説明

超音波診断評価装置

【課題】 空気中を伝播する超音波を用いて、内部に存在する鉄筋及び欠陥あるいは不健全部を非破壊的に検出し画像化する超音波診断装置を提供する。
【解決手段】 超音波診断装置は、超音波信号発生部2により発生させた信号を超音波信号増幅部3で増幅後、超音波送信センサ4から試験片30に入射し、コンクリート内部あるいは表面層を伝搬した波形を超音波受信センサ5で受信し、受信増幅部8により増幅後、パーソナルコンピュータ15に内臓された波形記憶部10に収録し、予め想定した超音波伝播距離に対応する伝播時間を同定し、コンクリートの縦波、横波あるいは表面波速度を測定する。またコンクリート内部の鉄筋あるいは欠陥からの予め定めた閾値以上の反射波振幅をエンコーダ7の位置に対応して濃淡あるいはカラー色調に替えて画像表示部13により表示することにより、コンクリート内部の鉄筋あるいは欠陥を画像化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中を伝播する超音波を用いて、非接触でコンクリート内部あるいは表面近傍を伝播する超音波速度(音速)を測定することによりコンクリートの強度を推定し、内部に存在する鉄筋及び欠陥あるいは不健全部を非破壊的に検出し画像化する超音波診断評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、建築物、道路、及びトンネルなどの社会基盤構造物に広く用いられている。しかし、使用年数の経過にともない、表面ひび割れ、雨水の浸入による鉄筋の錆び、コンクリート密着性の低下、コンクリートの中性化、アルカリ骨材反応などが発生する。
【0003】
コンクリートの非破壊的評価法として、レーザー光、目視によるひび割れの検出、打音検査などが主に用いられている。これらの方法は、健全部と異常部の識別はできるが、内部欠陥の正確な位置や鉄筋とコンクリート界面の不健全部を検出することができない。また、コンクリート強度と関連する音速を測定できない。
【0004】
超音波センサをグリース状の音響結合剤を介してコンクリート表面に押し当てて超音波を送受信し、板状コンクリート試験体の音速を測定しそれに基づく強度予測も試みられているが、超音波センサとコンクリートの間の接触状況に依存して測定値の変動が大きいという問題を有する。
【0005】
また、特許文献1に示すように、2個の空気超音波センサの間に樹脂系複合材料又は木材などを置き、非接触透過法により音速を測定する方法、内部欠陥を画像化する技術が存在する。
【0006】
また、特許文献2〜4に示すように、樹脂系複合材のような薄板の片側から空気を介して超音波を送信し、モード変換板波を同一側の空気超音波センサで受信する技術も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許公開2002−195987公報(図1)
【特許文献2】特許公開2006−138818公報(図1)
【特許文献3】特許公開2007−10637公報(図1)
【特許文献4】特許公開2008−164397公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、コンクリートのように、セメント、砂、砂利及び空気等の複数の構成要素を含む不均質で厚い材料では、超音波が伝播中に前記各構成要素界面で著しく散乱されるため、空気超音波法の適用は困難と考えられてきた。また、建設されたコンクリート構造物では検査対象物の両側に超音波センサを配置する透過法を用いることは、極めて困難であり、検査対象部の片面から検査できる測定装置が必要とされるところである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、空気超音波法を用いて検査対象コンクリート構造の片面からの空気を介して超音波の送信及び受信を行い、コンクリート中を伝播する縦波、横波、あるいは表面波速度を非接触で測定し、コンクリートの強度を推定し、また、コンクリート内部に存在する鉄筋あるいは欠陥を検出し画像化することのできる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、請求項1に係る発明においては、パーソナルコンピュータからのトリガ信号を受けて超音波励起用の電気信号を発生させる送信信号発生部、該送信信号発生部から発生された電気信号を電気的に増幅し超音波送信部に印加する送信信号増幅部、該送信信号増幅部により増幅された電気信号を超音波振動に変換し空気を介してコンクリート被測定物に超音波振動を入射する超音波送信センサ、被測定物中あるいは表面を伝搬した超音波を空気を介して受信する超音波受信センサ、該超音波受信センサで受信した受信波形のうち特定周波数帯域成分だけを透過させ増幅するバンドパスフィルタ付きプリアンプ、該バンドパスフィルタ付きプリアンプで透過増幅させた受信波形をさらに増幅する受信増幅部、該受信増幅部で増幅させた受信波形をデジタル変換するA/D変換部、該A/D変換部で変換した受信波形をデジタル収録する波形記憶部、該波形記憶部に収録された受信波形にデジタル波形処理を施す波形処理部、予め設定した空気中伝搬距離及びコンクリート内部あるいは表面近傍の超音波伝搬距離と前記収録された受信波形の受信波到着時間を用いて縦波、横波、あるいは表面波速度を算出する音速計算部、及び前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの非測定物に対する距離を可変調整する試験体間距離調整機構と前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの非測定物に対する入射角を可変調整する方位調整機構と前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの間の距離を可変調整するセンサ間距離調整機構とを搭載し被測定物表面に沿って移動できる移動台、を備え、前記パーソナルコンピュータからの指令に基づいて前記送信信号発生部で発生させた電気信号を、前記送信信号増幅部により増幅し、前記超音波送信センサから空気を介してコンクリート被測定物に超音波振動を入射し、前記試験体間距離調整機構と前記方位調整機構と前記センサ間距離調整機構とを調整して垂直入射縦波、横波、あるいは表面波を励起し、該コンクリート被測定物の内部及び表面近傍を伝搬した超音波振動を前記超音波受信センサにより受信し、その受信波形を前記バンドパスフィルタ付きプリアンプ及び前記受信増幅部で増幅した後、前記A/D変換部でデジタル変換し、そのデジタル波形をデジタル波形記録部に収録し、前記音速計算部によって予め設定された空気中伝搬距離及びコンクリート内部あるいは表面近傍の超音波伝搬距離と前記収録されたデジタル波形の受信波到着時間を用いて前記コンクリート被測定物の任意の位置での縦波、横波、あるいは表面波速度を求め、これら求めた速度のうち縦波速度又は横波速度からコンクリートのヤング率、ポアソン比を算出して当該コンクリート被測定物の強度を評価する一方、コンクリート内部の鉄筋あるいは欠陥からの反射波信号の受信時間をコンクリート中の伝搬距離に変換することにより鉄筋あるいは欠陥の位置を同定すると共に、前記反射波信号の振幅の所定の閾値を超えた部分をパーソナルコンピュータの画面上に白黒の濃淡あるいは色調に変換して画像化することを特徴とする。
なお、コンクリートのヤング率Eとポアソン比νは、以下の式によってパーソナルコンピュータによって求められる。
E=ρVt2(3γ2−4)/(γ2−1)
ν=(1−2γ2)/[2(1−γ2)]
ここで ρは密度、γ=VL/VT 、VLは縦波速度、VTは横波速度。
【0011】
請求項2に係る発明においては、請求項1記載の超音波診断装置において、前記送信信号発生部から発生された電気信号は、短パルス、可変周波数バースト波、チャープ波あるいは任意関数発生器で生成した信号のいずれかを選択することにより、良好な測定条件を設定できる。すなわち、モルタルのように減衰の少ないコンクリートについては短パルス波を、砂利・砕石などの粗骨材を含むコンクリートには適切な波数のバースト波を、減衰の大きな厚いコンクリートについてはチャープ波を用いることによりSN比の良い波形を受信することができる。
【0012】
請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2記載の超音波診断装置において、前記受信波形に対し送信波形との相互相関関数を計算し、あるいは入射バースト波によりコンクリート中を伝搬した受信信号をフーリエ変換し、その逆変換を入射バースト波のフーリエ変換に作用させて得られる信号にフーリエ逆変換を施して得られた波形を入射波形とする時間反転法を適用して受信波形パルスを圧縮することによりSN比を向上させることができる。
【0013】
請求項4に係る発明においては、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の超音波診断装置において、超音波送信センサに、空気超音波センサを用いることで完全非接触の計測を実施でき、SN比を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、空気超音波センサを用いて被測定物から数ないし数十mm離れて超音波を送受信し、コンクリート部材中を伝播する縦波、横波、あるいは表面速度を非接触的に測定し、コンクリートの強度を推定することができる。
【0015】
また、超音波送信センサ及び超音波受信センサをコンクリート部材の表面に沿って移動させる移動台の位置をエンコーダで検出し、その位置における所定の閾値を超えた受信振幅を濃淡あるいは色調に変換して表示することにより、コンクリート内の鉄筋あるいは欠陥を非破壊的に検出し画像化することができる。
【0016】
従来の接触式超音波測定で必須のグリース状の接触媒質を必要としない非接触測定法であるので、超音波センサと被測定物の間の接触媒質の状態に依存した測定結果の変動がない。また、グリース状接触媒質を必要としない非接触測定であるため、被測定対象物表面を汚さない。
【0017】
周波数が350kHz以下の空気超音波センサを用いるときには、被測定物表面に0.1mm台の凹凸があってもそのまま超音波の送受信ができるので、接触超音波法のように超音波入射面をグラインダー等で平滑にする必要がない。
【0018】
非接触式測定であるため、空気からコンクリートへの入射角を任意に設定でき、適切な角度に設定することにより、コンクリート中に縦波、横波、あるいは表面波を励起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係る空気超音波センサを用いたコンクリートの超音波診断装置の全体構成説明図である。
【図2】縦波、横波及び表面波測定の概念図である。
【図3】V透過法縦波受信波形の例である。
【図4】V透過法横波受信波形の例である。
【図5】表面波受信波形の例である。
【図6】鉄筋からの受信波形の例である。
【図7】伝搬時間差マップによるはく離領域画像の例である。
【図8】周波数掃引による受信振幅変化の例である。
【図9】表面波による平滑面と表面溝部の受信波形の例である。
【図10】縦波V透過法による欠陥部と非欠陥部の受信波形の例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を用いてコンクリート中の縦波、横波あるいは表面波の各速度を測定する、あるいは鉄筋または内部欠陥を非接触で検出するための形態を図面を参照して以下に説明する。
【0021】
図1は、本発明に関わる空気超音波センサを用いたコンクリートの超音波診断装置を説明する図である。超音波診断装置1は、超音波送信センサ4に電気信号を送る送信信号発生部2と、その電気信号を増幅する送信信号増幅部3と、前記超音波送信センサ4及び超音波受信センサ5の非測定物に対する方位を調整する方位調整機構21と両超音波センサ4,5と被測定物30の間の距離を調整する距離調整機構22と超音波送信センサ4と超音波受信センサ5との間の距離を調整するセンサ間距離調整機構23とエンコーダ7とを搭載した移動台20と、超音波受信センサ5で受信した受信波形を増幅するバンドパスフィルタ付きプリアンプ6と、その受信波形を増幅する受信信号増幅部8、増幅されたアナログ信号波形を高速A/D変換するA/D変換部9と、その信号波形をデジタル収録する波形記憶部10、波形処理部11、音速計算部12、画像表示部13ならびにエンコーダ信号受信記憶部14を備えて構成されている。なお、超音波診断装置1を構成する上記の各構成のうち、送信信号発生部2、A/D変換部9、波形記録部10、波形処理部11、音速計算部12、画像表示部13、エンコーダ信号受信記憶部14は、パーソナルコンピュータ15に内蔵されている。
【0022】
コンクリートの縦波及び横波音速を測定する場合、図2に示すように、超音波送信センサ4及び超音波受信センサ5を被測定物30の片面に配置しV透過法による測定法を使用する。被測定物30の厚さhと超音波入射角及び受信位置により定まる超音波伝播経路に対応する入射角θをスネルの法則に基づき設定し、被測定物30の裏面からの反射波形を収録し、その伝搬時間から式(1)によりコンクリートの縦波及び横波音速Vcを計算する。
Vc=(2h/cosθR)/(Tt−Ta)・・式(1)
ここで、h:コンクリートの厚さ
θR:屈折角
Tt:受信時間
Ta:空中伝搬時間=空中伝搬距離/空中音速 。
【0023】
屈折角θRに対応する入射角θはスネルの法則により仮定したコンクリートの音速を用いて式(2)で計算される。
sinθ/ Va= sin θR /Vc
ここで、Va:空中音速
Vc:コンクリートの縦波あるいは横波音速
なお、正確な音速が必要な場合には、仮定した音速が計算結果の音速と許容誤差範囲内で一致するまで入射角を変えて測定を繰り返す。
【0024】
中心周波数320kHzの平面空気超音波センサを使用して、V透過法で得られたコンクリートブロック裏面の縦波反射波形の一例を図3に示す。コンクリートの厚さhは100mm、縦波屈折角は30度とした。超音波送信センサ4及び超音波受信センサ5の間の距離は、コンクリート表面で約115mmとなり、コンクリート中伝搬距離は約230mmとなる。空中伝搬距離を24mmに設定したので、空中伝搬時間は 69μsとなる。図3の矢印で示す立ち上がり時間128μsから縦波速度が約3900m/sと計算される。
【0025】
V透過法で得られたコンクリートブロック裏面の横波反射波形の一例を図4に示す。横波屈折角は30度とした。超音波送信センサ4及び超音波受信センサ5の間の距離は、コンクリート表面で115mmとなり、コンクリート中伝搬距離は約230mmとなる。空中伝搬距離を24mmに設定したので、空中伝搬時間は 69μsとなる。図4の矢印で示す立ち上がり時間194μsから横波速度が1840m/sと計算される。
【0026】
コンクリートブロックの表面波伝播距離を50mmから70mまで10mmごとに増大させたときの表面波受信波形を図5に示す。伝搬距離差20mmに対する矢印で示す立ち上がり部受信時間差10μs(206μs−196μs)から、表面波速度は約2000m/sと計算される。
【0027】
縦波V透過法において鉄筋位置が反射位置となるように超音波送信センサ4と超音波受信センサ5間の距離を調整して得られた、鉄筋を含む断面における受信波形及び鉄筋を含まない断面における受信波形を図6(A),(B)に示す。矢印で示すように、鉄筋からの反射波が有意に大きいことが分かる。
【0028】
図1に示す移動台20の試験体30に対する平面内相対位置を計測するエンコーダ7を使用し、コンクリートブロック中の鉄筋31の位置を表す画像の例を図7に示す。図6(A)矢印の部分の振幅が、図6(B)の鉄筋31がない場合の破線で示す閾値を超えた部分が灰色に表示されている。なお、閾値の値は、測定対象コンクリートの鉄筋を含まない部分のノイズレベルの最大値とすることが一般的である。
【0029】
以上の説明では、V透過法により縦波及び横波速度を測定する方法について説明したが、以下に説明する共振法により縦波及び横波速度を測定してもよい。即ち、図1に示すように、遮音材24を挟んで40mm間隔で超音波送信センサ4と超音波受信センサ5を配置し、20波の可変周波数バースト波を厚さ100mmのコンクリートにほぼ垂直に入射し、周波数を掃引したときの受信波形を図8に示す。340kHzにおいて振幅が最大となる。上下面が自由表面であるときの伝搬距離Lに対する共振条件は式(3)で与えられる。
L=λ(2N+1)/2・・式(3)
ここで、λは波長であり、Vc/fで表される。fは共振周波数、Nは整数。
伝搬距離102mm、N=8のとき コンクリートの縦波速度は約4000m/sであり、図2の伝搬時間測定による縦波速度の違いは約2.5%である。このように共振法を用いてもコンクリートの縦波速度を求めることができる。
【0030】
しかして、上記のようにして縦波速度VL及び横波速度VTを求めて、これらの速度を
E=ρVt2(3γ2−4)/(γ2−1)
ν=(1−2γ2)/[2(1−γ2)]
ρは密度、γ=VL/VT
の公式に適用してコンクリートのヤング率Eとポアソン比νをパーソナルコンピュータ15によって求めることにより、コンクリート被測定物の強度を評価することができる。
【0031】
また、求められた縦波速度及び横波速度を用いて、コンクリート内部の鉄筋31あるいは欠陥32からの反射波信号受信時間をコンクリート中の伝搬距離に変換することにより鉄筋31あるいは欠陥32の位置を同定することができ、この位置同定した部分であって反射波信号の振幅が所定の閾値を超えた部分をパーソナルコンピュータ15の画像表示部13に白黒の濃淡あるいは色調に変換して画像化することができる。
【0032】
また、表面溝のない場合とある場合の表面波受信波形を図9に示す。400×200×200mmのコンクリートブロックの長手方向中央に幅2mm、深さ100mmの溝を有する試験体について、溝のない表面部及び溝を跨いだ伝搬距離90mmの波形を図9(A),(B)に示す。溝のない表面部では、図9(A)に示すように、明瞭な表面波が受信されるが、溝を跨いだ測定では、図9(B)に示すように、表面波は受信されない。表面溝あるいは亀裂の深さと隙間幅に依存して微弱な表面波信号が受信されることもある。そして、図6に示したと同じように、所定のノイズレベルを超える閾値を定め、それを越える表面波受信振幅をパーソナルコンピュータ15の画像表示部13に画像化することで、表面欠陥部を可視化することができる。
【0033】
V透過縦波を用いて、200×100×100mmのコンクリートブロック内部中心部に存在する欠陥部と健全部の縦波受信波形を図10(A),(B)に示す。図1に示すような欠陥32が存在するときには、図10(A)に示すように、矢印の位置に散乱波信号が検出される。一方、欠陥32のない健全部では、裏面反射の波形が20μs遅れて受信される。したがって、この時間差のある位置を特定してパーソナルコンピュータ15の画像表示部13に画像化することで、内部欠陥を可視化することができる。
【0034】
なお、上記した実施形態では、超音波送信センサとして、空気超音波センサを用いることで完全非接触の計測を実施できることについて説明したが、減衰の著しい材料については、超音波送信センサとして、音響結合剤を用いない接触式振動源、たとえば特定周波数帯域を持つ飛翔体や衝撃ハンマを用いることでSN比を向上させることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 超音波診断装置
2 送信信号発生部
3 送信信号増幅部
4 超音波送信センサ
5 超音波受信センサ
6 バンドパスフィルタ付きプリアンプ
7 エンコーダ
8 受信増幅部
9 A/D変換部
10 波形記憶部
11 波形処理部
12 音速計算部
13 画像表示部
14 エンコーダ信号受信記憶部
15 パーソナルコンピュータ
20 移動台
21 超音波センサ方位調整機構
22 超音波センサ・試験体間距離調整機構
23 超音波センサ間距離調整機構
24 遮音材
30 被測定物
31 鉄筋
32 欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナルコンピュータからのトリガ信号を受けて超音波励起用の電気信号を発生させる送信信号発生部、該送信信号発生部から発生された電気信号を電気的に増幅し超音波送信部に印加する送信信号増幅部、該送信信号増幅部により増幅された電気信号を超音波振動に変換し空気を介してコンクリート被測定物に超音波振動を入射する超音波送信センサ、被測定物中あるいは表面を伝搬した超音波を空気を介して受信する超音波受信センサ、該超音波受信センサで受信した受信波形のうち特定周波数帯域成分だけを透過させ増幅するバンドパスフィルタ付きプリアンプ、該バンドパスフィルタ付きプリアンプで透過増幅させた受信波形をさらに増幅する受信増幅部、該受信増幅部で増幅させた受信波形をデジタル変換するA/D変換部、該A/D変換部で変換した受信波形をデジタル収録する波形記憶部、該波形記憶部に収録された受信波形にデジタル波形処理を施す波形処理部、予め設定した空気中伝搬距離及びコンクリート内部あるいは表面近傍の超音波伝搬距離と前記収録された受信波形の受信波到着時間を用いて縦波、横波、あるいは表面波速度を算出する音速計算部、及び前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの非測定物に対する距離を可変調整する試験体間距離調整機構と前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの非測定物に対する入射角を可変調整する方位調整機構と前記超音波送信センサと前記超音波受信センサの間の距離を可変調整するセンサ間距離調整機構とを搭載し被測定物表面に沿って移動できる移動台、を備え、
前記パーソナルコンピュータからの指令に基づいて前記送信信号発生部で発生させた電気信号を、前記送信信号増幅部により増幅し、前記超音波送信センサから空気を介してコンクリート被測定物に超音波振動を入射し、前記試験体間距離調整機構と前記方位調整機構と前記センサ間距離調整機構とを調整して垂直入射縦波、横波、あるいは表面波を励起し、該コンクリート被測定物の内部及び表面近傍を伝搬した超音波振動を前記超音波受信センサにより受信し、その受信波形を前記バンドパスフィルタ付きプリアンプ及び前記受信増幅部で増幅した後、前記A/D変換部でデジタル変換し、そのデジタル波形をデジタル波形記録部に収録し、前記音速計算部によって予め設定された空気中伝搬距離及びコンクリート内部あるいは表面近傍の超音波伝搬距離と前記収録されたデジタル波形の受信波到着時間を用いて前記コンクリート被測定物の任意の位置での縦波、横波、あるいは表面波速度を求め、これら求めた速度のうち縦波速度又は横波速度からコンクリートのヤング率、ポアソン比を算出して当該コンクリート被測定物の強度を評価する一方、コンクリート内部の鉄筋あるいは欠陥からの反射波信号の受信時間をコンクリート中の伝搬距離に変換することにより鉄筋あるいは欠陥の位置を同定すると共に、前記反射波信号の振幅の所定の閾値を超えた部分をパーソナルコンピュータの画面上に白黒の濃淡あるいは色調に変換して画像化することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記送信信号発生部から発生された電気信号は、短パルス、可変周波数バースト波、チャープ波あるいは任意関数発生器で生成した信号であることを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記受信波形に対し送信波形との相互相関関数を計算し、あるいは入射バースト波によりコンクリート中を伝搬した受信信号をフーリエ変換し、その逆変換を入射バースト波のフーリエ変換に作用させて得られる信号にフーリエ逆変換を施して得られた波形を入射波形とする時間反転法を適用して受信波形パルスを圧縮することによりSN比を向上させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記超音波送信センサは、空気超音波センサであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−266378(P2010−266378A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119201(P2009−119201)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(504327306)有限会社超音波材料診断研究所 (12)
【Fターム(参考)】