説明

超音波診断装置

【課題】連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出する。
【解決手段】Bモード画像110内に破線で示すビームカーソルが表示され、ビームカーソルが所望の診断部位を通るように設定され、さらにビームカーソル上において所望の深さにドプラカーソル111が設定され、また、ドプラカーソル111の選択幅が設定される。この選択幅に応じてFMCWにおける周波数偏移Δfが決定される。そして、変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが目標位置の深さdとなるように、変調周波数fmが設定される。例えば、超音波が深さdまでの距離を往復する間に、変調連続波の周波数が丁度1周期だけ変化するように変調周波数fmが設定される。これにより、ドプラ周波数が変調周波数fmを超えないように変調周波数fmをできる限り大きく設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置の連続波を利用した技術として、連続波ドプラが知られている。連続波ドプラでは、例えば、数MHzの正弦波である送信波が生体内へ連続的に放射され、生体内からの反射波が連続的に受波される。反射波には、生体内における運動体(例えば血流など)によるドプラシフト情報が含まれる。そこで、そのドプラシフト情報を抽出して周波数解析することにより、運動体の速度情報を反映させたドプラ波形などを形成することができる。
【0003】
連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて一般に高速の速度計測の面で優れている。こうした事情などから、本願の発明者らは、連続波ドプラに関する研究を重ねてきた。その成果の一つとして、特許文献1において、周波数変調処理を施した連続波ドプラ(FMCWドプラ)に関する技術を提案している。
【0004】
一方、連続波ドプラでは、連続波を利用していることにより位置計測が困難である。例えば、従来の一般的な連続波ドプラの装置(FMCWドプラを利用しない装置)では、位置計測を行うことができなかった。これに対し、特許文献2において、FMCWドプラにより選択的に生体内組織の所望の位置からドプラ情報を抽出することができる極めて画期的な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−253949号公報
【特許文献2】特開2008−289851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載されたFMCWドプラの技術は、それまでにない超音波診断の可能性を秘めた画期的な技術である。本願の発明者らは、この画期的な技術の改良についてさらに研究を重ねてきた。特に、連続波を利用して目標位置からドプラ信号を抽出する技術に注目して研究を重ねてきた。
【0007】
本発明は、このような背景において成されたものであり、その目的は、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、変調周波数に応じて周期的に周波数を変化させた変調連続波の送信信号を出力する送信処理部と、前記送信信号に対応した超音波の送信波を生体に送波してその送信波に伴う受信波を生体から受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、目標位置との間の相関関係を調整しつつ受信信号に対して復調処理を施すことにより、目標位置に対応した復調信号を得る復調処理部と、前記復調信号から目標位置におけるドプラ情報を得るドプラ情報取得部と、を有し、前記目標位置の深さに応じて前記変調周波数を調整することを特徴とする。
【0009】
上記の好適な態様によれば、目標位置の深さに応じて変調周波数が調整されるため、診断レンジの全域に合わせて変調周波数を設定する場合に比べて、変調周波数を大きくすることができ、これにより、目標位置におけるドプラ信号と不要波成分が互いに重なり合うことを抑制できる。
【0010】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが前記目標位置の深さとなるように、前記変調連続波の変調周波数を基本調整する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記基本調整された変調連続波の変調周波数の周期に応じて前記目標位置の深さ方向に沿って周期的に現れる擬似目標位置に、ドプラ情報が無いと判断された場合に、当該基本調整された変調連続波を利用して前記目標位置におけるドプラ情報を得る、ことを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記基本調整された変調連続波の変調周波数の周期に応じて前記目標位置の深さ方向に沿って周期的に現れる擬似目標位置に、ドプラ情報が有ると判断された場合に、当該基本調整された変調連続波の変調周波数を微調整して擬似目標位置の深さを修正する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記擬似目標位置にドプラ情報が無いと判断されるまで前記微調整を繰り返すことにより変調周波数を最終調整し、最終調整された変調連続波を利用して前記目標位置におけるドプラ情報を得ることを特徴とする。
【0014】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記目標位置と擬似目標位置を含むように設定された診断レンジに応じて、前記変調周波数の1周期に対応する深さが診断レンジの深さとなるように、前記変調連続波の変調周波数を特別調整し、特別調整された変調連続波を利用して得られる受信信号に対して、擬似目標位置との間の相関関係を調整しつつ復調処理を施すことにより、擬似目標位置に対応した復調信号を取得し、これにより擬似目標位置におけるドプラ情報の有無が確認されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、連続波を利用して目標位置からドプラ情報を抽出する技術において、必要とされるドプラ情報を適切に抽出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】FM連続波の周期性がドプラ周波数へ与える影響を説明する図である。
【図3】周波数変調の影響を受けたドプラ信号を説明するための図である。
【図4】周波数変調の影響を受けたドプラ信号の時間変化波形を示す図である。
【図5】変調連続波の基本調整前に得られる表示画像例を示す図である。
【図6】周波数偏移Δfと選択幅の関係を示す図である。
【図7】変調連続波の基本調整後に得られる表示画像例を示す図である。
【図8】変調周波数の微調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。送信用振動子10は生体内へ送信波を連続的に送波し、また、受信用振動子12は生体内からの反射波を連続的に受波する。このように、送信および受信がそれぞれ異なる振動子で行われて、いわゆる連続波ドプラ法による送受信が実行される。なお、送信用振動子10は複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子が制御されて超音波の送信ビームが形成される。また、受信用振動子12も複数の振動素子を備えており、これら複数の振動素子により得られた信号が処理されて受信ビームが形成される。
【0018】
送信ビームフォーマ(送信BF)14は、送信用振動子10が備える複数の振動素子に対して送信信号を出力する。送信ビームフォーマ14には、例えば正弦波によるFM変調処理が施されたFM連続波(FMCW波)が入力される。送信ビームフォーマ14は、FM連続波に対して、各振動素子に応じた遅延処理を施して各振動素子に対応した送信信号を形成する。なお、送信ビームフォーマ14において形成された各振動素子に対応した送信信号に対して、必要に応じて電力増幅処理が施されてもよい。こうして、FM連続波による送信ビームが形成される。
【0019】
FM変調器20は、送信ビームフォーマ14にFM連続波を出力する。FM変調器20は、変調波生成部24から供給される変調信号を用いて、RF波発振器22から供給されるRF波(搬送波信号)に対して周波数変調を施すことにより、FM連続波を発生する。このFM連続波の波形等については後に詳述する。
【0020】
受信ビームフォーマ(受信BF)16は、受信用振動子12が備える複数の振動素子から得られる複数の受波信号を整相加算処理して受信ビームを形成する。つまり、受信ビームフォーマ16は、各振動素子から得られる受波信号に対してその振動素子に応じた遅延処理を施し、複数の振動素子から得られる複数の受波信号を加算処理することにより受信ビームを形成する。なお、各振動素子から得られる受波信号に対して低雑音増幅等の処理を施してから、受信ビームフォーマ16に複数の受波信号が供給されてもよい。こうして受信ビームに沿った受信RF信号が得られる。
【0021】
受信ミキサ30は受信RF信号に対して直交検波を施して複素ベースバンド信号を生成する回路であり、2つのミキサ32,34で構成される。各ミキサは受信RF信号を所定の参照信号と混合する回路である。
【0022】
受信ミキサ30の各ミキサに供給される参照信号は、FM変調器20から出力されるFM連続波に基づいて生成される。つまり、FM変調器20から出力されるFM連続波が遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。
【0023】
π/2シフト回路26は遅延処理されたFM連続波の位相をπ/2だけずらす回路である。この結果、2つのミキサ32,34の一方から同相信号成分(I信号成分)が出力され、他方から直交信号成分(Q信号成分)が出力される。なお、受信ミキサ30の後段に設けられたLPF(ローパスフィルタ)36,38により、同相信号成分および直交信号成分の各々の高周波数成分がカットされ、検波後の必要な帯域のみの復調信号が抽出される。
【0024】
FFT処理部(高速フーリエ変換処理部)42は、復調信号(同相信号成分および直交信号成分)の各々に対してFFT演算を実行する。その結果、FFT処理部42において復調信号が周波数スペクトラムに変換される。なお、FFT処理部42から出力される周波数スペクトラムは、回路の設定条件などにより周波数分解能δfの周波数スペクトラムデータとして出力される。
【0025】
ドプラ情報抽出部44は、周波数スペクトラムに変換された復調信号からドプラ信号を抽出する。後に詳述するが、図1の超音波診断装置では、遅延回路25における遅延処理により目標位置が設定され、ドプラ情報抽出部44において目標位置からのドプラ信号が選択的に抽出される。ドプラ情報抽出部44は、例えば、時間的に変化するドプラ信号の表示波形を形成する。なお、生体内の各深さ(各位置)ごとにドプラ信号を抽出して、例えば、超音波ビーム(音線)上の各深さごとに生体内組織の速度を算出し、リアルタイムで出力してもよい。また、超音波ビームを走査させて二次元的あるいは三次元的に生体内組織の各位置の速度を算出してもよい。
【0026】
表示部46は、ドプラ情報抽出部44において形成されたドプラ信号の波形などを表示する。なお、図1に示す超音波診断装置内の各部は、システム制御部50によって制御される。つまり、システム制御部50は、送信制御や受信制御や表示制御などを行う。
【0027】
以上、概説したように、図1の超音波診断装置では、連続波(CW)を変調波でFM変調した超音波(FMCW波)を送受波して受信信号が得られて、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される。そこで、目標位置からのドプラ情報が選択的に抽出される原理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0028】
<位置選択性について>
周波数f0のRF波(搬送波)に対して、周波数fmの正弦波によりFM変調を施したFMCW送信波は次式のように表現できる。次式において、Δfは周波数変動幅の0−P値(ゼロピーク値:最大周波数偏移)であり、最大周波数偏移Δfと変調周波数fmの比であるβはFMの変調指数(変調度)である。
【0029】
【数1】

【0030】
また、ドプラシフトを伴う場合のFMCW受信波は、生体における往復の減衰をαとすると次式で表現できる。なお、次式において、fmに対するドプラシフトは、f0のシフト分fdに比べて小さいので無視している。
【0031】
【数2】

【0032】
数2式で表される受信波形は、超音波振動子を介して受信される信号波形(受信RF信号)である。FMCWドプラでは、受信RF信号に対する復調処理において、FMCW送信波を参照信号として受信波と乗算を行う。図1を利用して説明したように、FM変調器20から出力されるFM連続波が参照信号として利用され、遅延回路25において遅延処理され、ミキサ32には遅延処理されたFM連続波が直接供給され、一方、ミキサ34には遅延処理されたFM連続波がπ/2シフト回路26を経由して供給される。したがってミキサ32へ供給される参照信号vrI(t)とミキサ34へ供給される参照信号vrQ(t)は、次式のように表現できる。
【0033】
【数3】

【0034】
数3式において、φmrは、遅延回路25における遅延処理により任意に設定できる参照信号の位相を示しており、φ0rは、任意に設定した参照信号の位相に対応して決まる搬送波の位相変化量を示している。
【0035】
受信ミキサ30では、復調処理として直交検波が行われる。つまり、ミキサ32において、受信RF信号vR(t)と参照信号vrI(t)の乗算に相当する処理が実行され、また、ミキサ34において、受信RF信号vR(t)と参照信号vrQ(t)の乗算に相当する処理が実行される。
【0036】
ミキサ32における受信RF信号vR(t)と参照信号vrI(t)の乗算vDI(t)は次式のように表現される。なお、次式の計算途中において、周波数2f0の成分が消去されている。これは、LPF36によって除去される。
【0037】
【数4】

【0038】
ここで、ベッセル関数に関する数5式の公式を利用すると、数4式はさらに数6式のように計算される。
【0039】
【数5】

【0040】
【数6】

【0041】
一方、ミキサ34における受信RF信号vR(t)と参照信号vrQ(t)の乗算vDQ(t)は次式のように表現される。なお、次式の計算途中において、周波数2f0の成分が消去されている。これは、LPF38によって除去される。
【0042】
【数7】

【0043】
ここで、数6式のvDI(t)と数7式のvDQ(t)とに基づいて、複素ベースバンド信号を定義する。まず、vDI(t)とvDQ(t)に含まれている直流(DC)成分、変調周波数fmの偶数次高調波成分を次式のように表現する。
【0044】
【数8】

【0045】
次に、vDI(t)とvDQ(t)に含まれている変調周波数fmの成分、変調周波数fmの奇数次高調波成分を次式のように表現する。
【0046】
【数9】

【0047】
数8式と数9式から、直交検波後のベースバンド信号において、ドプラシフトfdを含んだドプラ信号は、DC成分と変調周波数fmの成分と変調周波数fmの高調波成分とからなる複数の成分の各々についての両側帯波として出現することがわかる。
【0048】
ここで、受信信号と参照信号の位相を互いに揃えた場合、つまり、遅延回路25における遅延処理によりφmrを調整してφmと一致させた場合(φmr=φm)を考える。φmrとφmを一致させた場合には、数4式におけるkが0となる。この結果をベッセル関数に適用すると、第1次ベッセル関数の性質により、数10式のように、0次のベッセル関数の値のみが1となり、それ以外のベッセル関数の値は0となる。そして、数10式に示す結果を数8式と数9式に適用すると数11式のとおりとなる。
【0049】
【数10】

【0050】
【数11】

【0051】
数11式は、参照波(参照信号)の位相φmrを送受信間の位相差φmに設定すると、圧縮変換により、DC成分(直流近傍成分)に対応したドプラ信号のみが抽出できることを示している。
【0052】
上述した数2式の受信波形は、ある深さからの受信信号の波形である。これに対し、FMCW送信波を利用して、実際に受信用振動子12において得られる受信信号は、複数の深さからの信号が合成された受信信号である。受信ミキサ30においては、複数の深さからの信号が合成された受信信号と参照信号との乗算に相当する処理が実行される。
【0053】
数8式などに現れた直流信号成分に対応したドプラ信号の振幅を支配するJ0(kβ)は、第1次ベッセル関数の性質により、kβが0のときに最大値である1となり、kβが0からずれると急激に小さくなる。そのため、遅延回路25においてφmrを調整し、目標位置から得られる受信信号のφmと一致させると、目標位置におけるJ0(kβ)が最大値である1となり、目標位置以外におけるJ0(kβ)が極端に小さな値となる。したがって、遅延回路25においてφmrを調整し、目標位置から得られる受信信号のφmと一致させることにより、目標位置におけるドプラ信号(直流信号成分)を選択的に抽出することができる。
【0054】
以上のように、ドプラ信号が選択的に抽出される目標位置は、遅延回路25における遅延処理に基づいて決定される。図1のシステム制御部50は、目標位置の深さに応じて遅延回路25における遅延時間を制御する。
【0055】
さらに、図1の超音波診断装置では、周波数変調の影響に伴って発生する不要波成分の状態が確認される。そこで、周波数変調に伴って発生する不要波成分と、その状態を確認するための処理について以下に詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0056】
<周波数変調に伴う不要波成分について>
ドプラ法の基本原理において、移動体(例えば血流)に関するドプラ周波数(ドプラシフト周波数)は、計測に利用される超音波の周波数と移動体の速度に比例する。図1の超音波診断装置においては、FM連続波を利用しており、FM連続波は、数1式に示したように、周波数(瞬時周波数)が周期的に変化している。そのため、移動体の速度が一定の場合においても、FM連続波を利用してその移動体のドプラ周波数を計測すると、FM連続波の周期性に伴ってドプラ周波数が周期的に変動する。
【0057】
図2は、FM連続波の周期性がドプラ周波数へ与える影響を説明する図である。図2には、ドプラシフトの影響を受けていないFM連続波70と、ドプラシフトの影響を受けたFM連続波72が図示されている。なお、図2の横軸は時間軸であり、図2の縦軸にはFM連続波70,72の瞬時周波数が示されている。
【0058】
図1の超音波診断装置における超音波の送信信号は、その瞬時周波数がFM連続波70のように周期的に正弦波状に変化する。そのため、移動体の速度が一定の場合においてもドプラシフトが周期的に変化し、結果としてFM連続波72のような波形が得られる。つまり、FM連続波70の瞬時周波数が低い(小さい)時刻においては、比較的小さいドプラ周波数fdLとなり、FM連続波70の瞬時周波数が高い(大きい)時刻においては、比較的大きいドプラ周波数fdHとなる。
【0059】
このように、FM連続波70を利用して得られるドプラ周波数の変動は、FM連続波70の周期性に対応した周期的なものとなる。特に、移動体の速度が大きい場合には、ドプラ周波数fdLとドプラ周波数fdHの差も大きくなり、ドプラ周波数の周期性が比較的顕著になる。一方、移動体の速度が小さい場合にはドプラ周波数fdLとドプラ周波数fdHの差が小さくなり、ドプラ周波数の周期性が比較的目立たなくなる。
【0060】
図1の超音波診断装置における超音波の送信信号は、周波数f0のRF波(搬送波)に対して、周波数fmの正弦波によりFM変調を施したFMCW送信波であり、その信号は前述の数1式のとおりである。その送信信号(FMCW送信波)の瞬時角周波数は、数1式の位相項を時間微分して次式のように表現される。
【0061】
【数12】

【0062】
ここで、ドプラシフトを音速(超音波の速度)cと移動体の速度vの比だけ、瞬時周波数が変化する量として定義する。この場合、相対速度vに対するドプラ周波数変化は往復で速度2vとして数13式で表現される。さらに、数13式で表現されるドプラ周波数変化を瞬時位相に変換すると数14式となる。
【0063】
【数13】

【0064】
【数14】

【0065】
数14式で表現される瞬時位相は、移動体からの受信波の瞬時位相に対して、初項で表現される搬送波f0によるドプラシフトに加え、第2項で表現される変調波によるドプラシフトが追加されることを意味している。なお、第3項は積分定数であり、ドプラ周波数の位相を意味する。一般に、血流などの速度計測では、ドプラ周波数の位相情報までは必要としない。また、時間的に変化しない位相成分であるため、速度計測において物理的に大きな意味を含んでいないと考える。
【0066】
受信波は、送受信時間差(目標位置までの往復の伝播時間)τだけ送信波よりも遅れて到着するため、送受信時間差τを考慮すると、受信波は次式のように表現される。
【0067】
【数15】

【0068】
受信ミキサ30では、送信波に実質的に同じ波形の参照波(参照信号)と受信波との乗算(次式)に相当する処理が実行される。
【0069】
【数16】

【0070】
数16式から2f0の周波数成分をローパスフィルタで除去すると、受信ミキサ30の出力(例えばLPF36の出力)は数17式のように表現することができる。また、数17式の結果について、さらに計算を進めると、数18式のようになる。
【0071】
【数17】

【0072】
【数18】

【0073】
数18式は、復調信号に含まれるドプラ信号が、新たに定義された変調度β´(数17式参照)と変調周波数fmにより周波数変調された信号に等しいことを意味している。
【0074】
図3は、周波数変調の影響を受けたドプラ信号を説明するための図であり、図3には、数18式に対応したドプラ信号の周波数スペクトラムが示されている。なお、図3の横軸は周波数であり縦軸は電力である。
【0075】
図3や数18式に示されるように、変調信号の影響を受けたドプラ信号には、変調周波数fmのベッセル関数のゼロ次成分であるJ0(β´)に加え、1次成分J1(β´),2次成分J2(β´),3次成分J3(β´),・・・の折り返し成分が含まれている。なお、直流近傍の成分(ゼロ次成分)は周波数0からドプラ周波数fdだけ離れた位置に現れており、1次成分は周波数fmからドプラ周波数fdだけ離れた位置に現れており、2次成分は周波数2fmからドプラ周波数fdだけ離れた位置に現れている。
【0076】
図4は、周波数変調の影響を受けたドプラ信号の時間変化波形を示す図であり、図3の周波数スペクトラムの時間変化を示している。つまり、図4には、変調周波数fmのゼロ次成分に対応した直流近傍のドプラ信号と変調周波数fmの1次成分(−1次成分)と2次成分の各々についての時間変化波形が示されている。横軸に示す時間の経過に伴って測定対象である血流などの速度が変化すると、速度の変化に応じてドプラ周波数fdも変化する。そのため図4に示す各成分の波形は、横軸に示す時間の経過に従って縦軸に示す周波数方向に変化している。
【0077】
本実施形態においては、変調周波数fmのゼロ次成分に対応したドプラ信号(直流近傍の成分)を観測対象とし、変調周波数fmの1次成分,2次成分,3次成分,・・・を不要波成分とする。
【0078】
図4に示すように、直流近傍の成分は周波数ゼロの軸を基準として時間的に変動する。また、例えば−1次成分は、周波数−fmの軸を基準として時間的に変動する。ドプラ周波数(ドプラシフト量)が小さい場合には、例えば、図4に示す時刻Taにおいては、直流近傍の成分は周波数ゼロの軸の近傍にあり、また、−1次成分は周波数−fmの軸の近傍にある。これに対し、ドプラ周波数が大きくなると、例えば、図4に示す時刻Tbにおいては、直流近傍の成分は変調周波数fmを超え、また、−1次成分は周波数ゼロの軸を超えている。つまり、観測対象となる直流近傍の成分の波形が変動する周波数帯域内に、−1次の不要波成分が入り込んでいる。そのため、この不要波成分が誤って観測対象と判断されてしまう可能性がある。
【0079】
そこで、図1の超音波診断装置は、観測対象となるドプラ信号と不要波成分が互いに重なり合う現象を軽減するために、望ましくは互いに重なり合うことが無くなるように、変調連続波を調整する。以下にその調整処理について詳述する。なお、図1に示した部分(構成)については以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0080】
<変調連続波の調整処理について>
図5は、変調連続波の基本調整前に得られる表示画像例を示す図である。表示画像101は、図1の表示部46に表示される画像であり、Bモード画像110とドプラ画像120を含んでいる。Bモード画像110は、例えば図1の超音波診断装置において、連続波の送信信号に換えてパルス波の送信信号が利用され、公知のBモード画像形成処理により形成される。
【0081】
FMCWによるドプラ計測を行う際には、それに先立ってBモード画像110が形成され、そして、Bモード画像110内に破線で示すビームカーソルが表示され、例えばユーザがビームカーソルを所望の診断部位を通るように設定し、さらにビームカーソル上においてユーザが所望の深さにドプラカーソル111を設定する。また、ユーザは、ドプラカーソル111の選択幅、つまり破線で示すビームカーソルに沿った目標位置の幅を設定する。この選択幅に応じてFMCWにおける周波数偏移Δf(数1式参照)が決定される。
【0082】
図6は、周波数偏移Δfと選択幅の関係を示す図であり、横軸を周波数偏移Δfとして縦軸に選択幅を示し、計算により得られた互いの関係が示されている。例えば、図6に示す計算結果を利用することにより、ユーザが設定した選択幅に対応した周波数偏移Δfを決定することができる。
【0083】
図5に戻り、ドプラカーソル111の選択幅が設定され、それに応じた周波数偏移Δfが決定されると、ユーザにより診断レンジLが設定され、それに応じて変調周波数fmが決定される。診断レンジLは深さ0(ゼロ)から深さLまでの診断範囲の全域幅である。例えば、Bモード画像110の表示レンジ(深さ0から最深部までの長さ)とFMCW計測における診断レンジLが同じ設定値であってもよい。
【0084】
診断レンジL(cm)に対応した変調周波数fm(Hz)は、例えば、変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが診断レンジの深さLとなるように設定される。具体的には、例えば超音波が深さLまでの距離を往復(距離にして2×L)する間に、変調連続波の変調周波数が丁度1周期だけ変化するように、変調周波数fmが次式のように設定される。なお、cは音速であり例えば1530(m/s)である。
【0085】
【数19】

【0086】
そして、ドプラカーソル111の位置、例えばドプラカーソル111の選択幅の中央位置の深さdが目標位置とされ、目標位置の深さdに応じて遅延回路25(図1)の遅延量が設定されて、FMCWによるドプラ計測が開始される。
【0087】
図5に示すドプラ画像120は、そのドプラ計測により得られる目標位置(ドプラカーソル111の位置)におけるドプラ信号の時間変化波形(図4参照)を示す画像である。FMCWにおいて計測される目標位置のドプラ信号は、図4において説明したように、必要とされるドプラ信号(直流近傍の成分)の周波数が変調周波数fmを超えると、不要波成分の周波数領域に入り込む。また、周波数が変調周波数fmを超えると、−1次成分の不要波が必要とされるドプラ信号の周波数領域に入り込む。つまり、ドプラ周波数が変調周波数fmを超えると、必要とされるドプラ信号Dと不要波成分が互いに重なり合い、ユーザがこれらを混同してしまう恐れがある。
【0088】
そこで、本実施形態においては、ドプラ周波数が変調周波数fmを超え難いように、望ましくは、ドプラ周波数が変調周波数fmを超えることが無いように、変調周波数fmができる限り大きくなるように調整される。
【0089】
図7は、変調連続波の基本調整後に得られる表示画像例を示す図である。図5の表示画像例と同様に、図7の表示画像101は、図1の表示部46に表示される画像であり、Bモード画像110とドプラ画像120を含んでいる。
【0090】
基本調整においても、FMCWによるドプラ計測を行う際には、それに先立ってBモード画像110が形成される。そして、Bモード画像110内に破線で示すビームカーソルが表示され、例えばユーザがビームカーソルを所望の診断部位を通るように設定し、さらにビームカーソル上においてユーザが所望の深さにドプラカーソル111を設定する。また、ユーザはドプラカーソル111の選択幅、つまり破線で示すビームカーソルに沿った目標位置の幅を設定する。この選択幅に応じてFMCWにおける周波数偏移Δf(数1式と図6参照)が決定される。
【0091】
そして、ドプラカーソル111の選択幅が設定され、それに応じた周波数偏移Δfが決定されると、基本調整においては、変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが目標位置の深さdとなるように、変調連続波の変調周波数fmが設定される。例えば、超音波が深さdまでの距離を往復(距離にして2×d)する間に、変調連続波の変調周波数が丁度1周期だけ変化するように、変調周波数fmが次式のように設定される。なお、cは音速であり例えば1530(m/s)である。
【0092】
【数20】

【0093】
数20式と数19式を比較すると、L≧dであるため、数20式により得られる変調周波数fmが数19式の変調周波数fm以上となる。つまり、図7における基本調整後の変調周波数fmが、図5における基本調整前の変調周波数fm以上となる。
【0094】
そして、図7においても、ドプラカーソル111の位置、例えばドプラカーソル111の選択幅の中央位置の深さが目標位置とされ、目標位置の深さdに応じて遅延回路25(図1)の遅延量が設定されて、FMCWによるドプラ計測が開始される。
【0095】
図7に示すドプラ画像120は、そのドプラ計測により得られる目標位置(ドプラカーソル111の位置)におけるドプラ信号の時間変化波形を示す画像である。図5と比較して、図7においては変調周波数fmが大きく設定されているため、ドプラ周波数が変調周波数fmを超えておらず、従って、必要とされるドプラ信号Dと不要波成分が互いに重なり合っていない。
【0096】
このように、目標位置の深さdに応じて変調周波数fmを設定(基本調整)することにより、ドプラ周波数が変調周波数fmを超え難いように、望ましくは、ドプラ周波数が変調周波数fmを超えないように、変調周波数fmをできる限り大きく設定することができる。
【0097】
但し、目標位置の深さdに応じて変調周波数fmを調整することにより、診断レンジL内において、目標位置の深さ方向に沿って周期的に擬似的な目標位置(擬似目標位置)が現れる。これは、診断レンジL内において変調連続波が深さLまでの距離を往復する際に変調周波数の1周期以上に亘って変調連続波の周波数が変化し、目標位置以外にも参照信号と相関関係の強い位置が周期的に現れるためである。そして、擬似目標位置に移動体などが存在してドプラ情報が有ると、目標位置におけるドプラ情報と擬似目標位置のドプラ情報とが混在した状態で計測されてしまう。そこで、本実施形態においては、擬似目標位置にドプラ情報が有る場合に、基本調整された変調周波数fmがさらに微調整されて擬似目標位置の深さが修正される。
【0098】
図8は、変調周波数の微調整を説明するための図である。図8(A)は、変調周波数を微調整する前の設定状態を示している。つまり、Bモード画像110を利用して破線で示すビームカーソルが設定され、そのビームカーソル上において深さdの位置にドプラカーソル111が設定されている。
【0099】
基本調整(図7参照)により目標位置の深さdに応じて変調周波数fmを設定し、FMCWによるドプラ計測を行うと、診断レンジL内において変調連続波が深さLまでの距離を往復する際に変調周波数の1周期以上に亘って変調連続波の周波数が変化し、目標位置以外にも参照信号と相関関係の強い位置が周期的に現れる。つまり、変調連続波の変調周波数の1周期に対応した深さをdmとすると、目標位置である深さdから深さ周期dmごとに擬似的な目標位置(擬似目標位置)が現れる。図8(A)において、破線の擬似カーソル112が擬似目標位置を示している。
【0100】
そのため、擬似目標位置に移動体などが存在する状態で、FMCWによるドプラ計測を行うと、目標位置におけるドプラ情報と擬似目標位置のドプラ情報とが混在した状態で計測されてしまう。
【0101】
そこで、本実施形態においては、微調整に先立って、擬似目標位置におけるドプラ情報の有無が確認される。その確認においては、まず、変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが診断レンジの深さLとなるように、例えば数19式に基づいて変調周波数fmが設定(特別調整)される。なお、周波数偏移Δfは、ドプラカーソル111の選択幅に応じて固定されたままでよい。
【0102】
次に、特別調整された変調周波数fmの変調連続波を利用してFMCWによるドプラ計測を行い、擬似目標位置におけるドプラ信号を計測する。つまり、図8(A)の例において、深さ(d+dm)の位置に合わせて遅延回路25(図1)の遅延量が設定されてFMCWによるドプラ計測が行われ、さらに、深さ(d+2dm)の位置に合わせて遅延回路25(図1)の遅延量が設定されてFMCWによるドプラ計測が行われる。
【0103】
そして、深さ(d+dm)と深さ(d+2dm)のいずれにもドプラ信号が無ければ、擬似目標位置にドプラ情報が無いと判断され、微調整は行わずに、基本調整(図7参照)により目標位置の深さdに応じて設定された変調周波数fmでFMCWのドプラ計測が行われる。この場合には、擬似目標位置からのドプラ情報が混在しない状態で、目標位置である深さdにおけるドプラ情報が計測できる。
【0104】
これに対し、深さ(d+dm)と深さ(d+2dm)の少なくとも一方にドプラ信号が有れば、擬似目標位置にドプラ情報が有ると判断されて微調整が行われる。つまり、基本調整(図7参照)により目標位置の深さdに応じて設定された変調周波数fmが少しだけ小さくなるように、例えば微調整前の90パーセント程度の大きさに微調整される。
【0105】
図8(B)は、変調周波数を微調整した後の設定状態を示している。変調周波数fmが少しだけ小さくなるように微調整されると、変調周波数fmの1周期に対応した深さの周期dmはそれに応じて少しだけ大きくなる。それに伴い、目標位置である深さdから深さ周期dmごとに現れる擬似目標位置の深さも少しだけずれる。例えば、図8(A)に示す擬似カーソル112の位置から、図8(B)に示す擬似カーソル112の位置に、擬似目標位置の深さが修正される。もちろん、目標位置の深さdは、微調整の前後で変更されない。
【0106】
そして、再び、診断レンジの深さLに合わせて特別調整された変調周波数fmの変調連続波を利用してFMCWによるドプラ計測を行い、修正された擬似目標位置におけるドプラ信号を計測する。つまり、図8(B)の例においては、深さ(d+dm)の位置に合わせて遅延回路25(図1)の遅延量が設定されてFMCWによるドプラ計測が行われる。
【0107】
なお、図8(B)の例においても、深さ(d+2dm)の位置に擬似目標位置が現れるものの、診断レンジLの外側であるため、その擬似目標位置から得られるドプラ信号は無視できる程度に微弱であると判断される。もちろん、深さ(d+2dm)の位置におけるドプラ信号を念のため確認するようにしてもよい。
【0108】
そして、深さ(d+dm)にドプラ信号が無ければ、擬似目標位置にドプラ情報が無いと判断され、微調整された変調周波数fmにより、FMCWのドプラ計測が行われる。この場合には、擬似目標位置からのドプラ情報が混在しない状態で、目標位置である深さdにおけるドプラ情報が計測できる。
【0109】
一方、深さ(d+dm)にドプラ信号が有れば、擬似目標位置にドプラ情報が有ると判断され、さらに微調整が行われる。つまり、微調整された変調周波数fmがさらに少しだけ小さくなるように微調整される。
【0110】
こうして、擬似目標位置にドプラ情報が無いと判断されるまで微調整を繰り返すことにより、変調連続波の変調周波数fmを最終調整し、最終調整された変調連続波を利用して目標位置の深さdにおけるドプラ信号が計測される。
【0111】
このように、本実施形態によれば、変調周波数fmをできる限り大きく設定することにより、必要とされるドプラ信号と不要波成分とが互いに重なり合うことを抑制しつつ、変調周波数fmを微調整することにより、目標位置におけるドプラ信号と擬似目標位置におけるドプラ信号が混在して計測されることを回避することができる。
【0112】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態等は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0113】
20 FM変調器、22 RF波発振器、24 変調波生成部、25 遅延回路、30 受信ミキサ、42 FFT処理部、44 ドプラ情報抽出部、46 表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調周波数に応じて周期的に周波数を変化させた変調連続波の送信信号を出力する送信処理部と、
前記送信信号に対応した超音波の送信波を生体に送波してその送信波に伴う受信波を生体から受波することにより受信信号を得る超音波送受部と、
目標位置との間の相関関係を調整しつつ受信信号に対して復調処理を施すことにより、目標位置に対応した復調信号を得る復調処理部と、
前記復調信号から目標位置におけるドプラ情報を得るドプラ情報取得部と、
を有し、
前記目標位置の深さに応じて前記変調周波数を調整する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記変調連続波の変調周波数の1周期に対応する深さが前記目標位置の深さとなるように、前記変調連続波の変調周波数を基本調整する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記基本調整された変調連続波の変調周波数の周期に応じて前記目標位置の深さ方向に沿って周期的に現れる擬似目標位置に、ドプラ情報が無いと判断された場合に、当該基本調整された変調連続波を利用して前記目標位置におけるドプラ情報を得る、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の超音波診断装置において、
前記基本調整された変調連続波の変調周波数の周期に応じて前記目標位置の深さ方向に沿って周期的に現れる擬似目標位置に、ドプラ情報が有ると判断された場合に、当該基本調整された変調連続波の変調周波数を微調整して擬似目標位置の深さを修正する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記擬似目標位置にドプラ情報が無いと判断されるまで前記微調整を繰り返すことにより変調周波数を最終調整し、最終調整された変調連続波を利用して前記目標位置におけるドプラ情報を得る、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記目標位置と擬似目標位置を含むように設定された診断レンジに応じて、前記変調周波数の1周期に対応する深さが診断レンジの深さとなるように、前記変調連続波の変調周波数を特別調整し、
特別調整された変調連続波を利用して得られる受信信号に対して、擬似目標位置との間の相関関係を調整しつつ復調処理を施すことにより、擬似目標位置に対応した復調信号を取得し、
これにより、擬似目標位置におけるドプラ情報の有無が確認される、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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