説明

超音波造影剤およびその製造方法

凍結乾燥マトリックス、およびこれを再構築した際に、主にリン脂質により安定化されている気体封入型微小気泡の液体水性懸濁液を含有する注射用造影剤の製造方法を提供する。この方法は、水性媒体、リン脂質および水不混和性有機溶媒から乳液を製造することを含む。次いで、乳液を凍結乾燥し、続いて気体封入型微小気泡を水性懸濁液中に再構築する。この方法により、比較低直径が小さく、サイズ分布が狭い微小気泡を含有する懸濁液を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、画像診断での使用に適した気体含有造影剤の製造に有用な乾燥製剤または凍結乾燥製剤の製造方法、および気体含有造影剤の製造方法に関する。
【0002】
本発明はまた、この方法により製造した乾燥製剤に関し、これは再構成して画像診断に有用な造影剤懸濁剤を形成することができる。本発明はさらに、本発明の乾燥製剤を用いて製造した、画像診断に有用な気体封入型微小気泡懸濁剤、ならびに本発明の乾燥製剤を含む容器または2成分キットを含む。
【0003】
発明の背景
近年において超音波造影剤の迅速な開発により多数の様々な製剤が製造され、これらはヒトまたは動物の体の臓器および組織の超音波画像化に有用である。これらの薬剤は主に、例えば、Bモード画像製剤(後方散乱組織特性の空間分布に基づく)またはドップラーシグナルプロセシング(血流または液体流パラメーターを測定するための超音波エコーの連続波またはパルスドップラープロセシングに基づく)を用いる医療用超音波検査機器の使用と組み合わせて、静脈内注射または動脈内注射として用いられるよう設計されている。
【0004】
超音波造影剤の1つとして有用な注射用製剤には、液体媒体中に分散した直径数ミクロンの気体気泡懸濁剤が挙げられる。
キャリア液体中の気体気泡懸濁剤の有効な超音波反射剤としての使用は当該分野において周知である。超音波画像法を向上させるためのエコー薬剤(echopharmaceutical)としての微小気泡懸濁液の開発は、水溶液の急速な静脈内注射により溶解した気体が気泡の形成により溶液から出現しうるという初期の観察から始まった。血液に対する音響インピーダンスの実質的な相違により、これらの血管内気体気泡は超音波の優れた反射物であることが見出された。キャリア液体の気体気泡懸濁液を生存生物の血流内に注射することにより、超音波エコー画像化法が非常に増強され、それにより内部器官の画像化が向上する。器官および深部組織の画像化は、医学的診断の証明において重要なものであり得るので、安定な高濃度気体気泡の懸濁液であって、同時に製造および投与が簡便であり、不活性種は最小限しか含有せず、そして長期保存および簡便な分散が可能である懸濁液の開発には多大なる努力が費やされてきた。
【0005】
しかしながら、遊離気体気泡の水性媒体への単純分散は実施目的が制限される。なぜならば、通常、これらの気泡は超音波造影剤として有用な程は十分に安定ではないからである。
従って、エコー検査(echography)および他の超音波試験用に気体気泡を安定化する方法、例えば、乳化剤、オイル、増粘剤または糖類の使用、あるいは気体またはその前駆体の種々の系への捕獲またはカプセル化に関心が示されてきた。これらの安定型気体気泡は、当該分野において、通常、「微小胞」と称されており、主に2つのカテゴリーに分けることができる。
【0006】
安定型気泡または微小胞の第1のカテゴリーは、当該分野において、通常、「微小気泡」と称され、気体対液体界面に並ぶ界面活性剤(すなわち、両親媒性物質)を含む非常に薄い殻(膜)により気体気泡が気体/液体界面と接している水性懸濁液が挙げられる。微小ビヒクルの第2のカテゴリーは、通常、当該分野において「マイクロバルーン」または「マイクロカプセル」と称されるものであり、気体気泡が天然または合成のポリマーから形成される固体物質殻で覆われている懸濁液が挙げられる。マイクロバルーンおよびその製造方法の例は、例えば、欧州特許出願EP 0458745に開示されている。別の種類の超音波造影剤としては、多孔性微小粒子のポリマーまたは他の固体の懸濁剤が挙げられ、これらは微小粒子の穴に捕獲された気体気泡を保持している。本発明は特に、画像診断用造影剤に関し、これは基本的に両親媒性物質の層により安定化されている気体微小気泡(すなわち、微小胞)の水性懸濁液を含む。
【0007】
通常、微小気泡懸濁液は、粉末両親媒性物質(例えば、凍結乾燥予備成形リポソームまたは凍結乾燥型もしくはスプレー乾燥型リン脂質懸濁液)を空気または他の気体と接触させ、次いで水性キャリアと接触させ、攪拌して微小気泡懸濁液を作製することにより製造し、これは製造後すぐに投与しなければならない。
【0008】
気体微小気泡の水性懸濁液の例示およびその製造は、例えば、米国特許第5,271,928号、同第5,445,813号、同第5,413,774号、同第5,556,610号、同第5,597,549号、同第5,827,504号に見出すことができる。
【0009】
W097/29783は気体微小気泡懸濁液の製造方法の別法を開示し、この方法は適当なリン脂質含有水性媒体中の気体微小気泡分散剤を作製すること、次いでこの分散液を凍結乾燥させて急速溶解製品(dried reconstitutable product)を得ることを含む。このように製造した乾燥製品は最小限の攪拌しか必要としないで水性媒体中に再構成することができる。上記文献に記載されているように、そのように製造した微小気泡のサイズは一貫して再現性があり、実際に再構成の間に適用した攪拌エネルギーの量とは関係無く最初の微小気泡分散液中で形成された微小気泡のサイズにより決定される。しかしながら、この出願人は、特に、直径が小さい微小気泡を得る必要がある場合は、リン脂質含有水性媒体中の気体微小気泡分散液を作製するために適用される攪拌エネルギーの量が非常に高いかもしれないことを見出した(例えば、体積平均径約3μmの気泡の分散液を得るためには、23000rpmで10分間)。この非常に高い攪拌エネルギーは微小気泡水性分散液の局所的オーバーヒートをもたらすかもしれず、次いで水性媒体に含まれるリン脂質の分解を引き起こすかもしれない。さらに、過度に高い攪拌エネルギーの影響は通常は制御が困難であり、最終微小気泡の制御不可能なサイズ分布を生じうる。さらに、このプロセスは、微小気泡の生成過程において水性媒体への気体の連続流入を含むので、相当量の気体の使用を必要とする。
【0010】
さらに、WO94/01140は水性媒体中で再構成可能な微小胞懸濁液の製造方法を開示し、この方法は、非経口投与可能な乳化剤、非極性液体、および脂溶性または水不溶性の「構造ビルダー(structure-builder)」を含有する水性乳液を凍結乾燥することを含む。ポロキサマーおよびリン脂質が非経口的に投与可能な乳化剤であると記載されていると同時に、これら2つの混合物が実施例で使用されている。コレステロールが好ましい水不溶性の構造ビルダーであり、実施例で使用されている。次いで、凍結乾燥製品を水中に再構成し、気体封入微小胞の水性懸濁液を得る。従って、再構成工程から得られた気体封入型微小胞は異なる材料の殻(例えば、ポロキサマーのような乳化剤、およびコレステロールのような水不溶性構造ビルダー)を特徴とする。
【0011】
この方法は4μm未満、好ましくは2μm未満から下は0.5μmの粒子径の乳液を生じるといわれている。しかしながら、この出願人は再構成工程により最終的に2μm未満の個数平均径の微小胞が生じるが、それにもかかわらず、この微小胞集団の対応するサイズ分布が比較的ブロードであることに気づいている。さらに、上記の方法に従って得られる、乳液微小粒子から気体微小気泡への変換工程では収率がかなり低い。
【0012】
今回、本出願人は、上記乳液の主な乳化剤としてリン脂質を使用し、水不溶性構造ビルダーが実質的に存在しない条件下で上記プロセスを行えば、より狭いサイズ分布の微小気泡が得られ得ることを見出した。さらに、水不溶性構造ビルダーが実質的に存在しないことにより、乳液微小粒子から気体微小気泡への変換率が実質的に増加し得る。本出願人はさらに、上記の方法において、基本的にリン脂質が乳液中に存在する唯一の乳化剤である場合、さらに微小粒子のサイズ分布が狭くなること、および変換率が増加することを見出した。
【0013】
本出願人はまた、上記方法の間に水相−有機相乳液に適用する攪拌エネルギーをかなり低くすることにより、非常に直径が小さく、サイズ分布が狭い微小気泡を得ることができることを見出した。
【0014】
発明の要旨
本発明の1局面は、水性キャリア液体および気体と接触させると、主にリン脂質により安定化されている気体封入微小気泡の懸濁液へと再構成される凍結乾燥マトリックスの製造方法に関し、この方法は、以下:
a)i)水性媒体、ii)実質的に水と不混和性の有機溶媒、iii)50重量%以上のリン脂質を含有する両親媒性物質の乳化組成物、およびiv)溶解保護剤(lyoprotecting agent)を含有する水相−有機相乳液を製造すること、
b)この乳化した混合物を凍結乾燥して、リン脂質を含有する凍結乾燥マトリックスを得ることを含む。
【0015】
本発明の別の局面は、主にリン脂質で安定化されている気体封入型微小気泡の液体水性懸濁液を含有する注射用造影剤を製造する方法に関し、この方法は、以下:
a)i)水性媒体、ii)実質的に水と不混和性の有機溶媒、iii)50重量%以上のリン脂質を含有する両親媒性物質の乳化組成物、およびiv)溶解保護剤を含有する水相−有機相乳液を製造すること、
b)この乳液を凍結乾燥して、リン脂質を含有する凍結乾燥マトリックスを得ること、
c)この凍結乾燥マトリックスを生体適合性気体と接触させること、
d)生理学的に許容される水性キャリア液体に溶解することにより、この凍結乾燥マトリックスを再構成し、主にリン脂質で安定化されている気体封入型微小気泡の懸濁液を得ることを含む。
【0016】
好ましくは、乳液を製造する工程a)は、以下:
a1)両親媒性物質の乳化組成物および溶解保護剤を水性媒体に分散させることにより懸濁液を製造すること、
a2)得られた懸濁液を有機溶媒と混合すること、
a3)混合物を制御した攪拌に供して乳液を得ることを含む。
【0017】
好ましくは、工程a3)に記載の制御した攪拌は、高圧ホモジナイザー(high pressure homogenizer)またはより好ましくは電動式ホモジナイザー(rotor-stator homogenizer)を用いることにより得られる。
【0018】
本発明のさらなる局面は、水性キャリア液体中に主にリン脂質を含有する安定化層により安定化されている気体封入型微小気泡の懸濁液を含有する注射用造影剤に関し、この微小気泡は1.70μm未満の個数平均径(DN)およびDV50/DN比が約2.00以下になるような体積メジアン径 (DV50)を有する。
【0019】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明の1局面は主にリン脂質で安定化されている気体封入型微小気泡の再構成可能な懸濁液の凍結乾燥マトリックスを製造する方法に関し、この方法は、i)水性媒体、ii)実質的に水と不混和性の有機溶媒、iii)リン脂質、およびiv)溶解保護剤を含有する水相−有機相乳液を製造すること、続いてこの乳液を凍結乾燥することを含む。
【0020】
好ましくは、水性媒体は生理学的に許容されるキャリアである。用語「生理学的に許容される」とは、選択した量で患者の健康または正常な機能にネガティブな影響を与えることなく、または実質的に変更することなく(例えば、何らかの許容できない毒性状態の決定、何らかの極端なまたは制御不可能なアレルギー反応の誘発、または何らかの異常な病的状態または疾患状態の決定を伴わないこと)、患者に投与することができる任意の化合物、物質または製剤を含む。
【0021】
適当な水性液体キャリアは水、典型的には滅菌パイロジェンフリー水(中間凍結乾燥製品への混入をできる限り予防するため)、生理食塩水のような水溶液(都合のよく平衡化できるので最終注射用製品は低張ではない)、または例えば、塩または糖、糖アルコール、グリコールまたは他の非イオン性ポリオール物質(例えば、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等)のような1種以上の張力調整物質の水溶液である。
【0022】
有機溶媒
本明細書中で用いる、有機溶媒を意味する用語「水と実質的に不混和性」は、この溶媒を水と混合すると、2つに分離した相が形成されるとことを意味する。また、水不混和性溶媒は、通常、当該分野において、極性溶媒(例えば、水)とは反対に無極性または非極性溶媒として公知である。水不混和性溶媒は、通常、水に実質的に不溶性である。本発明において、水性溶媒と乳化するために適した有機溶媒は、典型的には水への溶解度が約10g/l未満である溶媒である。溶媒の水への溶解度は、好ましくは約1.0g/l未満、より好ましくは約0.2g/l未満、さらにより好ましくは約0.01g/l未満である。特に好ましい溶媒は水への溶解度が0.001g/l未満である溶媒である。特に不溶性の有機溶媒(例えば、ペルフルオロカーボン)は、約1.0×10-6g/lもの低さの溶解度を有しうる(例えば、ペルフルオロカーボンは1.66×10-6g/l)。
【0023】
好ましくは、有機溶媒は凍結乾燥可能である。すなわち、この溶媒は凍結乾燥温度(例えば、-30℃〜0℃の間)で十分高い蒸気圧を有し、許容時間(例えば、24〜48時間)内に有効かつ完全に留去/昇華できる。好ましくは、有機溶媒の蒸気圧は25℃で約0.2kPaよりも高い。
【0024】
有機溶媒は、上に記載したような水不混和性かつ凍結乾燥可能な広範囲の溶媒および任意の化学物質から選択することができ、これらは室温(25℃)で液体であることが好ましい。沸点が室温より低い溶媒を用いる場合、乳化混合物を入れた容器を溶媒の沸点未満(例えば、5℃または0℃)に都合よく冷却することができる。凍結乾燥工程の間に溶媒は完全に除去されるので、凍結乾燥により除去することができない混入物、または注射用組成物での使用に許容できない混入物は含有すべきではないことを除くと、特に制約はない。
【0025】
適当な有機溶媒としては、アルカン(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンのような分枝または好ましくは線状(C5-C10)アルカン)、アルケン(例えば、1-ペンテン、2-ペンテン、1-オクテンのような(C5-C10)アルケン)、シクロアルカン(場合により1つ以上のメチル基で置換されていてもよい(C5-C8)-シクロアルカン。例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、1-メチル-シクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼンのようなベンゼンおよび1または2個のメチルまたはエチル基で置換されているベンゼン誘導体)、アルキルエーテルおよびケトン(例えば、ジブチルエーテルおよびジイソプロピルケトン)、ハロゲン化炭化水素またはエーテル(例えば、クロロホルム、四塩化炭素、2-クロロ-1-(ジフルオロメトキシ)-1,1,2-トリフルオロエタン(エンフルラン)、2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン(イソフルラン)、テトラクロロ-1,1-ジフルオロエタン)、および特にペルフルオロ炭化水素またはエーテル(例えば、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン、ペルフルオロベンゼンおよびペルフルオロデカリン、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチルペルフルオロイソブチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル、エチルペルフルオロイソブチルエーテル)、ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
通常、溶媒の量は、乳液に用いられる水の量に対して約1容量%〜約50容量%からなる。好ましくは、この量は約1%〜約20%、より好ましくは約2%〜約15%、さらにより好ましくは約5%〜約10%である。要すれば、上記有機溶媒の2種以上の混合物を用い、乳化混合物中の有機溶媒の全量が上記範囲内にあるようにしてもよい。
【0027】
溶解保護剤
用語、溶解保護剤または「溶解保護薬(lypoprotectant)」は、凍結乾燥する製剤に含有させると凍結工程および真空化による有害な影響(例えば、通常は凍結乾燥にともなって生じる凍結乾燥に用いるバキュームによる破損、吸着および損失)から化学物質を保護する化合物を意味する。さらに、凍結乾燥工程の後、溶解保護剤は固体マトリックス(「バルク」)を生じることが好ましく、これは凍結乾燥型リン脂質を支持する。
【0028】
本発明は特定の溶解保護薬の使用に限定されるものではなく、適当な溶解保護薬の例としては炭水化物(例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、アミロース、アミロペクチン、シクロデキストリン、デキストリン、イヌリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)のような糖類、単糖、二糖または多糖類、マンニトール、ソルビトールのような糖アルコール、およびポリエチレングリコールのようなポリグリコール)が挙げられるがこれらに限定しない。溶解保護効果を有する薬剤の実質的なリストはActa Pharm. Technol. 34 (3), pp. 129-139 (1988)に示されている(参照により、この内容を本明細書中に組み込む)。この溶解保護剤は単独で用いることができるか、または1種以上の化合物の混合物として使用することができる。
【0029】
好ましい溶解保護薬としては、マンニトールおよびデキストラン(特に約1500ダルトンより大きい分子量を有するもの)、イヌリン、可溶性デンプンおよびヒドロキシエチルデンプンのような多糖類が挙げられる。
【0030】
マンニトールまたは多糖類(例えば、デキストラン、イヌリン、可溶性デンプンおよびヒドロキシエチルデンプン)と、糖類(グルコース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロースおよびエリトリトール)との混合物もまた、優れた結果を提供する。
【0031】
同様に、本発明は用いる溶解保護薬を具体的な量に限定しない。しかしながら、凍結乾燥前の乳液中の溶解保護用薬剤の最適重量濃度は、約1〜約25%の間、好ましくは約2〜約20%、さらにより好ましくは約5〜約10%である。
【0032】
また、所望の「バルク」を凍結乾燥製品にすることが必要である場合、より多量を使用することができる。
【0033】
好ましくは、乳化前に凍結乾燥剤を水相−有機相混合物に加え、この場合には凍結乾燥剤の存在下で水相−有機相混合物の乳化を行う。あるいは、水相−有機相混合物の乳化後に溶解保護薬を添加してもよい。最初のケースの場合、有機溶媒との混合前に溶解保護薬を水性媒体に加えることが好ましい。要すれば、例えば、溶解保護剤の一部を乳液の製造に用いる水相に加え、そのようにして得られた乳液にさらに一部を加えることにより、2種を混合することもできる。要すれば、凍結による有害な影響から化学物質を保護するために凍結防止剤(例えば、グリセロール)もまた、乳液にさらに添加してもよい。
【0034】
リン脂質
本出願の明細書および請求の範囲によると、用語、リン脂質は両親媒性リン脂質化合物を包含することを意図し、この分子は最終微小気泡懸濁液における気相−水相境界面に物質のフィルムを(通常は単分子層(mono-molecular layer)の形で)形成することができる。従って、これらの物質はまた、当該分野において「フィルム形成リン脂質」とも称されている。同様に、乳化混合物において、これらの両親媒性化合物は、通常、水性媒体および実質的に水に不溶性の有機溶媒の界面に並び、乳化溶媒微小液滴を安定化する。気体−水または水−溶媒界面でこれらの化合物により形成されるフィルムは、連続的または非連続的のいずれかであり得る。しかし、後者の場合、フィルム中の非連続性は、懸濁型微小気泡または乳化型微小液滴の安定性(例えば、圧力抵抗性、融合抵抗性など)を損なうようなものであるべきではない。
【0035】
本明細書中で用いる用語「両親媒性化合物」は、水性媒体と相互作用しうる親水性極性ヘッド部分(例えば、極性またはイオン性基)、および例えば有機溶媒と相互作用し得る疎水性有機テイル部分(例えば、炭化水素鎖)を備えた分子を有する化合物を意味する。従って、これらの化合物は通常、「界面活性剤(surface active agent)」、すなわち、通常は不混和性である物質の混合物、2種の不混和性液体(例えば、水と油)の混合物、液体と気体との混合物(例えば、水中気体微小気泡)または液体と不溶性粒子との混合物(例えば、水中金属ナノ粒子)などを安定化しうる化合物として作用する。
【0036】
通常、両親媒性リン脂質化合物は、少なくとも1つのリン酸基および少なくとも1、好ましくは2個の親油性長鎖炭化水素基を含む。
【0037】
適当なリン脂質の例としては、1または好ましくは2個の(同一または異なる)脂肪酸残基、およびリン酸とのグリセロールのエステルが挙げられ、ここで次いでリン酸残基は親水性基、例えば、コリン(ホスファチジルコリン-PC)、セリン(ホスファチジルセリン-PS)、グリセロール(ホスファチジルグリセロール-PG)、エタノールアミン(ホスファチジルエタノールアミン-PE)、イノシトール(ホスファチジルイノシトール)などの基に結合する。リン脂質と脂肪酸の1つの残基のみとのエステルは、当該分野において通常、リン脂質の「リゾ」形と称する。リン脂質中に存在する脂肪酸残基は、通常、長鎖脂肪族酸であり、代表的には炭素原子数12〜24、好ましくは炭素原子数14〜22であり、この脂肪鎖は1つ以上の不飽和を含んでいてもよいが、好ましくは完全飽和である。リン脂質中に含まれる適当な脂肪酸の例は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸およびリノレン酸である。ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびアラキドン酸のような飽和脂肪酸が使用されることが好ましい。
【0038】
リン脂質のさらなる例はホスファチジン酸(すなわち、グリセロール-リン酸の脂肪酸とのジエステル)、スフィンゴミエリンのようなスフィンゴ脂質(すなわち、グリセロールジエステルの脂肪酸との残基がセラミド鎖で置換されているホスファチジルコリンアナログ)、カルジオリピン(すなわち、1,3-ジホスファチジルグリセロールの脂肪酸とのエステル)、ガングリオシドGM1 (またはGM2)またはセレブロシドのような糖脂質、グルコリピド(glucolipid)、スルファチドおよびグリコスフィンゴリピドである。
【0039】
本明細書中で用いる用語リン脂質は、天然、半合成または合成により製造した製品のいずれかを含み、単独または混合物のいずれかとして使用することができる。
【0040】
天然リン脂質の例は、代表的には、大豆または卵黄のレシチンのような天然レシチン(ホスファチジルコリン (PC)誘導体) である。
【0041】
半合成リン脂質の例は、部分的または完全に水素化された天然レシチン誘導体である。好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリン、エチルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンの脂肪酸ジエステルである。
【0042】
好ましいリン脂質の例は、ジラウロイル-ホスファチジルコリン (DLPC)、ジミリストイル-ホスファチジルコリン (DMPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン (DPPC)、ジアラキドイル-ホスファチジルコリン (DAPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン (DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン (DOPC)、1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(エチル-DSPC)、ジペンタデカノイル-ホスファチジルコリン (DPDPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-ホスファチジルコリン(PMPC), 1-パルミトイル-2-ステアロイル-ホスファチジルコリン (PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (SPPC)、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン (POPC)、1-オレイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(DLPG)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)およびそのアルカリ金属塩、ジアラキドイルホスファチジルグリセロール(DAPG)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG) およびそのアルカリ金属塩、ジオレイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG) およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA) およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA) およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルリン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA) およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)およびジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)等である。
【0043】
用語、リン脂質はさらに、修飾型リン脂質(例えば、親水性基が、次いで別の親水性基に結合するリン脂質)を含む。修飾型リン脂質の例は、結合しているPEGポリマーを有するDPPE(またはDSPE)のようなDPPE-PEGまたはDSPE-PEG等の、ポリエチレングリコール(PEG)で修飾したホスファチジルエタノールアミン(すなわち、親水性エタノールアミン部分が種々の分子量(例えば、300〜5000ダルトン)のPEG分子に連結されているホスファチジルエタノールアミン)である。例えば、DPPE-PEG2000は、平均分子量約2000のPEGポリマーに結合したDPPEを意味する。以下に詳細に説明するように、これらPEG修飾型リン脂質は、非修飾型リン脂質と組み合わせて用いることが好ましい。
【0044】
中性および荷電リン脂質の両方、ならびにその混合物を、本発明の方法に申し分なく使用することができる。本明細書中および先行技術において用いる場合、「リン脂質」と関連した場合の用語「荷電」は、個々のリン脂質分子が全体として正味の荷電(正、または多くの場合は負)を有していることを意味する。
【0045】
全体として負の荷電を有するリン脂質の例は誘導体であり、特にホスファチジルセリン(例えば、DMPS、DPPS、DSPS)、ホスファチジン酸(例えば、DMPA、DPPA、DSPA)、ホスファチジルグリセロール(例えば、DMPG, DPPGおよびDSPG)の脂肪酸ジエステルである。また、修飾型リン脂質、特にPEG-修飾型ホスファチジルエタノールアミン(例えば、DMPE-PEG750、DMPE-PEG1000、DMPE-PEG2000、DMPE-PEG3000、DMPE-PEG4000、DMPE-PEG5000、DPPE-PEG750、DPPE-PEG1000、DPPE-PEG2000、DPPE-PEG3000、DPPE-PEG4000、DPPE-PEG5000、DSPE-PEG750、DSPE-PEG1000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000、DSPE-PEG4000、DSPE-PEG5000、DAPE-PEG750、DAPE-PEG1000、DAPE-PEG2000、DAPE-PEG3000、DAPE-PEG4000またはDAPE-PEG5000)は、負に荷電した分子として使用することができる。また、上記リン脂質のリゾ型(例えば、リゾホスファチジルセリン誘導体 (例えば、リゾ-DMPS、-DPPSまたは-DSPS)、リゾホスファチジン酸誘導体(例えば、リゾ-DMPA、-DPPA or-DSPA) およびリゾホスファチジルグリセロール誘導体(例えば、リゾ-DMPG、-DPPGまたは-DSPG))は、負に荷電した化合物として都合よく使用することができる。
【0046】
全体として正の荷電を有するリン脂質の例は、エチルホスファチジルコリンの誘導体、特にエチルホスファチジルコリンの脂肪酸とのエステル(例えば、1, 2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(エチル-DSPCまたはDSEPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(エチル-DPPCまたはDPEPC))である。
【0047】
2種以上のリン脂質のブレンド(少なくとも1つが中性の電荷を有し、少なくとも1つが全体として正味荷電を有する)を使用することが好ましい。2種以上のリン脂質のブレンド(少なくとも1つが中性の荷電を有し、少なくとも1つが負の荷電を有する)を使用することがさらに好ましい。荷電リン脂質の量は、リン脂質の総重量に対して約95重量%〜約5重量%で変動してもよく、80重量%〜20重量%の間で変動することが好ましい。少なくとも少量(例えば、リン脂質の総重量に対して5重量%〜20重量%)の(負の)荷電リン脂質の存在により、気泡、または乳液液滴の凝集の予防を助けることができる。しかしながら、中性もしくは荷電した1種のリン脂質、または全てが中性または全てが全体として負に荷電した2種以上のリン脂質を使用することができる。
【0048】
DAPC、DPPA、DSPA、DMPS、DPPS、DSPS、DPPE、DSPE、DSPG、DPPGおよびエチル-DSPCが好ましいリン脂質である。DSPA、DPPSまたはDSPSが最も好ましい。
【0049】
好ましいリン脂質混合物は、DPPSのDPPC、DSPCもしくはDAPCとの混合物(95/5〜5/95 w/w)、DSPAのDSPCもしくはDAPCとの混合物(95/5〜5/95 w/w)、DSPGもしくはDPPGのDSPCとの混合物、またはDSPCのエチル-DSPCとの混合物である。DPPS/DSPC (50/50〜10/90 w/w)またはDSPA/DSPC (50/50〜20/80 w/w)の混合物が最も好ましい。
【0050】
通常、リン脂質の量は、乳化混合物の総重量に対して約0.005重量%〜約1.0重量%含有される。当然、より多量を使用してもよいが、最終製品が注射用造影剤であることを考慮すると、安定かつ適切な製品を提供するために厳密に必要でない限り、過剰量の添加剤を使用することは好ましくない。通常、上記範囲の上限として記載した量よりも多量のリン脂質を使用することにより、気泡集団、気泡サイズ分布、および気泡安定性という点において、基本的には改善が全く観察されないか、またはほんの少ししか観察されない。代表的には、より多量の有機溶媒を用いると、より多量のリン脂質を必要とする。従って、有機溶媒の体積が水相の体積約50%になる場合、約1% w/w のリン脂質量を乳液に都合よく添加することができる。好ましくは、リン脂質量は、乳化混合物の総量に対して0.01重量%〜1.0重量%が含有され、約0.05重量%〜0.5重量%がより好ましい。
【0051】
上記のように、本発明の方法により製造される微小気泡は、主に上に定義したリン脂質により安定化される。特に、気体封入型微小気泡を覆う殻は、50%(w/w)より多い、好ましくは少なくとも80%、およびさらにより好ましくは少なくとも90%の上記リン脂質物質により形成される。都合のよいことに、微小気泡の安定化殻の実質的な全体はリン脂質により形成される。
【0052】
しかし、他の両親媒性物質を、乳化組成物の総重量の50%未満の量で気体封入型微小気泡の安定化殻を形成するリン脂質と混合してもよい。
【0053】
適当な追加の殻安定化両親媒性物質の例としては、例えば、リゾ脂質、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、アラキン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸またはリノレン酸およびそれらのアルカリまたはアルカリ金属との個々の塩)、ポリマー(例えば、キチン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコール(PEG))保有脂質(PEGの場合、「ペグ化脂質」とも称される)、スルホン酸化単糖、二糖、オリゴ糖または多糖類保有脂質、エーテルまたはエステル結合型脂肪酸を有する脂質、重合体化脂質、ジアセチルホスフェート、ジセチルホスフェート、ステアリルアミン、セラミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸ステアラート)、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル、グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート、エトキシ化大豆ステロール、エトキシ化ヒマシ油、エチレンオキシド(EO) およびプロピレンオキシド(PO)ブロックコポリマー、糖酸のステロールエステル(コレステロールグルクロニド、ラノステロールグルコロニド(glucoronide)、7-デヒドロコレステロールグルコロニド、エルゴステロールグルコロニド、コレステロールグルコナート、ラノステロールグルコナートまたはエルゴステロールグルコナートを含む)、糖酸のアルコールとのエステル(ラウリルグルコロニド、ステアリルグルコロニド、ミリストイルグルコロニド、ラウリルグルコナート、ミリストイルグルコナートまたはステアリルグルコナート、糖の脂肪族酸とのエステル(スクロースラウレート、フルクトースラウレート、スクロースパルミテート、スクロースステアラート、グルクロン酸、グルコン酸またはポリウロン酸が含まれる)、グリセロールの(C12-C24)のエステルとのエステル(好ましくは、(Cl4-C22)ジカルボキシ脂肪酸およびアルカリまたはアルカリ金属との個々の塩(例えば、1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロールまたは1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロール))、サポニン(サルササポゲニン、スミラゲニン、ヘデラゲニン(hederagenin)、オレアノール酸またはジギトキシゲニンを含む)、長鎖(Cl2-C24)アルコール(n-デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコールまたはn-オクタデシルアルコールを含む)、6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド、ジガラクトシルジグリセリド、6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド、6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-マンノピラノシド、12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカン酸、N-[12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸、N-スクシニル-ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロ-ホスホエタノールアミン、パルミトイルホモシステイン、少なくとも1個の(C10-C20)、好ましくは(Cl4-Cl8)アルキル鎖を含むアルキルアンモニウム塩(例えば、ステアリルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))、1または好ましくは2個の(C10-C20)、好ましくは(C14-Cl8)アシルエステル残基を含む3級または4級アンモニウム塩(例えば、1,2-ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DPTAP)、1,2-オレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DSDAP))、ならびにこれらの混合物または組合せが挙げられる。
【0054】
また、少量の脂肪酸およびリゾ型リン脂質は、例えば、乳液加熱の結果として本来のリン脂質生成物の分解産物として、形成しうる。
【0055】
好ましいさらなる殻安定化両親媒性物質は、分子中に1または2個の脂肪酸残基を含む化合物であり、特に1または2個の線状(C10-C20)-アシル、好ましくは(C14-Cl8)-アシル鎖(例えば、上記脂肪酸)、それらの塩および誘導体を含むものである。
【0056】
特に好ましいさらなる殻安定化両親媒性物質は、安定化殻に対して全体的に正味荷電を与えうる化合物(すなわち、全体的に正または負の荷電を有する化合物)である。適切に負または正に荷電した化合物の例は、例えば、リゾリン脂質、すなわち、上記リン脂質のリゾ型(リゾホスファチジルセリン誘導体(例えば、リゾ-DMPS、-DPPSまたは-DSPS)、リゾホスファチジン酸誘導体(例えば、リゾ-DMPA、-DPPAまたは-DSPA)およびリゾホスファチジルグリセロール誘導体(例えば、リゾ-DMPG、-DPPGまたは-DSPG)等)、胆汁酸塩(例えば、コール酸塩、デオキシコール酸塩またはグリココール酸塩等)、(Cl2-C24)、好ましくは(C14-C22)脂肪酸塩(例えば、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、1,2-ジパルミトイル-sn-3-スクシニルグリセロール塩または1,3-ジパルミトイル-2-スクシニルグリセロール塩)、少なくとも1個の(C10-C20)アルキル鎖、好ましくは(C14-Cl8)アルキル鎖を含む、ハロゲン対イオン(例えば、塩素または臭素)とのアルキルアンモニウム塩(例えば、ステアリルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB))、1または好ましくは2個の(C10-C20)アシル鎖、好ましくは (C14-C18)アシルエステル残基を含む、ハロゲン対イオン(例えば、塩素または臭素)との3級または4級アンモニウム塩(例えば、1,2- ジステアロイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DSTAP)、1,2-ジパルミトイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン (DPTAP)、1,2-オレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン(DSDAP))である。
【0057】
「標的化(targeted)」超音波造影剤、すなわち、本発明の方法により、インビトロまたはインビボ投与後、特異的な部位に選択的に結合しうる微小気泡含有造影剤を得ることが望ましい場合、その少なくとも1部が適切に選択した標的リガンドの導入により修飾されているリン脂質から直接開始することも可能であるし、あるいは、その少なくとも一部が相補性反応性官能基(例えば、アビジン-ビオチン連結)を含む、後の段階で適切に選択した標的化リガンドとカップリングさせることができる反応性保護基をおそらく含有するリン脂質で開始することも可能である。
【0058】
従って、本明細書中の場合、用語「リン脂質」は修飾または非修飾のリン脂質の両方を含み、標的化リガンドまたは反応性保護基をリン脂質の両親媒性分子に連結することにより修飾されているリン脂質を含む。
【0059】
用語「標的化リガンド」は、生物体内における生物学的または病理学的部位への本発明の微小気泡の標的活性を有する、または促進しうる任意の化合物、部分または残基をその意味の内に含む。標的化リガンドとして働きうる材料または物質としては、例えば、タンパク質(抗体、抗体フラグメント、受容体分子、受容体結合分子、グリコプロテインおよびレクチンを含む)、ペプチド(オリゴペプチドおよびポリペプチド)、ペプチド模倣物、サッカリド(モノおよびポリサッカリドを含む)、ビタミン、ステロイド、ステロイドアナログ、ホルモン、補因子、生体活性薬剤および遺伝物質(ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチド)を含むがこれらに限定しない。標的リガンドが会合し得る標的としては、組織(例えば、心筋組織(心筋層細胞(myocardial cell)および心筋細胞(cardiomyocites)を含む)、膜性組織(内皮細胞および上皮細胞を含む)、基底膜(laminae)、結合組織(間質組織を含む)または腫瘍等)、血栓、および受容体(例えば、ペプチドホルモン、神経伝達物質、抗原、補体フラグメントおよびイムノグロブリンに対する細胞表面受容体、およびステロイドホルモンに対する細胞質受容体が挙げられる。
【0060】
適当な標的および標的化リガンドの例は、例えば、米国特許第6,139,819号に開示されており、これは参照により本明細書中に組み込む。
【0061】
好ましい1態様において、標的化リガンドは、共有結合を解して安定化殻を形成する両親媒性分子に結合しうる。
【0062】
そのような場合、標的化両親媒性分子が望ましい場合にリン脂質または脂質分子中に存在する必要がある特異的反応性分子は、結合する特定の標的リガンドに依存する。例えば、標的化リガンドがアミノ基を介して両親媒性分子に連結しうる場合、両親媒性分子に対する適切な反応性部分はイソチオソアナート基(チオウレア結合を形成する)、反応性エステル(アミド結合を形成する)、アルデヒド基(アルキルアミン結合へと還元されるイミン結合を形成する)等であり得、標的化リガンドがチオール基を介して両親媒性分子に連結しうる場合、両親媒性分子に対する適当な相補性反応分子としてはハロアセチル誘導体またはマレイミド(チオエーテル結合を形成する)が挙げられ、そして標的化リガンドがカルボン酸基を介して両親媒性分子に連結し得る場合は、両親媒性分子に対する適当な反応性分子はアミンまたはヒドラジドであり得る(アミドまたはアルキルアミド結合を形成する)。反応性部分は、リン脂質分子またはリン脂質に連結されている修飾部分(例えば、PEG)のいずれかへと直接結合することができる。
【0063】
上記の通り、好ましい態様において、標的化微小気泡を含む造影剤が望ましい場合、出発リン脂質の少なくとも1部は適切な反応性部分を含み、相補性官能基を含む標的化リガンドは、官能化リン脂質/脂質を含む相に相補性官能基を有する標的化リガンドを添加することにより凍結乾燥の前の段階で連結されるか、乳液作製の前、間もしくは後のいずれかに、または再構成工程の直前のいずれかで、連結され得る。後者の場合、微小気泡は、適切に官能化されたフィルム形成リン脂質または会合した脂質の少なくとも一部を含み、次いで所望の標的化リガンドに連結され、同一の反応性相補性基を共有するので、システムの柔軟さを十分に生かすことができる。
【0064】
しかし、標的化リガンドは必ずしも共有結合を介して両親媒性分子に結合されている必要はない。また、標的化リガンドは物理的および/または静電相互作用を介して微小気泡に安定に会合しうる。1例として、相補性部分に対して高親和性および選択性を有する官能性部分をリン脂質分子中に導入することができると同時に、相補性部分を標的化リガンドに連結する。例えば、アビジン(またはストレプトアビジン)部分(ビオチンに対して高い親和性を有する)を微小気泡安定化リン脂質に共有結合により連結することができると同時に、相補性ビオチン部分を適当な標的化リガンド(例えば、ペプチドまたは抗体)に組み込むことができる。従って、ビオチン標識標的化リガンドを、アビジン−ビオチンカップリング系によりアビジン標識微小気泡に会合させる。別の実施態様に従い、ビオチン含有リン脂質を微小気泡の安定化殻を形成するための化合物として使用することができる。次いで、安定化殻に組み込まれているビオチン含有リン脂質を最初にアビジン(またはニュートラアビジン(neutravidin))と反応させ、次いでビオチン含有リガンドと反応させる。リン脂質およびペプチドのビオチン/アビジン標識の例も、上記米国特許第6,139,819号に開示されている。あるいは、ファンデルワールス相互作用、静電相互作用および他の会合プロセスにより、標的化リガンドを両親媒性分子に会合または結合させることができる。
【0065】
本発明の微小気泡が標的とする適切な特異標的の例は、例えば、フィブリン、αβ受容体または活性型血小板状上のGPIIbIIIa受容体である。実際、フィブリンおよび血小板は通常は「血栓」(すなわち、血流中に生じ、血管閉塞を引き起こしうる凝塊)中に存在する。適切な結合ペプチドは、例えば、上記米国特許第6,139,819号に開示されている。フィブリン標的化に特異的なさらなる結合ペプチドは、例えば、国際特許出願第WO 02/055544に開示されている(参照により本明細書中に組み込む)。
【0066】
重要な標的の他の例としては、不安定な血小板(vulnerable plaques)における受容体、および腫瘍特異的受容体(例えば、キナーゼドメイン領域(KDR)およびVEGF (血管内皮増殖因子)/KDR複合体)が挙げられる。KDRまたはVEGF/KDR複合体に適した結合ペプチドは、例えば、国際特許出願WO 03/74005およびWO 03/084574に開示されている(両方を、参照により本明細書中に組み込む)。
【0067】
方法
本発明の方法の乳化工程a)は、水性媒体およびコア溶媒を少なくとも1種のリン脂質の存在下で当該分野で公知の任意の適当な乳液作製技術(例えば、超音波処理、振盪、高圧ホモジネーション、マイクロミキシング(micromixing)、メンブレン乳化、高速攪拌または高剪断混合(例えば、電動式ホモジナイザーを用いる)に供することにより行うことができる。例えば、Polytrone(登録商標)PT3000のような電動式ホモジナイザーを用いる。電動式ホモジナイザーの攪拌スピードは、乳液組成、乳液の容量および乳液を入れた容器の直径、並びに乳液中の溶媒の微小液滴の所望の最終直径に応じて選択することができる。通常、直径3.5-5cmのビーカーに入れた混合物(50-80ml)に沈めた直径約3cmのプローブを備えた電動式ホモジナイザーを用いる場合、凍結乾燥および凍結乾燥マトリックスの再構成後、直径約1.8μm未満の気体封入型微小気泡を生じさせるために個数平均径が十分に減少している微小液滴を得るためには、通常、約8000rpmの攪拌スピードで十分である。攪拌スピードを約12000rpmまで増加させることにより、通常、約1.5μm未満の個数平均径を有する気体封入型微小気泡を得ることができるが、他方、約14000-15000rpmの攪拌スピードを用いて、通常、約1.0μm以下の個数平均径を有する気体封入型微小気泡を得ることができる。通常、攪拌スピードを約18000rpmより高くすることにより、さらにわずかにサイズが減少した微小気泡が得られることが観察された。
【0068】
あるいは、混合物を乳化するためにマイクロミキシング技術もまた使用することができる。公知のように、通常、マイクロミキサーは少なくとも2つの入口、および少なくとも1つの出口を備える。それゆえ、有機溶媒を第1の入口からミキサーに入れ(例えば、流速0.05-5ml/分)、同時に水相を第2の入口から入れる(例えば、流速2-100ml/分)。次いで、マイクロミキサーの出口を水相を入れた容器につなぎ、次いで水相を容器から出し、増加量の乳化溶媒を含有するマイクロミキサーに入れる。溶媒の全量を加え、容器から出した乳液を所定の時間(例えば、5-120分間)マイクロミキサーを通して還流下に維持し、完全に乳液にする。
【0069】
乳化技術に応じて、乳化工程の間に有機溶媒を徐々に導入するか、または乳化工程の前に一度に導入する。あるいは、水性媒体を乳化工程の間に水不混和性溶媒に徐々に加えるか、または乳化工程の開始前に一度に加える。好ましくは、後者を有機溶媒と混合する前にリン脂質を水性媒体に分散する。あるいは、リン脂質を有機溶媒に分散するか、または乳化工程の前もしくはその間に、水相−有機相混合物に分けて加えてもよい。
【0070】
工程a)の乳化は、室温(例えば、22℃±5℃)またはそれよりも高温(例えば、50℃〜60℃)(例えば、コア溶媒の沸点が高い場合)またはそれよりも低温(例えば、0℃〜10℃)(例えば、コア溶媒の沸点が室温に近い場合)で、都合よく行われる。温度を有機溶媒の沸点未満に維持することが好ましく、その温度よりも少なくとも5℃低いことが好ましく、少なくとも10℃低いことがより好ましい。混合物を高温(例えば、90℃以上)に長期間曝すと、リン脂質の分解の可能性が生じるかもしれず、続いて個々のリゾ形誘導体が形成されるかもしれないので、通常は、高温でのそのような長期加熱を避けるのが好ましい。
【0071】
要すれば、リン脂質を含む水性媒体を、その分散を容易にするために制御した加熱に供してもよい。例えば、リン脂質含有水性懸濁液を約60〜70℃で約15分間加熱した後、次いで乳化工程が行われる温度まで冷却させる。
【0072】
上記のように、さらなる両親媒性物質(例えば、上に列挙したもの)もまた、リン脂質を含有する乳化混合物に導入することができる。追加の両親媒性化合物の量は、両親媒性物質の総量に対して約50重量%を超えないことが好ましく、より好ましくは20重量%を超えず、下は約0.1%の量である。
【0073】
要すれば、水性媒体は1以上の賦形剤をさらに含有する。
本明細書中で用いる用語「賦形剤」は、本発明に有用な任意の添加剤(例えば、乳液または凍結乾燥中間体の安定性を向上させるため、および/または製薬上許容され、かつ安定な最終組成物を提供するために使用される添加剤)を意味する。
【0074】
この点に関し、代表的な賦形剤は、例えば、粘稠剤(viscosity enhancer)および/またはリン脂質の溶解補助剤(solubility aid)である。
適切に使用されうる粘稠剤および溶解補助剤は、例えば、単糖類または多糖類(例えば、グルコース、ラクトース、サッカロースおよびデキストラン)、脂肪族アルコール(例えば、イソプロピルアルコールおよびブチルアルコール)、ポリオール(例えば、グリセロール、1,2-プロパノール)等の薬剤である。しかし、多数の既存の造影剤処方で通常用いられる粘稠剤のような添加物を本発明の造影剤に組み込む必要はないことはわかっている。このことは被検体の体内に投与される成分の数を最小限に維持し、そして造影剤の粘性を可能な限り低く維持するので、本発明のさらなる利点である。
【0075】
上記のように、本出願人は、水不溶性構造ビルダー(例えば、コレステロール)の乳化混合物への添加が実質的に不要であることを見出した。実際のところ、コレステロール0.05%量(乳化混合物の総重量に対するw/w)により微小液滴から気体封入型微小胞への変換効率が劇的に減少し、さらに、小胞サイズのブロードな分散が生じることが観察された。従って、乳化混合物中における水不溶性化合物の量(特にその構造に1または2個の脂肪酸残基を含有しない化合物の量)は、乳液の総重量に対して0.050重量%よりも低いことが好ましく、約0.030重量%よりも低いことがより好ましい。
【0076】
工程a)により作製した乳液は、都合のよいことに、工程b)の凍結乾燥の前に、洗浄工程にかけて水相中の過剰なリン脂質(乳液と会合していないもの)を除去することができ、粘稠剤および溶解補助剤のような任意の添加物、ならびにコロイド状粒子のような望ましくない物質、およびサイズが小さいおよび/またはサイズが大きい乳液液滴を分離および除去することができる。このような洗浄は、それ自体は公知の方法で行われ、乳液はデカンテーション、浮遊法(flotation)、遠心分離、直交ろ過(cross flow filtration)などの技術を用いて分離される。
【0077】
洗浄工程が見こまれる場合、そして溶解保護用薬剤が乳液作製前の本来の水相に存在する場合、洗浄工程を溶解保護用薬剤1種以上を含有する水溶液を用いて行い、洗浄工程で一部除去された溶解保護用薬剤量を元に戻す。他方、溶解保護薬が乳化水相−有機相混合物に存在しない場合、溶解保護薬を乳化混合物に導入するため、形成した乳液を溶解保護薬含有水溶液で洗浄するか、または凍結乾燥法の前、洗浄工程の後に溶解保護薬を加えてもよい。
【0078】
要すれば、最終再構成懸濁液中の大型微小気泡の量をさらに減少させるために、(洗浄工程の後などのいずれかに)乳液を、凍結乾燥の前に限外ろ過または精密ろ過工程に供してもよい。精密ろ過において、例えば、5μmまたは3μmフィルターを用いると、実際には大型微小液滴はろ過により保持され、残りの小型微小液滴から分離されるので、凍結乾燥物質の再構成の際に大型微小気泡が形成されるのを防ぐ。精密ろ過は、従来技術に従って行うことができる(例えば、ポジティブ(positive)ろ過、減圧ろ過またはインライン(in-line)ろ過)。ろ過メンブレンは、ナイロン、ガラス繊維、セルロース、紙、ポリカーボネートまたはポリエステル (Nucleporeo) メンブレンであり得る。
【0079】
別の実施態様によると、さらなる両親媒性化合物を、上記技術に従って乳液を形成した後(洗浄工程有りまたは無しのいずれかで)、添加してもよい。特に、所望の化合物の水性懸濁液を、好ましくは攪拌および加熱条件下(好ましくは、40℃〜80℃、特に50〜70℃のような80℃未満)で、この化合物を安定化殻に加えるために、形成した乳液に添加する。この別の実施態様は、この態様でなく、乳液の最初の混合物に導入されると最終生成物の特性にネガティブな影響を与えるかもしれない安定化層に両親媒性化合物を連続的に導入するために特に有用である。最初の乳液の製造後に安定化殻の追加成分として連続的に導入されうる両親媒性化合物の例は、例えば、PEG修飾型リン脂質(特に、DMPE-PEG750、DMPE-PEG1000、DMPE-PEG2000、DMPE-PEG3000、DMPE-PEG4000、DMPE-PEG5000、DPPE-PEG750、DPPE-PEG1000、DPPE-PEG2000、DPPE-PEG3000、DPPE-PEG4000、DPPE-PEG5000、DSPE-PEG750、DSPE-PEG1000、DSPE-PEG2000、DSPE-PEG3000、DSPE-PEG4000、DSPE-PEG5000、DAPE-PEG750、DAPE-PEG1000、DAPE- PEG2000、DAPE-PEG3000、DAPE-PEG4000またはDAPE-PEG5000のようなPEG修飾型ホスファチジルエタノールアミン)である。同様に、反応性部分または標的化リガンドを有する(例えば、ビオチン、マレイミドまたはマレイミドペプチドを含有する)PEG修飾型リン脂質は、この方法に従って、都合よく連続的に導入することができる。さらに、この技術はまた、安定化層の組成物を他の成分(例えば、リポペプチドまたはポリマー性界面活性剤)に続けて加えるために使用することができる。乳液の形成後に都合よく加えることができるポリマー性界面活性剤の例は、例えば、エチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックコポリマー(例えば、Pluronic F68、Pluronic F108、Pluronic F-127 (Sigma Aldrich, Missouri, USA))、ポリオキシエチル化アルキルエーテル(例えば、Brij(登録商標)78 (Sigma Aldrich, Missouri, USA))、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、Myrj(登録商標)53またはMyrj(登録商標)59 (Sigma Aldrich, Missouri, USA))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tweens(登録商標)60 (Sigma Aldrich, Missouri, USA))またはポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル(例えば、Triton(登録商標)X-100 (Sigma Aldrich, Missouri, USA))である。
【0080】
事実、本出願人は、本発明の方法に従って乳液を製造するために限定された量(例えば、10重量%未満)のPEG修飾型リン脂質(例えば、DSPE-PEGまたはDPPE-PEG)をフィルム形成リン脂質(例えば、DPPSまたはDAPC/DPPSの50:50混合物)と共に含有する混合物を使用することにより、フィルム形成リン脂質のみを含有する乳液から得られた微小気泡のサイズ分布と比較して、最終産物のサイズ分布の実質的なブロード化が決定付けられ得ることを観察した。他方、まず、フィルム形成リン脂質のみを含有する乳液を調製し、次いでPEG修飾リン脂質の水性懸濁液を得られた乳液に続けて添加すると(例えば、約60℃の温度で1時間の攪拌下で)、最終産物のサイズ分布に実質的に影響を与えることなく、かなり大量のPEG修飾型リン脂質(典型的には、30重量%より多い)が安定化殻に組み込まれうることが観察された。
【0081】
好ましい態様に従うと、凍結乾燥工程前に乳液を制御した追加の熱処理に供する。乳液のさらなる加熱は、シールした容器内で行われることが好ましい。加熱処理は、約15分〜約90分で、約60℃〜約125℃、好ましくは約80℃〜約120℃で変動してもよい。通常、温度が高ければ高いほど、熱処理の時間は短くなる。加熱の間、場合により乳液を攪拌し続けていてもよい。
【0082】
本出願人により観察されたように、この追加の熱処理によりリン脂質の部分的分解が生じるが(例えば、乳液を約100℃〜120℃で約30分加熱した場合、最終製品は約5-20%(w/w)のリゾ脂質含量を有する)、それでもなお、最初の乳化工程の作業条件(例えば、有機溶媒のタイプ、乳化技術、任意の洗浄工程等)と無関係に、最終懸濁液中の微小気泡のサイズ分布を実質的に狭くし、その総数を増加させるために非常に有益である。
【0083】
次いで、熱処理した乳液を、通常、さらなる洗浄工程の必要なく、凍結乾燥に直接かけることができる。
【0084】
工程b)による乳液の凍結乾燥は、それ自体は一般的に公知の方法および装置により、最初に乳液を凍結させ、その後、凍結乳液を凍結乾燥することにより行うことができる。乾燥した凍結乾燥製品は、通常、投与前にキャリア液体の添加により再構築することができるので、注射用形態に再構築するための適切な量(例えば、1回投与単位)の凍結乾燥製剤を各々含有するバイアルが得られるように、販売用バイアルに乳液を凍結乾燥前に封入するのが都合がよいかもしれない。バルクではなく個々のバイアル中で乳液を凍結乾燥することにより、取り扱いに注意を要する蜂の巣状構造の凍結乾燥製品の取り扱い、および少なくとも部分的にこの構造を分解させる危険性を避ける。
【0085】
凍結乾燥に続き、所望の気体を導入することにより凍結乾燥機中で真空を解除し、造影剤の最終製品中に微小気泡を形成することができる。これにより、バイアルの上部空間に所望の気体を封入し、次いでバイアルを適当な栓でシールする。あるいは、例えば、気体が放射活性であるか、または過分極気体である場合には、バイアルを真空下に維持してシールし、より後の段階(例えば、投与の直前)で気体を加える。
【0086】
従って、このようにして得た適切な気体存在下の凍結乾燥製品は、水性キャリア液体に溶解することにより再構築して気体封入型微小気泡の懸濁液を得る前に、数ヶ月間、安定に保存することができる。
【0087】
任意の生体適合性気体、気体前駆体またはその混合物を、上記微小胞を封入するために使用することができ、この気体は選択したモダリティに従って選択する。
【0088】
この気体は、例えば、大気、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、亜酸化窒素、希ガスまたは不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴン、キセノンまたはクリプトン)、放射活性ガス(例えば、Xe133またはKr81)、過分極希ガス(例えば、過分極ヘリウム、過分極キセノンまたは過分極ネオン)、低分子量炭化水素(例えば、炭素原子数最大7)(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタンまたはイソペンタンのようなアルカン、シクロブタンまたはシクロペンタンのようなシクロアルカン、プロペン、ブテンまたはイソブテンのようなアルケンあるいはアセチレンのようなアルキン)、エーテル、ケトン、エステル、ハロゲン化気体(好ましくは、フッ素化気体)(例えば、ハロゲン化、フッ素化またはペルフルオロ化の低分子量炭化水素(例えば、炭素原子数最大7))あるいは上記の任意の混合物を含みうる。ハロゲン化炭化水素を用いる場合、その化合物中のハロゲン原子のうちの好ましくはいくつか、より好ましくは全てがフッ素原子である。
【0089】
特に超音波画像法の分野においては、フッ素化気体、特にペルフルオロ化気体が好ましい。フッ素化気体としては、フッ素化炭化水素のような少なくとも1個のフッ素原子を含む物質(1個以上の炭素原子およびフッ素を含む有機化合物)、六フッ化硫黄、ペルフルオロアセトンのようなフッ素化(好ましくはペルフルオロ化)ケトンおよびペルフルオロジエチルエーテルのようなフッ素化(好ましくはペルフルオロ化)エーテルが挙げられる。好ましい化合物は、SF6またはペルフルオロカーボン(ペルフルオロ化炭化水素)(すなわち、水素原子全てがフッ素原子で置き換えられている炭化水素)のようなペルフルオロ化気体であり、これらは、例えば、EP 0554 213(参照により本明細書中に組み込む)に開示されているように、特に安定な微小気泡懸濁液を形成することが知られている。
【0090】
用語、ペルフルオロカーボンは、飽和、不飽和、および環式のペルフルオロカーボンを含む。生体適合性の生理学的に許容されるペルフルオロカーボンの例は、ペルフルオロアルカン(例えば、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン(例えば、ペルフルオロ-n-ブタン、場合によりペルフルオロ-イソブタンのような他の異性体との混合物)、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサンまたはペルフルオロヘプタン)、ペルフルオロアルケン(例えば、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン(例えば、ペルフルオロブタ-2-エン)またはペルフルオロブタジエン)、ペルフルオロアルキン(例えば、ペルフルオロブタ-2-イン)ならびにペルフルオロシクロアルカン(例えば、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサンおよびペルフルオロシクロヘプタン)である。好ましい飽和ペルフルオロカーボンは、式CnFn+2(式中、nは1〜12、好ましくは2〜10、最も好ましくは3〜8そしてさらに好ましくは3〜6である)を有する。適当なペルフルオロカーボンとしては、例えば、CF4、C2F6、C3F8、C4F8、C4F10、C5F12、C6F12、C6F14、C7F14、C7F16、C8F18およびC9F20が挙げられる。
【0091】
特に好ましい気体は、SF6またはCF4、C2F6、C3F8、C4F8、C4F10またはそれらの混合物から選択されるペルフルオロカーボンであり、SF6、C3F8またはC4F10が特に好ましい。
【0092】
また、上記の任意の気体の混合物を任意の比で都合よく使用することができる。例えば、この混合物は従来の気体(例えば、窒素、大気または二酸化炭素)および安定な微小気泡懸濁液を形成する気体(例えば、上記の六フッ化硫黄またはペルフルオロカーボン)を含む。適切な気体混合物の例は、例えば、WO 94/09829(参照により本明細書中に組み込む)に見出すことができる。以下の組合せが特に好ましい:気体(A)および(B)の混合物であって、気体(B)は、好ましくはSF6、CF4、C2F6、C3F6、C3F8、C4F6、C4F8、C4F10、C5F10、C5F12またはそれらの混合物から選択されるフッ素化ガスであり、(A)は大気、酸素、窒素、二酸化炭素またはそれらの混合物から選択される。気体(B)の量は、全混合物において約0.5%〜約95%(v/v)、好ましくは約5%〜80%であり得る。
【0093】
いくつかの例において、気体物質の前駆体(すなわち、インビボで気体に変換しうる物質)を含むことが望ましくあり得る。好ましくは、気体前駆体およびそれらに由来する気体は生理学的に許容できる。気体前駆体は、pH活性化型、光活性化型、温度活性化型などであり得る。例えば、特定のペルフルオロカーボンを温度活性化型気体前駆体として使用することができる。これらのペルフルオロカーボン(例えば、ペルフルオロペンタンまたはペルフルオロヘキサン)は、室温(または薬剤が製造および/または保存される温度)よりも高いが、体温よりも低い液/気相遷移温度を有するので、ヒト体内において液/気相遷移が起き、気体へと変換される。さらに、本明細書中で用いる用語「気体」は、正常なヒト体温37℃で気相の形態の混合物を含む。従って、37℃の温度で液体の化合物を限定量で他の気体化合物と混合して使用して、37℃で気相である混合物を得ることもできる。
【0094】
超音波エコー法に関しては、生体適合性気体または気体混合物は大気、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、クリプトン、キセノン、アルゴン、メタン、ハロゲン化炭化水素(ペルフルオロカーボンおよび六フッ化硫黄のようなフッ素化ガスを含む)またはそれらの混合物から選択されることが好ましい。都合のよいことに、ペルフルオロカーボン(特に、C4F10またはC3F8)またはSF6は、場合により大気または窒素と混合して使用することができる。
【0095】
MRIでの使用に関しては、微小気泡は過分極希ガス(例えば、過分極ネオン、過分極ヘリウム、過分極キセノンまたはそれらの混合物)を、場合により大気、CO、酸素、窒素、ヘリウム、キセノンまたは上記のハロゲン化炭化水素のいずれかと混合して含有することが好ましい。
【0096】
シンチグラフィーでの使用に関しては、本発明の微小気泡は放射活性気体(例えば、Xe133またはKr81)またはそれらの混合物を、場合により大気、CO、酸素、窒素、ヘリウム、クリプトンまたは上記のハロゲン化炭化水素のいずれかと混合して含有することが好ましい。
【0097】
次いで、気体と接触した凍結乾燥組成物は、適当な滅菌注射用水および生理学的に許容可能なキャリア液体(例えば、注射用滅菌パイロジェンフリー水、生理食塩水のような水溶液 (都合よく平衡化することができ、その結果として注射用最終製品は低張性ではないもの)、あるいは、塩のような1種以上の張力調節物質(例えば、生理学的に受容できる対イオンを有する血漿カチオンの塩)または糖、糖アルコール、グリコールおよび他の非イオン性ポリオール物質(例えば、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなど)の水溶液)の添加により、例えば、穏やかに手で振盪させることにより行うような、最小限の攪拌のみにより、非常に簡単に再構成することができる。
【0098】
本出願人が見出したように、そのように得られた再構築した微小気泡は、通常、乳液の微小液滴について測定した個数平均径よりもわずかに小さい平均直径を有する。通常、微小気泡の個数平均径は、乳液の微小液滴の個数平均径の約60%〜約90%である。ほとんどの場合、微小液滴の個数平均径の約70〜75%の平均直径の微小気泡が観察されている。
【0099】
乾燥製品がバイアル中に含まれている場合、キャリア液体を(場合により予め封入したシリンジを用いて)注入することができる隔壁でシールされているか、あるいは乾燥製品およびキャリア液体が二重チャンバシリンジのような二重チャンバデバイス中に共に提供されていてもよい。再構成の後、製品は都合のよく混合または穏やかに振盪することができる。しかしながら、上記のように、本発明の安定化造影剤では、気体微小気泡のサイズは、実質的に再構成した乾燥製品に与えられた攪拌エネルギーの量と実質的に無関係である。従って、一定の微小気泡サイズを有する再現性のある製品を得るために、穏やかな手による振盪のみが必要とされうる。
【0100】
水または水溶液中での再構成の際に得られる微小気泡懸濁液は少なくとも12時間安定であるので、注射前に何時乾燥製品を再構築するかという点についてかなり融通がきく。
【0101】
過分極気体(これは特別な保存条件を必要とすることが知られている)を含有しない限り、凍結乾燥型残渣は環境の温度制御を必要とせずに保存および輸送することができ、特に、特別な保存設備を有する必要なく、病院および医師に即時使用できる(ready-to-use)投与可能な懸濁液の現場製剤化(on site formulation)を供給することができる。
【0102】
このような場合、2成分キットの形態で供給できることが好ましい。
この2成分キットは、2つに分かれた容器または二重チャンバ容器を含みうる。前者の場合、容器は従来的な隔壁でシールされているバイアルであることが好ましく、この場合、工程b)の凍結乾燥型残渣を含むバイアルは、場合により予め封入しているシリンジでキャリア液体を注入できる隔壁でシールされている。次いで、このような場合、第2の成分の容器として用いられているシリンジは、次いで造影剤を注射するためにも使用される。後者の場合、二重チャンバ容器は二重チャンバシリンジであることが好ましく、一旦凍結乾燥物を再構成し、次いで適切に混合または穏やかに攪拌した後、容器は造影剤を注射するために直接使用することができる。いずれの場合も、十分な気泡形成エネルギーを容器内の内容物に導く方法、または適用を可能とする方法が設けられている。しかし、上記のような本発明の安定型造影剤の場合、気体微小気泡のサイズは再構築した乾燥製品に適用される攪拌エネルギーの量と実質的に無関係である。従って、通常、一定の微小気泡サイズを有する再現性のある生成物を得るために穏やかな手での振盪のみが必要とされる。
【0103】
乾燥粉末を水溶液と滅菌様式で合わせることができる他の2チャンバー再構成系もまた本発明の範囲内にあることは、当業者ならば理解できる。このような系の場合、製品の貯蔵期間を延長するために水相を水不溶性気体と周囲環境との間に配置することができるならば、特に有利である。造影剤の形成に必須の物質(例えば、再構成の間にリン脂質に連結される標的化リガンド)が容器内に存在しない場合、(好ましくは、キットの他の成分と組合せる用意を簡単にするように適合されている形態または容器で)キットの他の成分と共にパッケージングすることができる。
【0104】
特別な容器、バイアルまたは連結システムは必要ない。本発明は従来的な容器、バイアルおよびアダプターを使用することができる。必要なものは栓と容器の間の良好なシールのみである。従って、シールの品質のみが主に念頭におくべき問題になる。シールの完全性の劣化により、望ましくない物質のバイアル内への進入が可能となる。滅菌性を保証することに加えて、周囲圧または減圧下で栓をした製品にとって減圧保持は安全性および正確な再構成を確実にするために必須である。栓に関しては、1化合物であってもよいし、ポリ(イソブチレン)またはブチルゴムのようなエラストマーベースの多成分処方であってもよい。
【0105】
本発明の方法により入手可能な造影剤は、種々の画像診断技術で使用することができる(特に、超音波および磁気共鳴を含む)。可能な他の画像診断適用としては、シンチグラフィ、光画像化、およびX線位相差画像法を含むX線画像化が挙げられる。
【0106】
例えば、超音波画像診断およびMR画像化における感受性の高い造影剤および過分極気体気泡の使用は、本発明の好ましい特性を構成する。種々の画像化技術は、基本および高調波Bモード画像化、パルスまたは位相反転画像化および基本および高調波ドップラー画像化等を含む超音波適用に使用することができる。要すれば、3次元画像化技術を使用できる。
【0107】
ウサギ、イヌおよびブタでのインビボ超音波試験によると、本発明の造影剤は、0.001ml/体重1kgもの低用量の濃度での静脈注射後、心筋からの後方散乱シグナル強度の15〜25dBの増加を生じ得ることが示された。カラードップラーまたはパワーパルス反転のようなより感受の強い技術を使用して、さらに低用量でもシグナルを観察することができる。これらの低用量において、心臓チャンバのような血液が封入されているコンパートメントにおける減衰が心筋血管の目的領域の可視化を十分可能にするほど低いことが見出された。また、試験により、このように静脈内に注射された造影剤は全血液プールを介して分配されることにより血管組織全てのエコー発生を高め、再度循環されることが示された。これらはまた、通常のドップラーシグナル増強補助として有用であることが示され、そしてさらに超音波計算トモグラフィー、および生理的誘発型(physiologically triggered)または完結型画像法に有用でありうる。
【0108】
心エコー検査のような超音波適用に関しては、肺系の自由な通過を可能にし、そして約0.1-15MHzの好ましい画像化周波数での共鳴を達成するために平均サイズ0.1〜10μm(例えば、0.5〜7μm)の微小気泡を通常使用する。上記のように、本発明の造影剤は微小気泡分布に関して心エコー検査に好ましい範囲内で非常に狭いサイズの微小気泡分布で産生することができるので、エコー発生およびインビボでの安全性を非常に高め、造影剤の具体的な利点を血圧測定、血流トレーシングおよび超音波トモグラフィーのような適用に提供する。
【0109】
超音波適用においては、本発明の造影剤は、例えば、乳液の洗浄工程が無い場合には注射されるリン脂質の量が0.1-200μg/体重1kg、代表的には10-200μg/体重1kgの範囲であり、そして凍結乾燥前に乳液が洗浄されている場合には、0.1-30μg/kgの範囲になるような用量で投与することができる。このような低レベルでのリン脂質の使用は毒性副作用の可能性を最小限にするという点で実質的な利点であることが理解される。さらに、有効用量中に存在するリン脂質の量が低レベルであることにより、投与量の増加を可能とし、副作用を伴わずに観察時間の延長することができる。
【0110】
本発明の好ましい態様によると、本発明の方法により、非常に狭いサイズ分布を示す直径の小さい気体封入型微小気泡を得ることができる。従って、混合物の成分および特に水相−有機相混合物の乳化の間に適用される攪拌エネルギー量を適切に選択することにより、所望の個数平均径およびサイズ分布を有する気体封入型微小気泡を得ることができる。
【0111】
特に、本発明の方法の活用により、比較的小さい平均直径および特に有用な、狭くかつ制御されているサイズ分布を有することを特徴とするリン脂質安定化小型サイズ気体微小気泡を含む造影剤を得ることができる。
【0112】
当業者に公知のように、マイクロ/ナノ粒子の直径およびそれらの個々のサイズ分布は多数のパラメーターにより特徴付けることができ、最も頻繁に使用されるのは個数平均径(DN)、個数メジアン径(DN50)、体積平均径(DV)および体積メジアン径(DV50)である。個数直径は粒子の個数平均寸法の指標を提供し、体積径は粒子の全体積が全集団内においてどのように分布しているかについての情報を提供する。体積の大きい粒子が体積が小さい粒子集団にほとんど存在しない場合、対応するDV値は高値へシフトするので、粒子集団分布の評価にDV50値を使用する方が都合が良いこともしばしばある。DV50は、全粒子内部総体積の半分がDV50よりも小さい直径を有する粒子であることを示す計算値である。これにより、サイズ分布の評価において偶然形成された体積の大きい粒子の影響を減らすことができる。1サイズの粒子群が同一のDN、DN50、DVおよびDV50値を示すことは明らかである。他方、粒子分布のブロード化が大きくなることにより、それらの個々の比の対応する変化(例えば、DV/DN比の増加)と共にこれらの種々の値の間の差が大きくなる。例えば、大型粒子(例えば、直径8μmを超える粒子)を数%含有するけれども、主に小さい粒子を有する粒子集団(例えば、約2μmの直径を有する粒子)は、DN値と比較してより大きいDVまたはDV50を示し、対応してDV/DNまたはDV50/DNの比がより大きくなる。
【0113】
従って、本発明の方法は、1.70μmよりも小さい個数平均径(DN)およびDV50/DN比が約2.30以下、好ましくは2.10未満になるような体積メジアン径(DV50)を有する微小気泡を製造するために特に適していることが見出された。好ましくは、DN値は1.60μm以下であり、より好ましくは1.50μm以下であり、さらにより好ましくは1.30μm以下である。DNよりも小さい値(例えば、約1μm以下)またはさらに小さい値(例えば、0.85μmから0.80μmまで)を有する微小気泡は、本発明の方法を用いて簡単に入手することができる。好ましくは、DV50/DN比は約1.80以下、より好ましくは約1.60以下、さらにより好ましくは約1.50以下である。より小さいDV50/DN比(例えば、1.20、さらにより小さい1.05など)を有する微小気泡を簡単に入手することができる。
【0114】
さらに、本発明の方法により得られる小型サイズの分布が狭い微小気泡の懸濁液では、3μmより大きい直径を有する微小気泡の量(粒子総数より大きい粒子の割合として示す)、特に約1.5μm未満のDNおよび約2.00未満のDV50/DN比を有する微小気泡は、典型的には懸濁液中の微小気泡の総数に対して約3%未満であり、好ましくは約2%未満であり、より好ましくは約1%未満である。再構成した懸濁液中の微小気泡濃度は、通常、少なくとも1×108粒子/ミリリットルであり、少なくとも1×109粒子/ミリリットルであることが好ましい。
【0115】
上記値のDV50、DNおよび微小気泡の個数は30μm開口部を備え、測定範囲0.7〜20μmのCoulter Counter Mark II機器を用いて行った測定による。
【0116】
この特定のカテゴリーの造影剤は超音波画像化、特に以下に説明する微小気泡非線形散乱に基づく画像化技術で特に価値がある。
【0117】
最近の超音波造影法では、非線形散乱特性の超音波造影剤を利用する。文献によると(例えば、Eatockら、Journal of the Acoustical Society of America, vol. 77 (5), ppl692- 1701,1985)、非線形散乱は共鳴サイズが小さいかまたは近似している微小気泡に対してのみ顕著であることが公知である。特に、共鳴サイズの半分の直径を有する微小気泡を都合よく使用することができる。「共鳴サイズの半分」とは、透過超音波の中心周波数(特殊な用途には約60MHzまでになり得る)の二倍に等しい共鳴周波数の微小気泡サイズである。微小気泡ベースの超音波造影剤を含有する物体(a volume)を画像化する場合、組織エコーに対する微小気泡エコーの検出能は、微小気泡による非線形散乱の度合いにより増強し、プローブと目的の領域との間に位置する微小気泡により生じた減衰により減少する。送信(transmit)経路に沿った減衰により、非線形気泡共鳴を生じるために利用可能な超音波エネルギーが減少する。受信(receive)経路に沿った減衰により超音波プローブに到達し得るエコー−エネルギーが消失する。広範囲のサイズの微小気泡を含む懸濁液の場合、共鳴サイズの微小気泡、および共鳴サイズより大きい微小気泡は、非線形エコーシグナルに効率の良い方法に寄与することなく、主に送信−受信(transmit-receive)減衰の原因となる。従って、非線形画像化に関しての全体的な音響応答は、狭いサイズ分布および共鳴サイズの半分に近い平均サイズを有する微小気泡の校正したセットを使用することにより非常に恩恵を受ける。好ましくは約2.30以下、より好ましくは2.10以下、さらにより好ましくは2.00以下のDV50/DN比に対応するサイズ分布を有する微小気泡調製物を使用する。用いる微小気泡の平均サイズは共鳴サイズの半分±約10%であることが好ましく、共鳴サイズの半分±約5%であることがより好ましい。
【0118】
従って、本発明のなおさらなる局面は画像診断方法に関し、この画像診断方法は、上記のサイズおよびサイズ分布を有した気体封入型微小気泡を含む造影剤をコントラスト増強量で被検体に投与することと、少なくとも被検体の一部を画像化することを含む。特に、上記画像診断は、所定の送信周波数の超音波を生成する超音波デバイスにより被検体に超音波をあて(insonating)、そこから対応する共鳴サイズの微小気泡を決定し、サイズ分布が狭く共鳴サイズの半分に近い平均サイズを有する気体封入型微小気泡を含む造影剤を投与することを含む。サイズ分布が狭く、微小気泡の平均サイズが上の定義のとおりであることが好ましい。例えば、HDI 5000超音波機(Philips製)(例えば、パルス反転モードで、L7-4プローブおよびMechanical Index 0.07の場合)を画像診断法に使用することができる。この方法では、被検体は脊椎動物であり、造影剤をその脊椎動物の血管構造または体腔内に導入する。この造影剤は、例えば、再構成のための気体および水性媒体と接触している凍結乾燥型製品を含む上記のようなキットとして提供されてもよい。
【0119】
本発明をよりよく例示するために、以下に非限定的な例を示す。
【0120】
実施例
以下の物質を以下の実施例に用いた。
リン脂質:
【表1】

【0121】
溶媒:
ペルフルオロ-n-ヘキサン(C6F14)、Fluka製
ペルフルオロメチルシクロヘキサン(CF3-シクロ-C6F11)、Fluka製
ペルフルオロ-n-ヘプタン(C7F16)、Fluka製
ペルフルオロ-n-ノナン(C9F20)、Aldrich製
ペルフルオロデカリン、Aldrich製
シクロヘキサン、Fluka製
シクロオクタン、Fluka製
n-デカン、Fluka製
n-オクタン、Fluka製
メタキシレン、Fluka製
ジイソプロピルセトン(cetone)、Fluka製
CCl4、Fluka製
【0122】
溶解保護剤:
マンノース、Fluka製
グルコース、Fluka製
ソルビトール、Fluka製
マンニトール、Fluka製
マルトース、Fluka製
デキストラン6000、Fluka製
デキストラン15000、Fluka製
デキストラン40000、Fluka製
イヌリン、Fluka製。
【0123】
微小液滴および微小気泡の特徴付け
乳液微小液滴のサイズ分布は、以下のようにして測定した:
a)乳液を洗浄工程に供した場合は、Coulterカウンター(0.7〜20μmの測定範囲で30μmの開口部を備えたCounter Mark II機器)による;室温で生理食塩水100mlに乳液10μlを希釈し、測定前に3分間平衡化させる。
b)乳液を洗浄工程に供していない場合は、レーザー光散乱粒径測定器(Malvern Mastersizer、200倍希釈、焦点距離45mm、標準提示(standard presentation))による。
【0124】
(凍結乾燥し、水相で再構成した後の)サイズ分布、体積濃度および微小気泡数は、0.7〜20μmの測定範囲で30μmの開口部を備えたCoulter Counter Mark II機器を用いて測定した。微小気泡試料50μlを室温で生理食塩水100mlに希釈し、測定前に3分間平衡化させる。
【0125】
最終調製物(微小気泡懸濁液の乳液) 中のリン脂質量は、以下の設定でのHPLC-MS分析により測定した:Agilent 1100 LCクロマトグラフ、MN CC 125/2 mm-5 C8カラム(Maherey Nagel)、Agilent MSD G1946D検出器。
【0126】
凍結乾燥
凍結乾燥の方法および機器は以下の通りである。まず、乳液を-45℃で5分間凍結させ(必要に応じて、洗浄工程がある場合にはその後に)、次いでChrist-Alpha 2-4 凍結乾燥機(freeze-drier)を用いて室温で大気圧0.2mbarでフリーズドライ(凍結乾燥)させる。
【0127】
実施例1(製造例1a-1n)
DPPS(10mg)を10%マンニトール水溶液(約10ml)に加える。この懸濁液を65℃で15分間加熱した後、室温(22℃)まで冷却する。ペルフルオロヘプタン(8% v/v)をこの水相に加え、ビーカー(直径約4cm)中で高速ホモジナイザー(Polytron T3000, プローブ直径3cm)を用いて1分間、表1に記載のスピードで乳化する。乳液微小液滴の得られた体積メジアン径(DV50)および個数平均径(DN)を表1に示す。次いで、乳液を遠心分離して(800-1200rpm、10分間、Sigma遠心分離機3Kl0)過剰なリン脂質を除去し、分離したペレット (微小液滴) を回収し、最初と同体積の10%マンニトール水溶液に再懸濁する。
【0128】
次いで、洗浄した乳液を凍結乾燥用バルーン(100ml)に回収し、上記の標準手順に従って凍結させた後に凍結乾燥させる。次いで、凍結乾燥物をペルフルオロ-n-ブタン(35%)および窒素(65%)の大気に曝した後、穏やかに手で振盪して最初の2倍体積の水に分散させる。滅菌水との再構成後に得られた微小気泡懸濁液をCoulterカウンターを用いて分析する。得られた懸濁液の微小気泡濃度は約1×10粒子/mlであった。個々の微小気泡の体積メジアン径 (DV50)、体積平均径 (DV)、個数平均径 (DN)、3μmより大きい直径の微小気泡量(微小気泡総数に対する割合)を表1に示す。同じ攪拌スピードで実施例を1回より多く行った場合は、表1に示す値は各パラメーターの計算した平均値を示す。
表1
【表2】

【0129】
実施例2(製造例2a-2j)
リン脂質がDPPS (20% w/w)およびDSPC (80% w/w)の混合物であることを唯一の差異として用いて(リン脂質の総量は変化していない)、実施例1で用いた方法と同じ方法を続ける。結果を表2にまとめる。
表2
【表3】

【0130】
実施例3(製造例3a-3p)
DPPS/DSPCの重量比を表3に示したように変更させたことを唯一の差異として、実施例2で用いた方法と同じ方法を続ける。結果を表3にまとめる。
表3
【表4】

【0131】
実施例4
DSPAおよびDPPSの混合物を異なる重量比で調製したことを唯一の差異として、実施例2と同じ方法を続ける。結果を表4にまとめる。
表4
【表5】

【0132】
実施例5(製造例5a−5i)
(リン脂質の総重量に対して)10%(w/w)のパルミチン酸と混合したDPPGおよびDSPCのリン脂質混合物(1/1、w/w、総濃度1.0mg/ml)を用いることを唯一の差異として、実施例1と同じ方法を続ける。結果を表5にまとめる。
表5
【表6】

【0133】
実施例6
DSEPCをリン脂質として使用し、ペルフルオロヘキサンを有機溶媒として用いることを唯一の差異として、実施例1と同じ方法を続ける。適用した回転速度は11000rpmである。体積、サイズ分布および3μmより大きい微小気泡の割合は以下の通りであった。
【表7】

【0134】
実施例7(製造例7a-7l)
リン脂質としてDPPS (10mg) を含む滅菌水(10ml)を70℃で15分間加熱した後、室温まで冷却する。以下の表6に詳述した有機溶媒0.8mlを、高速ホモジナイザー(Polytron T3000)を10000rpmで1分間用いて水相に乳化した。乳液を15%デキストラン15000溶液(10ml)に加え、凍結させ、凍結乾燥(0.2mbar, 24時間)させた。凍結乾燥後、空気を凍結乾燥機に導入する。滅菌水での再構成後に得られる微小気泡懸濁液をCoulterカウンターを用いて分析する。表6に、微小気泡の大きさおよびサイズ分布に関する結果をまとめる。
表6
【表8】

【0135】
実施例8
ペルフルオロヘキサンを有機溶媒として使用し、表7に示すように異なる溶解保護剤を異なる濃度で用いて、同じ方法を用いて上記実施例7を繰り返す。表7に微小気泡の大きさおよびサイズ分布に関する結果をまとめる。
表7
【表9】

【0136】
実施例9(製造例9a−9e)
混合物を10000rpmの速度で乳化して、実施例1を繰り返す。さらに、乳化前に、表8に示すような異なる量のPluronic F68 (Poloxamer 188に対応するポロキサマー)を水相に添加し、同じ実施例を繰り返す。表8は、微小気泡のサイズ分布および変換率という点での、比較実験の結果を示す。凍結乾燥マトリックスの再構成の際に形成される気体封入型微小気泡の、乳液で測定した微小液滴の数値に対する%として変換効率を示す。
表8
【表10】

*濃度は水相の体積に対して示す。
【0137】
上記結果は、リン脂質の濃度の半分に対応するポロキサマー濃度を用いた場合(すなわち、混合物中の界面活性剤の総量が約33%)に、微小気泡の変換率およびサイズ分布の両方がネガティブな影響を受けることを示す。
【0138】
実施例10(製造例10a-10d)
Pluronic F68を水相に添加する代わりに、乳化前に異なる量のコレステロール(Fluka製)(表9に説明)を有機相に加えて、実施例9を繰り返す。表9には、微小気泡のサイズ分布および(乳液の微小液滴からの)変換率という点での比較実験の結果を示す。
表9
【表11】

*水相の体積に対する濃度。
【0139】
上記の結果は、水相中のコレステロール濃度0.050%(w/w)を用いた場合、微小気泡の変換効率およびサイズ分散が非常にネガティブな影響を受けることを示す。0.025%の濃度では、許容可能な大きさおよびサイズ分布の微小気泡が得られるが、なおもかなり低い変換率を生じる。
【0140】
実施例11
DPPS(60mg)およびマンニトール(3g)を含有する滅菌水(30ml)を70℃で15分間加熱した後、室温まで冷却する。
ペルフルオロヘプタンを、高速ホモジナイザー(Polytron(登録商標)、12500rpm、1分)を用いて水相に乳化する。
【0141】
得られた乳液(これは体積メジアン径(DV50)2.3pmおよび個数平均径2.0μmを示す)を遠心分離により1回洗浄し、10%マンニトール滅菌水溶液(30ml)に再懸濁した後、3つにわける(3×10ml)。
第1の部(A)は続いての凍結乾燥工程にそのまま用いる。第2の部(B)をシリンジに入れて手作業で5μm Nuclepore(登録商標)フィルター (47mm-Polycarbonate)に通す。第3の部(C)を3μm Nuclepore(登録商標)フィルター (47mm-Polycarbonate)に同じ方法で通す。
【0142】
乳液を100mlバルーン(-45℃で5分間)中で凍結させた後、凍結乾燥させる(0.2mBar, 72時間)。
【0143】
大気圧を、C4F10および大気の混合物(35/65)を導入することにより回復させる。各凍結乾燥物を滅菌水(10ml)に分散させる。このように得られた微小気泡懸濁液を、Coulterカウンターを用いて分析し、結果を以下の表に示す。
【表12】

上記結果により示されるように、追加のろ過工程により、微小気泡の大きさをさらに減少させることができ、そして個々のサイズ分布を減少させることができる。
【0144】
実施例12
DSPC/DSTAPの混合物(7/3(w/w)、10mg)を用いて、攪拌スピード11000rpmで実施例1を繰り返した。乳液の液滴および微小気泡の特徴は以下の通りであった。
【表13】

【0145】
実施例13
速度10000rpmで混合物を乳化することにより、実施例1の製造を繰り返す(実施例13a)。DSPE-PEG2000 (分散したリン脂質の総量の約8.3%)(約0.9mg)を最初の水性懸濁液にさらに添加することにより、同じ製造方法を繰り返す(実施例13b)。遠心分離による洗浄は、2つの製造例のいずれにおいても行わない。表10に乳液および微小気泡懸濁液の両方の2個の製造例の特徴を示す。
表10
【表14】

【0146】
上記結果は、(リン脂質の総量に対して)10重量%未満のDSPE-PEG濃度を用いた場合の、微小気泡の変換効率およびサイズ分布の両方がネガティブな影響を受けることを示す。
【0147】
実施例14
実施例11の製造例を、DPPSを当量のDAPC/DPPS混合物(1:1)(w/w)で置き換えて繰り返す。
【0148】
得られた乳液を3つ(10ml)にわけ、これらは遠心分離による洗浄は行わない。
【0149】
DSPE-PEG2000の水性懸濁液およびDSPE-PEG5000の水性懸濁液を、各DSPE-PEG(25mg)を10%マンニトール溶液(5ml)に超音波処理(3mm 超音波処理プローブ、Branson 250 超音波ホモジナイザー、出力30%、5分間)で分散することによりそれぞれ調製する。
【0150】
次いで、10%マンニトール溶液のアリコート(2.5ml)を乳液の第1の部に加える(実施例14a)。
調製したDSPE-PEG2000懸濁液のアリコート(2.5ml)を乳液の第2の部に加える(実施例14b)。
調製したDSPE-PEG5000懸濁液のアリコート(2.5ml)を乳液の第3の部に加える(実施例14c)。
【0151】
混合物3個を攪拌しながら60℃で1時間加熱する。室温まで冷却した後、微小液滴のサイズを、Malvern Mastersizerにより測定する。結果を表11に示す。
【0152】
次いで、実施例11の方法に従い乳液を凍結乾燥させる。大気圧を、C4F10および大気の混合物(35/65)を導入することにより回復させる。各凍結乾燥物を滅菌水(10ml)に分散させる。このようにして得られた微小気泡懸濁液を、Coulterカウンターを用いて分析した(表11を参照のこと)。
【0153】
次いで、微小気泡懸濁液を遠心分離(180g/10分)により滅菌水で2回洗浄し、上記手順に従って再度凍結乾燥させる。乾燥組成物中のDSPE-PEGの量を、HPLC-MSにより測定する。結果を以下の表11に示す。
表11
【表15】

【0154】
上記結果より推測できるように、DSPE-PEG懸濁液を形成した乳液に続けて添加することにより、微小気泡の最終特性にネガティブな影響を与えることなく比較的大量のDSPE-PEGを安定化層の組成に組み込むことができる(安定化殻を形成するリン脂質の総重量が30%よりも高い場合)。
【0155】
同様の結果は、他のPEG修飾リン脂質(特にDSPE-PEG2000-ビオチンまたはDSPE-PEG2000-マレイミド)、およびペプチド保有リン脂質(特に、DSPE-PEG2000-マレイミド-SATA-RGD4C)を用いて得ることができる。この後者のペプチド保有リン脂質は既知の技術(RGD-4CペプチドをSATAと反応させ、SATAのチオール基を脱保護し、そして脱保護したRGD4C-SATAをDSPE-PEG2000マレイミドと反応させること)により製造することができる。「Development of EGF-conjugated liposomes for targeted delivery of boronated DNA-binding agents」Bohl Kullbergら、Bioconjugate chemistry 2002, 13, 737-743(EGFタンパク質のDSPE-PEG-マレイミド分子への組込を記載)に記載の製造方法を、都合よく使用することができる。
【0156】
実施例15
DPPS/DSPC混合物(1:1(w/w)、10mg)を10%(w/w)マンニトール水溶液(約10ml)に加える。
【0157】
混合物を70℃で15分間加熱した後、室温まで冷却する(22℃)。シクロオクタンを流速0.2mL/分でマイクロミキサー(スタンダードスリットInterdigidital micro Mixer, ニッケル銅インレー(inlay)付SS 316Ti、40μm×300μm, Institut fur Microtechnik Mainz GmbH製)の入口から水相に加え、有機溶媒総量7.4%(v/v)に関して室温で20ml/分で還流させる。有機溶媒の添加完了の際に、乳液をマイクロミキサーでさらに20分間再還流させる。
【0158】
次いで、乳液をそれぞれ2mlの5個のアリコートに分け、5個のバイアル(DIN8R)に入れる。4個のバイアルをシールし、それぞれ、表12に示すように60、80、100および120℃で30分間加熱するが、5個目は加熱しない。
【0159】
次いで、乳液を室温まで冷却し、5個のバイアルの中身を以下の手順通りに凍結乾燥にかける。各乳液1mlをDIN8Rバイアルに回収し、-5℃で凍結乾燥させる。温度を1時間で-45℃まで低下させた後、乳液を-25℃および0.2mbarで12時間、凍結乾燥させ(Telstar Lyobeta35凍結乾燥機)、30℃で0.2mbarで5時間、最終乾燥工程を行う。
【0160】
次いで、凍結乾燥製品を、ペルフルオロ-n-ブタン35%および窒素65%を含有する大気に曝した後、穏やかに手で振盪することにより最初の2倍の体積の水に分散させる。表12に微小気泡最終懸濁液の特徴の結果を示す。
【表16】

【0161】
上記の結果から、形成した乳液を熱処理に供することにより、最終微小気泡懸濁液のサイズ分布を狭くすることができると同時に、微小気泡の総数を増加させることができる。
【0162】
特に、加熱温度を100℃より上に上げることにより、乳液の洗浄工程無しで、比較的狭いサイズ分布の微小気泡を得ることもでき、ならびに懸濁液中の微小気泡の総数を増加させることもできる。
【0163】
実施例16
DPPS(10mg)およびマンニトール(1g)を含む蒸留水(10 ml)を70℃で15分間加熱し、次いで室温まで冷却する。DPPE-MPB (1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド] Na塩-Avanti Polar Lipids)を加える(4.8重量%-0.5mg)。このリン脂質を超音波浴を用いて水相に分散させる(Branson 1210-3分)。
【0164】
ペルフルオロヘプタン (0.8ml、Fluka製)を、高速ホモジナイザー(Polytron(登録商標)T3000、15000rpm、1分)を用いて水相中に乳化する(氷浴中で冷却)。
【0165】
Malvern Mastersizerを用いて測定すると、得られた乳液は2.3μmの体積メジアン径(DV50)および2.1μmの個数平均径 (DN)を示した。
【0166】
乳液を遠心分離で2回洗浄した後、10%マンニトール滅菌水溶液(9.5ml)に再懸濁する。洗浄した乳液を凍結させ(-45℃、5分間)、次いで凍結乾燥させた(0.2mBar、24時間)。
【0167】
C4F10および大気の混合物(35/65)を導入することにより大気圧に戻す。凍結乾燥物(lyophilisate)を滅菌水(20ml)中に分散させ、微小気泡を遠心分離により1回洗浄した後、EDTA含有リン酸緩衝化生理食塩水(モル濃度組成:10mMリン酸塩、2.7mM KCl、137 mM NaCl、10mM EDTA)(4ml)に再度分散させ、チオアセチル化アビジン(3.4mg)、ヒドロキシルアミン(400μl)(PBS中13.92mg、50mM, pH7.5)を加えてチオアセチル化アビジンのチオール基を脱保護した。
【0168】
懸濁液を、ディスクローター(Fisher Scientific)で2時間、転倒させて攪拌した。次いで、1N NaOH(150μl)を加えた。
【0169】
このようにして得たアビジン標識微小気泡を遠心分離(10000rpm、10分、Sigma 遠心分離機3K10)によりPBSで2回洗浄した。得られた微小気泡懸濁液を、Coulterカウンターを用いて分析すると、DV50径1.6μmおよびDN1.2μmを示した。
【0170】
標的化微小気泡組成物の有効性を、インビトロおよびインビボの両方で試験した。
【0171】
インビトロ試験:
アセチル化アビジンの微小気泡の表面への有効な結合を試験するために、フィブリン含有ウェル2セットを調製した。第1のセットには、フィブリン表面のみが存在する。第2のセットでは、フィブリンをビオチン標識した抗フィブリンペプチドで予め処理している (DX-278, WO 02/055544に開示)。
【0172】
上記の通り製造した微小気泡懸濁液をウェルに添加した(5×108微小気泡/ウェル)。(上下反転させることにより)2時間インキュベーションし、数回洗浄した後、ウェル2セットのフィブリン表面を光学顕微鏡で観察した。ビオチン化抗フィブリンペプチド無添加のウェルでは基本的には微小気泡は観察できなかったが、他方、ビオチン化抗フィブリンペプチド含有ウェルでは大量(massive coverage)の微小気泡が観察された。
【0173】
インビボ実験:
血栓は、FeCl法によりウサギ2匹の腹部大動脈に形成させる(Lockyerら、Journal of Cardiovascular Pharmacology(1999)、33巻、718-725頁)。
【0174】
エコーイメージングはHDI 5000超音波機(Philips)、パルス反転モード、L7-4プローブ、MI: 0.07で行う。
【0175】
次いで、ビオチン化抗体(活性化血小板のGPIIB/IIIAレセプターに対し特異的なCD41)をウサギ2匹に静脈注射する。
【0176】
30分後、アビジン標識微小気泡を含む微小気泡懸濁剤を最初のウサギに静脈内注射する (1×109微小気泡/ml)。注射15分後、血栓の強い白濁が懸濁液について観察される。この白濁は、注射から少なくとも1時間後においても観察可能である。
【0177】
アビジン標識した微小気泡を含まない微小気泡懸濁液を同量で2匹目のウサギに静脈内注射する。血栓の明るい白濁のみが観察される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性キャリア液体および気体と接触させると、主にリン脂質により安定化されている気体封入型微小気泡の懸濁剤に再構成される凍結乾燥マトリックスを製造する方法であって、以下:
a)i)水を含む水性媒体、ii)実質的に水と不混和性の有機溶媒、iii)50重量%以上のリン脂質を含有する両親媒性物質の乳化組成物、およびiv)溶解保護剤を含有する水相−有機相乳液を製造すること、
b)この乳化した混合物を凍結乾燥して、リン脂質を含有する凍結乾燥マトリックスを得ることを含む方法。
【請求項2】
主にリン脂質で安定化した気体封入型微小気泡の液体水性懸濁液を含有する注射用造影剤を製造する方法であって、以下:
a)i)水を含む水性媒体、ii)実質的に水と不混和性の有機溶媒、iii)50重量%以上のリン脂質を含有する両親媒性物質の乳化組成物、およびiv)溶解保護剤を含有する水相−有機相乳液を製造すること、
b)この乳液を凍結乾燥して、リン脂質を含有する凍結乾燥マトリックスを得ること、
c)この凍結乾燥マトリックスを生体適合性気体と接触させること、
d)生理学的に許容される水性キャリア液体に溶解することにより、この凍結乾燥マトリックスを再構成し、主にリン脂質で安定化している気体封入型微小気泡の懸濁液を得ることを含む方法。
【請求項3】
該工程a)の乳液の製造が以下:
a1)乳化組成物および溶解保護剤を水性媒体に分散させることにより懸濁液を製造すること、
a2)得られた懸濁液を有機溶媒と混合すること、
a3)混合物を制御した攪拌に供して乳液を得ることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
該有機溶媒が水に10g/l未満の溶解性しか有さない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
該有機溶媒が水に1.0g/l未満の溶解性しか有さない、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
該有機溶媒が水に0.2g/l未満の溶解性しか有さない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
該有機溶媒が水に0.01g/l未満の溶解性しか有さない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
該有機溶媒が水に0.001g/l未満の溶解性しか有さない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該有機溶媒が分枝または線状アルカン、アルケン、シクロアルカン、芳香族炭化水素、アルキルエーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素、過フルオロ化炭化水素またはこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該溶媒がペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-オクテン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、1-メチル-シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、1,2-ジメチルベンゼン、1,3-ジメチルベンゼン、ジブチルエーテルおよびジイソプロピルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、2-クロロ-1-(ジフルオロメトキシ)-1,1,2-トリフルオロエタン(エンフルラン)、2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン(イソフルラン)、テトラクロロ-1,1-ジフルオロエタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロノナン、ペルフルオロベンゼン、ペルフルオロデカリン、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチルペルフルオロイソブチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル、エチルペルフルオロイソブチルエーテルならびにこれらの混合物から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒の量が、水全体に対して約1容量%〜約50容量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
溶解保護薬が炭水化物、糖アルコール、ポリグリコールおよびそれらの混合物から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
溶解保護薬がグルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、ラクトース、アミロース、アミロペクチン、シクロデキストリン、デキストリン、イヌリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、エリトリトール、マンニトール、ソルビトール、ポリエチレングリコールおよびこれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶解保護薬の量が水の重量に対して約1重量%〜約25重量%である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
リン脂質がジラウロイル-ホスファチジルコリン (DLPC)、ジミリストイル-ホスファチジルコリン (DMPC)、ジパルミトイル-ホスファチジルコリン (DPPC)、ジアラキドイル-ホスファチジルコリン (DAPC)、ジステアロイル-ホスファチジルコリン (DSPC)、ジオレオイル-ホスファチジルコリン (DOPC)、1,2ジステアロイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(エチル-DSPC)、ジペンタデカノイル-ホスファチジルコリン (DPDPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (MPPC)、1-パルミトイル-2-ミリストイル-ホスファチジルコリン(PMPC), 1-パルミトイル-2-ステアロイル-ホスファチジルコリン (PSPC)、1-ステアロイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン (SPPC)、1-パルミトイル-2-オレイルホスファチジルコリン (POPC)、1-オレイル-2-パルミトイル-ホスファチジルコリン(OPPC)、ジラウロイル−ホスファチジルグリセロール(DLPG)およびそのアルカリ金属塩、ジアラキドイルホスファチジルグリセロール(DAPG)およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG) およびそのアルカリ金属塩、ジオレイル-ホスファチジルグリセロール(DOPG) およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA) およびそのアルカリ金属塩、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA) およびそのアルカリ金属塩、ジステアロイルリン酸(DSPA)、ジアラキドイルホスファチジン酸(DAPA) およびそのアルカリ金属塩、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE)、ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ポリエチレングリコール修飾ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE-PEG)、ポリエチレングリコール修飾ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE-PEG)、ポリエチレングリコール修飾ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-PEG)、ポリエチレングリコール修飾ジオレイルホスファチジル−エタノールアミン(DOPE-PEG)、ポリエチレングリコール修飾ジアラキドイルホスファチジルエタノールアミン(DAPE-PEG)、ポリエチレングリコール修飾ジリノレイルホスファチジルエタノールアミン(DLPE-PEG)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジアラキドイルホスファチジルセリン(DAPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(DPSP)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(DSSP)ならびにこれらの混合物から選択される請求項1、2または3のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
両親媒性物質の乳化組成物が全体として正味荷電を有するリン脂質または両親媒性物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
リン脂質の量が乳化混合物の総重量に対して約0.005%〜約1.0重量%である、請求項1、2、3または13に記載の方法。
【請求項18】
リン脂質の量が乳化混合物の総重量に対して約0.01%〜約1.0重量%である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
リン脂質が、標的リガンドまたは標的リガンドと反応し得る反応性保護基を含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項20】
乳液が、リゾ脂質;脂肪酸およびアルカリまたはアルカリ金属との塩;ポリマー保有脂質;スルホン酸化単糖、二糖、オリゴ糖または多糖類保有脂質;エーテルまたはエステル結合型脂肪酸を有する脂質;重合体化脂質;ジアセチルホスフェート;ジセチルホスフェート;ステアリルアミン;セラミド;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン脂肪アルコール;ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル;ポリオキシエチル化ソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールポリエチレングリコールリシノレエート;エトキシ化大豆ステロール;エトキシ化ヒマシ油;エチレンオキシド(EO) およびプロピレンオキシド(PO)ブロックコポリマー;糖酸のステロールエステル;糖の脂肪族酸とのエステル;グリセロールの(C12-C24)ジカルボン酸脂肪酸およびアルカリまたはアルカリ金属塩とのそれらの個々の塩のエステル;サポニン;長鎖(Cl2-C24)アルコール;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;ジガラクトシルジグリセリド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-ガラクトピラノシド;6-(5-コレステン-3β-イルオキシ)ヘキシル-6-アミノ-6-デオキシ-1-チオ-β-D-マンノピラノシド;12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカン酸;N-[12-(((7’-ジエチルアミノクマリン-3-イル)カルボニル)メチルアミノ)オクタデカノイル]-2-アミノパルミチン酸;N-スクシニル-ジオレイルホスファチジルエタノールアミン;1-ヘキサデシル-2-パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン;パルミトイルホモシステイン;少なくとも1個の(C10-C20)アルキル鎖を含むアルキルアンモニウム塩;(C3-C6)アルキレン架橋を介してN原子に連結されている少なくとも1個の(C10-C20)アシル鎖を含む3級または4級アンモニウム塩、ならびにこれらの混合物または組合せから選択される両親媒性物質をさらに含有する、請求項1、2、15または16または3に記載の方法。
【請求項21】
工程a)の水相−有機相乳液を凍結乾燥工程b)の前に洗浄工程にかける、請求項1または2に記載の方法。
【請求項22】
工程a)の水相−有機相乳液を凍結乾燥工程b)の前に精密ろ過にかける、請求項1または2に記載の方法。
【請求項23】
凍結乾燥工程b)の前に両親媒性化合物を含有する水性懸濁液を工程a)から得られた水相−有機相乳液に加え、さらに両親媒性化合物を含有する第2の水相−有機相乳液を得ること含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項24】
水性懸濁液の混合物および水相−有機相乳液の混合物を加熱することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
混合物を約40℃〜約80℃の温度で加熱する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
両親媒性化合物がPEG修飾型リン脂質、反応性部分保有PEG修飾型リン脂質または標的化リガンド保有PEG修飾型リン脂質である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
凍結乾燥工程b)の前に、水相−有機相乳液を制御した加熱にかけることをさらに含む、請求項1、2または23に記載の方法。
【請求項28】
約60℃〜125℃の温度で制御した加熱が行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
約80℃〜120℃の温度で制御した加熱が行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
乳液がシールしたバイアルに含まれている、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
生体適合性気体が大気;窒素;酸素;二酸化炭素;水素;亜酸化窒素;不活性ガス;低分子量炭化水素((C1-C7)アルカン、(C4-C7)シクロアルカン、(C2-C7)アルケンおよび(C2-C7)アルキンを含む);エーテル;ケトン;エステル;ハロゲン化(C1-C7)炭化水素、ケトンまたはエーテル、または上記の任意の混合物から選択される、請求項2また3に記載の方法。
【請求項32】
ハロゲン化炭化水素気体がブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタンフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタンおよびそれらの混合物から選択される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ハロゲン化炭化水素気体がペルフルオロ化炭化水素である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ペルフルオロ化炭化水素気体がペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブタ-2-イン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、およびそれらの混合物から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
主にリン脂質を含む安定化層を含有する、生体適合性気体を封入した微小気泡の注射用水性懸濁液であって、微小気泡が1.70μm未満の個数平均径(DN)およびDV50/DN比が約2.00以下になるような体積メジアン径 (DV50)を有している、注射用水性懸濁液。
【請求項36】
微小気泡が1.60μm以下、好ましくは1.50μm以下、より好ましくは1.30μm以下のDN値を有する、請求項35に記載の水性懸濁液。
【請求項37】
微小気泡が約1.80以下、好ましくは約1.60以下、より好ましくは約1.50以下のDV50/DN比を有する、請求項35に記載の水性懸濁液。
【請求項38】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の水性懸濁液を含む、画像診断法で用いるための造影剤。
【請求項39】
請求項35〜37のいずれか1項に記載の水性懸濁液を被検体にコントラスト増強量で投与すること、および少なくとも被検体の一部を画像化することを含む、画像化診断法。
【請求項40】
所定の送信周波数の超音波を生成する超音波デバイスにより被検体に超音波をあて、そこから対応する共鳴サイズの微小気泡を決定し、サイズ分布が狭く共鳴サイズの半分に近い平均サイズを有する気体封入型微小気泡を含有する造影剤で投与することを含む、請求項39に記載の方法。

【公表番号】特表2006−520754(P2006−520754A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502384(P2006−502384)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000243
【国際公開番号】WO2004/069284
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(593069934)ブラッコ インターナショナル ベスローテン フエンノートシャップ (8)
【Fターム(参考)】