説明

超音波診断装置

【課題】微小構造物をより認識しやすいBフロー画像を表示することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】振動が与えられている被検体に対して超音波の送受信を行なって得られたエコー信号に基づいて、Bフローデータを作成するBフロー処理部4と、前記Bフローデータに基づくBフロー画像を表示する表示部6と、を備えることを特徴とする。被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブ2には、ブラケット10を介して振動部11が取り付けられている。この振動部11が振動することにより、被検体に対して振動が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bフロー画像が表示される超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体に超音波を送信して得られたエコー信号に基づいて作成される超音波画像を表示する超音波診断装置が知られている。例えば、非特許文献1,2には、超音波画像として、静止している生体組織に対する血流動態を画像化することができるBフロー(B−flow)画像が開示されている。このBフロー画像には、白黒のBフロー画像の他、動いている部分がカラーで表示されるBフロー画像もあることが知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0003】
ところで、白黒のBフロー画像において、乳房組織に生じている微小石灰化部が高輝度で表示されるので、Bフロー画像が微小石灰化の観察に適していることが、非特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Richard Y.chiao,Larry Y.Mo et al.,B−Mode Blood Flow(B−Flow) Imaging, Ultrasonics Symposium, 2000 IEEE, 米国,IEEE, 2000年, vol.2, PP. 1469−1472
【非特許文献2】西岡真樹子,「B−flowによるフローイメージング 3D法を含めて」,臨床画像,メジカルビュー社,2008年5月,vol.24,No.5,p.627−630
【非特許文献3】Hamazaki Naoki,外11名,「the usefulness of B−FLOW COLOR for the subpleural lesions」,Japanese Journal of Clinical Radiology,2007,vol.52,No.1,p.119−128
【非特許文献4】Luca Brunese、外7名,「A New Marker for Diagnosis of Thyroid Papillary Cancer」,J Ultrasound Med,米国,American Institute of Ultrasound in Medicine,2008,vol.27,p.1187−1194
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
白黒のBフロー画像においては、血流を始めとして動いているものの輝度が高く表示される。従って、微小石灰化部が周囲の組織と比較して高輝度で表示される理由は、送信された超音波の音圧によって微小石灰化部が振動しているためであると考えられる。本願発明者は、Bフローカラー画像においても、微小石灰化部がカラーで表示されることを確認している。
【0006】
このように微小石灰化部等の微小構造物の観察において、Bフロー画像の有用性が認められている。本願発明者は、このような事情に鑑み、微小構造物をより認識しやすいBフロー画像を表示させることについて鋭意検討し、本願発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するためになされた発明は、振動が与えられている被検体に対して超音波の送受信を行なって得られたエコー信号に基づいて、Bフローデータを作成するBフローデータ作成部と、前記Bフローデータに基づくBフロー画像を表示する表示部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記観点の発明によれば、超音波の送受信時に、振動が与えられている被検体における微小構造物が振動するので、この被検体から得られたエコー信号に基づいて作成されたBフロー画像は、微小構造物の検出能が従来よりも高い。従って、微小構造物をより認識しやすいBフロー画像を表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第一実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図2】表示部に表示された実施形態のBフロー画像を示す図である。
【図3】表示部に表示された従来のBフロー画像を示す図である。
【図4】本発明の第二実施形態における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図5】超音波診断装置と、被検体が載置された載置台とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、Bフロー処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及びHDD(Hard Disk Drive)9を備える。
【0011】
前記超音波プローブ2は、複数の超音波振動子(図示省略)から被検体に対して超音波を送信する。前記超音波プローブ2は、音線順次で超音波の走査を行なって超音波を送信する。また、前記超音波プローブ2は、前記超音波振動子において超音波のエコー信号を受信する。前記超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例である。
【0012】
前記超音波プローブ2には、ブラケット10を介して振動部11が取り付けられている。この振動部11は、例えば前記ブラケット10に設けられた振動モーターである。この振動部11は、特定の周波数fで振動する。例えば、前記周波数fは25Hzや50Hzである。ただし、ここで挙げた周波数は一例に過ぎないことはいうまでもない。前記振動部11は、本発明における振動部の実施の形態の一例である。
【0013】
前記送受信部3は、前記超音波プローブ2から所定の走査条件で超音波を送信するための電気信号を、前記制御部8からの制御信号に基づいて前記超音波プローブ2に供給する。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、A/D変換、整相加算処理等の信号処理を行なう。
【0014】
前記Bフロー処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコー信号のデータに対しBフロー処理を行ない、Bフローデータを作成する。前記Bフロー処理部4は、本発明におけるBフローデータ作成部の実施の形態の一例である。
【0015】
前記表示制御部5は、前記Bフロー処理部4で得られたBフローデータを、スキャンコンバータ(scan converter)によって走査変換してBフロー画像データを作成する。また、前記表示制御部5は、前記Bフロー画像データに基づくBフロー画像を前記表示部6に表示させる。このBフロー画像は、移動体の輝度が静止体の輝度よりも高い白黒の画像や、移動体の速度や移動方向に応じた色相を有するカラー(color)画像(Bフローカラー画像)である。後述の図2及び図3では、Bフローカラー画像が示されている。
【0016】
前記表示部6は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記表示部6は、本発明における表示部の実施の形態の一例である。
【0017】
前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0018】
前記制御部8は、特に図示しないがCPU(Central Processing Unit)を有して構成される。この制御部8は、前記HDD9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0019】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。操作者は、被検体における対象部位の表面に前記超音波プローブ2を当接した状態で、この超音波プローブ2によって超音波の送受信を行なう。超音波の送受信の対象部位は、例えば胸部である。超音波の送受信は、前記振動部11が振動している状態で行われる。前記制御部8は、Bフローデータの作成に適したスキャンパラメータで前記超音波プローブ2による超音波の送受信が行われるよう、前記送受信部3へ制御信号を出力する。
【0020】
前記超音波プローブ2で受信されたエコー信号は、前記送受信部3で信号処理される。前記Bフロー処理部4は、前記送受信部3から入力されるデータに基づいて、Bフローデータを作成する。そして、前記表示制御部5はBフローデータに基づいてBフロー画像データを作成し、図2に示すように、Bフロー画像Bf1を前記表示部6に表示させる。
【0021】
前記Bフロー画像Bf1は、カラーBフロー画像である。このBフロー画像Bf1の左側には、移動体の移動速度や移動方向に応じた色相からなるカラーバーCbが表示されている。符号mcは微小石灰化部を示している。この微小石灰化部mcは、カラーで表示されている。
【0022】
Bフロー画像Bf1において、生体組織における微小石灰化部等の微小構造物がカラーで表示される。ここで、対象部位に振動が与えられていない場合の従来のBフロー画像Bf2を図3に示す。このBフロー画像Bf2もBフローカラー画像である。
【0023】
図2に示されたBフロー画像Bf1は、図3に示されたBフロー画像Bf2よりも微小石灰化部mcの検出能が高い画像になっている。具体的には、前記Bフロー画像Bf2では確認できない微小石灰化部mcが、前記Bフロー画像Bf1では確認することができたり、前記Bフロー画像Bf2でも確認できる微小石灰化部mcがより強調されて表示されたりしている。その理由について以下説明する。
【0024】
前記超音波プローブ2による超音波の送受信時には、前記振動部11が特定の周波数fで振動する。これにより、前記超音波プローブ2が振動しこの振動が対象部位である胸部の生体組織内に伝搬する。
【0025】
前記振動部11の振動は、前記ブラケット10及び前記超音波プローブ2を伝搬して前記胸部の生体組織内に伝搬する。この振動の伝搬過程で前記周波数fのn倍(nは自然数)の周波数が複数発生する。従って、生体組織内に伝搬した振動には、前記周波数fの他、周波数2nf,3nf,4nf,・・・の振動が含まれる。
【0026】
ここで、前記生体組織における微小石灰化部は、前記超音波プローブ2から送信される超音波によって振動する。前記振動部11の振動によって前記生体組織内に伝搬した振動のうち、超音波によって振動している微小石灰化部の固有振動数と等しい周波数の振動が前記微小石灰化部を共振振動させる。これにより、微小石灰化部mcの検出能が高い前記Bフロー画像Bf1を得ることができ、このBフロー画像Bf1において、微小石灰化部mcを容易に認識することができる。
【0027】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について図4及び図5に基づいて説明する。ただし、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0028】
図4に示す超音波診断装置20においては、前記超音波プローブ2には前記振動部11が取り付けられていない。その他の構成については第一実施形態と同一である。
【0029】
本例では、前記振動部11の代わりに、図5に示すように、被検体Pを載置する載置台100に、振動部101が設けられている。この振動部101は、本発明における振動部の実施の形態の一例である。また、前記載置台100は、本発明における載置台の実施の形態の一例である。
【0030】
図5では、前記振動部101は、前記載置台100の天板102における裏面102aに設けられているが、前記振動部101は、前記天板102の中に埋め込まれていてもよい。前記振動部101は、前記振動部11と同様に、特定の周波数fで振動する振動モーターである。
【0031】
ちなみに、図5においては、前記超音波診断装置20における超音波プローブ2は図示省略されている。
【0032】
本例でも、前記振動部101が振動しながら、前記超音波プローブ2において超音波の送受信が行なわれ、Bフロー画像が前記表示部6に表示される。前記振動部101は、特定の周波数fで振動する。この振動部101の振動により前記天板102が振動して、超音波の送受信の対象部位である胸部の生体組織内に伝搬する。第一実施形態と同様に、この振動の伝搬過程で前記周波数fのn倍の周波数が複数発生する。そして、胸部の生体組織内に伝搬した周波数f,2nf,3nf,4nf,・・・の振動のうち、いずれかの周波数の振動が微小石灰化部を共振振動させる。これにより、第一実施形態と同様に、Bフロー画像において微小石灰化部を容易に認識することができる。
【0033】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第一実施形態において、前記振動部11は、超音波プローブ2内に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,20 超音波診断装置
2 超音波プローブ
4 Bフロー処理部(Bフローデータ作成部)
6 表示部
11 振動部
Bf Bフロー画像
mc 微小石灰化部
100 載置台
101 振動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動が与えられている被検体に対して超音波の送受信を行なって得られたエコー信号に基づいて、Bフローデータを作成するBフローデータ作成部と、
前記Bフローデータに基づくBフロー画像を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記振動は、前記被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブに設けられた振動部によって与えられることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記振動は、前記被検体が載置された載置台に設けられた振動部によって与えられることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記被検体に対して与えられる振動の周波数のn倍(nは自然数)の周波数を有する複数の振動のうちのいずれかが、前記被検体における観察物を共振振動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記被検体に対して与えられる振動の周波数のn倍(nは自然数)の周波数を有する複数の振動には、前記被検体に送信された超音波によって振動する前記観察物を共振振動させる周波数を有する振動が含まれることを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記観察物は、微小構造物であることを特徴とする請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記微小構造物は、生体組織における微小石灰化部であることを特徴とする請求項6に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記Bフローデータを作成するためのスキャンパラメータで超音波の送受信を行なう超音波プローブを備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記Bフロー画像には、Bフローカラー画像が含まれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94223(P2013−94223A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236959(P2011−236959)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】