説明

超音波診断装置

【課題】血流のパワー表示からモーションアーティファクトを軽減すること。
【解決手段】本実施形態による超音波診断装置は、超音波プローブ3を有する。超音波プローブを介して走査部2、4により被検体の内部領域が超音波で繰り返し走査される。走査により得られた反射信号からドプラ効果による血流信号のパワーに関する空間分布を表す血流画像が繰り返し発生される。血流画像のフレーム全域又は局所領域毎にパワー平均値が平均パワー計算部68により計算される。パワー補正部69によりパワー平均値が閾値を超える値を示す画素のパワー値はパワー平均値と閾値とに従って実質的にゲインを下げられる。パワー平均値が閾値以下を示す画素のパワー値はこのパワー値で維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断におけるカラードプラ法は、生体に超音波を同一方向に複数回照射し、ドプラ効果により血流の速度やパワー、分散といった血流情報を抽出するものである。同一方向に複数回照射したデータの同一地点に関するエコーデータ列をパケットと呼ぶ。パケットサイズは5乃至16程度、つまり同一方向に5乃至16回照射することによりパケットを揃える。パケットに対して組織からの信号、つまりクラッタ信号を抑圧するウォールフィルタを掛けて血流信号を抽出して、速度、分散、パワーといった血流情報を表示する。そのために以下のような問題が発生する。
【0003】
パケットは超音波スキャンフレーム内に閉じているので、パケットサイズを大きくするとフレームレートが低下する。ウォールフィルタにIIRフィルタを使用する場合が多いが、少ないパケットサイズではIIRフィルタに過渡応答が発生するので、IIRフィルタの特性が悪くなってしまう。
【0004】
そこでパケットをフレーム内で閉じて扱うのではなく、フレーム間の同一場所の信号をパケットとして扱う方法が考えられている。この方法はパルス繰り返し周波数(PRF)がフレームレートと同じになるために、折り返し速度が低くなり、低流速まで観測可能であるという利点がある。しかし、組織からのクラッタ信号がウォールフィルタを通過しやすくなりモーションアーティファクトが発生しやすいという問題がある。特に、操作者が把持したプローブを動かしてしまうときには画面全部がクラッタで表示されてしまう。この問題は、特に上記スキャン方法でのみ発生するわけではなく、通常のカラードプラのスキャンにおいても、折り返し速度を低くした場合には同様に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-336534号公報
【特許文献2】特開2001-269344号公報
【特許文献3】特開平11-318902号公報
【特許文献4】特開平11-267125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
目的は、血流のパワー表示からモーションアーティファクトを軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による超音波診断装置は、超音波プローブを有する。超音波プローブを介して被検体の内部領域が超音波で繰り返し走査される。走査により得られた反射信号からドプラ効果による血流信号のパワーに関する空間分布を表す血流画像が繰り返し発生される。血流画像のフレーム全域又は局所領域毎にパワー平均値が計算される。パワー平均値が閾値を超える値を示す画素のパワー値はパワー平均値と閾値とに従って実質的にゲインを下げられる。パワー平均値が閾値以下を示す画素のパワー値はこのパワー値で維持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示す図である。
【図2】図2は図1のカラードプラ処理部の構成を示す図である。
【図3】図3は図2のパワー補正部による補正係数の説明図である。
【図4】図4は図2のウォールフィルタの処理説明図である。
【図5】図5は図1の送信回路及び受信回路による他の走査手順を示す図である。
【図6】図6は図1の平均パワー計算部による血流画像の補間処理を示す図である。
【図7】図7はモーションアーチファクトがないときの本実施形態のパワー補正による効果を示す図である。
【図8】図8はモーションアーチファクトがあるときの本実施形態のパワー補正による効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る超音波診断装置を説明する。本実施形態では、ウォールフィルタ通過後のドプラ信号(血流信号)のパワーをログ圧縮し、得られた血流画像のフレーム全域又は局所領域毎にパワー平均値を計算する。このパワー平均値がある閾値を超える値の場合には、各画素のログ圧縮後のパワー値から、パワー平均値と閾値との差異に応じた値を減算する。パワー平均値がある閾値以下の場合には、各画素のログ圧縮後のパワー値に対する上記減算は実施しないで、そのままの値に維持する。この処理をパワー補正と称する。
【0010】
ウォールフィルタ通過後のドプラ信号(血流信号)に多くの血流成分ではない低周波成分(主にクラッタ成分)が残留しているとき、その残留成分がモーションアーティファクトとして、パワーのグレースケール表示において画像表示画面を最大表示階調の真っ白に埋めてしまう(図8の左画像)。本実施形態の上記処理を行うことにより、ログ圧縮後に減算する処理、つまりリニア軸上でゲインを下げる処理と等価な処理により、残留成分は陰影がついて組織像として視認できる(図8の右画像)。つまり、図7に示すように、モーションアーティファクトがない状態ではパワー補正の有無に関わらず、血流のパワーが表示されているが、モーションアーティファクトが発生すると今度は組織像が見えるようになる。
【0011】
このように本実施形態では、モーションアーティファクトがない状態では血流のパワーが表示されているが、モーションアーティファクトが発生するときには組織像が見えるようになる。これにより、従来はプローブを動かすとモーションアーティファクトによって画面が真っ白になってスキャンを継続することができなかったが、本実施形態では組織像を視認しながらスキャンを継続することが可能になる。
【0012】
図1には本実施形態に係る超音波診断装置の構成を示している。制御部1は装置全体の制御中枢として機能するとともに、特に走査制御を担っている。超音波プローブ3は、電気/機械変換器としての複数の圧電素子を有する。3次元スキャンが電子的に可能なように例えば複数の圧電素子は2次元状に配列される。電子的3次元スキャンとは方位方向だけでなく、スキャン面に略垂直な面方向に関しても遅延制御を変化させて超音波ビームの指向性を変動させることで、被検体内部の3次元領域を超音波で一通り走査する方式をいう。なお、ここでは被検体の内部領域を一通り走査する操作を走査の一単位とする。走査は、超音波走査線をその配列に従って順番に移動していく順次走査には限定されず、超音波走査線をその配列とは無関係に離散的に移動していく離散走査であってもよい。
【0013】
プローブ3には送信回路2と受信回路4とが接続される。送信回路2は、パルス発生器、送信遅延回路、パルサ等を有する。パルス発生器は例えば6KHzのレート周波数でレートパルスを発生する。このレートパルスはチャンネル数に分配され、送信遅延回路に送られる。送信遅延回路は、超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間を各レートパルスに与える。パルサは、送信遅延回路からレートパルスを受けたタイミングでプローブ3に電圧パルスを印加する。これによりプローブ3から超音波パルスが被検体内に送信される。被検体内の音響インピーダンスの不連続面で反射した反射波はプローブ3で受信される。プローブ3からの受信信号は、受信回路4に取り込まれる。受信回路4は、プリアンプ、受信遅延回路、加算器、さらに直交検波回路及びローパスフィルタを有する。受信信号は、チャンネル毎にプリアンプで増幅され、受信遅延回路により受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与えられ、そして加算器で加算される。これにより受信指向性に応じた方向からの反射波が強調された反射信号が得られる。
【0014】
Bモードでは反射信号はそのままBモード処理部5に送られる。Bモード処理部5は反射信号を対数増幅し、検波することで組織形態を表す組織像(Bモード画像)を発生する。Bモード画像は、ディジタルスキャンコンバータ(DSC)とも呼ばれる座標変換部7でモニタ9の走査方式に並び替えられてモニタ9に表示される。
【0015】
ドプラモードでは、反射信号は直交検波回路及びローパスフィルタを経由してドプラシフト成分に関する実部と虚部とからなる複素信号(IQ信号)としてカラードプラ処理部6に送られる。カラードプラ処理部6は、ドプラシフトに関するIQ信号からハイパス特性のウォールフィルタで低周波のクラッタ成分を除去し、高周波の血流信号を抽出して、平均速度、その分散、パワーを計算する。これら平均速度、その分散、パワーは個々に又は任意に組み合わされて座標変換部7を介してモニタ9に血流画像として表示される。血流画像は画像合成処理部8によりBモード画像と任意に合成され得る。
【0016】
図2には図1のカラードプラ処理部6の構成を示している。入力バッファ61は、IQ信号を保持し、超音波走査線及び深度ごとのデータ列に並び替えて、所定長のパケットと呼ばれるデータ単位で出力する。ドプラモードでは超音波送受信が各超音波走査線に対して一定の周期(1/PRF、PRFは繰り返し周波数)で5乃至16回の所定回数繰り返されながら超音波走査線を順次移動していく。パケット長は、送受信の繰り返し数に応じた5乃至16のデータ数に設定される。ウォールフィルタ62は、パケットデータから心筋などの運動速度の遅い反射体からの低周波のクラッタ成分を除去し、比較的高周波の血流成分を抽出するためのハイパス特性を有する。ウォールフィルタ62から出力される血流に関するIQデータは自己相関器63とパワー計算部65とに送られる。自己相関器63は、現在のフレームの血流のIQデータと1フレーム前の血流のIQデータとの複素共役をとることにより自己相関値を得る。この相関データから実数部と虚数部のなす角度が計算され、平均速度が得られる。
【0017】
パワー計算部65は、ウォールフィルタ62のから出力される血流に関するIQデータの実数部のの絶対値を二乗と、虚数部の絶対値の二乗とを加算することにより、超音波の波長より小さい反射体(血球)による散乱の強さを表すパワーを多点にわたって計算する。パワー加算部66は、各点のパワーをパケット内で加算する。ログ圧縮部67は、パワー加算値をログ圧縮する。平均パワー計算部68は、ログ圧縮されたパワー加算値から1フレーム、又は局所領域内の平均パワー値を計算する。パワー補正部69は、平均パワー値が閾値を超える値を示す画素に対しては、当該画素のパワー値に、平均パワー値と閾値との差異に係数を乗した値を減算する。ウォールフィルタ通過後のドプラ信号(血流信号)に血流成分ではない主にクラッタ等の低周波成分が残留していたとき、クラッタ成分は血流成分よりも高パワーを示すから、平均パワー値は閾値よりも高い値を示す。平均パワー値を計算した画素各々のパワー値から、平均パワー値と閾値との差異に係数を乗した値を減算することで、クラッタを主とする残留成分がモーションアーティファクトとして、パワーのグレースケール表示において画像表示画面を最大表示階調の真っ白に埋めてしまうという事態を回避して、表示の階調範囲内での変化に抑えることができる。そのためプローブを動かした時に多く発生する残留成分が本質的に備えている組織形態が、濃淡変化として表示されることができる。
【0018】
このパワー補正について以下詳細に説明する。上述の通り、ここでは血流のパワーを表示してグレースケールで表示する。また、超音波の送信および受信の条件としては、通常のカラードプラの条件ではなく、Bモードに近い条件で行うのが望ましい。入力バッファ61に保持されたIQ信号は、同じ位置からの信号列に並びかえられてウォールフィルタ62に出力される。ウォールフィルタ62ではそのハイパス特性により固定信号や動きの遅い主にクラッタ信号が除去される。ウォールフィルタ62の出力信号はパワー計算部65にて絶対値の2乗を取った後にパワー加算部65にてパケット内のデータが加算され、ログ圧縮部67でログ圧縮される。このログ圧縮後のパワー信号は平均パワー計算部68でフレーム内又は局所領域内でその平均パワーが算出される。パワー補正部69では以下の補正処理が行われる。
【0019】
ある画素(場所)のパワー値:Pin
平均パワー値:Pm
閾値:Pth
ゲイン補正係数:a
補正後のパワー値:Pout
とし、
Pout = Pin (Pm ≦ Pthの場合)
Pout = Pin − a×(Pm − Pth) (Pm > Pthの場合)
で出力する。
【0020】
ここで、表示最大階調に対応するパワー値をDmaxとすると、
Pth = Dmax / 2
a = 0.75〜1.0
程度の値が好適である。
【0021】
このパワー値は、座標変換部7にて座標変換された後にモニタ9に表示される。表示はグレースケール表示が適している。
【0022】
このようなパワー補正処理は、次に示す効果を奏する。
説明の便宜上、補正式を、Pout = Pin − C という形で表現すると、Cはゲイン補正値であり、Cの値は図3に示すグラフで示すことができる。モーションアーティファクトがない場合にはウォールフィルタ62によって組織からのクラッタ信号が十分に抑圧されているので、平均パワーは表示の最大値よりも十分に小さい値となる。そのために、Pm ≦ Pth となり、上述の通り、パワー補正部69からの出力値は入力値と同じになる。例えばプローブ3が動いてモーションアーティファクトが発生した場合には組織からのクラッタ信号が十分に抑圧されないでウォールフィルタ62を通過してしまい、その範囲は画面全体に及ぶ。そのために平均パワー値が Pm > Pth となり、Pout = Pin − a×(Pm − Pth) という値に補正される。この出力は、ログ圧縮した信号からの減算になるので、元のリニア軸上でのパワー信号に対してゲインを下げた処理と実質的に等価な処理になる。ウォールフィルタ62を通過したモーションアーティファクトは組織からのクラッタ信号であるので、実質的にはBモード信号と等価である。血流を表示する条件ではゲインが高いので、モーションアーティファクトはほぼ最大表示階調となって真っ白に表示される。しかし、本実施形態の補正処理によってゲインが実質的に下げられるので、モーションアーティファクトが発生した場合にはBモードの場合と同様な組織形態像として表示されるようになる。これによって、プローブ3を停止している場合には血流のパワーが表示され、プローブ3を動かしている場合には組織形態像が表示されるようになる。
【0023】
なお、上記の説明ではフレーム全体の平均パワー値を求めたが、フレームを複数の局所領域(ブロック)に分割して各ブロック毎の平均パワーを求め、各ブロック毎に上記補正処理を行っても良い。ブロックはオーバーラップさせ、オーバーラップした部分では両者の重みを連続的に変化させることでブロック間の不連続性を低減することができる。
【0024】
上述の説明では、ドプラモードにおいて超音波送受信を各超音波走査線に対して一定の周期(1/PRF)で5乃至16回の所定回数繰り返し超音波走査線を順次移動していくとの走査手順を例示した。しかし、図4に示すような走査手順を採用しても良い。この走査手順では、走査対象の被検体内部領域(フレーム)を構成する複数の超音波走査線各々について超音波を1回ずつ送受信しながら、超音波走査線を順次移動する。このフレームを一通り走査する単位走査を、連続的に繰り返していく。この走査手順は、Bモードスキャンと同等である。そして、フレーム間の同じ位置からのデータ列をパケットとして使用する。この走査手順では、各超音波走査線に対して一定のフレーム走査周期で繰り返し継続的に送受信が行われる。ウォールフィルタ62に4次IIRフィルタを採用することができる。入力バッファ61には現在から最低4フレーム前までのデータが記憶される。同じ位置からの信号に対して、次式で表されるIIRフィルタを掛ける。
【0025】
y(n) = b0*x(n) + b1*x(n-1) + b2*x(n-2) + b3*x(n-3) + b4*x(n-4)
+ a1*y(n-1) + a2*y(n-2) + a3*y(n-3) + a4*y(n-4)
ここで、x(n)とは現在のフレームのIQ信号、x(n-1)は1フレーム前のIQ信号である。y(n)はウォールフィルタ62の出力で、y(n-1)は1フレーム前、・・・、のウォールフィルタ出力である。前述の通常の操作手順では、パケット長が送受信繰り返し回数である5乃至16に制限されていたために、IIRフィルタを採用したとき過渡応答が発生し、そのために、最初の2〜4データは使用することができない。それに対して、この走査手順ではデータは無限長で連続して入って来るので過渡応答の問題が発生しない。また、IIRフィルタの次数を任意に増やすことが可能である。そのために、従来に比べてウォールフィルタ62の性能が改善する。
【0026】
次に、パワー計算部65でパワーを計算し、パワー加算部66で連続した任意の枚数のフレーム間で移動平均を取る。パワー加算の回数を任意に設定できるのも本走査手順の利点の1つある。以降は前述と同様の処理を行う。
【0027】
このような走査手順では、パルス繰り返し周波数(PRF)はフレームレートと同じになり、前述した各超音波走査線ごとに送受信を繰り返す通常の走査手順に比べてかなり低く抑えることができる。そのために、低流速の血流まで観察可能である。一方、組織の動きによるモーションアーティファクトも発生しやすい。そのままモーションアーティファクトが表示されると、パワー値が大きいために、画面全体が真っ白に表示されてしまう。本走査手順のもとでは、モーションアーティファクトが発生すると、平均パワー値PmがPthよりも大きくなるので、元のパワー値から平均パワー値Pmに依存した値だけ減算される。ログ圧縮後の減算なのでリニア軸では実質的に除算処理と等価となり、自動的にゲインが下げられた効果が得られる。モーションアーティファクトは組織からのエコー信号なので、ゲインを下げられた画像は組織の画像つまりBモードと同等の画像となり、違和感なくスキャンを続けることができる。
【0028】
また次のようなドプラ走査とBモード走査とを併用することも可能である。上述の2種の走査手順では、血流のパワー表示のみを行うことを前提としてドプラ走査がそれ単独で行われた。図5に示す走査手順では、超音波を1回送受信毎に超音波走査線を変更しながら内部領域を一通り走査するドプラモード用の送受信条件のもとで単位走査を繰り返し、この単位走査の繰り返しの中で所定回数に1度の頻度、図5の例では5回の1度の頻度で、ドプラモード用の送受信条件からBモード用の送受信条件に切り換えて、Bモード用の送受信条件のもとで単位走査を1乃至2回だけ挿入する。Bモード用の送受信条件は、ドプラモード用の送受信条件と比べて、送信の中心周波数が低く、かつ超音波走査線本数が多く、視野角が広く、そして視野深度が深い。
【0029】
この走査手順では、血流のパワー表示を行うのと同時に通常のBモード像を表示することができる。その具体的な方法としては2通りある。
【0030】
1つ目の方法としては、同じ反射信号を、Bモード像処理と血流のパワー表示処理とで共用する。表示は重畳表示しても良いし、別々の2画面で表示しても良い。この方法は、ドプラモード用の送受信条件をBモード用の送受信条件に切り換えることなく、ドプラモード用の送受信条件に固定した状態で単位走査を繰り返すので、Bモード像のS/N、視野角、視野深度の点で振りである。
【0031】
2つ目の方法としては、上述したとおり、Bモード像と血流像を同じ反射信号で共用するのではなく、別々の送受信条件のもとで送受信を行って、それぞれに最適化された信号を使用する。走査手順については、図5に示したように、ドプラモードの単位走査の5回に1回の頻度で、Bモード用の送受信条件のもとでBモード走査を行う。このBモード走査期間の血流用のデータは当然にして欠落するが、この期間の血流データは、図6に示すように、Bモード走査期間に前後にわたって隣接するドプラ走査により収集した血流データから推定し補間する。推定の方法としては、最小2乗法で行う。両側のそれぞれ4データ、合計8データから多項式近似(例えば4次多項式近似)を行い、最小2乗法によって係数を推定して中央のデータを推定する。このように欠落したデータを推定により埋めることで、連続したデータとして扱うことが可能になる。尚、この方法を使用するためには、Bモード用のフレームの走査時間と血流用のフレームの走査時間が同じか整数倍である必要がある。
【0032】
なお、走査時間が整数倍でないときは、無限長のデータを簡単な構成で活用できるIIR型のウォールフィルタを使用することができないが、最小二乗法を用いたウォールフィルタなら使用することができる。
【0033】
このようにして、Bモード用の信号と血流用の信号を別々に得て処理を行い、1つ目の方法と同様な方法で2画面表示あるいは重畳表示を行う。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成画素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成画素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成画素から幾つかの構成画素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成画素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…制御部、2…送信回路、3…超音波プローブ、4…受信回路、5…Bモード処理部、6…カラードプラ処理部、7…座標変換部、8…画像合成処理部、9…モニタ、61…入力バッファ、62…ウォールフィルタ、63…自己相関部、64…平均速度/分散計算部、65…パワー計算部、66…パワー加算部、67…ログ圧縮部、68…平均パワー計算部、69…パワー補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体の内部領域を超音波で繰り返し走査する走査部と、
前記走査により得られた反射信号からドプラ効果による血流信号を抽出し、前記血流信号のパワーに関する空間分布を表す血流画像を繰り返し発生する画像発生部と、
前記血流画像のフレーム全域又は局所領域毎にパワー平均値を計算する平均値計算部と、
前記パワー平均値が閾値を超える値を示す画素のパワー値には前記パワー平均値と前記閾値とに従って実質的にゲインを下げる処理を施し、前記パワー平均値が閾値以下を示す画素のパワー値は前記パワー値を維持するゲイン処理部とを具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体の内部領域を超音波で繰り返し走査する走査部と、
前記走査により得られた反射信号からドプラ効果による血流信号を抽出し、前記血流信号のパワーに関する空間分布を表す血流画像を繰り返し発生する画像発生部と、
前記血流画像の各画素のパワー値をログ圧縮するログ圧縮部と、
前記ログ圧縮された血流画像のフレーム全域又は局所領域毎にパワー平均値を計算する平均値計算部と、
前記パワー平均値が閾値を超える値を示す画素のパワー値から、前記パワー平均値と前記閾値との差異に応じた値を減算する処理を施し、前記パワー平均値が閾値以下を示す画素のパワー値は前記パワー値を維持する減算処理部とを具備することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
前記走査部は、前記超音波を1回送受信毎に超音波走査線を変更しながら前記内部領域を一通り走査する走査を繰り返すことを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記走査部は、前記超音波を1回送受信毎に超音波走査線を変更しながら前記内部領域を一通り走査する単位走査を繰り返し、前記単位走査の繰り返しの中で所定回数に1度の頻度でドプラモード用の送受信条件からBモード用の送受信条件に切り換えることを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記Bモード用の送受信条件への切り換えにより欠落する血流画像を前記ドプラモード用の送受信条件のもとで収集される血流画像から最小2乗法により推定し補間する補間処理部をさらに備えることを特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記走査部は、前記内部領域を3次元走査手順により走査することを特徴とする請求項1又は2記載の超音波診断装置。
【請求項7】
超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して被検体の内部領域を超音波で繰り返し走査する走査部と、
前記走査により得られた反射信号から画像を繰り返し発生する画像発生部とを具備し、
前記走査部は、前記超音波を1回送受信毎に超音波走査線を変更しながら前記内部領域を一通り走査する単位走査を繰り返し、前記単位走査の繰り返しの中で所定回数に1度の頻度でドプラモード用の送受信条件からBモード用の送受信条件に切り換えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
前記Bモード用の送受信条件への切り換えにより欠落する血流画像を前記ドプラモード用の送受信条件のもとで収集される血流画像から最小2乗法により推定し補間する補間処理部をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−254862(P2011−254862A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129409(P2010−129409)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】