説明

超音波霧化機

【課題】粘度の高い液体でも、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で噴霧することのできる超音波霧化機を提供する。
【解決手段】圧電体を有する超音波振動子12により、この超音波振動子12の超音波ホーン13の先端面13aに供給された液体を霧化する、超音波噴霧器11に取付けて用いる超音波霧化機10であって、超音波振動子12と、この超音波振動子12の前部超音波ホーン(超音波ホーン)13の先端面13aに配置されて供給された液体を保持する吸液性の緩衝体14と、緩衝体14の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板15とを含み、且つ超音波振動子12による振動方向Xと、多孔板15のメッシュ構造の孔軸方向とが一致している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波霧化機に関し、特に超音波振動子により液体を霧化する超音波噴霧器に取付けて用いる超音波霧化機に関する。
【背景技術】
【0002】
人や動物の肌に塗布して用いる化粧品や薬剤(以下「化粧品等」とする。)、或いは毛髪に塗布して使用する化粧品等を、超音波振動子を用いて噴霧状態で供給できるようにした超音波噴霧器が種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
これらの超音波振動子を用いた超音波噴霧器では、例えばエアゾールタイプの噴霧装置を用いたものと比較して、噴霧される液滴の粒径を小さくすることが可能になると共に、勢いが抑制された柔らかい霧を発生することが可能になる。
【特許文献1】特開2003−181347
【特許文献2】特開2005−288400
【非特許文献1】「超音波利用技術集成」2005年4月株式会社エヌ・ティー・エス発行第67頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、従来の超音波噴霧器は、1mPa・s以下の低い粘度の液体を噴霧させるのに適するが、1mPa・s以上の粘度の液体を噴霧しようとすると、霧化速度が極端に遅くなることが知られている(非特許文献1、本願図5参照)。特に、50〜1000mPa・s程度以上の高い粘度の場合は噴霧状態が安定しないか噴霧自体が不可能となる。また、弾性波を用いた噴霧器は前記の高粘度液体の場合には、構造上噴霧が困難であり、噴霧できたとしても目詰りを生じたりする場合があることから、このような課題を解決するために、更なる開発が望まれている。
【0005】
本発明は、粘度の高い液体でも、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で噴霧することのできる超音波霧化機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体を有する超音波振動子により、該超音波振動子の超音波ホーンの先端面に供給された液体を霧化する、超音波噴霧器に取付けて用いる超音波霧化機であって、前記超音波振動子の前記超音波ホーンの先端面に配置されて供給された液体を保持する吸液性の緩衝体と、該吸液体の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板とを含み、且つ前記超音波振動子による振動方向と、前記多孔板の前記メッシュ構造の孔軸方向とが一致している超音波霧化機を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の超音波霧化機によれば、粘度の高い液体でも、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で噴霧することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好ましい一実施形態に係る超音波霧化機10は、図1に示すように、噴霧する液体として、例えば毛髪用のパーマネント剤を噴霧する超音波噴霧器11に取付けて用いられる。すなわち、超音波噴霧器11は、内部に超音波霧化機10の超音波振動子12を備えるハウジング16、ハウジング16に着脱自在に装着される液体容器17、送風ファン18等を有しており、超音波振動子12の前部超音波ホーン(超音波ホーン)13の先端面13aに液体容器17から供給された液体を、超音波振動子12によって霧状にすると共に、送風ファン18からの風によって、例えば毛髪の所定の塗布箇所に向けて柔らかい霧として噴霧することができるようになっている。
【0009】
そして、本実施形態の超音波霧化機10は、圧電体を有する超音波振動子12により、この超音波振動子12の超音波ホーン13の先端面13aに供給された液体を霧化する、超音波噴霧器11に取付けて用いる霧化機であって、図2にも示すように、超音波振動子12と、この超音波振動子12の前部超音波ホーン(超音波ホーン)13の先端面13aに配置されて供給された液体を保持する吸液性の緩衝体14(本実施形態では不織布からなる吸液帯21の一方の端部によって構成される部分をいう。なお、吸液帯21の他方の端部は液体容器17の内部に挿入される。)と、緩衝体14の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板15とを含み、且つ超音波振動子12による振動方向Xと、多孔板15のメッシュ構造の孔軸方向とが一致している。
【0010】
ここで、本実施形態の超音波霧化機10及び該超音波霧化機10が取付けられる超音波噴霧器11について詳述すると、超音波噴霧器11は、ハウジング16の内部に超音波振動子12が設けられており、またハウジング16に対して着脱自在な液体容器17を備えている。液体容器17の蓋19には切れ目20が設けられており、前述のように、そこから不織布によって形成される帯状の吸液帯21の一端が液体容器17の内部に挿入される。また、吸液帯21の他端には小孔が開けられており、超音波振動子12の前部超音波ホーン12の先端面13aの上方に設けられた位置合わせ用凸部22に、この小孔を嵌め込むことにより、不織布による吸液帯21の上端部(前述の一方の端部)を、緩衝体14として前部超音波ホーン12の先端面13aの全面に接触させた状態で配置できるようになっている。吸液性の緩衝体14(吸液帯21)が有する機能は『液体の供給及び保持』の他、当該吸液性の緩衝体14を前記超音波ホーン13の先端面13aと前記多孔板15との間に挟むことにより、当該超音波ホーン13の先端面13aと当該多孔板15との擦れを防ぐあるいは低減することを可能にする機能も有する。
【0011】
超音波振動子12は、図3に示すように、2つの圧電体23、24を接合させてなる所謂ランジュバン型振動子25と、その後端面に接合された後部超音波ホーン26と、ランジュバン型振動子25の前端面に接合された前部超音波ホーン(超音波ホーン)13とからなる。超音波振動子12としてランジュバン型振動子25を用いたものを使用することにより、バイモルフ型振動子を使用する場合に比べて高い振動強度を得ることができる。
【0012】
圧電体23、24としては、例えば、PbZrO3 とPbTiO3 との固溶体であるPZTを主成分とする円柱状圧電体に、厚さ方向に分極処理を施したものを使用することができる。圧電体23、24には、それぞれ電極27、28が接続され、電極27、28は、ハウジング16内の回路部29(図1(b)参照)の端子と接続される。また、圧電体23、24を駆動する回路部29の電源としては、ハウジング16内に収容された乾電池30が使用される。また、電源をON/OFFするスイッチ31がハウジング16の上面に設けられている。
【0013】
後部超音波ホーン26及び前部超音波ホーン13は、振動子25の振動を増幅して効率よく前部超音波ホーン13の先端面13aに伝搬させるために設けられており、これら双方を備えることによって超音波ホーンとして作用する。これらは、圧電体23、24をボルト32により所定の締め付けトルクで挟んでいる。また前部超音波ホーン13にはフランジ33が形成されており、このフランジ33が超音波振動子取り付け部位34においてハウジング16内に固定されることにより(図1(b)参照)、超音波振動子12は、これ以外の箇所ではハウジング16に非接触となっている。
【0014】
後部超音波ホーン26及び前部超音波ホーン13を形成する素材としては、アルミニウム、チタン、ステンレス等の合金を使用でき、なかでも軽量で超音波振動を伝搬し易く、加工性がよく、低コストに製造できる点から、アルミニウム、特に、A5056材、A6063材、A7075材を使用することが好ましい。
【0015】
そして、本実施形態では、前部超音波ホーン13の先端面13aの形状は、表面平滑な面積10〜200mm2 程度の円形、矩形等とすることができ、図2に示すように、この先端面13aに不織布による帯状の吸液性の緩衝体14と、メッシュ構造を有する多孔板15とが重ねて配置されることにより、超音波霧化機10が構成される。
【0016】
ここで、前部超音波ホーン13の先端面13aを覆って配置される吸液性の緩衝体14としては、毛細管現象で液を吸収し、保持することができれば材質、形態(不織布、織布等)及び形状(帯状、シート状、ブロック状等)を問わないが、濡れ性のよいコットン又は木材パルプを原料とする帯状の不織布を使用することが、幅広い液粘度に対して当該液を吸収し、保持できる観点から好ましい。また、緩衝体14の種類、構成繊維の種類、坪量等を変えることにより、前部超音波ホーン13の先端面13aで霧化させる液滴の粒径、霧化効率、噴霧幅、噴霧距離等を制御できるので、当該超音波霧化器1の用途等に応じてこれらを調整することが好ましい。より具体的には、例えばコットン等の繊維からなる坪量20〜100g/m2 の不織布を用いることが、液を安定的に噴霧することができる観点で好ましく、特に、コットン等の繊維からなる坪量30〜50g/m2 のスパンレース不織布を用いることが好ましい。
また不織布の表面粗さの平均偏差SMDが低いと液滴の粒径が細かくなる傾向にあり、本願発明の課題を解決する為には好適となる。
繊維の種類としては前記のコットンの他、テンセル(登録商標)等の精製セルロース繊維が、不織布とした場合の表面粗さの平均偏差SMDをより低くでき、液滴の粒径も細かくすることができる観点で好ましい。
【0017】
また、不織布による帯状の吸液帯21は、液体容器17の内部に挿入されて液体に浸漬された一端から、不織布の毛細管現象によって液体を吸い上げて、前部超音波ホーン13の先端面13aを覆う緩衝体14に供給すると共に、供給された液体を先端面13aの全体を覆う当該緩衝体14に保持する。
【0018】
前部超音波ホーン13の先端面13aを覆う緩衝体14の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板15は、例えば金属メッシュ、セラミックメッシュ等からなり、図4に示すように、超音波ホーン13の先端面13aの前方に配置された一対の係止片35に、多孔板15と先端面13aとの間に緩衝体14を挟み込みようにして両側部を係止することにより、緩衝体14を超音波ホーン13の先端面13aに押え付けるようにして取付けられる。多孔板15のメッシュ構造の網目の大きさは、30〜500ケ/inch(=メッシュ数)となっていることが好ましく、50〜400ケ/inchとなっていることが更に好ましく、80〜300ケ/inchとなっていることが特に好ましく、180〜250ケ/inchとなっていることがまた特によい。上記の範囲であると、目詰まりを生じにくく、噴霧状態も良好である。特に、メッシュ構造の網目の大きさが180〜250ケ/inchとなっていることにより、液滴の粒径の小さい噴霧が可能になるという利点が得られる。
【0019】
また、多孔板15のメッシュ構造の孔径(目開き)を小さくするほど、液滴の粒径分布を狭くすることができる。
【0020】
また本願発明者は、超音波霧化機10を、前記超音波振動子12の超音波ホーン13の先端面13aに配置されて供給された液体を保持する吸液性の緩衝体14と、該吸液性の緩衝体14の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板15とを備えるものとし、且つ前述の超音波振動子12による振動方向Xと、多孔板15のメッシュ構造の孔軸方向とを一致させることで、超音波振動子12によって液体が霧化されて生じた液滴の粒径と、多孔板15のメッシュ構造の孔径との比(粒径)/(孔径)が1未満にできることを見出した。すなわち、多孔板15のメッシュ構造の孔径よりも超音波振動子12によって液体が霧化されて生じた液滴の粒径の方が小さくできることを見出した。霧化されて生じた液滴の粒径の方が小さいことで、固化しやすく多孔板15に目詰まりしやすい液体(例えば、ポリエチレングリコール等のポリマーが配合された整髪剤等)も、目詰まりすることなく、容易に良好な噴霧状態を維持し続けることができる、といった本願発明の特徴的な効果を得ることができる。
超音波振動子12によって液体が霧化されて生じた液滴の粒径と、多孔板15のメッシュ構造の孔径との比(粒径)/(孔径)は、液体の粘度、超音波振動子12の周波数、振幅、多孔板15の材質等を適宜変更することによって調整することができる。
ここで、メッシュ構造の孔径(目開き量)とは、メッシュ構造を構成している線と線の間の空間の大きさをいい、下式で定義することができる。
孔径(目開き量)=25.4mm÷メッシュ数−線径
【0021】
本実施形態では、上述のように、超音波振動子12によって液体が霧化されて生じた液滴の粒径と、多孔板15のメッシュ構造の孔径との比(粒径)/(孔径)を1未満(本願実施例では0.07〜0.91)とすることができる。従って、1000mPa・sといった高粘度の液体であっても多孔板15での目詰まりや噴霧不良を発生すること無く、良好な噴霧状態を得ることができる。なお、比(粒径)/(孔径)が1以上の場合(多くの場合は2以下)であっても、本願霧化機によれば、時々、極端に大きな液滴が落ちたりする場合があるけれども、全体として安定して連続噴霧可能な状態を得ることができる。
【0022】
なお、本願明細書でいう粘度とは、B型粘度計(東機産業株式会社製TVB−10)を用いて、下記の条件で測定したものをいう。すなわち、液温25℃で、液粘度が10mPa・s以下の場合には、ローターLアダプターを使用して回転数30rpmで測定し、また液粘度が5000mPa・s以下の場合には、ローターM3アダプターを使用して回転数6rpmで測定した条件下の値をいう。
【0023】
さらに、本実施形態では、超音波振動子12は、振動方向Xとして、当該超音波振動子12の軸方向に沿った縦方向に、好ましくは20kHz〜80kHz程度の周波数で超音波振動を生じるものであり、前部超音波ホーン13の先端面13aを覆う緩衝体14の外側に重ねて配置される多孔板15は、そのメッシュ構造の孔軸方向が超音波振動子12の振動方向Xと一致するように設けられている。なお、メッシュ構造の孔軸方向と超音波振動子12の振動方向Xとが一致するとは、メッシュ構造の孔軸方向が超音波振動子12の振動方向Xと略一致している場合も含まれる。
ここで略一致とは、孔軸に対して例えば15度〜−15度程度の範囲をいう。かかる範囲であれば、本願発明の効果を得ることができる。
【0024】
緩衝体14の外側に重ねて配置される多孔板15のメッシュ構造の孔軸方向が超音波振動子12の振動方向Xと一致していることにより、多孔板15、緩衝体14及び超音波振動子12の間で振動が強められ、多孔板15で高いせん断力が作用し、幅広い液粘度(1〜1000mPa・s)で噴霧が可能になる(勿論、液粘度が1未満の液体であっても噴霧可能である)。
【0025】
さらにまた、本実施形態では、超音波霧化機10によって霧状に噴霧される液体は、例えば毛髪用のエタノール溶液を含むパーマネント剤であって、従来の超音波では噴霧できない、例えば5〜100mPa・s程度の、水と比べて高い粘度の液体となっていると共に、高分子が分散している液体となっている。すなわち、本実施形態の超音波霧化機10よれば、後述する作用によって、5〜1000mPa・s程度の従来の超音波では噴霧できない、水と比べて高い粘度の液体であっても、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で噴霧することが可能になる。
【0026】
上述の構成を有する本実施形態の超音波霧化機10を備える超音波噴霧器11では、液体容器17に噴霧すべき液体を入れてハウジング16に装着した状態で、スイッチ31をONにすると、超音波振動子12が駆動して、液体容器17から不織布による吸液帯21を介して前部超音波ホーン13の先端面13aに供給されると共に緩衝体14に保持されている液体が霧化されることになる。
【0027】
そして、本実施形態の超音波霧化機10によれば、粘度の高い液体でも、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で噴霧することが可能になる。すなわち、本実施形態によれば、超音波霧化機10は、超音波振動子12と、これの前部超音波ホーン(超音波ホーン)13の先端面13aに配置されて液体を保持する吸液性の緩衝体14と、緩衝体14の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板15とからなり、且つ超音波振動子12による振動方向Xと、多孔板15のメッシュ構造の孔軸方向とが一致しているので、多孔板15と吸液性の緩衝体14とランジュバン型振動子25(数10μmの振幅)の間で振動が強められることで、多孔板直下で従来にない高いせん断力が加わり、エネルギーを効果的に集中させることが可能になり、これによって、多孔板15のメッシュ構造の孔径よりも相当程度小さい粒径の液滴による噴霧を、メッシュ構造が目詰りし易くなるのを回避しながら、噴霧状態の変動を抑制しつつ安定した状態で効率良く噴霧することが可能になる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の超音波霧化機によって霧化される液体は、粘度の高い液体や高分子が分散している液体である必要は必ずしもなく、粘度の低い液体を霧化する霧化機として用いることもできる。また、本発明の超音波霧化機が取付けられる超音波噴霧器は、上記実施形態のような構造を備える超音波噴霧器に限定されることなく、その他も種々の超音波噴霧器に超音波霧化機を取付けて用いることもできる。
また、霧化される液体の粘度によっては、吸液性の緩衝体とともに小型のチューブポンプやダイアフラムポンプを併用して、液体供給量をコントロールし、定量を吸液性の緩衝体に滴下供給することも可能である。
また、送風ファン18からの風は必ずしも必要ではなく、送風ファン18を停止すれば、より柔らかい霧を噴霧することができる。
【0029】
以下、実施例及び比較例により、本発明の超音波霧化機をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
図1(a),(b)に示す上記実施形態の超音波噴霧器11と同様の構成を有する超音波噴霧器を使用し、下記の液体、吸液性の緩衝体及び多孔板を使用して、表1に示す条件で〔実施例1〕〜〔実施例33〕を実施した。
【0031】
液体:以下の5種類を使用した。
・水
・エタノール100%
・ポリマー3Wt%のエタノール溶液(ポリマーはメトキシポリエチレングリコールメタクリレートコポリマーを使用)
・ポリクオタニウム37(化学名Methacryloylethyl trimethyl ammonium chloride homopolymer、化粧品の粘度調整剤として使用される剤)0.04Wt%水溶液
・化粧下地(花王株式会社製レイシャス・ファインフィット)
【0032】
緩衝体:以下の2種類を使用した。
・繊維種類がテンセル(登録商標、坪量40g/m2、表面粗さの平均偏差SMD3.4)の不織布
・繊維種類がコットン(坪量40g/m2、表面粗さの平均偏差SMD4.3)の不織布
なお、前記SMDは、カトーテック株式会社製 自動化表面試験機(KES-FB4-AUTO-A)で測定した。
【0033】
多孔板:金属メッシュ(各寸法は表1に記載)
【0034】
また、超音波振動子として以下のものを使用した。すなわち、タムラ製作所製のTBLE1507圧電体2枚を使用してボルト締めランジュバン型振動子を製作し、周波数を50kHzになるように共振長さを調整したものを使用した。出力1W時の振動子の振動速度は0.88m/sであった。なお振動速度は小野測器製、ドップラー振動速度計LV−1300を使用し測定した。
【0035】
また、液滴の粒径測定方法は以下の通りである。すなわち、SYMPATEC社製のHELOSレーザー粒度分布計を使用し、レーザー発振部と受光部の間に向けて液体を噴霧させることにより液滴の粒径測定を行った。なお液滴が飛び出す金属メッシュ面から測定部までの距離を10cmとした。また前記レーザー粒度分布計の測定レンジを1.8〜350μmとした。
【0036】
なお、表1に記載の各噴霧状態の評価の内容は以下の通りである。
○:安定して連続で噴霧できる状態
△:全体として、安定して連続で噴霧できる状態であるが、時々、極端に大きな液滴が落ちたりする場合がある状態
【0037】
【表1−1】

【0038】
【表1−2】

【0039】
【表1−3】

【0040】
表1に示す〔実施例1〕〜〔実施例33〕の噴霧状態の評価結果によれば、いずれの実施例であっても、良好な噴霧状態を得られることが判る。
【0041】
図6は、表1に記載のデーターを使用して、下記の条件の場合の多孔板(金属メッシュ)のメッシュ数と液滴の粒径との関係を表したものである。これによると、メッシュ数200〜300の間が最も小さい粒径の液滴が得られることが判る。
液体:ポリクオタニウム370.04Wt%水溶液
緩衝体:繊維種類がテンセル(登録商標、坪量40g/m2)の不織布
【0042】
図7〜図10は、下記の条件の場合の液滴の粒径分布を表したものである。これによると、多孔板(金属メッシュ)の有無で粒径分布が大きく異なり、多孔板(金属メッシュ)の孔径(目開き量)が小さい(メッシュ数が大きい)程、粒径分布が狭く、大きさの揃った液滴が得られることが判る。
液体:水
緩衝体:繊維種類がテンセル(登録商標、坪量40g/m2)の不織布
〔図7〕:多孔板(金属メッシュ)無しの場合
平均粒径 48.3μm、標準偏差 20.8
〔図8〕:多孔板(金属メッシュ)のメッシュ数が100メッシュ(実施例1と同じ)の場合
平均粒径 31.3μm、標準偏差 9.9
〔図9〕:多孔板(金属メッシュ)のメッシュ数が200メッシュ(実施例11と同じ)の場合
平均粒径 24.7μm、標準偏差 7.4
〔図10〕:多孔板(金属メッシュ)のメッシュ数が300メッシュ(実施例16と同じ)の場合
平均粒径 23.1μm、標準偏差 5.6
【0043】
また緩衝体として、繊維種類がテンセルの不織布(坪量40g/m2、表面粗さの平均偏差SMD3.4)と繊維種類がコットンの不織布(坪量40g/m2、表面粗さの平均偏差SMD4.3)とを比較した場合に、SMDが低い不織布(繊維種類がテンセル)を使用した場合の方が、液滴の粒径が小さいことがわかった。
【0044】
実施例と同じ液体等を使用して、表2に示す条件で〔比較例1〕〜〔比較例14〕を実施した。緩衝体を使用しない場合(例えば比較例4等)には、液体をスポイトで振動子先端に滴下した。
【0045】
なお、表2に記載の各噴霧状態の評価の内容は以下の通りである。
○:安定して連続で噴霧できる状態
△:全体として、安定して連続で噴霧できる状態であるが、時々、極端に大きな液滴が落ちたりする場合がある状態
×:金属メッシュ(金属メッシュを使用しない場合には、振動子先端)から液体を噴霧することができず、液体が泡立っているような状態
【0046】
【表2−1】

【0047】
【表2−2】

【0048】
表2に示す〔比較例1〕〜〔比較例14〕の噴霧状態の評価結果によれば、緩衝体及び多孔板の両方を使用しない、いずれの比較例も、良好な噴霧状態を得られないことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る超音波霧化機が取り付けられた超音波噴霧器の、(a)は部分透視斜視図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に係る超音波霧化機を説明する要部略示側面図及びB部拡大図である。
【図3】超音波振動子の構成を説明する分解斜視図である。
【図4】超音波霧化機への緩衝体及び多孔板の取付け方法の一例を説明する略示斜視図である。
【図5】非特許文献1に記載された液体の粘度と霧化速度の関係を示すチャートである。
【図6】多孔板(金属メッシュ)のメッシュ数と液滴の粒径との関係を示すチャートである。
【図7】多孔板(金属メッシュ)無しの場合の液滴の粒径分布を示すチャートである。
【図8】多孔板のメッシュ数が100メッシュの場合の液滴の粒径分布を示すチャートである。
【図9】多孔板のメッシュ数が200メッシュの場合の液滴の粒径分布を示すチャートである。
【図10】多孔板のメッシュ数が300メッシュの場合の液滴の粒径分布を示すチャートである。
【符号の説明】
【0050】
10 超音波霧化機
11 超音波噴霧器
12 超音波振動子
13 前部超音波ホーン(超音波ホーン)
13a 前部超音波ホーン(超音波ホーン)の先端面
14 吸液性の緩衝体
15 メッシュ構造を有する多孔板
16 ハウジング
17 液体容器
18 送風ファン
19 蓋
20 切れ目
21 吸液帯
23,24 圧電体
25 所謂ランジュバン型振動子
26 後部超音波ホーン
27,28 電極
29 回路部
X 超音波振動子による振動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体を有する超音波振動子により、該超音波振動子の超音波ホーンの先端面に供給された液体を霧化する、超音波噴霧器に取付けて用いる超音波霧化機であって、
前記超音波振動子の前記超音波ホーンの先端面に配置されて供給された液体を保持する吸液性の緩衝体と、該緩衝体の外側に重ねて配置されるメッシュ構造を有する多孔板とを含み、
且つ前記超音波振動子による振動方向と、前記多孔板の前記メッシュ構造の孔軸方向とが一致している超音波霧化機。
【請求項2】
前記液体の粘度が1〜1000mPa・sである請求項1に記載の超音波霧化機。
【請求項3】
前記超音波振動子によって前記液体が霧化されて生じた液滴の粒径と、前記メッシュ構造の孔径との比(粒径)/(孔径)が1未満である請求項1又は2記載の超音波霧化機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−142737(P2010−142737A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−323115(P2008−323115)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】