説明

超音波診断装置

【課題】操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮すること。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、送受信条件決定部16aと、取得部16bと、調整部16cとを備える。送受信条件決定部16aは、速度情報の抽出部位であるレンジゲートが設定された場合に、当該レンジゲートの位置に基づいて、超音波プローブにて送受信される超音波の送信条件及び受信条件を決定する。取得部16bは、少なくとも受信条件が決定された後に、レンジゲートの位置からの超音波の反射波に由来する信号と自装置のシステムノイズとを識別するためのシステムノイズレベルを取得する。調整部16cは、システムノイズレベルが取得された後に、当該システムノイズレベルを用いて識別された反射波信号により生成されるレンジゲートのドプラスペクトラムを表示させるための表示用パラメータを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波診断装置では、超音波の反射波から抽出されるドプラ信号を用いて血流情報を生成表示することが行なわれている。超音波診断装置により生成表示される血流情報としては、カラードプラ画像や、血流速度の時系列に沿った変化を示すドプラスペクトラムがある。ドプラスペクトラムは、血流情報の観察部位として操作者が設定したレンジゲートにおける血流速度を時系列に沿ってプロットした波形であり、レンジゲートは、Bモード画像やMモード画像、カラードプラ画像を参照した操作者により血管像上に設定される。
【0003】
ここで、生体の血流速度は、診断する部位や生体のコンディションなどによって異なり、流速レンジの設定やベースラインの位置によっては、信号が折りかえって表現されたり、表示画面の割合に対して非常にドプラスペクトラムが小さく見えてしまったりする場合がある。このため、超音波診断装置の中には、ドプラスペクトラムを的確に表示するための表示用パラメータを自動調整する機能を有する装置もある。具体的には、かかる超音波診断装置では、ドプラスペクトラムに折りかえりが起きず、かつ、ドプラスペクトラムが表示画面の割合に対して適切な大きさとなり、かつ、適切な輝度でドプラスペクトラムを表示するための表示用パラメータが自動調整される。調整される表示用パラメータとしては、繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)や、ドプラスペクトラムにおいて速度が「0」の位置を示すベースラインの位置や、ドプラスペクトラムの輝度を調整するためのゲイン値が挙げられる。
【0004】
上述した表示用パラメータの自動調整は、レンジゲートを設定した操作者が、例えば、自動調整機能スイッチをONにすることで実行されるが、表示用パラメータの自動調整を行なう際には、的確な表示用パラメータを調整するために、設定されたレンジゲートの位置に対応するシステムノイズレベルを予め測定する必要がある。ここで、システムノイズレベルは、信号とノイズとを識別するための閾値として用いられる。すなわち、超音波診断装置は、システムノイズレベルを測定した後、システムノイズレベルを用いて信号として識別されたデータを用いて生成されるドプラスペクトラムの表示用パラメータを調整する。これにより、操作者は、観察しやすい波形となったドプラスペクトラムを参照して、血流速度の計測などを実行することができる。
【0005】
以下、図12を用いて従来の超音波診断装置が実行する表示用パラメータの調整処理を説明する。図12は、従来の超音波診断装置が実行する表示用パラメータの調整処理を説明するためのフローチャートである。
【0006】
図12に示すように、従来の超音波診断装置は、Bモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS1)。ここで、Bモードのスキャン開始要求を受け付けない場合(ステップS1否定)、従来の超音波診断装置は、待機状態となる。なお、ステップS1の判定は、Mモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する場合であってもよい。
【0007】
一方、Bモードのスキャン開始要求を受け付けた場合(ステップS1肯定)、従来の超音波診断装置は、Bモード画像を生成して、生成したBモード画像を表示する(ステップS2)。そして、従来の超音波診断装置は、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS3)。ここで、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けない場合(ステップS3否定)、従来の超音波診断装置は、ステップS2に戻って、新たに生成されたBモード画像を表示する。
【0008】
一方、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けた場合(ステップS3肯定)、従来の超音波診断装置は、カラードプラ画像を生成して、生成したカラードプラ画像を表示する(ステップS4)。そして、従来の超音波診断装置は、ドプラスペクトラムを生成するためのレンジゲートが設定されたか否かを判定する(ステップS5)。ここで、レンジゲートが設定されない場合(ステップS5否定)、従来の超音波診断装置は、ステップS4に戻って、新たに生成されたカラードプラ画像を表示する。
【0009】
一方、レンジゲートが設定された場合(ステップS5肯定)、従来の超音波診断装置は、当該レンジゲートにおけるドプラスペクトラムを生成し、生成したドプラスペクトラムを表示する(ステップS6)。具体的には、従来の超音波診断装置は、設定されたレンジゲートの位置に応じて超音波の送受信条件を決定し、決定した超音波の送受信条件に基づいて超音波の送受信を行うことで、レンジゲートの反射波データを生成する。そして、従来の超音波診断装置は、生成したレンジゲートの反射波データを用いてドプラデータを生成し、ドプラスペクトラムを生成する。
【0010】
そして、従来の超音波診断装置は、自動調整ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS7)。ここで、自動調整ボタンが押下されない場合(ステップS7否定)、従来の超音波診断装置は、ステップS6に戻って、新たに生成されたドプラスペクトラムを表示する。
【0011】
一方、自動調整ボタンが押下された場合(ステップS7肯定)、従来の超音波診断装置は、システムノイズレベルを取得し(ステップS8)、表示用パラメータの調整を開始する(ステップS9)。そして、従来の超音波診断装置は、表示用パラメータの調整が終了したか否かを判定する(ステップS10)。ここで、表示用パラメータの調整が終了していない場合(ステップS10否定)、従来の超音波診断装置は、表示用パラメータの調整が終了するまで、次の処理を行なわずに待機する。
【0012】
一方、表示用パラメータの調整が終了した場合(ステップS10肯定)、従来の超音波診断装置は、システムノイズレベルにより信号と識別された反射波データから、表示用パラメータに基づくドプラスペクトラムを順次生成し、表示用パラメータに基づくドプラスペクトラムを順次表示して(ステップS11)、処理を終了する。そして、操作者は、ドプラスペクトラムを用いて、レンジゲートにおける血流速度や血流量などの各種計測を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−175069号公報
【特許文献2】米国特許第6579238号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、上記した従来の技術では、システムノイズレベルを取得した後に表示用パラメータの自動調整が行なわれるので、自動調整が完了するタイミングが、操作者が自動調整したいタイミングよりも遅れてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態の超音波診断装置は、送受信条件決定部と、取得部と、調整部とを備える。送受信条件決定部は、移動体の時系列に沿った速度情報を示すドプラスペクトラムを生成するために、当該速度情報の抽出部位であるレンジゲートが設定された場合に、当該レンジゲートの位置に基づいて、超音波プローブにて送受信される超音波の送信条件及び受信条件を決定する。取得部は、前記送受信条件決定部により少なくとも前記受信条件が決定された後に、前記レンジゲートの位置からの超音波の反射波に由来する信号と自装置のシステムノイズとを識別するためのシステムノイズレベルを取得する。調整部は、前記取得部により前記システムノイズレベルが取得された後に、当該システムノイズレベルを用いて識別された反射波信号により生成される前記レンジゲートのドプラスペクトラムを所定の表示部にて表示させるための表示用パラメータとして、繰り返し周波数、ベースラインの位置及びドプラスペクトラムの輝度を決定するためのゲイン値を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。
【図2】図2は、ドプラスペクトラムの一例を説明するための図である。
【図3】図3は、表示用パラメータを説明するための図である。
【図4】図4は、本実施形態に係る制御部の構成を説明するための図である。
【図5】図5は、システムノイズレベルを説明するための図である。
【図6】図6は、本実施形態に係る送受信条件決定部及び取得部の処理が実行される具体例を説明するための図である。
【図7】図7は、ブランキング期間における本実施形態に係る送受信条件決定部及び取得部の処理を説明するための図である。
【図8】図8は、ブランキング期間後の本実施形態に係る調整部の処理を説明するための図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】図10は、ブランキング期間及びブランキング期間後に行なわれていた従来の処理を説明するための図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る変形例を説明するための図である。
【図12】図12は、従来の超音波診断装置が実行する表示用パラメータの調整処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、超音波診断装置の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態)
まず、本実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0019】
超音波プローブ1は、複数の圧電振動子を有し、これら複数の圧電振動子は、後述する装置本体10が有する送受信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、圧電振動子に設けられる整合層及び音響レンズ、圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材などを有する。超音波プローブ1は、装置本体10と着脱自在に接続される。
【0020】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移(ドプラ偏移)を受ける。
【0021】
なお、本実施形態は、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを2次元でスキャンする場合であっても、1次元超音波プローブの複数の圧電振動子を機械的に揺動する超音波プローブ1や複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである超音波プローブ1により、被検体Pを3次元でスキャンする場合であっても、適用可能である。
【0022】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボールなどを有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0023】
例えば、操作者は、本実施形態に係る入力装置3が有するトラックボールを用いて、レンジゲートの設定を行なう。また、操作者は、本実施形態に係る入力装置3が有する表示用パラメータの自動調整ボタンを押下することで、表示用パラメータの調整要求を行なう。なお、レンジゲート及び表示用パラメータについては、後に詳述する。
【0024】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像などを表示したりする。
【0025】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体10は、図1に示すように、送受信部11と、Bモード処理部12と、ドプラ処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、制御部16と、内部記憶部17とを有する。
【0026】
送受信部11は、トリガ発生回路、送信遅延回路およびパルサ回路などを有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。パルサ回路は、所定の繰り返し周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。なお、PRFは、レート周波数とも呼ばれる。また、送信遅延回路は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの送信遅延時間を、パルサ回路が発生する各レートパルスに対し与える。また、トリガ発生回路は、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。すなわち、送信遅延回路は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向を任意に調整する。
【0027】
なお、送受信部11は、後述する制御部16の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧などを瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0028】
また、送受信部11は、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、加算器などを有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。アンプ回路は、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換する。受信遅延回路は、デジタルデータに受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間を与える。加算器は、受信遅延回路により受信遅延時間が与えられた反射波信号の加算処理を行なって反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。
【0029】
ここで、送信遅延時間及び受信遅延時間は、超音波ビームの送信フォーカス及び受信フォーカスの音響レンズからの位置(深さ)によって決定され、送受信部11は、送信遅延時間及び受信遅延時間を用いることで、超音波の送受信における送信指向性と受信指向性とを制御する。
【0030】
また、本実施形態にかかる超音波プローブ1は、送信フォーカス及び受信フォーカスの位置に応じて、送受信に用いる圧電振動子(送信用口径及び受信用口径)を変更することが可能である。例えば、近い位置からの反射波信号を受信する際には、強い受信フォーカスをかけるために、受信する振動子の数を少なくしておき、中央部分の圧電振動子で受信した反射波信号のみが超音波画像の生成に用いられるように、小さな受信用口径が受信条件として決定される。また、遠い位置からの反射波信号を受信する際には、圧電振動子の口径が大きいほど受信フォーカスを強くできるので、距離に応じて受信用口径を大きくするように受信条件が決定される。
【0031】
Bモード処理部12は、送受信部11から反射波データを受信し、対数増幅、包絡線検波処理などを行なって、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0032】
ドプラ処理部13は、送受信部11から受信した反射波データから速度情報を周波数解析することでドプラ偏移を抽出し、ドプラ偏移を用いることで、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワーなどの移動体情報を多点について抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。
【0033】
なお、本実施形態に係るBモード処理部12およびドプラ処理部13は、2次元の反射波データおよび3次元の反射波データの両方について処理可能である。
【0034】
画像生成部14は、Bモード処理部12及びドプラ処理部13が生成したデータから超音波画像を生成する。すなわち、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度にて表したBモード画像を生成する。あるいは、画像生成部14は、Bモード処理部12が生成した所定のスキャンラインにおけるBモードデータから、所定のスキャンラインにおける反射波強度の時系列に沿った変化を輝度にて表したMモード画像を生成する。
【0035】
また、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから移動体情報(血流情報や組織の移動情報)を表す平均速度画像、分散画像、パワー画像、又は、これらの組み合わせ画像としてのカラードプラ画像を生成する。
【0036】
更に、画像生成部14は、ドプラ処理部13が生成したドプラデータから、移動体の速度情報(血流の速度情報や組織の速度情報)を時系列に沿ってプロットしたドプラスペクトラムを生成する。図2は、ドプラスペクトラムの一例を説明するための図である。
【0037】
例えば、図2に示すように、操作者は、カラードプラ画像で認められる血流が存在する領域にて、血流速度を観察したい部位としてレンジゲートaを設定する。かかる場合、画像生成部14は、図2に示すように、レンジゲートaにおけるドプラ偏移から抽出される血流速度(レンジゲート内で抽出された血流速度分布)を時系列に沿ってプロットしたドプラスペクトラムAを生成する。
【0038】
また、画像生成部14は、超音波画像に、種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマークなどを合成した合成画像を生成することもできる。
【0039】
図1に戻って、画像メモリ15は、画像生成部14が生成した超音波画像を記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、Bモード処理部12やドプラ処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。
【0040】
内部記憶部17は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行なうための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見など)や、診断プロトコルや各種ボディーマークなどの各種データを記憶する。また、内部記憶部17は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像の保管などにも使用される。また、内部記憶部17が記憶するデータは、図示しないインターフェースを経由して、外部の周辺装置へ転送することができる。
【0041】
制御部16は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部16は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部17から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送受信部11、Bモード処理部12、ドプラ処理部13、画像生成部14の処理を制御する。また、制御部16は、画像メモリ15が記憶する超音波画像や、画像生成部14により行われる各種処理を指定するためのGUIなどをモニタ2にて表示するように制御する。
【0042】
以上、本実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、本実施形態に係る超音波診断装置は、操作者が設定したレンジゲートにおけるドプラスペクトラムを生成し、生成したドプラスペクトラムを表示する。
【0043】
ここで、生体の血流速度は、診断する部位や生体のコンディションなどによって異なり、流速レンジの設定やベースラインの位置によっては、信号が折りかえって表現されたり、表示画面の割合に対して非常にドプラスペクトラムが小さく見えてしまったりする場合がある。このため、本実施形態に係る超音波診断装置は、従来の超音波診断装置と同様に、ドプラスペクトラムを的確に表示するための表示用パラメータを自動調整する機能を有する。図3は、表示用パラメータを説明するための図である。
【0044】
例えば、本実施形態に係る超音波診断装置は、図3の(A)に示すように、生成したドプラスペクトラムに折りかえりが発生した場合、操作者からの要求に応じて、表示用パラメータを調整する。ここで、折りかえりは、PRFを大きくすることで、解消することが出来るが、PRFが大きくなるとドプラスペクトラムにて表示される血流速度の流速レンジが大きくなるため、ドプラスペクトラムの波形は、縦方向に縮小される。かかる場合のドプラスペクトラムは、操作者にとって観察しにくい。また、折りかえりは、ドプラスペクトラムにおいて速度が「0」の位置を示すベースラインの位置をシフトすることで、解消されるが、血流速度の値が大きいと、ベースラインの位置をシフトしても、折りかえりが解消されない場合がある。
【0045】
すなわち、ドプラスペクトラムに折りかえりが起きず、かつ、ドプラスペクトラムが表示画面の割合に対して適切な大きさとするためには、PRF及びベースラインの位置双方を調整する必要がある。また、操作者にとって観察しやすいドプラスペクトラムを表示するためには、PRF及びベースラインの位置とともに、ドプラスペクトラムの輝度を調整するためのゲイン値を調整する必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置は、例えば、操作者が自動調整ボタンを押下することで入力された表示用パラメータの自動調整の要求を受け付けた場合、図3の(B)に示すように、表示用パラメータとして、PRF、ベースラインの位置及びゲイン値を調整する。これにより、本実施形態に係る超音波診断装置は、図3の(C)に示すように、折りかえりが起きず、かつ、表示画面の割合に対して適切な大きさとなり、かつ、適切な輝度となったドプラスペクトラムを生成表示する。
【0047】
ただし、表示用パラメータの自動調整を行なうためには、設定されたレンジゲートの位置に応じて、システムノイズレベルを予め取得しておく必要がある。従来の超音波診断装置は、表示用パラメータの自動調整の要求を受け付けた後に、システムノイズレベルを取得し、その後、表示用パラメータの自動調整を行なっていた。すなわち、従来の超音波診断装置では、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムが表示されるタイミングが操作者の要望するタイミングより遅延してしまっていた。
【0048】
そこで、本実施形態に係る超音波診断装置は、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮するために、以下に説明する制御部16の処理を実行する。図4は、本実施形態に係る制御部の構成を説明するための図である。
【0049】
図4に示すように、本実施形態に係る制御部16は、送受信条件決定部16aと、取得部16bと、調整部16cとを有する。
【0050】
送受信条件決定部16aは、移動体の時系列に沿った速度情報を示すドプラスペクトラムを生成するために、当該速度情報の抽出部位であるレンジゲートが設定された場合に、当該レンジゲートの位置に基づいて、超音波プローブ1にて送受信される超音波の送信条件及び受信条件を決定する。具体的には、送受信条件決定部16aは、少なくとも送信条件として送信時に用いられる超音波プローブ1の口径(送信用口径)及び送信遅延時間を決定する。また、送受信条件決定部16aは、少なくとも受信条件として受信時に用いられる超音波プローブ1の口径(受信用口径)及び受信遅延時間を決定する。
【0051】
ここで、システムノイズレベルとレンジゲートの位置(深さ)との関係について、図5を用いて説明する。図5は、システムノイズレベルを説明するための図である。システムノイズレベルは、図5に示すように、レンジゲートの位置(深さ)に応じて変化する。すなわち、システムノイズレベルは、図5に示すように、レンジゲートの位置が深くなるにつれて、順次大きくなり、その後、一定値に近づく。
【0052】
また、前述したように、送受信条件決定部16aにより決定される受信用口径は、レンジゲートが音響レンズに対して浅い位置に設定された場合、小さくなり、レンジゲートが音響レンズに対して深い位置に設定された場合、大きくなる。すなわち、レンジゲートの位置と、受信用口径とは、一対一の関係にある。すなわち、図5に示すように、システムノイズレベルの値は、レンジゲートの位置と一対一の関係にある受信用口径の大きさにより定まる値となる。従って、システムノイズレベルは、受信条件において受信用口径が決定されれば、超音波の送信を停止したうえで、受信条件に基づく口径でデータを受信することで、取得することが可能である。
【0053】
そこで、図4に示す取得部16bは、送受信条件決定部16aにより少なくとも受信条件が決定された後に、レンジゲートの位置からの超音波の反射波に由来する信号と自装置のシステムノイズとを識別するためのシステムノイズレベルを取得する。
【0054】
具体的には、取得部16bは、超音波プローブ1からの超音波送信を停止したうえで、送受信条件決定部16aにより決定された受信条件に基づいて受信したデータを用いてシステムノイズレベルを取得する。
【0055】
より具体的には、取得部16bは、送受信条件決定部16aにより受信条件が決定された後に、システムノイズレベルを取得する。そして、送受信条件決定部16aは、取得部16bによるシステムノイズレベルの取得期間に並行して送信条件を決定する。
【0056】
以下、図6に例示するレンジゲートの位置が変更された場合を一例として、送受信条件決定部16a及び取得部16bの処理を説明する。図6は、本実施形態に係る送受信条件決定部及び取得部の処理が実行される具体例を説明するための図である。
【0057】
図6に示す具体例では、操作者がレンジゲートの位置をレンジゲートaからレンジゲートbに遷移した場合を例示している。かかる場合、モニタ2に表示されるドプラスペクトラムは、ドプラスペクトラムAからドプラスペクトラムBに切り替わるが、ドプラスペクトラムAからドプラスペクトラムBへ表示が切り替わる間には、信号が何も表示されないブランクされた状態の区間が表示される。以下、ブランクされた状態の区間をブランキング期間と呼ぶ。
【0058】
ブランキング期間は、レンジゲートbでのドプラスペクトラムBを生成表示するための準備期間でもある。従来では、ブランキング期間にて、送信条件及び受信条件の決定が任意の順番で行なわれていた。図7は、ブランキング期間における本実施形態に係る送受信条件決定部及び取得部の処理を説明するための図である。
【0059】
しかし、本実施形態では、図7に示すように、レンジゲートの設定(レンジゲートa2の設定)をトリガとして、ブランキング期間において、まず、送受信条件決定部16aが、受信用の口径を含む受信条件を決定する。そして、本実施形態では、図7に示すように、取得部16bが受信用口径を用いてシステムノイズレベルを取得し、システムノイズレベルの取得と並行して、送受信条件決定部16aが送信用の口径を含む送信条件を決定する。
【0060】
すなわち、送受信条件決定部16aは、決定した受信条件を送受信部11に通知する。そして、取得部16bは、超音波プローブ1からの超音波送信を停止したうえで、超音波プローブ1の受信用口径での受信を行う旨の指示を送受信部11に行なう。これにより、送受信部11は、超音波プローブ1の受信用口径で受信された信号を受信遅延時間に基づいて加算することでシステムノイズレベルを算出するためのデータを生成する。そして、取得部16bは、送受信部11から送信されたデータを用いてシステムノイズレベルを取得する。例えば、取得部16bは、送受信部11から受信したデータの中で、所定ライン数のスキャンラインに対応するデータをFFT解析することで、システムノイズレベルを取得する。
【0061】
このように、本実施形態に係る超音波診断装置は、ブランキング期間において、送受信条件の決定及びシステムノイズレベルの取得を行なう。そして、図4に示す調整部16cは、取得部16bによりシステムノイズレベルが取得された後に、当該システムノイズレベルを用いて識別された反射波信号(反射波データ)により生成されるレンジゲートのドプラスペクトラムをモニタ2にて表示させるための表示用パラメータとして、PRF、ベースラインの位置及びドプラスペクトラムの輝度を決定するためのゲイン値を調整する。
【0062】
すなわち、送受信条件決定部16aは、操作者が設定したレンジゲートの位置に基づく送受信条件を図1に示す送受信部11に通知し、送受信部11は、送受信条件決定部16aから通知された送受信条件を用いて、超音波プローブ1における超音波の送受信を制御する。図8は、ブランキング期間後の本実施形態に係る調整部の処理を説明するための図である。
【0063】
これにより、図8に示すように、ブランキング期間が終了し、超音波プローブ1は、設定されたレンジゲートに応じた超音波の送受信を開始する。そして、調整部16cは、図8に示すように、操作者が自動調整ボタンを押下したタイミングをトリガタイミングとして、表示用パラメータの調整を行なう。
【0064】
そして、調整部16cは、調整したPRFを送受信部11に送信する。そして、送受信部11の制御により超音波プローブ1は、調整部16cにより調整されたPRF及び送受信条件決定部16aにより決定された送信条件により超音波を送信する。また、送受信部11の制御により超音波プローブ1は、送受信条件決定部16aにより決定された受信条件により超音波を受信する。そして、画像生成部14は、システムノイズレベルにより信号と識別された反射波データから、ドプラスペクトラムを生成する。この際、画像生成部14は、調整部16cにより調整されたベースラインの位置及びゲイン値を用いて、ドプラスペクトラムを生成する。そして、モニタ2は、制御部16の制御により、調整済みのドプラスペクトラムを表示する。
【0065】
なお、本実施形態は、レンジゲートが設定された後のブランキング期間において、送受信条件が決定された後にシステムノイズレベルを取得する場合であっても適用可能である。ただし、レンジゲートが設定された後に操作者が行なうことが想定される表示用パラメータの自動調整要求に即座に対応するためには、レンジゲートが設定された後の準備期間を短縮するために、受信条件の決定処理を行なった後にシステムノイズレベル取得処理及び送信条件の決定処理を並列して行なうことが望ましい。
【0066】
次に、図9を用いて、本実施形態に係る超音波診断装置の処理について説明する。図9は、本実施形態に係る超音波診断装置の処理を説明するためのフローチャートである。
【0067】
図9に示すように、本実施形態に係る超音波診断装置は、Bモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。ここで、Bモードのスキャン開始要求を受け付けない場合(ステップS101否定)、本実施形態に係る超音波診断装置は、待機状態となる。なお、ステップS101の判定は、Mモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する場合であってもよい。
【0068】
一方、Bモードのスキャン開始要求を受け付けた場合(ステップS101肯定)、送受信部11を介した制御部16の制御により超音波プローブ1は、Bモードスキャンを開始する。これにより、画像生成部14は、Bモード画像を生成し、モニタ2は、制御部16の制御により、画像生成部14が生成したBモード画像を表示する(ステップS102)。そして、本実施形態に係る超音波診断装置は、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。ここで、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けない場合(ステップS103否定)、モニタ2は、制御部16の制御により、ステップS102に戻って、新たに生成されたBモード画像を表示する。
【0069】
一方、カラードプラモードのスキャン開始要求を受け付けた場合(ステップS103肯定)、送受信部11を介した制御部16の制御により超音波プローブ1は、カラードプラ画像生成用のスキャンを開始する。これにより、画像生成部14は、カラードプラ画像を生成し、モニタ2は、制御部16の制御により、画像生成部14が生成したカラードプラ画像を表示する(ステップS104)。そして、制御部16は、ドプラスペクトラムを生成するためのレンジゲートが設定されたか否かを判定する(ステップS105)。ここで、レンジゲートが設定されない場合(ステップS105否定)、モニタ2は、制御部16の制御により、ステップS104に戻って、新たに生成されたカラードプラ画像を表示する。
【0070】
一方、レンジゲートが設定された場合(ステップS105肯定)、送受信条件決定部16aは、設定されたレンジゲートの位置に基づいて、受信条件を決定する(ステップS106)。そして、取得部16bは、超音波プローブ1からの超音波送信を停止したうえで、受信条件として決定された受信用口径の圧電振動子で受信されたデータを用いてシステムノイズレベルを取得し、システムノイズレベルの取得と並行して、送受信条件決定部16aは、設定されたレンジゲートの位置に基づいて、送信条件を決定する(ステップS107)。
【0071】
その後、送受信部11を介した制御部16の制御により超音波プローブ1は、ドプラスペクトラム生成用のスキャンを開始する。これにより、画像生成部14は、ドプラスペクトラムを生成し、モニタ2は、制御部16の制御により、画像生成部14が生成したドプラスペクトラムを表示する(ステップS108)。
【0072】
そして、調整部16cは、表示用パラメータの調整を要求する操作者により自動調整ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS109)。ここで、自動調整ボタンが押下されない場合(ステップS109否定)、モニタ2は、制御部16の制御により、ステップS108に戻って、新たに生成されたドプラスペクトラムを表示する。
【0073】
一方、自動調整ボタンが押下された場合(ステップS109肯定)、調整部16cは、表示用パラメータの調整を開始する(ステップS110)。そして、制御部16は、調整部16cによる表示用パラメータの調整が終了したか否かを判定する(ステップS111)。ここで、表示用パラメータの調整が終了していない場合(ステップS111否定)、制御部16は、表示用パラメータの調整が終了するまで次の処理を行なわずに待機する。
【0074】
一方、表示用パラメータの調整が終了した場合(ステップS111肯定)、超音波プローブ1は、調整部16cにより調整されたPRFを受信した送受信部11の制御により、当該PRF及び送受信条件決定部16aにより決定された送信条件により超音波を送信し、また、送受信条件決定部16aにより決定された受信条件により超音波を受信する。そして、画像生成部14は、送受信部11が生成した反射波データ(システムノイズレベルにより信号と識別された反射波データ)と調整部16cにより調整されたベースラインの位置及びゲイン値とを用いて、表示用パラメータに基づくドプラスペクトラムを生成する。そして、モニタ2は、制御部16の制御により、画像生成部14が生成した表示用パラメータに基づくドプラスペクトラムを表示する(ステップS112)。
【0075】
続いて、制御部16は、レンジゲートが操作者により変更されたか否かを判定する(ステップS113)。ここで、レンジゲートが変更された場合(ステップS113肯定)、本実施形態に係る超音波診断装置は、ステップS106に戻って、送受信条件決定部16aによる受信条件の決定処理を行なう。
【0076】
一方、レンジゲートが変更されない場合(ステップS113否定)、制御部16は、ドプラスペクトラムの表示終了要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS114)。ここで、ドプラスペクトラムの表示終了要求を受け付けない場合(ステップS114否定)、モニタ2は、制御部16の制御によりステップS112に戻って、画像生成部14が新たに生成した表示用パラメータに基づくドプラスペクトラムを表示し、制御部16は、ステップS113において、レンジゲートが操作者により変更されたか否かを判定する。
【0077】
一方、ドプラスペクトラムの表示終了要求を受け付けた場合(ステップS114肯定)、本実施形態に係る超音波診断装置は、処理を終了する。
【0078】
上述してきたように、本実施形態では、送受信条件決定部16aは、移動体の時系列に沿った速度情報を示すドプラスペクトラムを生成するために、当該速度情報の抽出部位であるレンジゲートが設定された場合に、当該レンジゲートの位置に基づいて、超音波プローブにて送受信される超音波の送信条件及び受信条件を決定する。具体的には、送受信条件決定部16aは、少なくとも送信条件として送信時に用いられる超音波プローブ1の口径及び送信遅延時間を決定し、少なくとも受信条件として受信時に用いられる超音波プローブ1の口径及び受信遅延時間を決定する。
【0079】
ここで、取得部16bは、送受信条件決定部16aにより少なくとも受信条件が決定された後に、レンジゲートの位置からの超音波の反射波に由来する信号と自装置のシステムノイズとを識別するためのシステムノイズレベルを取得する。そして、調整部16cは、取得部16bによりシステムノイズレベルが取得された後に、当該システムノイズレベルを用いて識別された反射波信号により生成されるレンジゲートのドプラスペクトラムをモニタ2にて表示させるための表示用パラメータとして、繰り返し周波数、ベースラインの位置及びドプラスペクトラムの輝度を決定するためのゲイン値を調整する。具体的には、調整部16cは、入力装置3が有する自動調整ボタンが押下されることで操作者からの調整要求を受け付けた場合に表示用パラメータを調整する。
【0080】
従来では、例えば、図10に示すように、レンジゲートが設定されたタイミングをトリガとしてブランキング期間にて送受信条件が決定され、決定された送受信条件に基づいて、超音波プローブ1から超音波の送受信が行なわれていた。図10は、ブランキング期間及びブランキング期間後に行なわれていた従来の処理を説明するための図である。そして、図10に示すように、従来では、操作者が自動調整ボタンを押下したタイミングをトリガタイミングとして、システムノイズレベルの取得が行なわれた後に表示用パラメータの調整が行なわれていた。
【0081】
これに対して、本実施形態では、レンジゲートが設定されたことをトリガとしてシステムノイズレベルの取得に必要となる受信条件を決定し、その後、システムノイズレベルを取得する。これにより、本実施形態では、操作者が自動調整ボタンを押下したタイミングをトリガタイミングとして、純粋に自動調整機能だけを動作させることで、ただちに表示用パラメータの調整を行なうことができる。従って、本実施形態では、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、取得部16bは、超音波プローブ1からの超音波送信を停止したうえで、送受信条件決定部16aにより決定された受信条件に基づいて受信したデータを用いてシステムノイズレベルを取得する。
【0083】
ここで、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮するための方法としては、予めシステムノイズレベルを受信用口径ごとに取得して装置本体10内に格納しておく方法もある。しかし、かかる方法では、装置本体10と接続可能な超音波プローブごとに受信用口径によって変化するシステムノイズレベルを取得する必要があり、格納するデータ量が膨大となる。また、超音波プローブ1や装置本体10などの経時的劣化によってもシステムノイズレベルは変化する可能性がある。すなわち、システムノイズレベルをプリセットとして格納しておく方法は、実用的ではない。
【0084】
しかし、本実施形態では、レンジゲートが設定された時点での超音波プローブ1と被検体Pとの位置関係を維持したまま超音波送信を停止することで、生体内からの反射波が発生しない状態に移行して、システムノイズレベルを取得することが出来る。すなわち、本実施形態では、膨大なシステムノイズレベルのデータを保持することなく、かつ、現時点での撮影条件において正確なシステムノイズレベルを取得することが出来る。従って、本実施形態では、精度の高いドプラスペクトラムの生成を簡易に行なうことが可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、取得部16bは、送受信条件決定部16aにより受信条件が決定された後に、システムノイズレベルを取得し、送受信条件決定部16aは、取得部16bによるシステムノイズレベルの取得期間に並行して送信条件を決定する。
【0086】
すなわち、本実施形態では、ドプラスペクトラムの生成表示を行なうための準備期間を短縮することが可能となる。
【0087】
なお、上記した実施形態では、自動調整ボタンが押下されたことをトリガとして調整部16cの表示用パラメータ調整処理が実行される場合について説明した。しかし、本実施形態は、以下の変形例で説明するトリガにより、調整部16cの表示用パラメータ調整処理が実行される場合であってもよい。すなわち、変形例に係る調整部16cは、レンジゲートが設定された後に所定の時間(α)が経過した時点で表示用パラメータを調整する。図11は、本実施形態に係る変形例を説明するための図である。
【0088】
すなわち、本変形例においても、図11に示すように、レンジゲートの設定をトリガとして、ブランキング期間において、まず、送受信条件決定部16aが、受信用の口径を含む受信条件を決定する。そして、本変形例においても、図11に示すように、取得部16bが受信用口径を用いてシステムノイズレベルを取得し、システムノイズレベルの取得と並行して、送受信条件決定部16aが送信用の口径を含む送信条件を決定する。
【0089】
そして、本変形例では、図11に示すように、調整部16cは、レンジゲートの設定から所定の時間(α)が経過した時点をトリガタイミングとして、表示用パラメータの調整を行なう。本変形例によっても、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮することが可能となる。
【0090】
なお、上述した実施形態では、血流速度のドプラスペクトラムに係る表示用パラメータが調整される場合について説明した。しかし、本実施形態は、組織(例えば、心筋)の移動速度のドプラスペクトラムに係る表示用パラメータを調整する場合であっても適用可能である。
【0091】
以上、説明したとおり、本実施形態によれば、操作者が観察しやすい状態となったドプラスペクトラムの表示に要する時間を短縮することが可能となる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1 超音波プローブ
2 モニタ
3 入力装置
10 装置本体
11 送受信部
12 Bモード処理部
13 ドプラ処理部
14 画像生成部
15 画像メモリ
16 制御部
16a 送受信条件決定部
16b 取得部
16c 調整部
17 内部記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の時系列に沿った速度情報を示すドプラスペクトラムを生成するために、当該速度情報の抽出部位であるレンジゲートが設定された場合に、当該レンジゲートの位置に基づいて、超音波プローブにて送受信される超音波の送信条件及び受信条件を決定する送受信条件決定部と、
前記送受信条件決定部により少なくとも前記受信条件が決定された後に、前記レンジゲートの位置からの超音波の反射波に由来する信号と自装置のシステムノイズとを識別するためのシステムノイズレベルを取得する取得部と、
前記取得部により前記システムノイズレベルが取得された後に、当該システムノイズレベルを用いて識別された反射波信号により生成される前記レンジゲートのドプラスペクトラムを所定の表示部にて表示させるための表示用パラメータとして、繰り返し周波数、ベースラインの位置及びドプラスペクトラムの輝度を決定するためのゲイン値を調整する調整部と、
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記超音波プローブからの超音波送信を停止したうえで、前記送受信条件決定部により決定された前記受信条件に基づいて受信したデータを用いて前記システムノイズレベルを取得することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記送受信条件決定部により前記受信条件が決定された後に、前記システムノイズレベルを取得し、
前記送受信条件決定部は、前記取得部による前記システムノイズレベルの取得期間に並行して前記送信条件を決定することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送受信条件決定部は、少なくとも前記送信条件として送信時に用いられる前記超音波プローブの口径及び送信遅延時間を決定し、少なくとも前記受信条件として受信時に用いられる前記超音波プローブの口径及び受信遅延時間を決定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記調整部は、所定の入力部を介して操作者からの調整要求を受け付けた場合に前記表示用パラメータを調整する、又は、前記レンジゲートが設定された後に所定の時間が経過した時点で前記表示用パラメータを調整することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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