説明

超音波顕微鏡

【課題】数μm以下のオーダーの高い空間分解能で被検体の内部を観測できる超音波顕微鏡を提供すること。
【解決手段】励起用パルス光照射部10から励起用パルス光B1が照射されることにより,熱弾性効果によって超音波を発するとともに,被検体1に照射されて反射した反射超音波を受波し,光弾性効果によって光反射率が変化する膜部材32が音響レンズ31の表面に形成され,その膜部材32に測定光B2を照射し,その測定光の反射光B2’を光検出器42で検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,被検体に超音波を照射し,前記被検体からの反射超音波を検出することによって前記被検体の内部の観測信号を得る超音波顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,被検体に超音波を照射し,前記被検体からの反射超音波を検出することによって被検体の内部状態の観測信号を得る超音波顕微鏡が知られている。超音波顕微鏡は,光や電子線では得られない被検体内部の情報が得られることから,被検体の弾性等の力学的性質の評価の他,内部欠陥の検出等にも多用されている。
従来の超音波顕微鏡は,特許文献1に示されるように,高周波の電気信号が印加される圧電膜,及びその圧電膜(圧電素子)が表面に設けられた音響レンズとを備えている。前記圧電幕から放射された超音波は,前記音響レンズを通じて被検体の微小部位に照射され,その被検体に反射した超音波が再び音響レンズを通じて圧電膜に到達する。そして,圧電膜により,反射超音波が電気信号に変換され,その電気信号に基づいて被検体の内部状態が画像化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−43208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで,超音波顕微鏡では,超音波の回析の影響から超音波の波長が短いほど,即ち,超音波の周波数が高いほど空間分解能が高くなる。
また,例えば,被検体が,表面に数μm〜サブミクロンの厚みの配線膜や絶縁膜が形成された半導体デバイス等であるような場合,超音波顕微鏡によってその被検体における膜の界面の接合評価(膜の剥離の有無評価等)のための観測を行うためには,膜厚(数μm)以下のオーダーの空間分解能が要求される。また,電子部品が実装された基板における電極部の大きさは数十μm程度であるが,その電極部内の欠陥評価(ボイドの有無評価等)を行う場合も,超音波顕微鏡には数μm以下の空間分解能が要求される。
しかしながら,圧電膜により超音波の放射及び受波が行われる従来の超音波顕微鏡では,圧電膜の容量成分や共振特性に起因し,発生させることができる実用的な超音波の周波数は数百MHz程度以下(波長は10μm以上)にすぎない。そのため,従来の超音波顕微鏡の空間分解能は,超音波の回析限界により10μm程度以上(波長と同程度)にすぎず,数μm以下のオーダーの高い空間分解能を実現できないという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,数μm以下のオーダーの高い空間分解能で被検体の内部を観測できる超音波顕微鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明は,被検体に超音波を照射し,前記被検体からの反射超音波を検出することによって前記被検体の内部の観測信号を得る超音波顕微鏡であり,次の(1)〜(5)に示される各構成要素を備えている。
(1)励起用パルス光が照射されることにより,熱弾性効果によって超音波を発する超音波発生部。
(2)前記励起用パルス光を前記超音波発生部に照射する励起用パルス光照射手段。
(3)前記超音波発生部で発生した超音波が前記被検体に照射されて反射した前記反射超音波を受波することにより,光弾性効果によって光反射率が変化する超音波受波部。なお,光弾性効果による光反射率の変化は,光弾性効果による屈折率の変化と換言してもよい。
(4)前記超音波受波部に測定光を照射する測定光照射手段。
(5)前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光を検出する測定光検出手段。
例えば,本発明に係る超音波顕微鏡が,前記超音波発生部で発生した超音波を伝播させて前記被検体の一部に集束させる音響レンズを備え,前記超音波受波部が前記音響レンズの表面に形成されていることが考えられる。さらに,前記音響レンズの表面に,前記超音波発生部に加え,前記超音波受波部も形成されていることが考えられる。
前記音響レンズの作用により,超音波の集束位置における応力を高めることができ,前記被検体の内部状態を高感度で(高いSN比で)検出できる。
また,前記超音波発生部及び前記超音波受波部の具体例としては,前記音響レンズの表面に形成された金属(モリブデン,金,銅,アルミニウム等)の膜のように,熱膨張係数が比較的大きく熱容量の小さなものが考えられる。
また,前記超音波発生部が前記超音波受波部を兼ねるものであることも考えられる。
【0006】
ところで,前記超音波発生部は,前記励起用パルス光の照射による熱膨張によって超音波(熱弾性波)を発する。ここで,前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面が自由表面である場合,主としてその自由表面で熱膨張変位が生じ,そこで生じた超音波はその自由表面から放散されやすい。そのことは,前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面からその反対側の面へ向かう超音波,即ち,前記被検体に向かう超音波の発生効率の低下につながる。
そこで,本発明に係る超音波顕微鏡が,以下に示す固体接合部材を備えれば好適である。前記固定接合部材は,前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面に接合され,前記励起用パルス光を透過させる固体からなる部材である。前記固体接合部材は,前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面における熱膨張変位を拘束するためのものである。また,前記超音波発生部における前記固体接合部材が接合される面は,前記被検体に向かう側と反対側の面である。
前記固体接合部材の作用により,前記超音波発生部から前記被検体に向かう超音波の発生効率を高めることができる。
また,前記固体接合部材は,前記超音波発生部よりもヤング率の大きい部材であることが望ましい。これにより,前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面の変位の拘束力がより高くなり,前記被検体に向かう超音波の発生効率をより高めることができる。
【0007】
パルス光が照射された物質は,熱弾性効果により,そのパルス光とパルス幅が同じ熱弾性波を発生させる。本発明に係る超音波顕微鏡は,前記超音波発生部の熱弾性効果によって弾性波(超音波)を発生させる。従って,本発明に係る超音波顕微鏡は,前記励起用パルス光照射手段によって,例えばパルス幅(時間幅)が1ナノ秒以下の前記励起用パルス光を前記超音波発生部に照射すると,GHzオーダーの周波数(波長が数μm以下)の超音波を発生させることができる。
また,前記測定光検出手段によって検出される前記測定光の反射光の強度は,前記超音波受波部における反射超音波の受波状況が高感度で反映される。
従って,本発明に係る超音波顕微鏡により,数μm以下のオーダー(例えば,サブμmオーダー)の高い空間分解能で被検体の内部を高感度で観測できる。
【0008】
また,本発明に係る超音波顕微鏡が,次の(6)〜(8)に示される構成,又は次の(9)に示される構成を有することも考えられる。
(6)前記音響レンズにおける,前記超音波受波部を兼ねる前記超音波発生部が形成された面の表層部に,前記測定光を前記超音波発生部との界面に沿ってその界面に対して多重反射させつつ伝播させる導光路が形成されている。
(7)前記測定光照射手段が,前記導光路に前記測定光を入射させる。
(8)前記測定光検出手段が,前記導光路を伝播した前記測定光を検出する。
これにより,前記超音波受波部を兼ねる前記超音波発生部の光弾性効果による光反射率の変化,即ち,前記超音波受波部における反射超音波の受波状況を,非常に高感度で(高いSN比で)検出できる。
(9)前記測定光照射手段が,前記超音波受波部において表面プラズモン共鳴が生じる条件で前記測定光を前記超音波受波部に照射するものである。
表面プラズモン共鳴状態にある物質(前記超音波受波部)においては,その微小領域における僅かな屈折率の変化(光反射率の変化)により,照射された前記測定光の反射光の強度が極めて大きく変化する。そのため,前記超音波受波部における反射超音波の受波状況を,非常に高感度で(高いSN比で)検出できる。
【0009】
また,本発明に係る超音波顕微鏡が,次の(10)及び(11)に示される構成を有することも考えられる。
(10)前記測定光照射手段が,少なくとも前記励起用パルス光が前記被検体に照射されてから所定期間内において前記測定光を連続照射するものである。
(11)前記測定光検出手段が,前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光の強度の時系列変化を検出するものである。
これにより,従来の超音波顕微鏡と同様に,超音波が出力された時点から前記測定光の反射光のピーク強度が検出されるまでの時間により,前記被検体の内部に存在する欠陥や不純物等の深さを特定できる。但し,時間分解能の高い前記測定光検出手段を採用する必要がある。
一方,本発明に係る超音波顕微鏡が,次の(12)〜(14)に示される構成を有することも考えられる。
(12)前記励起用パルス光照射手段が,前記励起用パルス光を連続照射するものである。
(13)前記測定光照射手段が,前記励起用パルス光の照射タイミングと同期してパルス状の前記測定光を出力するパルス測定光出力手段と,そのパルス測定光出力手段から前記被検体までの前記測定光の光路長を変更する光路長変更手段とを備えている。
(14)前記測定光検出手段が,前記光路長変更手段による前記測定光の光路長の変更に応じて前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光の強度の検出信号をサンプリングするものである。
前記測定光の光路長の変更により,前記被検体における前記励起用パルス光の照射タイミングに対する前記測定光の照射タイミングが変化する。そのため,前記測定光検出手段の検出結果は,反射超音波が前記超音波受波部へ到達するタイミングを走査した信号となる。また,光速が速いことから,前記測定光の光路長の変更の分解能が特に高くなくても,十分に高い分解能での前記走査が可能となる。これにより,特に時間分解能の高い前記測定光検出手段を採用しなくても,前記被検体の内部に存在する欠陥や不純物等の深さを高い分解能で特定できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,超音波顕微鏡において,被検体に対して高周波数の超音波を照射でき,数μm以下のオーダーの高い空間分解能で被検体の内部を観測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超音波顕微鏡X1の概略構成図。
【図2】超音波顕微鏡X1に採用され得る超音波送受部Z2の概略構成図。
【図3】超音波顕微鏡X1に採用され得る超音波送受部Z3の概略構成図。
【図4】超音波顕微鏡X1により検出された反射測定光の強度信号の時系列変化の一例を表す図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る超音波顕微鏡X2の概略構成図。
【図6】超音波顕微鏡X1,X2に採用され得る超音波送受部Z4の概略構成図。
【図7】励起された膜部材からの超音波の発生状態の計算機によるシミュレーション結果を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0013】
まず,図1を参照しつつ,本発明の第1実施形態に係る超音波顕微鏡X1について説明する。
超音波顕微鏡X1は,被検体1に超音波を照射し,その被検体1からの反射超音波(エコー)を検出することによって前記被検体1の内部状態の観測信号を得る。その観測信号に基づいて,前記被検体1の内部欠陥や不純物等の位置(深さ)が特定される。
図1に示されるように,超音波顕微鏡X1は,励起用パルス光照射部10と,測定光照射部20と,超音波送受部Z1と,測定光検出部40と,X−Yステージ51と,ステージ制御部52と,計算機60と,同期回路61とを備えている。
【0014】
前記超音波送受部Z1は,音響レンズ31の表面に膜部材32が形成(成膜)された部材である。前記音響レンズ31は,その内部を超音波が少ない減衰で伝播されるよう石英ガラスやサファイア等の硬質材料からなる部材である。
前記励起用パルス光照射部10は,前記励起用パルス光B1を発生させて前記膜部材32の1点に照射するものであり,励起用パルス光照射手段の一例である。
前記励起用パルス光照射部10は,励起用パルス光を出力するパルスレーザ光源11と,ミラー12及びレンズ13を備えている。
前記パルスレーザ光源11は,例えば,波長532nm程度,パルス幅100ps(ピコ秒)程度のパルス状のレーザ光である励起用パルス光B1を出力する光源(YAGレーザ等)である。
前記パルスレーザ光源11から出射された前記励起用パルス光B1は,前記ミラー12により前記膜部材32の方向へ変向され,前記レンズ13によってそのビーム径が調節されて前記膜部材32に照射される。
前記同期回路61は,前記パルスレーザ光源11及び後述する高速オシロスコープ43に対してパルス光出力開始信号を供給する回路である。前記パルスレーザ光源11は,前記パルス光出力開始信号が供給されるごとにパルス光(前記励起用パルス光B1)を出射する。
【0015】
前記膜部材32は,例えば,モリブデン,金,銅,アルミニウム等の金属の膜である。
前記膜部材32は,前記励起用パルス光B1が照射されると,熱弾性効果により,そのパルス光B1とパルス幅が同じ熱弾性波を発生させる。即ち,前記膜部材32は,励起用パルス光B1が照射されることにより,熱弾性効果によって超音波を発する超音波発生部の一例である。
従って,前記励起用パルス光照射部10によってパルス幅(時間幅)が100ps以下の前記励起用パルス光B1が前記膜部材32に照射されると,10GHz以上の周波数(波長が1μm以下)の超音波を発生させることができる。
Qスイッチ動作やモードロック等によって動作するレーザ光源により,数ns以下のパルス幅のパルス光を出力することは通常行われることである。そのため,前記励起用パルス光照射部10は一般的な機器により実現できる。
【0016】
また,前記音響レンズ31は,前記膜部材32で発生した超音波を伝播させて前記被検体1の微小な観測部位1aに集束させるものである。
具体的には,前記音響レンズ31は,直方体の部材における一つの面に湾曲面を形成する窪み33が設けられた部材である。前記窪み33は,前記音響レンズ31における前記膜部材32が形成された面に対し反対側の面に形成されている。
前記膜部材32における励起用パルス光の照射点で発生した超音波は,前記音響レンズ31の内部を伝播して前記窪み33に到達し,その窪み33の表面から被検体1の観測部位1aに向かう方向に放射される。
前記音響レンズ31における前記窪み33と被検体1との間には,水などのカップリング材2が充填されている。
また,前記音響レンズ31は,前記観測部位1aで反射した超音波(反射超音波)を前記膜部材32における測定光の照射点に集束させるものでもある。
【0017】
前記膜部材32で発生した超音波が前記被検体1の観測部位1aに照射されて反射した前記反射超音波は,再び,前記カップリング材2及び前記音響レンズ31を経て前記膜部材32に戻ってくる。
そして,前記膜部材32は,前記反射超音波を受波することにより,光弾性効果によって光反射率が変化する(屈折率が変化するといってもよい)超音波受波部の一例でもある。
このように,前記音響レンズ31の表面に形成された前記膜部材32は,超音波を発生させる超音波発生部及び超音波を受波する超音波受波部の両方を兼ねる部材である。
なお,前記音響レンズ31には,表面が前記被検体1に対向する音響レンズ面(湾曲面)となっている窪みが設けられているが,前記膜部材32は,当該窪みの表面(音響レンズ面)に沿って形成する構成とすることもできる。
【0018】
前記測定光照射部20は,前記膜部材32における前記反射超音波の集束点(前記励起用パルス光B1の照射点)に測定光B2を照射する測定光照射手段の一例である。
前記測定光照射部20は,測定光B2を出力する測定光レーザ光源21と,出射された測定光B2を前記膜部材32上の前記反射超音波の集束点に変向させるミラー22とを備えている。前記測定光レーザ光源21は,例えば,波長633nmのレーザ光を出力するHe−Neレーザ等である。前記測定光B2の波長は,前記励起用パルス光B1の波長と異なる波長としている。
なお,前記測定光照射部20は,少なくとも前記励起用パルス光B1が前記被検体1に照射されてから所定期間内において(例えば,1ns(ナノ秒)以上継続して)前記測定光B2を連続照射する。1回の前記測定光B2の照射の最短時間は,前記励起用パルス光B1が照射されてから,検出すべき前記反射超音波が前記膜部材32に到達する可能性がある期間により定まる。
前記測定光検出部40は,前記膜部材32に照射された前記測定光B2の反射光(以下,反射測定光B2’という)を検出する測定光検出手段の一例である。
前記測定光検出部40は,ミラー41,光検出器42及び高速オシロスコープ43を備えている。
前記ミラー41は,前記膜部材32に対する前記測定光B2の正反射方向において前記反射測定光B2’を前記光検出器42の方向へ変向させる。
前記光検出器42は,前記反射測定光B2’の光電変換により前記反射測定光B1’の強度信号を生成し,その強度信号を前記高速オシロスコープ43に出力するものである。
【0019】
図4は,前記光検出器42によって検出される前記反射測定光B1’の強度信号の時系列変化の一例を表す図である。
図4に示されるように,前記反射測定光B1’の強度信号は,前記反射超音波(エコー)が前記膜部材32に到達するごとに信号値が急変するピーク部E1,E2,E3,…が生じる。図4において,最初のピーク部E1は,前記音響レンズ31と前記カップリング材2との界面で反射した反射超音波に相当し,2番目のピーク部E2は,前記被検体1の表面で反射した反射超音波に相当し,3番目以降のピーク部E2が,前記被検体1の内部状態を表す反射超音波に相当する。
2番目の前記ピーク部E2の発生時と3番目以降の前記ピーク部E3,E4,…の発生時との時間差,及び前記被検体1内での超音波の伝播速度から,前記被検体1の内部に存在する欠陥等の深さを特定できる。即ち,前記光検出器42の検出信号は,前記被検体1の内部状態の観測信号である。
【0020】
前記高速オシロスコープ43は,前記同期回路61から前記パルス光出力開始信号が供給された時点から所定期間に,前記反射測定光B1’の強度信号を高速でサンプリングして一次記憶し,その強度信号の時系列変化を検出する装置である。例えば,前記高速オシロスコープ43は,前記パルス光出力開始信号が供給された時点から前記反射測定光B1’の強度信号の変化が大きい前記ピーク部E1,E2,…(エコー)が検出されるまでの時間を検出し,その時間の情報を前記計算機60に出力する。
前記高速オシロスコープ43は,例えば,1〜10ps程度のサンプリング周期での信号入力機能を有している。
そして,前記計算機60は,前記高速オシロスコープ43から得られる前記ピーク部E1,E2,…の検出時間の情報から,2番目の前記ピーク部E2の発生時と3番目以降の前記ピーク部E3,E4,…の発生時との時間差,及び前記被検体1内での超音波の伝播速度から,前記被検体1の内部に存在する欠陥等の深さを算出する。
【0021】
前記X−Yステージ51は,前記被検体1を支持し,前記超音波送受部Z1に対する前記被検体1の相対位置(超音波の照射方向に対して直交する方向の位置)を変化させて位置決めする装置である。
前記ステージ制御部52は,前記計算機60からの位置決め指令に応じて,前記X−Yステージ51による前記被検体1の支持位置を制御する回路である。
前記X−Yステージ51によって前記被検体1における前記観測部位1aの位置決めがなされるごとに,前記励起用パルス光B1及び前記測定光B2の照射と,前記測定光検出部40による前記反射測定光B1’の検出と,前記計算機60による前記被検体1の内部に存在する欠陥等の深さの算出とが行われる。
これにより,前記被検体1の内部の3次元方向の状態の分布が観測される。
前述したように,前記膜部材32は,数GHz以上の周波数(波長が数μm以下)の超音波を発生させる。また,前記光検出器42によって検出される前記反射測定光B2’の強度は,前記膜部材32における反射超音波の受波状況が高感度で反映される。
従って,超音波顕微鏡X1によれば,数μm以下のオーダー(例えば,サブμmのオーダー)の高い空間分解能で被検体1の内部を高感度で観測できる。
【0022】
次に,図2を参照しつつ,前記超音波送受部Z1の代わりに前記超音波顕微鏡X1に採用され得る超音波送受部Z2について説明する。なお,図2において,図1に示された要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
図2に示される前記超音波送受部Z2は,音響レンズ31’における表裏相対する2つの面に第1の膜部材32a及び第2の膜部材32bが形成された部材である。
前記音響レンズ31’は,四角錐状の部材における,頂頭部が平面状にカットされ,底面に前記窪み33が形成された部材である。また,前記音響レンズ31は,その内部を超音波が少ない減衰で伝播され,また,前記測定光B2が透過するよう石英ガラスやサファイア等の硬質材料からなる透明体である。
また,前記第1の膜部材32aは,前記音響レンズ31’における平面状の表面に形成され,前記第2の膜部材32bは,前記窪み33の表面に形成されている。
そして,前記励起用パルス光B1は,前記第1の膜部材32aの1点に照射される。
また,前記超音波送受部Z2における前記第2の膜部材32bと被検体1との間には,水などのカップリング材2が充填されている。
【0023】
前記第1の膜部材32aも,前記膜部材32(図1参照)と同様に,例えば,モリブデン,金,銅,アルミニウム等の金属の膜である。
そして,前記第1の膜部材32aも,前記励起用パルス光B1が照射されると,熱弾性効果により,そのパルス光B1とパルス幅が同じ熱弾性波を発生させる。即ち,前記第1の膜部材32aは,励起用パルス光B1が照射されることにより,熱弾性効果によって超音波を発する超音波発生部の一例である。
前記音響レンズ31’は,前記第1の膜部材32aで発生した超音波を伝播させて前記被検体1の微小な観測部位1aに集束させる。
前記第1の膜部材32aで発生した超音波が前記被検体1の観測部位1aに照射されて反射した前記反射超音波は,再び,前記カップリング材2を経て前記第2の膜部材32bに戻ってくる。
そして,前記第2の膜部材32bは,前記反射超音波を受波することにより,光弾性効果によって光反射率が変化する(屈折率が変化するといってもよい)超音波受波部の一例である。
前記第2の膜部材32bも,前記第1の膜部材32aと同じ材料が採用され得るが,水などの液体であることが通常である前記カップリング材2と接触するため,耐食性の高い金が採用されれば好適である。
このように,前記超音波送受部Z2においては,超音波を発生させる超音波発生部として機能する前記第1の膜部材32aと,超音波を受波する超音波受波部として機能する前記第2の膜部材32bとが個別に設けられている。このような構成も,本発明の実施形態の一例である。
【0024】
また,前記超音波送受部Z2においては,前記測定光B2が,前記音響レンズ31’の側面から前記第2の膜部材32bの表面(前記音響レンズ31’に接触する面)に照射される。そして,前記第2の膜部材32bに対する前記測定光B2の反射光である前記反射測定光B2’は前記光検出部40(図1参照)へ導かれる。
前記超音波顕微鏡X1において,前記超音波送受部Z1の代わりに図2に示される超音波送受部Z2が採用されても,前記超音波送受部Z1が採用された場合と同様の作用効果が得られる。
【0025】
また,前記測定光照射部20が,前記第2の膜部材32bにおいて表面プラズモン共鳴が生じる条件で前記測定光B2を前記第2の膜部材32bに照射するものであれば好適である。
前記第2の膜部材32bにおいて表面プラズモン共鳴が生じる条件は,前記第2の膜部材32bの膜厚と,前記測定光B2の前記第2の膜部材32bに対する入射角と,前記測定光B2の波長と,前記第2の膜部材32b及びそれと接する前記音響レンズ31’の屈折率との組合せの条件であり,理論計算によって導出できることが知られている。
表面プラズモン共鳴状態にある物質(前記第2の膜部材32b)においては,その物質の表面上の僅かな屈折率の変化(光反射率の変化)により,照射された前記測定光B2の反射光の強度が極めて大きく変化する。そのため,前記第2の膜部材32bにおける前記反射超音波の受波状況を,非常に高感度で(高いSN比で)検出できる。
【0026】
次に,図3を参照しつつ,前記超音波送受部Z1の代わりに前記超音波顕微鏡X1に採用され得る超音波送受部Z3について説明する。なお,図3において,図1に示された要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
図3に示される前記超音波送受部Z3は,前記超音波送受部Z1における前記音響レンズ31の一部に,前記測定光B2を伝播させる導光路31aが形成されている。
前記導光路31aは,前記音響レンズ31における前記膜部材32(前記超音波受波部を兼ねる前記超音波発生部)が形成された面の表層部に形成されている。そして,前記導光路31aは,前記測定光B2を前記膜部材32との界面に沿ってその界面に対して多重反射させつつ伝播させる。
前記導光路31aの入口及び出口には,前記測定光B2の導入用及び導出用の光ファイバ34,35が溶着されている。ここで,導入用の光ファイバ34及び前記測定光レーザ光源21が,前記導光路31aに前記測定光B2を入射させる前記測定光照射部20となる。また,前記光検出器42は,前記導光路31aを伝播した前記測定光(前記反射測定光B2’)の強度を検出する。これにより,前記膜部材32の反射率の変化による前記反射測定光B2’の強度変化がより大きくなる。
前記導光路31aは,前記音響レンズ31における他の部分よりも屈折率が僅かに高くなっている層である。例えば,前記音響レンズ31の表面に1μm程度の厚みのチタンの膜を成膜して熱処理することに,チタンが前記音響レンズ31の表面から深さ数μmの表層に拡散する。その深さ数μmの表層が,前記導光路31aとなる。
前記超音波顕微鏡X1において,前記超音波送受部Z1の代わりに図3に示される超音波送受部Z3が採用されれば,前記膜部材32の光弾性効果による光反射率の変化,即ち,前記膜部材32における反射超音波の受波状況を,非常に高感度で(高いSN比で)検出できる。
【0027】
次に,図5を参照しつつ,本発明の第2実施形態に係る超音波顕微鏡X2について説明する。超音波顕微鏡X2は,前記超音波顕微鏡X1の応用例である。以下,前記超音波顕微鏡X1と異なる部分についてのみ説明する。なお,図5において,図1に示された要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
超音波顕微鏡X2においては,前記パルスレーザ光源11が,前記励起用パルス光B1の光源と,前記測定光B2の光源とを兼ねる。
即ち,前記パルスレーザ光源11から出射されたパルス光は,ビームスプリッタ21’により分光され,分光された光の一方を前記励起用パルス光B1とし,分光された光の他方をパルス状の測定光B2とする。
また,超音波顕微鏡X2においては,1箇所の前記観測部位1aについて,前記同期回路61が前記パルス光出力開始信号を一定周期で複数回連続して出力する。これにより,前記パルスレーザ光源11は,前記励起用パルス光B1を連続して出力する(連続パルス光を出射する)光源と,その励起用パルス光B1の照射タイミングと同期してパルス状の前記測定光B2を出射する光源とを兼ねる光源となっている。なお,前記測定光B2用のパルス光源が,前記励起用パルス光B1の光源とは別個に設けられてもよい。
前記パルスレーザ光源11及び前記ビームスプリッタ21’により得られた連続パルス光である前記測定光B2は,ミラー22’,後述する光路長調節部60及び前記ミラー22に反射して前記膜部材32に照射される。
【0028】
また,超音波顕微鏡X2は,前記パルスレーザ光源11から前記被検体1までの前記測定光B2の光路長を変更する光路長調節部60を備えている。
前記光路長調節部60は,前記測定光B2を反射するコーナーキューブミラー61と,そのコーナーキューブミラー61を前記測定光B2の光軸方向に直線移動させる移動ステージ62とを備えている。
また,超音波顕微鏡X2は,前記同期回路61から出力される前記パルス光出力開始信号を予め設定された時間だけ遅延させて前記計算機60に供給する遅延回路62を備えている。以下,前記遅延回路62により前記パルス光出力開始信号に対して遅延処理が施された信号を遅延同期信号という。
前記遅延回路62の遅延時間は,前記光路長調節部60によって前記測定光B2の光路長が最短に設定されている状態で,前記被検体1の表面で反射した前記反射超音波に相当する前記ピーク部E2(2番目のエコー:図4参照)が前記光検出器42で検出されるタイミング,又はそれより若干早いタイミングで,前記遅延同期信号が発生するように調節されている。
【0029】
そして,超音波顕微鏡X2においては,前記光検出器42及び前記計算機60により,前記光路長調節部60による前記測定光B2の光路長の変更に応じて,前記膜部材32に照射された前記測定光B2の反射光の強度の検出信号をサンプリングする。
サンプリングされた前記反射測定光B2’の強度信号に一時的な変動(前記ピーク部E3,E4,…に相当)が表れたときの前記測定光B2の光路長は,前記ピーク部E3,E4の検出時間に換算できる。
従って,前記計算機60は,サンプリングした前記反射測定光B2’の強度信号に一時的変動が生じたときの前記測定光B2の光路長に基づいて,前記被検体1の内部に存在する欠陥等の深さを算出する。
【0030】
例えば,前記光路長調節部60は,前記コーナーキューブミラー61を一定速度で移動させることにより,前記測定光B2の光路長を一定速度で変化させる。さらに,前記計算機60が,一定周期で発生する前記遅延同期信号が入力されるごとに前記光検出器42の検出信号をサンプリングする。
ここで,前記光路長調節部60において,前記移動ステージ62が前記コーナーキューブミラー61を150mm移動させれば,前記測定光B2の光路長が300mm変化する。光路長300mmの差は,前記膜部材32への前記測定光B2の照射タイミングの時間差に換算すれば約1ns(ナノ秒)の時間差となる。
また,前記光路長調節部60が,前記パルスレーザ光11によるパルス光の出力ごとに前記コーナーキューブミラー61を100μmずつ移動させれば,前記測定光B2の光路長が200μmずつ変化し,前記光検出器42の検出信号(前記反射測定光B2’の強度信号)のサンプリングの時間分解能は0.67ps(ピコ秒)となる。
このように,約0.7psの時間分解能及び約1nsの時間の範囲で前記光検出器42の検出信号をサンプリングできれば,前記被検体1の内部状態を十分な空間分解能で観察できる。
また,前記コーナーキューブミラー61を10μmずつ150mm移動させることは,例えば,前記移動ステージ62に例えばステッピングモータのようなアクチュエータを採用すれば特に難しいことではない。
従って,超音波顕微鏡X2によれば,特に時間分解能の高い前記高速オシロスコープ43を採用しなくても,前記被検体1の内部に存在する欠陥や不純物等の深さを高い分解能で特定できる。
なお,以上に示した実施形態は,前記計算機60によって前記反射測定光B2’の強度信号(前記光検出器42の出力信号)の変動を直接的に検出する例であるが,他の実施形態も考えられる。例えば,前記反射測定光B2’の強度信号の変動が微小である場合,前記パルスレーザ光源11の出力光(前記測定光B2)に対して周期的な強度変調を施すとともに,前記計算機60により,前記光検出器42の出力信号から,前記測定光B2の強度変調周期と同期した周期成分を抽出し,その抽出成分の変動を検出することも考えられる。これにより,信号検出のSN比を高めることができる。
【0031】
ところで,本発明の他の実施形態としては,例えば,図5に示された前記超音波顕微鏡X2に,図2に示された前記超音波送受部Z2や図3に示された前記超音波送受部Z3が採用されたもの等が考えられる。
【0032】
次に,図6を参照しつつ,前記超音波送受部Z1の代わりに前記超音波顕微鏡X1,X2に採用され得る超音波送受部Z4について説明する。なお,図6において,図1に示された要素と同じ要素については同じ符号が付されている。
図6に示される前記超音波送受部Z4は,前記膜部材32の表面に固体からなる部材36が接合されている点が,前記超音波送受部Z1と異なる。以下,部材36のことを固体接合部材36と称する。
前記固体接合部材36は,超音波の発生部である前記膜部材32における前記励起用パルス光B1の入射面に接合された固体からなる部材である。この固体接合部材36は,前記膜部材32における前記励起用パルス光B1の入射面の変位(熱膨張変位)を拘束するためのものである。ここで,前記膜部材32における前記固体接合部材36が接合される面(図6における上側の面)は,前記被検体1に向かう側と反対側の面である。
また,前記固体接合部材36は,前記膜部材32に入射する前記励起用パルス光B1を透過させる透明な部材である。例えば,前記固体接合部材36は,石英ガラスやサファイア等からなる透明な部材である。
【0033】
図7は,励起された膜部材71からの超音波の発生状態を軸対象モデルに基づく計算機でのシミュレーションを行った結果を表す図である。なお,図7のシミュレーション結果は,ガラス製の基材70の表面に接合された前記膜部材71に,0.5ナノ秒のパルス幅の前記励起用パルス光B1の照射に相当する応力が与えられた条件下でのシミュレーション結果である。
図7において,(a)の図は,前記膜部材71における前記基材70との接合面に対して反対側の面(図7における上側の面)が自由表面である場合のシミュレーション結果である。一方,(b)の図は,前記膜部材71における前記基材70との接合面に対して反対側の面が,ガラス製の拘束体72の接合によってその変位が拘束された状態である場合のシミュレーション結果である。
また,図7に示される前記基材70において,黒のベタ塗りではない部分(模様が生じている部分)が,超音波(弾性波)が生じている部分である。
【0034】
図7に示されるように,前記膜部材71の一方の面が自由表面である場合,主としてその自由表面で熱膨張変位が生じて超音波が放散し,その自由面の反対側の面から前記基材70へ進入する超音波の進入深さが比較的浅くなる。一方,前記膜部材71の一方の面が前記拘束体72により拘束されている場合,超音波の放散ロスが減り,前記基材70へ進入する超音波の強度が増して前記基材70への進入深さが深くなる。
このように,前記拘束体72が設けられることにより,前記基材70の方向へ向かう超音波の発生効率を高めることができる。
そして,前記超音波送受部Z4における前記固体接合部材36は,図7における前記拘束体72の機能を果たす。
従って,前記超音波顕微鏡X1,X2において,前記超音波送受部Z1の代わりに前記超音波送受部Z4が採用されることにより,前記膜部材32における前記励起用パルス光B1の入射面の変位の拘束力が高くなり,前記音響レンズ31を通じて前記被検体1に向かう超音波の発生効率を高めることができる。
また,前記固体接合部材36は,前記膜部材32よりもヤング率の大きい部材であることが望ましい。これにより,前記膜部材32における前記励起用パルス光B1の入射面の変位の拘束力がより高くなり,前記被検体1に向かう超音波の発生効率をより高めることができる。
【0035】
また,上記実施形態以外にも,被検体に対向する音響レンズ面を通じて入射した被検体からの反射超音波を超音波受波部に集光させる音響レンズを具備し,超音波発生部が,音響レンズ面に沿って形成された構成とすることもできる。
なお,音響レンズは,超音波発生部で発生した超音波を放射して被検体に収束させる第1の音響レンズ面と,被検体で反射した反射超音波を放射して超音波受波部に収束させる第2の音響レンズ面とを有する構成とすることもできる。
このような構成によっても,前記被検体及び前記超音波受波部における超音波の収束位置の応力を高めることができ,前記被検体の内部状態をより好感度で((高いSN比で)検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は,超音波顕微鏡への利用が可能である。
【符号の説明】
【0037】
X1,X2:超音波顕微鏡
Z1〜Z4:超音波送受部
1 :被検体
1a:観測部位
2 :カップリング材
10:励起用パルス光照射部
11:パルスレーザ光源
20:測定光照射部
21:測定光レーザ光源
31,31’,31a:音響レンズ
31a:導光路
32:膜部材
32a:第1の膜部材
32b:第2の膜部材
33:窪み
36:固体接合部材
40:測定光検出部
42:光検出器
43:高速オシロスコープ
51:X−Yステージ
52:ステージ制御部
60:計算機
61:同期回路
62:遅延回路
B1:励起用パルス光
B2:測定光
B2’:反射測定光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に超音波を照射し,前記被検体からの反射超音波を検出することによって前記被検体の内部の観測信号を得る超音波顕微鏡であって,
励起用パルス光が照射されることにより,熱弾性効果によって超音波を発する超音波発生部と,
前記励起用パルス光を前記超音波発生部に照射する励起用パルス光照射手段と,
前記超音波発生部で発生した超音波が前記被検体に照射されて反射した前記反射超音波を受波することにより,光弾性効果によって光反射率が変化する超音波受波部と,
前記超音波受波部に測定光を照射する測定光照射手段と,
前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光を検出する測定光検出手段と,
を具備してなることを特徴とする超音波顕微鏡。
【請求項2】
表面に前記超音波受波部が形成され,該超音波発生部で発生した超音波を前記被検体の一部に集束させる音響レンズを具備してなる請求項1に記載の超音波顕微鏡。
【請求項3】
前記超音波発生部及び前記超音波受波部が前記音響レンズの表面に形成されてなる請求項2に記載の超音波顕微鏡。
【請求項4】
前記超音波発生部における前記励起用パルス光の入射面に接合され,前記励起用パルス光を透過させる固体からなる固体接合部材を具備してなる請求項1〜3のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項5】
前記固体接合部材が,前記超音波発生部よりもヤング率の大きい部材である請求項4に記載の超音波顕微鏡。
【請求項6】
前記超音波発生部が前記超音波受波部を兼ねるものである請求項1〜5のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項7】
前記音響レンズにおける,前記超音波受波部を兼ねる前記超音波発生部が形成された面の表層部に,前記測定光を前記超音波発生部との界面に沿ってその界面に対して多重反射させつつ伝播させる導光路が形成され,
前記測定光照射手段が,前記導光路に前記測定光を入射させ,
前記測定光検出手段が,前記導光路を伝播した前記測定光を検出してなる請求項6に記載の超音波顕微鏡。
【請求項8】
前記測定光照射手段が,前記超音波受波部において表面プラズモン共鳴が生じる条件で前記測定光を前記超音波受波部に照射してなる請求項1〜5のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項9】
前記測定光照射手段が,少なくとも前記励起用パルス光が前記被検体に照射されてから所定期間内において前記測定光を連続照射するものであり,
前記測定光検出手段が,前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光の強度の時系列変化を検出するものである請求項1〜8のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項10】
前記励起用パルス光照射手段が,前記励起用パルス光を連続照射するものであり,
前記測定光照射手段が,前記励起用パルス光の照射タイミングと同期してパルス状の前記測定光を出力するパルス測定光出力手段と,該パルス測定光出力手段から前記被検体までの前記測定光の光路長を変更する光路長変更手段と,を具備し,
前記測定光検出手段が,前記光路長変更手段による前記測定光の光路長の変更に応じて前記超音波受波部に照射された前記測定光の反射光の強度の検出信号をサンプリングするものである請求項1〜8のいずれかに記載の超音波顕微鏡。
【請求項11】
前記超音波発生部及び前記超音波受波部が,前記音響レンズの表面に形成された金属の膜である請求項2〜10のいずれかに記載の超音波顕微鏡。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−66252(P2010−66252A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184735(P2009−184735)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】