説明

超音波診断装置

【課題】超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波プローブが、振動子アレイから出力される受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、増幅器にバイアス電流を供給する電力供給部とを有し、電力供給部は、超音波エコーの反射位置の深さに応じて、増幅器に供給するバイアス電流を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に係り、特に、超音波プローブの振動子アレイから超音波を送受信することにより生成された超音波画像に基づいて診断を行う超音波診断装置の超音波プローブ内における発熱量の抑制に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、超音波画像を利用した超音波診断装置が実用化されている。一般に、この種の超音波診断装置は、振動子アレイを内蔵した超音波プローブと、この超音波プローブに接続された装置本体とを有しており、超音波プローブから被検体に向けて超音波を送信し、被検体からの超音波エコーを超音波プローブで受信して、その受信信号を装置本体で電気的に処理することにより超音波画像が生成される。
【0003】
このような超音波診断装置では、振動子アレイから超音波を送信することで、振動子アレイから発熱が生じる。
ところが、通常、操作者が片手で超音波プローブを把持して振動子アレイの超音波送受信面を被検体の表面に当接しつつ診断を行うので、超音波プローブは操作者が片手で容易に把持し得る程度の小さな筺体内に収容されることが多い。このため、振動子アレイからの発熱により超音波プローブの筺体内が温度上昇することがある。
【0004】
また、近年、超音波プローブに信号処理のための回路基板を内蔵し、振動子アレイから出力された受信信号をデジタル処理した上で無線通信あるいは有線通信により装置本体に伝送することにより、ノイズの影響を低減して高画質の超音波画像を得るようにした超音波診断装置が提案されている。
この種のデジタル処理を行う超音波プローブでは、受信信号の処理時においても回路基板からの発熱が生じ、回路基板の各回路の安定した動作を保証するために筺体内の温度上昇を抑制する必要がある。
【0005】
超音波プローブの温度上昇対策については、例えば、特許文献1に、超音波プローブの表面温度に応じて振動子アレイを駆動する条件を自動的に変化させる超音波診断装置が開示されている。表面温度が高くなるほど、超音波の送信時における振動子アレイの各トランスデューサの駆動電圧、送信開口数、送信パルスの繰り返し周波数、フレームレート等を低減することにより、超音波プローブの表面温度が適切な温度に維持される。
【0006】
また、特許文献2には、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止し、回路の発熱によるプローブの温度上昇を抑制する超音波診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−253776号公報
【特許文献2】特開2009−148424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、送信時の振動子アレイの駆動条件を変化させる特許文献1の装置では、上述したようなデジタル処理を行う超音波プローブにおける受信時の発熱に対処することができない。
また、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止する特許文献2の装置では、デジタル処理を行う超音波プローブにおける受信時の発熱を低減することができるものの、これらの所定期間の割合は、稼働時間に対して非常に小さいため、超音波プローブの発熱を十分に低減することはできない。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、超音波プローブの内部温度の上昇を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることができる超音波診断装置および超音波画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、前記超音波プローブが、前記振動子アレイから出力される前記受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、前記増幅器にバイアス電流を供給する電力供給部とを有し、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記増幅器に供給するバイアス電流を変更することを特徴とする超音波診断装置を提供する。
【0011】
ここで、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さが深いほど、前記増幅器に供給するバイアス電流を大きくすることが好ましい。
また、前記受信増幅部は、複数の増幅器を有し、前記受信信号を多段階に増幅するものであって、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、初段の増幅器に供給するバイアス電流を変更することが好ましい。
また、前記受信増幅部は、低雑音増幅器を有し、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記低雑音増幅器に供給するバイアス電流を変更することが好ましい。
【0012】
さらに、前記超音波プローブが、前記受信信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有し、前記アナログ/デジタル変換部が、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記受信信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを変更することが好ましい。
また、前記アナログ/デジタル変換部が、前記超音波の送信からの経過時間に応じて、前記受信信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを変更することが好ましい。
また、前記アナログ/デジタル変換部は、前記超音波エコーの反射位置の深さが深いほど、前記受信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを低くすることが好ましい。
【0013】
また、前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なうことが好ましい。
また、前記電力供給部は、前記超音波の送信の経過時間に応じて、前記増幅器および/または前記低雑音増幅器に供給するバイアス電流を変更することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、超音波プローブが、振動子アレイから出力される受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、増幅器にバイアス電流を供給する電力供給部とを有し、電力供給部は、超音波エコーの反射位置の深さに応じて、増幅器に供給するバイアス電流を変更するので、超音波プローブを省電力化することでき、超音波プローブ内における発熱量を抑制しながらも高画質の超音波画像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の超音波プローブの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る超音波診断装置の診断装置本体の構成を表すブロック図である。
【図3】超音波の送信期間と受信期間とを概念的に表す図である。
【図4】(A)は、深度と、LNAのバイアス電流との関係を概念的に示すグラフであり、(B)は、深度と、サンプリングレートとの関係を概念的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の超音波診断装置について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の超音波診断装置の超音波プローブの構成を概念的に示すブロック図であり、図2は、本発明の超音波診断装置の診断装置本体の構成を概念的に示すブロック図である。
超音波診断装置10は、超音波プローブ12と、この超音波プローブ12と無線通信により接続された診断装置本体14とを備えている。
【0018】
超音波プローブ12は、1次元又は2次元の振動子アレイの複数チャンネルを構成する複数の超音波トランスデューサ16を有し、これらトランスデューサ16にそれぞれ対応して受信信号処理部18が、T/Rスイッチ34を介して接続され、さらに受信信号処理部18にパラレル/シリアル変換部20を介して無線通信部22が接続されている。また、複数のトランスデューサ16に送信駆動部24を介して送信制御部26が接続され、複数の受信信号処理部18に受信制御部28が接続され、無線通信部22に通信制御部30が接続されている。
また、超音波プローブ12は、超音波プローブ12の各部に電力を供給する電力供給部42を有し、この電力供給部42に電力制御部40とバッテリ58が接続されている。そして、パラレル/シリアル変換部20、送信制御部26、受信制御部28、通信制御部30、および、電力制御部40にプローブ制御部32が接続されている。
【0019】
複数のトランスデューサ16は、それぞれ送信駆動部24から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に被検体からの超音波エコーを受信して受信信号を出力する。各トランスデューサ16は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミックや、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子、PMN−PT(マグネシウムニオブ酸・チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成した振動子によって構成される。
このような振動子の電極に、パルス状又は連続波の電圧を印加すると、圧電体が伸縮し、それぞれの振動子からパルス状又は連続波の超音波が発生して、それらの超音波の合成により超音波ビームが形成される。また、それぞれの振動子は、伝搬する超音波を受信することにより伸縮して電気信号を発生し、それらの電気信号は、超音波の受信信号として出力される。
【0020】
T/Rスイッチ34は、N個の超音波トランスデューサの内からM個の超音波トランスデューサを選択し、選択されたM個の超音波トランスデューサをM個の送受信回路にそれぞれ接続する。
【0021】
送信駆動部24は、例えば、複数のパルサを含んでおり、送信制御部26によって選択された送信遅延パターンに基づいて、複数のトランスデューサ16から送信される超音波が被検体内の組織のエリアをカバーする幅広の超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号の遅延量を調節して複数のトランスデューサ16に、T/Rスイッチ34を介して供給する。
なお、複数のトランスデューサ16から送信される超音波ビームの形状を幅広の形状とする方式に限定はされず、ビームを絞った通常の方式でもよい。
【0022】
各チャンネルの受信信号処理部18は、受信制御部28の下で、対応するトランスデューサ16から出力される受信信号を処理して、組織のエリア情報を含むサンプルデータを生成する。
受信信号処理部18は、受信アンプ部46と、アナログ/デジタル変換部48を有する。
【0023】
受信アンプ部46は、トランスデューサ16から出力される受信信号を増幅する部位である。
受信アンプ部46は、LNA(Low noise amplifier:低雑音増幅器)50と、VCA(Voltage controlled attenuator:電圧制御減衰器)52と、PGA(Programmable gain amplifier:プログラマブルゲインアンプ)54とを有している。
【0024】
LNA50は、電力供給部42からバイアス電流を供給されて、トランスデューサ16から出力される受信信号を増幅する。LNA50は、供給されるバイアス電流が大きいほどSN比が向上する。
ここで、本発明においては、電力供給部42からLNA50に供給されるバイアス電流の電流値は、後述する電力制御部40の制御により、超音波エコーの反射位置の深度に応じて、すなわち、超音波ビームの送信からの経過時間に応じて、電流値が変更される。
【0025】
図3は、超音波の送信期間と受信期間とを概念的に表す図である。
図3に示すように、トランスデューサ16が、送信制御部26の制御に応じて、一定の間隔で、所定の期間、超音波ビームを送信している。これに対応して、受信信号処理部18は、受信制御部28の制御により、超音波ビームの送信後、次の超音波ビームの送信までの所定の期間、トランスデューサ16が超音波エコーを受信して出力する受信信号を取得する。
ここで、トランスデューサ16が受信する超音波エコーは、送信からの時間が経過するほど、被検体の深い位置で反射した超音波エコーである。従って、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値は、超音波エコーを取得した時間(超音波の送信からの経過時間)に応じて変更される。
【0026】
図4(A)に、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値と経過時間(深度)との関係を概念的に表す。
図4(A)に示すように、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値は、超音波の送信からの経過時間が長いほど、すなわち、超音波エコーの反射位置の深度が深いほど、大きくなるように、変更される。なお、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値と経過時間(深度)との関係は、装置の構成等に応じて、予め定められている。
【0027】
超音波画像においては、深い位置で反射された超音波エコーは、被検体を通る間に、減衰するため、受信信号が弱くなってしまう。そのため、超音波エコーの深度が深いほど、受信信号を増幅する際の、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を大きくして、SN比を向上させて、ノイズを低減する。
一方、浅い位置で反射された超音波エコーは、減衰が少なく、受信信号が強いので、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を小さくして、SN比を低くしても、高画質な超音波画像が得られる。
【0028】
前述のとおり、フリーズ期間、ブランキング期間、プローブの動きが規定値以下の期間、プローブの温度が規定値以上の期間等の所定の期間に、プローブ内の受信回路の動作を停止する構成とした場合には、これらの所定期間の割合は、稼働時間に対して非常に小さいため、超音波プローブの発熱を十分に低減することはできない。
【0029】
これに対して、本発明の超音波診断装置においては、超音波エコーの深度が深い場合には、受信信号を増幅する際の、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を大きくして、SN比を向上させて、ノイズを低減するので、深度が深い位置であっても、高画質の超音波画像を得ることができ、かつ、超音波エコーの深度が浅い場合には、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を小さくするので、超音波プローブ12を省電力化することができ、超音波プローブ12の内部温度の上昇を抑制することができる。
【0030】
ここで、超音波プローブ12全体の消費電力に対して、トランスデューサ16から出力された受信信号を増幅する受信アンプ部46の初段のLNA50の消費電力の割合は大きい。そのため、消費電力が大きい初段のLNA50に供給されるバイアス電流の電流値を小さくすることで、より好適に、超音波プローブ12を省電力化することができ、超音波プローブ12の内部温度の上昇を抑制することができる。
LNA50は、増幅した受信信号をVCA52に供給する。
【0031】
VCA52は、図示しないTGC(タイムゲインコントロール)の指示により、受信信号の深度に応じて、LNA50から供給された受信信号を減衰させる。VCA52は、減衰させた受信信号をPGA54に供給する。
PGA54は、VCA52から供給された受信信号を増幅し、アナログ/デジタル変換部48に供給する。
【0032】
アナログ/デジタル変換部48は、PGA54から供給されたアナログの受信信号を、サンプリングしてデジタルのサンプルデータを生成する。
ここで、本発明においては、好ましい構成として、アナログ/デジタル変換部48は、受信制御部28の制御の下、超音波エコーの反射位置の深度に応じて、すなわち、超音波ビームの送信からの経過時間に応じて、PGA54から供給されたアナログの受信信号をサンプリングする際の、サンプリングレートを変更する。
【0033】
図4(B)に、アナログ/デジタル変換部48が、受信信号をサンプリングする際の、サンプリングレートと、超音波の送信からの経過時間(深度)との関係を概念的に示す。
図4(B)に示すように、アナログ/デジタル変換部48が、受信信号をサンプリングする際のサンプリングレートは、超音波の送信からの経過時間が長いほど、すなわち、超音波エコーの反射位置の深度が深くなるほど、小さくなるように変更される。なお、サンプリングレートと経過時間(深度)との関係は、装置の構成等に応じて、予め定められている。
【0034】
通常、アナログ/デジタル変換部48は、40M〜50MHzの高いサンプリングレートで、受信信号のサンプリングを行なっている。
前述のとおり、超音波画像においては、深い位置で反射された超音波エコーは、被検体を通る間に、減衰する。その際、特に、高周波成分の減衰が大きく、超音波エコーの周波数は数MHz程度となる。そのため、アナログ/デジタル変換部48が、深い深度の受信信号をサンプリングする際には、通常のサンプリングレートよりも低いサンプリングレートでも、正しくサンプリングすることができる。アナログ/デジタル変換部48のサンプリングレートを低くすることにより、アナログ/デジタル変換部48が使用する電力を低減して省電力化することができ、超音波プローブ12の内部温度の上昇を抑制することができる。
【0035】
また、前述のLNA50と同様に、超音波プローブ12全体の消費電力に対して、アナログ/デジタル変換部48の消費電力の割合は大きいので、アナログ/デジタル変換部48が、受信信号をサンプリングする際の、サンプリングレートを低くすることにより、より好適に、超音波プローブ12を省電力化することができ、超音波プローブ12の内部温度の上昇を抑制することができる。
アナログ/デジタル変換部48は、サンプルデータをパラレル/シリアル変換部20に供給する。
【0036】
パラレル/シリアル変換部20は、複数チャンネルの受信信号処理部18によって生成されたパラレルのサンプルデータを、シリアルのサンプルデータに変換する。
【0037】
無線通信部22は、シリアルのサンプルデータに基づいてキャリアを変調して伝送信号を生成し、伝送信号をアンテナに供給してアンテナから電波を送信することにより、シリアルのサンプルデータを送信する。変調方式としては、例えば、ASK(Amplitude Shift Keying)、PSK(Phase Shift Keying)、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation)等が用いられる。
無線通信部22は、診断装置本体14との間で無線通信を行うことにより、サンプルデータを診断装置本体14に送信すると共に、診断装置本体14から各種の制御信号を受信して、受信された制御信号を通信制御部30に出力する。通信制御部30は、プローブ制御部32によって設定された送信電波強度でサンプルデータの送信が行われるように無線通信部22を制御すると共に、無線通信部22が受信した各種の制御信号をプローブ制御部32に出力する。
【0038】
プローブ制御部32は、診断装置本体14から送信される各種の制御信号に基づいて、超音波プローブ12の各部の制御を行う。
なお、超音波プローブ12は、リニアスキャン方式、コンベックススキャン方式、セクタスキャン方式等の体外式プローブでもよいし、ラジアルスキャン方式等の超音波内視鏡用プローブでもよい。
【0039】
電力供給部42は、電力制御部40の制御に応じて、バッテリ58に充電された電力を、送信駆動部24や受信信号処理部18等の超音波プローブ12の各部に供給する。
電力制御部40は、プローブ制御部28からの指示に応じて、超音波プローブ12の各部に所望の電力を供給するように電力供給部42を制御する。
また、電力制御部40は、プローブ制御部32からの指示信号に応じて、受信信号処理部18のLNA50に供給するバイアス電流の電流値を変化させるように、電力供給部42を制御する。
【0040】
一方、診断装置本体14は、無線通信部60を有し、この無線通信部60にシリアル/パラレル変換部62を介してデータ格納部64が接続され、データ格納部64に画像生成部66が接続されている。さらに、画像生成部66に表示制御部68を介して表示部70が接続されている。
また、無線通信部60に通信制御部72が接続され、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68および通信制御部72に本体制御部74が接続されている。さらに、本体制御部74には、オペレータが入力操作を行うための操作部76が接続されている。
【0041】
操作部76は、撮影メニュー、撮影条件などを設定し、被検体の撮像を指示する入力操作を行なうためのものである。操作部76は、操作者が入力操作を行なうための、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパネル等から形成することができる。
【0042】
無線通信部60は、超音波プローブ12との間で無線通信を行うことにより、各種の制御信号を超音波プローブ12に送信する。また、無線通信部60は、アンテナによって受信される信号を復調することにより、シリアルのサンプルデータを出力する。
通信制御部72は、本体制御部74によって設定された送信電波強度で各種の制御信号の送信が行われるように無線通信部60を制御する。
シリアル/パラレル変換部62は、無線通信部60から出力されるシリアルのサンプルデータを、パラレルのサンプルデータに変換する。データ格納部64は、メモリまたはハードディスク等によって構成され、シリアル/パラレル変換部62によって変換された少なくとも1フレーム分のサンプルデータを格納する。
【0043】
画像生成部66は、データ格納部64から読み出される1フレーム毎のサンプルデータに受信フォーカス処理を施して、超音波診断画像を表す画像信号を生成する。画像生成部66は、整相加算部78と画像処理部80とを含んでいる。
整相加算部78は、本体制御部74において設定された受信方向に応じて、予め記憶されている複数の受信遅延パターンの中から1つの受信遅延パターンを選択し、選択された受信遅延パターンに基づいて、サンプルデータによって表される複数の複素ベースバンド信号にそれぞれの遅延を与えて加算することにより、受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、超音波エコーの焦点が絞り込まれたベースバンド信号(音線信号)が生成される。
【0044】
画像処理部80は、整相加算部78によって生成される音線信号に基づいて、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。画像処理部80は、STC(sensitivity time control)部と、DSC(digital scan converter:デジタル・スキャン・コンバータ)とを含んでいる。STC部は、音線信号に対して、超音波の反射位置の深度に応じて、距離による減衰の補正を施す。DSCは、STC部によって補正された音線信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)し、階調処理等の必要な画像処理を施すことにより、Bモード画像信号を生成する。
【0045】
表示制御部68は、画像生成部66によって生成される画像信号に基づいて、表示部70に超音波診断画像を表示させる。表示部70は、例えば、LCD等のディスプレイ装置を含んでおり、表示制御部68の制御の下で、超音波診断画像を表示する。
【0046】
本体制御部74は、操作部76を用いたオペレータの操作に従って、超音波診断装置10の各部を制御する。
このような診断装置本体14において、シリアル/パラレル変換部62、画像生成部66、表示制御部68、通信制御部72および本体制御部74は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0047】
次に、超音波診断装置10の動作について説明する。
操作者が、超音波プローブ12を被検体の表面に当接し、撮像を開始すると、本体制御部74からの制御信号に基づいて、送信制御部26が送信駆動部24を制御する。送信駆動部24が、制御信号に基づいてトランスデューサ16を駆動し、各トランスデューサ16から超音波ビームが送信され、被検体内からの超音波エコーを、各トランスデューサ16が受信し、受信信号を出力する。
【0048】
被検体からの超音波エコーを受信した各トランスデューサ16から出力された受信信号がそれぞれ対応する受信信号処理部18に供給される。受信信号処理部18に供給された受信信号はサンプルデータに順次変換され、パラレル/シリアル変換部20でシリアル化された後に無線通信部22から診断装置本体14へ無線伝送される。診断装置本体14の無線通信部60で受信されたサンプルデータは、シリアル/パラレル変換部62でパラレルのデータに変換され、データ格納部64に格納される。さらに、データ格納部64から1フレーム毎のサンプルデータが読み出され、画像生成部66で画像信号が生成され、この画像信号に基づいて表示制御部68により超音波診断画像が表示部70に表示される。
【0049】
ここで、本発明においては、超音波エコーの深度に応じて、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を変化させる。具体的には、信号強度が強い、浅い位置からの超音波エコー(受信信号)を増幅する際には、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を小さくする。一方、信号強度が弱い、深い位置からの超音波エコー(受信信号)を増幅する際には、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を大きくする。
このように、LNA50に供給するバイアス電流の電流値を、超音波エコーの深度に応じて変化させるので、深度が深い位置であっても、高画質の超音波画像を得ることができ、かつ、深度が浅い位置では、LNA50に供給されるバイアス電流の電流値を小さくして、超音波プローブ12を省電力化することができ、デジタル処理を行なう超音波プローブ12の内部温度の上昇を抑制することができる。
【0050】
さらに、好ましい態様として、超音波エコーの深度に応じて、アナログ/デジタル変換部48が、受信信号をサンプリングする際のサンプリングレートを変化させるので、高いサンプリングレートが不要な、深い深度の受信信号をサンプリングする際に、低いサンプリングレートでサンプリングすることができ、アナログ/デジタル変換部48の消費電力を低減することができる。
【0051】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【0052】
例えば、図示例の超音波診断装置においては、トランスデューサからの受信信号を増幅する受信アンプ46部は、LNA50とVCA52とPGA54とを有する構成としたが、これに限定はされず、上記に加えて、他の増幅器を有する構成としても良く、あるいは、他の増幅器で構成されるようにしてもよい。
また、図示例においては、LNA50のバイアス電流を切り替える構成としたが、これに限定はされず、PGA54のバイアス電流を切り替える構成としてもよく、あるいは、LNA50とPGA54のバイアス電流をそれぞれ切り替える構成としてもよい。さらに、トランスデューサからの受信信号を増幅する増幅器を複数、有する場合には、これら増幅器の少なくとも1つのバイアス電流を切り替える構成とすればよい。
【0053】
また、図示例においては、LNA50のバイアス電流、および、アナログ/デジタル変換部48のサンプリングレートを、それぞれ、図4(A)および(B)のように、深度に比例して、直線的に変化する構成としたが、これに限定はされず、曲線的に変化してもよく、あるいは、段階的に切り替わる構成としてもよい。
【0054】
また、図示例においては、超音波プローブ12と診断装置本体14とは、無線通信によって信号の送受信を行なう構成としたが、これに限定はされず、有線の通信手段によって、信号の送受信を行なう構成としても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 超音波診断装置
12 超音波プローブ
14 診断装置本体
16 トランスデューサ
18 受信信号処理部
20 パラレル/シリアル変換部
22、60 無線通信部
24 送信駆動部
26 送信制御部
28 受信制御部
30、72 通信制御部
32 プローブ制御部
34 T/Rスイッチ
40 電力制御部
42 電力供給部
46 受信アンプ部
48 アナログ/デジタル変換部
50 LNA
52 VCA
54 PGA
58 バッテリ
62 シリアル/パラレル変換部
64 データ格納部
66 画像生成部
68 表示制御部
70 表示部
74 本体制御部
76 操作部
78 整相加算部
80 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブの振動子アレイから被検体に向けて超音波ビームを送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信した前記振動子アレイから出力された受信信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置において、
前記超音波プローブが、前記振動子アレイから出力される前記受信信号を増幅する増幅器を有する受信増幅部と、前記増幅器にバイアス電流を供給する電力供給部とを有し、
前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記増幅器に供給するバイアス電流の電流値を変更することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さが深いほど、前記増幅器に供給するバイアス電流を大きくする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記受信増幅部は、複数の増幅器を有し、前記受信信号を多段階に増幅するものであって、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、初段の増幅器に供給するバイアス電流の電流値を変更する請求項1または2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記受信増幅部は、低雑音増幅器を有し、前記電力供給部は、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記低雑音増幅器に供給するバイアス電流の電流値を変更する請求項1〜3のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記超音波プローブが、前記受信信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部を有し、
前記アナログ/デジタル変換部が、前記超音波エコーの反射位置の深さに応じて、前記受信信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを変更する請求項1〜4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記アナログ/デジタル変換部は、前記超音波エコーの反射位置の深さが深いほど、前記受信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを低くする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記アナログ/デジタル変換部が、前記超音波の送信からの経過時間に応じて、前記受信信号をデジタル信号に変換する際のサンプリングレートを変更する請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波プローブが、無線通信によって、診断装置本体との間で、前記受信信号の送受信を行なう請求項1〜7のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記電力供給部は、前記超音波の送信からの経過時間に応じて、前記増幅器および/または前記低雑音増幅器に供給するバイアス電流の電流値を変更する請求項1〜8のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228424(P2012−228424A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99428(P2011−99428)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】