説明

超音波骨評価装置

【課題】的確な骨評価をすることができ、かつ、その評価結果を分かりやすく表示することができる超音波骨評価装置を提供すること。
【解決手段】本発明の超音波骨評価装置は、例えば被験者の踵の部分に対して超音波の送受信を行い、踵骨を伝搬する超音波の音速および減衰度合いを測定し、その測定値に基づいて骨評価を行うものであり、表示部に表示される評価結果表示画面には、被験者の測定値と比較する比較情報がグラフ化して表されている。この比較情報は、入力された被験者の人種、性別、年齢等のファクター情報に基づいて、複数組の中から当該被験者に適したものが選択される。そして、選択された比較情報と、被験者の測定値との比較結果に基づいて、判定(評価)メッセージが表示される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超音波骨評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば骨粗鬆症等の診断・検査等に用いられるような超音波骨評価装置が知られている。
【0003】このような超音波骨評価装置は、被験者の体の一部(例えば踵等)に超音波を放射し、その内部を伝搬(通過)する超音波の音速や、減衰度合いなどを測定する。そして、それらの測定値を、例えば多数の人について測定した場合の平均的測定値のなどの基準値と比較することにより、被験者の骨の状態(健全さ)を評価する。
【0004】しかしながら、その比較対象とする基準値は、年齢、性別はもとより、人種、生活地域(国、地方等)などによっても異なるものである。例えば、米国人と日本人とを比べた場合、骨量が同じでも、米国人は、骨が太いために骨梁が細く、日本人より骨折し易い。
【0005】このため、被験者の測定値との比較対象とする基準値(比較情報)がその被験者に適したものでないと、的確な評価をすることができない場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、的確な骨評価をすることができ、かつ、その評価結果を分かりやすく表示することができる超音波骨評価装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0008】(1) 被験者の体の一部に対して超音波の送受信を行い、前記体の一部内における超音波の音速および/または減衰度合いを測定し、その測定値に基づいて骨評価を行う超音波骨評価装置であって、前記被験者のファクター情報を入力する入力手段と、前記被験者の測定値との比較対象とする、前記ファクター情報に対応した複数組の比較情報を格納した記憶部と、入力されたファクター情報に基づいて前記複数組の比較情報から当該被験者の測定値との比較対象とする比較情報を選択する選択手段と、当該被験者の測定値と前記選択された比較情報とを比較する比較手段と、その比較結果および該比較結果に基づいた評価メッセージを表示する表示手段とを有し、前記ファクター情報は、被験者の年齢と、性別と、その他の情報とを含むことを特徴とする超音波骨評価装置。
【0009】(2) 前記その他の情報は、人種、国籍、居住地、身長、体重、測定部位のうちのいずれかである上記(1)に記載の超音波骨評価装置。
【0010】(3) 前記各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を有し、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報を有する比較情報を選択する上記(1)または(2)に記載の超音波骨評価装置。
【0011】(4) 前記各比較情報は、それぞれ、各管理符号を有し、前記記憶部には、前記各比較情報についてのファクター情報および管理符号を有する管理データが格納されており、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報に対応する管理符号を前記管理データから検索し、その管理符号を有する比較情報を選択する上記(1)または(2)に記載の超音波骨評価装置。
【0012】(5) 前記各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を含むデータ名を有し、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報を含むデータ名を有する比較情報を選択する上記(1)または(2)に記載の超音波骨評価装置。
【0013】(6) 前記評価メッセージは、当該被験者のファクター情報に応じ、複数組の中から選択して表示される上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【0014】(7) 前記比較情報は、予め多数の人について測定した測定値の年齢別平均値またはその近似値についての情報を含むものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【0015】(8) 前記比較情報は、さらに、前記多数の人について測定した測定値の年齢別標準偏差またはその近似値についての情報を含むものである上記(7)に記載の超音波骨評価装置。
【0016】(9) 前記比較情報は、グラフ化して表示される上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【0017】(10) 前記グラフは、横軸を年齢とし、縦軸を評価指標としたグラフである上記(9)に記載の超音波骨評価装置。
【0018】(11) 前記被験者の測定値は、少なくとも、前記グラフの中に表示される上記(9)または(10)に記載の超音波骨評価装置。
【0019】(12) 前記比較結果および評価メッセージと併せて、当該被験者について入力されたファクター情報が表示される上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の超音波骨評価装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】図1は、本発明の超音波骨評価装置の実施形態を示す正面図、図2は、図1に示す超音波骨評価装置1の側面図、図3は、超音波骨評価装置1の内部構成を示すブロック図、図4は、複数組の比較情報の一例を示す図、図5は、比較情報の内容の一例を示す図である。
【0022】これらの図に示す超音波骨評価装置1は、被験者の踵(かかと)の部分に対して超音波の送受信を行い、踵骨を伝搬(通過)する超音波の音速および減衰度合いを測定し、その測定値に基づいて骨評価を行うものである。
【0023】図1および図2に示すように、超音波骨評価装置1は、測定部2と、コンピューター3と、入力手段4と、表示手段5とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0024】測定部2は、被験者の踵部に対する超音波の送受信などを行う部分であり、本体21と、本体21の上部に設けられ、被験者の足を置く足置き部22と、足置き部22を挟んで対向するように配設された一対の振動子ユニット23、24と、ハンドル25とを有している。
【0025】一方の振動子ユニット23は、他方の振動子ユニット24に近づいたり遠ざかったりする方向に移動可能に設置されており、ハンドル25を回転操作することにより他方の振動子ユニット24(本体21)に対して移動させることができるようになっている。
【0026】測定に際しては、被験者の足を足置き部22に載せた後、ハンドル25を回して両振動子ユニット23、24を近づけ、両振動子ユニット23、24の接触子231、241をそれぞれ前記足の踵部の両側に接触させた状態(両振動子ユニット23、24で踵部を挟んだ状態)とする。
【0027】振動子ユニット23、24の内部には、それぞれ、超音波振動子232、242が設置されている。そして、超音波振動子232、242は、それぞれ、測定部2の本体21の内部に設けられた送信ユニット26、受信ユニット27に電気的に接続されている。
【0028】送信ユニット26、受信ユニット27は、それぞれ、本体21の内部に設けられた図示しないMPUを介して、次に述べるコンピューター3の制御部31に電気的に接続されている。前記MPUでは、受信波形データの処理等が行われる。
【0029】コンピューター3は、例えばパーソナルコンピューター等で構成されており、図3に示すように、制御部31と、記憶部32とを有している。
【0030】また、コンピューター3の制御部31には、例えばキーボード等で構成された入力手段4と、例えば液晶ディスプレイ等で構成された表示手段5とが、それぞれ、電気的に接続されている。
【0031】図示の構成では、コンピューター3、入力手段4および表示手段5は、それぞれ、台車10に載置されている。また、台車10には、測定結果等を印刷するプリンター20も載置されている。そして、これらの各部は、測定部2を含め、互いに図示しないケーブルで適宜接続されている。
【0032】このような超音波骨評価装置1の測定動作について、以下に簡単に述べる。入力手段4に対する指示の入力によって検査が開始すると、コンピューター3の制御部31は、送信ユニット26に対してトリガーを送信する。このトリガーを受信した送信ユニット26は、所定のパルスを超音波振動子232に送信する。そして、このパルスを受信した超音波振動子232は、その振動面から送信波を発信する。超音波振動子232から発信された送信波は、振動子ユニット23、24内に充填された音響整合材(図示せず)、被験者の踵部(図示せず)などを通過した後、対向配置された超音波振動子242に受信される。
【0033】超音波振動子242に受信された信号は、受信ユニット27に設けられた受信アンプ(図示せず)等によって増幅された後に制御部31へと送信される。そして制御部31は、この受信された信号に基づいて超音波の伝搬時間や減衰度合い等の測定値を算出する。
【0034】さらに、制御部31は、別途に求められた踵部の幅(両接触子231、241間の距離)をも利用して所定の演算を行い、被験者の踵部内を伝搬した超音波の音速を算出する。
【0035】超音波骨評価装置1は、このようにして、被験者の踵部内を伝搬した超音波の音速および減衰度合い(以下、それぞれを単に、「音速」、「減衰度合い」と言う。)を測定する。この音速が速いほど、骨密度が高いと考えられる。また、減衰度合いによって、骨量の多少が推定できる。
【0036】すなわち、超音波骨評価装置1は、音速および減衰度合いの測定値を評価指標として、被験者の骨評価を行う。
【0037】また、評価指標とするものは、音速または減衰度合いの測定値そのものに限らず、音速の測定値と減衰度合いの測定値とに対して所定の演算を施して得られた演算値であってもよい。このような演算値によれば、音響的に骨を診た場合の総合的な評価指標が得られる。
【0038】よって、本明細書においては、骨評価の基礎となる測定値(評価指標)とは、音速または減衰度合いの測定値そのものの他に、音速の測定値と減衰度合いの測定値とに対して所定の演算を施して得られた演算値をも含む概念である。
【0039】なお、本発明では、音速および減衰度合いのいずれか一方を測定するものであってもよい。
【0040】超音波骨評価装置1は、上述したような評価指標について、被験者の測定値を比較情報と比較することにより、被験者の骨評価を行う。この比較情報は、後述するように、例えば、予め多数の人について測定した場合の年齢別平均的測定値を含むものなどとすることができる。
【0041】このような年齢別平均的測定値などの比較情報は、被験者の年齢、性別はもちろん、人種、国籍、居住地、身長、体重、測定部位等の要因(ファクター)によっても異なるものである。
【0042】このようなことから、本発明では、被験者の年齢および性別に加え、さらにその他の情報を含むファクター情報に対応した複数組の比較情報を記憶部32に格納している。そして、入力されたファクター情報に基づいて、当該被験者に最適な比較情報を選択して、当該被験者の測定値をその比較情報と比較する。このような構成により、それぞれの被験者により適した比較情報を選択して使用することができ、的確な骨評価を行うことができる。
【0043】本実施形態では、ファクター情報は、被験者の年齢、性別に加え、その他の情報として、人種を含むものとされる。これにより、被験者の中に様々な人種が混在する場合でも、より的確な骨評価を行うことができる。
【0044】記憶部32には、このようなファクター情報に対応して複数組の比較情報が格納されている。図4に示すように、記憶部32に格納された比較情報は、人種として「日本人」、「欧州人」、「中国人」の3つに分けられており、性別として「男性」、「女性」の2つに分けられており、年齢として「9〜18歳」、「19〜80歳」の2つに分けられている。これにより、計12組の比較情報が記憶部32に格納されている。
【0045】ここで、人種については、言うまでもなく、さらに多くの種類を含むものであってもよく、あるいは、さらに細分化されていてもよい。また、年齢については、さらに多くの区分に分けられていてもよい。
【0046】本発明では、ファクター情報に含まれる前記その他の情報としては、人種に限らず、例えば国籍、居住地(国、地方、海沿い、山沿い等)、身長、体重、測定部位などであってもよく、また、これらを2以上含むものであってもよい。
【0047】このような各比較情報は、例えば、図5に示すような情報を含んでいるのが好ましい。
【0048】すなわち、各比較情報は、予め、当該比較情報のファクター情報に該当する多数の人について測定した場合の年齢別平均的測定値またはその近似値についての情報を含むものであるのが好ましい。これにより、当該被験者の測定値が同年齢の人に比べてどの程度の割合であるかを表示することができ、評価結果をより分かり易いものすることができる。
【0049】本実施形態では、このような年齢別平均的測定値(記号yで示す)についての情報は、例えば、年齢(記号xで示す)を変数とする近似式(演算式)として、記憶部32に格納されている。すなわち、年齢xの例えば3次式「y=f(x)」が記憶部32に格納されている。
【0050】また、各比較情報は、前記多数の人について測定した場合の年齢別標準偏差(記号SDで示す)またはその近似値についての情報を含むものであるのが好ましい。これにより、より的確な骨評価をすることができる。
【0051】本実施形態では、年齢別標準偏差SDについての情報は、(年齢別平均的測定値y+年齢別標準偏差SD×2)および(年齢別平均的測定値y−年齢別標準偏差SD×2)について、年齢xを変数とする近似式として、記憶部32に格納されている。すなわち、年齢xの例えば3次式「y+2SD=g(x)」および「y−2SD=h(x)」が記憶部32に格納されている。
【0052】また、本実施形態では、19〜80歳についての各比較情報は、第1の要注意値(定数mで示す)および第2の要注意値(定数nで示す)を含んでいる。この第1の要注意値および第2の要注意値は、同年齢の人との比較でなく、絶対的な評価をするための比較情報であり、後述するように、被験者の測定値が第1の要注意値または第2の要注意値を下回ったときには、注意を喚起するための所定の判定(評価)メッセージを表示する。
【0053】なお、複数(音速、減衰度合いおよびそれらの演算値のうちの2以上)の評価指標を使用する場合には、比較情報は、その1つずつに上述した各項目の情報を含むものとなる。
【0054】また、年齢別平均値および年齢別標準偏差は、近似式に限らず、例えばテーブルとして(各年齢と、それに対応する値との組み合わせとして)、記憶部32に格納されていてもよい。
【0055】図6は、制御部31の制御動作を示すフローチャート、図7は、表示部5に表示するファクター情報入力画面を示す図、図8ないし図10は、それぞれ、比較情報を選択する方法を示す図、図11は、表示部5に表示する評価(比較)結果表示画面を示す図、図12ないし図20は、比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【0056】以下、これらの図を参照して、超音波骨評価装置1の使用方法および作用について説明する。
【0057】まず、被験者のファクター情報を入力する(ステップS301)。この入力時には、表示部5に図7R>7に示すような入力画面を表示する。そして、入力手段4を操作し、ファクター情報として、人種、性別、年齢の各項目をそれぞれ入力する。本実施形態では、年齢は、生年月日を入力することにより、自動的に算出されるようになっている。なお、被験者が81歳以上の場合は、年齢を80歳として入力する。
【0058】図7に示す例では、「日本人」、「男性」、「昭和37年10月1日」(2000年10月15日現在で38歳)と入力している。また、検査番号、名前、身長、体重、測定部位等の各項目についても適宜入力する。
【0059】なお、本実施形態においては、入力された被験者の身長、体重および測定部位については、比較情報を選択するためには使用していないが、本発明では、これらに基づいて比較情報を選択することとしてもよい。
【0060】ファクター情報の一部は、各被験者毎に入力するのではなく、別のときに設定(入力)することもできるようになっている(ステップS302)。例えば、その日の被験者が全員女性である場合や、全員中国人である場合に、予め「女性」、または「中国人」のように設定してもよい。これにより、被験者一人ずつについて入力する手間を省略することができる。
【0061】次いで、制御部31は、前述した手順で測定を行う(ステップS303)。これにより、制御部31では、音速、減衰度合いおよびそれらの演算値等の測定値が算出される(ステップS304)。
【0062】次いで、制御部31は、入力されたファクター情報に基づいて、当該被験者の測定値との比較対象とする比較情報を選択(検索)する(ステップS305)。
【0063】比較情報の選択方法としては、特に限定されないが、例えば以下のようにすることができる。
【0064】図8に示す例では、各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を有している。すなわち、例えば、日本人の9〜18歳の男性について測定して得られた比較情報は「日本人 男性 9〜18歳」なる情報を含み、欧州人の19〜80歳の女性について測定して得られた比較情報は「欧州人 女性 19〜80歳」なる情報を含んでいる。
【0065】制御部31は、これらの比較情報のうちから、入力されたファクター情報と同じファクター情報を有する(含む)比較情報を選択する。すなわち、この例では、入力されたファクター情報は、「日本人 男性 38歳」であるので、「日本人 男性 19〜80歳」のファクター情報を有する比較情報を選択する。
【0066】比較情報の選択方法の他の例として、図9に示す例では、各比較情報は、それぞれ、例えば「1、2、3、・・・・」等の各管理符号を有しており、記憶部32には、各比較情報についてのファクター情報および管理符号を有する管理データが格納されている。そして、制御部31は、入力されたファクター情報と同じファクター情報に対応する管理符号を前記管理データから検索し、その管理符号を有する比較情報を選択する。すなわち、この例では、入力されたファクター情報は、「日本人 男性 38歳」であるので、「日本人 男性 19〜80歳」に対応する管理符号「2」を有する比較情報を選択する。
【0067】比較情報の選択方法のさらに他の例として、図10に示す例では、各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を含むデータ名を有している。そして、制御部31は、入力されたファクター情報と同じファクター情報を含むデータ名を有する比較情報を選択する。すなわち、この例では、入力されたファクター情報は、「日本人 男性 38歳」であるので、<日本人 男性 19〜80歳>なるデータ名を有する比較情報を選択する。
【0068】なお、上述の例において、「日本人」、「男性」といったファクター情報の言葉そのもので検索せず、数値や文字等の記号に適宜置き換えて、効率的に検索することとしてもよいことは言うまでもない。また、上述した以外の、一般的に用いられている検索・選択方法を利用してもよい。
【0069】次いで、制御部31は、当該被験者の測定値と、選択された比較情報とを比較し、比較結果を算出する(ステップS306)。すなわち、当該被験者の年齢xを前記各近似式に代入して、当該被験者の年齢における平均的測定値y、(y+2SD)および(y−2SD)をそれぞれ求め、それらの値と当該被験者についての測定値との比較を行う。
【0070】ステップS304、S306で得られた測定結果および比較結果は、記憶部32に逐次格納され、蓄積していくようにすることもできる。そして、その蓄積された情報を、例えばファクター情報毎に集計する等の、統計的処理をすることができるようになっていてもよい。
【0071】次いで、記憶部32に複数格納されている判定(評価)メッセージから、入力されたファクター情報および比較結果に基づいて判定メッセージを選択する(ステップS307)。この判定メッセージの選択については、後述する。
【0072】次いで、比較結果およびこの比較結果に基づいた判定メッセージを表示部5に表示する(ステップS308)。
【0073】このステップS308では、例えば図11に示すような評価結果表示画面を表示部5に表示するのが好ましい。
【0074】すなわち、同図に示す評価結果表示画面には、被験者の測定値の絶対値、および被験者と同年齢の人の平均的測定値に対する割合(パーセンテージ)等が表示される。
【0075】また、同図に示すように、選択された比較情報は、グラフ化して表示するのが好ましい。すなわち、横軸に年齢、縦軸に評価指標をとったグラフに、年齢別平均的測定値yを示す曲線、(y+2SD)を示す曲線、(y−2SD)を示す曲線をそれぞれ表示する。また、19〜80歳についての比較情報の場合には、第1の要注意値および第2の要注意値(これらは一定値)も同じグラフ中に表示する。このようにグラフ化して表示することにより、比較情報を視覚的により分かり易く表示することができる。なお、各曲線および各直線で分けられたグラフ中の各領域を色分けして表示することにより、より見易くすることができる。
【0076】また、当該被験者の測定値は、このグラフ中にも表示する(グラフ中の*印部)。これにより、比較情報との比較結果を視覚的により分かり易く表示することができる。なお、この測定値を示す*印は、例えば赤色などの目立つ色(その周りの領域と区別しやすい色)で表示するのが好ましい。
【0077】また、同図に示すように、評価結果表示画面には、当該被験者について入力されたファクター情報を表示するのが好ましい。これにより、ファクター情報が正しく入力されたかどうかを確認することができ、不適当な比較情報が選択されて誤った評価をしてしまうようなことを防止することができる。
【0078】また、同図に示すように、評価結果表示画面には、ステップS307で選択された判定メッセージを表示する。このような判定メッセージは、比較結果に応じた複数種類のものが用意されており、記憶部32に格納されている。そして、制御部31は、比較結果に応じて、そのうちの1つを選択して表示する。この判定メッセージを表示することにより、判定(評価)結果を被験者により分かり易く伝えることができる。なお、ステップS301〜S308の順序は、適宜変更してもよい。
【0079】次に、比較結果と、その比較結果に対応する判定メッセージの一例について説明する。
【0080】まず、被験者の年齢が19〜80歳である場合について説明する。図12に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値+2SD)以上で、かつ第1の要注意値以上のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて高いと言えます。これからもバランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。」という判定メッセージを表示する。
【0081】図13に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)以上、(年齢別平均的測定値+2SD)未満で、かつ第1の要注意値以上のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて同等と言えます。これからもバランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。今後も定期的な検査をおすすめします。」という判定メッセージを表示する。
【0082】図14に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)以上、(年齢別平均的測定値+2SD)未満で、かつ第2の要注意値以上、第1の要注意値未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて同等と言えますが、若年成人時の平均の測定値と比べるとやや低下しています。バランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。定期的に検査を受けて下さい。」という判定メッセージを表示する。
【0083】図15に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)以上、(年齢別平均的測定値+2SD)未満で、かつ第2の要注意値未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて同等と言えますが、若年成人時の平均の測定値と比べるとかなり低下しています。バランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。定期的に検査を受けて下さい。」という判定メッセージを表示する。
【0084】図16に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)未満で、かつ第2の要注意値以上、第1の要注意値未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて低いと言えます。また、若年成人時の平均の測定値と比べてもやや低下しています。バランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。定期的に検査を受けて下さい。」という判定メッセージを表示する。
【0085】図17に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)未満で、かつ第2の要注意値未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は、同年齢の人と比べて低いと言えます。また、若年成人時の平均の測定値と比べてもかなり低下しています。バランスの良い食事や適度な運動を心掛けましょう。さらに詳しい検査を受けて下さい。」という判定メッセージを表示する。
【0086】このように、被験者の年齢が19〜80歳である場合には、被験者の測定値に応じて、例えば、注意を喚起する度合いの異なる判定メッセージを表示する。
【0087】次に、被験者の年齢が9〜18歳である場合について説明する。図18に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値+2SD)以上のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は同年齢と比べ高い傾向にあります。骨の発育には成長期の食習慣・運動習慣が重要ですので心掛けましょう。定期的な骨量検査をおすすめします。」という判定メッセージを表示する。
【0088】図19に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)以上、(年齢別平均的測定値+2SD)未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は同年齢と比べ同等と言えます。骨の発育には成長期の食習慣・運動習慣が重要ですので心掛けましょう。定期的な骨量検査をおすすめします。」という判定メッセージを表示する。
【0089】図20に示すように、被験者の測定値が(年齢別平均的測定値−2SD)未満のとき(同図のグラフ中でハッチングを施した範囲にあるとき)は、「あなたの測定値は同年齢と比べ低い傾向にあります。骨の発育には成長期の食習慣・運動習慣が重要ですので心掛けましょう。定期的な骨量検査をおすすめします。」という判定メッセージを表示する。
【0090】このように、被験者の年齢が9〜18歳である場合には、判定メッセージを例えば、成長期にある被験者に応じた内容のものとする。
【0091】以上のように、本実施形態では、判定メッセージを、年齢(年齢層)に応じて2組用意し、そのうちから選択して表示する。これにより、それぞれの年齢層に相応しい内容の判定メッセージを表示することができる。
【0092】また、判定メッセージは、年齢以外のファクター情報に応じて複数組用意し、そのうちから選択して表示することとしてもよい。例えば、人種別、居住地別にそれらの特性に合わせた内容の判定メッセージを表示することにより、より分かりやすい評価をすることができる。
【0093】このような判定メッセージの内容は、適宜変更することができるようになっていてもよい。
【0094】以上、本発明の超音波骨評価装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、超音波骨評価装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。
【0095】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、被験者の年齢、性別に加えて、例えば人種、国籍、居住地、身長、体重、測定部位などの他の情報を含めたファクター情報に対応して複数組用意された比較情報から当該被験者に適した比較情報を選択することにより、より的確な骨評価を行うことができる。
【0096】また、被験者の測定値と、選択された比較情報との比較結果に基づいた判定(評価)メッセージを表示することにより、評価結果をより分かり易く伝えることができる。
【0097】さらに、比較情報をグラフ化して表示することとした場合や、そのグラフの中に被験者の測定値を表示することとした場合には、視覚的により分かり易く表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の超音波骨評価装置の実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す超音波骨評価装置の側面図である。
【図3】図1に示す超音波骨評価装置の内部構成を示すブロック図である。
【図4】複数組の比較情報の一例を示す図である。
【図5】比較情報の内容の一例を示す図である。
【図6】制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】表示部に表示するファクター情報入力画面を示す図である。
【図8】比較情報を選択する方法を示す図である。
【図9】比較情報を選択する方法を示す図である。
【図10】比較情報を選択する方法を示す図である。
【図11】表示部に表示する評価(比較)結果の表示画面を示す図である。
【図12】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図13】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図14】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図15】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図16】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図17】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図18】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図19】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【図20】比較結果に対応する判定(評価)メッセージを示すための図である。
【符号の説明】
1 超音波骨評価装置
2 測定部
21 本体
22 足置き部
23、24 振動子ユニット
231、241 接触子
232、242 超音波振動子
25 ハンドル
26 送信ユニット
27 受信ユニット
3 コンピューター
31 制御部
32 記憶部
4 入力手段
5 表示手段
10 台車
20 プリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】 被験者の体の一部に対して超音波の送受信を行い、前記体の一部内における超音波の音速および/または減衰度合いを測定し、その測定値に基づいて骨評価を行う超音波骨評価装置であって、前記被験者のファクター情報を入力する入力手段と、前記被験者の測定値との比較対象とする、前記ファクター情報に対応した複数組の比較情報を格納した記憶部と、入力されたファクター情報に基づいて前記複数組の比較情報から当該被験者の測定値との比較対象とする比較情報を選択する選択手段と、当該被験者の測定値と前記選択された比較情報とを比較する比較手段と、その比較結果および該比較結果に基づいた評価メッセージを表示する表示手段とを有し、前記ファクター情報は、被験者の年齢と、性別と、その他の情報とを含むことを特徴とする超音波骨評価装置。
【請求項2】 前記その他の情報は、人種、国籍、居住地、身長、体重、測定部位のうちのいずれかである請求項1に記載の超音波骨評価装置。
【請求項3】 前記各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を有し、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報を有する比較情報を選択する請求項1または2に記載の超音波骨評価装置。
【請求項4】 前記各比較情報は、それぞれ、各管理符号を有し、前記記憶部には、前記各比較情報についてのファクター情報および管理符号を有する管理データが格納されており、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報に対応する管理符号を前記管理データから検索し、その管理符号を有する比較情報を選択する請求項1または2に記載の超音波骨評価装置。
【請求項5】 前記各比較情報は、それぞれ、当該比較情報のファクター情報を含むデータ名を有し、前記選択手段は、入力されたファクター情報と同じファクター情報を含むデータ名を有する比較情報を選択する請求項1または2に記載の超音波骨評価装置。
【請求項6】 前記評価メッセージは、当該被験者のファクター情報に応じ、複数組の中から選択して表示される請求項1ないし5のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【請求項7】 前記比較情報は、予め多数の人について測定した測定値の年齢別平均値またはその近似値についての情報を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【請求項8】 前記比較情報は、さらに、前記多数の人について測定した測定値の年齢別標準偏差またはその近似値についての情報を含むものである請求項7に記載の超音波骨評価装置。
【請求項9】 前記比較情報は、グラフ化して表示される請求項1ないし8のいずれかに記載の超音波骨評価装置。
【請求項10】 前記グラフは、横軸を年齢とし、縦軸を評価指標としたグラフである請求項9に記載の超音波骨評価装置。
【請求項11】 前記被験者の測定値は、少なくとも、前記グラフの中に表示される請求項9または10に記載の超音波骨評価装置。
【請求項12】 前記比較結果および評価メッセージと併せて、当該被験者について入力されたファクター情報が表示される請求項1ないし11のいずれかに記載の超音波骨評価装置。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2002−143163(P2002−143163A)
【公開日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−344261(P2000−344261)
【出願日】平成12年11月10日(2000.11.10)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】