説明

超音波診断装置

【課題】少ない送受信回路で被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】超音波診断装置の2次元振動子アレイは、第1振動子と、第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子とを含む振動子列が行方向に複数配列されている。第1送受信部は、一の振動子列に含まれる第1振動子及び第2振動子に対して第1駆動信号を送信し、第1振動子及び当該第2振動子それぞれでエコー信号を受信する。第2送受信部は、一の振動子列に配列された第2振動子に対して第2駆動信号を送信し、第2振動子でエコー信号を受信する。第1スイッチは、第1振動子と第1送受信部との接続を切り替える。第2スイッチは、第2振動子と第1送受信部との接続を切り替える。第3スイッチは、第2振動子と第2送受信部との接続を切り替える。制御部は、第2振動子の接続先を、第1送受信部と第2送受信部との間で切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波プローブを用いて被検体内に超音波を送信してその反射波を受信することにより、被検体の生体情報(被検体内の画像)を取得するものである。
【0003】
装置本体から、超音波プローブ内の複数の微小振動子毎に対して異なる遅延時間で電気パルスが印加される。複数の微小振動子により送信ビームが形成され、当該送信ビームは被検体内に照射される。そして、被検体内からの反射波を、送信ビームを照射した微小振動子と同一の微小振動素子で受信する。受信された反射波に対して、信号処理回路等で増幅遅延加算することにより受信ビームが形成される。さらに、受信ビームから得られたRF信号を画像処理回路等で検波・圧縮することにより画像信号が得られる。特に電子走査型超音波診断装置は、この送信ビームにより電子的に被検体を走査することで被検体内の画像を得るものである。
【0004】
また、この電子走査型超音波診断装置では、送信時間に応じて受信信号に遅延をかけることで電子的に焦点を移動しながら受信ビーム形成を行い、高分解能の画像を取得する、所謂「ダイナミックフォーカス」の手法を用いることができる。
【0005】
このような超音波診断装置に用いられる超音波プローブとしては、1Dアレイプローブや2Dアレイプローブが知られている。
【0006】
1Dアレイプローブは、振動子を行方向(以下、「走査方向」という場合がある)に複数配置した構成である。1Dアレイプローブは、走査方向にはダイナミックフォーカスの手法を用い、異なる深さの画像データを取得することができる。一方、走査方向と垂直な方向(列方向。以下、「エレベーション方向」という場合がある)において、1Dアレイプローブは、音響レンズや凹面振動子により焦点位置や開口幅が一意に決定される。従って、1Dアレイプローブは、所定の焦点位置では送信ビーム径を小さくできるが、それ以外の部分では送信ビームが広がる。つまり、エレベーション方向の分解能が低下する。
【0007】
2Dアレイプローブは、複数の振動子を走査方向とエレベーション方向に2次元的に配列した構成である。2Dアレイプローブは振動子毎に送受信回路を有しており、それぞれの振動子を個別に駆動させることによって焦点位置や開口幅を任意に設定することができる。よって、被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−278918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、2Dアレイプローブにおいては、振動子毎に送受信回路が設けられているため、超音波診断装置(超音波プローブ)のサイズや重量が大きくなるという問題や、製造にかかるコストがかさむという問題がある。
【0010】
実施形態は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、少ない送受信回路で被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この実施形態に係る超音波診断装置は、被検体に超音波を送信し、被検体からのエコー信号に基づいて超音波画像を生成する。超音波診断装置は、2次元振動子アレイと、第1送受信部と、第2送受信部と、第1スイッチと、第2スイッチと、第3スイッチと、制御部とを有する。2次元振動子アレイは、第1振動子と、第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子とを含む振動子列が行方向に複数配列されている。第1送受信部は、一の振動子列に含まれる第1振動子及び第2振動子に対して第1駆動信号を送信し、且つ当該第1振動子及び当該第2振動子それぞれで受けたエコー信号を受信するために設けられている。第2送受信部は、一の振動子列に配列された第2振動子に対して第2駆動信号を送信し、且つ当該第2振動子で受けたエコー信号を受信するために設けられている。第1スイッチは、第1振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。第2スイッチは、第2振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。第3スイッチは、第2振動子と第2送受信部との接続及び非接続を切り替える。制御部は、第2スイッチ及び第3スイッチを制御することにより、第2振動子の接続先を、第1送受信部と第2送受信部との間で切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態に係る超音波診断装置のブロック図である。
【図2】本明細書における1.25Dアレイプローブの構成を説明するための図である。
【図3】本明細書における1.5Dアレイプローブの構成を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係る2次元振動子アレイの構成を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る2次元振動子アレイの動作を示す図である。
【図6】第1実施形態に係る2次元振動子アレイの動作を示す図である。
【図7】第1実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係る2次元振動子アレイの構成を示す図である。
【図9】第2実施形態に係る2次元振動子アレイの動作を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る2次元振動子アレイの動作を示す図である。
【図11】第2実施形態に係る2次元振動子アレイの動作を示す図である。
【図12】第2実施形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1実施形態]
図1から図7を参照して、第1実施形態に係る超音波診断装置について説明する。
【0014】
<超音波診断装置の構成>
図1は、超音波診断装置100のブロック図である。超音波診断装置100は、超音波プローブ1と、本体部2とを含んで構成されている。本体部2は、送受信部3と、信号処理部4と、画像生成部5と、合成部6と、表示制御部7と、ユーザインターフェース(UI)8と、制御部9とを含んで構成されている。
【0015】
(超音波プローブ1)
超音波プローブ1には、複数の超音波振動子(以下、「振動子」という場合がある)が走査方向及びエレベーション方向に2次元的に配置された2次元振動子アレイ10が配置されている。超音波プローブ1は、本体部2と接続されることにより被検体に超音波を送信し、被検体からの反射波をエコー信号として受信することができる。また、本実施形態における2次元振動子アレイ10は1.25Dアレイプローブ及び1.5Dアレイプローブと同様の機能を有する。本実施形態における2次元振動子アレイ10の構成の詳細、及び1.25Dアレイプローブ・1.5Dアレイプローブの詳細については後述する。
【0016】
(送受信部3)
送受信部3は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させ、超音波プローブ1が受けたエコー信号を受信する。送受信部3は、受信したエコー信号を信号処理部4に出力する。送受信部3は、送信部31と受信部32とを含んで構成されている。なお、本実施形態では、振動子の数に対応して送受信部3は複数設けられている。また、送受信部3は超音波プローブ1内に設けられていてもよい。
【0017】
(送信部31)
送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して超音波を発生させる。送信部31は、超音波プローブ1に駆動信号を供給して所定の焦点にビームフォームされた超音波を送信させる。所定の焦点に対するビームフォームは、たとえば、図示しない音響レンズによりなされる。送信部31は、たとえば図示しないクロック発生器と、送信遅延回路と、パルサ回路とを有する。クロック発生器は、超音波信号の送信タイミングや送信周波数を決めるクロック信号を発生する。送信遅延回路は、超音波を所定の深さに集束させるための集束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間とに従って、超音波の送信時に遅延をかけて送信フォーカスを実施する。パルサ回路は、超音波振動子に対応する個別チャンネルの数分のパルサを有する。パルサ回路は、遅延がかけられた送信タイミングで駆動パルス(駆動信号)を生成し、超音波プローブ1の振動子に駆動パルス(駆動信号)を供給する。
【0018】
(受信部32)
受信部32は、超音波プローブ1が受信したエコー信号を受信する。受信部32は、受信したエコー信号に対して遅延処理を行うことにより、アナログのエコー信号を整相されたデジタルのデータに変換する。受信部32は、たとえば図示しないプリアンプ回路と、A/D変換器と、受信遅延回路と、加算器と有する。プリアンプ回路は、超音波プローブ1の振動子から出力されるエコー信号を受信チャンネルごとに増幅する。A/D変換器は、増幅されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に変換されたエコー信号に、受信指向性を決定するために必要な遅延時間を与える。具体的には、受信遅延回路は、所定の深さからの超音波を集束させるための集束用遅延時間と、所定方向に対して受信指向性を設定するための偏向用遅延時間とを、デジタルのエコー信号に与える。加算器は、遅延時間が与えられたエコー信号を加算する。その加算によって、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。すなわち、受信遅延回路と加算器とによって、所定方向から得られたエコー信号は整相加算される。受信部32は、遅延処理が施されたエコー信号を信号処理部4に出力する。
【0019】
(信号処理部4)
信号処理部4は送受信部3から出力されたエコー信号に対して各種の信号処理を行う。たとえば、信号処理部4はBモード処理部を有する。Bモード処理部はエコー信号を送受信部3から受けて、エコー信号の振幅情報の映像化を行う。具体的には、Bモード処理部は、エコー信号に対してバンドパスフィルタ処理を行い、その後、出力信号の包絡線を検波し、検波されたデータに対して対数変換による圧縮処理を施す。また、信号処理部4はCFM(Color Flow Mapping)処理部を有していてもよい。CFM処理部は血流情報の映像化を行う。血流情報には、速度、分布、又はパワーなどの情報があり、血流情報は2値化情報として得られる。また、信号処理部4はドプラ処理部を有していてもよい。ドプラ処理部はエコー信号を位相検波することによりドプラ偏移周波数成分を取り出し、FFT処理を施すことにより血流速度を表すドプラ周波数分布を生成する。信号処理部4は、信号処理が施されたエコー信号(超音波ラスタデータ)を画像生成部5に出力する。
【0020】
(画像生成部5)
画像生成部5は、信号処理部4から出力された信号処理後のエコー信号(超音波ラスタデータ)に基づいて超音波画像データを生成する。画像生成部5は、例えばDSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)を有する。画像生成部5は、走査線の信号列で表される信号処理後のエコー信号を、直交座標系で表される画像データに変換する(スキャンコンバージョン処理)。画像生成部5は、Bモード処理部によって信号処理が施されたエコー信号にスキャンコンバージョン処理を施すことにより、被検体の組織の形状を表すBモード画像データを生成する。画像生成部5は、合成部6に超音波画像データを出力する。
【0021】
たとえば、超音波プローブ1及び送受信部3は、被検体内の断面を超音波で走査し、画像生成部5は、断面における組織の形状を2次元的に表すBモード画像データ(断層像データ)を生成する。また、超音波プローブ1及び送受信部3は、3次元領域を超音波で走査することによりボリュームデータを取得してもよい。この場合、画像生成部5は、ボリュームデータにボリュームレンダリングを施すことにより、組織の形状を立体的に表す3次元画像データを生成してもよい。または、画像生成部5は、ボリュームデータにMPR(Multi Planar Reconstruction)処理を施すことにより、任意の断面における画像データ(MPR画像データ)を生成してもよい。
【0022】
この実施形態に係る超音波診断装置は、図示しない画像記憶部を備えていてもよい。画像記憶部は、この実施形態に係る超音波診断装置により得られたデータを記憶する。たとえば画像記憶部は、送受信部3から出力されたエコー信号を記憶する。また、画像記憶部は、信号処理部4から出力された超音波ラスタデータを記憶してもよい。また、画像記憶部は、画像生成部5から出力された断層像データなどの超音波画像データを記憶してもよい。
【0023】
(合成部6)
合成部6は、複数の超音波画像データを合成することにより、合成画像データを生成する。合成部6による画像データの合成は公知の手法により行われる。たとえば複数の超音波画像データそれぞれに対して当該超音波画像データが取得された深度に応じた重みを付け、それらの画像を加算平均することにより、合成画像データを生成することができる。
合成部6は、合成画像データを表示制御部7に出力する。
【0024】
(表示制御部7)
表示制御部7は、合成画像データを合成部6から受けて、合成画像データに基づく合成画像を表示部81に表示させる。
【0025】
(ユーザインターフェース8)
ユーザインターフェース(UI)8は、表示部81と操作部82とを有する。表示部81は、CRTや液晶ディスプレイなどのモニタで構成されている。操作部82は、キーボードやマウスなどの入力装置で構成されている。
【0026】
(制御部9)
制御部9は、超音波診断装置100の各部の動作を制御する。たとえば、制御部9は、送受信部3による超音波の送受信を制御する。また、制御部9は、接続部S(後述)の切替制御を行う。
【0027】
なお、画像生成部5、合成部6、及び表示制御部7のそれぞれの機能は、プログラムによって実行されてもよい。一例として、画像生成部4、合成部6、及び表示制御部7はそれぞれ、CPU、GPU、又はASICなどの図示しない処理装置と、ROM、RAM、又はHDDなどの図示しない記憶装置とによって構成されていてもよい。記憶装置には、画像生成部5の機能を実行するための画像生成プログラムと、合成部6の機能を実行するための合成プログラムと、表示制御部7の機能を実行するための表示処理プログラムと、が記憶されている。CPUなどの処理装置が、記憶部に記憶されている各プログラムを実行することにより、各部の機能を実行する。
【0028】
<1.25Dアレイプローブ及び1.5Dアレイプローブについて>
ここで、本実施形態における「1.25Dアレイプローブ」、「1.5Dアレイプローブ」の用語について説明する。なお、本実施形態における2次元振動子アレイ10は、「1.25Dアレイプローブ」や「1.5Dアレイプローブ」と同様の機能を有するものであるが、その構成は大きく異なる。
【0029】
「1.25Dアレイプローブ」とは、超音波を送信する開口幅を変更できるプローブである。図2は、1.25Dアレイプローブの一例を示す回路図である。ここでは、エレベーション方向に3つの振動子が配列された振動子列が、走査方向に8列配置されており、振動子列と等しい数の送受信部3が設けられている構成に基づいて説明する。なお、振動子の数、振動子列の数は図2の例に限られない。
【0030】
図2に示すように、1.25Dアレイプローブは、1つの送受信部3に対し振動子Aを接続し、且つ同じ送受信部3に対して1つの接続部Sを介して振動子B1、B2を接続可能とする構成である(8列全てが同様の構成である)。
【0031】
このような構成において、接続部Sを開放している場合、送受信部3に対して振動子Aのみが接続される。つまり、振動子Aのみを駆動させることができる。
【0032】
一方、接続部Sを接続した場合、送受信部3に対して振動子A、B1、B2の全てが接続される。つまり、振動子A、振動子B1及び振動子B2を駆動させることができる。
【0033】
このように、1.25Dアレイプローブは、振動子B1及び振動子B2の駆動状態を切り替えることにより、開口幅を変更することができる。なお、1.25Dアレイプローブの焦点位置は音響レンズ(図示なし)によって一定に定まっている。よって、1.25Dアレイプローブは、超音波を送信する焦点位置を変更することはできない。
【0034】
一方、「1.5Dアレイプローブ」とは、超音波を送信する開口幅及び焦点位置を変更できるプローブである。たとえば、図3は、1.5Dアレイプローブの一例を示す回路図である。ここでは、エレベーション方向に3つの振動子が配列された振動子列が、走査方向に8列配置されている構成に基づいて説明する。なお、振動子の数、振動子列の数は図3の例に限られない。
【0035】
図3に示すように、1.5Dアレイプローブは、送受信部3Aに対し接続部SAを介して振動子Aを接続可能とし、且つ送受信部3Bに対して接続部SBを介して振動子B1、B2を接続可能とした構成である(8列全てが同様の構成である)。
【0036】
このような構成によれば、振動子B1及び振動子B2の駆動状態を切り替えることができる。つまり、1.25Dアレイプローブと同様の開口幅の変更が可能である。更に、振動子Aと、振動子B1及び振動子B2とは別々の送受信部に接続可能となっている。つまり、振動子Aと、振動子B1及び振動子B2とは異なる遅延時間で超音波を送信することができることから焦点位置を可変とすることができる。なお、1.5Dアレイプローブでは、1つの振動子列に対して2以上の送受信部が必要となることから、2Dアレイプローブ同様、超音波診断装置のサイズや重量が大きくなるという問題や、製造にかかるコストがかさむという問題がある。
【0037】
<2次元振動子アレイを含む超音波プローブの構成及び接続部の切替例>
(構成)
図4は、超音波診断装置100における2次元振動子アレイ10及び送受信部3の回路図である。ここでは、エレベーション方向に3つの振動子が配列された振動子列が、走査方向に8列配置されている構成に基づいて説明する。なお、実際の超音波プローブ1は、多数の振動子を有している(たとえば、1Dアレイプローブでは100〜200個)。つまり、2次元振動子アレイ10を構成する振動子数は図4における数(3×8=24個)に限られない。
【0038】
図4に示すように、2次元振動子アレイ10は、エレベーション方向に3つの振動子A、振動子B1及び振動子B2を有している。振動子B1及び振動子B2は、振動子Aを挟むように列方向に対称に配置されている。振動子A、振動子B1及び振動子B2は、振動子列を形成している。また、振動子列は、走査方向に複数配置されている。本実施形態では振動子列La〜Lhの8つが配置されている。なお、振動子B1及び振動子B2は、振動子Aを挟むように配置されていれば、「列方向に対称に」に配置されている必要はない。たとえば、振動子Aを挟むよう斜め方向(走査方向とエレベーション方向の間の方向)に振動子B1及び振動子B2が配置されていてもよい。また、振動子Aと振動子B1との間隔が振動子Aと振動子B2との間隔よりも広い(或いは狭い)構成とすることも可能である。本実施形態における振動子Aは、「第1振動子」の一例である。また、本実施形態における振動子B1及びB2は、「第2振動子」の一例である。
【0039】
送受信部3は、振動子列の数に対応して複数設けられている。本実施形態では、8つの振動子列La〜Lhに対応して8つの送受信部3a〜3hが設けられている。
【0040】
超音波プローブ1内には振動子列の数に対応して複数の接続部が設けられている。本実施形態では、振動子列La〜Lhに対応して接続部Sa〜Shが設けられている。また、各接続部Sa〜Shは、3つのスイッチs1、s2、s3を含んで構成されている。なお、接続部Sa〜Shは、本体部2内に設けられていてもよい。
【0041】
ここで、たとえば接続部Saに含まれるスイッチs1は、振動子Aと振動子列Laに対応する送受信部3aとの接続及び非接続を切り替える。この場合、送受信部3aが「第1送受信部」の一例である。
【0042】
また、たとえば接続部Saに含まれるスイッチs2は、振動子B1及びB2と振動子列Laに対応する送受信部3a(第1送受信部)との接続及び非接続を切り替える。送受信部3aは、振動子A、振動子B1及び振動子B2を駆動させるために駆動信号(「第1駆動信号」)を送信し、且つ振動子A、振動子B1及び振動子B2それぞれで受けたエコー信号を受信する。
【0043】
更に、たとえば接続部Seに含まれるスイッチs3は、振動子B1及びB2と振動子列Laに対応する送受信部3aとは異なる送受信部3eとを接続させる。この送受信部3eが「第2送受信部」の一例である。送受信部3eは、振動子B1及び振動子B2を駆動させるために第1駆動信号とは異なる駆動信号(「第2駆動信号」)を送信し、且つ振動子B1及び振動子B2で受けたエコー信号を受信する。なお、接続部Saに含まれるスイッチs3は、振動子B1及びB2と振動子列Leに対応する送受信部3eとは異なる送受信部3aとを接続させる。
【0044】
以上、振動子列Laと振動子列Leとの関係でスイッチs1、s2、s3の動作を説明したが、他の振動子列(LbとLf、LcとLg、LdとLh)の間でも同様である。
【0045】
スイッチs1〜s3の切替(振動子と送受信部との接続及び非接続)は、たとえば制御部9からの制御信号(ディレイ信号)に基づいて実行される。本実施形態におけるスイッチs1〜s3が「第1スイッチ〜第3スイッチ」の一例である。
【0046】
(接続部の切替例)
図5及び図6を参照して、接続部の切替例について説明する。図5及び図6は、振動子列La〜Lhと送受信部3a〜3hとの接続状態を示す回路図である。図5及び図6において、駆動する振動子は、塗りつぶしで示されている。図5では、異なる送受信部に接続されている振動子を区別するため、駆動する振動子を斜線とドットの塗りつぶしで示している。図6では駆動する振動子を斜線の塗りつぶしで示している。
【0047】
一般に、超音波診断装置100を用いて被検体の浅部を測定する場合には、開口幅を小さくして超音波を送信する。これは、各振動子の指向性が一定の幅を有しているため、開口幅を大きくすると浅部では測定対象外にも超音波が照射される可能性が高くアーチファクトが増えるためである。つまり、浅部を測定する場合には、装置の全ての振動子(つまり全ての送受信部)を用なくともよい。
【0048】
よって、浅部を測定する場合には、図5に示すように、振動子列Lc〜Lfに含まれる振動子のみを用いて測定を行う。この場合、図5に示すように、制御部9からの制御信号に基づき、振動子列Lc〜Lfに対応するスイッチs1が接続されると共に、振動子列La、Lb、Lg及びLhに対応するスイッチs3が接続される。
【0049】
つまり、振動子列Lc〜Lfの振動子A(図5では、斜線の塗りつぶしで示す)と振動子列Lc〜Lfの振動子B1、B2(図5では、ドットの塗りつぶしで示す)は異なる送受信部に接続される。たとえば、振動子列Lcの振動子Aは接続部Scのスイッチs1を介して送受信部3cに接続される。一方、振動子列Lcの振動子B1及びB2は、接続部Sgのスイッチs3を介して送受信部3gに接続される。この場合、送受信部3cが、「第1送受信部」に該当し、送受信部3gが、「第2送受信部」に該当する。
【0050】
従って、異なる遅延時間で超音波を送信することができることから焦点位置を可変とすることができる。すなわち、この場合、2次元振動子アレイ10は、1.5Dプローブと同様の機能を有する。
【0051】
一方、被検体の深部を測定する場合には浅部のような問題は少ないため、図示しない音響レンズの焦点位置に合わせ、開口幅を大きくして超音波を送信する。
【0052】
よって、深部を測定する場合には、図6に示すように、振動子列La〜Lhに含まれる全ての振動子(図6では、斜線の塗りつぶしで示す)を用いて測定を行う。この場合、図6に示すように、制御部9からの制御信号に基づき、全てのスイッチs1及びスイッチs2が接続される。
【0053】
つまり、振動子列La〜Lhに含まれる振動子は同じ送受信部3a〜3hに接続される。たとえば、振動子列Lcの振動子Aは接続部Scのスイッチs1を介して送受信部3cに接続される。また、振動子列Lcの振動子B1及びB2は、接続部Scのスイッチs2を介して送受信部3cに接続される。
【0054】
従って、大きい開口幅で超音波を送信することができる。すなわち、このようにスイッチの切り替えを行うことで開口幅を変更することができることから、2次元振動子アレイ10は、1.25Dプローブと同様の機能を有するといえる。
【0055】
<動作>
図7を参照して、本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。ここでは、被検体の浅部を測定した後、深部を測定する例について説明する。
【0056】
操作部82等から測定指示がなされると、制御部9は、浅部を測定するために接続部を駆動させる(S10)。具体的には、制御部9は、振動子列Lc〜Lfに対応するスイッチs1を駆動させ、振動子Aと送受信部3c〜3fとを接続させ、且つスイッチs3を駆動させ、振動子B1及びB2と送受信部3a、3b、3g及び3hとを接続させる。
【0057】
次に、制御部9は、送受信部3a〜3hに異なる遅延時間の駆動信号を送信する。送受信部3a〜3hは、当該駆動信号を振動子A、振動子B1及び振動子B2に送信する。振動子A、振動子B1及び振動子B2は駆動信号に基づいて超音波を発生させ、被検体に送信する(S11)。
【0058】
次に、送受信部3a〜3hは、S11で送信された超音波に基づくエコー信号を受信する。受信されたエコー信号は、信号処理部4において信号処理がなされた後、画像生成部5に送られる。画像生成部5は、当該エコー信号に基づいて浅部の画像データを生成する(S12)。
【0059】
次に、制御部9は、深部を測定するために接続部を切り替える(S13)。具体的には、制御部9は、振動子列La、Lb、Lg、Lhに対応するスイッチs1を駆動させ、振動子Aと送受信部3a、3b、3g、3hとを接続させる。また、制御部9は、スイッチs3を駆動させ、振動子B1及びB2と送受信部3a、3b、3g及び3hとの接続を解除する。更に、制御部9は、スイッチs2を駆動させ、振動子B1及びB2と送受信部3a〜3hとを接続させる。
【0060】
次に、制御部9は、送受信部3a〜3hに異なる遅延時間の駆動信号を送信する。送受信部3a〜3hは、当該駆動信号を振動子A、振動子B1及び振動子B2に送信する。振動子A、振動子B1及び振動子B2は駆動信号に基づいて超音波を発生させ、被検体に送信する(S14)。
【0061】
次に、送受信部3a〜3hは、S14で送信された超音波に基づくエコー信号を受信する。受信されたエコー信号は、信号処理部4において信号処理がなされた後、画像生成部5に送られる。画像生成部5は、当該エコー信号に基づいて深部の画像データを生成する(S15)。
【0062】
合成部6は、浅部の画像データと深部の画像データを合成し、浅部と深部の情報を有する一の画像データを得る(S16)。表示部81は、S16で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0063】
上記実施形態では、被検体の浅部を測定した後、深部を測定する例について述べたが、測定する順序は逆(深部を先に測定し、その後、浅部を測定する)でもよい。また、上記実施形態では、接続部Sの切り替えに伴って発生するノイズが超音波の送受信に与える影響を抑えるために、接続部Sの切替動作と超音波の送受信動作を別々に行う例で説明した。一方、高速に接続部の切替を行うことでノイズの発生を抑えるようなデバイスを用いることにより、切り替えと同時にパルス発生させることも可能となる。
【0064】
また、本実施形態では、開口を3分割(振動子A、振動子B1及び振動子B2)した構成で説明を行ったが、開口を4分割以上にすることも可能である。
【0065】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0066】
本実施形態に係る超音波診断装置100は、被検体に超音波を送信し、被検体からのエコー信号に基づいて超音波画像を生成する。超音波診断装置100は、2次元振動子アレイ10と、第1送受信部と、第2送受信部と、第1スイッチ(スイッチs1)と、第2スイッチ(スイッチs2)と、第3スイッチ(スイッチs3)と、制御部9とを有する。2次元振動子アレイ10は、第1振動子(振動子A)と、第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子(振動子B1及び振動子B2)とを含む振動子列が行方向に複数配列されている。第1送受信部は、一の振動子列に含まれる第1振動子及び第2振動子に対して第1駆動信号を送信し、且つ当該第1振動子及び当該第2振動子それぞれで受けたエコー信号を受信するために設けられている。第2送受信部は、一の振動子列に配列された第2振動子に対して第2駆動信号を送信し、且つ当該第2振動子で受けたエコー信号を受信するために設けられている。第1スイッチは、第1振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。第2スイッチは、第2振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。第3スイッチは、第2振動子と第2送受信部との接続及び非接続を切り替える。制御部9は、第2スイッチ及び第3スイッチを制御することにより、第2振動子の接続先を、第1送受信部と第2送受信部との間で切り替える。また、制御部9は、第1スイッチを制御することにより、第1振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。
【0067】
このように、制御部9により第1スイッチ、第2スイッチ及び第3スイッチの接続先やその組み合わせを切り替えることにより、1つの2次元振動子アレイ10を1.25Dアレイプローブ及び1.5Dアレイプローブと同様に機能させ、被検体の浅部や深部の画像データを取得することができる。つまり、2Dアレイプローブ(及び上記した1.5Dアレイプローブ)に対して少ない送受信回路で被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能な超音波診断装置を提供することができる。
【0068】
また、制御部9は、第2振動子の接続先の切り替えとして、第2振動子と第2送受信部とを接続させて第2振動子にエコー信号を受信させた後に、第2振動子と第1送受信部とを接続させる。
【0069】
このように、エコー信号を受信した後に振動子と送受信部との切り替えを行うことにより、切り替えに伴って発生するノイズの影響を減らすことができる。
【0070】
[第2実施形態]
図8から図12を参照して、第2実施形態に係る超音波診断装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する場合がある。
【0071】
超音波診断装置において、開口合成の手法を用いることにより、被検体の浅部から深部までの画像データを高分解能で取得することができる。
【0072】
開口合成は、2次元振動子アレイで受信されるエコー信号に基づく画像データを合成することにより行われる。たとえば、エレベーション方向に3つの振動子(振動子A、振動子B1及び振動子B2)が配列された振動子列が、走査方向に複数列配置されている2次元振動子アレイの場合、振動子Aで送受信を行って得られるエコー信号、振動子B1及び振動子B2で送受信を行って得られるエコー信号、振動子Aで送信を行い、振動子B1及び振動子B2で受信を行って得られるエコー信号、及び振動子B1及び振動子B2で送信を行い、振動子Aで受信を行って得られるエコー信号の4つのエコー信号に基づく4つの画像データを画像合成部等で合成処理することにより行われる。
【0073】
ここで、図2に示すような1.25Dアレイプローブでは、振動子Aが常に送受信部3と接続されているため、振動子B1及び振動子B2で送受信を行って得られるエコー信号を取得することができない。
【0074】
また、図3に示すような1.5Dアレイプローブでは、たとえば振動子Aで送信して振動子B1及び振動子B2で受信する際に、送受信の間に接続部SAを開放し、接続部SBを接続する必要がある。このように、送受信の間に接続部の切り替えを行うと、それに伴い発生するノイズの影響で正確なエコー信号を得ることができない場合がある。
【0075】
一方、2Dアレイプローブであれば、開口合成に必要なエコー信号を全て得ることが可能である。しかし、振動子毎に送受信回路が設けられているため、超音波診断装置(超音波プローブ)のサイズや重量が大きくなるという問題や、製造にかかるコストがかさむという問題がある。
【0076】
本実施形態は、少ない送受信回路で開口合成に必要なエコー信号を得ることにより、被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能な超音波診断装置について説明を行う。
【0077】
<2次元振動子アレイを含む超音波プローブの構成及び接続部の切替例>
(構成)
図8は、超音波診断装置100における2次元振動子アレイ10及び送受信部3の回路図である。ここでは、エレベーション方向に3つの振動子が配列された振動子列が、走査方向に8列配置されている構成に基づいて説明する。なお、2次元振動子アレイ10を構成する振動子数は図8における数(3×8=24個)に限られない。
【0078】
図8に示すように、2次元振動子アレイ10は、エレベーション方向に3つの振動子A、振動子B1及び振動子B2を有している。振動子B1及び振動子B2は、振動子Aを挟むように列方向に対称に配置されている。振動子A、振動子B1及び振動子B2は、振動子列を形成している。また、振動子列は、走査方向に複数配置されている。本実施形態では振動子列La〜Lhの8つ)。なお、振動子B1及び振動子B2は、振動子Aを挟むように配置されていれば、厳密に「列方向に対称に」に配置されている必要はない。本実施形態における振動子Aは、「第1振動子」の一例である。また、本実施形態における振動子B1及びB2は、「第2振動子」の一例である。
【0079】
送受信部3は振動子列の数に対応して複数設けられている。本実施形態では、8つの振動子列La〜Lhに対応して8つの送受信部3a〜3hが設けられている。
【0080】
超音波プローブ1内には振動子列の数に対応して複数の接続部が設けられている。本実施形態では、振動子列La〜Lhに対応して接続部Sa〜Shが設けられている。また、各接続部Sa〜Shは、2つのスイッチs1、s2を含んで構成されている。なお、接続部Sa〜Shは、本体部2内に設けられていてもよい。
【0081】
ここで、たとえば接続部Saに含まれるスイッチs1は、振動子Aと振動子列Laに対応する送受信部3aとの接続及び非接続を切り替える。本実施形態におけるスイッチs1が「第1スイッチ」の一例である。また、この場合の送受信部3aが「第1送受信部」の一例である。
【0082】
また、たとえば接続部Saに含まれるスイッチs2は、振動子B1及びB2と振動子列Laに対応する送受信部3a(第1送受信部)との接続及び非接続を切り替える。送受信部3aは、振動子A、振動子B1及び振動子B2を駆動させるために駆動信号(「第1駆動信号」)を送信し、且つ振動子A、振動子B1及び振動子B2それぞれで受けたエコー信号を受信する。本実施形態におけるスイッチs2が「第2スイッチ」の一例である。
【0083】
以上、振動子列Laとの関係でスイッチs1及びスイッチs2の動作を説明したが、他の振動子列(Lb〜Lh)の間でも同様である。
【0084】
スイッチs1及びスイッチs2の切替(振動子と送受信部との接続及び非接続)は、たとえば制御部9からの制御信号(ディレイ信号)に基づいて実行される。
【0085】
(接続部の切替例)
図9から図11を参照して、接続部の切替例について説明する。図9から図11は、振動子列Lと送受信部3との接続状態を示す回路図である。図9から図11において、駆動する振動子は、斜線の塗りつぶしで示されている。
【0086】
まず、図9に示すように、振動子Aのみを用いて送受信を行う。この場合、制御部9からの制御信号に基づき、振動子列La〜Lhに対応するスイッチs1が接続される。
【0087】
つまり、振動子列La〜Lhの振動子A(図9では、斜線の塗りつぶしで示す)はそれぞれ、送受信部3a〜3hに接続される。たとえば、振動子列Laの振動子Aは、接続部Saのスイッチs1を介して送受信部3aに接続される。この場合、送受信部3a〜3hが、「第1送受信部」に該当する。また、図9に示す接続状態において、振動子Aで受信されたエコー信号をSC,C(t)とする。
【0088】
次に、図10に示すように、振動子B1及び振動子B2を用いて送受信を行う。この場合、制御部9からの制御信号に基づき、振動子列La〜Lhに対応するスイッチs2が接続される。
【0089】
つまり、振動子列La〜Lhの振動子B1及び振動子B2(図10では、斜線の塗りつぶしで示す)はそれぞれ、送受信部3a〜3hに接続される。たとえば、振動子列Laの振動子B1及び振動子B2は、接続部Saのスイッチs2を介して送受信部3aに接続される。図10に示す接続状態において、振動子B1及び振動子B2で受信されたエコー信号をSE,E(t)とする。
【0090】
最後に、図11に示すように、振動子A、振動子B1及び振動子B2を用いて送受信を行う。この場合、制御部9からの制御信号に基づき、振動子列La〜Lhに対応するスイッチs1及びスイッチs2が接続される。
【0091】
つまり、振動子列La〜Lhの振動子A、振動子B1及び振動子B2(図11では、斜線の塗りつぶして示す)はそれぞれ、送受信部3a〜3hに接続される。たとえば、振動子列Laの振動子Aは、接続部Saのスイッチs1を介して送受信部3aに接続される。また、振動子列Laの振動子B1及び振動子B2は、接続部Saのスイッチs2を介して送受信部3aに接続される。図11に示す接続状態において、振動子A、振動子B1及び振動子B2で受信されたエコー信号をSF,F(t)とする。
【0092】
なお、送受信は上記順番に限られず、任意の順番で行うことが可能である。
【0093】
<エコー信号について>
上述のようにスイッチs1及びスイッチs2を切り替えることで取得されたエコー信号については、以下の関係が成り立つ。
【0094】
エコー信号SF,F(t)は、SC,C(t)と、SE,E(t)と、SC,E(t)と、SE,C(t)との和である。ここで、SC,E(t)は、振動子Aで送信を行い、振動子B1及び振動子B2で受信されたエコー信号である。SE,C(t)は、振動子B1及び振動子B2で送信を行い、振動子Aで受信されたエコー信号である。よって、エコー信号SF,F(t)は以下の式(1)で表すことができる。
【0095】
[数1]
F,F(t)=SC,C(t)+SE,E(t)+SC,E(t)+SE,C(t)・・・(1)
【0096】
ここで、SC,E(t)とSE,C(t)とは、超音波及びエコー信号の伝搬方向が逆のエコー信号であることから、以下の式(2)の関係で表すことができる。
【0097】
[数2]
C,E(t)=SE,C(t)・・・(2)
【0098】
従って、SF,F(t)は、以下の式(3)で表すことができる。
【0099】
[数3]
F,F(t)=SC,C(t)+SE,E(t)+2SC,E(t)・・・(3)
【0100】
更に、式(3)よりSC,E(t)は、以下の式(4)で表すことができる。
【0101】
[数4]
C,E(t)={SF,F(t)−SC,C(t)−SE,E(t)}/2・・・(4)
【0102】
以上の式に基づいて、エコー信号SF,F(t)、SC,C(t)、SE,E(t)、SC,E(t)、SE,C(t)を用いて合成した被検体の深さzにおける画像データI(z)は、式(5)で表すことができる。なお、「映像点」とは、送受信で共通の焦点位置を意味する。
【0103】
[数5]
I(z)=αC,C(z)SC,C(tC,C(z))+αE,E(z)SE,E(tE,E(z))+2αC,E(z)SC,E(tC,E(z))・・・(5)
但し、
C,C(z):振動子Aから映像点までの超音波及びエコー信号の往復伝搬時間
E,E(z):振動子B1及び振動子B2から映像点までの超音波及びエコー信号の往復伝搬時間
C,E(z):振動子Aから映像点までの超音波の伝搬時間と、映像点から振動子B1及び振動子B2までのエコー信号の伝搬時間の和
αC,C(z)、αE,E(z)、αC,E(z):重み係数
【0104】
画像生成部5は、式(5)に基づいて浅部から深部までの画像データを生成する。そして、合成部6は、画像生成部5で生成された画像データに対し、第1実施形態と同様の手法等を用いて画像データの合成処理を行う。
【0105】
<動作>
図12を参照して、本実施形態に係る超音波診断装置100の動作について説明する。
【0106】
操作部82等から測定指示がなされると、制御部9は、接続部を駆動させる(S20)。具体的には、制御部9は、振動子列La〜Lhに含まれる振動子Aに対応するスイッチs1を駆動させ、各振動子Aとそれに対応する送受信部3a〜3hとを接続させる。
【0107】
次に、制御部9は、送受信部3a〜3hに駆動信号を送信する。送受信部3a〜3hは、当該駆動信号を振動子Aに送信する。振動子Aは駆動信号に基づいて超音波を発生させ、被検体に送信する(S21)。
【0108】
次に、送受信部3a〜3hは、S21で送信された超音波に基づくエコー信号(SC,C(t))を受信する。受信されたエコー信号は、信号処理部4において信号処理がなされた後、画像生成部5に送られる。画像生成部5は、当該エコー信号に基づいて画像データを生成する(S22)。S22で生成された画像データは、「第1画像データ」の一例である。
【0109】
次に、制御部9は、接続部を切り替える(S23)。具体的には、制御部9は、スイッチs1を駆動させ、振動子列La〜Lhに含まれる振動子Aと送受信部3a〜3hとの接続を解除させる。また、制御部9は、振動子列La〜Lhに含まれる振動子B1及び振動子B2に対応するスイッチs2を駆動させ、各振動子B1及びB2とそれに対応する送受信部3a〜3hとを接続させる。
【0110】
次に、制御部9は、送受信部3a〜3hに駆動信号を送信する。送受信部3a〜3hは、当該駆動信号を振動子B1及び振動子B2に送信する。振動子B1及び振動子B2は駆動信号に基づいて超音波を発生させ、被検体に送信する(S24)。
【0111】
次に、送受信部3a〜3hは、S24で送信された超音波に基づくエコー信号(SE,E(t))を受信する。受信されたエコー信号は、信号処理部4において信号処理がなされた後、画像生成部5に送られる。画像生成部5は、当該エコー信号に基づいて画像データを生成する(S25)。S25で生成された画像データは、「第2画像データ」の一例である。
【0112】
次に、制御部9は、接続部を切り替える(S26)。具体的には、制御部9は、各振動子B1及びB2とそれに対応する送受信部3a〜3hとが接続された状態(S23の状態)でスイッチs1を駆動させ、各振動子Aとそれに対応する送受信部3a〜3hとを接続させる。
【0113】
次に、制御部9は、送受信部3a〜3hに駆動信号を送信する。送受信部3a〜3hは、当該駆動信号を振動子A、振動子B1及び振動子B2に送信する。振動子A、振動子B1及び振動子B2は駆動信号に基づいて超音波を発生させ、被検体に送信する(S27)。
【0114】
次に、送受信部3a〜3hは、S27で送信された超音波に基づくエコー信号を受信する。受信されたエコー信号には、振動子Aで送信を行い、振動子B1及び振動子B2で受信されたエコー信号(SC,E(t))と、振動子B1及び振動子B2で送信を行い、振動子Aで受信されたエコー信号(SE,C(t))が含まれている。信号処理部4において信号処理がなされた後、画像生成部5に送られる。画像生成部5は、当該エコー信号に基づいて画像データを生成する(S28)。S28で生成された画像データは、振動子Aで送信を行い、振動子B1及び振動子B2で受信されたエコー信号に基づく「第3画像データ」、及び振動子B1及び振動子B2で送信を行い、振動子Aで受信されたエコー信号に基づく「第4画像データ」の一例である。
【0115】
合成部6は、S22、S25、S28で生成された画像データを合成し、浅部と深部の情報を有する一の画像データを得る(S29)。表示部81は、S16で得られた画像データに基づく画像を表示させる。
【0116】
<作用・効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0117】
本実施形態に係る超音波診断装置100は、被検体に超音波を送信し、被検体からのエコー信号に基づいて超音波画像を生成する。超音波診断装置100は、2次元振動子アレイ10と、第1送受信部と、第1スイッチ(スイッチs1)と、第2スイッチ(スイッチs2)と、制御部9とを有する。2次元振動子アレイ10は、第1振動子と、第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子とを含む振動子列が行方向に複数配列されている。第1送受信部は、一の振動子列に含まれる第1振動子及び第2振動子に対して駆動信号を送信し、且つ当該第1振動子及び当該第2振動子それぞれで受けたエコー信号を受信するために設けられている。第1スイッチは、第1振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。第2スイッチは、第2振動子と第1送受信部との接続及び非接続を切り替える。制御部9は、第1スイッチ及び第2スイッチを制御することにより、第1振動子及び第2振動子と第1送受信部との接続を切り替える。また、超音波診断装置100は、画像合成部(合成部6)を有する。画像合成部は、第1画像データ、第2画像データ、第3画像データ及び第4画像データを合成する。第1画像データは、第1振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を第1振動子で受けて得られる。第2画像データは、第2振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を第2振動子で受けて得られる。第3画像データは、第1振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を第2振動子で受けて得られる。第4画像データは、第2振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を第1振動子で受けて得られる。
【0118】
このように、制御部9により第1スイッチ、第2スイッチの接続先やその組み合わせを切り替えることにより、被検体の浅部や深部の画像データを取得することができる。つまり、2Dアレイプローブ(及び本実施形態における1.5Dアレイプローブ)に対して少ない送受信回路で被検体の浅部から深部までの画像データを取得することが可能な超音波診断装置を提供することができる。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0120】
1 超音波プローブ
2 本体部
3、3a〜3h 送受信部
4 信号処理部
5 画像生成部
6 合成部
7 表示制御部
8 ユーザインターフェース(UI)
9 制御部
31 送信部
32 受信部
81 表示部
82 操作部
100 超音波診断装置
A、B1、B2 振動子
La〜Lh 振動子列
Sa〜Sh 接続部
s1、s2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を送信し、前記被検体からのエコー信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
第1振動子と、前記第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子とを含む振動子列が行方向に複数配列された2次元振動子アレイと、
一の前記振動子列に含まれる前記第1振動子及び前記第2振動子に対して第1駆動信号を送信し、且つ当該第1振動子及び当該第2振動子それぞれで受けたエコー信号を受信するための第1送受信部と、
一の前記振動子列に配列された前記第2振動子に対して第2駆動信号を送信し、且つ当該第2振動子で受けたエコー信号を受信するための第2送受信部と、
前記第1振動子と前記第1送受信部との接続及び非接続を切り替える第1スイッチと、
前記第2振動子と前記第1送受信部との接続及び非接続を切り替える第2スイッチと、
前記第2振動子と前記第2送受信部との接続及び非接続を切り替える第3スイッチと、
前記第2スイッチ及び前記第3スイッチを制御することにより、前記第2振動子の接続先を、前記第1送受信部と前記第2送受信部との間で切り替える制御部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1スイッチを制御することにより、前記第1振動子と前記第1送受信部との接続及び非接続を切り替えることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2振動子の接続先の切り替えとして、前記第2振動子と前記第2送受信部とを接続させて前記第2振動子に前記エコー信号を受信させた後に、前記第2振動子と前記第1送受信部とを接続させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の超音波診断装置。
【請求項4】
被検体に超音波を送信し、前記被検体からのエコー信号に基づいて超音波画像を生成する超音波診断装置であって、
第1振動子と、前記第1振動子を挟むように配置される複数の第2振動子とを含む振動子列が行方向に複数配列された2次元振動子アレイと、
一の前記振動子列に含まれる前記第1振動子及び前記第2振動子に対して駆動信号を送信し、且つ当該第1振動子及び当該第2振動子それぞれで受けたエコー信号を受信するための第1送受信部と、
前記第1振動子と前記第1送受信部との接続及び非接続を切り替える第1スイッチと、
前記第2振動子と前記第1送受信部との接続及び非接続を切り替える第2スイッチと、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチを制御することにより、前記第1振動子及び前記第2振動子と前記第1送受信部との接続を切り替える制御部と、
を有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
前記第1振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を前記第1振動子で受けて得られた第1画像データと、前記第2振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を前記第2振動子で受けて得られた第2画像データと、前記第1振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を前記第2振動子で受けて得られた第3画像データと、前記第2振動子から送信された超音波に基づくエコー信号を前記第1振動子で受けて得られた第4画像データとを合成する画像合成部を有することを特徴とする請求項4記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−85745(P2013−85745A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229516(P2011−229516)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】