説明

超音波診断装置

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、例えばリニア走査時又はコンベックス走査時における焦点距離を連続的に変えて行う超音波診断装置に関し、特にその走査時の近距離による画像歪の補正に関するものである。
[従来の技術]
第3図は従来の超音波診断装置の受信側の概略説明図、第4図は遅延時間と焦点の深さの関係を表した遅延特性図である。
図において、(1)はエレメント、(2)は可変ディレイラインで、超音波ビームのフォーカシングのために反射された被検体(図示せず)からの各エコー信号の遅延に対し、それぞれ所定時間だけ連続的に遅延させて位相を合わせる。(3)はクロスポイントスイッチで、複数の入力端子にエコー信号が入力されると、スイッチ制御回路(4)の制御信号により偏向方向に合わせてスイッチの開閉が制御される。(5)はディレイラインで、クロスポイントスイッチ(3)に配分されて参入した各エコー信号に適当な遅延量(時間)を与えて加算しエコー信号を1本にする。
上記のように構成された超音波診断装置において、図示せぬ被検体から反射してくる超音波が、それぞれエレメント(1)で受波されてエコー信号に変換され、可変ディレイライン(2)に送出される。可変ディレイライン(2)は、各エコー信号に対し、それぞれ所定時間だけ連続的に遅延させて位相を合わせる。位相の合った各エコー信号は、クロスポイントスイッチ(3)においてスイッチ制御回路(4)の制御信号に基き配分され、ディレイライン(5)に参入して遅延加算される。
[発明が解決しようとする課題]
上記のような従来の超音波診断装置では、開口中心のエレメント(1)のビームフォーマのトータル遅延量(時間)は、第4図に示すように深さに応じて変化し、その深さが近距離になるほど遅延量が大きくなるという特性を有している。このため、図示せぬ表示部に表示される画像は歪を起こし、不鮮明になるという問題点があった。
この発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、開口中心のエレメントのビームフォーマのトータル遅延量が深さによって変化しても画像に歪が起きない超音波診断装置を得ることを目的とする。
[課題を解決するための手段]
この発明に係る超音波診断装置は、受信ビームフォーマ部で処理されたエコー信号の遅延特性に対し相反した遅延特性で遅延処理し、深さに対する遅延時間量を一定にする遅延時間補正部を備えたものである。
[作用]
この発明においては、遅延時間補正部が、受信ビームフォーマ部で処理されたエコー信号の遅延特性に対し、相反した遅延特性で遅延処理するので、深さに対する遅延時間量が一定になる。
[実施例]
第1図はこの発明の一実施例を示すブロック図、第2図R>図(a),(b)及び(c)は遅延時間と焦点距離の関係を表した特性図で、その内、(a)は開口中心のエレメントの遅延量の変化を示し、(b)はその遅延量の変化を相殺するために形成された遅延量を示し、(c)は(a)と(b)とを合成して得られた開口中心の遅延量の変化を示す。
図において、(11)は例えば複数のエレメント群を有するリニア形探触子で、図示せぬ送波回路からの送波パルスを超音波に、その超音波の反射波をエコー信号に変換する。(12)は受信ビームフォーマ部で、遅延制御回路(13)からの遅延制御信号(13a)に基づき、エコー信号の各チャンネルに適当な遅延を与えて加算する。この時、開口中心のエレメントの遅延量の変化は第2図(a)に示す特性になる。
(14)は遅延時間補正部で、上述した遅延制御信号(13a)と異なった制御信号(13b)に基づき、受信ビームフォーマ部(12)で形成された開口中心の遅延量の変化を相殺する遅延を与える(第2図(b)に示す)。これにより第2図(a)に示す遅延量の変化は第2図(c)に示すような特性になる。(15)は表示部(16)のダイナミックレンジに合わせて対数圧縮を行なう対数圧縮部である。
上記のように構成された超音波診断装置においては、受信ビームフォーマ部(12)から第2図(a)に示すような遅延量の変化を有する信号を遅延時間補正部(14)に送出すると、遅延時間補正部(14)は、遅延制御回路(13)からの遅延制御信号(13b)に基づいて第2図(b)に示すような特性を有する信号を形成するため、第2図(a)に示す信号は相殺されて第2図(c)に示すような信号となり、対数圧縮部(15)に送出される。この信号を入力した対数圧縮部(15)は、表示部(16)のダイナミックレンジに合わせて対数圧縮を行ない、表示部(16)に出力する。
[発明の効果]
以上のようにこの発明によれば、深さによる開口中心の遅延量の変化に対し、相殺する信号を遅延時間補正部で合成するようにしたので、画像の歪がなくなり、かつ画像歪がなくなることにより正確な距離計測ができるという効果が得られている。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例を示すブロック図、第2図(a),(b)及び(c)は遅延時間と深さの関係を表した特性図、第3図は従来の超音波診断装置の受信側の概略説明図、第4図は遅延時間と焦点の深さの関係を表した特性図である。
図において、(11)はリニア形探触子、(12)は受信ビームフォーマ部、(13)は遅延制御回路、(14)は遅延時間補正部、(15)は対数圧縮部、(16)は表示部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】被検体における異なる深さからの超音波を超音波探触子により受信し、該超音波探触子における複数のエレメントで変換された受信信号に基づいて該被検体の画像を表示する超音波診断装置であって、前記複数のエレメントの受信信号を前記被検体の深さに応じて遅延時間を異ならせて遅延させ該遅延した信号を加算することにより整相された1つの受信信号を出力する受信ビームフォーマと、前記複数のエレメントの遅延時間のうちの最大の遅延時間と所定の遅延時間との和が前記被検体の深さ方向にわたって一定になるように、前記受信ビームフォーマからの信号を前記深さに応じて該所定の遅延時間遅延させ、該遅延した信号を対数圧縮部に出力する遅延時間補正手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2984840号
【登録日】平成11年(1999)10月1日
【発行日】平成11年(1999)11月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−284984
【出願日】平成1年(1989)11月2日
【公開番号】特開平3−146037
【公開日】平成3年(1991)6月21日
【審査請求日】平成8年(1996)10月31日
【審判番号】平10−17184
【審判請求日】平成10年(1998)11月4日
【出願人】(999999999)ジーイー横河メディカルシステム株式会社
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 平1−201240(JP,A)