説明

超音波診断装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得ると共に時系列的に連続する複数枚の断層像から3次元画像を構成して表示する超音波診断装置に関し、特に表示された3次元画像上で断層像を見たいとして設定した位置に探触子を走査する際に、両者を対応付けしてその設定位置に容易に合致させることができる超音波診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の3次元画像表示の超音波診断装置は、被検体に超音波を送受信する探触子と、この探触子で受信した反射波の信号を入力して増幅し診断部位の断層像の再生処理を行う信号処理回路と、この信号処理回路からの画像信号を表示のために処理する画像表示回路と、上記信号処理回路からの時系列的に連続する画像信号を入力して3次元画像の再生処理を行う3次元画像再構成回路と、上記画像表示回路及び3次元画像再構成回路からの画像信号を入力して診断部位の断層像又は3次元画像を表示するモニタと、上記各構成要素を制御する制御回路部とを有して成っていた。
【0003】上記超音波診断装置における走査方式は、例えばメカニカルセクタ走査方式、リニア電子走査方式、コンベックス電子走査方式、フェーズドアレイセクタ電子走査方式などがあるが、それぞれ探触子から扇形又は矩形に超音波ビームを被検体内に向けて発射し、診断部位からの反射波を計測して断層像を得ると共に、上記扇形又は矩形の超音波ビームの面と直交する方向にそのビーム面を振ることにより複数の断層像を得て、これらの断層像を基にして3次元画像を再構成して表示する。
【0004】すなわち、図6に示すように、超音波診断装置1の探触子2を被検体3の診断部位の体表面に接触させて、例えばX−Z平面内で扇形の超音波ビーム4を発射すると共に、上記探触子2をX−Z平面に直交するY−Z平面内で振れ角が扇形5のようになるように動かすことにより、複数の断層像を得る。そして、図6において振れ角がθ1のとき、図7に示すような断層像I1が得られ、振れ角がθ2のとき、図8に示すような断層像I2が得られるとする。このとき、断層像I1にてドプラ血流計測機能で血流像B1が得られ、断層像I2にて同じく血流像B2が得られたとする。そして、このようにして各振れ角において得られた複数の断層像を用いて、X線CT装置などで行われているボクセル法、ボリュームレンダリング法などにより3次元画像を再構成する。その結果、例えば図9に示すように、血管の3次元画像I3が得られる。
【0005】上記のようにして得られた血管の3次元画像I3は、例えば超音波診断装置とは別個の3次元画像処理装置のモニタに表示されるが、上記モニタに表示された3次元画像I3を観察しながら、狭窄部位などの注目すべき点の断層像を見ようとするときは、操作者は、上記3次元画像I3上で矢印や直線などのカーソルにより設定位置6を決め、探触子を被検体の体表面上で移動しながら超音波診断装置のモニタに断層像を表示し、上記設定位置6に該当する断層像を探すこととなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このような従来の超音波診断装置においては、3次元画像I3上で決めた設定位置6と、操作者が探触子を移動して表示した断層像との間には、何の対応付けもされておらず、操作者は、上記3次元画像I3上の設定位置6の血管の形状と、断層像の血流像の形状とを比較しながら、主観的に判断して該当するであろう断層像を決めていた。従って、上記設定位置6に該当する断層像を探すのに、試行錯誤的に何回も繰り返すことがあり操作性が悪いと共に、探し出した断層像が実際には設定位置6に対応しておらず正確さに欠けることがあった。
【0007】そこで、本発明は、このような問題点に対処し、表示された3次元画像上で断層像を見たいとして設定した位置に探触子を走査する際に、両者を対応付けしてその設定位置に容易に合致させることができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による超音波診断装置は、被検体に超音波を送受信する探触子と、この探触子で受信した反射波の信号を入力して診断部位の画像信号を生成する信号処理回路と、上記画像信号を表示のために処理する画像表示回路と、上記信号処理回路からの時系列的に連続する画像信号を入力して3次元画像の再生処理を行う3次元画像再構成回路と、上記画像表示回路及び3次元画像再構成回路からの画像信号を入力して診断部位の断層像又は3次元画像を表示するモニタと、上記各構成要素を制御する制御回路部とを有する超音波診断装置において、上記制御回路部に対してモニタに表示された3次元画像上で断層像を見たい位置を設定する位置設定器と、上記探触子現在位置を検出する位置検出回路と、上記位置設定器及び位置検出回路からの位置信号により可聴音を発生する音発生手段とを備えたものである。
【0009】
【作用】このように構成された超音波診断装置は、制御回路部に接続された位置設定器によりモニタに表示された3次元画像上で断層像を見たい位置を設定し、探触子に接続された位置検出回路で該探触子現在位置を検出し、音発生手段により上記位置設定器及び位置検出回路からの位置信号を入力して可聴音を発生するように動作する。これにより、操作者は、3次元画像上の設定位置に対する探触子の位置関係を、上記可聴音を聞きながら判断することができ、断層像を見たいとして設定した位置に探触子を容易に合致させることができる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図である。この超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位について断層像を得ると共に時系列に連続する複数枚の断層像から3次元画像を再構成して表示するもので、図に示すように、探触子11と、信号処理回路12と、画像表示回路13と、3次元画像再構成回路14と、モニタ15と、制御回路部16とを有し、さらに位置設定器17と、位置検出回路18と、誤差計算回路19と、変調手段(20,21)と、音発生手段(22,23)とを備えて成る。
【0011】上記探触子11は、機械的又は電子的にビーム走査を行って被検体に超音波を送信及び受信するもので、図示省略したが、その中には超音波の発生源であると共に反射エコーを受信する振動子が内蔵されている。信号処理回路12は、上記探触子11で受信した反射エコーの信号を入力して診断部位の画像信号を生成すもので、その内部には、探触子11を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成する送波回路と、上記探触子11で受信した反射エコーの信号について所定のゲインで増幅する受信回路と、受信信号の位相を制御して一つの収束点に対して超音波ビームを形成する整相回路と、この整相回路からの受信信号についてゲイン補正、ログ圧縮、検波、フィルタ処理等を行う信号処理部などを有している。そして、上記探触子11及び信号処理回路12で超音波ビームを被検体の体内で一定方向に走査させることにより、1枚の断層像を得るようになっている。
【0012】画像表示回路13は、上記信号処理回路12から出力される画像信号を入力して表示のために処理するもので、画像データを一時的に記憶する画像メモリや、この画像メモリから出力された画像データをアナログビデオ信号に変換するD/A変換器などを有している。3次元画像再構成回路14は、上記信号処理回路12からの時系列的に連続する画像信号を入力して3次元画像の再生処理を行うもので、前述の従来例と同様に、図6〜図9に示すような動作により、3次元画像I3を再構成するようになっている。そして、モニタ15は、上記画像表示回路13及び3次元画像再構成回路14から出力される画像信号を入力して診断部位の断層像又は3次元画像を表示するもので、例えばCRTから成る。
【0013】また、制御回路部16は、上記各構成要素の動作を制御するもので、例えばCPU(中央処理装置)から成る。そして、この制御回路部16には、装置の操作指令等を入力する操作卓24が接続されている。
【0014】ここで、本発明においては、図1に示すように、上記制御回路部16に位置設定器17が接続されると共に、上記探触子11には位置検出回路18が接続され、さらに誤差計算回路19と、D/A変換器20と、電圧制御発信器21と、増幅器22と、スピーカ23とが設けられている。
【0015】上記位置設定器17は、前記モニタ15に表示された3次元画像I3(図9参照)上で断層像を見たい位置を設定するもので、例えばトラックボールから成り、このトラックボールを操作することによりモニタ15の画面上で設定位置6を示す矢印などのカーソルが動き、その信号が制御回路部16へ送られるようになっている。また、位置検出回路18は、前記探触子11現在位置を検出するもので、例えば上記探触子11に取り付けられた1関節結合の2本のアームから成る操作用アームの各アームの長さ、及び各端部に取り付けられた回動角度検出器からの角度信号を入力して、上記操作用アームの動きに応じて探触子11の位置を計測し、ディジタル信号で出力するようになっている。そして、誤差計算回路19は、上記位置設定器17から制御回路部16を介して出力される設定位置6の位置信号S1及び位置検出回路18から出力される探触子11の位置信号S2を入力して、該両者間の位置の誤差を求めるものである。
【0016】D/A変換器20は、上記誤差計算回路19で求めた誤差信号S3を入力してアナログ信号に変換するものである。また、電圧制御発信器21は、上記D/A変換器20からのアナログ信号を入力してそのアナログ信号の大きさに応じた電圧信号を発生するものである。そして、このD/A変換器20と電圧制御発信器21とで、上記位置設定器17による設定位置6と探触子11の現在位置との距離に応じた電圧信号を発生する変調手段を構成している。
【0017】増幅器22は、上記電圧制御発信器21から出力される電圧信号を入力して適宜の増幅率で増幅するものである。また、スピーカ23は、上記増幅器22からの電圧信号を入力してその電圧信号の大きさに応じた可変周波数の可聴音を発生するものである。そして、この増幅器22とスピーカ23とで、音発生手段を構成している。
【0018】次に、このように構成された超音波診断装置の動作について説明する。まず、操作者は、図1において探触子11を被検体の体表面上で操作し、前述の図6R>6に示すと同様にして被検体の診断部位について超音波ビーム4を走査し、図7及び図8に示すと同様に複数の断層像I1,I2,…を計測する。このとき、各断層像I1,I2,…にてドプラ血流計測機能により血流像B1,B2,…が得られる。次に、このようにして得られた複数の断層像を用いて、図1に示す3次元画像再構成回路14によりボクセル法又はボリュームレンダリング法などで、図9に示すように血管の3次元画像I3を再構成する。そして、この3次元画像I3は、画像表示回路13を介してモニタ15に表示される。
【0019】この状態で操作者は、図1に示す位置設定器17を操作して、図9に示す3次元画像I3上で血管の狭窄部位などの注目すべき点の断層像を見るために、矢印などのカーソルを移動して設定位置6を決める。このとき、上記位置設定器17からの信号は制御回路部16へ入力され、位置信号S1として誤差計算回路19へ送出される。その後、操作卓24からの操作指示により、画像表示回路13を断層像の表示モードに切り換える。
【0020】次に、再度探触子11を被検体の体表面上で操作し、上記3次元画像I3上で設定位置6により指定した位置の断層像を得るべく、超音波ビームを走査する。このとき、刻々と変化する探触子11の現在位置は、位置検出回路18で検出され、位置信号S2として誤差計算回路19へ送出される。すると、この誤差計算回路19は、上記二つの位置信号S1,S2を入力して両者間の誤差を求め、誤差信号S3として出力する。そして、この誤差信号S3は、次のD/A変換器20及び電圧制御発信器21を介して変調され、さらにスピーカ23から設定位置6と探触子11の現在位置とのずれ量に応じた可変周波数の可聴音が発生される。
【0021】このとき、上記位置のずれ量と可聴音との関係は、例えば図2に示すように設定しておく。すなわち、上記3次元画像I3上の設定位置6を横軸上のP点で示すと共に、探触子11の現在位置を同じくQ点で示し、探触子11を体表面上で操作して移動させると、Q点は横軸上で左右方向に移動する。そして、上記スピーカ23から発生される可変周波数の可聴音の周波数特性を、P点に谷を有する折れ線L1のように設定しておくと、可聴音の周波数は線形に変化し、P点より最も遠い位置では例えば2KHzの高い音が発生し、P点に一致したときは例えば400Hzの低い音になる。従って、操作者は、モニタ15に表示される断層像を見ながら探触子11を操作し、可聴音の周波数が最も低くなる位置を探すことにより、図9に示すように決めた設定位置6に探触子11をセットすることができる。
【0022】図3はスピーカ23から発生される可聴音の周波数特性の他の例を示すグラフである。この例では、周波数特性をP点に谷を有する曲線L2のように設定している。この場合は、P点に向けて可聴音の周波数が非線形に変化するので、P点からのずれに対する周波数の変化が大きくなり、設定位置6に対する探触子11のセットが容易となる。
【0023】図4はスピーカ23から発生される可聴音の周波数特性の更に他の例を示すグラフである。この例では、周波数特性をP点だけで音を発生し、他の領域では無音とする直線L3のように設定している。この場合は、P点に一致したときだけ例えば1KHzの可聴音が発生するので、設定位置6との合致した状態が明確になる。ただし、それに至る間では、設定位置6とのずれ具合が全くわからないという欠点を含んでいる。
【0024】図5はスピーカ23から発生される可聴音の周波数特性の更に他の例を示すグラフである。この例では、周波数特性を図2の場合と図4の場合とを組み合わせた状態となるように、P点に谷を有する折れ線L4のように設定している。この場合は、P点に向けて可聴音の周波数が線形に変化すると共に、P点との一致により特定周波数(例えば1KHz)の音が発生するので、設定位置6とのずれ具合がわかると共に、合致した状態が明確にわかり、探触子11のセットがより容易となる。
【0025】以上のようにして、図9に示す3次元画像I3上で決められた設定位置6に対して探触子11がセットされると、その位置の断層像がモニタ15の画面に表示される。これにより、注目部位の断層像を詳細に観察することができる。
【0026】なお、図2,図3及び図5においては、P点に谷を有するカーブの周波数特性としたが、本発明はこれに限らず、逆にP点に山を有するカーブの周波数特性としてもよい。
【0027】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されたので、制御回路部に接続された位置設定器によりモニタに表示された3次元画像上で断層像を見たい位置を設定し、探触子に接続された位置検出回路で該探触子現在位置を検出し、音発生手段により上記位置設定器及び位置検出回路からの位置信号を入力して可聴音を発生させることができる。これにより、操作者は、3次元画像上の設定位置に対する探触子の位置関係を、上記可聴音を聞きながら判断することができ、断層像を見たいとして設定した位置に探触子を容易に合致させることができる。従って、従来のように、試行錯誤的に何回も繰り返しながら該当するであろう断層像を主観的な判断により探すことなく、操作性を向上できると共に、設定位置に該当する正しい断層像を容易に得て観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明による超音波診断装置の実施例を示すブロック図、
【図2】 スピーカから発生される可聴音の周波数特性の一例を示すグラフ、
【図3】 スピーカから発生される可聴音の周波数特性の他の例を示すグラフ、
【図4】 スピーカから発生される可聴音の周波数特性の更に他の例を示すグラフ、
【図5】 スピーカから発生される可聴音の周波数特性の更に他の例を示すグラフ、
【図6】 超音波診断装置において複数の断層像を得てこれらから3次元画像を再構成する状態を示す説明図、
【図7】 図6において振れ角θ1における断層像を示す説明図、
【図8】 図6において振れ角θ2における断層像を示す説明図、
【図9】 複数の断層像から再構成した血管の3次元画像を示す説明図。
【符号の説明】
6…3次元画像上の設定位置、 11…探触子、 12…信号処理回路、13…画像表示回路、 14…3次元画像再構成回路、 15…モニタ、 16…制御回路部、 17…位置設定器、 18…位置検出回路、 19…誤差計算回路、 20…D/A変換器、 21…電圧制御発信器、 22…増幅器、 23…スピーカ、 I1,I2…断層像、 I3…血管の3次元画像、 S1,S2…位置信号、 S3…誤差信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被検体に超音波を送受信する探触子と、この探触子で受信した反射波の信号を入力して診断部位の画像信号を生成する信号処理回路と、上記画像信号を表示のために処理する画像表示回路と、上記信号処理回路からの時系列的に連続する画像信号を入力して3次元画像の再生処理を行う3次元画像再構成回路と、上記画像表示回路及び3次元画像再構成回路からの画像信号を入力して診断部位の断層像又は3次元画像を表示するモニタと、上記各構成要素を制御する制御回路部とを有する超音波診断装置において、上記制御回路部に対してモニタに表示された3次元画像上で断層像を見たい位置を設定する位置設定器と、上記探触子現在位置を検出する位置検出回路と、上記位置設定器及び位置検出回路からの位置信号により可聴音を発生する音発生手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図6】
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【特許番号】特許第3265511号(P3265511)
【登録日】平成14年1月11日(2002.1.11)
【発行日】平成14年3月11日(2002.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−129886
【出願日】平成4年4月24日(1992.4.24)
【公開番号】特開平5−300907
【公開日】平成5年11月16日(1993.11.16)
【審査請求日】平成11年4月16日(1999.4.16)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【参考文献】
【文献】特開 昭55−146141(JP,A)
【文献】特開 昭56−70757(JP,A)
【文献】特開 昭57−160444(JP,A)
【文献】特開 平2−172452(JP,A)
【文献】特開 平2−196383(JP,A)
【文献】特開 平2−305564(JP,A)
【文献】実開 平2−99377(JP,U)