位計測部109は、RF信号フレームデータ選択部108によって選択された1組のRF信号フレームデータに基づいて1次元もしくは2次元相関処理を実行し、断層像上の各計測点の変位もしくは移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を計測し、変位フレームデータを生成するものである。この移動ベクトルの検出法としては、例えば、特許文献1に記載されたようなブロック・マッチング法とグラジェント法とがある。ブロックマッチング法は、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックに最も近似しているブロックを前フレームから探索し、これを参照して予測符号化を行うものである。
【0039】
圧力計測部110は、被検体100の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定するものである。圧力計測部110は、超音波探触子100の探触子ヘッドと被検体10との間にどの程度の圧力が印加されているかを計測するものであり、例えば、棒状部材に架かる圧力を検出する圧力センサを探触子ヘッドの側面に取り付け、探触子ヘッドと被検体10との間の圧力を任意の時相で測定し、測定された圧力値を歪み及び弾性率演算部111に送出するように構成することができる。
【0040】
歪み及び弾性率演算部111は、変位計測部109及び圧力計測部110からそれぞれ出力される変位フレームデータ(移動量)及び圧力から断層像上の各計測点の歪み及び弾性率を演算して歪みもしくは弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、それを弾性データ処理部112に出力するものである。歪み及び弾性率演算部111が行う歪みの演算については、例えば、圧力のデータを必要とせず、その変位を空間微分することによって計算上で求めるものとする。また、弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算については、以下の式に示すように、各演算点における応力(圧力)を各演算点における歪み量で除することにより求める。
【0041】
以下の数式において、i,jの指標は、フレームデータの座標を表す。Ymi,j=圧力(応力)ij/(歪み量i,j) (i,j=1,2,3,・・・)
弾性データ処理部112は、歪み及び弾性率演算部111からの弾性フレームデータに座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を施し、処理後の弾性フレームデータをカラースキャンコンバータ113に出力するものである。なお、この弾性データ処理部112の詳細については、本願の出願人が先に出願した特願2003-006932号に記載されているので、ここでは説明を省略する。
【0042】
カラースキャンコンバータ113は、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータと、超音波診断装置制御部からの命令もしくは弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータの中の階調化選択範囲とする上限値及び下限値を入力し、その弾性フレームデータから弾性画像データとして赤、緑、青などの色相情報を付与する色相情報変換手段を含むものであり、例えば、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータにおいて、歪みが大きく計測された領域については、弾性画像データ内の該当領域を赤色コードに変換し、逆に歪みが小さく計測された領域については、弾性画像データ内の該当領域を青色コードに変換するようになっている。また、カラースキャンコンバータ113は白黒スキャンコンバータでも良く、歪みが大きいく計測された領域は、弾性画像データ内の該領域の輝度を明るくさせ、逆に歪みが小さく計測された領域は、弾性画像データ内の該領域の輝度を暗くさせるようにしても良い。
【0043】
切替加算器114は、白黒スキャンコンバータ106からの白黒の断層像データとカラースキャンコンバータ113からのカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を加算又は切り替える手段となるもので、白黒の断層像データだけ又はカラーの弾性画像データだけを出力したり、あるいは両画像データを加算合成して出力したりするように切り替えるようになっている。また、例えば、特許文献2に記載されているように、2画面表示において白黒断層像とカラーもしくは上記白黒スキャンコンバータによる白黒弾性画像を同時に表示しても良い。また、例えば、本願の出願人が先に出願した特願2002-304399号に記載されているように、白黒断層像にカラーの弾性画像を半透明的に重畳して表示するようになっていても良い。そして、この上記切替加算器114から出力された画像データが画像表示器107に出力されるようになっている。
【0044】
次に、本発明で採用した表示価値評価部115の実施例について説明する。変位計測部109から出力される変位フレームデータを利用し、関心領域(ROI)内のすべての計測点のそれぞれについて、画像表示する価値を評価し、無益な情報と有益な情報とを識別し、無益な情報を最終的に画像として残さない(マスキングして隠す)ようにすることを試みる手段となるものであり、以下にその方法を詳細に説明する。
【0045】
図2は、本発明に係る表示価値評価部115において入出力されるデータの流れの一例を示す図である。表示価値評価部115は、フレームメモリ回路1151と計測クオリティー評価回路1152表示判定回路1153を備えて構成されている。
【0046】
フレームメモリ回路1151は、変位計測部109から出力される変位フレームデータを計測結果フレームデータとして確保し、計測クオリティー評価回路1152に出力する。計測クオリティー評価回路1152は、フレームメモリ回路1151から出力される計測結果フレームデータを入力して関心領域(ROI)内のすべての計測点のそれぞれについて、計測結果フレームデータの信頼性、すなわち計測された結果が正常に計測された結果か否かを数値として反映された計測クオリティーフレームデータを構築する。
【0047】
次に、計測クオリティー評価回路1152の動作の一例を説明する。計測クオリティー評価回路1152は、計測結果フレームデータの要素データを母集団とする統計処理を行い、その統計的特徴量を要素データとして計測クオリティーフレームデータを構築する。図3は、統計的特徴量に基づいて計測クオリティーフレームデータを構築する場合の一例を示す図である。
【0048】
まず、図3に示すように、計測結果フレームデータの各要素データをXi,j(i=1,2,3,・・・,N、j=1,2,3,・・・M)で示す。ここで、指標iは弾性画像の横軸方向の座標に、jは縦軸方向の座標に相当し、超音波装置で設定された関心領域(ROI)に含まれるすべての要素データをこの指標にて参照するようになっている。現在、注目している要素データを例えばX4,4とし、X4,4の座標を中心とした3(要素)×5(要素)のサイズのカーネル31を設定し、このカーネル31内に分布する計15個の要素データ群を母集団とした統計的特徴量として、例えば平均と標準偏差を以下のように演算する。
【0049】
(平均)4,4={Σ(計測結果フレームデータXi,j)}2/15{(標準偏差)4,4}2
=Σ{(平均)4,4-(計測結果フレームデータXi,j)}2/15
(3≦i≦5,2≦j≦6)
上述の手順に従い、各注目要素データXi,jについても同様に(標準偏差)i,jを演算し、計測クオリティーフレームデータの各要素データYi,jに対応させて、以下のように入力設定し、図4に示すような計測クオリティーフレームデータを作成する。(計測クオリティーフレームデータYi,j)=(標準偏差)i,j (i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
計測結果フレームデータとして変位フレームデータが入力されているので、演算を行って計測クオリティーフレームデータを構成した場合、計測クオリティーフレームデータを構成する各要素データYi,jには、変位フレームデータにおいて同一座標の要素データXi,jを中心とし、設定されたカーネルサイズ分の領域に分布する要素データ群を母集団とした変位(移動量)の値のばらつきの程度が反映された値が入力され、表示判定回路1153には上述のような計測クオリティーフレームデータが出力されることになる。
【0050】
上述の実施例では、表示価値評価部115において、変位フレームデータを計測結果フレームデータとして入力し、表示価値がある領域と表示価値がない領域を評価するようにしたが、例えば、図5に示すように、歪み及び弾性率演算部111において、変位フレームデータを空間微分して生成される弾性フレームデータを、表示価値評価部115における計測結果フレームデータとして入力するようにしてもよい。これは、弾性フレームデータも変位フレームデータの局所的な離散性を反映しているため、これによっても同様の動作を実現することができるからである。なお、上述のカーネル31のサイズは任意に設定することができる。また、関心領域(ROI)の周辺ではカーネル31のサイズが小さくなっていてもよい。計測クオリティーフレームデータに対して、空間的なスムージング処理、時間軸方向のフレーム間平滑処理などの処理を実行してもよい。
【0051】
表示判定回路1153は、計測クオリティー評価回路1152から出力される計測クオリティーフレームデータを入力し、超音波装置の制御部から出力された閾値制御信号1161を装置制御インタフェース部116を介して入力し、この閾値制御信号1161に従った閾値処理を施すことにより、計測点に対応する画像を表示するか否かを示す判定結果フレームデータを構築し、カラースキャンコンバータ113に出力する。
【0052】
以下、表示判定回路1153の動作の一例を説明する。計測クオリティーフレームデータの要素データには、計測クオリティー評価回路1152の動作説明において示した変位(移動量)の標準偏差の値が反映されているので、計測クオリティーフレームデータの各要素データに対して閾値判定を施すことにより、判定結果フレームデータを構成することができる。
【0053】
計測クオリティー評価回路1152によって生成された上述の計測クオリティーフレームデータの要素データは、大きい値を持った計測クオリティーフレームデータの要素データ程、その要素データの座標を中心として一定領域内に分布している変位の値のばらつきが大きいことを意味する。そこで、表示判定回路1153は、超音波装置制御部から入力される閾値制御信号1161を閾値Thとし、計測クオリティーフレームデータを構成するすべての要素データについて、閾値Thとの大小関係を判定する。例えば、上測クオリティーフレームデータの要素データYi,jが閾値Thより大きい場合は判定結果フレームデータの同一座標の要素データZi,jに「0」を、要素データYi,jが閾値Thより小さい場合はZi,jに「1」を設定し、以下のように入力設定する。
【0054】
(計測クオリティーフレームデータYi,j)>(閾値Th)
⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0(計測クオリティーフレームデータYi,j)≦(閾値Th)
⇒(判定結果フレームデータZi,j)=1 (i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
この結果として生成される判定結果フレームデータZi,jは、例えば、図6のように構成される。
【0055】
このような閾値処理により、すべての要素データZi,jの値に「0」もしくは「1」の入力された判定結果フレームデータが構築され、それがカラースキャンコンバータ113に出力される。図7は、各要素データZi,jに「0」、「1」を入力した結果の判定フレームデータZi,jの一例を示す図である。上述の実施例では、表示価値評価部115において、表示価値がある領域の値を「0」、表示価値がない領域の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成するようにしたが、本発明はこの例に限らず、表示価値の有無を識別できる値が設定されていればよいことはいうまでもない。
【0056】
次に、本発明によるカラースキャンコンバータ113の動作例を説明する。図8は、本発明に係るカラースキャンコンバータ113において入出力されるデータの流れの一例を示す図である。カラースキャンコンバータ113は、フレームメモリ回路1131と、階調化処理回路1132と、色相情報付与回路1133と、画像構築回路1134とを備えて構成されている。階調化処理回路1132は、リジェクション処理回路を備えている。
【0057】
フレームメモリ回路1131は、弾性データ処理部112から出力される弾性フレームデータと同時に表示価値評価部115から出力される判定結果フレームデータを確保し、階調化処理回路1132内のリジェクション処理回路に出力する。
【0058】
階調化処理回路1132は、フレームメモリ回路1131から出力される、連続的な値を有する弾性フレームデータを、離散的な値(例えば8ビット、256段階)を有する弾性階調化フレームデータに変換するものであり、この処理をリジェクション処理回路が行う。リジェクション処理回路は、フレームメモリ回路1131から出力される弾性フレームデータと判定結果フレームデータを入力し、判定結果フレームデータの各要素の情報に従い、弾性階調化フレームデータの対応する要素の情報を設定する。
【0059】
階調化処理回路におけるリジェクション処理回路の動作の一例を説明する。判定結果フレームデータの要素データに、表示価値評価部115の動作説明において示した判定結果の値として、図7に示したような表示価値が低い場合は「0」の値が、表示価値が高い場合は「1」の値が入力されている場合に、リジェクション処理回路は、この判定結果フレームデータの要素データの値に応じて、該当する座標の弾性階調化フレームデータの要素データを8ビットの256段階の値に設定する。
【0060】
この設定状況の場合、判定結果フレームデータの要素データとして0の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは無益な情報であることになり、「1」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは有益な情報であることになる。そこで、この判定結果に従い、判定結果フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性階調化フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性フレームデータの要素データの値の大小に関係なく、その値として「0」を設定し、判定結果フレームデータの要素データとして「1」の値を持った座標に該当する弾性階調化フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性フレームデータの要素データの値の大小に応じて、255段階に階調化された値を設定する。つまり、フレームメモリ回路からリジェクション処理回路に入力される弾性フレームデータの要素データをSi,j、判定結果フレームデータをZi,j、リジェクション処理回路において生成された弾性階調化フレームデータの要素データをTi,jと表記すると、以下のような演算を実行することになる。
【0061】
(判定結果フレームデータZi,j)=0
⇒(弾性階調化フレームデータTi,j)=0(判定結果フレームデータZi,j)=1
⇒(弾性階調化フレームデータTi,j)=(Si,jの大小に応じた「1」〜「255」の値)
(i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
このような階調化処理により、すべての要素データTi,jに「0」から「255」の256段階の値が入力された弾性階調化フレームデータが構築される。階調か処理回路113によって得られた弾性階調化フレームデータは、色相情報付与回路1133に入力される。
【0062】
色相情報付与回路1133は、階調化処理回路から出力される弾性階調化フレームデータを入力し、弾性階調化フレームデータの各要素の情報に従い、弾性色相フレームデータを生成する。色相情報付与回路1133の動作の一例を説明する。弾性階調化フレームデータの要素データには、表示価値評価部115と、階調化処理回路1132の動作説明において示した結果として、例えば、表示価値が低い座標の場合には「0」の値が、表示価値が高い座標の場合には「1」から「255」の255段階に階調化された値が入力されており、色相情報付与回路1133において、弾性階調化フレームデータの要素データの値に応じて、該当する座標の弾性色相フレームデータの要素データに色相情報を設定するという一例の処理を行う。
【0063】
この設定状況の場合、弾性階調化フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは、無益な情報であることになり、「1」から「255」の値を持った座標に該当する弾性フレームデータの要素データは有益な情報であることになる。そこで、この判定結果に従い、弾性階調化フレームデータの要素データとして「0」の値を持った座標に該当する弾性色相フレームデータの要素データ(R:赤、G:緑、B:青)は、その色相情報として例えば、黒色(R=0,G=0,B=0)を設定し、弾性階調化フレームデータの要素データとして「1」から「255」の値を持った座標に該当する弾性色相フレームデータの要素データは、該当する座標の弾性階調化フレームデータの要素データの値の大小に応じて、例えば、青色から赤色に255段階に階調化された色相情報を設定する。
【0064】
すなわち、階調化処理回路1132から色相情報付与回路1133に入力される弾性階調化フレームデータの要素データをTi,j、色相情報付与回路1133において生成された弾性色相フレームデータの要素データのR(赤)成分、G(緑)成分、B(青)成分をそれぞれ、URij、UGij、UBijと表記すると、以下のような演算が実行されることになる。
【0065】
(弾性階調化フレームデータTi,j)=0
⇒(弾性色相フレームデータURij)=0
(弾性色相フレームデータUGij)=0
(弾性色相フレームデータUBij)=0
(弾性階調化フレームデータTi,j)=1〜255
⇒(弾性色相フレームデータURij)=(Ti,j-1)
(弾性色相フレームデータUGij)=0
(弾性色相フレームデータUBij)=254-(Ti,j-1)
(i=1,2,3,・・・,N、j=1,2,3,・・・M)
例えば、図6の判定結果フレームデータZi,jに対応して上述の処理が施された弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図9のように示される。なお、図面中にて色相情報を表示することができないため、弾性階調化フレームデータTi,j=0に対応する領域を白色に、弾性階調化フレームデータTi,j=1〜255に対応する領域を、その大小に応じて灰色の度合いを階調化させて例示した。このような色相情報付与処理により、すべての要素データUi,jにR、G、Bの色相情報の値が入力された弾性色相フレームデータを構築することができる。色相情報付与回路1133によって色相情報の付与された弾性色相フレームデータは次段の画像構築回路1134に出力される。
【0066】
この実施の形態では、表示価値が高い領域が青色から赤色に階調化され、表示価値が低い領域が黒色の単一の色にて表示する例を示したが、本発明はこの例に限らず、例えば、表示価値が高い領域が黄色から緑色に階調化され、表示価値が低い領域が青色の単一の色にて表示されるなど、上述の説明とは異なる色相の割り当て方法を用いてもよいのはいうまでもなく、表示価値の低い領域を画像として識別することができるようになっていればよい。また、この実施の形態では、弾性色相フレームデータの成分として、RGBの信号形式を用いて説明したが、本発明はこの例に限らず、他の信号形式(例えばYUVなど)にて色相情報を付与する方法にて実現するようになっていてもよい。さらに、この実施の形態では、関心領域(ROI)内において、表示価値のない領域を表示価値のある領域とは相容れない色相情報にて識別する例を示したが、本発明はこの例に限らず、例えば、図10に示すように、弾性色相フレームデータUbi,jの要素データの中で、表示価値のない領域が左側の2列に連続して存在するような場合に、その部分を除去領域として評価する。このように除去領域として評価された場合には、図11に示すように、その部分を除去し、関心領域(ROI)を縮小する。このように超音波診断装置で設定されて表示されている関心領域(ROI)が、縮小、拡大又は移動されることにより、除去領域そのものが装置で設定される関心領域(ROI)の範囲外となるように自動で排除するようにしてもよい。図11の場合には、図10の表示価値のない領域となる左側2列を除去して、関心領域(ROI)を縮小した場合の一例が示されている。
【0067】
画像構築回路1134は、色相情報付与回路1133から出力される弾性色相フレームデータを入力し、超音波装置の制御部から出力された制御信号1164を装置制御インタフェース部116を介して入力し、これに従って、弾性色相フレームデータを元のデータとして、極座標変換、画像拡大縮小、画像上下左右反転回転などの補間処理を含めた画像処理を行い、画素データにより構築された弾性画像データを生成する。なお、画像構築回路1134、階調化処理回路1132及び色相情報付与回路1133は制御信号1162〜1164を装置制御インタフェース部116を介してそれぞれ入力し、これに従って、各機能の採否、動作設定の切替や変更を行うことができるように構成されている。
【0068】
ところで、任意の時刻におけるRF信号フレームデータは、その時刻における生体組織の構造や配置を情報として反映しており、超音波による組織弾性情報を取得する方法として、まず、一定の時間間隔だけ隔てられて取得された1組のRF信号フレームデータを用い、その一定時間の間の生体組織の圧迫(加圧、減圧)により生じた、生体組織各部の変位を演算する。更に変位の情報を空間微分することにより、超音波装置において設定された関心領域(ROI)内のすべての点について歪みの値を演算し、画像を構築、表示している。
【0069】
しかし、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、圧迫により探触子短軸方向に対象組織が逃げてしまい、計測断面から外れるという第1の局面、圧迫により探触子長軸方向、若しくは、圧迫方向に対象組織が大きな速度を持って変位し、診断装置で設定された所定の変位演算範囲を逸脱するという第2の局面などのように、圧迫方向が不適切であったり、圧迫速度が過剰であったことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、正しい変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合がある。
【0070】
また、送信超音波が減衰により到達しないような深部の領域を関心領域とするような第3の局面、超音波反射体が少ない領域(嚢胞など、内部が液状の病変部など)を関心領域とするような第4の局面などのように、対象組織の性状を反映した十分な強度を有した受信信号が得られないことが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、正しい変位を演算することのできないエラー(相関演算エラー)領域が存在する場合もある。
【0071】
このような第1から第4の各局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、正しく演算されなかった変位の値を持つ領域が存在する可能性が高く、その変位の値を用いて演算された歪みの値を画像として表示した場合、その歪み画像の関心領域には正しくない情報が含まれることになる。また、超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような第5の局面などのように、超音波探触子の形状や対象組織の形態が原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内に、変位を演算することが無意味な領域が存在する場合もある。このような第5の局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内に、意味のない変位の値を持つ領域が存在することとなり、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した場合、同じくその歪み画像には正しくない意味のない情報を含むことになる。
【0072】
このような第1から第5の局面に代表されるような各局面においては、圧迫により与えられた組織変位の結果として、次のような第1及び第2の領域が観測される。第1の領域は、計測点群が同一方向的に同程度の大きさの変位を有する計測点群の領域(局所的に組織同士が結合して同一方向に集団的に変位するような領域)であり、第2の領域は、計測点群の隣接計測点間で変位の値と方向にバラツキが形成される計測点群の領域(局所的な組織同士の結合がなく、隣接組織間でも様々な方向を持って離散的に変位するような領域)である。このように大別される二つの第1及び第2の領域が一つの変位フレームデータ内に観測される。
【0073】
上述のような第1から第5の局面において、正しい変位を演算できなかった領域や、変位を演算することが無意味な領域は、変位の演算結果として、該当する領域の変位の値と方向がそれぞればらつき、上述の第2の領域のような様相を成し、適切な圧迫を与えられた領域は、変位の演算結果として、上述の第1の領域のような様相を成すこととなる。
【0074】
上述の実施の形態では、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113によって、変位フレームデータを利用した場合について説明したが、このような動作は、変位フレームデータを用い、局所的な変位のバラツキを求め、このバラツキが大きい計測点は、表示価値が低いと評価し、バラツキが小さい計測点は、表示価値が高いと評価し、表示価値が低いと評価された計測点の座標に該当する弾性画像データの画素には黒色の色相情報が、表示価値が高いと評価された計測点の座標に該当する弾性画像データの画素には、計測された弾性フレームデータの該当座標の要素の値の大小に応じて、青色から赤色へ連続的に色調を変化させた色相情報が付与し、表示価値が低い計測点の弾性画像情報が除去され、表示価値が高い計測点のみに色相が付与された弾性画像が超音波診断装置の画面上に表示するという一連の処理を実行するものである。これによって、適切な圧迫を与えられた領域にのみその弾性の値に応じて色相で階調化され表示されると同時に、適切に圧迫することができなかった領域は、階調が除去され、階調化された色相とは相容れない単一の色相にて画像識別できるように表示されることになる。
【0075】
従来の超音波診断装置における弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティー、画質)を評価することなく、設定された関心領域(ROI)のすべての計測点について画像を構築、表示している為、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算された領域の画像情報は、表示価値のない情報であるにも関わらず、表示価値のある情報と識別されずに、両情報の領域が混在して分布した1フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果になっていたが、本発明による表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113を採用することによって、除去されずに残った無意味な弾性画像領域の情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)や装置設定が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされるために、より高画質な画像を取得できるような検査方法(圧迫手法など)を診断現場において即座に提供することが可能となる。
【0076】
なお、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成しているが、これに加えて、判定結果フレームデータのすべての要素(N×M個)の内、判定結果フレームデータの要素が「1」となった計測点が占める比率Rを以下の演算により求めるようにしてもよい。
【0077】
(比率R)=[Σ{(判定結果フレームデータZi,j)=1}]/(N×M)
そして、求められた比率Rがある基準比率Rstd(例えば、0.5)より小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0078】
(比率R)<(基準比率Rstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・、N、j=1,2,3,・・・M)
このようにすることによって、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが判定結果フレームデータZi,jに対応して、「0」に設定されるため、弾性色相フレームデータUci,jは、例えば、図12に示すようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの記弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。すなわち、弾性画像データの表示が行われなくなる。これによって上述したような超音波探触子が生体表皮に接触していない領域を関心領域とするような第5の局面、これに加えて、検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような局面の場合には、弾性画像データは表示されなくなる。
【0079】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの局所的なカーネルサイズ内に含まれる要素を母集団としたバラツキを評価し、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」とするような判定結果フレームデータを生成する場合について説明したが、これとは異なるものとして、次のような処理を行ってもよい。すなわち、計測結果フレームデータの要素データXi,jのすべての要素を母集団とした統計処理を行い、その統計的特徴量としての平均値Mを以下の演算により求める。
【0080】
(平均値M)={Σ(計測結果フレームデータXi,j)}/(N×M)
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
この平均値Mがある基準平均Mstdより小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0081】
(平均値M)<(基準平均Rstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
これによって、判定結果フレームデータZi,jに対応して、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが「0」に設定されるため、弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図12に示されるようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。
【0082】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの要素を母集団とした評価を行い、表示価値がある計測点の値を「0」、表示価値がない計測点の値を「1」に設定された判定結果フレームデータを生成する場合について説明したが、これとは異なるものとして、次のような処理を行ってもよい。計測結果フレームデータとして、圧力計測部110から出力される圧力データPを入力し、この圧力Pがある基準圧力Pstdより小さい場合は、フレーム内において表示価値がある計測点が少ないと判断し、判定結果フレームデータのすべての要素データを「0」に再設定した判定結果フレームデータを以下に示すように、再度、生成する。
【0083】
(圧力P)<(基準圧力Pstd) ⇒(判定結果フレームデータZi,j)=0
(i=1,2,3,・・・N、j=1,2,3,・・・M)
これによって、判定結果フレームデータZi,jに対応して、カラースキャンコンバータ113によって生成された弾性階調化フレームデータTi,jは、すべての要素データTi,jが「0」に設定されるため、記弾性色相フレームデータUi,jは、例えば、図12に示されるようにすべての要素データが同一の単一色にて構成され、フレームの弾性画像データは階調化されずに表示されるようになる。また、上述の圧力データPが、画像横軸方向への1次元分布として、Pi(i=1,2,3,・・・N)として得られる場合は、それぞれの座標iに応じて、基準圧力Pstdと比較を行い、基準圧力Pstdに満たない座標においては、対応する座標の判定結果フレームデータZi,jを「0」に設定する。
【0084】
なお、実際の診断現場においては、1組のRF信号フレームデータの取得時間間隔において、対象組織への圧迫動作が行われていないという第6の局面、及び対象組織への圧迫速度が小さすぎるという第7の局面などといった、圧迫速度がゼロであったり、不十分であることが原因で、診断装置で設定された関心領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布する場合もある。具体的には、前述したように検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合がこれらの局面に該当するものである。このような第6及び第7のような局面においては、関心領域として設定された領域(ROI)内において、ゼロに近い変位を有する領域が全域的に分布するため、その変位の値を用いて演算される歪みの値を画像として表示した歪み画像も設定された関心領域(ROI)の全域にわたってコントラストがない、もしくは、コントラストが低い画像となる。さらに、第6及び第7のような局面に代表されるような局面においては、圧迫により与えられた組織変位の結果として、次のような第1及び第2のフレームが観測される。
【0085】
第1のフレームは、計測点群が全域的に変位せず、圧迫されていない(変位もしくは弾性の値の平均値が0である)フレームであり、第2のフレームは、計測点群の全域的は変位が小さく、微小にしか圧迫されていない(変位もしくは弾性の値の平均値が小さい)フレームである。このように二つに大別される第1及び第2のフレームが一連の圧迫過程における複数の弾性画像フレーム内に観測されることがある。
【0086】
上述の実施の形態では、表示価値評価部115とカラースキャンコンバータ113において、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータを利用した場合について説明したが、この動作は、変位フレームデータ、もしくは、弾性フレームデータの全域的な要素を母集団として、変位、もしくは、弾性の値の平均値を求め、求められた平均値が所定の基準値より小さいフレームは、全域的に表示価値が低いと評価と評価し、全域的に表示価値が低いと判定された場合は、該フレームの弾性画像情報のすべてが除去され、階調化されずに単一の色相が付与された弾性画像が超音波診断装置の画面上に表示されるようにまとめられ、適切な圧迫を与えられた時相のフレームにのみその弾性の値に応じた色相で階調化された弾性画像が表示され、適切に圧迫することができなかった時相のフレームは、階調が除去され、階調化された色相とは相容れない単一の色相にて画像表示され、適切に圧迫が与えられなかった時相のフレームを画像識別できるように表示されることになっている。
【0087】
超音波診断装置による弾性画像化方法においては、演算結果として出力された弾性(歪みもしくは弾性率)の値の表示価値(クオリティー、画質)を評価することなく、任意の時相のすべてのフレームについて画像を構築、表示している為、実際の診断の現場において、不適切な状況の下で演算されたフレームの画像情報は、表示価値のないフレームであるにも関わらず、表示価値のあるフレームと識別されることなく、両フレームが混在した一連の連続フレームの弾性画像を構築しており、その結果として弾性画像診断の信頼性を損なう結果になっていたが、本発明によれば、除去されずに残った無意味な弾性画像フレームの情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされるために、より高画質な画像を取得できるような圧迫手法などを診断現場において即座に模索することができる。
【0088】
さらに、本願の出願人が先に出願した特願2002-304399号に記載されているように、白黒断層像にカラーの弾性画像を半透明的に重畳して表示するようになっている構成のものにおいては、本発明の適用により、圧迫動作の最中にのみ弾性画像が重畳されて表示され、検査士が生体表皮を接触させながら超音波単色の探触子ヘッドを体側に沿って移動させながら患部の探索を行っているような場合などのように圧迫を止めた時相においては、弾性画像が除去されるために、白黒断層像のみが透過して表示されることになる。これによって、弾性診断以外の時相において計測断面の断層像を画像確認することが容易となり、診断の効率を大幅に向上させることができる。 上述の実施の形態では、1フレーム内における領域的な除去処理(領域除去機能)と、1フレーム全体の除去処理(フレーム除去機能)を独立して詳述したが、これに限らず、こられの2つの動作を組み合わせて、同時に行うことも可能であり、そのように構成されていてもよい。
【0089】
また、上述の実施の形態では、フレーム除去機能において、現時刻における表示価値の評価により、フレーム除去と判定された場合に、現時刻のフレームの画像情報を単一の色相に設定して表示するように説明したが、これに限らず、現時刻においてフレーム除去が判定された場合に、除去されずに表示された最も近い過去のフレームを保持し、継続して表示しておくように設定されるようになっていてもよい。また、この動作は、フレーム除去機能にのみに限らず、領域除去機能の動作としても同様の機能を設定することができるようになっていてもよい。
【0090】
また、上述の実施の形態では、表示価値評価部115を独立した回路として説明したが、これに限らず、表示価値評価部115の動作をカラースキャンコンバータ113、もしくは、弾性データ処理部112に備えるように構成されていてもよく、また、各回路の処理の順序が入れ替わった構成であってもよい。
【0091】
また、上述の実施の形態では、領域除去処理機能とフレーム除去処理機能の採否選択や、除去処理機能における閾値処理に必要とされる閾値、基準比率、基準平均値などの設定や、除去された領域や除去されたフレームに付与する色相の割り当て、切り替えなどを超音波装置に備えられた装置制御インターフェイス部116を介して、検査士が自由に制御できるようになっている。
【0092】
上述の実施の形態によれば、弾性画像診断において、理想的なデータ取得が困難な状況下においても、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域や、全域的であればフレーム全体を、(ノイズとして)識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を提供することができる。
【0093】
次にこのように構成された超音波診断装置の動作について説明する。まず、超音波送受信制御に従い、被検体10の体表面に接触された超音波探触子100に送波回路102により高電圧電気パルスを印加して超音波を打出し、診断部位からの反射エコー信号を超音波探触子100で受信する。受信された受波信号は、受信回路103へ入力され、そこで前置増幅された後、整相加算回路104へ入力する。この整相加算回路104によって位相が揃えられた受波信号は、次の信号処理部106で圧縮、検波などの信号処理を受けた後、白黒スキャンコンバータ106へ入力する。この白黒スキャンコンバータ106は、受波信号をA/D変換すると共に、時系列的に連続する複数の断層像データとして内部の複数枚のフレームメモリに記憶する。整相加算回路104からは連続的にRF信号フレームデータが出力され、RF信号フレームデータ選択部108に入力される。
【0094】
RF信号フレームデータ選択部108に記憶されたRF信号フレームデータの内、時系列的に連続する複数枚のRF信号フレームデータが選択され、変位計測部109へ入力され、そこで1次元又は2次元変位分布(ΔLi,j)が求められる。変位分布の算出は、前述の移動ベクトルの検出法として、例えばブロック・マッチング法によって行うが、特にこの方法によらなくても良いのは言うまでもなく、一般的に用いられる、2画像データの同一領域における自己相関を計算して変位を算出しても良い。
【0095】
一方、圧力計測部110においては、圧力センサーによって体表面に加えられた圧力が計測され、その圧力情報が圧力計測部110から歪み及び弾性率計測部111に送出される。
【0096】
変位計測部109及び圧力計測部110から出力される変位(ΔLi,j)及び圧力(ΔPi,j)のそれぞれの計測信号は、歪み及び弾性率演算部111に入力される。歪み量分布(εi,j)は変位分布(ΔLi,j)を空間微分(ΔLi,j/ΔX)することによって計算される。また、特に弾性率の内、ヤング率Ymi,jは次式によって計算される。Ymi,j=(ΔPi,j)/(ΔLi,j/ΔX)このようにして求められた弾性率Ymi,jにより、各計測点の弾性率が求められ、弾性フレームデータが生成される。
【0097】
このようにして生成された弾性フレームデータは、弾性データ処理部112に入力され、座標平面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理が施される。
【0098】
ここで、表示価値評価部115は、変位計測部109から出力される変位フレームデータもしくは歪み及び弾性率演算部111から出力される弾性フレームデータを入力して、弾性画像として表示する価値の有無を計測点毎もしくはフレーム毎に評価を行い、その評価に応じた評価結果フレームデータを生成し、カラースキャンコンバータ113もしくは白黒スキャンコンバータ106に評価結果フレームデータを出力する。
【0099】
弾性データ処理部112から出力された弾性フレームデータと、表示価値評価部115から出力された評価結果フレームデータがカラースキャンコンバータ113もしくは白黒スキャンコンバータ106に入力され、評価結果フレームデータの情報に従い、無益な弾性の情報には除去処理が施されると同時に、有益な情報には階調化処理が施された色相情報もしくは白黒輝度情報に変換される。
【0100】
その後、切替加算器114を介して、白黒の断層像とカラーの弾性画像が加算合成され、または、白黒の断層像と白黒の弾性画像を加算せずに画像表示器107に送り込み、1画面に半透明処理を施された白黒断層像とカラーの弾性画像を重畳して表示したり、または、白黒断層像と白黒弾性画像を2画面表示により同一画面上に同時に表示したりする。また、白黒断層像は、特に一般のBモード画像のみに限ったものではなく、受信信号の高調波成分を選択して画像化するティシューハーモニック断層像を用いても良い。また、同様に白黒断層像の代わりに、ティシュードプラ像を表示しても良く、その他、2画面に表示する画像を様々な組合せにより選択されても良い。
【0101】
なお、以上の弾性画像の形成については、前述の生体組織の歪みもしくはヤング率Ymを求めて弾性画像データを生成する例を説明したが、これに限らず、例えばスティフネスパラメータβ、圧弾性係数Ep、増分弾性係数Eincなどの他のパラメータを用いて弾性率を演算しても良い(特許文献1を参照)。また、上述の実施の形態では、圧力計測部110を用いる場合について説明したが、本願の出願人が先に出願した特願2003-300325号に記載されているような方法で圧力を計測するようにしてもよい。
【0102】
また、図1では、被検体10の体表面に超音波探触子100を接触させる場合について説明したが、これに限らず、経直腸探触子、経食道探触子、術中用探触子、血管内探触子など、任意の超音波探触子にて同様に適用できる。
【0103】
このような構成により、本発明の超音波診断装置による弾性画像診断において、理想的なデータ取得が困難な状況下においても、表示する価値のない弾性の値が演算された画像情報の領域や、全域的であればフレーム全体を、ノイズとして識別し、その情報を反映した弾性画像を構築することにより、質の高い弾性画像診断を可能とする超音波診断装置を実現することができる。
【0104】
なお、弾性画像をリジェクトしないで保持するようにしてもよい。また、上述の実施の形態では、フレーム除去機能において、現時刻における表示価値の評価により、フレーム除去と判定された場合に、現時刻のフレームの画像情報を単一の色相に設定して表示するように説明したが、これに限らず、現時刻においてフレーム除去が判定された場合に、除去されずに表示された最も近い過去のフレームを保持し、継続して表示しておくように設定してもよい。さらに、この動作は、フレーム除去機能にのみに限らず、領域除去機能の動作としても同様の機能を設定することができるようにしてもよい。
【0105】
以上のようにこの実施の形態によれば、除去されずに残った無意味な弾性画像の情報に惑わされることなく、高画質で高い信頼性を有した弾性画像診断を安定的に行うことができ、それと同時に、不適切な検査方法(圧迫方法など)が原因であったことが弾性画像により検査士にフィードバックされる為に、より高画質な画像を取得できるような圧迫手法などを診断現場において即座に模索することができ、超音波診断の実時間性、簡便性を保持した、臨床上有用な超音波装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0106】
10 被検体、100 超音波探触子、101 超音波送受信制御回路、102 送波回路、103 受信回路、104 整相加算回路、105 信号処理部、106 白黒スキャンコンバータ、107 画像表示器、108 RF信号フレームデータ選択部、109 変位計測部、110 圧力計測部、111 歪み及び弾性率演算部、112 弾性データ処理部、113 カラースキャンコンバータ、1131 フレームメモリ回路、1132 階調化処理回路、1133 色相情報付与回路、1134 画像構築回路、114 切替加算器、115 表示価値評価部、1151 フレームメモリ回路、1152 計測クオリティー評価回路、1153 表示判定回路、116 装置制御インタフェース部、1161 閾値制御信号、1162〜1164 制御信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、
前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値有の場合には、前記歪み及び弾性データに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、
前記断層画像データからの断層画像と前記情報付与された前記歪み及び弾性データからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体に対して超音波の送信及び受信を行い反射エコー信号を出力する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内のRF信号フレームデータを所定周期で繰り返して取得する断層走査手段と、
前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに所定の信号処理を行う信号処理手段と、
前記信号処理手段からの時系列の断層フレームデータを断層像データに変換する断層像データ変換手段と、
前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに基づいて前記断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを生成する変位計測手段と、
前記被検体の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定して圧力データを生成する圧力計測手段と、
前記変位フレームデータ及び前記圧力データに基づいて前記断層像上の各点の歪み及び弾性データを表した弾性フレームデータを生成する歪み及び弾性データ演算手段と、
前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値有の場合には、前記弾性フレームデータに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、
前記断層像データからの断層画像と前記情報付与手段によって情報の付与された前記弾性フレームデータからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2において、前記情報付与手段は、
表示価値がある領域は階調化した画像情報を付与し、表示価値がない領域は表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両領域を画像上で識別可能にしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記情報付与手段は、
さらに、表示価値があるフレームは階調化した画像情報を付与し、表示価値がないフレームは表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両フレームを画像上で識別可能にしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データの要素データを母集団とした統計処理を施し、その統計的特徴に基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記変位計測手段から出力される前記変位フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記圧力計測手段から出力される前記圧力データに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記歪み及び弾性率演算手段から出力される前記弾性フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記弾性フレームデータの表示価値の結果に応じて、弾性フレームデータを表示する関心領域(ROI)の位置及び範囲の少なくとも一方を自動で設定するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか1項において、前記表示手段は、
前記表示価値評価手段の評価結果に応じて、前記断層像データのみを表示し、前記弾性フレームデータを表示しないようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、
前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値無の場合には、前記断層画像のみを表示し、前記歪み弾性画像を表示しない表示手段と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、
前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値有の場合には、前記歪み及び弾性データに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、
前記断層画像データからの断層画像と前記情報付与された前記歪み及び弾性データからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
被検体に対して超音波の送信及び受信を行い反射エコー信号を出力する超音波送受信手段と、
前記超音波送受信手段からの反射エコー信号を用いて運動組織を含む被検体内のRF信号フレームデータを所定周期で繰り返して取得する断層走査手段と、
前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに所定の信号処理を行う信号処理手段と、
前記信号処理手段からの時系列の断層フレームデータを断層像データに変換する断層像データ変換手段と、
前記断層走査手段によって取得された時系列のRF信号フレームデータに基づいて前記断層像上の各点の移動量又は変位を表す変位フレームデータを生成する変位計測手段と、
前記被検体の診断部位の体腔内圧力を計測又は推定して圧力データを生成する圧力計測手段と、
前記変位フレームデータ及び前記圧力データに基づいて前記断層像上の各点の歪み及び弾性データを表した弾性フレームデータを生成する歪み及び弾性データ演算手段と、
前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値有の場合には、前記弾性フレームデータに色相情報又は白黒輝度情報を付与する情報付与手段と、
前記断層像データからの断層画像と前記情報付与手段によって情報の付与された前記弾性フレームデータからの歪み画像又は弾性画像とを表示する表示手段と、を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2において、前記情報付与手段は、
表示価値がある領域は階調化した画像情報を付与し、表示価値がない領域は表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両領域を画像上で識別可能にしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記情報付与手段は、
さらに、表示価値があるフレームは階調化した画像情報を付与し、表示価値がないフレームは表示価値がある領域の階調化された画像情報とは相容れない単一の画像情報を付与して弾性フレームデータを構築することにより、両フレームを画像上で識別可能にしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記弾性フレームデータの生成過程で利用される各種データの要素データを母集団とした統計処理を施し、その統計的特徴に基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記変位計測手段から出力される前記変位フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記圧力計測手段から出力される前記圧力データに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記歪み及び弾性率演算手段から出力される前記弾性フレームデータに基づいて、前記弾性フレームデータの表示価値を評価するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1項において、前記表示価値評価手段は、
前記弾性フレームデータの表示価値の結果に応じて、弾性フレームデータを表示する関心領域(ROI)の位置及び範囲の少なくとも一方を自動で設定するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか1項において、前記表示手段は、
前記表示価値評価手段の評価結果に応じて、前記断層像データのみを表示し、前記弾性フレームデータを表示しないようにしたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項11】
被検体組織に接触する超音波探触子によって検出された信号を処理して断層画像データ又は歪み及び弾性データを生成する信号処理手段と、
前記歪み及び弾性データの生成過程で利用される各種データに基づいて、生成された歪み画像又は弾性画像の表示価値の有無を評価する表示価値評価手段と、
前記表示価値無の場合には、前記断層画像のみを表示し、前記歪み弾性画像を表示しない表示手段と、を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−12311(P2010−12311A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−240283(P2009−240283)
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2003−354231(P2003−354231)の分割
【原出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月19日(2009.10.19)
【分割の表示】特願2003−354231(P2003−354231)の分割
【原出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】
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