説明

超音波診断装置

【課題】超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブ内に配置され、振動子アレイから出力される受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を切り替える切替手段と、超音波プローブに設けられ、切替手段による電流値の切り替え操作を行なう切替スイッチとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置の超音波プローブ内における発熱量の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、振動子アレイから超音波を送信することで、振動子アレイから発熱が生じる。
ところが、通常、操作者が片手で超音波プローブを把持して振動子アレイの超音波送受信面を被検体の表面に当接しつつ診断を行うので、超音波プローブは操作者が片手で容易に把持し得る程度の小さな筺体内に収容されることが多い。このため、振動子アレイからの発熱により超音波プローブの筺体内が温度上昇することがある。
【0004】
また、近年、超音波プローブに信号処理のための回路基板を内蔵し、振動子アレイから出力された受信信号をデジタル処理した上で無線通信あるいは有線通信により装置本体に伝送することにより、ノイズの影響を低減して高画質の超音波画像を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
この種のデジタル処理を行う超音波プローブでは、受信信号の処理時においても回路基板からの発熱が生じ、回路基板の各回路の安定した動作を保証するために筺体内の温度上昇を抑制する必要がある。
【0005】
超音波プローブの温度上昇対策については、例えば、特許文献1に、超音波プローブの表面温度に応じて振動子アレイを駆動する条件を自動的に変化させる超音波診断装置が開示されている。表面温度が高くなるほど、超音波の送信時における振動子アレイの各トランスデューサの駆動電圧、送信開口数、送信パルスの繰り返し周波数、フレームレート等を低減することにより、超音波プローブの表面温度が適切な温度に維持される。
【0006】
また、特許文献2には、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止し、回路の発熱によるプローブの温度上昇を抑制する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−253776号公報
【特許文献2】特開2009−148424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、送信時の振動子アレイの駆動条件を変化させる特許文献1の装置では、上述したようなデジタル処理を行う超音波プローブにおける受信時の発熱に対処することができない。
また、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止する特許文献2の装置では、デジタル処理を行う超音波プローブにおける受信時の発熱を低減することができるものの、これらの所定期間の割合は、稼働時間に対して総じて小さいため、超音波プローブの発熱を十分に低減することはできない。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、前記超音波プローブ内に配置され、前記振動子アレイから出力される前記受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、前記超音波プローブ内に配置され、前記増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を切り替える切替手段と、前記超音波プローブに設けられ、前記切替手段による電流値の切り替え操作を行なう切替スイッチとを有することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0011】
ここで、前記切替手段は、前記増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を、所定の第1の電流値と、前記第1の電流値よりも大きい、所定の第2の電流値とで切り替えることが好ましい。
また、前記超音波プローブ内に配置され、前記受信増幅部が増幅した受信信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有することが好ましい。
また、前記受信増幅部は、低雑音増幅器を有し、前記切替手段は、前記低雑音増幅器へ供給するバイアス電流の電流値を切り替えることが好ましい。
また、前記受信増幅部は、複数の増幅器を有し、前記切替手段は、少なくとも1つの増幅器のバイアス電流の電流値を切り替えることが好ましい。
【0012】
また、前記超音波プローブ内の温度を測定する温度測定手段を有し、前記温度測定手段が測定した温度が所定の温度よりも大きい場合には、前記切替手段は、前記増幅器に供給されるバイアス電流を第1の電流値に切り替えることが好ましい。
さらに、前記温度測定手段が測定した測定温度が、前記所定の温度を超えてからの経過時間を計測し、前記経過時間が所定の時間を経過した時点で、前記測定温度が前記所定の温度よりも大きい場合には、前記増幅器へのバイアス電流の供給を停止することが好ましい。
また、前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なうことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、超音波プローブ内に配置され、振動子アレイから出力される受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を切り替える切替手段と、超音波プローブに設けられ、切替手段による電流値の切り替え操作を行なう切替スイッチとを有するので、超音波プローブ内における発熱量を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の超音波プローブの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る超音波診断装置の診断装置本体の構成を表すブロック図である。
【図3】図1に示す超音波プローブの外観を概念的に示す図である。
【図4】LNAのバイアス電流とノイズとの関係を概念的に示すグラフである。
【図5】超音波画像を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の超音波診断装置の超音波プローブの構成を概念的に示すブロック図であり、図2は、本発明の超音波診断装置の診断装置本体の構成を概念的に示すブロック図である。
超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、この超音波プローブ12と無線通信により接続された診断装置本体14とを備えている。
【0017】
超音波プローブ12は、1次元又は2次元の振動子アレイの複数チャンネルを構成する複数の超音波トランスデューサ16を有し、これらトランスデューサ16にそれぞれ対応して受信信号処理部18が、T/Rスイッチ34を介して接続され、さらに受信信号処理部18にパラレル/シリアル変換部20を介して無線通信部22が接続されている。また、複数のトランスデューサ16に送信駆動部24を介して送信制御部26が接続され、複数の受信信号処理部18に受信制御部26が接続され、無線通信部22に通信制御部30が接続されている。
また、超音波プローブ12は、超音波プローブ12の各部に電力を供給する電力供給部42を有し、この電力供給部42に電力制御部40とバッテリ58が接続されている。また、電力制御部40に温度センサ44と、切替手段38が接続され、切替手段38に切替スイッチ56が接続されている。
そして、パラレル/シリアル変換部20、送信制御部26、受信制御部28、通信制御部30、および、電力制御部40にプローブ制御部32が接続されている。
【0018】
電力供給部42は、電力制御部40の制御に応じて、バッテリ58に充電された電力を、送信駆動部24や受信信号処理部18等の超音波プローブ12の各部に供給する。
電力制御部40は、プローブ制御部28からの指示に応じて、超音波プローブ12の各部に所望の電力を供給するように電力供給部42を制御する。
また、電力制御部40は、切替手段38からの指示信号に応じて、受信信号処理部18のLNA50に供給するバイアス電流の電流値を切り替えるように、電力供給部42を制御する。
【0019】
切替手段38は、受信信号処理部18のLNA50に供給するバイアス電流の電流値として、第1の電流値と、第1の電流値よりも大きい第2の電流値を記憶しておき、切替スイッチ56を用いた操作者の操作に従って選択された電流値を、電力制御部40に供給する。
なお、以下の説明においては、LNA50に、第1の電流値のバイアス電流が供給されるモードを、標準画質モードといい、第2の電流値のバイアス電流が供給されるモードを、高画質モードともいう。
LNA50に供給するバイアス電流の電流値の切り替えに関しては、後に詳述する。
【0020】
切替スイッチ56は、操作者が画質モードの選択操作を行なうためのものであり、図3に示すように、超音波プローブ12の筐体に設けられた押しボタン式のスイッチである。本実施例においては、切替スイッチ56を押していない状態では、標準画質モードが選択され、切替スイッチ56を押している状態では、高画質モードが選択される。
【0021】
複数のトランスデューサ16は、それぞれ送信駆動部24から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ16は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
このような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0022】
T/Rスイッチ34は、N個の超音波トランスデューサの内からM個の超音波トランスデューサを選択し、選択されたM個の超音波トランスデューサをM個の送受信回路にそれぞれ接続する。
【0023】
送信駆動部24は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部26によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ16から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ16に、T/Rスイッチ34を介して供給する。
【0024】
各チャンネルの受信信号処理部18は、受信制御部28の下で、対応するトランスデューサ16から出力される受信信号を処理して、組織のエリア情報を含むサンプルデータを生成する。
受信信号処理部18は、受信アンプ部46と、アナログ/デジタル変換部48を有する。
【0025】
受信アンプ部46は、トランスデューサ16から出力される受信信号を増幅する部位である。
受信アンプ部46は、LNA(Low noise amplifier:低雑音増幅器)50と、VCA(Voltage controlled attenuator:電圧制御減衰器)52と、PGA(Programmable gain amplifier:プログラマブルゲインアンプ)54とを有している。
【0026】
LNA50は、電力供給部42からバイアス電流を供給されて、トランスデューサ16から出力される受信信号を増幅する。
また、前述のとおり、本発明においては、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値は、切替スイッチ56の操作に応じて、切替手段38によって、所定の第1の電流値(標準画質モード)と、第1の電流値よりも大きな第2の電流値(高画質モード)とで切り替えられる。
【0027】
ここで、図4に、LNA50に供給されるバイアス電流と、入力換算ノイズとの関係を模式的に示す。図4に示すように、供給されるバイアス電流の電流値が大きくなるほど、LNAの入力換算ノイズは小さくなる。すなわち、LNA50に、第1の電流値のバイアス電流が供給される場合は、LNA50のS/N比が小さくなり、第2の電流値のバイアス電流が供給される場合は、LNA50のS/N比が大きくなる。
【0028】
LNA50に、第1の電流値のバイアス電流が供給される(標準画質モード)場合は、S/N比が小さくなるため、LNA50で増幅された受信信号から生成される超音波画像は、ノイズが大きくなり、画質が低下するものの、バイアス電流の電流値が小さいので、LNA50の発熱、すなわち、超音波プローブ12の発熱を低減することができる。
一方、LNA50に、第2の電流値のバイアス電流が供給される(高画質モード)場合は、バイアス電流の電流値が大きいので、LNA50(超音波プローブ12)の発熱は大きくなるものの、S/N比が大きくなるため、LNA50で増幅された受信信号から生成される超音波画像は、ノイズが小さくなり画質が向上する。
【0029】
図5は、超音波画像を概念的に表す図である。
図5に示すように、超音波画像においては、超音波プローブからの深さ方向の距離(深度)が大きくなるほど、被検体から反射される超音波エコーの受信信号が小さくなる。そのため、標準画質モードで撮影した場合には、深度が深い領域では、受信信号に対して、ノイズの割合が大きくなり、画質(解像度)が悪くなる。しかしながら、深度が浅い領域では、受信信号が大きいため、標準画質モードであっても、受信信号に対するノイズの割合が小さくなるので、画質の低下は小さい。
従って、操作者は、発熱が少ない標準画質モードで被検体内の探査を行なって、所望の着目領域を捉えてから、切替スイッチ56を押して高画質モードに切り替えることによって、精査を行なうことができる高画質な超音波画像を得ることができる。
【0030】
前述のとおり、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止する構成とした場合には、これらの所定期間の割合は、稼働時間に対して非常に小さいため、超音波プローブの発熱を十分に低減することはできない。
【0031】
これに対して、本発明は、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を、切替スイッチ56の操作に応じて、切替手段38によって、所定の第1の電流値と、第1の電流値よりも大きな第2の電流値とで切り替える構成を有する。そのため、操作者の所望のタイミングで、発熱が少ない標準画質モードと、精査を行なうことができる高画質モードとを切り替えることができるので、デジタル処理を行なう超音波プローブにおいて、プローブ内の回路からの発熱量を抑制することができ、かつ、高画質な超音波画像を得ることができる。
LNA50は、増幅した受信信号をVCA52に供給する。
【0032】
VCA52は、受信信号の深度に応じて、LNA50から供給された受信信号を減衰させる。VCA52は、減衰させた受信信号をPGA54に供給する。
PGA54は、VCA52から供給された受信信号を増幅し、アナログ/デジタル変換部48に供給する。
【0033】
アナログ/デジタル変換部48は、PGA54から供給されたアナログの受信信号を、サンプリングしてデジタルのサンプルデータを生成する。アナログ/デジタル変換部48は、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部20に供給する。
【0034】
パラレル/シリアル変換部20は、複数チャンネルの受信信号処理部18によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0035】
無線通信部22は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部22は、診断装置本体14との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部30に出力する。通信制御部30は、プローブ制御部32によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部22を制御すると共に、無線通信部22が受信した各種の制御信号をプローブ制御部32に出力する。
【0036】
プローブ制御部32は、診断装置本体14から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ12の各部の制御を行う。
なお、超音波プローブ12は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0037】
また、本実施例においては、好ましい態様として、超音波プローブ12内の温度を測定する温度センサ44を有する。
温度センサ44は、測定した温度を電力制御部40に供給し、電力制御部40は、供給された温度の値が、所定の温度以上の場合には、切替スイッチ56の操作の有無にかかわらず、LNA50に供給するバイアス電流を第1の電流値とするように、電力供給部42を制御する。これにより、超音波プローブ12の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0038】
さらに、温度センサ44が測定した温度の値が、所定の温度以上となり、LNA50に供給するバイアス電流を第1の電流値してからの経過時間を計測して、一定の時間が経過した時点でも、温度センサ44の測定温度が所定の温度以上であった場合には、LNA50へのバイアス電流の供給を停止するようにしてもよい。
また、温度センサ44は、LNA50へのバイアス電流の供給停止後も、温度の測定を継続し、温度が所定の温度以下となった場合に、LNA50へのバイアス電流の供給を再開するようにするのが好ましい。あるいは、使用可能になった旨の表示を、表示部70に行なうようにしてもよい。これにより、超音波プローブ12の温度が過度に上昇することを防止することができる。
【0039】
一方、診断装置本体14は、無線通信部60を有し、この無線通信部60にシリアル/パラレル変換部62を介してデータ格納部64が接続され、データ格納部64に画像生成部66が接続されている。さらに、画像生成部66に表示制御部68を介して表示部70が接続されている。
また、無線通信部60に通信制御部72が接続され、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68および通信制御部72に本体制御部74が接続されている。さらに、本体制御部74には、オペレータが入力操作を行うための操作部76が接続されている。
【0040】
操作部76は、撮影メニュー、撮影条件などを設定し、被検体の撮像を指示する入力操作を行なうためのものである。操作部76は、操作者が入力操作を行なうための、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
【0041】
無線通信部60は、超音波プローブ12との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ12に送信する。また、無線通信部60は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部72は、本体制御部74によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部60を制御する。
シリアル/パラレル変換部62は、無線通信部60から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部64は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部62によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0042】
画像生成部66は、データ格納部64から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部66は、整相加算部78と画像処理部80とを含んでいる。
整相加算部78は、本体制御部74において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0043】
画像処理部80は、整相加算部78によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部80は、STC(sensitivity time control)部と、補間部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。補間部は、後述する温度上昇抑制モードで間欠的に超音波が送受信されることにより音線信号の欠落したフレームの補間処理を行う。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0044】
表示制御部68は、画像生成部66によって生成される画像信号に基づいて、表示部70に超音波診断画像を表示させる。表示部70は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部68の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0045】
本体制御部74は、操作部76を用いたオペレータの操作に従って、超音波診断装置10の各部を制御する。
このような診断装置本体14において、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68、通信制御部72および本体制御部74は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0046】
次に、超音波診断装置10の動作について説明する。
操作者が、超音波プローブ12を被検体の表面に当接し、撮像を開始すると、本体制御部74からの制御信号に基づいて、送信制御部26が送信駆動部24を制御する。送信駆動部24が、制御信号に基づいてトランスデューサ16を駆動し、各トランスデューサ16から超音波ビームが送信され、被検体内からの超音波エコーを、各トランスデューサ16が受信し、受信信号を出力する。
【0047】
被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ16から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部18に供給される。受信信号処理部18に供給された受信信号はサンプルデータに順次変換され、パラレル/シリアル変換部20でシリアル化された後に無線通信部22から診断装置本体14へ無線伝送される。診断装置本体14の無線通信部60で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部62でパラレルのデータに変換され、データ格納部64に格納される。さらに、データ格納部64から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部66で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部68により超音波診断画像が表示部70に表示される。
【0048】
ここで、本発明においては、操作者の切替スイッチ56の操作に応じて、切替手段38が、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を、第1の電流値と、第1の電流値よりも大きな第2の電流値とで切り替える構成を有する。
【0049】
このように、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を、第1の電流値と、第1の電流値よりも大きな第2の電流値とで切り替えることで、発熱が少ない標準画質モードと、精査を行なうことができる高画質モードとを切り替えることができるので、デジタル処理を行なう超音波プローブにおいて、プローブ内の回路からの発熱量を抑制することができ、かつ、高画質な超音波画像を得ることができる。
【0050】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0051】
例えば、図示例の超音波診断装置においては、トランスデューサからの受信信号を増幅する受信アンプ46部は、LNA50とVCA52とPGA54とを有する構成としたが、これに限定はされず、他の増幅器で構成されるようにしてもよく、さらに、複数の増幅器を有する構成としてもよい。
また、図示例においては、LNA50のバイアス電流を切り替える構成としたが、これに限定はされず、PGA54のバイアス電流を切り替える構成としてもよく、あるいは、LNA50とPGA54のバイアス電流をそれぞれ切り替える構成としてもよい。さらに、トランスデューサからの受信信号を増幅する増幅器を複数、有する場合には、これら増幅器の少なくとも1つのバイアス電流を切り替える構成としてもよい。
【0052】
また、図示例においては、LNA50のバイアス電流を2段階に切り替える構成としたが、これに限定はされず、3段階以上に切り替える構成としてもよい。
【0053】
また、図示例においては、超音波プローブ12と診断装置本体14とは、無線通信によって信号の送受信を行なう構成としたが、これに限定はされず、有線の通信手段によって、信号の送受信を行なう構成としても良い。
【符号の説明】
【0054】
10 超音波診断装置
12 超音波プローブ
14 診断装置本体
16 トランスデューサ
18 受信信号処理部
20 パラレル/シリアル変換部
22、60 無線通信部
24 送信駆動部
26 送信制御部
28 受信制御部
30、72 通信制御部
32 プローブ制御部
34 T/Rスイッチ
38 切替手段
40 電力制御部
42 電力供給部
44 温度センサ
46 受信アンプ部
48 アナログ/デジタル変換部
50 LNA
52 VCA
54 PGA
56 切替スイッチ
58 バッテリ
62 シリアル/パラレル変換部
64 データ格納部
66 画像生成部
68 表示制御部
70 表示部
74 本体制御部
76 操作部
78 整相加算部
80 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、
前記超音波プローブ内に配置され、前記振動子アレイから出力される前記受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、
前記超音波プローブに配置され、前記増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を切り替える切替手段と、
前記超音波プローブに設けられ、前記切替手段による電流値の切り替え操作を行なう切替スイッチとを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記増幅器に供給されるバイアス電流の電流値を、所定の第1の電流値と、前記第1の電流値よりも大きい、所定の第2の電流値とで切り替える請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記超音波プローブ内に配置され、前記受信増幅部が増幅した受信信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記受信増幅部は、低雑音増幅器を有し、前記切替手段は、前記低雑音増幅器へ供給するバイアス電流の電流値を切り替える請求項1〜3のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記受信増幅部は、複数の増幅器を有し、前記切替手段は、少なくとも1つの増幅器のバイアス電流の電流値を切り替える請求項1〜4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波プローブ内の温度を測定する温度測定手段を有し、前記温度測定手段が測定した温度が所定の温度よりも大きい場合には、前記切替手段は、前記増幅器に供給されるバイアス電流を第1の電流値に切り替える請求項2〜5のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
さらに、前記温度測定手段が測定した測定温度が、前記所定の温度を超えてからの経過時間を計測し、前記経過時間が所定の時間を経過した時点で、前記測定温度が前記所定の温度よりも大きい場合には、前記増幅器へのバイアス電流の供給を停止する請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なう請求項1〜7のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−217618(P2012−217618A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86346(P2011−86346)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】