説明

超音波診断装置

【課題】連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出するにあたり、その抽出に係る改良された信号処理を実現する。
【解決手段】分割加算処理部40I,40Qは、受信ミキサ30からLPF32I,32Qを介して得られた復調信号を複数の周波数帯域成分に分割する。そして、分割された複数の周波数帯域成分を周波数軸上において信号処理帯域に移動する。さらに、各周波数帯域成分ごとにその周波数帯域成分を時間軸方向に周期的に加算処理する。これにより、目標位置に関する位置選択性が高められ、さらに、最大ドプラ周波数の向上が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者は、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、本願の発明者は、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願発明者は、この画期的な技術の改良についてさらに研究開発を重ねてきた。特に、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術に注目して研究開発を重ねてきた。
【0007】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出するにあたり、その抽出に係る改良された信号処理を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信処理部と、前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る復調処理部と、前記復調信号の複数の周波数帯域成分について、各周波数帯域成分ごとにその周波数帯域成分を時間軸方向に周期的に加算処理する加算処理部と、前記各周波数帯域成分ごとに周期的に得られる加算処理後の信号からドプラ情報を得るドプラ情報取得部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成において、周期性を備えた連続波とは、例えば一定の繰り返し周波数で位相または周波数を変化させる連続波であり、具体例を挙げると、周波数変調処理や位相変調処理やデジタル変調処理などを施された連続波である。復調処理部は、目標位置に応じて例えば参照信号と受信信号との間の遅延関係を制御することにより相関関係を調整する。そして、加算処理部において、復調信号の各周波数帯域成分ごとにその周波数帯域成分が時間軸方向に周期的に加算処理され、加算処理後の信号が時間軸方向に離散的に得られる。この加算処理により目標位置に関する位置選択性が高められる。但し、サンプリング定理により、この時間軸方向の離散的な間隔に応じて、加算処理後の信号から抽出できる周波数の上限(帯域)が制限される。ところが、上記構成においては、予め復調信号を各周波数帯域成分に分けてから加算処理を行っているため、サンプリング定理に伴う制限が緩和され、望ましくはその制限が回避される。例えば、復調信号の各周波数帯域成分を、サンプリング定理により制限される周波数帯域以下とすることにより、各周波数帯域成分において、サンプリング定理に伴う制限が回避される。これにより、例えば、各周波数帯域成分ごとに抽出されるドプラ信号の周波数に伴う制限が緩和または回避され、ドプラ信号の抽出精度が高められる。
【0010】
望ましい具体例において、前記加算処理部は、前記送信信号の周期に対応した期間に亘って前記各周波数帯域成分を加算処理することを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記ドプラ情報取得部は、各周波数帯域成分ごとに周期的に得られる加算処理後の信号を周波数スペクトラムに変換することにより、前記目標位置から得られるドプラ信号を含んだ周波数スペクトラムを形成する、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記ドプラ情報取得部は、複数の周波数帯域成分に対応した複数の周波数スペクトラムを周波数軸上に並べた合成スペクトラムを形成することを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記復調処理部で得られた復調信号を複数の周波数帯域成分に分割する分割処理部と、前記分割処理部で分割された複数の周波数帯域成分を周波数軸上において信号処理帯域に移動する帯域移動処理部をさらに有することを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記送信処理部は、繰り返し周波数fの周期性を備えた連続波の送信信号を出力し、前記各周波数帯域成分の帯域幅は、fまたはf/2であることを特徴とする。
【0015】
望ましい具体例において、前記送信処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力し、前記復調処理部は、前記2列の数値パターンに基づいて得られる参照信号を前記目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理し、遅延処理された参照信号を用いて前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出するにあたり、その抽出に係る改良された信号処理が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。
【図3】余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。
【図4】参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。
【図5】乗算器出力の具体例を示す図である。
【図6】分割加算処理部の内部構成を示す図である。
【図7】複数の周波数帯域成分を示す図である。
【図8】信号処理帯域にシフトされた各周波数帯域成分を示す図である。
【図9】復調信号とその周波数スペクトラムを説明するための図である。
【図10】合成スペクトラムの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は、生体内へ超音波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は、生体内からの超音波の反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0019】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、合成処理部24から連続波の送信信号が供給され、送信ビームフォーマ14は、その送信信号に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして超音波の送信ビームが形成され、二次元平面内で又は三次元空間内で送信ビームが走査される。
【0020】
送信ビームフォーマ14に供給される連続波の送信信号は、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される。
【0021】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(搬送波信号)に対して、正弦パターンに基づいた処理を施す。一方、余弦パターン処理部22Aは、RF波発振器20からπ/2シフト回路21を介して得られるRF波(搬送波信号)に対して余弦パターンに基づいた処理を施す。
【0022】
そして、正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aから出力される2つの信号が合成処理部24において合成され、所定の位相パターンを備えた連続波(位相シフト連続波)が形成される。正弦パターン処理部22Bと余弦パターン処理部22Aと合成処理部24によって形成される連続波の送信信号については後にさらに詳述する。
【0023】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして二次元平面内で又は三次元空間内で走査される送信ビームに対応した受信ビームが形成され、受信ビームに沿って受信RF信号が収集される。
【0024】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ30I,30Qで構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0025】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、合成処理部24から出力される送信信号に基づいて生成される。つまり、合成処理部24から出力される送信信号が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ30Iには遅延処理された送信信号が参照信号として直接供給され、一方、ミキサ30Qには遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。
【0026】
π/2シフト回路26は、遅延処理された参照信号の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、ミキサ30Iから同相信号成分(I信号成分)が出力されてミキサ30Qから直交信号成分(Q信号成分)が出力される。そして、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)32I,32Qにより同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0027】
分割加算処理部40Iは、LPF32Iから得られる復調信号を所定期間に亘って加算し、分割加算処理部40Qは、LPF32Qから得られる復調信号を所定期間に亘って加算する。これにより、位相シフト連続波の位相パターンに関する加算処理が実行され、参照信号の位相パターンと一致する目標位置からの復調信号が選択的に抽出される。この位置選択性については後にさらに詳述する。
【0028】
ドプラ情報解析部50は、分割加算処理部40I,40Qから得られる加算処理後の復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、復調信号が周波数スペクトラムに変換される。さらに、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報解析部50において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報解析部50は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0029】
表示部52は、ドプラ情報解析部50において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部60によって制御される。つまり、システム制御部60は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0030】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、位相シフト連続波に対応した超音波を送受して受信信号を得て、生体内の目標位置の深さに応じて参照信号と受信信号との間の遅延関係を調整し、目標位置からの受信信号と参照信号との間の相関を強めて復調処理を施すことにより、目標位置からのドプラ情報を選択的に抽出している。そこで図1の超音波診断装置における位相シフト処理と、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0031】
<位相シフト処理について>
図1の超音波診断装置では、互いに相補的な関係にある2列の数値パターンを用いて位相シフト処理が行われる。つまり、正弦パターン処理部22Bにおいて正弦パターンが利用され、余弦パターン処理部22Aにおいて余弦パターンが利用される。
【0032】
2列の数値パターンである正弦パターンと余弦パターンは次式により定義される。次式において、aが余弦パターンであり余弦関数から得られる。一方、bが正弦パターンであり正弦関数から得られる。また、Nはパターン長を示す自然数であり、iはパターンを構成している各数値(各符号)の番号である。ちなみに、Nは任意の自然数かつ偶数であり2の累乗に限定されない。
【0033】
【数1】

【0034】
正弦パターン処理部22Bは、RF波発振器20から得られるRF波(正弦波)の振幅を正弦パターンに従って変化させる。一方、余弦パターン処理部22Aは、π/2シフト回路21を介して得られるRF波(余弦波)の振幅を余弦パターンに従って変化させる。そして、正弦パターン処理部22Bから出力される連続波と、余弦パターン処理部22Aから出力される連続波が合成処理部24において合成され、次式に示す連続波の送信信号が形成される。
【0035】
【数2】

【0036】
送信信号に対応した受信信号は、その送信信号が送信された時刻から、次式に示す遅延時間τだけ遅れて受信系に到達する。なお、次式において、Tは数値パターンの1ビット(各数値)の時間長つまりビット長であり、l(エル)は任意の自然数である。そしてξは1/2ビット長以下の時間である。
【0037】
【数3】

【0038】
図1の超音波診断装置では、送信信号を遅延回路25において遅延処理して得られる参照信号が、受信ミキサ30において受信信号と乗算される。送信信号を基準とした受信信号の遅延時間をτ、遅延回路25における遅延量(時間シフト量)をkT、ドプラシフトによる位相の変化量をωとすると、受信ミキサ30のミキサ30Iにおいて乗算される受信信号(数4式)と参照信号(数5式)は、それぞれ次のように表現される。
【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
そして、受信ミキサ30において、次式に示すように受信信号と参照信号が乗算され、乗算結果としてベースバンド成分が得られる。
【0042】
【数6】

【0043】
受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)のうち、第1項は、互いに同じ数値パターンであるa同士およびb同士の積に関する相関電力であり、第2項は、互いに異なる数値パターンであるaとbの積に関する相互干渉電力である。目標位置の選択性を高めるためには、第1項に示される相関はシャープであることが必要とされ、第2項に示される相互干渉は小さいことが望ましい。なお、数6式の計算過程において2ωtの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)32Iにより除去される。
【0044】
ここで、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項である余弦波の位相について検討する。この余弦波の位相は、数3式に示した遅延時間τを用いると、次式のように表現できる。
【0045】
【数7】

【0046】
数7式に示す余弦波の位相にはξが含まれており、1/2ビット長以下の時間であるξに応じて余弦波の位相が変化する。この位相の変化は、目標位置の選択性(相関性)に重要な影響を及ぼす要因ではないため、以下においては位相の表現からξを省略して目標位置の選択性について説明する。
【0047】
まず、相関電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第1項に含まれる相関値は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0048】
【数8】

【0049】
数8式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。実際に目標位置から得られる受信信号には、N個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれており、また、参照信号にもN個全ての数値(符号)からなるパターンが含まれている。受信ミキサ30において次々に得られる数8式の乗算結果は、LPF32Iを経て分割加算処理部40Iに出力される。そして、分割加算処理部40Iにおいて、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は数9式のように表現できる。さらに、数10式に示す公式を利用すると、数9式は数11式のように簡潔に表現できる。
【0050】
【数9】

【0051】
【数10】

【0052】
【数11】

【0053】
数11式におけるδklは、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。また、kとlが互いに等しい場合にcosθklが1となるため、数11式はさらに簡潔に次式のように変換される。
【0054】
【数12】

【0055】
数12式は、kで特定される目標位置に対応した参照信号と、l(エル)で特定される深さからの受信信号と、を乗算して得られる自己相関値を示しており、kとlが互いに等しい場合にNとなり、kとlが互いに異なる場合に0となる。つまり、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみがNとなる。
【0056】
次に、相互干渉電力について検討する。受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)の第2項に含まれる相互干渉は、数1式の定義に基づいて次式のように展開できる。
【0057】
【数13】

【0058】
数13式は、パターン長がNである受信信号と参照信号のi番目の数値(符号)に関する乗算結果である。受信ミキサ30において次々に得られる数13式の乗算結果は、LPF32Iを経て分割加算処理部40Iに出力され、分割加算処理部40Iにおいて、乗算結果が1パターン(パターン長N)に亘って加算される。その加算結果は次式のように表現できる。
【0059】
【数14】

【0060】
数14式の第2項は、数10式により0となる。数14式の第1項におけるΣの項は、数10式に示すとおりであり、kとlが互いに等しい場合に1となり、kとlが互いに異なる場合に0となる。一方、数14式の第1項のsinθklは、kとlが互いに等しい場合に0となる。つまり、次式に示すとおり、相互干渉電力については、kとlが互いに等しい場合でもkとlが互いに異なる場合でも常に0となる。
【0061】
【数15】

【0062】
以上の解析から、受信信号と参照信号の乗算結果(数6式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0063】
【数16】

【0064】
数16式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数16式は次式のようになる。
【0065】
【数17】

【0066】
数17式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。分割加算処理部40Iにおいて数16式の加算処理が実行され、分割加算処理部40Iから数17式の信号(復調信号)が出力される。そして、ドプラ情報解析部50における周波数解析処理により、数17式の信号が周波数スペクトラムとして測定され、例えばωの大きさ(ドプラ周波数の大きさ)から移動目標の速さなどが算出される。
【0067】
なお、目標位置に移動目標が存在しない場合には、数17式におけるωが0(ゼロ)となる。したがって、ドプラ情報解析部50における周波数解析処理の結果がω=0であれば、固定目標からの信号であることが分かる。
【0068】
さらに、図1の超音波診断装置では、ドプラ周波数の極性を識別するために、受信ミキサ30において直交検波が行われている。受信ミキサ30のミキサ30Qには、遅延回路25により遅延処理された送信信号がπ/2シフト回路26を経由して参照信号として供給される。したがって、その参照信号は、次式のように表現できる。なお、数5式に示す参照信号から位相を−π/2だけずらした信号が数18式の参照信号となるが、数5式に示す参照信号から位相を+π/2だけずらした信号を利用してもよい。
【0069】
【数18】

【0070】
ミキサ30Qでは、数18式の参照信号と数4式の受信信号が次式のように乗算処理される。なお、次式の計算過程において2ωtの項は、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)32Qにより除去される。
【0071】
【数19】

【0072】
数12式と数15式を適用して、受信信号と参照信号の乗算結果(数19式の最終行)を1パターン(パターン長N)に亘って全てのiについて加算すると、その加算結果は次のようになる。
【0073】
【数20】

【0074】
数20式によれば、kで特定される目標位置と同じ深さlから得られる受信信号に関する自己相関値のみが大きな値となることがわかる。そして、k=lの場合には、数20式は次式のようになる。
【0075】
【数21】

【0076】
数21式で表現される信号は、ドプラシフトによる位相の変化量ωを含んでいる。つまり、ドプラ周波数の成分を含んだベースバンド帯域のドプラ信号である。分割加算処理部40Qにおいて数20式の加算処理が実行され、分割加算処理部40Iから数21式の信号(復調信号)が出力される。数21式と数17式は、直交検波により得られた互いに直交関係にある復調信号であり、ドプラ情報解析部50における周波数解析処理により、数21式と数17式から、ドプラ周波数の大きさに加えて極性、つまり、移動目標が受信用振動子12に近づいているのか、又は、移動目標が受信用振動子12から遠ざかっているのかを識別することが可能になる。
【0077】
次に、正弦パターンと余弦パターンの具体例について説明する。パターン長を8(N=8)とすると、数1式から、余弦パターンA(数22式)と正弦パターンB(数23式)が得られる。
【0078】
【数22】

【0079】
【数23】

【0080】
余弦パターンAと正弦パターンBを構成する各数値(各符号)は、単純な2値符号とは異なり、−1と+1との間で離散的な値をとる。また、余弦パターンAと正弦パターンBを利用して形成される送信信号(数2式)の振幅は次式のように算出されるため、常に1となり、送信信号の振幅が時間的に変動しないことがわかる。
【0081】
【数24】

【0082】
余弦パターンAと正弦パターンBを数2式に適用して得られる送信信号は次式のようになる。
【0083】
【数25】

【0084】
図2は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の時間変化波形を示す図である。つまり、図2に示す送信信号は、数25式で表現される信号である。また、図3は、余弦パターンAと正弦パターンBから得られる送信信号の位相ベクトルを示す図である。図2と図3に示す送信信号は、余弦パターンAと正弦パターンBを合成して得られる位相パターンに従って位相を変化させ、その位相パターンを繰り返すことにより得られる連続波(位相シフト連続波)となっている。
【0085】
<位置選択性について>
図4は、参照信号と受信信号に関する相関関係の具体例を示す図である。図4には、数25式の送信信号を利用した場合に、ある深さから得られる受信信号の位相(受信波の位相)が示されている。また、図4には、数25式の送信信号を遅延処理して得られる参照信号の位相(参照波の位相φ〜φ)も示されている。そして受信信号と各参照信号を乗算して得られる出力と、1パターン(パターン長8)に亘る出力の合計も図示されている。図4に示すように、参照波の位相がφの場合に、受信波の位相と参照波の位相が互いに一致して合計が8となり、参照波の位相がφ以外では合計が0となる。
【0086】
図5は、乗算器出力の具体例を示す図である。図5には、数25式の送信信号を利用した場合に、距離軸方向のφからφまでの各深さにおいて、時間軸方向の1ビット長ごとに得られる乗算器出力(受信ミキサ30の出力)が示されている。また、位相パターンの1周期(8ビット長)に亘って得られる乗算器出力の加算値も図示されている。図5に示す深さφからφの各々は、図4に示す参照波の位相φからφに対応した深さである。また、図5に示す深さφは、位相パターンを繰り返した際に、1周期後の参照波の位相φに対応する深さである。
【0087】
図5に示す深さφと深さφでは、位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って、参照信号と受信信号との間で位相が全て一致するため(図4参照)、「1」に相当する乗算器出力が連続的に得られる。これに対し、深さφからφでは、参照信号と受信信号との間で位相がずれているため(図4参照)、乗算器出力がランダムに変化している。なお、深さφからφにおいてランダムに変化する乗算器出力を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる(図4参照)。
【0088】
そのため、時間軸方向に複数ビット長に亘って乗算器出力を加算(平均化)することにより、目標位置である深さφと深さφにおいて平均値が極大となり、複数の深さにおける平均値が混在する平均化された復調信号の中で、目標位置に対応した復調信号が支配的となり目標位置に対応した復調信号が選択的に抽出される。
【0089】
図5に示すように、参照信号の位相パターンと一致していない深さφからφの受信信号に関する乗算器出力は、加算または平均化することによりゼロになるものの、1ビット長ごとにランダムに変動している。この変動のために、位相パターンを繰り返す位相シフト連続波を利用して得られる乗算器出力の周波数スペクトラムには、位相パターンの1周期(NT)の逆数fの整数倍に対応した線スペクトラムが現れる。
【0090】
図5を利用して説明したように、深さφからφにおいてランダムに変化する乗算器出力、つまり部分的な復調信号を位相パターンの1周期つまり8ビット長の期間に亘って加算するとゼロとなる。つまり、目標位置である深さφと深さφにおける位置選択性が高められ、レンジサイドローブを低減させることができる。但し、単純に位相パターンの1周期に亘って復調信号を加算処理し、加算処理後の復調信号からドプラ信号を抽出すると、位相パターンの繰り返し周波数ごとにしか加算処理結果が得られないため、サンプリング定理により、ドプラ信号の最大周波数が制限されてしまう。そのため、必要とされるドプラ周波数が残るような加算処理を実現することが望ましい。
【0091】
そこで、図1の超音波診断装置は、分割加算処理部40I,40Qにおいて、以下に説明する処理により位相パターンの1周期に亘って復調信号の加算処理を実現し、位置選択性と最大ドプラ周波数の向上を実現している。
【0092】
<位相パターンの1周期に亘る加算処理について>
図6は、分割加算処理部40I,40Q(図1)の内部構成を示す図である。LPF32I(図1)から出力される復調信号(同相信号成分)は、分割加算処理部40Iへ送られる。分割加算処理部40Iは、複数のバンドパスフィルタ(BPF)を備えている。BPF1は、復調信号に含まれる周波数成分のうち、周波数0〜fの周波数帯域成分1を抽出する。なお、周波数fは、先に説明したパターン長Nの2列の数値パターン(正弦パターンと余弦パターン)の繰り返し周波数である。
【0093】
また、復調信号に含まれる周波数成分のうち、周波数f〜2fの周波数帯域成分2がBPF2により抽出され、周波数2f〜3fの周波数帯域成分3がBPF3により抽出され、周波数3f〜4fの周波数帯域成分4がBPF4により抽出される。さらに高次の周波数帯域成分を抽出するBPFが設けられてもよい。
【0094】
図7は、複数の周波数帯域成分を示す図である。図7に示すように、複数のバンドパスフィルタ(BPF1〜BPF4)により復調信号が複数の周波数帯域成分に分割される。なお、図7の例においては、周波数帯域成分1内にドプラ信号fd1,fd2が存在し、周波数帯域成分2内にドプラ信号fd3が存在し、周波数帯域成分3内にドプラ信号fd4が存在し、周波数帯域成分4内にドプラ信号fd5が存在している。
【0095】
図6に戻り、各BPFで抽出された復調信号の各周波数帯域成分は、各BPFの後段に設けられたミキサMにおいて周波数の移動処理(シフト処理)を施される。つまり、BPF1から出力される周波数帯域成分1は、周波数f/2の参照信号と乗算され、これにより、f/2以下の信号処理帯域(−f/2〜+f/2)にシフトされる。なお、ミキサMにおける乗算により発生するf/2(絶対値)より大きい不要な成分は、ミキサMの後段に設けられたLPFにおいて除去される。
【0096】
同様に、BPF2から出力される周波数帯域成分2は、周波数3f/2の参照信号と乗算されてf/2以下の信号処理帯域(−f/2〜+f/2)にシフトされ、BPF3から出力される周波数帯域成分3は、周波数5f/2の参照信号と乗算されてf/2以下の信号処理帯域(−f/2〜+f/2)にシフトされ、BPF4から出力される周波数帯域成分4は、周波数7f/2の参照信号と乗算されてf/2以下の信号処理帯域(−f/2〜+f/2)にシフトされる。
【0097】
なお、ミキサMで利用される参照信号の周波数は、図7に示すように、対応する各周波数帯域成分の中心周波数(帯域幅を二等分する位置の周波数)である。
【0098】
図8は、信号処理帯域にシフトされた各周波数帯域成分を示す図である。図8の(1)から(4)に示す4つ全ての周波数帯域成分が、中心周波数を0とするf/2以下の信号処理帯域(−f/2〜+f/2)にシフトされる。
【0099】
図6に戻り、信号処理帯域にシフトされた各周波数帯域成分は、各周波数帯域成分に対応した加算部1〜4において、送信信号の周期に対応した期間に亘って、時間軸方向に周期的に加算処理される。つまり「位置選択性について」で説明したように、目標位置からの復調信号を選択的に抽出するために、位相パターン(パターン長N)の1周期に亘って復調信号の各周波数帯域成分が加算処理される。
【0100】
これにより、加算部1から周波数帯域成分1の加算結果が出力され、加算部2から周波数帯域成分2の加算結果が出力され、加算部3から周波数帯域成分3の加算結果が出力され、加算部4から周波数帯域成分4の加算結果が出力される。加算処理はパターン長Nの1周期に亘って行われ、その結果が次々に出力されるため、各周波数帯域成分の加算処理結果は、パターンNと同じ繰り返し周波数fで出力され、ドプラ情報解析部50へ送られる。
【0101】
なお、LPF32Q(図1)から出力される復調信号(直交信号成分)を取り扱う分割加算処理部40Qも、分割加算処理部40Iと同じ構成であり、直交信号成分に対して同相信号成分と同じ処理が実行され、各周波数帯域成分の加算処理結果が、加算部1〜4からドプラ情報解析部50へ送られる。
【0102】
図1のドプラ情報解析部50は、分割加算処理部40I,40Qから各周波数帯域成分ごとに周期的に得られる加算処理後の信号を周波数スペクトラムに変換することにより、目標位置から得られるドプラ信号を含んだ周波数スペクトラムを形成する。
【0103】
図9は、復調信号とその周波数スペクトラムを説明するための図である。(A)は、図1の受信ミキサ30において処理されてLPF32I,32Qから出力される復調信号の時間変化波形を示している。つまり、時間軸方向の1ビット長ごと(時間Tごと)に得られる乗算器出力(復調信号)が示されている。
【0104】
また(B)は、復調信号のパターンNに亘る加算結果の時間変化波形を示している。つまり、ある周波数帯域成分について、繰り返し周波数fで時間1/fごとに得られる加算結果が示されている。そして、(B)に示す加算処理結果から得られる周波数スペクトラムが(C)に示されている。
【0105】
(C)は、Mサンプルの加算処理結果から得られる周波数スペクトラムを示している。加算処理結果は、繰り返し周波数fで時間1/fごとに得られるため、その周波数スペクトラムを形成すると、f/2以下(−f/2〜+f/2)の周波数成分を折り返し無く抽出することができる。
【0106】
このように、サンプリング定理による周波数の制限を受けることになるが、本実施形態においては、復調信号が各周波数帯域成分に分割され、図8に示したように、各周波数帯域成分がf/2以下(−f/2〜+f/2)とされている。そのため、各周波数帯域成分ごとに周波数スペクトラムを形成することにより、各周波数帯域成分内の全信号(全周波数)を抽出することができる。つまり、図8の(1)〜(4)に示す周波数スペクトラムを得ることができ、ドプラ信号fd1〜fd5の全てを折り返し無く抽出することができる。
【0107】
図1のドプラ情報解析部50は、複数の周波数帯域成分に対応した複数の周波数スペクトラムを形成すると、それら複数の周波数スペクトラムを周波数軸上に並べた合成スペクトラムを形成する。
【0108】
図10は、合成スペクトラムの具体例を示す図である。図10に示す合成スペクトラムは、図8の(1)〜(4)に示す複数の周波数スペクトラムから得られる。つまり、ドプラ情報解析部50は、図8の(1)〜(4)に示す複数の周波数スペクトラムを形成した後に、各周波数帯域成分の周波数スペクトラムをその周波数帯域成分の元の(シフト前の)帯域に割り当て、1つの周波数軸上に全ての周波数帯域成分の周波数スペクトラムを並べることにより、図10に示す合成スペクトラムを形成する。そして、形成された合成スペクトラムやその合成スペクトラムの時間変化波形などが、図1の表示部52に表示される。
【0109】
このように、本実施形態によれば、位相パターンの1周期に亘って復調信号の加算処理を行って位置選択性を高めつつ、さらに、復調信号を複数の周波数帯域成分に分割することにより、最大ドプラ周波数の向上を実現している。ちなみに、さらに高い周波数にまで周波数帯域成分(分割の個数)を増やすことにより、理論的にはどこまでも最大ドプラ周波数を高めることが可能になる。
【0110】
なお、図7を利用して説明した分割例では、周波数fごとに各周波数帯域成分を抽出しているが、周波数f/2ごとに複数の周波数帯域成分を分割するようにしてもよい。例えば、周波数0〜f/2の周波数帯域成分A、周波数f/2〜fの周波数帯域成分B、周波数f〜3f/2の周波数帯域成分Cのように分割してもよい。また、この場合において、信号処理帯域を周波数0〜f/2としてもよい。つまり、周波数の移動処理(シフト処理)において、信号処理帯域である周波数0〜f/2に各周波数帯域成分をシフトするようにしてもよい。
【0111】
さらに、信号処理帯域へのシフト処理を省略することも可能である。例えば、上述した周波数帯域成分A、周波数帯域成分B、周波数帯域成分Cのように、各周波数帯域成分の帯域幅をf/2として、各周波数帯域成分ごとにその帯域幅のみをBPFで抽出する。各周波数帯域成分の時間軸方向での加算処理結果は、繰り返し周波数fつまりサンプリング周波数fで得られることは上述したとおりである。サンプリング周波数fで信号をサンプリングした場合、周波数軸上において周波数f/2ごとに折り返し成分が発生する。しかし、各周波数帯域成分の帯域幅がf/2に限定され、さらに、その周波数帯域成分の周波数軸上における位置が既知であれば、周波数f/2ごとに発生する折り返し成分の中から、目的とする周波数帯域成分を抽出することは可能である。
【0112】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した本発明の好適な実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0113】
22A 余弦パターン処理部、22B 正弦パターン処理部、24 合成処理部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、40I,40Q 分割加算処理部、50 ドプラ情報解析部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期性を備えた連続波の送信信号を出力する送信処理部と、
前記送信信号に対応した超音波を生体に送波して当該生体から超音波を受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
生体内の目標位置との間の相関関係を調整しつつ前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る復調処理部と、
前記復調信号の複数の周波数帯域成分について、各周波数帯域成分ごとにその周波数帯域成分を時間軸方向に周期的に加算処理する加算処理部と、
前記各周波数帯域成分ごとに周期的に得られる加算処理後の信号からドプラ情報を得るドプラ情報取得部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記加算処理部は、前記送信信号の周期に対応した期間に亘って前記各周波数帯域成分を加算処理する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記ドプラ情報取得部は、各周波数帯域成分ごとに周期的に得られる加算処理後の信号を周波数スペクトラムに変換することにより、前記目標位置から得られるドプラ信号を含んだ周波数スペクトラムを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の超音波診断装置において、
前記ドプラ情報取得部は、複数の周波数帯域成分に対応した複数の周波数スペクトラムを周波数軸上に並べた合成スペクトラムを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記復調処理部で得られた復調信号を複数の周波数帯域成分に分割する分割処理部と、
前記分割処理部で分割された複数の周波数帯域成分を周波数軸上において信号処理帯域に移動する帯域移動処理部と、
をさらに有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記送信処理部は、繰り返し周波数fの周期性を備えた連続波の送信信号を出力し、
前記各周波数帯域成分の帯域幅は、fまたはf/2である、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記送信処理部は、正弦関数と余弦関数に基づいた2列の数値パターンを合成して得られる周期性を備えた連続波の送信信号を出力し、
前記復調処理部は、前記2列の数値パターンに基づいて得られる参照信号を前記目標位置の深さに応じた遅延量だけ遅延処理し、遅延処理された参照信号を用いて前記受信信号に対して復調処理を施すことにより、当該目標位置に対応した復調信号を得る、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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