超音波霧化機
【課題】複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができることができる超音波霧化機を提供する。
【解決手段】複数の液体収容部110は複数種類の液体LKを個々に収容する。収容されている複数種類の液体LKを液体吸収部材120が個々に吸収する。超音波振動子130は液体吸収部材120と当接して設けられており、液体吸収部材120を超音波振動子130が超音波振動させることで、これら複数種類の液体LKをともに霧化させる。このため、複数種類の液体LKを事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。
【解決手段】複数の液体収容部110は複数種類の液体LKを個々に収容する。収容されている複数種類の液体LKを液体吸収部材120が個々に吸収する。超音波振動子130は液体吸収部材120と当接して設けられており、液体吸収部材120を超音波振動子130が超音波振動させることで、これら複数種類の液体LKをともに霧化させる。このため、複数種類の液体LKを事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤や殺菌剤などを霧化する超音波霧化機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、香料などを噴霧する超音波噴霧装置においては、水を水槽にため、その水面に香料などを滴下して超音波により霧化している。また、容器に収容した水に水溶性の香料を事前に供給しておき、水とともに香料を霧化や蒸発させる提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−208633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように水と香料などの複数種類の液体を同時に霧化等させることで、芳香と加湿とが同時に供給されるなどのメリットがある。しかし、芳香剤や殺菌剤の中には、上述のように事前に水などと混合しておくと結晶化したり、水との混合性を改善するために活性剤を添加することで香りが変化したりするものがあることを本発明者は確認した。
【0005】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる超音波霧化機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波霧化機は、複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する。
【0007】
従って、本発明の超音波霧化機では、複数の液体収容部が複数種類の液体を個々に収容する。収容されている複数種類の液体を液体吸収部材が個々に吸収する。液体吸収部材を超音波振動子が超音波振動させて、吸収されている複数種類の液体をともに霧化させる。このため、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。
【0008】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0009】
また、本発明で云う、複数種類の液体をともに霧化させるとは、共通する空間に複数種類の液体を同時に霧化させることを意味する。複数種類の液体の霧化の開始時刻や終了時刻に差異があってもよく、共通する空間に複数種類の液体が同時に霧化されている状態であればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波霧化機では、液体吸収部材に吸収されている芳香剤や殺菌剤などの複数種類の液体を超音波振動子がともに霧化させる。このため、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。従って、複数種類の液体を互いに混合することに起因する種々の問題が発生することなく、複数種類の液体を好適に霧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態の超音波霧化機の構造を示す分解斜視図である。
【図2】超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第三実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の第四実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図6】(a)および(b)は本発明の第五実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図7】第五実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第六実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第七実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図10】(a)は本発明の第八実施形態の超音波霧化機の構造を模式的に示す側面図であり、(b)は振動板の近傍の拡大断面図である。
【図11】図10(a)の超音波霧化機の振動板の近傍の拡大図である。
【図12】(a)および(b)は、液体吸収部材の変形例を模式的に示す部分側面図である。
【図13】本発明の第一の実施例での実験結果をまとめた表である。
【図14】本発明の第三の実施例での実験結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態を図1および図2を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。以下の実施形態に関しても同様である。
【0013】
本実施の形態の超音波霧化機100は、図示するように、複数種類の液体LKを個々に収容する複数の液体収容部110と、これらの複数種類の液体LKを吸収する液体吸収部材120と、この液体吸収部材120と当接して設けられ、液体吸収部材120を超音波振動させて複数種類の液体LKをともに霧化させる超音波振動子130と、を有する。
【0014】
より具体的には、本実施の形態の超音波霧化機100では、一個の本体容器111の下部に二つの液体収容部110が並列に形成されている。本実施形態の液体収容部110は、本体容器111の後端側の上面に開口形成された二つの凹部である。二つの液体収容部110の一方には液体LKとして芳香剤が収容されている。二つの液体収容部110の他方には水が収容されている。なお、芳香剤は親水性の液体の香料を主成分として含み、水は一般的な水道水や蒸留水や精製水や純水などからなる。水には防腐目的の防腐剤、例えば、エタノールなどを含んでもよい。
【0015】
液体吸収部材120は、前後方向に延在する細長形状の不織布からなる。本実施形態の超音波霧化機100では、二種類の液体LKに対応して、二本の液体吸収部材120が用意されている。液体吸収部材120の一端(後端)は、液体収容部110に挿入されて液体LKに浸漬されている。液体吸収部材120の他端(前端)は、本体容器111の上部に載置されている。液体吸収部材120の前端の所定長さに亘る最先端部122は、本体容器111よりも前方に突出している。
【0016】
二本の液体吸収部材120は、左右方向に並列に配列されている。超音波霧化機100は二個の本体カバー112を備えている。本体カバー112は、液体吸収部材120を上方から覆う。本体カバー112と本体容器111とで、二本の液体吸収部材120を個別に挟持する。液体吸収部材120の最先端部122は、本体カバー112から露出している(図2を参照)。
【0017】
超音波振動子130は液体吸収部材120を超音波振動させる手段であり、振動源は特に限定されない。本実施形態の超音波振動子130は、振動駆動部である圧電体(図示せず)とホーン132とを含み、さらにバックホーン131を任意で備えている。液体LKが低粘度の場合など、超音波振動子130およびホーン132のみによって実用的に十分な霧化速度で液体LKが霧化される場合には、バックホーン131は必ずしも必要ではない。圧電体は、ホーン132とバックホーン131との間に挟持されている。ホーン132、圧電体およびバックホーン131は、上下方向に延在するボルト(図示せず)で互いに圧締されている。このほか、超音波振動子130は、圧電体の共振周波数の電圧を印加する電源部(図示せず)を備えている。
【0018】
バックホーン131およびホーン132は、圧電体の振動振幅を増幅させる役割を有するものである。ホーン132は、上方に向かって前後寸法が幅狭となるテーパー形状をなしている。ホーン132の上部は板状に形成されている。この板状の部分を振動板133という。言い換えると、ホーン132の上部には矩形板状の振動板133が連設されている。電圧が印加された圧電体の共振によりホーン132が上下方向に振動すると、振動板133の上端面は、その面直方向(上下方向)に振動する。振動板133の上端面に、二本の液体吸収部材120の最先端部122が並列に当接している。振動板133の共振により最先端部122が高速で振動して液体LKが霧化する。
【0019】
本実施形態では、(株)タムラ製作所製の圧電体TBL1507を使用した。ホーン132およびバックホーン131をアルミ二ウム材料の切削加工により作成し、ボルト(図示せず)でホーン132、バックホーン131、圧電体を一体化させたボルト締めランジュバン型の超音波振動子130を構成した。超音波振動子130の性能が周波数50kHz、振動振幅が10μmp−p、振動方向が液体吸収部材120に対して垂直方向(液体吸収部材120の最先端部122の面直方向、図1の上下方向)になるように上記の圧電体の特性を調整した。
【0020】
なお、二本の液体吸収部材120は同一の横幅および全長に形成されており、本体容器111から突出している最先端部122の長さも同一である。このため、液体吸収部材120と超音波振動子130との当接部分の面積は、二本の液体吸収部材120に関して同一である。
【0021】
上述のような構成において、本実施の形態の超音波霧化機100では、二つの液体収容部110が二種類の液体LKとして芳香剤と水とを個々に収容する。収容されている芳香剤と水とを二本の液体吸収部材120が個々に毛細管現象で吸収する。
【0022】
そして、二本の液体吸収部材120の最先端部122を超音波振動子130が超音波振動させ、液体吸収部材120に吸収されている芳香剤と水とをともに霧化させる。このため、芳香剤と水とを事前に混合しておくことなく同時に霧化させることができる。
【0023】
このように霧化される芳香剤と水とは、芳香剤のみ霧化させた場合や、芳香剤と水とを事前に混合させてから霧化させる場合よりも、みずみずしい芳香が均質に発生することが確認された。これは、親水性の芳香剤の小径かつ多数の粒子が、大径の水の粒子に付着した状態となるためと推測される。
【0024】
なお、本実施形態の超音波霧化機100においては、本体容器111に対して本体カバー112を着脱自在とすることにより、液体LKの補充や交換、液体吸収部材120の交換、等が可能である。ただし、本実施形態に代えて、本体容器111に本体カバー112を密閉状態に固定してもよい。液体LKの種類が互いに異なる複数種類の使い捨て型の本体容器111を超音波振動子130に対して交換自在としてもよい。
【0025】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では二本の液体吸収部材120が同一サイズに形成されていて超音波振動子130に当接している部分の面積が同一であることを例示した。
【0026】
図3は本発明の第二実施形態の超音波霧化機200の構造を示す斜視図である。本実施形態のように、一方の液体吸収部材210が幅広に形成されているとともに、他方の液体吸収部材220が幅狭に形成されていてもよい。すなわち、この超音波霧化機200においては、複数の液体吸収部材210、220の超音波振動子130に当接している部分の幅方向(配列方向)の寸法が互いに異なっている。
【0027】
このような超音波霧化機200では、二本の液体吸収部材210,220における、超音波振動子130と当接する部分の面積が互いに異なる。このため、二本の液体吸収部材210,220から霧化する液体LKの割合を相違させることができる。反対に、二種類の液体LKの揮発性が互いに異なるような場合に、霧化する割合を同等とするようなこともできる。
【0028】
また、上記第一実施形態では二本の液体吸収部材120が同一寸法に突出していて超音波振動子130に当接している部分の面積が同一であるものを例示した。しかし、図4に示す第三実施形態の超音波霧化機300のように、二本の液体吸収部材120の最先端部122の突出寸法を調節することで超音波振動子130に当接している部分の面積を変化させることもできる。すなわち、図4の超音波霧化機300においては、複数の液体吸収部材120における、超音波振動子130と当接している部分の、本体容器111からの突出方向(配列方向と直交する方向、振動板133の厚み方向)の寸法が互いに異なっている。
【0029】
この場合、図示するように、二本の液体吸収部材120の最先端部122の突出寸法を相違させることにより、液体LKごとの霧化速度を互いに相違させることができる。霧化速度は、単位時間に液体LKが霧化する質量である。また、二本の液体吸収部材120の突出寸法を同様に変化させることで(図示せず)、二種類の液体LKの揮発性が互いに異なるような場合に、二種類の液体LKが霧化される割合を同様に調節することもできる。
【0030】
さらに、図5に示す第四実施形態の超音波霧化機400のように、面積可変機構(図示せず)で超音波振動子130と複数の液体吸収部材120との少なくとも一方を無段階や複数段階に変位させて、複数の液体吸収部材120の超音波振動子130と当接する面積を変化させてもよい。
【0031】
この場合も、二本の液体吸収部材120から霧化する液体LKの割合を相違させることができる。なお、超音波振動子130には配線等が接続されるので、面積可変機構は本体容器111を左右方向にスライド移動させることが好適である。
【0032】
また、図6に示す第五実施形態の超音波霧化機500のように、選択当接機構で超音波振動子130と複数の液体吸収部材120との少なくとも一方を変位させ、複数の液体吸収部材120の一部に選択的に超音波振動子130を当接させてもよい。
【0033】
より詳細には、この超音波霧化機500では、三本の液体吸収部材120が左右方向に並列に配列されている。図7に示すように、本体容器510の下部前面には選択当接機構の一部となる二つの凸部511が形成されており、これらの凸部511が係合する四つの凹部521が選択当接機構の一部として台座520に形成されている。凸部511と凹部521とは弾発的に係合してもよい。
【0034】
本体容器510を台座520の中央に配置すると、図6(a)に示すように、三本の液体吸収部材120の全部が超音波振動子130に同様に当接する。本体容器510を台座520の右方に変位させると、図6(b)に示すように、左側の二本の液体吸収部材120のみ超音波振動子130に当接する。逆に本体容器510を台座520の左方に変位させると、右側の二本の液体吸収部材120のみ超音波振動子130に当接する(図示せず)。
【0035】
このため、霧化させる液体LKを選択的に切り替えることができる。例えば、中央の液体吸収部材120に液体LKとして水を吸収させ、左右の液体吸収部材120に液体LKとして互いに異なる芳香剤を吸収させることで、三種類の芳香を切り替えることができる。すなわち、図6(a)の状態では二つの芳香剤と水とがすべて霧化し、二つの芳香剤が混合した芳香となる。図6(b)の状態では、左側の液体吸収部材120に吸収されている一の芳香剤と水とが霧化し、当該一の芳香剤の芳香が発せられる。逆に本体容器510を台座520の左方に変位させた場合は、右側の液体吸収部材120に吸収されている他の芳香剤と水とが霧化し、当該他の芳香剤の芳香が発せられる。なお、当然ながら、上述のような超音波霧化機の液体吸収部材を四本以上としてもよい(図示せず)。
【0036】
さらに、図8に示す第六実施形態の超音波霧化機600のように、二本の液体吸収部材610,620を重ね合わせて超音波振動子130に当接させてもよい。この場合、例えば、図示するように、二本の液体吸収部材610,620のうちの少なくとも一本の先端部分を、屈曲した形状(二本ともに、その先端を屈曲させる場合には、相互に反対に屈曲した形状)に形成しておくとよい。屈曲形状に代えて湾曲形状としてもよい。このように屈曲または湾曲させた液体吸収部材の先端部分を、隣接する他の液体吸収部材の先端部分と重ね合わせるとよい。
【0037】
この超音波霧化機600では、二本の液体吸収部材610,620が交差した先端部分から二種類の液体LKが霧化するので、霧化する二種類の液体LKを良好に霧化混合することができる。なお、当然ながら、直線状の二本の液体吸収部材を、互いに交差するように配置してもよく、または三本以上の直線状の液体吸収部材を、互いに交差させて配置してもよい(ともに図示せず)。複数本の液体吸収部材が重ね合わせされた交差部を超音波加振する場合において、超音波振動子130に接する最下層の液体吸収部材(図8における液体吸収部材610)には、親水性の芳香剤を吸収させてもよく、または無香性の媒体である水を吸収させてもよい。このうち、最下層の液体吸収部材に水を吸収させ、最上層の液体吸収部材(図8における液体吸収部材620)に親水性の芳香剤を吸収させておくと、加振された水が霧化しながら最上層の液体吸収部材620を通過して芳香剤と良好に接触する。一方、最下層の液体吸収部材に親水性の芳香剤を吸収させ、最上層の液体吸収部材に水を吸収させておくと、超音波振動子130に接する最下層の液体吸収部材が良好に加振されて芳香剤が微細に霧化する。
【0038】
また、図9に示す第七実施形態の超音波霧化機700のように、一個の超音波振動子130の前後両側に、液体吸収部材710〜750が個別に装着された本体容器111を設置してもよい。さらに、図示するように、その液体吸収部材710〜750の横幅や突出寸法を互いに相違させてもよく、前後方向で相対する液体吸収部材710,740を重ね合わせてもよい。
【0039】
上記形態では異種の複数の液体を個々に吸収する複数の液体吸収部材を個別に用意することを例示した。しかし、複数種類の液体を吸収する液体吸収部材が、超音波振動子の位置で一体化されていてもよい(図示せず)。具体的には、液体吸収部材を二又や三又の形状に形成しておくとよい。液体吸収部材の二又や三又に分岐した端部を複数の液体収容部にそれぞれ浸漬して液体を吸い上げるとよい。分岐した端部で吸い上げられた複数の液体は、互いに統合されたうえで超音波振動子により加振されて霧化される。霧化されるまでに複数の液体の一部同士が混合したとしても、ただちに超音波振動子で霧化されるため、液体が結晶化したり香りが変化したりする問題は実質的に発生しない。
【0040】
図10(a)は、本発明の第八実施形態の超音波霧化機800の構造を模式的に示す側面図である。図10(b)は、図10(a)の超音波振動子130の近傍の拡大断面図である。図11は、図10(a)の超音波振動子130および液体吸収部材120の最先端部122の近傍の拡大図である。
【0041】
超音波霧化機800は、液体吸収部材120、超音波振動子130および本体容器510を備えている。本体容器510は複数のカートリッジ状の液体収容部110を着脱および交換可能に収容している。液体収容部110には個別に液体LKが貯留されている。液体吸収部材120の一端(下端)は、液体収容部110の内部に配置されて液体LKに浸漬されている。液体吸収部材120の他端(上端)にあたる最先端部122は、超音波振動子130に設けられた振動板133に当接している。液体吸収部材120の両端を除く中間部は本体カバー112で覆われている。本体カバー112の形状は特に限定されない。
【0042】
本実施形態の超音波振動子130は、圧電体136と、この圧電体136の共振周波数で極性が交互に変わる交番電圧(交流電圧を含む)を印加する印加手段(図示せず)と、この圧電体136の共振を増幅して振動面(振動板133)を振動させるホーン132と、有している。ホーン132は、振動面(振動板133)と圧電体136との間に空隙部Vを備える中空構造をなしている。
【0043】
印加手段が印加する共振周波数で圧電体136はその面内方向に共振する。詳述すると、圧電体136の表面に沿って、共振周波数で圧電体136が伸縮する。ホーン132の振動面(振動板133)は、超音波霧化機800の設置面900に対して斜めに傾斜して設けられている。振動面(振動板133)に液体吸収部材120の最先端部122が当接している。超音波振動子130の振動板133は、液体吸収部材120の最先端部122を超音波振動させて液体LKを霧化させる。
【0044】
すなわち、本実施形態の超音波振動子130において、圧電体136は板状をなし、この圧電体136の共振方向(伸縮方向)はその面内方向である。そして、圧電体136に対向して配置された振動面(振動板133)は、圧電体136の共振により、圧電体136の面直方向(圧電体136の表面に対して垂直方向)に振動する。
【0045】
圧電体136は、超音波振動子130の筐体137(図10(a)を参照)の筐体傾斜面135に沿って斜めに取り付けられている。圧電体136の共振方向(X−X方向)は、本実施形態では筐体傾斜面135の面内方向(傾斜方向)であり、図10(a)、(b)における略上下方向である。
【0046】
本実施形態のホーン132は、所定の厚さの金属板(例えば、板厚0.2mmのステンレス鋼板)を凸条に折り曲げた構造体である。凸条の平坦な頂面が本実施形態の振動板133である。ホーン132の底部は、圧電体136の表面に対して熱硬化性接着剤等の接着手段により固定されている。振動板133と圧電体136との間には空隙部Vが存在している。すなわち、本実施形態のホーン132は中空の構造体である。図10(b)に示すように、ホーン132の外形は、振動板133に向かって寸法が幅狭となるテーパー形状をなしている。ここで、ホーン132および振動板133の幅方向とは、図10各図のX−X方向をいう。
【0047】
圧電体136が共振することによりホーン132の凸条の幅が伸縮変形するため、振動板133はその面直方向(Y−Y方向)に進退変位する。すなわち、振動板133はダイアフラムの様に面直方向に往復振動する。本実施形態の超音波振動子130のように、ホーン132を中空構造とし、その底部に圧電体136を固定することで、圧電体136の振動方向(図10各図のX−X方向)に対してホーン132の振動板133の振動方向を直交方向(図10各図のY−Y方向)とすることができる。このため、薄い圧電体136によって振動板133を往復振動させることができる。
【0048】
図10(b)に示すように、本実施形態のホーン132は凸条の両側縁に沿って外側に延出するフランジ部138を備えている。フランジ部138は超音波振動子130の筐体傾斜面135に嵌め込まれている。図10(a)に示すように、液体吸収部材120は、この振動板133の上面に当接している(図10(b)では図示省略)。
【0049】
振動板133が振動すると、振動板133はその法線方向に、液体吸収部材120の最先端部122を加振する。振動板133の法線方向を図11に矢印で図示する。この法線方向は、図10各図のY−Y方向と同じ方向である。液体吸収部材120の最先端部122に含浸している液体LKは、振動板133で霧化されるとともに、振動板133の法線方向に飛散する。本実施形態の超音波霧化機800は、その筐体傾斜面135に超音波振動子130が嵌め込まれているため、例えば人の顔などの所望の方向に、霧化した芳香剤(液体LK)を効率的に飛散させることができる。
【0050】
なお本実施形態では、超音波振動子130が筐体傾斜面135に沿って斜めに固定的に設置されているものを例示したが、本発明はこれに限られない。本実施形態に代えて、超音波振動子130に軸部(図示せず)を適宜取り付け、圧電体136および振動板133を筐体傾斜面135に対して角度調整できる機構を付加してもよい。このようにすることで、超音波振動子130を筐体傾斜面135に対して角度調整できるようになるため、芳香剤(液体LK)を所望の方向に飛散させることができる。
【0051】
図11に示すように、液体吸収部材120の最先端部122は所定の厚みWを有する板状または棒状をなしている。最先端部122は、その厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部123を有している。傾斜部123は振動板133の上面に沿って配置されている。これにより、振動板133の上面と傾斜部123とは、面接触している。
【0052】
本実施形態の液体吸収部材120の一端側の部分である基端部125(図10(a)を参照)は、細長い四角柱状、言い換えると矩形の棒状をなしている。液体吸収部材120の最先端部122側は、厚み方向の両側が直線状に先細となるテーパー形状をなし、基端部125側は一定幅の矩形棒状となっている。かかるテーパー形状の先細部分が傾斜部123となる。傾斜部123の傾斜方向と、振動板133の上面とは略一致しており、両者は所定の広さに亘って面接触している。このため、振動板133の超音波振動が傾斜部123に好適に伝えられ、液体LKが効率的に霧化する。
【0053】
液体吸収部材120は、液体LKに対する毛管力をもっている。液体吸収部材120は、不織布や多孔質材料から作成することができる。具体的には、天然繊維や合成繊維の不織布を板状や棒状に成形してもよい。このほか、アクリル、ポリエステルまたはナイロン等の繊維束に樹脂材料を含浸させてからこの繊維束を引き抜いて空孔を形成した多孔樹脂材料を板状や棒状に成形してもよい。さらに、ポリアセタールのコポリマーおよびホモポリマー等のプラスチック材料を板状や棒状に押出成形して内部に微細通路を形成してもよい。
【0054】
ただし、本実施形態は上記の形状の液体吸収部材120に限定されるものではない。
【0055】
図12(a)は、液体吸収部材の第一変形例を模式的に示す部分側面図である。図12(b)は、液体吸収部材の第二変形例を模式的に示す部分側面図である。
【0056】
図12(a)に示す第一変形例の液体吸収部材820は、第八実施形態の液体吸収部材120(図11を参照)と同様に傾斜部123を備えている。この液体吸収部材820の傾斜部123は砲弾型をなしている点で第八実施形態の液体吸収部材120と相違している。本変形例の液体吸収部材820は所定の厚みWを有しており、最先端部122には、その厚み方向の両側が曲線状の先細形状となっている傾斜部123が形成されている。傾斜部123の傾斜方向と振動板133の上面とは略一致している。傾斜部123は振動板133に対して所定の押圧力で当接(圧接)している。振動板133に対する傾斜部123の当接部は、この押圧力によって所定の広さに亘って平面状となり、振動板133に対して面接触している。
【0057】
このため、第一変形例の液体吸収部材820もまた、液体LKを効率的に霧化することができるとともに、霧化した液体LKを振動板133の法線方向(図12(a)に矢印で図示)に指向させて飛散させることができる。
【0058】
第八実施形態において、液体吸収部材120、820の最先端部122が振動板133と面接触していることは任意である。すなわち、図12(b)に示す第二変形例の液体吸収部材830のように、所定の厚みWを有する棒状または板状の最先端部122のコーナー部124を振動板133に当接させてもよい。
【0059】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【0060】
例えば、液体を霧化できる性能を具備していれば、超音波振動子130の構成に関して、バックホーン131は必ずしも必要ではない。またホーン132の上部に連設された振動板133の形状については、液体吸収部材120との接触面が平面視して長方形である必要もない。本発明では、超音波振動子130に複数の液体吸収部材120(210、220等)を接触させることが重要となる。
【0061】
ここで、本発明者の実験結果を実施例として以下に順番に説明する。
[実施例1]
本実施例では図2の超音波霧化機を使用した。超音波振動子には上述のようにタムラ製作所製の圧電体TBL1507を使用した。具体的には、ホーンおよびバックホーンをアルミニウム材料の切削加工により作成し、超音波振動子が周波数50kHz、振動振幅が10μmp−p、振動方向が液体吸収部材に対して垂直方向になるように上記の圧電体の特性を調整した。
【0062】
液体吸収部材としての不織布(スパンレース)には、坪量40g/m2、幅4mmのコットンを使用した。二つの液体収容部の片方に精製水、もう片方に以下の香料を選択的に貯留した。香料には、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)、α−ヘキシルシンナミックアルデハイド(ジャスミン様)、アセト酢酸エチル(ラム様)、酢酸o-tert-ブチルシクロヘキシル(りんご様)を用いた。液体収容部には、容量が各9mLのスクリュー管を用いた。このスクリュー管のそれぞれに上記の不織布(液体吸収部材)をセットした。4m3の容積の揮散ブースの内部の床に超音波霧化機を設置して液体の霧化を行った。具体的には、上記の香料のみを霧化した場合(精製水無し:比較例)と、精製水と香料とを同時に霧化した場合(精製水有り:実施例)とで芳香の官能評価を試みた。官能評価は、三名の香料評価の専門家が行なった。
【0063】
図13に示すように、精製水有り、つまり精製水と香料とを同時に噴霧した場合は、ナチュラル感やみずみずしさを感じる官能評価結果となった。一方、精製水無しでは、ケミカル的、溶剤的な香りになった。
【0064】
香料の親油性(疎水性)を示すLogP値が小さいほど香料の香りに変化が見られた。このLogP値は、(香料の1−オクタノール)/(水の分配係数)の対数表示であり、LogP値が大きいほど親油性、小さいほど親水性を示す指標である。
【0065】
β−フェニルエチルアルコール(バラ様)のLogP値は1.57、α−ヘキシルシンナミックアルデハイド(ジャスミン様)のLogP値は4.82、アセト酢酸エチル(ラム様)のLogP値は−0.2、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル(りんご様)のLogP値は4.42である。LogP値が小さい、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)およびアセト酢酸エチル(ラム様)を香料に用いた場合は、精製水の有無により香りの変化が特に大きく感じられた。
【0066】
その理由は必ずしも明らかではないが、香料の親水性が大きいと水粒子の周りを香料が包み込むように取り囲み、逆に香料が親油性であると水と反発するため水粒子を取り囲むことができない状態で鼻に到達するので、それぞれで嗅覚への感じ方が異なったためと考えられる。
【0067】
〔実施例2〕
本実施例では図3の超音波霧化機を使用した(超音波振動子は実施例1と同様)。不織布の幅を2mmと7mmにし、香料β−フェニルエチルアルコール(バラ様)側に幅2mmの不織布を、香料cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅7mmの不織布を設置し、官能評価を実施した。官能評価は三名の香料評価の専門家が行なった。その結果、リーフィーグリーン(青葉の香り)が強い香りとなった。
【0068】
つぎに、cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅2mmの不織布を設置し、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)側に幅7mmの不織布を設置することで、ローズの甘さとグリーンノート(上記のリーフィーグリーンを含む香りであり、森林系の香りのこと)が感じられた。この結果から、同じ香料の組合せであっても、揮散量の比率をコントロールすることで、香りの質に変化をもたせることができた。
【0069】
同様に香料アップルA.2105 GW(りんご様)側に幅2mmの不織布を設置し、香料cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅7mmの不織布を設置した場合は、リーフィーグリーンが強く、若干アップル的なフルーティーノート(フルーツ系の香りのこと)の香りとなった。次に、アップルA.2105 GW(りんご様)側に幅7mmの不織布を設置し、cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅2mmの不織布を設置した場合は、少しグリーンの効いたアップルの甘さを表現することができた。すなわち、同じ香料の組合せであっても、揮散量の比率をコントロールすることで、香りの質に変化をもたせることができた。
【0070】
[実施例3]
トリクロサン(トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル)はナノ粒子状態で高い殺菌効果を発揮する抗菌・抗黴性物質である(例えば特開2009−256325号公報を参照)。本実施例では先ず、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと、50ppmまたは100ppmのいずれかのトリクロサンと、を予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPES(pH7、和光純薬工業株式会社)からなる第二の液体を用意した。第二の液体は第一の液体を中和するためのものである。第一と第二の液体を用意した理由は、第一の液体を第二の液体で中和してトリクロサンを中性領域で結晶化するためである。
【0071】
図8の超音波霧化機(超音波振動子は実施例1と同様)を用いて第一の液体と第二の液体とを霧化混合させた。ここで、液体吸収部材としての不織布(スパンレース)に40g/m2の坪量のコットンを使用し、第一と第二の液体を供給する不織布の幅をそれぞれ4mmと同じにし、第一の液体と第二の液体との霧化混合の容積比を1:1とした。具体的には、第一の液体と第二の液体とを同時に霧化して互いに混合し、この霧を捕集して再凝集させた。
【0072】
霧化混合の結果、第一の液体と第二の液体とを混合した状態でのトリクロサンの濃度は25ppmおよび50ppmとなった。より具体的には、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと50ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体と、を霧化混合した場合のトリクロサンの濃度は25ppmであった。そして、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと100ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体と、を霧化混合した場合のトリクロサンの濃度は50ppmであった。
【0073】
一般的に殺菌試験に用いられる菌であるSerratia marcescens subsp.macens NBRC 12648を、ソイビーン・カゼインダイジェスト(SCD)寒天培地(和光純薬工業社製)にて30℃で1日間培養し、0[cfu/mL](colony-forming units per milliliter)となるように生理食塩水に懸濁したものを供試菌液とした。次に、上記方法で霧化して混合された液体を試験管内に捕集し、捕集後直ちに、この捕集した液体1mLに対して10μLの供試菌液を添加することで接触試験を開始した。供試菌液を添加された液体を、1分毎の経時的に100μLずつ採取した。採取した液は直ちに900μLのレシチン・ポリソルベート80(LP)希釈液(和光純薬工業社製)を添加することでトリクロサンを不活性化し、適宜希釈してSCDLP寒天培地(和光純薬工業社製)に塗布した。その後、30℃で24時間培養した後にコロニー数を計測し、生残菌数とした。
【0074】
その結果、図14に示すように本発明の超音波霧化機で第一の液体と第二の液体とを霧化混合した液体A(0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと50ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体とを霧化混合してトリクロサンの濃度を25ppmにした液体)では2分間で約2logの生残菌数の減少が確認された。
【0075】
また、本発明の超音波霧化機で第一の液体と第二の液体とを霧化混合した液体B(0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと100ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体とを霧化混合してトリクロサンの濃度を50ppmにした液体)では2分間以内で約5logの生残菌数の減少が確認された。
【0076】
比較例として、霧化混合後に捕集した液体の代わりに、溶媒となる100%プロピレングリコールにトリクロサンを溶解した後、トリクロサンの濃度が50ppmになるように0.05M 緩衝液HEPES(pH7)を用いて希釈することにより調整した溶液1mLを用いて同様の接触試験を行った。その結果、図14に示すように、トリクロサンを溶媒に溶解して用いた場合には5分間での殺菌効果は全く認められなかった。
【0077】
上述の実験結果から、本願発明の超音波霧化機でトリクロサンが所定濃度の第一の液体と第二の液体とを、事前に混合することなく、ともに霧化して混合することにより、高い殺菌性能を発揮できる霧を提供できることが確認された。
【0078】
上記の実施形態および実施例は以下の技術的思想を包含する。
(1)複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する超音波霧化機;
(2)複数種類の前記液体を個々に吸収する複数の前記液体吸収部材があり、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積が互いに異なる上記(1)に記載の超音波霧化機;
(3)複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向の寸法が互いに異なる上記(2)に記載の超音波霧化機;
(4)複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向と直交する方向の寸法が互いに異なる上記(2)または(3)に記載の超音波霧化機;
(5)前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積を変化させる面積可変機構を、さらに有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(6)前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて複数の前記液体吸収部材の一部に選択的に前記超音波振動子を当接させる選択当接機構を、さらに有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(7)複数の前記液体吸収部材の少なくとも二つが重ね合わされて前記超音波振動子に当接している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(8)前記超音波振動子がホーンおよび圧電体を備え、前記ホーンが、当該ホーンの振動面と前記圧電体との間に空隙部を備える中空構造をなしている上記(1)から(7)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(9)前記圧電体が板状をなし、前記圧電体の共振方向が該圧電体の面内方向であって、前記圧電体に対向して配置された前記振動面が、前記共振により前記圧電体の面直方向に振動することを特徴とする上記(8)に記載の超音波霧化機;
(10)前記振動面が、前記超音波霧化機の設置面に対して斜めに傾斜して設けられているとともに、前記振動面に前記液体吸収部材が当接している上記(8)または(9)に記載の超音波霧化機;
(11)前記液体吸収部材が所定の厚みを有する板状または棒状をなすとともに、厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部を有し、前記傾斜部が前記振動面の傾斜方向に沿って配置されて前記傾斜部と前記振動面とが面接触している上記(10)に記載の超音波霧化機;
(12)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として芳香剤が収容される上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(13)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として殺菌剤が収容される上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(14)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として水が収容される上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の超音波霧化機。
【符号の説明】
【0079】
100,200,300,400,500,600,700,800:超音波霧化機、110:液体収容部、111,510:本体容器、112:本体カバー、120,210,220,610,620,710〜750,820,830:液体吸収部材、122:最先端部、123:傾斜部、124:コーナー部、125:基端部、130:超音波振動子、131:バックホーン、132:ホーン、133:振動板、135:筐体傾斜面、137:筐体、138:フランジ部、511:凸部、520:台座、521:凹部、900:設置面、LK:液体、V:空隙部
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香剤や殺菌剤などを霧化する超音波霧化機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、香料などを噴霧する超音波噴霧装置においては、水を水槽にため、その水面に香料などを滴下して超音波により霧化している。また、容器に収容した水に水溶性の香料を事前に供給しておき、水とともに香料を霧化や蒸発させる提案がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01−208633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように水と香料などの複数種類の液体を同時に霧化等させることで、芳香と加湿とが同時に供給されるなどのメリットがある。しかし、芳香剤や殺菌剤の中には、上述のように事前に水などと混合しておくと結晶化したり、水との混合性を改善するために活性剤を添加することで香りが変化したりするものがあることを本発明者は確認した。
【0005】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる超音波霧化機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の超音波霧化機は、複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する。
【0007】
従って、本発明の超音波霧化機では、複数の液体収容部が複数種類の液体を個々に収容する。収容されている複数種類の液体を液体吸収部材が個々に吸収する。液体吸収部材を超音波振動子が超音波振動させて、吸収されている複数種類の液体をともに霧化させる。このため、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。
【0008】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0009】
また、本発明で云う、複数種類の液体をともに霧化させるとは、共通する空間に複数種類の液体を同時に霧化させることを意味する。複数種類の液体の霧化の開始時刻や終了時刻に差異があってもよく、共通する空間に複数種類の液体が同時に霧化されている状態であればよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の超音波霧化機では、液体吸収部材に吸収されている芳香剤や殺菌剤などの複数種類の液体を超音波振動子がともに霧化させる。このため、複数種類の液体を事前に混合しておくことなく、ともに霧化させることができる。従って、複数種類の液体を互いに混合することに起因する種々の問題が発生することなく、複数種類の液体を好適に霧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態の超音波霧化機の構造を示す分解斜視図である。
【図2】超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第二実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第三実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図5】本発明の第四実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図6】(a)および(b)は本発明の第五実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図7】第五実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の第六実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図9】本発明の第七実施形態の超音波霧化機の構造を示す斜視図である。
【図10】(a)は本発明の第八実施形態の超音波霧化機の構造を模式的に示す側面図であり、(b)は振動板の近傍の拡大断面図である。
【図11】図10(a)の超音波霧化機の振動板の近傍の拡大図である。
【図12】(a)および(b)は、液体吸収部材の変形例を模式的に示す部分側面図である。
【図13】本発明の第一の実施例での実験結果をまとめた表である。
【図14】本発明の第三の実施例での実験結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一実施形態を図1および図2を参照して以下に説明する。なお、本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。以下の実施形態に関しても同様である。
【0013】
本実施の形態の超音波霧化機100は、図示するように、複数種類の液体LKを個々に収容する複数の液体収容部110と、これらの複数種類の液体LKを吸収する液体吸収部材120と、この液体吸収部材120と当接して設けられ、液体吸収部材120を超音波振動させて複数種類の液体LKをともに霧化させる超音波振動子130と、を有する。
【0014】
より具体的には、本実施の形態の超音波霧化機100では、一個の本体容器111の下部に二つの液体収容部110が並列に形成されている。本実施形態の液体収容部110は、本体容器111の後端側の上面に開口形成された二つの凹部である。二つの液体収容部110の一方には液体LKとして芳香剤が収容されている。二つの液体収容部110の他方には水が収容されている。なお、芳香剤は親水性の液体の香料を主成分として含み、水は一般的な水道水や蒸留水や精製水や純水などからなる。水には防腐目的の防腐剤、例えば、エタノールなどを含んでもよい。
【0015】
液体吸収部材120は、前後方向に延在する細長形状の不織布からなる。本実施形態の超音波霧化機100では、二種類の液体LKに対応して、二本の液体吸収部材120が用意されている。液体吸収部材120の一端(後端)は、液体収容部110に挿入されて液体LKに浸漬されている。液体吸収部材120の他端(前端)は、本体容器111の上部に載置されている。液体吸収部材120の前端の所定長さに亘る最先端部122は、本体容器111よりも前方に突出している。
【0016】
二本の液体吸収部材120は、左右方向に並列に配列されている。超音波霧化機100は二個の本体カバー112を備えている。本体カバー112は、液体吸収部材120を上方から覆う。本体カバー112と本体容器111とで、二本の液体吸収部材120を個別に挟持する。液体吸収部材120の最先端部122は、本体カバー112から露出している(図2を参照)。
【0017】
超音波振動子130は液体吸収部材120を超音波振動させる手段であり、振動源は特に限定されない。本実施形態の超音波振動子130は、振動駆動部である圧電体(図示せず)とホーン132とを含み、さらにバックホーン131を任意で備えている。液体LKが低粘度の場合など、超音波振動子130およびホーン132のみによって実用的に十分な霧化速度で液体LKが霧化される場合には、バックホーン131は必ずしも必要ではない。圧電体は、ホーン132とバックホーン131との間に挟持されている。ホーン132、圧電体およびバックホーン131は、上下方向に延在するボルト(図示せず)で互いに圧締されている。このほか、超音波振動子130は、圧電体の共振周波数の電圧を印加する電源部(図示せず)を備えている。
【0018】
バックホーン131およびホーン132は、圧電体の振動振幅を増幅させる役割を有するものである。ホーン132は、上方に向かって前後寸法が幅狭となるテーパー形状をなしている。ホーン132の上部は板状に形成されている。この板状の部分を振動板133という。言い換えると、ホーン132の上部には矩形板状の振動板133が連設されている。電圧が印加された圧電体の共振によりホーン132が上下方向に振動すると、振動板133の上端面は、その面直方向(上下方向)に振動する。振動板133の上端面に、二本の液体吸収部材120の最先端部122が並列に当接している。振動板133の共振により最先端部122が高速で振動して液体LKが霧化する。
【0019】
本実施形態では、(株)タムラ製作所製の圧電体TBL1507を使用した。ホーン132およびバックホーン131をアルミ二ウム材料の切削加工により作成し、ボルト(図示せず)でホーン132、バックホーン131、圧電体を一体化させたボルト締めランジュバン型の超音波振動子130を構成した。超音波振動子130の性能が周波数50kHz、振動振幅が10μmp−p、振動方向が液体吸収部材120に対して垂直方向(液体吸収部材120の最先端部122の面直方向、図1の上下方向)になるように上記の圧電体の特性を調整した。
【0020】
なお、二本の液体吸収部材120は同一の横幅および全長に形成されており、本体容器111から突出している最先端部122の長さも同一である。このため、液体吸収部材120と超音波振動子130との当接部分の面積は、二本の液体吸収部材120に関して同一である。
【0021】
上述のような構成において、本実施の形態の超音波霧化機100では、二つの液体収容部110が二種類の液体LKとして芳香剤と水とを個々に収容する。収容されている芳香剤と水とを二本の液体吸収部材120が個々に毛細管現象で吸収する。
【0022】
そして、二本の液体吸収部材120の最先端部122を超音波振動子130が超音波振動させ、液体吸収部材120に吸収されている芳香剤と水とをともに霧化させる。このため、芳香剤と水とを事前に混合しておくことなく同時に霧化させることができる。
【0023】
このように霧化される芳香剤と水とは、芳香剤のみ霧化させた場合や、芳香剤と水とを事前に混合させてから霧化させる場合よりも、みずみずしい芳香が均質に発生することが確認された。これは、親水性の芳香剤の小径かつ多数の粒子が、大径の水の粒子に付着した状態となるためと推測される。
【0024】
なお、本実施形態の超音波霧化機100においては、本体容器111に対して本体カバー112を着脱自在とすることにより、液体LKの補充や交換、液体吸収部材120の交換、等が可能である。ただし、本実施形態に代えて、本体容器111に本体カバー112を密閉状態に固定してもよい。液体LKの種類が互いに異なる複数種類の使い捨て型の本体容器111を超音波振動子130に対して交換自在としてもよい。
【0025】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では二本の液体吸収部材120が同一サイズに形成されていて超音波振動子130に当接している部分の面積が同一であることを例示した。
【0026】
図3は本発明の第二実施形態の超音波霧化機200の構造を示す斜視図である。本実施形態のように、一方の液体吸収部材210が幅広に形成されているとともに、他方の液体吸収部材220が幅狭に形成されていてもよい。すなわち、この超音波霧化機200においては、複数の液体吸収部材210、220の超音波振動子130に当接している部分の幅方向(配列方向)の寸法が互いに異なっている。
【0027】
このような超音波霧化機200では、二本の液体吸収部材210,220における、超音波振動子130と当接する部分の面積が互いに異なる。このため、二本の液体吸収部材210,220から霧化する液体LKの割合を相違させることができる。反対に、二種類の液体LKの揮発性が互いに異なるような場合に、霧化する割合を同等とするようなこともできる。
【0028】
また、上記第一実施形態では二本の液体吸収部材120が同一寸法に突出していて超音波振動子130に当接している部分の面積が同一であるものを例示した。しかし、図4に示す第三実施形態の超音波霧化機300のように、二本の液体吸収部材120の最先端部122の突出寸法を調節することで超音波振動子130に当接している部分の面積を変化させることもできる。すなわち、図4の超音波霧化機300においては、複数の液体吸収部材120における、超音波振動子130と当接している部分の、本体容器111からの突出方向(配列方向と直交する方向、振動板133の厚み方向)の寸法が互いに異なっている。
【0029】
この場合、図示するように、二本の液体吸収部材120の最先端部122の突出寸法を相違させることにより、液体LKごとの霧化速度を互いに相違させることができる。霧化速度は、単位時間に液体LKが霧化する質量である。また、二本の液体吸収部材120の突出寸法を同様に変化させることで(図示せず)、二種類の液体LKの揮発性が互いに異なるような場合に、二種類の液体LKが霧化される割合を同様に調節することもできる。
【0030】
さらに、図5に示す第四実施形態の超音波霧化機400のように、面積可変機構(図示せず)で超音波振動子130と複数の液体吸収部材120との少なくとも一方を無段階や複数段階に変位させて、複数の液体吸収部材120の超音波振動子130と当接する面積を変化させてもよい。
【0031】
この場合も、二本の液体吸収部材120から霧化する液体LKの割合を相違させることができる。なお、超音波振動子130には配線等が接続されるので、面積可変機構は本体容器111を左右方向にスライド移動させることが好適である。
【0032】
また、図6に示す第五実施形態の超音波霧化機500のように、選択当接機構で超音波振動子130と複数の液体吸収部材120との少なくとも一方を変位させ、複数の液体吸収部材120の一部に選択的に超音波振動子130を当接させてもよい。
【0033】
より詳細には、この超音波霧化機500では、三本の液体吸収部材120が左右方向に並列に配列されている。図7に示すように、本体容器510の下部前面には選択当接機構の一部となる二つの凸部511が形成されており、これらの凸部511が係合する四つの凹部521が選択当接機構の一部として台座520に形成されている。凸部511と凹部521とは弾発的に係合してもよい。
【0034】
本体容器510を台座520の中央に配置すると、図6(a)に示すように、三本の液体吸収部材120の全部が超音波振動子130に同様に当接する。本体容器510を台座520の右方に変位させると、図6(b)に示すように、左側の二本の液体吸収部材120のみ超音波振動子130に当接する。逆に本体容器510を台座520の左方に変位させると、右側の二本の液体吸収部材120のみ超音波振動子130に当接する(図示せず)。
【0035】
このため、霧化させる液体LKを選択的に切り替えることができる。例えば、中央の液体吸収部材120に液体LKとして水を吸収させ、左右の液体吸収部材120に液体LKとして互いに異なる芳香剤を吸収させることで、三種類の芳香を切り替えることができる。すなわち、図6(a)の状態では二つの芳香剤と水とがすべて霧化し、二つの芳香剤が混合した芳香となる。図6(b)の状態では、左側の液体吸収部材120に吸収されている一の芳香剤と水とが霧化し、当該一の芳香剤の芳香が発せられる。逆に本体容器510を台座520の左方に変位させた場合は、右側の液体吸収部材120に吸収されている他の芳香剤と水とが霧化し、当該他の芳香剤の芳香が発せられる。なお、当然ながら、上述のような超音波霧化機の液体吸収部材を四本以上としてもよい(図示せず)。
【0036】
さらに、図8に示す第六実施形態の超音波霧化機600のように、二本の液体吸収部材610,620を重ね合わせて超音波振動子130に当接させてもよい。この場合、例えば、図示するように、二本の液体吸収部材610,620のうちの少なくとも一本の先端部分を、屈曲した形状(二本ともに、その先端を屈曲させる場合には、相互に反対に屈曲した形状)に形成しておくとよい。屈曲形状に代えて湾曲形状としてもよい。このように屈曲または湾曲させた液体吸収部材の先端部分を、隣接する他の液体吸収部材の先端部分と重ね合わせるとよい。
【0037】
この超音波霧化機600では、二本の液体吸収部材610,620が交差した先端部分から二種類の液体LKが霧化するので、霧化する二種類の液体LKを良好に霧化混合することができる。なお、当然ながら、直線状の二本の液体吸収部材を、互いに交差するように配置してもよく、または三本以上の直線状の液体吸収部材を、互いに交差させて配置してもよい(ともに図示せず)。複数本の液体吸収部材が重ね合わせされた交差部を超音波加振する場合において、超音波振動子130に接する最下層の液体吸収部材(図8における液体吸収部材610)には、親水性の芳香剤を吸収させてもよく、または無香性の媒体である水を吸収させてもよい。このうち、最下層の液体吸収部材に水を吸収させ、最上層の液体吸収部材(図8における液体吸収部材620)に親水性の芳香剤を吸収させておくと、加振された水が霧化しながら最上層の液体吸収部材620を通過して芳香剤と良好に接触する。一方、最下層の液体吸収部材に親水性の芳香剤を吸収させ、最上層の液体吸収部材に水を吸収させておくと、超音波振動子130に接する最下層の液体吸収部材が良好に加振されて芳香剤が微細に霧化する。
【0038】
また、図9に示す第七実施形態の超音波霧化機700のように、一個の超音波振動子130の前後両側に、液体吸収部材710〜750が個別に装着された本体容器111を設置してもよい。さらに、図示するように、その液体吸収部材710〜750の横幅や突出寸法を互いに相違させてもよく、前後方向で相対する液体吸収部材710,740を重ね合わせてもよい。
【0039】
上記形態では異種の複数の液体を個々に吸収する複数の液体吸収部材を個別に用意することを例示した。しかし、複数種類の液体を吸収する液体吸収部材が、超音波振動子の位置で一体化されていてもよい(図示せず)。具体的には、液体吸収部材を二又や三又の形状に形成しておくとよい。液体吸収部材の二又や三又に分岐した端部を複数の液体収容部にそれぞれ浸漬して液体を吸い上げるとよい。分岐した端部で吸い上げられた複数の液体は、互いに統合されたうえで超音波振動子により加振されて霧化される。霧化されるまでに複数の液体の一部同士が混合したとしても、ただちに超音波振動子で霧化されるため、液体が結晶化したり香りが変化したりする問題は実質的に発生しない。
【0040】
図10(a)は、本発明の第八実施形態の超音波霧化機800の構造を模式的に示す側面図である。図10(b)は、図10(a)の超音波振動子130の近傍の拡大断面図である。図11は、図10(a)の超音波振動子130および液体吸収部材120の最先端部122の近傍の拡大図である。
【0041】
超音波霧化機800は、液体吸収部材120、超音波振動子130および本体容器510を備えている。本体容器510は複数のカートリッジ状の液体収容部110を着脱および交換可能に収容している。液体収容部110には個別に液体LKが貯留されている。液体吸収部材120の一端(下端)は、液体収容部110の内部に配置されて液体LKに浸漬されている。液体吸収部材120の他端(上端)にあたる最先端部122は、超音波振動子130に設けられた振動板133に当接している。液体吸収部材120の両端を除く中間部は本体カバー112で覆われている。本体カバー112の形状は特に限定されない。
【0042】
本実施形態の超音波振動子130は、圧電体136と、この圧電体136の共振周波数で極性が交互に変わる交番電圧(交流電圧を含む)を印加する印加手段(図示せず)と、この圧電体136の共振を増幅して振動面(振動板133)を振動させるホーン132と、有している。ホーン132は、振動面(振動板133)と圧電体136との間に空隙部Vを備える中空構造をなしている。
【0043】
印加手段が印加する共振周波数で圧電体136はその面内方向に共振する。詳述すると、圧電体136の表面に沿って、共振周波数で圧電体136が伸縮する。ホーン132の振動面(振動板133)は、超音波霧化機800の設置面900に対して斜めに傾斜して設けられている。振動面(振動板133)に液体吸収部材120の最先端部122が当接している。超音波振動子130の振動板133は、液体吸収部材120の最先端部122を超音波振動させて液体LKを霧化させる。
【0044】
すなわち、本実施形態の超音波振動子130において、圧電体136は板状をなし、この圧電体136の共振方向(伸縮方向)はその面内方向である。そして、圧電体136に対向して配置された振動面(振動板133)は、圧電体136の共振により、圧電体136の面直方向(圧電体136の表面に対して垂直方向)に振動する。
【0045】
圧電体136は、超音波振動子130の筐体137(図10(a)を参照)の筐体傾斜面135に沿って斜めに取り付けられている。圧電体136の共振方向(X−X方向)は、本実施形態では筐体傾斜面135の面内方向(傾斜方向)であり、図10(a)、(b)における略上下方向である。
【0046】
本実施形態のホーン132は、所定の厚さの金属板(例えば、板厚0.2mmのステンレス鋼板)を凸条に折り曲げた構造体である。凸条の平坦な頂面が本実施形態の振動板133である。ホーン132の底部は、圧電体136の表面に対して熱硬化性接着剤等の接着手段により固定されている。振動板133と圧電体136との間には空隙部Vが存在している。すなわち、本実施形態のホーン132は中空の構造体である。図10(b)に示すように、ホーン132の外形は、振動板133に向かって寸法が幅狭となるテーパー形状をなしている。ここで、ホーン132および振動板133の幅方向とは、図10各図のX−X方向をいう。
【0047】
圧電体136が共振することによりホーン132の凸条の幅が伸縮変形するため、振動板133はその面直方向(Y−Y方向)に進退変位する。すなわち、振動板133はダイアフラムの様に面直方向に往復振動する。本実施形態の超音波振動子130のように、ホーン132を中空構造とし、その底部に圧電体136を固定することで、圧電体136の振動方向(図10各図のX−X方向)に対してホーン132の振動板133の振動方向を直交方向(図10各図のY−Y方向)とすることができる。このため、薄い圧電体136によって振動板133を往復振動させることができる。
【0048】
図10(b)に示すように、本実施形態のホーン132は凸条の両側縁に沿って外側に延出するフランジ部138を備えている。フランジ部138は超音波振動子130の筐体傾斜面135に嵌め込まれている。図10(a)に示すように、液体吸収部材120は、この振動板133の上面に当接している(図10(b)では図示省略)。
【0049】
振動板133が振動すると、振動板133はその法線方向に、液体吸収部材120の最先端部122を加振する。振動板133の法線方向を図11に矢印で図示する。この法線方向は、図10各図のY−Y方向と同じ方向である。液体吸収部材120の最先端部122に含浸している液体LKは、振動板133で霧化されるとともに、振動板133の法線方向に飛散する。本実施形態の超音波霧化機800は、その筐体傾斜面135に超音波振動子130が嵌め込まれているため、例えば人の顔などの所望の方向に、霧化した芳香剤(液体LK)を効率的に飛散させることができる。
【0050】
なお本実施形態では、超音波振動子130が筐体傾斜面135に沿って斜めに固定的に設置されているものを例示したが、本発明はこれに限られない。本実施形態に代えて、超音波振動子130に軸部(図示せず)を適宜取り付け、圧電体136および振動板133を筐体傾斜面135に対して角度調整できる機構を付加してもよい。このようにすることで、超音波振動子130を筐体傾斜面135に対して角度調整できるようになるため、芳香剤(液体LK)を所望の方向に飛散させることができる。
【0051】
図11に示すように、液体吸収部材120の最先端部122は所定の厚みWを有する板状または棒状をなしている。最先端部122は、その厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部123を有している。傾斜部123は振動板133の上面に沿って配置されている。これにより、振動板133の上面と傾斜部123とは、面接触している。
【0052】
本実施形態の液体吸収部材120の一端側の部分である基端部125(図10(a)を参照)は、細長い四角柱状、言い換えると矩形の棒状をなしている。液体吸収部材120の最先端部122側は、厚み方向の両側が直線状に先細となるテーパー形状をなし、基端部125側は一定幅の矩形棒状となっている。かかるテーパー形状の先細部分が傾斜部123となる。傾斜部123の傾斜方向と、振動板133の上面とは略一致しており、両者は所定の広さに亘って面接触している。このため、振動板133の超音波振動が傾斜部123に好適に伝えられ、液体LKが効率的に霧化する。
【0053】
液体吸収部材120は、液体LKに対する毛管力をもっている。液体吸収部材120は、不織布や多孔質材料から作成することができる。具体的には、天然繊維や合成繊維の不織布を板状や棒状に成形してもよい。このほか、アクリル、ポリエステルまたはナイロン等の繊維束に樹脂材料を含浸させてからこの繊維束を引き抜いて空孔を形成した多孔樹脂材料を板状や棒状に成形してもよい。さらに、ポリアセタールのコポリマーおよびホモポリマー等のプラスチック材料を板状や棒状に押出成形して内部に微細通路を形成してもよい。
【0054】
ただし、本実施形態は上記の形状の液体吸収部材120に限定されるものではない。
【0055】
図12(a)は、液体吸収部材の第一変形例を模式的に示す部分側面図である。図12(b)は、液体吸収部材の第二変形例を模式的に示す部分側面図である。
【0056】
図12(a)に示す第一変形例の液体吸収部材820は、第八実施形態の液体吸収部材120(図11を参照)と同様に傾斜部123を備えている。この液体吸収部材820の傾斜部123は砲弾型をなしている点で第八実施形態の液体吸収部材120と相違している。本変形例の液体吸収部材820は所定の厚みWを有しており、最先端部122には、その厚み方向の両側が曲線状の先細形状となっている傾斜部123が形成されている。傾斜部123の傾斜方向と振動板133の上面とは略一致している。傾斜部123は振動板133に対して所定の押圧力で当接(圧接)している。振動板133に対する傾斜部123の当接部は、この押圧力によって所定の広さに亘って平面状となり、振動板133に対して面接触している。
【0057】
このため、第一変形例の液体吸収部材820もまた、液体LKを効率的に霧化することができるとともに、霧化した液体LKを振動板133の法線方向(図12(a)に矢印で図示)に指向させて飛散させることができる。
【0058】
第八実施形態において、液体吸収部材120、820の最先端部122が振動板133と面接触していることは任意である。すなわち、図12(b)に示す第二変形例の液体吸収部材830のように、所定の厚みWを有する棒状または板状の最先端部122のコーナー部124を振動板133に当接させてもよい。
【0059】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【0060】
例えば、液体を霧化できる性能を具備していれば、超音波振動子130の構成に関して、バックホーン131は必ずしも必要ではない。またホーン132の上部に連設された振動板133の形状については、液体吸収部材120との接触面が平面視して長方形である必要もない。本発明では、超音波振動子130に複数の液体吸収部材120(210、220等)を接触させることが重要となる。
【0061】
ここで、本発明者の実験結果を実施例として以下に順番に説明する。
[実施例1]
本実施例では図2の超音波霧化機を使用した。超音波振動子には上述のようにタムラ製作所製の圧電体TBL1507を使用した。具体的には、ホーンおよびバックホーンをアルミニウム材料の切削加工により作成し、超音波振動子が周波数50kHz、振動振幅が10μmp−p、振動方向が液体吸収部材に対して垂直方向になるように上記の圧電体の特性を調整した。
【0062】
液体吸収部材としての不織布(スパンレース)には、坪量40g/m2、幅4mmのコットンを使用した。二つの液体収容部の片方に精製水、もう片方に以下の香料を選択的に貯留した。香料には、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)、α−ヘキシルシンナミックアルデハイド(ジャスミン様)、アセト酢酸エチル(ラム様)、酢酸o-tert-ブチルシクロヘキシル(りんご様)を用いた。液体収容部には、容量が各9mLのスクリュー管を用いた。このスクリュー管のそれぞれに上記の不織布(液体吸収部材)をセットした。4m3の容積の揮散ブースの内部の床に超音波霧化機を設置して液体の霧化を行った。具体的には、上記の香料のみを霧化した場合(精製水無し:比較例)と、精製水と香料とを同時に霧化した場合(精製水有り:実施例)とで芳香の官能評価を試みた。官能評価は、三名の香料評価の専門家が行なった。
【0063】
図13に示すように、精製水有り、つまり精製水と香料とを同時に噴霧した場合は、ナチュラル感やみずみずしさを感じる官能評価結果となった。一方、精製水無しでは、ケミカル的、溶剤的な香りになった。
【0064】
香料の親油性(疎水性)を示すLogP値が小さいほど香料の香りに変化が見られた。このLogP値は、(香料の1−オクタノール)/(水の分配係数)の対数表示であり、LogP値が大きいほど親油性、小さいほど親水性を示す指標である。
【0065】
β−フェニルエチルアルコール(バラ様)のLogP値は1.57、α−ヘキシルシンナミックアルデハイド(ジャスミン様)のLogP値は4.82、アセト酢酸エチル(ラム様)のLogP値は−0.2、酢酸o−tert−ブチルシクロヘキシル(りんご様)のLogP値は4.42である。LogP値が小さい、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)およびアセト酢酸エチル(ラム様)を香料に用いた場合は、精製水の有無により香りの変化が特に大きく感じられた。
【0066】
その理由は必ずしも明らかではないが、香料の親水性が大きいと水粒子の周りを香料が包み込むように取り囲み、逆に香料が親油性であると水と反発するため水粒子を取り囲むことができない状態で鼻に到達するので、それぞれで嗅覚への感じ方が異なったためと考えられる。
【0067】
〔実施例2〕
本実施例では図3の超音波霧化機を使用した(超音波振動子は実施例1と同様)。不織布の幅を2mmと7mmにし、香料β−フェニルエチルアルコール(バラ様)側に幅2mmの不織布を、香料cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅7mmの不織布を設置し、官能評価を実施した。官能評価は三名の香料評価の専門家が行なった。その結果、リーフィーグリーン(青葉の香り)が強い香りとなった。
【0068】
つぎに、cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅2mmの不織布を設置し、β−フェニルエチルアルコール(バラ様)側に幅7mmの不織布を設置することで、ローズの甘さとグリーンノート(上記のリーフィーグリーンを含む香りであり、森林系の香りのこと)が感じられた。この結果から、同じ香料の組合せであっても、揮散量の比率をコントロールすることで、香りの質に変化をもたせることができた。
【0069】
同様に香料アップルA.2105 GW(りんご様)側に幅2mmの不織布を設置し、香料cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅7mmの不織布を設置した場合は、リーフィーグリーンが強く、若干アップル的なフルーティーノート(フルーツ系の香りのこと)の香りとなった。次に、アップルA.2105 GW(りんご様)側に幅7mmの不織布を設置し、cis−3−ヘキセノール(青葉様)側に幅2mmの不織布を設置した場合は、少しグリーンの効いたアップルの甘さを表現することができた。すなわち、同じ香料の組合せであっても、揮散量の比率をコントロールすることで、香りの質に変化をもたせることができた。
【0070】
[実施例3]
トリクロサン(トリクロロヒドロキシジフェニルエーテル)はナノ粒子状態で高い殺菌効果を発揮する抗菌・抗黴性物質である(例えば特開2009−256325号公報を参照)。本実施例では先ず、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと、50ppmまたは100ppmのいずれかのトリクロサンと、を予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPES(pH7、和光純薬工業株式会社)からなる第二の液体を用意した。第二の液体は第一の液体を中和するためのものである。第一と第二の液体を用意した理由は、第一の液体を第二の液体で中和してトリクロサンを中性領域で結晶化するためである。
【0071】
図8の超音波霧化機(超音波振動子は実施例1と同様)を用いて第一の液体と第二の液体とを霧化混合させた。ここで、液体吸収部材としての不織布(スパンレース)に40g/m2の坪量のコットンを使用し、第一と第二の液体を供給する不織布の幅をそれぞれ4mmと同じにし、第一の液体と第二の液体との霧化混合の容積比を1:1とした。具体的には、第一の液体と第二の液体とを同時に霧化して互いに混合し、この霧を捕集して再凝集させた。
【0072】
霧化混合の結果、第一の液体と第二の液体とを混合した状態でのトリクロサンの濃度は25ppmおよび50ppmとなった。より具体的には、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと50ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体と、を霧化混合した場合のトリクロサンの濃度は25ppmであった。そして、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと100ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と、0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体と、を霧化混合した場合のトリクロサンの濃度は50ppmであった。
【0073】
一般的に殺菌試験に用いられる菌であるSerratia marcescens subsp.macens NBRC 12648を、ソイビーン・カゼインダイジェスト(SCD)寒天培地(和光純薬工業社製)にて30℃で1日間培養し、0[cfu/mL](colony-forming units per milliliter)となるように生理食塩水に懸濁したものを供試菌液とした。次に、上記方法で霧化して混合された液体を試験管内に捕集し、捕集後直ちに、この捕集した液体1mLに対して10μLの供試菌液を添加することで接触試験を開始した。供試菌液を添加された液体を、1分毎の経時的に100μLずつ採取した。採取した液は直ちに900μLのレシチン・ポリソルベート80(LP)希釈液(和光純薬工業社製)を添加することでトリクロサンを不活性化し、適宜希釈してSCDLP寒天培地(和光純薬工業社製)に塗布した。その後、30℃で24時間培養した後にコロニー数を計測し、生残菌数とした。
【0074】
その結果、図14に示すように本発明の超音波霧化機で第一の液体と第二の液体とを霧化混合した液体A(0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと50ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体とを霧化混合してトリクロサンの濃度を25ppmにした液体)では2分間で約2logの生残菌数の減少が確認された。
【0075】
また、本発明の超音波霧化機で第一の液体と第二の液体とを霧化混合した液体B(0.1mol/Lの水酸化ナトリウムと100ppmのトリクロサンを予め攪拌混合した第一の液体と0.1mol/Lの緩衝液HEPESからなる第二の液体とを霧化混合してトリクロサンの濃度を50ppmにした液体)では2分間以内で約5logの生残菌数の減少が確認された。
【0076】
比較例として、霧化混合後に捕集した液体の代わりに、溶媒となる100%プロピレングリコールにトリクロサンを溶解した後、トリクロサンの濃度が50ppmになるように0.05M 緩衝液HEPES(pH7)を用いて希釈することにより調整した溶液1mLを用いて同様の接触試験を行った。その結果、図14に示すように、トリクロサンを溶媒に溶解して用いた場合には5分間での殺菌効果は全く認められなかった。
【0077】
上述の実験結果から、本願発明の超音波霧化機でトリクロサンが所定濃度の第一の液体と第二の液体とを、事前に混合することなく、ともに霧化して混合することにより、高い殺菌性能を発揮できる霧を提供できることが確認された。
【0078】
上記の実施形態および実施例は以下の技術的思想を包含する。
(1)複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する超音波霧化機;
(2)複数種類の前記液体を個々に吸収する複数の前記液体吸収部材があり、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積が互いに異なる上記(1)に記載の超音波霧化機;
(3)複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向の寸法が互いに異なる上記(2)に記載の超音波霧化機;
(4)複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向と直交する方向の寸法が互いに異なる上記(2)または(3)に記載の超音波霧化機;
(5)前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積を変化させる面積可変機構を、さらに有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(6)前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて複数の前記液体吸収部材の一部に選択的に前記超音波振動子を当接させる選択当接機構を、さらに有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(7)複数の前記液体吸収部材の少なくとも二つが重ね合わされて前記超音波振動子に当接している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(8)前記超音波振動子がホーンおよび圧電体を備え、前記ホーンが、当該ホーンの振動面と前記圧電体との間に空隙部を備える中空構造をなしている上記(1)から(7)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(9)前記圧電体が板状をなし、前記圧電体の共振方向が該圧電体の面内方向であって、前記圧電体に対向して配置された前記振動面が、前記共振により前記圧電体の面直方向に振動することを特徴とする上記(8)に記載の超音波霧化機;
(10)前記振動面が、前記超音波霧化機の設置面に対して斜めに傾斜して設けられているとともに、前記振動面に前記液体吸収部材が当接している上記(8)または(9)に記載の超音波霧化機;
(11)前記液体吸収部材が所定の厚みを有する板状または棒状をなすとともに、厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部を有し、前記傾斜部が前記振動面の傾斜方向に沿って配置されて前記傾斜部と前記振動面とが面接触している上記(10)に記載の超音波霧化機;
(12)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として芳香剤が収容される上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(13)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として殺菌剤が収容される上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の超音波霧化機;
(14)複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として水が収容される上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の超音波霧化機。
【符号の説明】
【0079】
100,200,300,400,500,600,700,800:超音波霧化機、110:液体収容部、111,510:本体容器、112:本体カバー、120,210,220,610,620,710〜750,820,830:液体吸収部材、122:最先端部、123:傾斜部、124:コーナー部、125:基端部、130:超音波振動子、131:バックホーン、132:ホーン、133:振動板、135:筐体傾斜面、137:筐体、138:フランジ部、511:凸部、520:台座、521:凹部、900:設置面、LK:液体、V:空隙部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する超音波霧化機。
【請求項2】
複数種類の前記液体を個々に吸収する複数の前記液体吸収部材があり、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積が互いに異なる請求項1に記載の超音波霧化機。
【請求項3】
複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向の寸法が互いに異なる請求項2に記載の超音波霧化機。
【請求項4】
複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向と直交する方向の寸法が互いに異なる請求項2または3に記載の超音波霧化機。
【請求項5】
前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積を変化させる面積可変機構を、さらに有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項6】
前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて複数の前記液体吸収部材の一部に選択的に前記超音波振動子を当接させる選択当接機構を、さらに有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項7】
複数の前記液体吸収部材の少なくとも二つが重ね合わされて前記超音波振動子に当接している請求項1ないし6のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項8】
前記超音波振動子がホーンおよび圧電体を備え、
前記ホーンが、当該ホーンの振動面と前記圧電体との間に空隙部を備える中空構造をなしている請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項9】
前記圧電体が板状をなし、前記圧電体の共振方向が該圧電体の面内方向であって、
前記圧電体に対向して配置された前記振動面が、前記共振により前記圧電体の面直方向に振動することを特徴とする請求項8に記載の超音波霧化機。
【請求項10】
前記振動面が、前記超音波霧化機の設置面に対して斜めに傾斜して設けられているとともに、前記振動面に前記液体吸収部材が当接している請求項8または9に記載の超音波霧化機。
【請求項11】
前記液体吸収部材が所定の厚みを有する板状または棒状をなすとともに、厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部を有し、
前記傾斜部が前記振動面の傾斜方向に沿って配置されて前記傾斜部と前記振動面とが面接触している請求項10に記載の超音波霧化機。
【請求項12】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として芳香剤が収容される請求項1ないし11のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項13】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として殺菌剤が収容される請求項1ないし12のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項14】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として水が収容される請求項1ないし13のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項1】
複数種類の液体を個々に収容する複数の液体収容部と、複数種類の前記液体を個々に吸収する液体吸収部材と、前記液体吸収部材と当接して設けられ前記液体吸収部材を超音波振動させて複数種類の前記液体をともに霧化させる超音波振動子と、を有する超音波霧化機。
【請求項2】
複数種類の前記液体を個々に吸収する複数の前記液体吸収部材があり、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積が互いに異なる請求項1に記載の超音波霧化機。
【請求項3】
複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向の寸法が互いに異なる請求項2に記載の超音波霧化機。
【請求項4】
複数の前記液体吸収部材が並列に配列されて前記超音波振動子に当接しており、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子に当接している部分の配列方向と直交する方向の寸法が互いに異なる請求項2または3に記載の超音波霧化機。
【請求項5】
前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて、複数の前記液体吸収部材の前記超音波振動子と当接する面積を変化させる面積可変機構を、さらに有する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項6】
前記超音波振動子と複数の前記液体吸収部材との少なくとも一方を変位させて複数の前記液体吸収部材の一部に選択的に前記超音波振動子を当接させる選択当接機構を、さらに有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項7】
複数の前記液体吸収部材の少なくとも二つが重ね合わされて前記超音波振動子に当接している請求項1ないし6のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項8】
前記超音波振動子がホーンおよび圧電体を備え、
前記ホーンが、当該ホーンの振動面と前記圧電体との間に空隙部を備える中空構造をなしている請求項1から7のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項9】
前記圧電体が板状をなし、前記圧電体の共振方向が該圧電体の面内方向であって、
前記圧電体に対向して配置された前記振動面が、前記共振により前記圧電体の面直方向に振動することを特徴とする請求項8に記載の超音波霧化機。
【請求項10】
前記振動面が、前記超音波霧化機の設置面に対して斜めに傾斜して設けられているとともに、前記振動面に前記液体吸収部材が当接している請求項8または9に記載の超音波霧化機。
【請求項11】
前記液体吸収部材が所定の厚みを有する板状または棒状をなすとともに、厚み方向に対して斜めに形成された傾斜部を有し、
前記傾斜部が前記振動面の傾斜方向に沿って配置されて前記傾斜部と前記振動面とが面接触している請求項10に記載の超音波霧化機。
【請求項12】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として芳香剤が収容される請求項1ないし11のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項13】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として殺菌剤が収容される請求項1ないし12のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【請求項14】
複数の前記液体収容部の少なくとも一つに前記液体として水が収容される請求項1ないし13のいずれか一項に記載の超音波霧化機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−130903(P2012−130903A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223017(P2011−223017)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】
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